説明

光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびその対掌体エステルの製造方法

【課題】 光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびその対掌体エステルの効率的な製造方法を提供する。また、新規な化合物である2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびそのエステルを提供する。
【解決手段】 2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの光学異性体混合物に該化合物を不斉加水分解する酵素を作用させることにより、光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびその対掌体エステルを効率的に製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種医薬品・農薬などの合成原料或いは中間体として重要な光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびその対掌体エステルの効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびそのエステルは、種々の医薬品や農薬などの製造原料や合成中間体として重要な化合物である。そのため、高収率かつ工業的に実施可能な製造方法の開発が強く求められてきた。
【0003】
光学活性2−置換−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の合成法としては、該化合物のカルボン酸エステルを不斉加水分解する能力を有する酵素を用いて、該カルボン酸エステルを光学分割する方法が報告されている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2を参照)。しかし、これら文献中には、光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸の製造方法に関する記載はない。2−置換−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステルと2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルを比較した場合、ベンゼン環上の置換基の違いにより、化合物の極性は大きく異なっていると考えられる。この物性差は酵素反応に少なからぬ影響を及ぼすと推測され、上記文献に記載の酵素及び反応条件を2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルに適用しても、光学純度の高い光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸及びその対掌体エステルを効率的に製造できるかどうかは容易には予測できない。
【0004】
また、非特許文献3には、2−メトキシ−3−[4−[2−[N−(2−ベンゾキサゾリル)−N−メチルアミノ]エトキシ]フェニル]プロピオン酸メチルを、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)由来のリパーゼを用いて光学分割して(S)−2−メトキシ−3−[4−[2−[N−(2−ベンゾキサゾリル)−N−メチルアミノ]エトキシ]フェニル]プロピオン酸及び(R)−2−メトキシ−3−[4−[2−[N−(2−ベンゾキサゾリル)−N−メチルアミノ]エトキシ]フェニル]プロピオン酸メチルを取得する方法が記載されている。しかし本反応では、高価な市販酵素を多量に必要とし、また得られる(S)体のカルボン酸及び(R)体のカルボン酸エステルの光学純度は低く、実用的な製造方法であるとは言えない。
【特許文献1】WO01/11072
【特許文献2】WO01/11073
【非特許文献1】Organic Process Research & Development, 7, 82(2003)
【非特許文献2】Journal of Medicinal Chemistry, 46, 1306(2003)
【非特許文献3】Bioorganic & Medicinal Chemistry, 7, 821(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびその対掌体エステルの効率的な製造方法を提供することである。また、新規な化合物である2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびそのエステルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの光学異性体混合物に該化合物を不斉加水分解する酵素を作用させることにより、光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびその対掌体エステル、特に(S)−2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸および(R)−2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステル、を効率的に製造できることを見いだし、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は一般式(1):
【0008】
【化6】

【0009】
(式中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のアシル基、アリル基、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、又は複素環基を示し、R2及びR3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基を示す。)で表される2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの光学異性体混合物に、該化合物の不斉加水分解能を有する酵素を作用させることを特徴とする、一般式(2):
【0010】
【化7】

【0011】
(式中、R1及びR2は前記と同じ基を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸またはその塩、およびその対掌体をなす一般式(3):
【0012】
【化8】

【0013】
(式中、R1、R2及びR3は前記と同じ基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの製造方法である。
【0014】
また、本発明は一般式(4):
【0015】
【化9】

【0016】
(式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R2及びR3は前記と同じ基を示す。)で表される2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルおよび一般式(5):
【0017】
【化10】

【0018】
(式中、R2及びR4は前記と同じ基を示す。)で表される2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸またはその塩に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸またはその塩、とりわけ(S)−2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸またはその塩を効率的に合成することができる。更に、その対掌体をなす光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステル、とりわけ(R)−2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルをも同時に取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、本発明の化合物について説明する。
一般式(1)ないし(3)において、R1はR1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のアシル基、アリル基、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、又は複素環基を示す。
【0021】
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。炭素数2〜10のアシル基としては、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。複素環基としては、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0022】
上記の基は置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルシリル基等が挙げられる。これら置換基を有するR1の例としては、2,2−ジクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、メトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、メチルチオメチル基、フェニルチオメチル基等が挙げられる。
【0023】
上記のなかでも、R1として好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜7のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0024】
一般式(1)ないし(5)において、R2は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基を示す。具体的には、前記R1と同様の基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては前記R1の場合と同様の基が挙げられる。なかでもR2として好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜7のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0025】
一般式(1)、(3)及び(4)において、R3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基を示す。具体的には、前記R1と同様の基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては前記R1の場合と同様の基が挙げられる。なかでもR2として好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜7のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0026】
なお、一般式(1)においてR1が炭素数1〜10である化合物、すなわち一般式(4):
【0027】
【化11】

