説明

光学用接着剤組成物

【課題】温和な条件で硬化でき、薄膜形成性や膜厚均一性に優れる光学用接着剤組成物であって、薄膜であっても優れた耐振・耐衝撃性を発揮し、接着力、耐久性、可視光透過性にも優れた硬化物(接着層)を得ることが可能な光学用接着剤組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とする光学用接着剤組成物であって、該エポキシ化合物は、特定の脂環式エポキシ化合物からなる成分(A)と、特定の多官能水添エポキシ化合物及び/又は多官能脂環式エポキシ化合物からなる成分(B)とを含み、該エポキシ化合物における成分(A)と成分(B)との質量比は、60/40〜95/5である光学用接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用接着剤組成物に関する。より詳しくは、種々の光学機器等における光学部材・部品の接着に好適な光学用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器等における光学部品・部材の接着に用いられる光学用接着剤としては、接着力だけでなく、耐久性や可視光透過性等、光学用途において求められる各種の性能に優れることが必要とされている。例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置における表示パネルやバックライトパネルにおいて用いられる接着剤は、耐光性や耐熱性に加え、振動や衝撃によっても剥離することがない高い接着力及び接着層(膜)強度を備えることが要求される。また、接着剤自体が光を透過する光透過媒体として用いられる場合には、可視光透過性に優れた材質であることが必要である。このような光透過媒体として用いられる接着剤はまた、光透過損失を抑制する点から薄膜であることが好ましく、薄膜とした場合にも振動や衝撃に耐え得る接着力や、湿気や光によって接着力が低下しない耐久性を有することが求められる。また近年、光学部材の薄型化や軽量化の要求が高まっていることから、表示装置を構成する各部材として、従来のガラスや金属等の無機材料に代わって、樹脂材料の比率が高まりつつある。このため、このような樹脂材料からなる部材の耐熱性を考慮し、高温での加熱を必要としない硬化方法(例えば、光硬化法、低温熱硬化法)により硬化することができ、かつ、上述した優れた特性を有する接着剤の開発が急がれている。
【0003】
ところで、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)等の光学素子の封止材等に用いることが可能な、透明性や耐熱性、強度に優れた硬化物を得ることを目的として、種々のエポキシ樹脂組成物が検討されている。例えば、特許文献1には、特定の脂環式エポキシ樹脂と、芳香族エポキシ樹脂を核水素化して得られる脂環式エポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。硬化剤としては、主に酸無水物を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−101171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように酸無水物を用いる硬化方法では、硬化(重合)工程で樹脂中に多量のエステル結合が生成することになるため、得られる硬化物の耐湿性が充分に高くならないという問題がある。上述したように、湿気等による接着力の低下がないことは、光学用接着剤において求められる極めて重要な性能であり、このような問題を解消できる接着剤の開発が切望されている。また、特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物は、光学素子の封止材等の用途における従来技術の課題の解決を目的とするものであるが、このように、封止材用途に好適なエポキシ樹脂組成物は知られているものの、上述したような光学用接着剤用途に特有の課題を解決し得るエポキシ樹脂組成物については知られていない。
上記のように、従来の技術には、光学用接着剤用途において求められる種々の特性を有する硬化物を与える樹脂組成物を得るための工夫の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、温和な条件で硬化でき、薄膜形成性や膜厚均一性に優れる光学用接着剤組成物であって、薄膜であっても優れた耐振・耐衝撃性を発揮し、接着力、耐久性、可視光透過性にも優れた硬化物(接着層)を得ることが可能な光学用接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、光学用接着剤用途に好適な樹脂組成物(特にエポキシ樹脂組成物)について種々検討するうち、樹脂組成物が特定構造を有する脂環式エポキシ化合物からなる成分を含むものであると、温和な条件(例えば、光硬化法、低温熱硬化法)で硬化でき、得られる硬化物(接着層)が、光学部材に使用されるガラス、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル、シリコーン等の材料との接着力に優れたものとなることを見出した。