説明

光学異方性層の製造方法

【課題】従来のパターン化光学異方性層の製造方法では、フォトマスクのアライメント不良により、形成されるパターンに位置ずれが生じる場合があった。
【解決手段】本発明の光学異方性層の製造方法は、(1)光配向性ポリマー層を形成する工程、(2)光配向性ポリマー層の吸光度変化(要件A)、露光後の光配向性ポリマー層の複屈折率(要件B)が所定の値となるように、光配向性ポリマー層に、フォトマスクを介して第一偏光を照射する工程、(3)光配向性ポリマー層に、フォトマスクを介さずに、第二偏光を照射しパターン化配向膜を形成する工程、(4)パターン化配向膜上に、液晶組成物の塗布膜を形成する工程、(5)該塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させた膜を形成する工程、及び、(6)塗布膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体的に画像を表示することができる立体表示装置には、互いに異なる遅相軸方向をもつ光学異方性領域を複数有する光学異方性層、即ちパターン化光学異方性層が具備される。このようなパターン化光学異方性層の製造方法としては、光配向性ポリマー層に対して、フォトマスクを介しての偏光露光を2回行い、パターン化配向膜を形成した後、液晶組成物を塗布する方法が知られている(非特許文献1(4.3.2マスクを用いた二段階照射によるパターン化)参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】技術情報協会編、「液晶ディスプレイ・タッチパネルを中心とした光学フィルム・シート技術全集」、第1版、株式会社技術情報協会、2008年9月30日、p.124−125
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載されているような従来から知られる上記のパターン化光学異方性層の製造方法では、偏光露光を行う領域に応じて少なくとも2枚のフォトマスクを使用し、偏光露光を行う毎にフォトマスクを交換するため、フォトマスクのアライメント不良により、形成されるパターン(光学異方性領域)に位置ずれを生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1] 重合性液晶化合物を含む液晶組成物から形成され、互いに異なる遅相軸方向をもつ光学異方性領域を複数有する光学異方性層の製造方法であって、(1)光配向性ポリマーを基板に塗布する光配向性ポリマー層の形成工程、(2)前記光配向性ポリマー層に、下記要件A及び要件Bを満たすように、フォトマスクを介して第一偏光を照射する第一照射工程、(3)前記第一偏光の照射後、フォトマスクを介さずに、第一偏光とは振動方向が異なる第二偏光を光配向性ポリマー層に照射しパターン化配向膜を形成する第二照射工程、(4)前記パターン化配向膜上に、前記液晶組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布工程、(5)前記塗布膜に含まれる液晶性成分が液晶状態となる温度に塗布膜を保持することにより、液晶性成分を配向させた膜を形成する配向工程、及び、(6)前記液晶性成分を配向させた膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させる重合工程を含む製造方法。
要件A;第一偏光が照射される領域における光配向性ポリマー層の吸光度が、式(i)を満たす。
A(b)/A(a)≦0.95 (i)
[式(i)中、A(a)は第一偏光照射前の波長314nmにおける吸光度を表す。A(b)は第一偏光照射後の波長314nmにおける吸光度を表す。]
要件B;第一偏光が照射された領域における光配向性ポリマー層の複屈折率が、式(ii)を満たす。
Δn(550)≧0.005 (ii)
[式(ii)中、Δn(550)は、波長550nmにおける複屈折率を表す。]
【0006】
[2] 前記光配向性ポリマーが、光照射により架橋構造を形成し得るポリマーである[1]記載の製造方法。
【0007】
[3] 前記第一偏光の振動方向と、前記第二偏光の振動方向とのなす角度が70°〜90°である[1]又は[2]記載の製造方法。
【0008】
[4] 前記液晶組成物が、さらに重合開始剤及び溶剤を含む液晶組成物である[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
【0009】
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法により製造された光学異方性層を備えた表示装置。
【0010】
[6] 重合性液晶化合物を含む液晶組成物から形成され、互いに異なる遅相軸方向をもつ光学異方性領域を複数有する光学異方性層と基板とを含む積層体の製造方法であって、(1)光配向性ポリマーを基板に塗布する光配向性ポリマー層の形成工程、(2)前記光配向性ポリマー層に、下記要件A及び要件Bを満たすように、フォトマスクを介して第一偏光を照射する第一照射工程、(3)前記第一偏光の照射後、フォトマスクを介さずに、第一偏光とは振動方向が異なる第二偏光を光配向性ポリマー層に照射しパターン化配向膜を形成する第二照射工程、(4)前記パターン化配向膜上に、前記液晶組成物を塗布して塗布膜を形成する塗工工程、(5)前記塗布膜に含まれる液晶性成分が液晶状態となる温度に塗布膜を保持することにより、液晶性成分を配向させた膜を形成する配向工程、及び、(6)前記液晶性成分を配向させた膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させる重合工程を含む製造方法。
要件A;第一偏光が照射される領域における光配向性ポリマー層の吸光度が、式(i)を満たす。
A(b)/A(a)≦0.95 (i)
[式(i)中、A(a)は第一偏光照射前の波長314nmにおける吸光度を表す。A(b)は第一偏光照射後の波長314nmにおける吸光度を表す。]
要件B;第一偏光が照射された領域における光配向性ポリマー層の複屈折率が、式(ii)を満たす。
Δn(550)≧0.005 (ii)
[式(ii)中、Δn(550)は、波長550nmにおける複屈折率を表す。]
【0011】
[7] 前記光配向性ポリマーが、光照射により架橋構造を形成し得るポリマーである[6]記載の製造方法。
【0012】
[8] 前記第一偏光の振動方向と、前記第二偏光の振動方向とのなす角度が70°〜90°である[6]又は[7]記載の製造方法。
【0013】
[9] 前記液晶組成物が、さらに重合開始剤及び溶剤を含む液晶組成物である[6]〜[8]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0014】
[10] [6]〜[9]のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層体を備えた表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、互いに異なる遅相軸方向をもつ光学異方性領域を複数有する光学異方性層を、容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造方法に用いられるフォトマスクの構成の一例を示す図である。
【図2】図1のフォトマスクを用いて得られるパターン化配向膜の一例を示す図である。
【図3】本発明の表示装置の第1態様の断面概略図である。
【図4】本発明の表示装置の第2態様の断面概略図である。
【図5】位相差層(光学異方性層)の機能を説明する模式図である。
【図6】本発明の表示装置の第3態様の断面概略図である。
【図7】本発明の表示装置の第4態様の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第一の製造方法は、重合性液晶化合物を含む液晶組成物から形成されるものであり、互いに異なる遅相軸方向をもつ光学異方性領域を複数有する光学異方性層を製造する方法であって、(1)基板上に光配向性ポリマー層を形成する形成工程、(2)光配向性ポリマー層にフォトマスクを介して第一偏光を照射する第一照射工程、(3)第一偏光照射後の光配向性ポリマー層にフォトマスクを介さずに、第二偏光を照射しパターン化配向膜を形成する第二照射工程、(4)パターン化配向膜上に液晶組成物を塗布する塗布工程、(5)液晶組成物中の液晶性成分が液晶状態となる温度に保持し、液晶性成分を配向さる配向工程、(6)液晶性成分を配向させた膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させる重合工程を含む。
また、本発明の第二の製造方法は、重合性液晶化合物を含む液晶組成物から形成され、互いに異なる遅相軸方向をもつ光学異方性領域を複数有する光学異方性層と基板とを含む積層体の製造方法であって、前記工程(1)〜(6)を含む製造方法である。
そして、本発明の第一及び第二の製造方法では、上記(2)第一照射工程、(3)第二照射工程のようにパターン化配向膜を作製する方法として光配向法を採用し、この光配向法の(2)第一照射工程において、光配向性ポリマー層の偏光照射前後の吸光度変化及び照射後の複屈折率を所定の範囲に制御することを要旨とする。
【0018】