【0028】
(式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R2及びR3は前記と同じ基を示す)
で表される2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルは、ラセミ体、光学活性体ともに、従来未報告の新規物質である。R4の具体例としては、前記R1の項で挙げたアルキル基の例と同様である。R4として、好ましくは炭素数1〜7のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。本発明で使用あるいは製造する化合物(4)としては、R4が炭素数1〜4のアルキルであり、R2及びR3が炭素数1〜10のアルキル基である化合物である。より好ましくは、R4、R2及びR3が炭素数1〜4のアルキル基である化合物である。更に好ましくは、R4がメチル基であり、R2及びR3が炭素数1〜4のアルキル基である化合物であり、最も好ましくは、R4、R2及びR3がメチル基である化合物である。また、化合物(4)としては光学活性体がより好ましく、中でも、2位の絶対配置がRである光学活性体が更に好ましい。
【0029】
また、一般式(5):
【0030】
【化12】

【0031】
(式中、R4及びR2は前記と同じ基を示す)で表される2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸は、ラセミ体、光学活性体ともに、従来未報告の新規物質である。R4の具体例ならびに好ましい基は前記と同様である。本発明で使用あるいは製造する化合物(5)としては、R4が炭素数1〜4のアルキルであり、R2が炭素数1〜10のアルキル基である化合物である。より好ましくは、R4及びR2が炭素数1〜4のアルキル基である化合物である。更に好ましくは、R4がメチル基であり、R2が炭素数1〜4のアルキル基である化合物であり、最も好ましくは、R4及びR2がメチル基である化合物である。また、化合物(5)としては光学活性体がより好ましく、中でも、2位の絶対配置がSである光学活性体が更に好ましい。
【0032】
一般式(1)で示される2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの光学異性体混合物、例えば2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルの光学異性体混合物は、非特許文献1に記載の合成法と同様の方法で容易に合成可能である。本発明の加水分解においては、化合物(1)の光学異性体混合物として、ラセミ体を用いても良いし、一方の光学活性体が他方より過剰に含まれる混合物を用いて、さらに光学純度が高められた目的物を取得してもよい。
【0033】
2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの光学異性体混合物に、該化合物の不斉加水分解能を有する酵素を作用させるに当たっては、円滑な反応、操作の容易性などの観点から、2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの光学異性体混合物及び不斉加水分解能を有する酵素を水性溶媒中に溶解または分散して反応を行なう方法が、好ましく採用される。
【0034】
不斉加水分解反応を行なう水性溶媒は、不斉加水分解能を有する酵素の種類に応じて酵素が働き易いpHに調整しておくことが必要である。pHの範囲としては、一般的にはpH3〜12程度、より好ましくはpH5〜9程度である。pHの調整は、水性溶媒として所定のpHを有する緩衝水溶液を用いて行なっても良い。その際の緩衝水溶液としては、例えば、リン酸ナトリウム水溶液、リン酸カリウム水溶液などのようなリン酸アルカリ金属塩水溶液等の無機塩の緩衝水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液などの酢酸アルカリ金属塩等の有機酸塩の緩衝水溶液などを挙げることができる。また、反応系のpHを不斉加水分解反応に適したpHに保つために、不斉加水分解反応の初期および/または途中に水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液などの塩基や塩酸、硫酸などの酸などのpH調整剤を添加してもよい。
【0035】
不斉加水分解能を有する酵素の使用量は、使用する酵素の種類などに応じて、反応時間の遅延や2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの光学異性体混合物を加水分解する際の選択性の低下が起こらないような量を適宜選択するとよい。例えば、従来から市販されている不斉加水分解能を有する酵素を用いる場合、一般に、2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの光学異性体混合物質量の0.0001〜3.0質量倍が好ましく、0.001〜1.0質量倍がより好ましく、0.001〜0.1質量倍が特に好ましい。
【0036】
不斉加水分解反応の反応温度としては、温度が高すぎると酵素の安定性が低下したり酵素が失活する場合があり、一方温度が低すぎると反応速度が低下する場合があるので、通常5〜65℃の範囲であることが好ましく、20〜50℃の範囲であることがより好ましい。
【0037】
不斉加水分解反応の反応時間は、使用する酵素の種類や量、反応温度などに応じて変わり得るが、通常0.1〜120時間程度、特に0.1〜48時間程度とするのが好ましい。
【0038】
上記の不斉加水分解反応によって、光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸(不斉加水分解能を有する酵素によって加水分解された一方の光学異性体)とそれと対掌配置を有する光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステル(不斉加水分解能を有する酵素によって加水分解されずにそのまま残ったもう一方の光学異性体)を含有する反応生成物が得られる。
【0039】
反応生成物からの光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびそれと対掌配置を有する光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの分離回収に当たっては、両者をそれぞれ円滑に分離回収できる方法であればいずれの方法を採用してもよい。例えば、pHを中性〜アルカリ性、例えばpH7〜10程度に調整した光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸およびそれと対掌配置を有する光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルを含有する反応生成物(水性反応液等)に、非水溶性の有機溶剤を添加して十分に攪拌した後、水層と有機層に分液する。有機層中には加水分解されずに残った光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルが多く含まれ、水層中には生成した光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸が多く含まれる。有機層の溶剤を留去するか、または蒸留、カラムクロマトグラフィーなどにより処理して、純度の高い光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルが得られる。この際に使用する非水溶性の有機溶剤としては、例えば、t−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;トルエンなどの炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0040】