また、上記樹脂組成物が更に、特定の多官能水添エポキシ化合物及び/又は多官能脂環式エポキシ化合物からなる成分を含むものであると、硬化物が適度に軟質なものとなり、薄膜(例えば、厚さ数μm〜30μm程度)として用いた場合であっても、耐振・耐衝撃性に優れたものとなることを見出した。そして、上記2成分の配合比(質量比)を特定の範囲に調整することにより、薄膜化しても膜厚均一性に優れ、高い薄膜形成性、耐久性及び接着層強度を発揮できることを見出した。更に本発明者は、上記樹脂組成物がカチオン硬化触媒を含むものであると、硬化方法としてカチオン硬化法を採用することができ、上述した酸無水物を用いる硬化方法のように硬化工程において多量のエステル結合が生成することを防止できるため、硬化物が耐湿性に優れたものとなることを見出した。そして、上記樹脂組成物により得られた硬化物が、表示装置等の各種光学機器における光学部材の接着に用いる薄膜接着剤として特に有用であることも見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、エポキシ化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とする光学用接着剤組成物であって、上記エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物からなる成分(A)と、多官能水添エポキシ化合物及び/又は多官能脂環式エポキシ化合物からなる成分(B)とを含み、上記成分(A)は、下記一般式(1):
【化1】

(式中、X及びXは、同一若しくは異なって、置換基を有してもよいエポキシシクロヘキサン基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜20の2価の有機基を表す。m及びnは、同一若しくは異なって、0〜10の整数を表す。)で表され、かつ、重量平均分子量が500未満であり、上記成分(B)は、重量平均分子量が1000以上であり、上記エポキシ化合物における成分(A)と成分(B)との質量比は、60/40〜95/5であることを特徴とする光学用接着剤組成物である。
本発明はまた、上記光学用接着剤組成物を硬化して得られる光学用接着層でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の光学用接着剤組成物(以下、単に接着剤組成物ともいう。)は、成分(A)、成分(B)及びカチオン硬化触媒を必須成分として含有するものである。成分(A)、成分(B)及びカチオン硬化触媒は、夫々1種又は2種以上を用いることができる。
【0010】
<成分(A)>
本発明の光学用接着剤組成物は、脂環式エポキシ化合物からなる成分(A)を含むものである。そして、該成分(A)は、上記一般式(1)で表され、かつ、重量平均分子量が500未満である。
上記成分(A)(脂環式エポキシ化合物)が一般式(1)で表されるものであると、硬化物(接着層)が接着力に優れたものとなる。これは、硬化物中にエーテル結合(例えば、エポキシシクロヘキサン基に由来するもの)とエステル結合との両方が存在することや、シクロヘキサン環が含まれることに起因すると推測される。また、硬化物の主鎖骨格中に、エステル結合と比較してより多くのエーテル結合を含むようにすることができ、硬化物の耐湿性や耐光性等の耐久性を向上させることができる。
また上記成分(A)の重量平均分子量が500未満であると、上記光学用接着剤組成物の粘度が高くなりすぎることを防止でき、薄膜状に形成することが容易になる。成分(A)の重量平均分子量として好ましくは、50以上、450未満であり、より好ましくは、80以上、400未満である。
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−N 4.6150を2本、溶離液:テトラヒドロフラン、標準サンプル:TSKポリスチレンスタンダード)により測定することができる。
【0011】
上記一般式(1)中、X及びXは、同一若しくは異なって、置換基を有してもよいエポキシシクロヘキサン基を表す。上記置換基としては、特に限定されないが、炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基が好適である。上記炭化水素基は、無置換の基であっても、水素原子の1または2以上が他の炭化水素基によって置換された基であってもよい。この場合の他の炭化水素基としては、アルキル基(上記炭化水素基がアルキル基である場合には、置換後の炭化水素基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
上記エポキシシクロヘキサン基中のエポキシ基の位置は限定されず、任意の位置に設けることができる。また、上記エポキシシクロヘキサン基が置換基を有する形態における、該置換基の位置も限定されない。
【0012】
また上記一般式(1)中、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜20の2価の有機基を表す。上記有機基としては、全体として炭素数が1〜20であれば限定されず、脂肪族炭化水素基、脂肪族炭化水素を含む有機基等を挙げることができる。上記脂肪族炭化水素を含む有機基とは、例えば、構造中にエーテル結合(−O−)やエステル結合(−O−C(=O)−)等の非炭化水素部位と、脂肪族炭化水素とを有する有機基をいう。なお、脂肪族炭化水素には、鎖状構造を有するものと、環状構造を有するものとの両方が含まれることとする。
