説明

光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の製造方法

【課題】本発明は、短工程で収率及び光学純度よく医薬中間体として有用な所望の光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】一般式(1)
【化1】


(式中、Rは保護基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるベンズアルデヒド類と一般式(2)
【化2】


(式中、Rはアルキル基を示し、Rは炭化水素基を示す。)で表されるグリコール酸誘導体とを反応させた後、加水分解して一般式(4)
【化3】


(式中、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類又はその塩を製造し、得られたけい皮酸類(4)又はその塩を不斉水素化反応に付して一般式(5)
【化4】


(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩を製造し、次いで脱保護することを特徴とする、一般式(6)
【化5】


(式中、R、R〜R及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬等の中間体として有用な光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類は、医薬等の中間体として有用であり、その製造法について種々検討が行われている。
例えば、特許文献1には、L−チロシンを塩化ベンジルと反応させてO−ベンジル−L−チロシンとし、このベンジル化したチロシンのアミノ基をジアゾ化してヒドロキシ基とした後、カルボキシ基及びヒドロキシ基をそれぞれエステル化及びアルキル化した後、加水分解して、得られる(S)−2−アルコキシ−3−(4−ベンジルオキシフェニル)プロピオン酸をキラル塩基で塩に変換し、得られたその塩をエステル化し、エステル化した生成物を脱保護する、(S)−2−アルコキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステルの製造方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、原料としてL−チロシンを用いているため、原料のL−チロシン中のアミノ基をジアゾ化しなければならない。したがって、このような方法は工業的な製造法ではない。
【0003】
非特許文献1及び2には、トリエチル 2−エトキシホスホノアセテートを4−ベンジルオキシベンズアルデヒドと反応させ、こうして得られる3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸エチルをパラジウム触媒の存在下で水素化反応させ、こうして得られるラセミ体の2−エトキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エチルを酵素で(S)−体のみを加水分解して光学分割する(S)−2−エトキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の製造方法が記載されている。
しかしながら、これらの文献に記載の方法では、一旦ラセミ体を製造した後、酵素で加水分解及び光学分割をしなければならないのみならず、また、基質によって酵素を選択しなければならず、しかも(S)−体のみを加水分解する酵素を使用しなければならない、という問題点を有していた。
【0004】
特許文献2及び非特許文献3には、α位の炭素原子のヒドロキシ基がアセチル基又はベンゾイル基で保護されたα,β−不飽和カルボン酸エステル類をロジウム触媒とビスホスホラン配位子とを用いて不斉水素化反応させる方法が記載されている。
しかしながら、上記の方法では、金属と配位子とが限定されてしまうという問題点を有している。また、前記ヒドロキシ基は、アセチル基又はベンゾイル基で保護されており、このヒドロキシ基にメチル基等のアルキル基を導入するためには、これらアセチル基又はベンゾイル基を脱保護してからメチル基等のアルキル基を導入しなければならない、という問題点を有している。
【特許文献1】WO02/24625号
【特許文献2】US5559267号
【非特許文献1】J.Med.Chem.Vol.46,No.8,1306(2003).
【非特許文献2】Organic Process Research & Development,7(1)82(2003).
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc., Vol.120,No.18,4345(1998).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、短工程で高収率及び高光学純度で医薬中間体として有用な所望の光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の製造方法について鋭意検討を行った結果、中間体としてけい皮酸類を経由することにより、目的化合物を短工程かつ高収率及び高光学純度で製造できることを見出した。本発明は、こうした知見に基づき達成された。
【0007】
即ち、本発明は以下の通りである。
1)一般式(1)
【化1】

(式中、Rは保護基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるベンズアルデヒド類と一般式(2)
【化2】

(式中、Rはアルキル基を示し、Rは炭化水素基を示す。)で表されるグリコール酸誘導体とを反応させた後、得られた生成物を加水分解して一般式(4)
【化3】

(式中、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類又はその塩を製造し、そしてその得られたけい皮酸類(4)又はその塩を不斉水素化反応に付して一般式(5)
【化4】

(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩を製造し、次いで脱保護することを特徴とする、一般式(6)
【化5】

(式中、R、R〜R及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法、
2)一般式(1)
【化6】

(式中、Rは保護基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるベンズアルデヒド類と一般式(2)
【化7】

(式中、Rはアルキル基を示し、Rは炭化水素基を示す。)で表されるグリコール酸誘導体とを反応させた後、加水分解して一般式(4)
【化8】

(式中、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類又はその塩を製造し、そしてそのけい皮酸類(4)又はその塩を不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(6)
【化9】

(式中、*は不斉炭素を示し、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法、
3)一般式(7)
【化10】

(式中、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表される4−ヒドロキシベンズアルデヒド類と一般式(2)
【化11】

(式中、Rはアルキル基を示し、Rは炭化水素基を示す。)で表されるグリコール酸誘導体とを反応させた後、加水分解して一般式(9)
【化12】

(式中、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類又はその塩を製造し、そしてその4−ヒドロキシけい皮酸類(9)又はその塩を不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(6)
【化13】

(式中、*は不斉炭素を示し、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法、
4)不斉水素化反応が、不斉触媒の存在下で行われることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の製造方法、
5)不斉触媒が、遷移金属錯体であることを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載の製造方法、
6)遷移金属錯体が、周期表の第8〜10族の金属の錯体であることを特徴とする上記5)に記載の製造方法、
7)一般式(11)
【化14】

(式中、R11及びR12は夫々独立して水素原子又は置換基を示し、R13は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は金属原子を示し、R14は水素原子又は保護基を示す。)で表されるα,β−不飽和カルボン酸類又はその塩を遷移金属錯体の存在下で不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(12)
【化15】

(式中、*は不斉炭素を示し、R11〜R14は前記と同意義を有する。)で表される光学活性カルボン酸類又はその塩の製造方法、但し、遷移金属錯体がロジウムのものであるとき、前記一般式(11)中のR14で示される保護基はアシル基以外の基である、
8)遷移金属錯体が、周期表の第8〜10族の金属の錯体であることを特徴とする上記7)に記載の製造方法、
9)不斉触媒が、不斉配位子と遷移金属化合物の混合物であることを特徴とする上記1)又は3)に記載の製造方法、
10)上記1)〜3)のいずれかに記載の方法で得られる一般式(5)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩を、溶媒から結晶化させることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の製造方法、
11)結晶化に使用する溶媒が、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、水及びそれらの混合物からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする上記10)に記載の製造方法、
12)上記1)〜3)のいずれかに記載の製造方法で得られる一般式(6)で表される光学活性な3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩を、溶媒から結晶化させることを特徴とする上記1)〜3)に記載の製造方法、
13)結晶化に使用する溶媒が、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、水及びそれらの混合物からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする上記12)に記載の製造方法、
14)一般式(4)
【化16】

(式中、Rは保護基を示し、Rはアルキル基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるけい皮酸類又はその塩を、不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(5)
【化17】

(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩の製造方法、
15)一般式(4)
【化18】

(式中、Rはアルキル基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるけい皮酸類又はその塩を、不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(6)
【化19】

(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法、
16)一般式(9)
【化20】

(式中、Rはアルキル基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類又はその塩を、不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(6)
【化21】

(式中、*は不斉炭素を示し、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法、
17)一般式(4)
【化22】

(式中、Rは保護基を示し、Rはアルキル基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるけい皮酸類又はその塩を不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(6)
【化23】

(式中、*は不斉炭素を示し、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩、及び一般式(5)
【化24】

(式中、R、R、R〜R及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩の製造方法、及び
18)一般式(1)
【化25】

(式中、Rは保護基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるベンズアルデヒド類と、一般式(2)
【化26】

(式中、Rはアルキル基を示し、Rは炭化水素基を示す。)で表されるグリコール酸誘導体とを反応させ、得られた生成物を加水分解して一般式(4)
【化27】

(式中、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類又はその塩を製造し、そしてそのけい皮酸類(4)又はその塩を不斉水素化反応に付して、一般式(5)
【化28】

(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩、及び一般式(6)
【化29】

(式中、R、R〜R及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩を製造し、ついで脱保護することを特徴とする、一般式(6)
【化30】