一方、水層中に残留する光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸は、水層のpHを酸性、例えば1〜3程度に調整後、適当な有機溶剤を用いて抽出処理することにより、水層から分離回収することができる。その際の有機溶剤としては、例えば、tert−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;トルエンなどの炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そして、抽出処理に用いた有機溶剤を留去することによって、高純度の光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸を得ることができる。必要に応じてカラムクロマトグラフィー、晶析などを行なうことにより、更に高純度化することもできる。また、既知の方法により、光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸を塩、例えばアルカリ金属との塩、として単離、精製して取得することもできる。
【0041】
本反応に使用する酵素は微生物起源の酵素であってもよいし、動物起源の酵素であってもよいし、植物起源の酵素であっても良い。これらの酵素の純度あるいは形態については、目的とする反応の活性を有していれば特に制限されるものではない。精製酵素、粗酵素、酵素含有物、微生物培養液、培養物、菌体、培養液、酵素遺伝子が導入されることによって目的とする反応の活性を獲得した組み換え微生物およびそれらの処理物など、種々の形態で用いることができる。ここで処理物とは、例えば、凍結乾燥品、アセトン乾燥品、摩擦物、自己消化物、超音波破砕物またはアルカリ処理物などを言う。更に上記のような種々の純度あるいは形態の酵素を、例えばシリカゲルやセラミックスなどの無機担体、セルロース、イオン交換樹脂などへの吸着法、ポリアクリルアミド法、含硫多糖ゲル法(例えばカラギーナンゲル法)、アルギン酸ゲル法、寒天ゲル法などの公知の方法により固定化して用いてもよい。
【0042】
本発明において好ましく用いられる酵素は、2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルを不斉的に加水分解する活性を有するものであれば特に制限されないが、微生物または動物起源のリパーゼ、エステラーゼ、プロテアーゼもしくはアシラーゼである。
【0043】
より好ましい酵素としては、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、キャンディダ(Candida)属、ゲオトリカム(Geotrichum)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾプス(Rhizopus)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、リゾパス(Rhizopus)属もしくはサーモマイセス(Thermomyces)属の微生物、豚膵臓、又は、小麦麦芽を起源とするリパーゼ;アスペルギルス(Aspergillus)属、バシラス(Bacillus)属もしくはリゾプス(Rhizopus)属の微生物又は牛膵臓を起源とするプロテアーゼ;アスペルギルス(Aspergillus)属の微生物を起源とするアシラーゼなどを挙げることができる。
【0044】
そのうちでもキャンディダ(Candida)属由来のリパーゼが好ましく、キャンディダ・シリンドラッシ(Candida cylindracea)もしくはキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)由来のリパーゼが更に好ましく用いられる。これらの酵素は市販品の中から選択して使用することもできる。
【0045】
本発明で使用しうる市販の酵素の具体例としては、リパーゼAL(Achromobacter sp.由来、名糖産業製)、リパーゼPL(Alcaligenes sp.由来、名糖産業製)、リパーゼAP−4(Aspergillus niger由来、天野エンザイム製)、リパーゼAP−6(Aspergillus niger由来、天野エンザイム製)、リパーゼPS(Burkholderia cepacia由来、天野エンザイム製)、リパーゼAH(Burkholderia cepacia由来、天野エンザイム製)、リパーゼQLM(Burkholderia gradiloi由来、名糖産業製)、リパーゼQL(Burkholderia gradiloi由来、名糖産業製)、ノボザイム435(Candida antarctica由来、ノボザイム製)、ノボザイムCALB L(Candida antarctica由来、ノボザイム製)、リパーゼOF(Candida cylindracea由来、名糖産業製)、リパーゼMY(Candida cylindracea由来、名糖産業製)、リパーゼAYS(Candida rugosa由来、天野エンザイム製)、リパーゼAS(Candida rugosa由来、天野エンザイム製)、リパーゼGC−4(Geotrichum candidum由来、天野エンザイム製)、リパーゼM「アマノ」10(Mucor javanicus由来、天野エンザイム製)、ノボザイム388(Mucor miehei由来、ノボザイム製)、ノボザイムIM(Mucor miehei由来、ノボザイム製)、ノボザイム10000M(Mucor miehei由来、ノボザイム製)、リパーゼG(Penicillium camembertii由来、天野エンザイム製)、リパーゼR(Penicillium roqueforti由来、天野エンザイム製)、リパーゼ(豚膵臓由来、東洋醸造製)、リパーゼ(タイプ2)(豚膵臓由来、シグマ製)、リパーゼSL(Pseudomonas cepacia由来、名糖産業製)、リパーゼAK(Pseudomonas fluorescens由来、天野エンザイム製)、リパーゼCHE(Pseudomonas sp.由来、天野エンザイム製)、トヨチームLIP(Pseudomonas sp.由来、東洋紡製)、リパーゼWO(Pseudomonas sp.由来、ベーリンガー製)、リパーゼTL(Pseudomonas stutzeri由来、名糖産業製)、リパーゼ(Rhizopus delemar由来、生化学工業製)、タリパーゼ(Rhizopus delemar由来、天野エンザイム製)、リパーゼサイケン100(Rhizopus javanicus由来、ナガセケムテック製)、リパーゼF−AP15(Rhizopus javanicus由来、天野エンザイム製)、リパーゼUL(Rhizopus sp.