上記有機基として好ましくは、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である。
【0013】
また上記一般式(1)中、m及びnは、同一若しくは異なって、0〜10の整数を表す。m及びnとしては、上記範囲内であれば特に限定されないが、m及びnのうちいずれか一方が0である場合には、他方は1以上であることが好ましい。すなわち、m+n≧1であることが好ましい。
【0014】
上記成分(A)として具体的には、例えば、下記一般式(2−1)〜(2−5)で表される脂環式エポキシ化合物が好適である。上記成分(A)が、これらの化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0015】
【化2】

上記一般式(2−4)において、pは1〜3の整数を表す。
【0016】
上記成分(A)としては、中でも、上記一般式(2−1)〜(2−4)のように、エステル基がシクロヘキサン環に直接結合した形態、すなわち、上記一般式(1)においてm=0である形態がより好ましい。このような形態であると、得られる硬化物が耐久性に優れたものとなる。特に好ましくは、一般式(2−1)で表される化合物である。
【0017】
<成分(B)>
本発明の光学用接着剤組成物はまた、多官能水添エポキシ化合物及び/又は多官能脂環式エポキシ化合物からなる成分(B)を含むものである。そして、該成分(B)は、重量平均分子量が1000以上である。上記接着剤組成物がこのような成分を含有することで、得られる硬化物(接着層)が適度に軟質なものとなり、硬化物を薄膜状に形成して用いた場合であっても、耐振・耐衝撃性に優れたものとなる。成分(B)の重量平均分子量として好ましくは、1500以上、8000未満であり、より好ましくは、2000以上、6000未満である。
【0018】
上記多官能水添エポキシ化合物は、1分子内に平均2個以上のエポキシ基を有する水添エポキシ化合物である。このような水添エポキシ化合物としては、飽和脂肪族環状炭化水素骨格に直接的又は間接的に結合したグリシジルエーテル基を平均2個以上有する多官能グリシジルエーテル化合物であることが好ましい。このような水添エポキシ化合物は、芳香族多官能エポキシ化合物の完全又は部分水添物であることが好ましく、より好ましくは、芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水添物である。具体的には、下記一般式(3−1)で表される水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、下記一般式(3−2)で表される水添ビスフェノールF型エポキシ化合物が好ましい。成分(B)が水添ビスフェノールA型エポキシ化合物及び/又は水添ビスフェノールF型エポキシ化合物であると、硬化物(接着層)がより軟質性に優れたものとなり、薄膜であっても、耐振・耐衝撃性に一層優れたものとなる。
一般式(3−1)、(3−2)においては、シクロヘキシル環やメチレン鎖などの炭化水素の一部の水素原子が置換されたものであってもよい。置換基としては、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子、置換基があってもよい炭化水素基などが好ましい。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0019】
【化3】

式中、qは1以上の整数を表す。
【0020】
上記成分(B)が水添ビスフェノールA型エポキシ化合物及び/又は水添ビスフェノールF型エポキシ化合物である形態においては、該エポキシ化合物の水素化率は95%より大きいことが好ましい。水素化率が95%より大きいと、成分(B)が含有する芳香族環状構造が充分に少なくなるため、得られる硬化物の熱や光による着色(黄変)を充分に抑制することができる。より好ましくは、水素化率が98%より大きいことであり、更に好ましくは、水素化率が100%であることである。
【0021】
上記水添ビスフェノールA型エポキシ化合物として具体的には、ビスフェノールA型エポキシ化合物を水添することにより得られるものを使用することができ、例えば、YX−8040(三菱化学社製)、ST−4000D(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノールF型エポキシ化合物としては、具体的には、ビスフェノールF型エポキシ化合物を水添することにより得られるものを使用することができる。
なお、本明細書中、製造又は販売会社名が示された化合物等は、商品名を表すものとする。
【0022】
上記多官能脂環式エポキシ化合物は、1分子内に平均2個以上の脂環式エポキシ基を有する化合物である。脂環式エポキシ基としては、例えば、エポキシシクロヘキサン基(エポキシシクロヘキサン骨格)、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素を介して付加したエポキシ基等が挙げられる。中でも、エポキシシクロヘキサン基を有する化合物であることが好適である。上記多官能脂環式エポキシ化合物として具体的には、例えば、下記一般式(4−1)で表される化合物、EHPE3150(ダイセル化学工業社製)等が好適である。