(式中、R、R〜Rは及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類を短工程で高収率及び高光学純度で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
で示される保護基としては、例えば「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION(JOHN WILEY & SONS、INC.(1999)」にヒドロキシ保護基として記載されている基等が挙げられる。そのようなヒドロキシ保護基の具体例としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、アシル基、置換アシル基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、置換アラルキルオキシカルボニル基、複素環基、置換複素環基、置換シリル基、スルホニル基等が挙げられる。
【0010】
アルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、そのようなアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、そのようなアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記アリール基で置換された基が挙げられ、そのようなアラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基等が挙げられる。
アシル基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい。例えば、脂肪族カルボン酸類、芳香族カルボン酸類等のカルボン酸由来の炭素数1〜20のアシル基が挙げられる。そのようなアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ラウロイル基、ステアロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0011】
アルコキシカルボニル基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい。例えば炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が挙げられる。そのようなアルコキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、2−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ラウリルオキシカルボニル基、ステアリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、例えば炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基が挙げられ、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
アラルキルオキシカルボニル基としては、例えば炭素数8〜15のアラルキルオキシカルボニル基が挙げられ、そのようなアラルキルオキシカルボニル基の具体例としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェニルエトキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0012】
複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。
脂肪族複素環基としては、例えば、炭素数2〜14で、ヘテロ原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環の脂肪族複素環基、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。そのような脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、2−オキソ−ピロリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、モルホリニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば、炭素数2〜15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式ヘテロアリール基、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられる。そのような芳香族複素環基の具体例としては、例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、アクリジル基、アクリジニル基等が挙げられる。
【0013】
スルホニル基としては、例えばR−SO−(Rは炭化水素基、置換炭化水素基又は置換アミノ基を示す。)で表される置換スルホニル基が挙げられる。上記炭化水素基、置換炭化水素基及び置換アミノ基については後述する各基と同じであってよい。そのようなスルホニル基の具体例としては、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、−SON(CH等が挙げられる。
【0014】
置換シリル基としては、シリル基の3個の水素原子がアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、置換シリル基等の炭化水素基等の置換基で置換されたトリ置換シリル基が挙げられる。当該アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、置換シリル基は、上記で説明した各基と同じである。置換アルキル基、置換アリール基、置換アラルキル基、置換アルコキシ基については後述する。そのような置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、tert−ブチルメトキシフェニル基、tert−ブトキシジフェニルシリル基等が挙げられる。
【0015】
置換アルキル基、置換アリール基、置換アラルキル基、置換アシル基、置換アルコキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基、置換アラルキルオキシカルボニル基及び置換複素環基は、前記各基における少なくとも1個の水素原子が置換基で置換された基が挙げられる。
置換基としては、炭化水素基、置換炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、複素環基、置換複素環基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アラルキルオキシ基、置換アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、アシル基、置換アシル基、アルコキシ基、置換アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、置換アラルキルオキシカルボニル基、アルキレンジオキシ基、ニトロ基、置換アミノ基、シアノ基、スルホニル基、置換シリル基等が挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が好ましい。アルキル基、アリール基、アラルキル基は上記で説明した各基と同じである。
【0016】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素基は、上記炭化水素基の少なくとも1個の水素原子がハロゲン化(例えばフッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化等)された基が挙げられる。そのようなハロゲン化炭化水素基の具体例としては、例えば、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基が挙げられ、その具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、3−ブロモプロピル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基、フルオロペンチル基、フルオロヘキシル基、フルオロヘプチル基、フルオロオクチル基、フルオロノニル基、フルオロデシル基、ジフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、フルオロシクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロイソペンチル基、ペルフルオロ−tert−ペンチル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基、ペルフルオロイソヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、2−ペルフルオロオクチルエチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
アルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい。例えば炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。そのようなアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、5−メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。置換アルコキシ基としては、前記アルコキシ基の少なくとも1個の水素原子が上記置換基で置換されたアルコキシ基が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数6〜20のアリールオキシ基が挙げられ、そのようなアリールオキシ基の具体例としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられる。置換アリールオキシ基としては、前記アリールオキシ基の少なくとも1個の水素原子が上記置換基で置換されたアリールオキシ基が挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、例えば炭素数7〜20のアラルキルオキシ基が挙げられる。そのようなアラルキルオキシ基の具体例としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、1−フェニルブトキシ基、2−フェニルブトキシ基、3−フェニルブトキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−フェニルペンチルオキシ基、2−フェニルペンチルオキシ基、3−フェニルペンチルオキシ基、4−フェニルペンチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、1−フェニルヘキシルオキシ基、2−フェニルヘキシルオキシ基、3−フェニルヘキシルオキシ基、4−フェニルヘキシルオキシ基、5−フェニルヘキシルオキシ基、6−フェニルヘキシルオキシ基等が挙げられる。置換アラルキルオキシ基としては、前記アラルキルオキシ基の少なくとも1個の水素原子が上記置換基で置換されたアラルキルオキシ基が挙げられる。
【0018】
複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、スルホニル基、置換シリル基は上記で説明した各基と同じである。
アシルオキシ基としては、脂肪族カルボン酸類、芳香族カルボン酸類等のカルボン酸由来の例えば炭素数2〜20のアシルオキシ基が挙げられる。そのようなアシルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
置換アミノ基としては、アミノ基の1個又は2個の水素原子が保護基等の置換基で置換されたアミノ基が挙げられる。保護基としては、アミノ保護基として用いられるものであれば何れも使用可能であり、例えば「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION(JOHN WILEY & SONS、INC.(1999)」にアミノ保護基として記載されているものが挙げられる。そのようなアミノ保護基の具体例としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、スルホニル基等が挙げられる。
上記アミノ保護基におけるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は上記炭化水素基で説明した各基と同じである。また、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びアラルキルオキシカルボニル基も上記で説明した各基と同じである。
上記アミノ保護基としてのスルホニル基としては、上記置換基におけるスルホニル基と同意義であってよい。
【0020】
アルキル基で置換されたアミノ基、即ちアルキル基置換アミノ基の具体例としては、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基が挙げられる。アリール基で置換されたアミノ基、即ちアリール基置換アミノ基の具体例としては、N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基が挙げられる。アラルキル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキル基置換アミノ基の具体例としては、例えばN−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基が挙げられる。アシル基で置換されたアミノ基、即ちアシルアミノ基の具体例としては、例えばホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ヘキサノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基で置換されたアミノ基、即ちアルコキシカルボニルアミノ基の具体例としては、例えばメトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、n−ブトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ペンチルオキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0021】
アリールオキシカルボニル基で置換されたアミノ基、即ちアリールオキシカルボニルアミノ基の具体例としては、例えばアミノ基の1個の水素原子が前記したアリールオキシカルボニル基で置換されたアミノ基が挙げられ、その具体例としてフェノキシカルボニルアミノ基、ナフチルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
アラルキルオキシカルボニル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキルオキシカルボニルアミノ基の具体例としては、例えばベンジルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
スルホニル基置換アミノ基の具体例としては、−NHSOCH、−NHSO、−NHSOCH、−NHSOCF、−NHSON(CH等が挙げられる。
【0022】
置換基がアルキレンジオキシ基である場合は、例えば上記アリール基やアラルキル基中の芳香環の隣接した2個の水素原子がアルキレンジオキシ基で置換されて形成される。アルキレンジオキシ基としては、例えば炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、そのようなアルキレンジオキシ基の具体例としては、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基等が挙げられる。
置換炭化水素基、置換複素環基、置換アルコキシ基、置換アラルキルオキシ基、置換アリールオキシ基、置換アシル基、置換アシルオキシ基、置換アルコキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基及び置換アラルキルオキシカルボニル基は、上記炭化水素基、複素環基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びアラルキルオキシカルボニル基の夫々の少なくとも1個の水素原子が上記置換基で置換された各基が挙げられる。
【0023】
で示されるアルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でもよい、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。そのようなアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
で示される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が好ましい。アルキル基、アリール基、アラルキル基は上記で説明した各基と同じである。
〜Rで示される置換基としては、炭化水素基、置換炭化水素基、複素環基、置換複素環基等が挙げられる。炭化水素基、置換炭化水素基、複素環基、置換複素環基は、上記Rにおける保護基で説明した各基と同意義であってよい。
【0024】
本発明で用いられる上記一般式(1)で表されるベンズアルデヒド類(以下、必要に応じて、ベンズアルデヒド(1)、と云う。)の具体例としては、4−ベンジルオキシベンズアルデヒド、4−tert−ブトキシベンズアルデヒド、4−ベンジルオキシ−3−メチルベンズアルデヒド、4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、4−[2−(9H−アクリジン−10−イル)エトキシ]ベンズアルデヒド、4−[3−(4−フェノキシフェノキシ)プロポキシ]ベンズアルデヒド、4−(2−ブロモエトキシ)ベンズアルデヒド、4−(2−クロロエトキシ)ベンズアルデヒド、4−(2−クロロプロポキシ)ベンズアルデヒド、4−(2−ヨードエトキシ)ベンズアルデヒド、4−(2−ヨードプロポキシ)ベンズアルデヒド、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンズアルデヒド、4−(2−ヒドロキシプロポキシ)ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる上記一般式(2)で表されるグリコール酸誘導体(以下、必要に応じて、グリコール酸誘導体(2)、と云う。)の具体例としては、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸イソプロピル、メトキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸tert−ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸イソプロピル、エトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸tert−ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸イソプロピル、プロポキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸tert−ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸イソプロピル、ブトキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸tert−ブチル、tert−ブトキシ酢酸メチル、tert−ブトキシ酢酸エチル、tert−ブトキシ酢酸プロピル、tert−ブトキシ酢酸イソプロピル、tert−ブトキシ酢酸ブチル、tert−ブトキシ酢酸tert−ブチル、イソプロポキシ酢酸メチル、イソプロポキシ酢酸エチル、イソプロポキシ酢酸プロピル、イソプロポキシ酢酸イソプロピル、イソプロポキシ酢酸ブチル、イソプロポキシ酢酸tert−ブチル等が挙げられる。
【0026】
本発明で用いられる上記一般式(4)で表されるけい皮酸類又はその塩(以下、必要に応じて、けい皮酸類(4)、と云う。)における、上記一般式(4)で表されるけい皮酸類の具体例としては、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−イソプロポキシアクリル酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−tert−ブトキシアクリル酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−tert−ブトキシアクリル酸、3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸、3−(4−ベンジルオキシ−3−メチルフェニル)−2−メトキシアクリル酸、2−メトキシ−3−{4−[3−(4−フェノキシフェノキシ)−プロポキシフェニル]アクリル酸、3−{4−[2−(9H−アクリジン−10−イル)エトキシ]フェニル}−2−メトキシアクリル酸、3−[4−(2−ブロモエトキシ)フェニル]−2−メトキシアクリル酸、3−[4−(2−ブロモプロポキシ)フェニル]−2−メトキシアクリル酸、3−[4−(2−クロロエトキシ)フェニル]−2−メトキシアクリル酸、3−[4−(2−クロロプロポキシ)フェニル]−2−メトキシアクリル酸、3−[4−(2−ヨードエトキシ)フェニル]−2−メトキシアクリル酸、3−[4−(2−ヨードプロポキシ)フェニル]−2−メトキシアクリル酸、3−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メトキシアクリル酸、3−[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メトキシアクリル酸等が挙げられる。
【0027】
一般式(4)で表されるけい皮酸類の塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等の金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩を構造式で表すと、例えば、一般式(4−1)
【化31】