図1、2を参照して、本発明の第一及び第二の製造方法について説明する。図1はフォトマスクの構成の一例を示す図である。図2は図1に示すフォトマスクを用いて得られるパターン化配向膜の一例を示す図である。なお、フォトマスクの構成や、パターン化配向膜の態様は図1、図2に示された構成に限定されず、所望とする光学異方性層のパターンに応じて変更可能である。
【0019】
本発明では、まず基板に光配向性ポリマーを塗布し光配向性ポリマー層を形成し((1)形成工程)、フォトマスク1を介して第一偏光を照射する((2)第一照射工程)。フォトマスク1には、実部(遮光部)3の中に、ストライプ状の空隙部(偏光透過部)2が形成されている。このフォトマスク1を介して第一偏光を照射することにより、フォトマスク1の空隙部2に対応する部分、つまりパターン化配向膜56の第一パターン領域12(図2参照)に配向規制力が付与される。また、この時、第一照射工程における光配向性ポリマー層の吸光度変化、複屈折率を所定の範囲に制御することで、第一パターン領域12は、後述する第二偏光が照射された場合でも、第一照射工程で付与された配向規制力が保持されるようになる。
【0020】
次に、フォトマスクを除去し、フォトマスクを用いずに、光配向性ポリマー層の全面に第二偏光を照射する((3)第二照射工程)。この時、上記のように第一パターン領域12は、第一偏光に由来する配向規制力が維持されるため、前記第一偏光が照射されていなかったフォトマスク1の遮光部3に対応する部分、つまりパターン化配向膜56の第二パターン領域13(図2参照)にのみ第二偏光による配向規制力が付与される。これにより、図2に示すような、互いに異なる遅相軸方向をもつ第1パターン領域12及び第2パターン領域13を有するパターン化配向膜56が得られる。なお、図2では遅相軸方向が2種となっているが、(2)第一照射工程を繰り返すことで、遅相軸方向が3種以上の光学異方性層を形成することもできる。
【0021】
そして、得られたパターン化配向膜56上に液晶組成物を塗布し((4)塗布工程)、液晶性成分を配向させ((5)配向工程)、重合性液晶化合物を重合させることにより((6)重合工程)、パターン化光学異方性層が得られる。また、上記工程(1)〜(6)を経ることにより、前記光学異方性層と基板とを含む積層体が得られる。上記のように、(2)第一照射工程における光配向性ポリマー層の物性を制御することにより、(3)第二照射工程ではフォトマスクが不要となる。よって、本発明ではフォトマスクの使用回数が減少するため、遅相軸の方向が異なる複数の領域を有する光学異方性層の製造が容易となり、且つ、フォトマスクのアライメント不良による配向パターンの位置ずれを低減することができる。また、本発明の製造方法を、例えば、Roll to Roll形式による連続的な製造に適用した場合においても、フォトマスクの使用が1回であれば、2回目のパターン露光の必要がないため、パターン幅の変動を大きく抑制することが可能になる。さらに、得られる光学異方性層あるいは積層体により、優れた画像を表示可能な立体表示装置を得ることができる。
【0022】
1.形成工程
前記(1)形成工程では、光配向性ポリマーを基板に塗布して、光配向性ポリマー層を形成する。本発明に用いられる光配向性ポリマーとしては、感光性構造を有するポリマーが挙げられる。感光性構造を有するポリマーに光を照射すると、照射された部分の感光性構造が異性化又は架橋することで配向し、液晶成分を一定方向に配向させる力(配向規制力)を発現する。
【0023】
前記感光性構造としては、例えば、アゾベンゼン構造、スピロピラン構造、スピロベンゾピラン構造、フルギド構造等の光照射により異性化する感光性構造;マレイミド構造、カルコン型構造、桂皮酸型構造、1,2−ビニレン構造、1,2−アセチレン構造等の光照射により架橋する感光性構造;等が挙げられる。これらの中でも、感光性構造としては、光照射により架橋するものが好ましく、より好ましくはカルコン型構造(式(a)で表される構造)、桂皮酸型構造(式(b)で表される構造)、マレイミド構造、1,2−ビニレン構造、1,2−アセチレン構造、さらに好ましくはカルコン構造、桂皮酸構造である。架橋構造を形成し得る感光性構造を有するポリマーは、反応に必要なエネルギー量が少なく、また、非可逆反応であるため光照射を複数回行った場合でも、最初の露光で付与された配向規制力を安定に保持することができる。
【0024】
【化1】

[式中、Arは、互いに独立して、フェニレン基、ナフタレンジイル基又はビフェニレン基を表す。*は結合手を表す。]
【0025】
前記光配向性ポリマーとしては、感光性構造と1以上のラジカル重合性基(好ましくはビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等)を有する単量体をラジカル重合したもの;感光性構造と2以上のアミノ基を有する単量体とジカルボン酸化合物とを重合したもの;感光性構造と2以上のカルボキシル基を有する単量体とジアミン化合物とを重合したもの;その他、感光性構造を有する単量体を、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合;配位重合;開環重合等して得られたものが挙げられる。これらの中でも、感光性構造と1以上のラジカル重合性基を有する単量体をラジカル重合したものが好ましい。
【0026】
前記光配向性ポリマーが感光性構造と1つのラジカル重合性基を有する単量体をラジカル重合したものである場合、当該単量体において感光性構造とラジカル重合性基はアルキレン基を介して結合されていることが好ましい。該アルキレン基の炭素数は3以上が好ましく、より好ましくは5以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは10以下である。また、前記感光性構造とラジカル重合性基とはエステル結合(−CO−O−又は−O−CO−)、エーテル結合(−O−)を介して結合していてもよい。
【0027】
前記光配向性ポリマーは、異なる感光性構造を有する複数種の単量体を重合することにより得られる共重合体であってもよい。また、前記光配向性ポリマーは、感光性構造を有さない単量体に由来する構成成分(構造単位)を含んでもよい。この場合、光配向性ポリマーの全構成成分中、感光性構造を有する単量体に由来する構成成分(構造単位)の含有量は50mol%以上が好ましく、より好ましくは60mol%以上、さらに好ましくは70mol%以上であり、95mol%以下が好ましく、より好ましくは90mol%以下、さらに好ましくは80mol%以下である。
【0028】
前記光配向性ポリマーの数平均分子量は、20000以上が好ましく、より好ましくは25000以上、さらに好ましくは30000以上であり、100000以下が好ましく、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。数平均分子量が上記範囲内であれば、後工程で液晶組成物を配向させる際、より配向性がよくなる。
【0029】
前記光配向性ポリマーの具体例としては、例えば、特許第4450261号公報、特許第4011652号公報、特開2010−49230号公報、特許第4404090号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−232934号公報等に記載の材料が挙げられる。これらの光配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0030】
前記基板は特に限定されず、例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルム等を挙げることができる。前記透光性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。基材を用いることにより、パターン化配向膜や光学異方性層を、破れ等を生じることなく容易に取り扱うことができる。また、本発明の製造方法で得られた光学異方性層を表示装置に適用する場合には、前記基板として表示素子が形成された表示素子基板を用いてもよい。つまり、表示素子基板(偏光層が形成されていてもよい。)上に直接パターン化配向膜、光学異方性層を形成してもよい。
【0031】
塗布方法としては、例えば、ディップコーター、バーコーター、スピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法等が挙げられる。
【0032】
光配向性ポリマーは、溶剤に溶解して塗布することが好ましい。溶剤に溶解すると、粘度を低くでき、形成される層の厚さのムラを低減できる。前記溶剤は、特に制限されないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶剤;等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組合せて用いてもよい。
【0033】
光配向性ポリマーを溶剤に溶解して塗布した場合、溶媒を除去し、乾燥させて光配向性ポリマー層を形成する。乾燥方法としては、例えば自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥等の方法が挙げられる。乾燥温度は、10℃以上が好ましく、より好ましくは25℃以上であり、250℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下である。また乾燥時間は、5秒間以上が好ましく、より好ましくは10秒間以上であり、60分間以下が好ましく、より好ましくは30分間以下である。乾燥温度及び乾燥時間が上記範囲内であれば、基材に悪影響を与えることなく、光配向性ポリマー層を形成することができる。