【0023】
【化4】

式中、rは6以上の整数を表す。
【0024】
なお、上記成分(A)としての脂環式エポキシ化合物も複数の脂環式エポキシ基を有するものであるため、「多官能」であるが、本発明においては、成分(A)と成分(B)とは異なる化合物であることから、成分(A)を「脂環式エポキシ化合物」と称し、成分(B)を「多官能水添エポキシ化合物及び/又は多官能脂環式エポキシ化合物」と称することにより、名称を区別したものである。
【0025】
上記成分(B)はまた、エポキシ当量が500以上であることが好ましい。これにより、硬化物(接着層)がより軟質性に優れたものとなり、薄膜であっても、耐振・耐衝撃性に一層優れたものとなる。エポキシ当量としてより好ましくは800以上である。上記エポキシ当量はまた、4000以下であることが好ましい。より好ましくは2000以下である。
【0026】
上記成分(A)及び(B)は、硬化物(接着層)の耐光性や耐熱性を害しない範囲で芳香環を構造中に含んでいてもよい。その場合、芳香環の含有量としては、上記成分(A)及び(B)夫々の総量を100質量%とすると、当該構造中に含まれる芳香環の質量割合が20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%、最も好ましくは0質量%、すなわち芳香環を含まないことである。
【0027】
<成分(A)及び成分(B)の配合比>
上記成分(A)と成分(B)との配合比は、質量比(成分(A)/成分(B))で60/40〜95/5である。配合比をこのような範囲に調整することにより、得られる硬化物(接着層)が、薄膜化した場合にも膜厚均一性に優れ、高い薄膜形成性、耐久性及び接着層強度を発揮するものとなる。上記質量比として好ましくは、65/35以上であり、より好ましくは71/29以上である。これにより、硬化物が耐湿熱性、膜厚均一性に一層優れたものとなる。上記質量比はまた、90/10以下であることが好ましく、85/15以下であることがより好ましい。これにより、硬化物が耐衝撃性に一層優れたものとなる。
【0028】
<カチオン硬化触媒>
本発明の光学用接着剤組成物はまた、カチオン硬化触媒を含むものである。カチオン硬化触媒としては、光励起や熱等によって、重合を開始させるカチオン種を発生し得る化合物であれば特に限定されないが、光カチオン硬化触媒や熱カチオン硬化触媒であることが好適である。光カチオン硬化触媒を用いることにより、光によりカチオン種を含む化合物が励起されて光分解反応が起こり、光硬化が進むこととなる。また、熱カチオン硬化触媒を用いることにより、加熱によりカチオン種を含む化合物が励起されて熱分解反応が起こり、熱硬化が進むこととなる。中でも、以下に示す理由により、光カチオン硬化触媒を用いることがより好ましい。すなわち、熱硬化では、硬化後の冷却過程において、接着層(硬化物)と被着体との熱膨張係数の違いによる収縮率の差異に起因して応力が生じ、被着体の反りや、材質によっては割れの原因となる場合がある。このような問題は、接着層が比較的厚い場合や、被着体が大型であるか又は薄い場合に特に顕著になる。具体的には、表示部の大型化、薄膜化が進むディスプレイ用の大型保護ガラスや薄膜ガラス等が被着体である場合に上記問題が特に顕著になる。これに対して、加熱・冷却を必要としない光硬化ではこのような問題は生じない。また、熱硬化では、接着剤組成物の塗布膜と比較して、硬化膜の膜面積が広がったり、膜厚が低下したりするという問題が生じ易いが、光硬化ではそのような問題の発生が抑制される。特に、被着体が大型ガラスである場合にはその差が顕著になる。
このように、上記カチオン硬化触媒が、光カチオン硬化触媒である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
【0029】
光カチオン硬化触媒は、光カチオン重合開始剤とも呼ばれ、光照射により、硬化剤としての実質的な機能を発揮するものである。
上記光カチオン硬化触媒としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が好適である。
【0030】
上記光カチオン硬化触媒の具体的な商品としては、例えば、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(ユニオンカーバイド社製);アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−172(ADEKA社製);Irgacure250(チバ・ジャパン社製);CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(日本曹達社製);CD−1010、CD−1011、CD−1012(サートマー社製);DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−103(みどり化学社製);PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(日本化薬社製);CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K(サンアプロ社製);サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−145、サンエイドSI−150、サンエイドSI−160、サンエイドSI−180L(三新化学工業社製);WPAGシリーズ(和光純薬工業社製)等のジアゾニウム塩タイプ、ヨードニウム塩タイプ、スルホニウム塩タイプが好ましい。