(式中、Rはアルカリ金属又はアルカリ土類金属等の金属原子を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等の金属塩、一般式(4−2)
【化32】

(式中、Xはアミンを示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類のアミン塩等で示される。
【0028】
で示されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム等が挙げられる。
で示されるアミンとしては、アンモニア、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ヘキサデシルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン等の脂肪族アミン類、例えば、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミン類、例えばピペリジン等の飽和複素環アミン類等が挙げられる。
【0029】
一般式(4−1)で表されるけい皮酸類のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等の金属塩の具体例としては、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ナトリウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸リチウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸カリウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ルビジウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸セシウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ベリリウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸マグネシウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸カリウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ストロンチウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸バリウム等が挙げられる。
【0030】
一般式(4−2)で表されるけい皮酸類のアミン塩の具体例としては、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のメチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のエチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のプロピルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のブチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のシクロヘキシルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のジエチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のジイソプロピルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のトリメチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のトリエチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のトリブチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のピリジニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のジメチルアミノピリジニウム塩等が挙げられる。
【0031】
本発明で用いられる一般式(5)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩(以下、必要に応じて、光学活性フェニルプロピオン酸類(5)、と云う。)における、上記一般式(5)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類の具体例としては、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−エトキシプロピオン酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−プロポキシプロピオン酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−イソプロポキシプロピオン酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−ブトキシプロピオン酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−tert−ブトキシプロピオン酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル−3−メトキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸、3−(4−ベンジルオキシ−3−メチルフェニル)−2−メトキシプロピオン酸、2−メトキシ−3−{4−[3−(4−フェノキシフェノキシ)プロポキシフェニル]プロピオン酸、3−{4−[2−(9H−アクリジン−10−イル)エトキシ]フェニル}−2−メトキシプロピオン酸等が挙げられる。
【0032】
一般式(5)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類の塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等の金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩を構造式で表すと、一般式(5−1)
【化33】

(式中、R、R、R、R〜R及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等の金属塩、及び一般式(5−2)
【化34】

(式中、R、R、R〜R、X及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類のアミン塩等で示される。
【0033】
一般式(5−1)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩等の金属塩の具体例としては、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸リチウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸カリウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ルビジウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸セシウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ベリリウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸マグネシウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸カリウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ストロンチウム、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸バリウム等が挙げられる。
【0034】
一般式(5−2)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類のアミン塩の具体例としては、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のメチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のエチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のプロピルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のブチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のシクロヘキシルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のジメチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のジエチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のジイソプロピルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のトリメチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のトリエチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のトリブチルアンモニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のピリジニウム塩、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のジメチルアミノピリジニウム塩等が挙げられる。
【0035】
本発明で用いられる上記一般式(7)で表される4−ヒドロキシベンズアルデヒド類(以下、必要に応じて、4−ヒドロキシベンズアルデヒド類(7)、と云う。)の具体例としては、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−メチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−メチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−エチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−エチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−ニトロ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ニトロ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−ニトロ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(9)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類又はその塩(以下、必要に応じて、4−ヒドロキシけい皮酸類(9)、と云う。)における上記一般式(9)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類の具体例としては、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−エトキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロポキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−イソプロポキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブトキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−tert−ブトキシプロピオン酸等が挙げられる。
【0037】
一般式(9)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類の塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等の金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩を構造式で表すと、一般式(9−1)
【化35】

(式中、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の金属塩、一般式(9−2)
【化36】

(式中、R、R〜R及びXは前記と同意義を有する。)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類のアミン塩等で示される。
【0038】
一般式(9−1)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等の金属塩の具体例としては、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ナトリウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸リチウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸カリウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ルビジウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸セシウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ベリリウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸マグネシウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸カルシウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ストロンチウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸バリウム等が挙げられる。
【0039】
一般式(9−2)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類のアミン塩の具体例としては、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のメチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のエチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のプロピルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のブチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のシクロヘキシルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のジメチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のジエチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のジイソプロピルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のトリメチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のトリエチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のトリブチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のピリジニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸のジメチルアミノピリジニウム塩等が挙げられる。
【0040】
本発明の製造方法で得られる上記一般式(6)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩(以下、必要に応じて、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)、と云う。)における、一般式(6)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の具体例としては、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−エトキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロオキシフェニル)−2−プロポキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−イソプロポキシキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブトキシプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−tert−ブトキシプロピオン酸等が挙げられる。
【0041】
一般式(6)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等の金属塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩を構造式で表すと、一般式(6−1)
【化37】

(式中、R、R、R、R〜R及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等の金属塩、一般式(6−2)
【化38】

(式中、R、R、R〜R、X及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類のアミン塩等で示される。
【0042】
一般式(6−1)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等の金属塩の具体例としては、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸リチウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸カリウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ルビジウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸セシウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ベリリウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸マグネシウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸カルシウム、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ストロンチウム、3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−2−メトキシプロピオン酸バリウム等が挙げられる。
【0043】
一般式(6−2)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類のアミン塩の具体例としては、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のメチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のエチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のプロピルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のブチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のシクロヘキシルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のジメチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のジエチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のジイソプロピルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のトリメチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のトリエチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のトリブチルアンモニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のピリジニウム塩、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸のジメチルアミノピリジニウム塩等が挙げられる。
【0044】
本発明の製造方法を下記スキームを用いて説明する。
スキーム1
【化39】

【0045】
一般式(4)で表されるけい皮酸類又はその塩は、一般式(1)で表されるベンズアルデヒド類とグリコール酸誘導体(2)とを適当な溶媒中、塩基の存在下で反応させた後、加水分解することにより製造することができる。
グリコール酸誘導体(2)の使用量は、一般式(1)で表されるベンズアルデヒド類に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲から適宜選択される。
【0046】
溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル等の含シアノ有機化合物類等が挙げられる。これら溶媒は、夫々単独で用いても二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量は、ベンズアルデヒド類(1)に対して、通常0.1〜100倍量、好ましくは1〜20倍量の範囲から適宜選択される。
【0047】
塩基としては、無機塩基、有機塩基等が挙げられる。無機塩基としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。有機塩基としては、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムtert−ブトキシド、カリウムナフタレニド、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ/アルカリ土類金属の塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン等の有機アミン類;水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等の金属水素化物類;臭化メチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、臭化プロピルマグネシウム、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等の有機金属化合物類、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
塩基の使用量は、グリコール酸誘導体(2)に対して、通常0.01〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲から適宜選択される。
【0048】
反応温度は、通常0℃〜使用する溶媒の沸点、好ましくは20〜80℃の範囲から適宜選択される。
反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは1〜10時間の範囲から適宜選択される。
【0049】
ベンズアルデヒド類(1)とグリコール酸誘導体(2)との反応は、任意の後処理及び精製をした後に、あるいは後処理及び精製を経ることなく、一般式(3)
【化40】