由来、名糖産業製)、ノボザイム388(Rhizomucor miehei由来、ノボザイム製)、ノボザイムRM IM(Rhizomucor miehei由来、ノボザイム製)、リポザイムTL100L(Thermomyces lanuginosus由来、ノボザイム製)、リパーゼ(タイプ1)(小麦麦芽由来、シグマ製)リパーゼPGE(天野エンザイム製)、プロテアーゼYP−SS(Aspergillus niger由来、ヤクルト製薬製)、デナプシン2P(Aspergillus niger由来、ナガセケムテック製)、プロテアーゼA「アマノ」G(Aspergillus oryzae由来、天野エンザイム製)、プロテアーゼM「アマノ」G(Aspergillus oryzae由来、天野エンザイム製)、パンチダーゼNP−2(Aspergillus oryzae由来、天野エンザイム製)、デナチームAP(Aspergillus oryzae由来、ナガセケムテック製)、サチライシンA(Bacillus lichenformis由来、ノボザイム製)、プロテアーゼN「アマノ」G(Bacillus subtilis由来、天野エンザイム製)、ビオプラ−ゼSP−4FG(Bacillus subtilis由来、ナガセケムテック製)、ニューラーゼ(Rhizopus niveus由来、天野エンザイム製)、アシラーゼA(Aspergillus sp.由来、シグマ製)、アシラーゼ「アマノ」(Aspergillus sp.由来、天野エンザイム製)、アシラーゼ(Aspergillus sp.由来、東京化成製)、などを挙げることができる。
【0046】
上記の市販の酵素は、いずれもS体の2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルを優先的に加水分解して(S)−2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸に変換する性質を有する。このうち、収率、酵素使用量、酵素の価格及び得られる化合物の光学純度の観点から、キャンディダ(Candida)属由来のリパーゼOF(Candida cylindracea由来、名糖産業製)、リパーゼMY(Candida cylindracea由来、名糖産業製)もしくはリパーゼAYS(Candida rugosa由来、天野エンザイム製)が特に好ましい。
【0047】
また、R体を優先的に加水分解するする酵素の具体例としては、ノボザイム539(Bacillus sp.由来、ノボザイム製)、キモトリプシン(牛膵臓由来、和光純薬製)などを挙げることができる。これらの酵素はいずれも、R体の2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルを優先的に加水分解して(R)−2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸に変換する性質を有する。
【0048】
製造したい化合物の光学的立体構造に応じて、上記で例示した酵素の1種または2種以上を用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)ラセミ体2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルの合成
窒素雰囲気下、ジメトキシ酢酸メチル5.4gとアセチルクロリド4.0gの混合物にヨウ素15mgを添加し、氷冷下で15分、室温で40分更に50℃で1.3時間攪拌した。反応液にトルエンを添加後、減圧下で溶媒を留去することにより、反応液に含まれる低沸点化合物を除去した。これにより2−クロロ−2−メトキシ酢酸メチル8.6gが得られた。
【0051】
窒素雰囲気下、上記で得られた2−クロロ−2−メトキシ酢酸メチル8.6gと亜リン酸トリエチル7.2gを混合し、150℃で7時間攪拌した。反応液にトルエンを添加後、減圧下で溶媒を留去することにより、反応液に含まれる低沸点化合物を除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行ない、2−ジエトキシホスフィニル−2−メトキシ酢酸メチル5.4gを得た。
【0052】
上記で得られた2−ジエトキシホスフィニル−2−メトキシ酢酸メチル5.4gとアニスアルデヒド3.0gをトルエン50mlに溶解し、窒素雰囲気下でtert−ブトキシカリウムを2−ジエトキシホスフィニル−2−メトキシ酢酸メチルの1.5モル等量を添加し、室温で18時間攪拌した。反応液を塩化アンモニウム水溶液で洗浄後、溶媒を減圧留去した。残渣に10%パラジウム炭素2.5gを含むトルエン溶液50mlを添加後、水素加圧(0.24MPa)下で24℃で2時間攪拌した。セライトで減圧濾過後、濾液を無水硫酸ナトリウムで脱水した。減圧下で溶媒を留去し、4.5gのラセミ体2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルを黄色オイルとして得た。
1H NMR(CDCl3/ppm):δ2.91−3.01(m,2H),3.35(s,3H),3.72(s,3H),3.79(s,3H),3.90−3.96(m,1H),6.81−6.84(m,2H),7.12−7.14(m,2H)。
【0053】
(実施例2)
実施例1で得られたラセミ体2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチル10mgに、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.5ml及び下記の表1に記載したそれぞれの市販酵素5mgもしくは0.5mgを加えて、30℃で16時間反応させた。反応後、酢酸エチル1mlを加えてよく混合し、有機層の一部を採取して下記に記載の高速液体クロマトグラフィー分析条件で分析した。
[高速液体クロマトグラフィー分析条件]
カラム:Chiralcel OJ(ダイセル化学製)、カラム温度:20℃、溶離液:ヘキサン/イソプロパノール/トリフルオロ酢酸=70/30/0.1、流速=0.5ml/min、検出:254nm、溶出時間:(R)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸12.7分、(S)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸16.8分、(R)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチル25.1分、(S)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチル22.8分
上記分析結果から、2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸への変換率、生成した2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸及び未反応の2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルの絶対立体配置及び光学純度を求めた。結果を以下の表1に示す。使用酵素量は、基質であるラセミ体2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルの重量に対する割合で示した。
【0054】
【表1】