【0034】
光配向性ポリマー膜の膜厚は、10nm以上が好ましく、より好ましくは70nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、10000nm以下が好ましく、より好ましくは1000nm以下である。上記範囲とすれば、後工程で液晶組成物を所望の角度に配向させやすくなる。
【0035】
2.第一照射工程
本発明の製造方法では、パターン化配向膜の形成方法として、光配向法を採用する。光配向法は、乾燥後の光配向性ポリマー層に、偏光(例えば、直線偏光紫外線)照射を行うことにより、配向規制力を付与する方法である。前記(2)第一照射工程では、前記(1)形成工程で形成された光配向性ポリマー層に、フォトマスクを介して第一偏光を照射する。これにより、光配向性ポリマー層において、フォトマスクに形成された光透過部分に対応する領域にのみ配向規制力を付与できる。
【0036】
前記フォトマスクとしては、例えば、石英ガラス、ソーダライムガラス等の無機ガラス又はポリエステル等のフィルム上に遮光膜を設けたものが挙げられる。遮光膜で覆われている部分は偏光を遮光し、覆われていない空隙部は偏光を透過する性能を有していればよい。偏光照射時の熱膨張の影響があるため、フォトマスクに用いられる基材は石英ガラスのように熱膨張係数の小さなものが好ましい。
【0037】
前記偏光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、水銀キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、エキシマランプ、ハロゲンランプ等を挙げることができる。光源は、光配向性ポリマー層の感光部を反応させることができるものであれば制限はなく、例えば市販で容易に入手可能な高圧水銀ランプやメタルハライドランプを用いることができる。
【0038】
非偏光を偏光に変換するためには、グラントムソンプリズムやワイヤーグリッド偏光素子を用いたり、光軸に対してブリュースタ角になるように配置したガラス板を用いる等の手法がある。例えば、特許第4506412号や特開2006−3230609号公報に記載の手法を用いることで、偏光を得ることが可能である。
【0039】
第一偏光の放射照度としては、光配向性ポリマーが反応すればよく、波長365nmにおける放射照度で表した場合、0.01mW/cm2以上が好ましく、より好ましくは0.1mW/cm2以上、さらに好ましくは1mW/cm2以上であり、200mW/cm2以下が好ましく、より好ましくは150mW/cm2以下、さらに好ましくは100mW/cm2以下である。放射照度がこの範囲であれば、光配向性ポリマーを反応させ、分解もなく短時間で効果的に配向規制力を付与できる。
【0040】
第一偏光照射においては、照射時間によって積算光量が変わるため、照射時間も重要な因子である。前述の照度で露光した場合、必要な積算光量は50mJ/cm2以上が好ましく、より好ましくは100mJ/cm2以上、さらに好ましくは200mJ/cm2以上であり、10000mJ/cm2以下が好ましく、より好ましくは8000mJ/cm2以下、さらに好ましくは5000mJ/cm2以下である。積算光量がこの範囲であれば、後工程の液晶組成物を配向欠陥なく配向させるに足る配向規制力を発現することが可能となる。
【0041】
第一偏光の最大出力波長は、300nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
また、出射される光量のうち、波長300nm〜500nmの光に由来する光量が50%以上であることが好ましい。この範囲の波長の偏光を用いることで、光配向性ポリマーの反応が効率的に進行する。
【0042】
偏光照射は、光配向性ポリマー層平面に対して略垂直であることが望ましい。本明細書において略垂直とは、光配向性ポリマー層平面に対して垂直方向を90°と定義した場合、好ましくは70°〜90°、より好ましくは80°〜90°の範囲を示す。照射角度が90°に近いほど、光配向性ポリマーの反応が効率的に進行する。
【0043】
本発明では第一照射工程において、要件A及び要件Bを満たすように、光配向性ポリマー層の物性、偏光の照射条件を制御する。これらの要件A、要件Bを満たすことにより、本工程において第一偏光により配向規制力を付与された部分に、後記の第二照射工程において第二偏光が照射されても、第一偏光に由来する配向規制力を維持することができる。
なお、要件A、Bのいずれかが欠如した場合、十分な配向規制力が得られないため、パターン化光学異方性層に配向欠陥等が生じる。
【0044】
前記要件Aは、第一偏光が照射される領域における光配向性ポリマー層の吸光度が、式(i)を満たすことである。
A(b)/A(a)≦0.95 (i)
[式(i)中、A(a)は、第一偏光照射前の314nmにおける吸光度を表す。A(b)は、第一偏光照射後の314nmにおける吸光度を表す。]
【0045】
光配向性ポリマーの吸光度は、一般的に用いられている分光光度計(例えば、「島津製作所製、UV−3150」等)を使って、測定できる。前記A(b)/A(a)は、0.9以下が好ましく、より好ましくは0.7以下である。なお前記A(b)/A(a)は小さい程よいが、通常は0.5以上である。前記A(b)/A(a)は第一偏光の露光量を調整することにより制御できる。具体的には、第一偏光の露光量を大きくするほど、A(b)/A(a)を小さくすることができる。この露光量は例えば、偏光の照射時間を変更する等により制御できる。
【0046】
前記要件Bは、第一偏光が照射された領域における光配向性ポリマー層の複屈折率が、式(ii)を満たすことである。
Δn(550)≧0.005 (ii)
[式(ii)中、Δn(550)は、波長550nmにおける複屈折率を表す。]
【0047】
ここで、複屈折率Δn(λ)は、式(X)のように決定される。
Δn(λ)=Re(λ)/d (X)
[式(X)中、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表し、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚(nm)を表す。]
【0048】
式(ii)における複屈折率Δn(550)は、式(X)で示されているように、光配向性ポリマー層の位相差値と膜厚とを測定することにより求めることができる。該位相差値は、一般的に用いられているエリプソメーター(例えば、「日本分光株式会社製、M−200」等)を使って、第一偏光照射後の光配向性ポリマー層について測定すればよい。
膜厚は、レーザー顕微鏡(例えば、「オリンパス株式会社製、LEXT−3000」等)を用いて測定することができる。前記Δn(550)は第一偏光の露光量を調整することにより制御できる。具体的には、第一偏光の露光量を大きくするほど、Δn(550)を大きくすることができる。
【0049】
ここで、各光学異方性領域における遅相軸の方向は1種であるため、遅相軸の方向が異なる光学異方性領域を3つ以上有する光学異方性層を得る場合には、遅相軸の方向の数に応じて光学異方性領域を形成する必要がある。この場合には、この(2)第一照射工程を繰り返し行えばよい。例えば、光学異方性領域のもつ遅相軸の方向を3種とする場合、第一偏光を照射した後、前記第一偏光、後述する第二偏光とは振動方向のことなる第三偏光を、フォトマスクを介して光配向性ポリマー層に照射する。この場合、第一偏光を照射する時には、第三偏光又は第二偏光により配向規制力を付与したい部分(領域)に、第一偏光が照射されないようにする必要があり、また、第三偏光を照射する時には、第二偏光により配向規制力を付与したい部分に第三変更が照射されないようにする必要がある。なお、(2)第一照射工程を繰り返し行う場合、偏光の照射条件は前記第一偏光と同様にすればよい。なお、偏光の振動方向とは、光波の振動方向をいう。
【0050】
3.第二照射工程
前記(3)第二照射工程では、第一偏光が照射された光配向性ポリマー層に、フォトマスクを介さずに、第一偏光とは振動方向が異なる第二偏光を照射しパターン化配向膜を形成する。第二偏光の振動方向が第一偏光の振動方向と異なるため、得られる配向膜は、第一偏光に由来する配向規制力方向を有する領域と、第二偏光に由来する配向規制力方向を有する領域とが存在するパターン化配向膜となる。
【0051】
上述したように前記(2)第一照射工程において要件A、Bを満たすように制御しているため、第一偏光を照射された部分に第二偏光が照射されても、第一偏光に由来する配向規制力が維持される。よって、本発明の製造方法では、第二照射工程においてフォトマスクを使用する必要がなくなり、作業が容易となる。また、フォトマスクの使用回数が減少するため、フォトマスクのアライメント不良による配向パターンの位置ずれを低減することができる。さらに、本発明の製造方法を、例えば、Roll to Roll形式による連続的な製造に適用した場合、フォトマスクの使用が1回であれば、2回目のパターン露光の必要がないため、パターン幅の変動を大きく抑制することが可能になる。