【0031】
熱カチオン硬化触媒は、熱酸発生剤、熱硬化剤、熱カチオン発生剤、カチオン重合開始剤とも呼ばれ、接着剤組成物において硬化温度になれば、硬化剤としての実質的な機能を発揮するものである。
上記熱カチオン硬化触媒としては、例えば、下記一般式(5):
(RZ)+s(AXt)−s (5)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R、R、R及びRは、同一又は異なって、有機基を表す。a、b、c及びdは、0又は正数であり、a、b、c及びdの合計はZの価数に等しい。カチオン(RZ)+sはオニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Sb、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。sは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。tは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表される化合物が好適である。
【0032】
上記一般式(5)の陰イオン(AXt)−sの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4−)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6−)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6−)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6−)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6−)等が挙げられる。
更に一般式AXt(OH)で表される陰イオンも用いることができる。また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO)、フルオロスルホン酸イオン(FSO)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0033】
上記熱カチオン硬化触媒としては、比較的低温で硬化剤としての機能を発揮できるものが好適である。具体的には、140℃以下で硬化できるものが好ましい。これにより、硬化物と被着体との収縮率の違いに起因する被着体の反りや割れを抑制することができるとともに、被着体がガラス等の無機材料と比較して耐熱性の低い樹脂材料からなる場合であっても、熱硬化工程における加熱による被着体への影響を低減することができる。より好ましくは、120℃以下で硬化剤として機能するものである。
【0034】
上記熱カチオン硬化触媒の具体的な商品としては、例えば、AMERICUREシリーズ(アメリカン・キャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬工業社製)等のジアゾニウム塩タイプ;UVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、Photoinitiator 2074(ローヌプーラン社製)、WPIシリーズ(和光純薬工業社製)等のヨードニウム塩タイプ;CYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サートマー社製)、オプトマーSPシリーズ・オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬工業社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)等のスルホニウム塩タイプ等が挙げられる。上記の中でも、比較的低温で硬化できる点で、スルホニウム塩タイプが好ましい。
【0035】
上記光学用接着剤組成物において、カチオン硬化触媒の含有量としては、溶媒等を含まない有効成分量としての不揮発分換算量として、上記成分(A)及び成分(B)の合計量100質量%に対し、0.01〜10質量%とすることが好適である。カチオン硬化触媒の含有量をこのような範囲とすることで、硬化速度をより充分に高めるとともに、硬化時や使用環境下での硬化物の着色をより充分に抑制することができる。カチオン硬化触媒の含有量としてより好ましくは、0.05〜5質量%である。さらに好ましくは、0.1〜3質量%である。
【0036】
<その他の成分>
本発明の光学用接着剤組成物は、成分(A)、成分(B)及びカチオン硬化触媒を必須成分とする限り、その他の成分を含んでいてもよく、該その他の成分は1種又は2種以上を用いることができる。その他の成分としては、例えば、溶媒成分、他の重合成分(エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルモノマー等)あるいはポリマー成分、各種添加剤等を挙げることができる。