【0055】
(実施例3)
下記の表2に記載したそれぞれの市販酵素を用いて、実施例21と同様に操作後、分析により2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸への変換率、生成した2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸及び未反応の2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルの絶対立体配置及び光学純度を求めた。結果を以下の表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
(実施例4)
リパーゼOF(名糖産業製)、リパーゼMY(名糖産業製)もしくはリパーゼAYS(天野エンザイム製)を用いて、実施例2と同様に反応を行ない、分析により2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸への変換率、生成した2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸及び未反応の2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルの絶対立体配置及び光学純度を求めた。結果を以下の表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
上記の表3の結果から、酵素としてリパーゼOF(名糖産業製)、リパーゼMY(名糖産業製)もしくはリパーゼAYS(天野エンザイム製)を用いた場合、他の市販酵素を用いた場合に比べて、非常に少ない酵素使用量で、高光学純度の(R)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸及び(S)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルが高収率で得られた。
【0060】
(実施例5)
実施例1で得られたラセミ体2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチル63.2g及びリパーゼAYS(天野エンザイム製)422mgを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)632mlに添加し、5N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に保ちながら30℃で24時間攪拌しながら反応させた。反応開始後の2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸への変換率は48.0%であり、生成した2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸の光学純度は95.6%e.e.(R)、未反応の2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルの光学純度は88.4%e.e.(S)であった。
【0061】
(実施例6)
実施例5で得られた反応液約720mlより、(R)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸及び(S)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルを取得した。反応液を5N水酸化ナトリウム水溶液でpH8に調整後、トルエン720mlで2度、540mlで1度抽出操作を行なった。得られた有機層を集めて飽和食塩水60mlで洗浄後、溶媒を留去することにより、2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸を含まない光学純度88.4%e.e.の(S)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチル27.3gをオイルとして得た。
【0062】
上記の抽出操作後の水層について、6N塩酸でpH3に調整後、トルエン720mlで2度、540mlで2度抽出操作を行なった。得られた有機層を集めて飽和食塩水60mlで洗浄後、溶媒を留去することにより、2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチルを含まない光学純度95.5%e.e.の(R)−2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸23.8gをオイルとして得た。
1H NMR(CDCl3/ppm):δ2.94−2.99(m,1H),3.06−3.11(m,1H),3.40(s,3H),3.79(s,3H),3.97−4.00(m,1H),6.82−6.85(m,2H),7.13−7.17(m,2H)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のアシル基、アリル基、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、又は複素環基を示し、R2及びR3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基を示す。)で表される2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの光学異性体混合物に、該化合物の不斉加水分解能を有する酵素を作用させることを特徴とする、一般式(2):
【化2】