【0052】
第二偏光の放射照度としては、光配向性ポリマーが反応すればよく、波長365nmにおける放射照度で表した場合、0.01mW/cm2以上が好ましく、より好ましくは0.1mW/cm2以上、さらに好ましくは1mW/cm2以上であり、200mW/cm2以下が好ましく、より好ましくは150mW/cm2以下、さらに好ましくは100mW/cm2以下である。放射照度がこの範囲であれば、光配向性ポリマーを反応させ、分解もなく短時間で効果的に配向規制力を付与できる。
【0053】
第二偏光照射においては、照射時間によって積算光量が変わるため、照射時間も重要な因子である。前述の照度で露光した場合、必要な積算光量は10mJ/cm2以上が好ましく、より好ましくは20mJ/cm2以上、さらに好ましくは30mJ/cm2以上であり、6000mJ/cm2以下が好ましく、より好ましくは5000mJ/cm2以下、さらに好ましくは4000mJ/cm2以下である。積算光量がこの範囲であれば、後工程の液晶組成物を配向欠陥なく配向させるに足る配向規制力を発現することが可能となる。
【0054】
第二偏光の最大出力波長は、300nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
また、出射される光量のうち、波長300nm〜500nmの光に由来する光量が50%以上であることが好ましい。この範囲の波長の偏光を用いることで、光配向性ポリマーの反応が効率的に進行する。また、偏光照射は、光配向性ポリマー層平面に対して略垂直であることが望ましい。ここで、「第二偏光の照射が光配向性ポリマー層平面に対して略垂直である」とは、前記第一偏光の照射と同様に、光配向性ポリマー層平面に対して垂直方向を90°と定義した場合、第二偏光の照射が、70°〜90°の範囲で行われることを意味する。照射角度が90°に近いほど、光配向性ポリマーの反応が効率的に進行する。
【0055】
前記第一偏光の振動方向と、第二偏光の振動方向とのなす角度は略直交であることが好ましい。ここで、「第一偏光の振動方向と、第二偏光の振動方向とがなす角度」は、第一偏光の振動方向と、第二偏光の振動方向とがなす角度のうち、小さい角度を言う。略直交とは70°〜90°、好ましくは85°〜90°、より好ましくは90°である。前記第一偏光の振動方向と、第二偏光の振動方向とのなす角度が略直交であれば、第一偏光を照射した領域の遅相軸の方向と、第二偏光を照射した領域の遅相軸の方向とが略直交するパターン化光学異方性層を作製することができる。このようなパターン化光学異方性層は偏光層と組み合わせることにより、自然光を右円偏光に変換する領域と、左円偏光に変換する領域とを有するパターン化偏光板を作製することができ、該パターン化偏光板は、立体表示装置の偏光変換部材として有用である。なお、偏光の振動方向とは、上述のとおり光波の振動方向をいう。
【0056】
4.塗布工程
前記(4)塗布工程では、前記(3)第二照射工程で形成したパターン化配向膜上に、前記液晶組成物を塗布して塗布膜を形成する。前記液晶組成物は、重合性液晶化合物を含む。重合性液晶化合物は、液晶性を有する化合物であり、分子中に1以上の重合性基を有する。重合性基は、重合性液晶化合物の重合反応に関与する基を意味する。前記重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0057】
前記重合性液晶化合物は、分子中に2以上の環構造を有するものが好ましく、3以上の環構造を有するものがより好ましい。前記環構造としては、フェニル環、シクロヘキサン環、ナフタレン環、ピリミジン環、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられ、これらの中でもフェニル環、シクロヘキサン環が好ましい。環構造を結合する連結基としては、−CO−O−、−CH2−CH2−、−CO−S−、−CO−NH−、−CH=CH−、−N=N−、−C≡C−等が挙げられ、これらの中でも−CO−O−が好ましい。
【0058】
前記重合性液晶化合物の具体例としては、例えば、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、特開2010−31223号で開示されている重合性液晶化合物等が挙げられる。また、前記重合性液晶化合物としては、市販品を使用してもよく、具体的には、BASFジャパン社から市販されている「パリオカラー(登録商標)LC242」が挙げられる。これらの重合性液晶化合物は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。前記液晶組成物は、重合性基を有さない液晶化合物を含んでもよい。
【0059】
前記液晶組成物は、溶剤を含むことが好ましい。前記溶剤としては、液晶組成物に含まれる成分を溶解し、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であればよく、具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノール等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶剤;等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
前記溶剤の使用量は、液晶組成物中、50質量%〜95質量%が好ましい。言い換えれば、液晶組成物中の固形分量は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。固形分量が5質量%以上であると、得られる位相差層が薄くなりすぎず、偏光変換に必要な複屈折率が与えられる。
また固形分量が50質量%以下であると、液晶組成物の粘度が低いことから、位相差層の膜厚にムラが生じにくくなる。ここで、固形分とは、組成物全量に対する、組成物から溶剤を除いた成分の含有量である。液晶組成物の粘度は、塗布性の観点から、0.1mPa・s以上が好ましく、10mPa・s以下が好ましく、より好ましくは7mPa・s以下である。
【0061】
前記液晶組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられ、低温で重合性液晶化合物を重合できることから、光重合開始剤が好ましい。
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩等が挙げられる。前記光重合開始剤として市販品を使用することもできる。具体的には、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てBASFジャパン(株)製)、セイクオール(登録商標)BZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100(日本化薬(株)製)、サイラキュア(CYRACURE)(登録商標)UVI−6992(ダウ・ケミカル社製)、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170(以上、全て(株)ADEKA製)、TAZ−A、TAZ−PP(以上、DKSHジャパン社製)、TAZ−104(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0062】
前記液晶組成物は、必要に応じて、カイラル剤、重合禁止剤、光増感剤及びレベリング剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0063】
前記カイラル剤としては、『液晶デバイスハンドブック』(第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989)、特開2007−269640号公報、特開2007−269639号公報、特開2007−176870号公報、特開2003−137887号公報、特表2000−515496号公報、特開2007−169178号公報、特表平9−506088号公報等に記載されている化合物が挙げられる。
【0064】
前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン又はアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類或いはβ−ナフトール類等が挙げられる。
【0065】
前記光増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントン等のキサントン類、アントラセン及びアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類、フェノチアジン或いはルブレン等が挙げられる。
【0066】
レベリング剤としては、例えば、放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミー・ジャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング(株)製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、塗料添加剤(信越化学工業(株)製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)又はフッ素系添加剤(DIC(株)製:F−445、F−470、F−479)等が挙げられる。