【0037】
溶媒は、組成物の粘度調整等を目的として、必要に応じて含むことができる。溶媒としては、特に制限されず、従来公知の有機溶媒であれば使用することができるが、上述した成分(A)及び(B)を溶解するものが好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の炭化水素類;ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、(ジ)エチレングリコールメチルエーテル、(ジ)エチレングリコールエチルエーテル、(ジ)エチレングリコールアセテート、(ジ)エチレングリコールジアセテート、(ジ)エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコール及びその誘導体(エーテル、エステル)類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が好ましい。
溶媒は、接着剤組成物を硬化して接着層とする際に接着層中の気泡の原因となって、接着力の低下や、光伝送性、透過性の低下を招くおそれがある。また、多量に用いると、組成物の粘性が低くなりすぎて成形体の膜厚や形状の制御性が低下する原因ともなる。したがって、溶媒を用いる場合、上記接着剤組成物の総量100質量%に対して30質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更により好ましくは5質量%以下、一層好ましくは1質量%以下である。特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%、すなわち、溶媒を使用しないことである。
特に光硬化の場合は、溶媒を使用しないか、たとえ使用しても微量とすることが好ましい。
【0038】
本発明の接着剤組成物は、重合成分として、成分(A)と成分(B)とを必須成分として含むものであるが、上記組成物から得られる接着層が、接着力、耐衝撃性等の特徴に優れるものとするためには、上記組成物に含有される成分(A)と成分(B)の合計含有量が、重合成分の総量100質量%に対して、80質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。
【0039】
添加剤としては、無機微粒子、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤や有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等を含有していてもよい。
【0040】
<光学用接着剤組成物の物性>
本発明の光学用接着剤組成物は、25℃における粘度が100〜100000mPa・sであることが好ましい。粘度がこのような範囲にあると、接着剤組成物を薄膜状に塗布し易くなる。より好ましくは、500〜50000mPa・sである。
上記接着剤組成物の粘度は、温度25℃の条件下で、R/Sレオメーター(ブルックフィールド社製)を用いて測定することができる。
【0041】
<接着層(硬化物)>
本発明の光学用接着剤組成物を硬化することにより、接着層(硬化物)を得ることができる。硬化方法としては、上述したように、光硬化や熱硬化を採用することが好ましい。中でも、硬化物と被着体との収縮率の違いに起因する被着体の反りや割れを防止するとともに、硬化反応の前後での膜面積及び膜厚の変化を抑制することができる点で、光硬化を採用することがより好ましい。
【0042】
上記接着層は、薄膜状に形成されることが好ましい。具体的には、厚さが1〜80μmであることが好ましい。これにより、接着層を光透過損失の少ないものとすることができ、光を透過する光透過媒体(光伝送媒体)として好適に用いることができる。より好ましい下限は5μm以上である。また上限はより好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下である。
【0043】
上記接着層は、可視光透過率が80%以上であることが好ましい。具体的には、400nmにおける平行線透過率が80%以上であることが好ましい。これにより、特に光伝送体用途において要求される高い光透過性及び透明性を実現することができる。400nmにおける平行線透過率としてより好ましくは、85%以上であり、更に好ましくは、90%以上である。
透過率は、UV−VIS分光光度計(Agilent 8453、アジレント・テクノロジー社製)により、厚み500μmのサンプルを用いて測定することができる。
【0044】