(式中、R1及びR2は前記と同じ基を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸またはその塩、およびその対掌体をなす一般式(3):
【化3】

(式中、R1、R2及びR3は前記と同じ基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
1が炭素数1〜10のアルキル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
1がメチル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
2及びR3が炭素数1〜10のアルキル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
不斉加水分解能を有する酵素が2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルのS体を優先的に加水分解する酵素であり、生成する光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸またはその塩の立体配置がS体であり、且つ光学活性2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステルの立体配置がR体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
酵素が、微生物、動物または植物起源のリパーゼ、エステラーゼもしくはプロテアーゼである請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
酵素が、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、キャンディダ(Candida)属、ゲオトリカム(Geotrichum)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾプス(Rhizopus)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、リゾパス(Rhizopus)属及びサーモマイセス(Thermomyces)属の微生物、豚膵臓もしくは小麦麦芽を起源とするリパーゼ、アスペルギルス(Aspergillus)属、バシラス(Bacillus)属もしくはリゾプス(Rhizopus)属の微生物もしくは牛膵臓を起源とするプロテアーゼ、アスペルギルス(Aspergillus)属の微生物を起源とするアシラーゼである請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
酵素が、キャンディダ(Candida)属由来のリパーゼである請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
酵素が、キャンディダ・シリンドラッシ(Candida cylindracea)もしくはキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)由来のリパーゼである請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
酵素が、リパーゼAYS(天野エンザイム社製)、リパーゼMY(名糖産業社製)もしくはリパーゼOF(名糖産業社製)である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
一般式(4):
【化4】

(式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R2及びR3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基を示す。)で表される2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸エステル。
【請求項12】
2位の絶対配置がRの光学活性体である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
1がメチル基、R2及びR3が炭素数1〜10のアルキル基である請求項11または12に記載の化合物。
【請求項14】
1、R2及びR3がメチル基である請求項11または12に記載の化合物。
【請求項15】
一般式(5):
【化5】

(式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R2は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基を示す。*は不斉炭素原子を示す。)で表される2−置換−3−(4−置換オキシフェニル)プロピオン酸またはその塩。
【請求項16】
2位の絶対配置がSの光学活性体である請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
1がメチル基、R2が炭素数1〜10のアルキル基である請求項15または16に記載の化合物。
【請求項18】
1及びR2がメチル基である請求項15または16に記載の化合物。