【0067】
本発明の製造方法で得られる光学異方性層を偏光層として用いる場合には、液晶組成物に二色性色素を含んでいてもよい。前記二色性色素としては、特に制限されず、染料であっても顔料であってもよい。二色性色素の吸収波長は、可視光の範囲である、300nm〜700nmであることが好ましい。前記二色性色素は単独で使用しても、赤色、緑色及び青色のような、複数の二色性色素を組み合せて使用してもよい。前記二色性色素としては、具体的には、ペリレン系、ナフタレン系、アゾ系、アントラキノン系等の二色性色素が挙げられる。上記のような色素であれば、重合体(重合性液晶化合物等を重合して得られる重合体)への分散が容易であり好ましい。
前記二色性色素の使用量は、前記重合性液晶化合物100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0068】
前記液晶組成物は、上述した重合性液晶化合物、重合開始剤、溶剤等を、60℃〜90℃で0.5時間〜2時間程度攪拌することで調製できる。
【0069】
前記液晶組成物を塗布する方法としては、例えば、ディップコーター、バーコーター、スピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法等が挙げられる。
【0070】
形成された塗布膜は、塗布膜中に含まれる溶剤等の揮発性成分を除去することが好ましい。乾燥方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、減圧乾燥法等が挙げられる。乾燥温度としては、0℃〜250℃が好ましく、50℃〜220℃がより好ましい。また乾燥時間としては、10秒間〜60分間が好ましく、30秒間〜30分間がより好ましい。
【0071】
5.配向工程
前記(5)配向工程では、前記(4)塗布工程で形成された塗布膜を、該塗布膜に含まれる液晶性成分が液晶状態となる温度に保持することにより、液晶性成分を配向させた膜を形成する。なお、前記(4)塗布工程において、溶媒を除去する際の乾燥(加熱)が(5)配向工程を兼ねていてもよい。上述したようにパターン化配向膜は、第一偏光に由来する配向規制力方向を有する領域と、第二偏光に由来する配向規制力方向を有する領域とが存在するため、このパターン化配向膜を用いて液晶性成分を配向させると、互いに異なる遅相軸方向をもつ領域にパターン化される。
【0072】
前記塗布膜(好ましくは、塗布膜から溶剤が除去された膜)を、塗布膜に含まれる液晶成分が液晶状態となる温度に保持することで、該塗布膜に含まれる液晶成分を各光学異方性領域においてモノドメイン配向させ、複屈折性を付与することができる。前記液晶成分とは、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物及び重合性基を有さない液晶化合物である。配向させる温度としては、0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、250℃以下が好ましく、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0073】
6.重合工程
前記(6)重合工程では、前記(5)配向工程で形成された液晶性成分を配向させた膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させる。塗布膜に含まれる成分が配向した状態、すなわち塗布膜に含まれる液晶成分が液晶相を示した状態で重合を行うことにより、液晶相を保持した硬化膜として、パターン化光学異方性層を得ることができる。
【0074】
重合方法は特に限定されないが、前記重合性液晶化合物が光重合性基を有する重合性液晶化合物である場合は光重合法、熱重合性基を有する重合性液晶化合物である場合は熱重合法で重合させる。ここで、光重合性基とは、光照射により化合物を重合させ得る基、あるいは、光照射で重合開始剤から発生した活性ラジカル又は活性酸により化合物を重合させ得る基をいう。熱重合性基とは、熱の作用により化合物を重合させ得る基、あるいは、熱の作用で重合開始剤から発生した活性ラジカル又は活性酸により化合物を重合させ得る基をいう。
【0075】
本発明の製造方法においては、光重合法により重合性液晶化合物を重合させることが好ましい。光重合法によれば高温に加熱せずに重合させることができるので、基板の熱による変形を防ぐことができる。また工業的にも製造が容易となる。また成膜性の観点からも光重合法が好ましい。光重合法で用いられる光源としては、可視光、紫外光又はレーザー光が挙げられる。取り扱い性の観点から、紫外光(波長300nm〜420nm)が好ましい。光照射は、塗布膜に含まれる成分が液晶相を示す温度で行ってもよい。この際、マスキング等によってさらにパターン化された光学異方性層を得ることもできる。
【0076】
光重合時の紫外光の放射照度は、重合性液晶化合物が重合する大きさであればよく、波長365nmにおける強度で表した場合、0.01mW/cm2以上が好ましく、より好ましくは0.1mW/cm2以上、さらに好ましくは1mW/cm2以上であり、400mW/cm2以下が好ましく、より好ましくは300mW/cm2以下、さらに好ましくは250mW/cm2以下である。放射照度がこの範囲であれば、重合性液晶化合物を重合させ、配向を固定化することができる。
【0077】
また、光重合時の紫外光の積算光量は100mJ/cm2以上が好ましく、より好ましくは500mJ/cm2以上、さらに好ましくは1000mJ/cm2以上であり、6000mJ/cm2以下が好ましく、より好ましくは4000mJ/cm2以下、さらに好ましくは3000mJ/cm2以下である。積算光量がこの範囲であれば、液晶組成物を配向欠陥なく配向させることが可能となる。
【0078】
本発明で得られる光学異方性層を位相差層として機能させる場合、光学異方性層の各光学異方性領域の位相差値を調整することが好ましい。具体的には、光学異方性層をλ/4板とする場合、いずれの光学異方性領域においてもRe(550)を113nm〜163nm、好ましくは135nm〜140nm、特に好ましくは137.5±0.5nmとすることが好ましく、λ/2板とする場合、いずれの光学異方性領域においてもRe(550)を250nm〜300nm、好ましくは273nm〜277nm、特に好ましくは275.0±0.5nmとすることが好ましい。
【0079】
光学異方性層の位相差値は、液晶組成物の塗布量や、液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量を適宜変更することにより、調整することができる。また、得られる光学異方性層の位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(Y)のように決定されることから、所望の位相差値を得るためには、光学異方性層の膜厚dを調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (Y)
[式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。]
ただし、光学異方性層の膜厚は、0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0080】
以上のように、(1)形成工程、(2)第一照射工程、(3)第二照射工程、(4)塗布工程、(5)配向工程及び(6)重合工程を経て、本発明の第一の製造方法により光学異方層が形成される。かかる製造方法は、光学異方層と基材とが積層された積層体を得る方法とみることもできる。すなわち、本発明の第二の製造方法は、これら(1)〜(6)の工程を含む積層体(光学異方層と基材とが積層された積層体)の製造方法である。
【0081】
本発明の製造方法は、前記(6)重合工程で形成された光学異方性層の上に、反射防止層を形成する工程を含んでもよい。前記反射防止層を有することで、外光に由来する反射光の発生を軽減でき、また、光学異方性層からの本来の表示用の出射光と反射光との干渉も抑制することが可能となる。さらに、反射防止層によって、光学異方性層を保護することができる。
【0082】
前記反射防止層を構成する材料としては特に限定されず、例えば、金属膜、金属酸化物膜、金属フッ化物膜、高分子材料膜及び微粒子等からなる群から選ばれる少なくとも一種で構成される層;並びに、公知の反射防止(AR)フィルム、低反射(LR)フィルム、モスアイ型反射防止フィルム及びこれらが有する反射防止層;等が挙げられる。
【0083】
前記金属としては、例えば、銀等が挙げられる。前記金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。前記金属フッ化物としては、例えば、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等が挙げられる。高分子材料としては、シロキサンポリマー、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド及び4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル、含フッ素(メタ)アクリレート、含フッ素イタコン酸エステル、含フッ素マレイン酸エステル、含フッ素珪素化合物等の重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラールやポリビニルホルマール等のポリビニルアセタール樹脂、セルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0084】