(式中、R、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸エステル類(以下、必要に応じて、けい皮酸エステル類(3)、と云う。)を単離した後、加水分解することによりけい皮酸類(4)を製造してもよい。あるいは、けい皮酸エステル類(3)を単離せずに、水、アルコール及び/又は上記塩基を加えて加水分解してもよい。
加水分解は、当該分野で通常用いられている方法によって実施することができる。
【0050】
加水分解は、例えば、けい皮酸エステル類(3)をアルコール中で水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の上記塩基のアルカリ水溶液の存在下、あるいは、アルコールと水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の上記塩基との混合物中でも加水分解を実施することができる。
【0051】
アルコールの具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール等が挙げられる。
塩基の使用量は、けい皮酸エステル類(3)に対して、通常0.1〜10倍量、好ましくは1〜5倍量の範囲から適宜選択される。
水の使用量は、けい皮酸エステル類(3)に対して、通常0.1〜100倍量、好ましくは1〜20倍量の範囲から適宜選択される。
アルコールの使用量は、けい皮酸エステル類(3)に対して、通常0.1〜100倍量、好ましくは1〜20倍量の範囲から適宜選択される。
加水分解の温度は、通常0℃〜使用する溶媒の沸点、好ましくは20〜60℃の範囲から適宜選択される。
加水分解の時間は、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間の範囲から適宜選択される。
【0052】
けい皮酸エステル類(3)の具体例としては、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸メチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸エチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸プロピル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ブチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸tert−ブチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸メチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸エチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸プロピル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸ブチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸tert−ブチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸メチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸エチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸プロピル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸ブチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸tert−ブチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸メチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸エチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸プロピル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸ブチル、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸tert−ブチル等が挙げられる。
【0053】
得られた一般式(4)で表されるけい皮酸類又はその塩は、カルボキシ基フリーの一般式(4)で表されるけい皮酸類、及び一般式(4−1)で表されるけい皮酸類の金属塩及び/又は一般式(4−2)で表されるけい皮酸類のアミン塩との混合物であってもよい。
また、得られた一般式(4)で表されるけい皮酸類は、必要に応じて、上記塩基の水溶液を用いて、前記一般式(4)で表されるけい皮酸類を上記一般式(4−1)で表されるけい皮酸類の金属塩又は一般式(4−2)で表されるけい皮酸類のアミン塩としても、あるいは一般式(4)で表されるけい皮酸類の塩とは異なる塩を形成させてもよい。
尚、けい皮酸類(4)は、必要に応じて後処理を行ってもよく、あるいは何らの後処理、単離をすることなく次の反応に付してもよい。
【0054】
光学活性フェニルプロピオン酸類(5)は、けい皮酸類(4)を不斉水素化反応させることにより製造することができる。
不斉水素化反応は、不斉触媒の存在下で行うことにより、光学活性フェニルプロピオン酸類(5)を効率よくかつ不斉収率よく得ることができる。不斉触媒は、不斉水素化触媒が好ましい。
不斉水素化触媒は、不斉遷移金属錯体が好ましく用いられる。前記不斉遷移金属錯体は、遷移金属と不斉配位子とを含有する錯体が好ましく用いられ、また、該不斉遷移金属錯体はin situで水素化反応に用いてもよい。
前記遷移金属錯体における遷移金属は、元素周期表の第8〜10族の金属が好ましい。
【0055】
遷移金属錯体としては、例えば下記一般式(13)又は(14)で表される化合物が挙げられる。
(13)
[M]Z (14)
上記式中、Mは元素周期表の第8〜10族の遷移金属を示し、Lは不斉配位子を示し、Xはハロゲン原子、カルボキシラート基、アリル基、1,5−シクロオクタジエン基又はノルボルナジエン基を示し、Yは配位子を示し、Zはアニオン又はカチオンを示し、m、n、p、q及びsは0〜5の整数を示す。
【0056】
一般式(13)及び(14)において、Mで示される元素周期表の第8〜10族の遷移金属としては、同一又は異なって、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
Lで示される不斉配位子は、同一又は異なって、単座配位子、二座配位子等が挙げられる。好ましい不斉配位子は、光学活性ホスフィン配位子等が挙げられ、より好ましい不斉配位子は光学活性二座ホスフィン配位子等が挙げられる。
【0057】
光学活性二座ホスフィン配位子としては、例えば下記一般式(15)で表されるホスフィン化合物が挙げられる。
2122P−Q−PR2324 (15)
(式中、R21〜R24は夫々独立して、炭化水素基、置換炭化水素基、複素環基又は置換複素環基を示し、Qはスペーサーを示す。)
【0058】
21〜R24で示される炭化水素基、置換炭化水素基、複素環基又は置換複素環基としては、上記一般式(1)におけるR及びR〜Rで説明した各基と同意義であってよい。
Qで示されるスペーサーとしては、アルキレン基、アリーレン基等の置換基を有していてもよい2価の有機基等が挙げられる。
アルキレン基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられ、そのような基の具体例としてはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、例えば、炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられ、そのようなアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基等が挙げられる。これら2価の有機基は上記したような置換基で置換されていてもよい。また、前記2価の有機基は、該有機基の末端又は鎖中の任意の位置に酸素原子、カルボニル基等の基を少なくとも1個有していてもよい。
【0059】
そのような不斉配位子の具体例としては、シクロヘキシルアニシルメチルホスフィン(CAMP)、1,2−ビス(アニシルフェニルホスフィノ)エタン(DIPAMP)、1,2−ビス(アルキルメチルホスフィノ)エタン(BisP)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5−ノルボルネン(NORPHOS)、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DIOP)、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(CYCPHOS)、1−置換−3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ピロリジン(DEGPHOS)、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、1,2−ビス(置換ホスホラノ)ベンゼン(DuPHOS)、1,2−ビス(置換ホスホラノ)エタン(BPE)、1−(置換ホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(UCAP−Ph)、1−(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−(置換ホスホラノ)ベンゼン(UCAP−DM)、1−(置換ホスホラノ)−2−(ビス(3,5−ジ(t−ブチル)−4−メトキシフェニル)ホスフィノ)ベンゼン(UCAP−DTBM)、1−(置換ホスホラノ)−2−(ジ−ナフタレン−1−イル−ホスフィノ)ベンゼン(UCAP−(1−Nap))、1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン(BPPFA)、1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアルコール(BPPFOH)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ジシクロペンタン(BICP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−(5,5’,6,6’,7,7’,8,8’,−オクタヒドロビナフチル)(H−BINAP)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(TOL−BINAP)、2,2’−ビス(ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(DM−BINAP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル(BICHEP)、[4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール]−5,5’−ジイルビス[ジフェニルホスフィン](SEGPHOS)、[4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール]−5,5’−ジイルビス[ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン] (DM−SEGPHOS)、[(4S)−[4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール]−5,5’−ジイル]ビス[ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシフェニル]ホスフィン](DTBM−SEGPHOS)等が挙げられる。
上記光学活性二座ホスフィン配位子の他に、ビス複素環化合物も不斉配位子として使用可能である。
【0060】
Yで示される配位子としては、同一又は異なって、芳香族化合物、オレフィン化合物等の中性配位子、アミン類等が挙げられる。芳香族化合物の例としては、ベンゼン、p−シメン、1,3,5−トリメチルベンゼン(メシチレン)、ヘキサメチルベンゼン等が挙げられ;オレフィン化合物の例としては、エチレン、1,5−シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等が挙げられ;及びその他の中性配位子としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、クロロホルム等が挙げられる。
アミン類としては1,2−ジフェニルエチレンジアミン(DPEN)、1,2−シクロヘキシルエチレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、エチレンジアミン、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−イソプロピルエチレンジアミン(DAIPEN)等のジアミン類、トリエチルアミン等の脂肪族アミン類、ピリジン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
Xで示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0061】
一般式(14)において、Zはアニオン又はカチオンを示す。Zで示されるアニオンの具体例としては、BF、ClO、OTf、PF、SbF、BPh、Cl、Br、I、I、スルホネート等が挙げられる。ここで、Tfは、トリフラート基(SOCF)を示す。
カチオンは、例えば、下式
[(R)NH
(式中、2個のRは同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。)で表すことができる。
上記式中、Rで示される置換基を有していてもよい炭化水素基は、前記した置換基を有していてもよい炭化水素基と同じである。Rで示される置換基を有していてもよい炭化水素基としては、好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいベンジル基等が挙げられる。
上記式で表されるカチオンの具体例としては、例えば、[MeNH、[EtNH、[PrNH等が挙げられる。
【0062】
以下に、上記遷移金属錯体の好ましい態様を詳細に説明する。
[1]一般式(13)
(13)
1)MがIrあるいはRhのとき、XはCl、Br又はIであり、Lが単座配位子の場合にはm=p=2、n=4、q=0であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=p=2、q=0である。
2)MがRuのとき、(i)XはCl、Br又はIであり、Yはトリアルキルアミノ基を示し、Lが単座配位子の場合にはm=2、n=p=4、q=1であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=2、p=4、q=1であり、
(ii)XはCl、Br又はIを示し、Yはピリジル基あるいは環置換ピリジル基を示し、Lが単座配位子の場合にはm=1、n=p=2、q=2であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=1、p=2、q=2であり、
(iii)Xはカルボキシラート基であり、Lが単座配位子の場合にはm=1、n=p=2、q=0であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=1、p=2、q=0であり、及び
(iv)XはCl、Br又はIであり、Lが単座配位子の場合にはm=p=2、n=4、q=0であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=p=2、q=0である。
3)MがPdのとき、(i)XはCl、Br又はIであり、Lが単座配位子の場合にはm=1、n=2、p=2、q=0であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=1、p=2、q=0であり、及び
(ii)Xはアリル基であり、Lが単座配位子の場合にはm=p=2、n=4、q=0であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=p=2、q=0である。