上記接着層は、高い可視光透過性を有するものであるため、光学用途に好適に適用できる。このように、上記光学用接着剤組成物を硬化して得られる光学用接着層もまた、本発明の1つであり、光学用接合材料として好適に使用される。上記接着層はまた、接着性や耐湿熱性にも優れ、更に、薄膜であっても優れた耐衝撃性を発揮するものであるため、特に表示装置等の各種光学機器における光学部材の接着に用いる薄膜接着剤等として極めて有用である。中でも、それ自体が直接光を透過する光伝送媒体(光透過媒体)として用いることがより好ましい。このように、上記光学用接着層が光伝送媒体用接着層であること、光伝送媒体用接合材料であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。上述のように、上記接着層は可視光透過性や耐衝撃性に優れるものであるため、光伝送媒体として用いる場合には、表示装置における表示パネルと保護パネルとの接合や、バックライトにおける光源と導光板との接合等に好適に用いることができる。上記光学用接着層あるいは接合材料を介して透明媒体が接合されてなる光伝送体(又は光伝送材料)もまた、本発明の1つである。
なお、接合材料とは、少なくとも一方の表面が本発明の接着層からなる材料を意味し、たとえば、本発明の接着層のみから構成される形態(1)、透明基材の両面に接着層を有し、少なくとも一方の接着層が本発明の接着層からなる形態(2)が例示される。形態(2)の場合は、両面が本発明の接着層からなる形態が好ましい。透明基材としては、たとえば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などの樹脂シート(フィルム状、板状、テープ状などを含む)やガラスシートが好ましく使用される。光伝送媒体用接合材料として用いる場合の透明基材としては、耐振動性、耐衝撃性に優れる点から樹脂シートが好ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明の光学用接着剤組成物は、上述のような構成であるので、温和な条件で硬化できるうえに、薄膜形成性や膜厚均一性に優れるものである。そして、上記接着剤組成物により、薄膜であっても優れた耐振・耐衝撃性を発揮するとともに、接着力、耐久性(耐湿・耐光性等)、可視光透過性にも優れた硬化物(接着層)を得ることが可能である。更に、このような硬化物(接着層)は、表示装置等の各種光学機器における光学部材の接着に用いる薄膜接着剤(光学用接着層)等として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0047】
<接着剤組成物の調製>
調製例1
セロキサイド2021P(ダイセル化学工業社製)62部及びYX−8040(三菱化学社製)38部を攪拌機を備えたセパラブルフラスコに量り取り、窒素雰囲気下140℃に加熱して1時間混合した。室温に冷却後、CPI−101A(サンアプロ社製)1部を加え、遮光して1時間混合し、接着剤組成物(1)を得た。
【0048】
調製例2〜10、比較調製例1〜4
成分(A)、成分(B)、硬化剤、及び、必要に応じて硬化促進剤を表1に示す割合で混合する点以外は調製例1と同様にして、夫々接着剤組成物(2)〜(10)、接着剤組成物(比較1)〜(比較4)を得た。
【0049】
<接着層の作成及び評価>
実施例1〜10及び比較例1〜4
調製例1〜10及び比較調製例1〜4で得た接着剤組成物(1)〜(10)及び接着剤組成物(比較1)〜(比較4)を用いて、以下に示す試料作成法により夫々接着層を形成した試料(接着層試料)を作成した。得られた接着層試料について、接着層膜厚、接着性、耐湿熱性、耐衝撃性及び膜厚均一性を後述する方法によって測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0050】
試料作成法1
接着剤組成物をガラス板(A)に塗布した後、他のガラス板(B)で挟み、以下に示す条件下で硬化した。なお、光硬化においては、UVはガラス板(B)側から照射した。
(硬化条件)
光硬化(実施例1〜7、9、10、比較例1〜3):UV照射(高圧水銀ランプ、ウシオ電機社製、ピーク波長365nm、照射量500mJ/cm)にて硬化。
熱硬化(実施例8、比較例4):実施例8においては、120℃で15分加熱することにより硬化した。比較例4においては、150℃で2時間加熱することにより硬化した。
【0051】
試料作成法2
接着剤組成物をガラス板(A)にアプリケーターを用いて塗布し、上述した硬化条件にて硬化した。
【0052】
<接着層膜厚>
試料作成法1により作成した接着層試料について評価した。該接着層を挟むガラス板(A)とガラス板(B)との間のギャップを膜厚とした。すなわち、接着層試料の全体の厚みと、ガラス板(A)および(B)の厚みとを測定し、全体の厚みからガラス板(A)および(B)の厚みを差し引いた値を接着層膜厚とした。膜厚測定はマイクロメーター(Digimatic Micrometer MDC−25MJ 株式会社ミツトヨ製)により行った。
【0053】
<接着性>
試料作成法1により作成した接着層試料について評価した。接着層試料のガラス板間にカッター刃を押し入れたときの試料の状態を、以下の基準で評価した。また、接着層試料における接着層の膜厚が10μmの場合と40μmの場合とについて評価した。
A:ガラスが破断するまで接着層が剥がれない。
B:試料の端に刃を入れても剥がれないが、ガラスが破断する前に剥がれる。
C:試料の端に刃を入れただけで容易に接着層が剥がれる。
【0054】
<耐湿熱性>