前記微粒子としては、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、シリカゲル、金属微粒子含有シリカゲル等の無機微粒子;ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂微粒子、アクリルスチレン樹脂微粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子、シリコン樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ベンゾグアナミン樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、ポリオレフィン樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子、ポリアミド樹脂微粒子、ポリイミド樹脂微粒子、またはポリ弗化エチレン樹脂微粒子等の有機微粒子;特開2010−84018号公報に記載される中空有機−無機ハイブリッド微粒子等が挙げられる。
【0085】
前記反射防止層は、単層であってもよいし、2層以上の多層であってもよい。反射防止層の厚さや、多層である場合の各層の厚さは、その層数、各層に用いる物質の屈折率等により、適宜選択すればよい。前記反射防止層は、上記材料を含む溶液を光学異方性層上に塗布する方法、又は、上記材料から形成された層を有するフィルムを光学異方性層上に貼合する方法により形成することができる。前記反射防止層を形成する方法としては、例えば特開2003−114302号公報、特開平7−56002号公報、特許第4190337号、特許第4259957号、特許第4032771号、特開2010−122599号公報記載の方法が挙げられる。
【0086】
本発明の製造方法は、前記反射防止層の光出射側に、必要に応じて、公知の防汚層、帯電防止層、ハードコート層を形成する工程を含んでいてもよい。また、基板上に形成された光学異方性層及びパターン化配向膜を基板から剥離する工程を含んでもよい。さらに、基板から剥離する工程に加えて、パターン化配向膜から光学異方性層を剥離する工程をさらに含んでいてもよい。また、基板上に形成された光学異方性層上に、別の基板を貼り付け、当該別の基板に、光学異方性層を転写する工程を含んでもよい。
【0087】
7.表示装置
本発明には、上記工程で得られる光学異方性層又は積層体を備えた表示装置も含まれる。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、プラズマディスプレイ、電界放出表示装置(フィールドエミッションディスプレイ(FED))、表面伝導型電子放出素子を有する表示装置(SED)、電子ペーパー等が挙げられる。
【0088】
前記表示装置における光学異方性層の使用態様としては、偏光層、位相差層が挙げられる。例えば、光学異方性層を形成する液晶組成物に二色性色素が含まれる場合、光学異方性層は偏光層として機能させることができ、偏光板の代替として用いることができる。また、光学異方性層中の液晶成分の異方性を調整した場合、位相差層として機能させることができ、下記に記載するように多くの表示装置に適用することが可能となる。
【0089】
図3、4は、本発明の液晶表示装置の一例として、液晶表示装置を示す断面概略図である。液晶表示装置51A、51Bは、自然光を発する面光源であるバックライト52、板面に沿った特定方向の透過軸(図示せず)を有する偏光板53、液晶表示素子が形成された表示素子基板54、偏光層55、パターン化配向膜56及び位相差層57を備えている。図4に示す液晶表示装置51Bでは、位相差層57の光出射側に反射防止層58が形成されている。これらの液晶表示装置51A、51Bは、パターン化配向膜56及び位相差層57として、本発明の製造方法で得られたパターン化配向膜及び光学異方性層が備えられている。
【0090】
液晶表示素子が形成された表示基板54は、2枚の基板の間に表示媒体である低分子液晶組成物が充填されている。前記の2枚の基板のうち一方の基板には、ブラックマトリクス、カラーフィルタ、対向電極、フォトスペーサー、配向膜等が設けられ、もう一方の基板には、液晶駆動電極、配線パターン、薄膜トランジスタ、配向膜等が設けられている。液晶表示装置としては、透過型、反射型、半透過型が挙げられる。液晶セルの動作モードに特に制限はなく、ねじれネマチック(Twisted Nematic)、垂直配向(Vertical Alignment)、OCB(Optically Compensated)、IPS(In−Plane Swiching)等のいずれでもよい。図5中に示すように、表示素子基板54は、主面50に沿ってマトリクス状に配列された複数の矩形の画素A1,A2,…;B1,B2,…を有している。
【0091】
偏光層55は、主面50に沿った特定方向の透過軸70a(図5中に模式的に示すように、水平方向に対して斜め45度に向いている。)を有している。また、位相差層57は、主面50に沿って、上記透過軸70aに対して互いに異なる角度で交差する遅相軸71a,71bをもつ複数の位相差領域(光学異方性領域)71A,71Bを有している。
【0092】
図5を参照して液晶表示装置51A、51Bにおける位相差層57の機能を説明する。図5は位相差層(光学異方性層)の機能を説明する模式図である。ここでは、表示素子基板54、偏光板55及び位相差層57のみを示し、光配向膜56等を省略して図示している。図5に示すように、位相差領域71Aの遅相軸71aは鉛直方向に向く一方、位相差領域71Bの遅相軸71bは水平方向に向いている。つまり、光出射側Fから見たとき、偏光層55の透過軸70aの方向(これを0度とする。)に対して、位相差領域71Aの遅相軸71aは45度に交差し、位相差領域71Bの遅相軸71bは135度に交差している。
【0093】
このような配置により、位相差領域71A,71Bは、偏光層55からの直線偏光を、互いに反対回りの円偏光に変換して、それぞれ光出射側Fへ出射する。この例では、偏光層55を通過した後、位相差領域71Aを通過した光は、左円偏光となって出射される一方で、偏光層55を通過した後、位相差領域71Bを通過した光は、右円偏光となって出射される。よって、観察者が、右円偏光を直線偏光に変換する円偏光板、及び左円偏光を直線偏光に変換する円偏光板を、それぞれのレンズに有する眼鏡(図示せず)を使用することで、上記表示装置から出射された画像を立体的な画像として観察することができる。このように、互いに異なる遅相軸方向をもつ位相差領域(光学異方性領域)71A、71Bを複数有する位相差層57(光学異方性層)を用いることにより、立体画像を表示可能な表示装置を提供することができる。
【0094】
図6、7は、本発明の液晶表示装置の一例として、液晶表示装置以外の表示装置を示す断面概略図である。液晶表示装置以外の表示装置61A、61Bとしては、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ、電界放出表示装置、表面伝導型電子放出素子を有する表示装置、電子ペーパー等が挙げられる。表示装置61A、61Bは、表示素子が形成された(複数の画素が配列された)表示素子基板62、偏光層63、パターン化配向膜64及び位相差層65を備えている。図7に示す表示装置61Bでは、位相差層65の光出射側に反射防止層66が形成されている。これらの表示装置61A、61Bは、パターン化配向膜64及び位相差層65として、本発明の製造方法で得られたパターン化配向膜及び光学異方性層が備えており、上記液晶表示装置51A、51Bと同様に立体画像を表示することができる。
【0095】
前記表示装置が有機EL表示装置の場合には、表示素子基板62として、有機EL表示素子が形成された表示素子基板を用いる。該表示素子基板は、まず透明電極を備えたガラス基板に、陽極、発光層等の有機膜及び陰極を蒸着によって積層し、有機EL素子及び配線パターンを形成する。次に、例えば、SUSやAl等によって形成された金属製キャップ(保護板)を透明電極ガラスに積層された各有機EL素子に被せ、接着剤によって透明電極ガラスに接着する。最後に、透明電極ガラスを有機EL素子毎に分割することで作製できる。有機EL表示素子が形成された表示素子基板を製造する方法としては、例えば特許第3626728号に記載の方法が挙げられる。
【0096】