4)MがNiのとき、XはCl、Br又はIであり、Lが単座配位子の場合にはm=1、n=2、p=2、q=0であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=1、p=2、q=0である。
【0063】
[2]一般式(14)
[M]Z (14)
1)MがIrあるいはRhのとき、Xは1,5−シクロオクタジエン又はノルボルナジエンであり、ZはBF、ClO、OTf、PF、SbF又はBPhであり、m=n=p=s=1、q=0又はm=s=1、n=2、p=q=0である。
2)MがRuのとき、(i)XはCl、Br又はIであり、Yは芳香族化合物、オレフィン化合物等の中性配位子を示し、ZはCl、Br、I、I又はスルホネートであり、Lが単座配位子の場合にはm=p=s=q=1、n=2であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=p=s=q=1であり、
(ii)ZはBF、ClO、OTf、PF、SbF又はBPhであり、Lが単座配位子の場合にはm=1、n=2、p=q=0、s=2であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=1、p=q=0、s=2であり、及び
(iii)Zがアンモニウムイオンであり、Lが二座配位子の場合には、m=2、n=2、p=5、q=0である。
3)MがPdあるいはNiのとき、(i)ZはBF、ClO、OTf、PF、SbF又はBPhであり、Lが単座配位子の場合にはm=1、n=2、p=q=0、s=2であり、Lが二座配位子の場合にはm=n=1、p=q=0、s=2である。
【0064】
これらの遷移金属錯体は、公知の方法を用いて製造することができる。
尚、以下に示す遷移金属錯体の式中で使用されている記号は、それぞれ、Lは不斉配位子を、codは1,5−シクロオクタジエンを、nbdはノルボルナジエンを、Tfはトリフラート基(SOCF)を、Phはフェニル基を、Acはアセチル基を夫々示す。そのような遷移金属錯体の具体例としては、煩雑さを避けるために、不斉配位子として二座配位子を用いた遷移金属錯体のみを例示する。
【0065】
ロジウム錯体:
ロジウム錯体は、日本化学会編「第4版 実験化学講座」、第18巻、有機金属錯体、339−344頁、1991年(丸善)等に記載の方法に従って製造することができる。具体的には、ロジウム錯体はビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ロジウム(I)テトラフルオロホウ酸塩と不斉配位子とを反応させることにより得ることができる。
ロジウム錯体の具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
[Rh(L)Cl]、[Rh(L)Br]、[Rh(L)I]、[Rh(cod)(L)]BF、[Rh(cod)(L)]ClO、[Rh(cod)(L)]PF、[Rh(cod)(L)]BPh、[Rh(cod)(L)]OTf、[Rh(nbd)(L)]BF、[Rh(nbd)(L)]ClO、[Rh(nbd)(L)]PF、[Rh(nbd)(L)]BPh、[Rh(nbd)(L)]OTf、[Rh(L)]ClO、[Rh(L)]PF、[Rh(L)]OTf及び[Rh(L)]BF
【0066】
ルテニウム錯体:
ルテニウム錯体は、文献(T.Ikariyaら,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1985,922)及びその他の文献等に記載の方法に従って得ることができる。具体的には、ルテニウム錯体は[Ru(cod)Clと不斉配位子とをトリエチルアミンの存在下、トルエン溶媒中で加熱還流することにより製造することができる。
また、文献(K.Mashimaら,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1989,1208)に記載の方法によっても得ることができる。具体的には、ルテニウム錯体は[Ru(p−cymene)Iと不斉配位子とを塩化メチレン及びエタノール中で加熱撹拌することにより得ることができる。そのようなルテニウム錯体の具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
Ru(OAc)(L)、RuCl(L)NEt、[RuCl(benzene)(L)]Cl、[RuBr(benzene)(L)]Br、[RuI(benzene)(L)]I、[RuCl(p−cymene)(L)]Cl、[RuBr(p−cymene)(L)]Br、[RuI(p−cymene)(L)]I、[Ru(L)](BF、[Ru(L)](ClO、[Ru(L)](PF、[Ru(L)](BPh、[Ru(L)](OTf)、Ru(OCOCF(L)、[{RuCl(L)}(μ−Cl)][MeNH]、[{RuCl(L)}(μ−Cl)][EtNH]、Ru(OCOCF(L)、[{RuCl(L)}(μ−Cl)][MeNH]、{RuBr(L)}(μ−Cl)][MeNH]、{RuBr(L)}(μ−Cl)][EtNH]、RuCl(L)、RuBr(L)、RuI(L)、RuCl(L)(diamine)、RuBr(L)(diamiine)、RuI(L)(diamine)、[{RuI(L)}(μ−I)][MeNH]、[{RuI(L)}(μ−I)][EtNH]、RuCl(L)(pyridine)、RuBr(L)(pyridine)及びRuI(L)(pyridine)。
【0067】
イリジウム錯体:
イリジウム錯体は、文献(K.Mashimaら,J.Organomet.Chem.,1992,428,213)及びその他の文献等に記載の方法に従って得ることができる。具体的には、イリジウム錯体は不斉配位子と[Ir(cod)(CHCN)]BFとを、テトラヒドロフラン中で撹拌反応させることにより得ることができる。
イリジウム錯体の具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
[Ir(L)Cl]、[Ir(L)Br]、[Ir(L)I]、[Ir(cod)(L)]BF、[Ir(cod)(L)]ClO、[Ir(cod)(L)]PF、[Ir(cod)(L)]BPh、[Ir(cod)(L)]OTf、[Ir(nbd)(L)]BF、[Ir(nbd)(L)]ClO、[Ir(nbd)(L)]PF、[Ir(nbd)(L)]BPh及び[Ir(nbd)(L)]OTf。
【0068】
パラジウム錯体:
パラジウム錯体は、文献(Y.Uozumiら,J.Am.Chem.Soc.,1991,9887)等に記載の方法に従って得ることができる。具体的には、パラジウム錯体は不斉配位子とπ−アリルパラジウムクロリドとを反応させることにより得ることができる。
パラジウム錯体の具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
PdCl(L)、(π−allyl)Pd(L)、[Pd(L)]BF、[Pd(L)]ClO、[Pd(L)]PF、[Pd(L)]BPh及び[Pd(L)]OTf。
【0069】
ニッケル錯体:
ニッケル錯体は、日本化学会編「第4版 実験化学講座」第18巻、有機金属錯体、376頁、1991年(丸善)及びその他の文献等に記載の方法により得ることができる。ニッケル錯体は、また、文献(Y.Uozumiら,J.Am.Chem.Soc., 1991,113,9887)に記載の方法に従って、不斉配位子と塩化ニッケルとを、2−プロパノールとメタノールの混合溶媒に溶解し、加熱撹拌することにより得ることができる。
ニッケル錯体の具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
NiCl(L)、NiBr(L)及びNiI(L)。
【0070】
上記遷移金属錯体は、市販品を用いても、自製品を用いてもよい。
これらの遷移金属錯体は、不斉配位子を遷移金属化合物と反応させることにより製造することができる。触媒として錯体を使用する場合には、遷移金属錯体は純度を高めた後に、あるいは精製することなく、すなわちin situで使用することができる。
【0071】
遷移金属化合物は、次式
[MX
(式中、M、X、L、m、n及びpは、前記と同意義を有する。)で表すことができる。上記式における、Ru、Rh及びIrの具体例を例示する。上記式の具体例としては、例えば、[RuCl(benzene)]、[RuBr(benzene)]、[RuI(benzene)]、[RuCl(p−cymene)]、[RuBr(p−cymene)]、[RuI(p−cymene)]、RuCl(hexamethylbenzene)]、[RuBr(hexamethylbenzene)]、[RuI(hexamethylbenzene)]、[RuCl(mesitylene)]、[RuBr(mesitylene)]、[RuI(mesitylene)]、[RuCl(pentamethylcyclopentadiene)]、[RuBr(pentamethylcyclopentadiene)]、[RuI(pentamethylcyclopentadiene)]、[RuCl(cod)]、[RuBr(cod)]、[RuI(cod)]、[RuCl(nbd)]、[RuBr(nbd)]、[RuI(nbd)]、RuCl水和物、RuBr水和物、RuI水和物、[RhCl(cyclopentadiene)]、[RhBr(cyclopentadiene)]、[RhI(cyclopentadiene)]、[RhCl(pentamethylcyclopentadiene)]、[RhBr(pentamethylcyclopentadiene)]、[RhI(pentamethylcyclopentadiene)]、[RhCl(cod)]、[RhBr(cod)]、[RhI(cod)]、[RhCl(nbd)]、[RhBr(nbd)]、[RhI(nbd)]、RhCl水和物、RhBr水和物、RhI水和物、[IrCl(cyclopentadiene)]、[IrBr(cyclopentadiene)]、[IrI(cyclopentadiene)]、[IrCl(pentamethylcyclopentadiene)]、[IrBr(pentamethylcyclopentadiene)]、[IrI(pentamethylcyclopentadiene)]、[IrCl(cod)]、[IrBr(cod)]、[IrI(cod)]、[IrCl(nbd)]、[IrBr(nbd)]、[IrI(nbd)]、IrCl水和物、IrBr水和物及びIrI水和物。
【0072】
本発明で用いられる遷移金属錯体は、中でも不斉配位子を有する錯体がより好ましく用いられ、該不斉配位子が、上記した不斉ホスフィン配位子である遷移金属錯体が更に好ましく用いられる。
【0073】
不斉触媒の使用量は、用いる上記一般式(4)で表されるけい皮酸類、使用する反応容器や反応の形式あるいは経済性などによって異なるが、けい皮酸類(4)に対して、モル比で通常1/10〜1/100,000、好ましくは1/50〜1/10,000の範囲から適宜選択される。
【0074】
水素ガスの圧力は、水素雰囲気下であればよく、0.1MPaでも十分であるが、経済性等を考慮すると通常0.1〜20MPa、好ましくは0.2〜10MPaの範囲から適宜選択される。また、経済性を考慮して1MPa以下でも高い活性を維持することが可能である。
【0075】
不斉水素化反応は、必要に応じて溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル;N−メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;水等が挙げられる。これら溶媒は、夫々単独で用いても、2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量は、用いる反応基質であるけい皮酸類(4)の溶解度や経済性により判断される。例えば溶媒としてアルコール類を用いた場合には、用いるけい皮酸類(4)によっては1%以下の低濃度から無溶媒あるいは無溶媒に近い状態で行うことができる。けい皮酸類(4)の濃度は、通常5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の範囲となるように適宜選択される。
【0076】
反応温度は、経済性等を考慮して、通常15〜100℃、好ましくは20〜80℃の範囲から適宜選択される。また、反応温度は、−30〜0℃の低温でも、あるいは100〜250℃の高温でも反応を実施することができる。
反応時間は、用いる不斉水素化触媒の種類や使用量、けい皮酸類(4)の種類や濃度、反応温度、水素の圧力等の反応条件等により異なるが、数分から数時間の間で反応は完結するが、通常1分〜48時間、好ましくは10分〜24時間の範囲から適宜選択される。
本発明の不斉水素化反応は、反応形式がバッチ式においても連続式においても実施することができる。
【0077】
上記方法により得られた光学活性フェニルプロピオン酸類(5)は、必要に応じて、種々の方法により、より高い光学純度及び/又はより高い化学純度の光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩に変換することができる。
そのような種々の方法としては、例えば、結晶化、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。
結晶化は当該分野で用いられている常法により実施することができる。
結晶化で使用される溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類等の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;アセトニトリル;N−メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;水等が挙げられる。これら溶媒は、夫々単独で用いても、2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素等の炭化水素系溶媒、アルコール類、ケトン類、水及びこれらの混合物が好ましい。
【0078】
ここで使用する「より高い光学純度」とは、上記方法により得られる光学活性フェニルプロピオン酸類(5)あるいは光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)の光学純度よりも高い純度、すなわち実質的に100%eeを意味する。ここで、「実質的に100%ee」とは、他の鏡像体に対する一方の鏡像体が殆ど検出されない光学純度を意味する。本発明ではそのような「実質的に100%ee」とは、具体的には、95%ee以上、好ましくは97%ee以上、より好ましくは98%ee以上、更に好ましくは99%ee以上の光学純度を意味する。
また、「より高い化学純度」とは、上記方法により得られる光学活性フェニルプロピオン酸類(5)あるいは光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)の化学純度よりも高い純度、すなわち実質的に100%の化学純度を意味する。ここで、「実質的に100%の化学純度」とは、他の如何なる化合物も殆ど検出されない化学純度を意味する。本発明ではそのような「実質的に100%の化学純度」とは、具体的には、95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上の化学純度を意味する。
【0079】
上記不斉水素化反応により得られた光学活性フェニルプロピオン酸類(5)は、脱保護させることにより、所望の光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)を得ることができる。
脱保護は、常法により行うことができる。例えば、そのような脱保護は、上記「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION(JOHN WILEY & SONS,INC.(1999)」や「ペプチド合成の基礎と実験(丸善(株)、1985年)」、「第4版 実験化学講座18 有機金属錯体 339−344頁 1991年 丸善(株)」等に記載の方法で行うことができる。具体的には、保護基がベンジル基の場合、そのような保護基はパラジウム炭素を用いた接触水添反応により除去される。
反応温度は、通常0℃〜使用する溶媒の沸点、好ましくは20〜80℃の範囲から適宜選択される。
反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは1〜10時間の範囲から適宜選択される。
【0080】
2)スキーム2
【化41】