試料作成法2により作成した接着層試料について評価した。接着層試料を、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿雰囲気で1000時間放置する耐湿熱性試験を行い、試験後の着色の有無や程度について評価した。具体的には、試験前後の400nm光に対する透過率の変化率(ΔT)を測定し、以下の基準で評価した。なお、透過率は、UV−VIS分光光度計(Agilent 8453、アジレント・テクノロジー社製)により測定した。また、接着層試料における接着層の膜厚は100μmとした。
A:ΔT<5%
B:5%≦ΔT<10%
C:ΔT≧10%
【0055】
<樹脂強度>
試料作成法1により作成した接着層試料について評価した。接着層の脆さの尺度として、曲げ強さを評価した。具体的には、(厚さ)1mm×(幅)5mm×(長さ)30mmの樹脂板を作製し、動的粘弾性測定装置(RSA−III、ティー・エイ・インスツルメント社製)にて曲げ試験を行った。25mm間隔の支持冶具上にサンプルをのせ、3点曲げモードで1秒間に0.1mmの速度で変位させて割れるまでの変位を測定し、以下の基準で評価した。
○:5mm押し曲げても割れない
△:3mm以上、5mm未満で割れる
×:3mm未満で割れる
【0056】
<膜厚均一性>
試料作成法2により作成した接着層試料について、試料上の5点において膜厚を測定した。膜厚の測定値のばらつき(最大値と最小値との差)を算出し、以下の基準で評価した。なお、接着層試料における接着層の膜厚は100μmとした。膜厚測定は、マイクロメーター(Digimatic Micrometer MDC−25MJ 株式会社ミツトヨ製)により行った。
○:ばらつきが10μm未満(接着層表面が平滑で膜厚が均一であるもの)
×:ばらつきが10μm以上(膜厚にばらつきが認められるもの)
【0057】
なお、各実施例の組成物より試料作成法1により作成した接着層試料(膜厚:100μm)について、400nm光に対する平行線透過率を測定した結果、いずれの実施例においても85%以上であった。透過率測定は、上述した装置により行った。
【0058】
【表1】

【0059】
表1中の各化合物は、以下のとおりである。
ST−4000D:新日鐵化学社製、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂
EHPE3150:ダイセル化学工業社製、固形多官能脂環式エポキシ樹脂
【0060】
表1に示す結果から、本発明に該当する接着剤組成物を用いた例(実施例1〜10)では、いずれも得られる接着層が接着性、耐衝撃性、耐湿熱性及び膜厚均一性の全てにおいて優れるものであることが分かる。一方、成分(A)と成分(B)との配合比が本発明の範囲外である例(比較例1、2)や、成分(A)が単官能の脂環式エポキシ化合物である例(比較例3)、酸無水物を用いる硬化方法を採用した例(比較例4)では、上述した特性の全てにおいて優れる接着層は得られていない。
なお、熱硬化を採用した実施例8においては、上記膜厚均一性試験と同様の条件で硬化させた際に、接着剤組成物の塗布時より硬化後の膜面積が大きくなったり、膜厚が低下したりする現象が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とする光学用接着剤組成物であって、
該エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物からなる成分(A)と、多官能水添エポキシ化合物及び/又は多官能脂環式エポキシ化合物からなる成分(B)とを含み、
該成分(A)は、下記一般式(1):
【化1】

(式中、X及びXは、同一若しくは異なって、置換基を有してもよいエポキシシクロヘキサン基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜20の2価の有機基を表す。m及びnは、同一若しくは異なって、0〜10の整数を表す。)で表され、かつ、重量平均分子量が500未満であり、
該成分(B)は、重量平均分子量が1000以上であり、
該エポキシ化合物における成分(A)と成分(B)との質量比は、60/40〜95/5であることを特徴とする光学用接着剤組成物。
【請求項2】
前記成分(B)は、更に、エポキシ当量が500以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学用接着剤組成物。
【請求項3】
前記成分(B)は、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物及び/又は水添ビスフェノールF型エポキシ化合物であり、その水素化率は95%より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用接着剤組成物。
【請求項4】
前記カチオン硬化触媒は、光カチオン硬化触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学用接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学用接着剤組成物を硬化して得られる光学用接着層。

【公開番号】特開2012−56971(P2012−56971A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198161(P2010−198161)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】