前記表示装置がプラズマディスプレイの場合には、表示素子基板62として、プラズマ表示素子が形成された表示素子基板を用いる。該表示素子基板は、面放電を行う走査電極及び維持電極を配列して形成したガラス基板からなる前面板と、データ電極を配列して形成したガラス基板からなる背面板とで構成される。走査電極及び維持電極とデータ電極とは、マトリックスを組むように、かつ間隙に放電空間を形成するように平行に対向配置される。その外周部は、ガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、前面板と背面板との両基板間には、隔壁によって区画された放電セルが設けられ、この隔壁間のセル空間に蛍光体層が形成される。このような構成のプラズマ表示素子においては、ガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の各色の蛍光体を励起して発光させることにより、カラー表示を行っており、代表的には、特許第4226648号等が挙げられる。
【0097】
前記表示装置が電界放出表示装置の場合には、表示素子基板62として、電解放出表示基板を用いる。電界放出表示基板は、各画素領域内に電子放出源である多数の微小なカソード電極(マイクロチップ)を形成し、所定の電気信号に応じて対応する画素領域のマイクロチップを励起させることでアノード電極側に設けられた蛍光体を発光させるものであり、例えば特開平10−125262号記載の表示基板が挙げられる。
【0098】
前記表示装置が表面伝導型電子放出素子を有する表示装置の場合には、表示素子基板62として、表面伝導型電子放出素子を有する表示基板を用いる。表面伝導型電子放出素子を有する表示基板は、超微粒子膜により作ったナノオーダーのスリット間に電圧をかけトンネル効果により電子を放出させることで蛍光体を発光させる。
【0099】
前記表示装置が電子ペーパーの場合には、表示素子基板62の表示素子として、コレステリック液晶等の液晶を用いる方法、有機EL、反射フィルム反射型表示、電気泳動、ツイストボール、エレクトロクロミック方式、メカニカル反射型表示等を採用すればよい。
【実施例】
【0100】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0101】
調製例1
〔光配向性ポリマー(Z)の製造〕
式(Z−a)で示されるモノマーを、Macromol. Chem. Phys. 197,1919-1935 (1996)に記載される方法で製造した。得られたモノマー(Z−a)1.5部とメタクリル酸メチル0.1部とをテトラヒドロフラン16部中に溶解させ、60℃で24時間反応させた。次いで、反応液を室温まで放冷後、トルエンとメタノールとの混合液中に滴下することで、共重合体(Z)を得た。共重合体(Z)の数平均分子量は33000であった。共重合体(Z)において、モノマー(Z−a)に由来する構造成分の含有率は全構成成分に対して75mol%であった。
【0102】
【化2】

【0103】
【化3】

【0104】
得られた共重合体(Z)のポリスチレン換算数平均分子量(Mn)の測定は、GPC法を用いて、以下の条件で行った。
装置;HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム;TOSOH TSKgel MultiporeHXL−M
カラム温度;40℃
溶媒;THF(テトラヒドロフラン)
流速;1.0mL/min
検出器;RI
校正用標準物質;TSK STANDARD POLYSTYRENE F−40、F−4、F−288、A−5000、A−500
【0105】
〔光配向性ポリマー層の物性の確認〕
1.膜厚307nmの光配向性ポリマー層の物性
ガラス基板に、式(Z)で示される光配向性ポリマーの5質量%シクロペンタノン溶液を塗布し、120℃で3分間乾燥させて、膜厚307nmの光配向性ポリマー層を形成した。次に、偏光UV照射冶具付きスポットキュア(SP−7、ウシオ電機(株)製)を用いて、波長365nmにおいて15mW/cm2の放射照度で300秒間(積算光量4500mJ/cm2)直線偏光を照射した。光配向性ポリマー層について、下記のようにしてA(b)/A(a)、Δn(550)を求め、結果を表1に示した。
【0106】
〔吸光度変化〕
紫外可視分光光度計(UV−3150、島津製作所製)を用いて、光配向性ポリマー層について、直線偏光を照射する前の波長314nmにおける吸光度(A(a))、直線偏光を照射した後の波長314nmにおける吸光度(A(b))を測定した。
【0107】
〔複屈折率〕
直線偏光を照射した後の光配向性ポリマー層の波長550nmにおける位相差値を、エリプソメーター(M−220、日本分光株式会社製)で測定した。また、光配向性ポリマー層の膜厚を、レーザー顕微鏡(OLS−3000、オリンパス株式会社製)を用いて測定した。位相差値、膜厚から式(X)を用いて複屈折率を求めた。
【0108】
【表1】

【0109】
2.膜厚334nmの光配向性ポリマー層の物性
ガラス基板に、式(Z)で示される光配向性ポリマーの5質量%シクロペンタノン溶液を塗布し、120℃で3分間乾燥させて、膜厚334nmの光配向性ポリマー層を形成した。次に、偏光UV照射冶具付きスポットキュア(SP−7、ウシオ電機(株)製)を用いて、波長365nmにおいて15mW/cm2の放射照度で300秒間(積算光量4500mJ/cm2)直線偏光を照射した。光配向性ポリマー層について、前記と同じ方法でA(b)/A(a)、Δn(550)を求め、結果を表2に示した。
【0110】
【表2】

【0111】
調製例2〔液晶組成物の調製〕
表3に記載される成分を混合して、液晶組成物1を調製した。
【0112】
【表3】

【0113】
重合性液晶化合物:LC242(BASFジャパン社製、式(LC242)で表される化合物)
重合開始剤:イルガキュア369(BASFジャパン社製)
レベリング剤:BYK361N(ビックケミー・ジャパン社製)
溶剤:PGMEA(プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、東京化成工業社製)
【0114】
【化4】

【0115】
実施例1
ガラス基板に、式(Z)で示される光配向性ポリマーの5質量%シクロペンタノン溶液を塗布し、120℃で3分間乾燥させて、膜厚307nmの光配向性ポリマー層を形成した。
続いて、得られた光配向性ポリマー層上に、図1に示すように実部(遮光部)3の中に、ストライプ状の空隙部(偏光透過部)2が形成されたフォトマスク1(SUS製、空隙部及び実部の幅280μm)を置き、光配向性ポリマー層平面に対して垂直方向から、偏光UV照射冶具付きスポットキュア(SP−7、ウシオ電機(株)製)を用いて表4に記載の条件で、直線偏光を照射した。
次に、フォトマスクを除き、光配向性ポリマー層全面に第2の偏光UVを照射することにより、図2に示すような、互いに異なる遅相軸方向をもつ第1パターン領域12及び第2パターン領域13を有するパターン化配向膜を形成した。第2の偏光UVは、表4記載の照射条件で、第1の偏光UVの振動方向に対して90°回転した方向に振動する直線偏光を照射した。
偏光UVを施した面に、スピンコーターを用いて液晶組成物1を塗布し、塗布膜を形成した。この塗布膜を100℃に保持し、液晶組成物中の液晶成分を配向させた膜を得た。
その後、室温まで冷却し、紫外線をユニキュア(VB―15201BY−A、ウシオ電機株式会社製)を用いて波長365nmにおいて40mW/cm2の放射照度で1分間照射することにより、重合性液晶化合物を重合させて光学異方性層(位相差層)を作製した。
【0116】
実施例2、3
第2の偏光UV条件を、表3に記載の条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ガラス基板上に、光学異方性層(位相差層)を作製した。
【0117】
参考例1
第1の偏光UV条件を波長365nmにおいて放射照射15mW/cm2で2分間(積算光量1800mJ/cm2)、及び第2の偏光UV条件を波長365nmにおいて放射照度15mW/cm2で5分間(積算光量4500mJ/cm2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガラス基板上に、光学異方性層(位相差層)を作製した。
なお、直線偏光を照射する前の波長314nmにおける吸光度(A(a))は1.415、直線偏光を照射した後の波長314nmにおける吸光度(A(b))は1.100であり、A(b)/A(a)=0.78であった。また、直線偏光を照射した後の光配向性ポリマー層の波長550nmにおける位相差値(Re(550))は1.35nm、厚さは304nmであり、波長550nmにおける複屈折率(Δn(550))は0.004であった。
【0118】
【表4】

【0119】
<光学特性の測定>
光学異方性層の位相差値(nm)と配向角の測定は、ガラス基板上に作製した光学異方性層を剥離することなく、測定機(KOBRA−WPR、王子計測機器社製)で計測した。基材に使用したガラス基板には、ほとんど複屈折性が無いため、剥離せずに測定しても、ガラス基板上に作製した光学異方性層の位相差値を得ることができる。光学異方性層中の液晶成分の配向角、及び波長549nmにおける位相差値の測定の結果を表5に示す。光学異方性層において、パターン化配向膜の第1パターン領域12に対応する部分と、第2パターン領域13に対応する部分との配向角が異なる場合、互いに異なる遅相軸方向を有する領域であることを意味する。
【0120】
<表面状態の観察>
得られた光学異方性層について、偏光顕微鏡(BX51、オリンパス株式会社製)を用いて、400倍の倍率で観察した。表面に配向欠陥が認められなかったものを「A」、配向欠陥が認められたものを「B」とした。結果を表5に示す。