【0081】
光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)は、上記スキーム1で説明したようにしてけい皮酸類(4)を製造し、得られたけい皮酸類(4)を不斉水素化反応させることにより製造することができる。
スキーム2のこの方法では、不斉水素化反応と脱保護反応とを同時に行うことができる。
本発明で用いられる不斉水素化反応用触媒の種類や使用量、反応条件等は、上記スキーム1で説明したそれらと同様である。
【0082】
3)スキーム3
【化42】

【0083】
4−ヒドロキシけい皮酸類(9)は、4−ヒドロキシベンズアルデヒド類(7)とグリコール酸誘導体(2)とを適当な溶媒中、塩基の存在下で反応させた後、加水分解することにより製造することができる。
溶媒、塩基及び反応温度、反応時間等の反応条件等は、上記スキーム1で説明したそれらと同様である。
溶媒の使用量は、4−ヒドロキシベンズアルデヒド類(7)に対して、通常0.1〜100倍量、好ましくは1〜20倍量の範囲から適宜選択される。
塩基の使用量は、グリコール酸誘導体(2)に対して、通常0.01〜10倍、好ましくは1〜5倍の範囲から適宜選択される。
【0084】
4−ヒドロキシけい皮酸類(9)は、4−ヒドロキシベンズアルデヒド類(7)とグリコール酸誘導体(2)とを反応させ、生成物を必要に応じて後処理及び精製等を行い、一般式(8)
【化43】

(式中、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される4−ヒドロキシけい皮酸エステル類(以下、必要に応じて、4−ヒドロキシけい皮酸エステル類(8)、と云う。)を単離した後、加水分解して製造することができる。あるいは、4−ヒドロキシけい皮酸エステル類(8)を単離せずに、水、アルコール及び/又は上記塩基を加えて加水分解を行ってもよい。
【0085】
4−ヒドロキシけい皮酸エステル類(8)の具体例としては、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸メチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸エチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸プロピル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ブチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸tert−ブチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸メチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸エチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸プロピル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸ブチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−エトキシアクリル酸tert−ブチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸メチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸エチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸プロピル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸ブチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロポキシアクリル酸tert−ブチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸メチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸エチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸プロピル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸ブチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブトキシアクリル酸tert−ブチル等が挙げられる。
【0086】
得られた4−ヒドロキシけい皮酸類(9)は、カルボキシ基フリーの一般式(9)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類、及び一般式(9−1)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類の金属塩及び/又は一般式(9−2)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類のアミン塩との混合物であってもよい。
また、得られた4−ヒドロキシけい皮酸類(9)は、必要に応じて、上記塩基を用いて、前記一般式(9)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類を上記一般式(9−1)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類の金属塩又は一般式(9−2)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類のアミン塩としても、あるいは一般式(9)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類の塩とは異なる塩を形成させてもよい。
所望の光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)は、得られた4−ヒドロキシけい皮酸類(9)を不斉水素化反応に付すことにより製造することができる。
不斉水素化反応は、上記スキーム1に示した方法に従って行うことができる。
不斉触媒の使用量は、使用する反応容器や反応の形式あるいは経済性などによって異なるが、4−ヒドロキシけい皮酸類(9)に対して、モル比で通常1/10〜1/100,000、好ましくは1/50〜1/10,000の範囲から適宜選択される。
【0087】
【化44】

スキーム4は、スキーム1で示したようにして得られたけい皮酸類(4)を不斉水素化反応に付して、光学活性フェニルプロピオン酸類(5)及び光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)の混合物を製造する反応を示したものである。この反応において、(i)得られた混合物をin situで脱保護して所望の光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)を製造することができる、あるいは(ii)光学活性フェニルプロピオン酸類(5)及び光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)をそれぞれ分離し、分離した光学活性フェニルプロピオン酸類を脱保護して所望の光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)を製造することができる。
【0088】
このようにして得られた光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)は、必要に応じて後処理等を行ってもよい。
さらに、上記方法で得られた光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)は、必要に応じて、種々の方法により、より高い光学純度及び/又はより高い化学純度の光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)に変換してもよい。
そのような種々の方法としては、結晶化、カラムクロマトグラフィー等を挙げることができる。
結晶化については、上記スキーム1で説明されている。
【0089】
ここで使用する「より高い光学純度」とは、上記方法により得られた光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)の光学純度よりも高い純度、すなわち実質的に100%eeを意味する。ここで、「実質的に100%ee」とは、他の鏡像体に対する一方の鏡像体が殆ど検出されない光学純度を意味する。本発明ではそのような「実質的100%ee」とは、具体的には、95%ee以上、好ましくは97%ee以上、より好ましくは98%ee以上、更に好ましくは99%ee以上の光学純度を意味する。
また、「より高い化学純度」とは、上記方法により得られた光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)の化学純度よりも高い純度、すなわち実質的に100%の化学純度を意味する。ここで、「実質的に100%の化学純度」とは、如何なる他の化合物も検出されない化学純度を意味する。本発明ではそのような「実質的に100%の化学純度」とは、具体的には、95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上の化学純度を意味する。
【0090】
得られた一般式(6)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩は、カルボキシ基フリーのその一般式(6)で表されるプロピオン酸類、及び一般式(6−1)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の金属塩及び/又は一般式(6−2)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類のアミン塩との混合物であってもよい。
また、得られた一般式(6)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類は、必要に応じて、上記塩基を用いて、上記一般式(6−1)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の金属塩又は一般式(6−2)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類のアミン塩に、あるいは一般式(6−1)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の塩とは異なる塩に変換してもよい。
【0091】
かくして得られた光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)は、医薬等の中間体として有用な化合物である。
【0092】
一般式(12)
【化45】

(式中、R11〜R12は夫々独立して、水素原子又は置換基を示し、R13は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は金属塩を示し、R14は水素原子又は保護基を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される光学活性α,β−不飽和カルボン酸類又はその塩の製造は、一般式(11)
【化46】

(式中、R11〜R14は前記と同意義を有する。)で表されるα,β−不飽和カルボン酸類又はその塩を不斉水素化反応させることにより製造することができる。
【0093】
一般式(12)において、R11及びR12で示される置換基としては、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基又は置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0094】
置換基を有していてもよい炭化水素基としては、炭化水素基及び置換炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
アルキル基、アリール基、アラルキル基は、上記一般式(6)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法において、Rで示される保護基として説明した各基と同意義であってよい。
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられる。そのようなアルケニル基の具体例としては、エテニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられ、そのようなアルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0095】
置換炭化水素基(置換基を有する炭化水素基)としては、上記炭化水素基の1個の水素原子が置換基で置換された炭化水素基が挙げられる。置換炭化水素基としては、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アリール基、置換アラルキル基等が挙げられる。置換基については、後述する。
置換基を有していてもよい複素環基としては、複素環基及び置換複素環基が挙げられる。複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。複素環基及び複素環基も光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法において、Rで示される保護基として説明した各基と同意義であってよい。
置換複素環基(置換基を有する複素環基)としては、上記複素環基の少なくとも1個の水素原子が置換基で置換された複素環基が挙げられる。置換複素環基(置換基を有する複素環基)としては、置換脂肪族複素環基及び置換芳香族複素環基が挙げられる。置換基については、後述する。
【0096】
置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、アルコキシ基及び置換アルコキシ基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基としては、アラルキルオキシ基及び置換アラルキルオキシ基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリールオキシ基としては、アリールオキシ基及び置換アリールオキシ基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基としては、アルコキシカルボニル基及び置換アルコキシカルボニル基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基としては、アリールオキシカルボニル基及び置換アリールオキシカルボニル基が挙げられる。
アラルキルオキシカルボニル基としては、アラルキルオキシカルボニル基及び置換アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
これらアルコキシ基、置換アルコキシ基、アラルキルオキシ基、置換アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、置換アラルキルオキシカルボニル基は、上記一般式(6)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法において、Rで示される保護基として説明した各基と同意義であってよい。
【0097】
置換基としては、炭化水素基、置換炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、複素環基、置換複素環基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アラルキルオキシ基、置換アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、アルキルチオ基、置換アルキルチオ基、アリールチオ基、置換アリールチオ基、アラルキルチオ基、置換アラルキルチオ基、アシル基、置換アシル基、アシルオキシ基、置換アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、置換アラルキルオキシカルボニル基、アルキレンジオキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、スルホニル基又は置換シリル基等が挙げられる。
これらの置換基は、光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)の製造方法において、説明した置換基と同意義であってよい。
【0098】
13で示される置換基を有していてもよい炭化水素基は、上記R11及びR12における置換基として説明した炭化水素基と同意義であってよい。
金属原子としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、上記一般式(4−1)で説明したアルカリ金属及びアルカリ土類金属と同意義であってよい。
14で示される保護基としては、光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)の製造方法において、Rで示される保護基として説明した保護基と同意義であってよい。
尚、一般式(12)において、R11及び/又はR12が水素原子の場合は、R11及びR12が結合している炭素原子は、不斉炭素とはならない。また、R11及びR12が同様の基である場合は、R11及びR12が結合している炭素原子は、不斉炭素とはならない。
【0099】
そのα,β−不飽和カルボン酸類の塩としては、該一般式(11)中のR13がアルカリ金属又はアルカリ土類金属等の金属原子であるα,β−不飽和カルボン酸塩、及び一般式(11−1)
【化47】

(式中、Xはアミンを示し、R11、R12及びR14は前記と同意義を有する。)で表されるα,β−不飽和カルボン酸類のアミン塩等が挙げられる。
で示されるアミンとしては、上記一般式(4−2)におけるXで説明したアミンと同意義であってよい。
【0100】
一般式(11)で表されるα,β−不飽和カルボン酸類の具体例及び一般式(11−1)で表されるα,β−不飽和カルボン酸類の塩の具体例は、上記一般式(4)で表されるけい皮酸類の具体例、上記一般式(4−1)及び(4−2)で表されるけい皮酸類の塩の具体例、上記一般式(9)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類の具体例、上記一般式(9−1)及び(9−2)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類の塩の具体例で例示した化合物、及び下記化合物等が挙げられる。
【化48】

【化49】

【0101】
また、光学活性カルボン酸類の塩は、一般式(12)中のR13がアルカリ金属又はアルカリ土類金属等の金属原子である光学活性カルボン酸塩、及び一般式(12−1)
【化50】

(式中、R11、R12、R14、X及び*は前記と同じ。)で表される光学活性カルボン酸類のアミン塩等が挙げられる。
【0102】
本発明の製造方法により得られる一般式(12)で表される光学活性カルボン酸類及び一般式(12−1)で表される光学活性カルボン酸類の塩の具体例としては、上記一般式(6)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類、上記一般式(6−1)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の塩、上記一般式(6−2)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類の塩、及び下記化合物等が挙げられる。
【化51】

【化52】

【0103】
不斉水素化反応は、不斉触媒の存在下で行う。不斉触媒及び反応条件等は、光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類(6)の製造方法において、説明した通りである。尚、遷移金属がロジウムのときは、上記一般式(11)において、該一般式(11)中のR14で示される保護基はアシル基を除いた基が挙げられる。
不斉触媒の使用量は、用いる上記一般式(11)で表されるα,β−不飽和カルボン酸類又はその塩、使用する反応容器や反応の形式あるいは経済性などによって異なるが、α,β−不飽和カルボン酸類又はその塩に対して、モル比で通常1/10〜1/100,000、好ましくは1/50〜1/10,000の範囲から適宜選択される。
【0104】
このようにして得られた一般式(12)で表される光学活性カルボン酸類又はその塩は、カルボキシ基フリー(R13が水素原子)である光学活性カルボン酸類、上記一般式(12)におけるR13が金属原子である光学活性カルボン酸塩、及び上記一般式(12−1)で表される光学活性カルボン酸類のアミン塩との混合物であってもよい。
また、得られた一般式(12)で表される光学活性カルボン酸類は、必要に応じて、上記塩基を用いて、一般式(12)で表される光学活性カルボン酸類の金属塩又は一般式(12−1)で表される光学活性カルボン酸類のアミン塩としても、あるいは一般式(12)で表される光学活性カルボン酸類の塩とは異なる塩に変換してもよい。
かくして得られた一般式(12)で表される光学活性カルボン酸類又はその塩は、医薬等の中間体として有用な化合物である。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例及び参考例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
化学純度、鏡像体過剰率は高速液体クロマトグラフィーにより決定した。
H−NMRはVarian GEMINI−2000(200MHz)を使用した。
【0106】
実施例1
3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸メチルの合成
窒素気流下、ベンジルオキシベンズアルデヒド21.24g(100mmol)、ナトリウムメトキシド18.77g(330mmol)及びメタノール200mLの混合物にメトキシアクリル酸メチル30.00g(297mmol)を加え、その混合物を5時間加熱還流した。反応液を濃縮後、酢酸ブチルで希釈した。有機層を水洗後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物23.8gを収率80%で得た。
H−NMR δ(CDCl):3.76(3H,s),3.85(3H,s),5.10(2H,s),6.97(1H,s),6.98(2H,d,J=8.8Hz),7.30−7.50(5H,m),7.72(2H,d,J=8.8Hz)
【0107】
実施例2
3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ナトリウムの合成
3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸メチル20g(67.0mmol)及びメタノール200mLの混合物に1N水酸化ナトリウム水溶液74mLを加え、その混合物を2時間加熱還流した。その反応混合物を室温まで冷却し、析出物を濾取して標題化合物17.44gを収率85%で得た。
H−NMR δ(CDOD):3.69(3H,s),5.08(2H,s),6.63(1H,s),6.93(2H,d,J=9.0Hz),7.25−7.50(5H,m),7.64(2H,d,J=9.0Hz)
【0108】
実施例3
3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ナトリウムの合成
窒素気流下、ベンジルオキシベンズアルデヒド21.24g(100mmol)、ナトリウムメトキシド18.77g(330mmol)及びメタノール200mLの混合物にメトキシ酢酸メチル30.00g(297mmol)を加え、その混合物を5時間加熱還流した。水40mLを加えた後、反応液を1.5時間加熱還流し、室温まで冷却した。析出物を濾取して標題化合物20.02gを収率65%で得た。
【0109】
実施例4
3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウムの合成
3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ナトリウム19.65g(64.15mmol)、RuCl[(S)−H−binap]NEt57.5mg及びメタノール200mLを200mlオートクレーブにとり、水素ガスを5MPaの所定圧に供給した。その混合物を60℃にて6.5時間撹拌し、溶媒を減圧留去して、3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウム19.7gを得た(90%ee)。
H−NMR δ(CDOD):2.78(1H,dd,J=14.4,8.8Hz),2.94(1H,dd,14.4,4.0Hz),3.23(3H,s),3.69(1H,dd,J=8.8,4.0Hz),5.03(2H,s),6.86(2H,d,J=8.8Hz),7.1764(2H,d,J=8.8Hz),7.25−7.46(5H,m)
【0110】
実施例5
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウムの合成
3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸ナトリウム250mg(0.816mmol)及び[Ru(p−cymene)((S)−dm−segphos)]Cl 4.2mg(0.0041mmol)を100mLオートクレーブに入れ、系内を窒素で置換した。メタノール2.5mLを加えた後、水素ガス(5.0MPa)をそこに導入して、60℃にて16時間撹拌した。反応終了後、反応生成物は3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウムと3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウムとの混合物であった。3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウム/3−(4−ベンジルオキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウムの割合は、H−NMR測定から16/84であった。反応生成物は精製し、単離して標題化合物36mgを収率20%で得た(92.9%ee)。
【0111】
実施例6
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸の合成
4−ヒドロキシベンズアルデヒド20.5g(168mmol)及びナトリウムメトキシド36.3g(672mmol)の混合物にメタノール200mLを加えた。次に、メトキシ酢酸メチル50mL(504mmol)を50〜60℃にて前記混合物に滴下した。得られた混合物を12時間加熱還流した後、水40mLを加えた。その混合物をさらに2時間還流し、室温まで冷却後、溶媒を減圧留去して除去した。残渣に1N塩酸及びジクロロメタンを加え、析出した固体を濾取した。その固体を水で洗浄し、乾燥して標題化合物20.3gを収率62%で得た。
融点163〜165℃
H NMR(CDOD) δ 7.65(d,J=8.4Hz,2H),6.99(s,1H),6.81(d,J=8.4Hz,2H),3.74(s,3H)
【0112】
実施例7
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸メチルの合成
窒素雰囲気下、4−ヒドロキシベンズアルデヒド1.0g(8.19mmol)及びナトリウムメトキシド1.77g(32.8mmol)の混合物に、トルエン5mL及びメタノール10mLを加えた。メトキシ酢酸メチル2.44mL(24.6mmol)を加えた後、その混合物を室温で1時間撹拌し、次いで、8時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液40mLを加えた。反応液を酢酸エチル40mLで2回抽出し、有機層を飽和食塩水40mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を減圧留去して除去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、収率89%で、純度74%の標題化合物1.51gを得た。
H NMR(CDCl) δ 7.67(d,J=8.6Hz,2H),6.97(s,1H),6.85(d,J=8.6Hz,2H),5.68(s,1H),3.85(s,3H),3.75(s,3H)
【0113】
実施例8
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸の合成
実施例7で合成した3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸メチル1.51gをメタノール10mLに溶解し、そこに1N水酸化ナトリウム水溶液7.8mLを加えた。この溶液を2時間加熱還流し、室温まで冷却して、溶媒を減圧留去して除去した。残渣に1N塩酸及びジクロロメタンを加えた後、析出した固体を濾取し、水で洗浄後、乾燥することにより、標題化合物857mgを得た。H NMRスペクトルは、実施例6で得られた精製物のそれと一致した。
【0114】
実施例9
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸の合成
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸200mg(1.02mmol)、RuCl{(S)−h−binap}NEt 4.4mg(0.0051mmol)及びナトリウムメトキシド55.1mg(1.02mmol)を100mlオートクレーブに入れ、窒素ガスで置換した。メタノール2.0mLを加えた後、系内に5.0MPaで水素ガスを供給し、60℃にて6時間撹拌して、転化率>99%で58.0%eeの標題化合物を粗ナトリウム塩として得た。
その粗ナトリウム塩を水10mLに溶解し、その溶液をトルエン10mLで2回洗浄した。水層に1N塩酸20mLを加え、その混合物を酢酸エチル20mLで3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、乾燥して、標題化合物117mgを収率59%で得た。
H NMR(CDOD) δ 7.07(d,J=8.6Hz,2H),6.71(d,J=8.6Hz,2H),3.93(dd,J=4.8,7.6Hz,1H),3.33(s,3H),2.99(dd,J=4.8,14.0Hz,1H),2.85(dd,J=7.6,14.0Hz,1H)
【0115】
実施例10
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウムの合成
実施例9で得られた3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸をメタノール2mLに溶解し、この溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液0.6mLを加えた。混合物を室温で0.5時間撹拌し、減圧留去して標題化合物138mgを得た。
H NMR(CDOD) δ 7.07(d,J=8.6Hz,2H),6.67(d,J=8.6Hz,2H),3.69(dd,J=3.8,8.6Hz),3.24(s,3H),2.94(dd,J=3.8,14.0Hz,1H),2.75(dd,J=8.6,14.0Hz,1H)
【0116】
実施例11
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸シクロヘキシルアミン塩の結晶化
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸20g(0.103mol)及び[RuCl(p−cymene)((S)−dm−segphos)]Cl 0.106gを1L−オートクレーブに入れ、オートクレーブ中の空気を窒素ガスで置換した。メタノール200mL及びシクロヘキシルアミン12mL(0.105mol))をそれに加えた後、4.0MPaの水素ガスを密閉反応系に導入し、混合液を80℃で16時間攪拌した。反応液を冷却し、メタノールをロータリエバポレーターで減圧留去して除去し、転化率>99%、光学純度>88.6%eeの反応混合物30.2gを得た。
得られた反応混合物にメタノール30mL及びエタノール30mLを加え、その混合物を95℃で加熱還流し、次いで氷浴中で冷却した。生成した結晶を濾取し、光学純度>98%eeの3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸シクロヘキシルアミン塩を得た。
【0117】
実施例12
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウムの結晶化
3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアクリル酸20g(0.103mol)、ナトリウムメトキシド5.86g及び[{RuCl((S)−dm−segphos)}(μ−Cl)]Cl 96.3mgを1L−オートクレーブに入れ、オートクレーブ中の空気を窒素ガスで置換した。メタノール200mLをそれに加えた後、5.0MPaの水素ガスを密閉反応系に導入し、混合液を70℃で8時間攪拌して3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウムを92.3%ee(転化率>99%)で得た。反応混合液を冷却し、反応生成物をメタノール/メチルイソブチルケトン(MIBK)から2回再結晶して、光学純度>99%eeの3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシプロピオン酸ナトリウムを得た。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の方法は、医薬、農薬等の中間体として有用な光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類を提供することができる。そのような光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類は、けい皮酸類を中間体として経る短工程で、高収率及び高光学純度で製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは保護基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるベンズアルデヒド類と一般式(2)
【化2】