【0121】
【表5】

【0122】
実施例4
ガラス基板に、式(Z)で示される光配向性ポリマーの5質量%シクロペンタノン溶液を塗布し、120℃で3分間乾燥させて、膜厚334nmの光配向性ポリマー層を形成した。
続いて、得られた光配向性ポリマー層上に、図1に示すように実部(遮光部)3の中に、ストライプ状の空隙部(偏光透過部)2が形成されたフォトマスク1(SUS製、空隙部及び実部の幅280μm)を置き、光配向性ポリマー層平面に対して垂直方向から、偏光UV照射冶具付きスポットキュア(SP−7、ウシオ電機(株)製)を用いて表6に記載の条件で、直線偏光を照射した。
次に、フォトマスクを除き、光配向性ポリマー層全面に第2の偏光UVを照射することにより、図2に示すような、互いに異なる遅相軸方向をもつ第1パターン領域12及び第2パターン領域13を有するパターン化配向膜を形成した。第2の偏光UVは、表6記載の照射条件で、第1の偏光UVの振動方向に対して90°回転した方向に振動する直線偏光を照射した。
偏光UVを施した面に、スピンコーターを用いて液晶組成物1を塗布し、塗布膜を形成した。この塗布膜を100℃に保持し、液晶組成物中の液晶成分を配向させた膜を得た。
その後、室温まで冷却し、紫外線をユニキュア(VB―15201BY−A、ウシオ電機株式会社製)を用いて波長365nmにおいて40mW/cm2の放射照度で1分間照射することにより、重合性液晶化合物を重合させて光学異方性層(位相差層)を作製した。
【0123】
【表6】

【0124】
<パターン境界線の観察>
実施例4において、形成された位相差層のパターン境界の幅を、偏光顕微鏡(BX51、オリンパス株式会社製)を用いて計測した。境界線の太さは1.8μmであることを確認した。
【0125】
比較例1
〔フォトマスクを2度用いるパターン化位相差層の作製〕
ガラス基板に式(Z)で示される光配向性ポリマーの5質量%シクロペンタノン溶液を塗布し、120℃で3分間乾燥させて、膜厚334nmの光配向性ポリマー層を形成した。
続いて、得られた光配向性ポリマー層上に、図1に示すように実部(遮光部)3の中に、ストライプ状の空隙部(偏光透過部)2が形成されたフォトマスク1(SUS製、空隙部及び実部の幅280μm)を置き、光配向性ポリマー層平面に対して垂直方向から、偏光UV照射冶具付きスポットキュア(SP−7、ウシオ電機(株)製)を用いて表6に記載の条件で、直線偏光を照射した。フォトマスクを載せる際に、マスクの端部にマーカーを入れておいた。
次に、図1に示す実部(遮光部)3が空隙部(偏光透過部)、空隙部2が実部となっているフォトマスクを、前記のマーカーに端部を合わせて載せ、光配向性ポリマー層に第2の偏光UVを照射することにより、図2に示すような、互いに異なる遅相軸方向をもつ第1パターン領域12及び第2パターン領域13を有するパターン化配向膜を形成した。第2の偏光UVは、表6記載の照射条件で、第1の偏光UVの振動方向に対して90°回転した方向に振動する直線偏光を照射した。
偏光UVを施した面に、スピンコーターを用いて液晶組成物1を塗布し、塗布膜を形成した。この塗布膜を100℃に保持し、液晶組成物中の液晶成分を配向させた膜を得た。
その後、室温まで冷却し、紫外線をユニキュア(VB―15201BY−A、ウシオ電機株式会社製)を用いて波長365nmにおいて40mW/cm2の放射照度で1分間照射することにより、重合性液晶化合物を重合させて光学異方性層(位相差層)を作製した。
【0126】
比較例1で得られたパターン境界の幅を、偏光顕微鏡を用いて計測したところ、境界線の太さが7.2μmであり、実施例4に比べて、幅のずれが大きくなっていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の製造方法によれば、互いに異なる遅相軸方向をもつ光学異方性領域を複数有する光学異方性層を、パターンの位置ずれなく、容易に得ることができる。
【符号の説明】
【0128】
1:フォトマスク、
2:空隙部、
3:実部、
51A、51B、61A、61B:液晶表示装置
52:バックライト
53:偏光板
54、62:表示素子基板
55、63:偏光層
56、64:パターン化配向膜
57、65:位相差層
70a:透過軸
71a、71b:遅相軸
71A、71B:位相差領域(光学異方性領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶化合物を含む液晶組成物から形成され、互いに異なる遅相軸方向をもつ光学異方性領域を複数有する光学異方性層の製造方法であって、
(1)光配向性ポリマーを基板に塗布する光配向性ポリマー層の形成工程、
(2)前記光配向性ポリマー層に、下記要件A及び要件Bを満たすように、フォトマスクを介して第一偏光を照射する第一照射工程、
(3)前記第一偏光の照射後、フォトマスクを介さずに、第一偏光とは振動方向が異なる第二偏光を光配向性ポリマー層に照射しパターン化配向膜を形成する第二照射工程、
(4)前記パターン化配向膜上に、前記液晶組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布工程、
(5)前記塗布膜に含まれる液晶性成分が液晶状態となる温度に塗布膜を保持することにより、液晶性成分を配向させた膜を形成する配向工程、及び、
(6)前記液晶性成分を配向させた膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させる重合工程を含む製造方法。
要件A;第一偏光が照射される領域における光配向性ポリマー層の吸光度が、式(i)を満たす。
A(b)/A(a)≦0.95 (i)
[式(i)中、A(a)は第一偏光照射前の波長314nmにおける吸光度を表す。A(b)は第一偏光照射後の波長314nmにおける吸光度を表す。]
要件B;第一偏光が照射された領域における光配向性ポリマー層の複屈折率が、式(ii)を満たす。
Δn(550)≧0.005 (ii)
[式(ii)中、Δn(550)は、波長550nmにおける複屈折率を表す。]
【請求項2】
前記光配向性ポリマーが、光照射により架橋構造を形成し得るポリマーである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記第一偏光の振動方向と、前記第二偏光の振動方向とのなす角度が70°〜90°である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記液晶組成物が、さらに重合開始剤及び溶剤を含む液晶組成物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により製造された光学異方性層を備えた表示装置。
【請求項6】
重合性液晶化合物を含む液晶組成物から形成され、互いに異なる遅相軸方向をもつ光学異方性領域を複数有する光学異方性層と基板とを含む積層体の製造方法であって、
(1)光配向性ポリマーを基板に塗布する光配向性ポリマー層の形成工程、
(2)前記光配向性ポリマー層に、下記要件A及び要件Bを満たすように、フォトマスクを介して第一偏光を照射する第一照射工程、
(3)前記第一偏光の照射後、フォトマスクを介さずに、第一偏光とは振動方向が異なる第二偏光を光配向性ポリマー層に照射しパターン化配向膜を形成する第二照射工程、
(4)前記パターン化配向膜上に、前記液晶組成物を塗布して塗布膜を形成する塗工工程、
(5)前記塗布膜に含まれる液晶性成分が液晶状態となる温度に塗布膜を保持することにより、液晶性成分を配向させた膜を形成する配向工程、及び、
(6)前記液晶性成分を配向させた膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させる重合工程を含む製造方法。
要件A;第一偏光が照射される領域における光配向性ポリマー層の吸光度が、式(i)を満たす。
A(b)/A(a)≦0.95 (i)
[式(i)中、A(a)は第一偏光照射前の波長314nmにおける吸光度を表す。A(b)は第一偏光照射後の波長314nmにおける吸光度を表す。]
要件B;第一偏光が照射された領域における光配向性ポリマー層の複屈折率が、式(ii)を満たす。
Δn(550)≧0.005 (ii)
[式(ii)中、Δn(550)は、波長550nmにおける複屈折率を表す。]
【請求項7】
前記光配向性ポリマーが、光照射により架橋構造を形成し得るポリマーである請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記第一偏光の振動方向と、前記第二偏光の振動方向とのなす角度が70°〜90°である請求項6又は7記載の製造方法。
【請求項9】
前記液晶組成物が、さらに重合開始剤及び溶剤を含む液晶組成物である請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層体を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−168514(P2012−168514A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8468(P2012−8468)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】