(式中、Rはアルキル基を示し、Rは炭化水素基を示す。)で表されるグリコール酸誘導体とを反応させた後、得られた生成物を加水分解して一般式(4)
【化3】

(式中、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類又はその塩を製造し、そしてそのけい皮酸類(4)又はその塩を不斉水素化反応に付して一般式(5)
【化4】

(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩を製造し、次いで脱保護することを特徴とする、一般式(6)
【化5】

(式中、R、R〜R及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法。
【請求項2】
一般式(1)
【化6】

(式中、Rは保護基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるベンズアルデヒド類と一般式(2)
【化7】

(式中、Rはアルキル基を示し、Rは炭化水素基を示す。)で表されるグリコール酸誘導体とを反応させた後、加水分解して一般式(4)
【化8】

(式中、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類又はその塩を製造し、そしてそのけい皮酸類(4)又はその塩を不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(6)
【化9】

(式中、*は不斉炭素を示し、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法。
【請求項3】
一般式(7)
【化10】

(式中、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表される4−ヒドロキシベンズアルデヒド類と一般式(2)
【化11】

(式中、Rはアルキル基を示し、Rは炭化水素基を示す。)で表されるグリコール酸誘導体とを反応させた後、加水分解して一般式(9)
【化12】

(式中、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類又はその塩を製造し、そしてその4−ヒドロキシけい皮酸類(9)又はその塩を不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(6)
【化13】

(式中、*は不斉炭素を示し、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法。
【請求項4】
不斉水素化反応が、不斉触媒の存在下で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
不斉触媒が、遷移金属錯体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
遷移金属錯体が、周期表の第8〜10族の金属の錯体であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(11)
【化14】

(式中、R11及びR12は夫々独立して水素原子又は置換基を示し、R13は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は金属原子を示し、R14は水素原子又は保護基を示す。)で表されるα,β−不飽和カルボン酸類又はその塩を遷移金属錯体の存在下で不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(12)
【化15】

(式中、*は不斉炭素を示し、R11〜R14は前記と同意義を有する。)で表される光学活性カルボン酸類又はその塩の製造方法、但し、遷移金属錯体がロジウムのものであるとき、前記一般式(11)中のR14で示される保護基はアシル基以外の基である。
【請求項8】
遷移金属錯体が、周期表の第8〜10族の金属であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
不斉触媒が不斉配位子と遷移金属化合物との混合物であることを特徴とする請求項1又は3に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られる一般式(5)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩を、溶媒から結晶化させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
結晶化に使用する溶媒が、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、水及びそれらの混合物からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られる一般式(6)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩を、溶媒から結晶化させることを特徴とする請求項1〜3に記載の製造方法。
【請求項13】
結晶化に使用する溶媒が、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、水及びそれらの混合物からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
一般式(4)
【化16】

(式中、Rは保護基を示し、Rはアルキル基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるけい皮酸類又はその塩を不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(5)
【化17】

(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩の製造方法。
【請求項15】
一般式(4)
【化18】

(式中、Rはアルキル基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるけい皮酸類又はその塩を不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(6)
【化19】

(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法。
【請求項16】
一般式(9)
【化20】

(式中、Rはアルキル基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表される4−ヒドロキシけい皮酸類又はその塩を不斉水素化反応に付すことを特徴とする、一般式(6)
【化21】

(式中、*は不斉炭素を示し、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法。
【請求項17】
一般式(4)
【化22】

(式中、Rは保護基を示し、Rはアルキル基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるけい皮酸類又はその塩を不斉水素化反応させることを特徴とする、一般式(6)
【化23】

(式中、*は不斉炭素を示し、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩、及び一般式(5)
【化24】

(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩の製造方法。
【請求項18】
一般式(1)
【化25】

(式中、Rは保護基を示し、R〜Rは夫々独立して水素原子又は置換基を示す。)で表されるベンズアルデヒド類と、一般式(2)
【化26】

(式中、Rはアルキル基を示し、Rは炭化水素基を示す。)で表されるグリコール酸誘導体とを反応させ、得られた生成物を加水分解して一般式(4)
【化27】

(式中、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表されるけい皮酸類又はその塩を製造し、そしてそのけい皮酸類(4)又はその塩を不斉水素化反応に付して、一般式(5)
【化28】

(式中、*は不斉炭素を示し、R、R及びR〜Rは前記と同意義を有する。)で表される光学活性フェニルプロピオン酸類又はその塩、及び一般式(6)
【化29】

(式中、R、R〜R及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩を製造し、次いで脱保護することを特徴とする、一般式(6)
【化30】

(式中、R、R〜R及び*は前記と同意義を有する。)で表される光学活性3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸類又はその塩の製造方法。

【公表番号】特表2007−512222(P2007−512222A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520429(P2006−520429)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017998
【国際公開番号】WO2005/051882
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】