説明

光学異方性膜の製造方法

【課題】光学異方性膜の製造方法を提供する。
【解決手段】ねじれらせん構造の光学異方性膜の製造方法であって、(1)光により捩れ力が変化する少なくとも1種の光学活性化合物を含む液晶組成物を、Tの温度に加熱すること、及び(2)T2の温度で前記液晶組成物に偏光を照射することをこの順に含む製造方法、ただし、T及びTはそれぞれ下記の式(XI)および式(XII)を満たす:TNI<T1<150 ℃ (XI)、TCN<T2<TNI (XII)(式中、TNIは前記液晶組成物がコレステリック相から等方相へと相転移するときの温度であり、TCNは前記液晶組成物が結晶相からコレステリック相へと相転移するときの温度である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置として、種々のモードの液晶表示装置が提案されている。中でもVA(Vertically Aligned)モードは、広視野角モードとして全方位にわたり広いコントラスト視野角特性を有するようになり、テレビ用途として既に家庭に普及しており、更には近年30インチを超える大サイズディスプレイも登場してきた。VAモード液晶表示装置では、黒表示時の斜め方向に生じる光漏れ及びカラーシフトを軽減するため、種々の特性の光学異方性膜等が光学補償に利用されている。
【0003】
例えば、VAモード液晶表示装置の色視野角特性の改善に寄与する光学補償シートとして、所定の光学特性を満足する位相差板が提案され、その材料として変性ポリカーボネートが用いられている(特許文献1参照)。
また、変形した(歪んだ)ねじれらせん構造の2軸性フィルム、及び均一なねじれらせん構造の2軸性フィルムを、液晶表示装置の光学補償に利用することが提案されている(特許文献2及び3参照)。特許文献2に記載の変形したねじれらせん構造の2軸性フィルムに関しては、面内位相差の発現性はあるが、窒素下でUV照射を行う必要があり、工程段階での負荷が大きかった。また、特許文献3に記載の均一なねじれらせん構造の2軸性フィルムに関しては、非偏光照射の後に偏光照射を行うので、最初の非偏光を照射した段階でマトリックスが硬化してしまい、その後の偏光照射では面内位相差の発現性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−37837号公報
【特許文献2】特表2008−505369号公報
【特許文献3】特表2008−505370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光学異方性膜の製造方法を提供することを課題とする。本発明は特に液晶表示装置の光学補償に有用な光学異方性膜に面内位相差を効率的に与えることができる製造方法の提供を課題とする。本発明はまた、液晶セル用基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
鋭意研究を行った結果、本発明者らは、光学異方性膜作製のために、液晶組成物を用いてコレステリック相を形成する際の温度調整によって、面内位相差の発現に差異があることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
すなわち、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
【0007】
[1]ねじれらせん構造の光学異方性膜の製造方法であって、下記(1)及び(2)をこの順に含む製造方法:
(1)光により捩れ力が変化する少なくとも1種の光学活性化合物を含む液晶組成物を、Tの温度に加熱すること、及び
(2)T2の温度で前記液晶組成物に偏光を照射すること、
ただし、T及びTはそれぞれ下記の式(XI)および式(XII)を満たす:
TNI<T1<150 ℃ (XI)
TCN<T2<TNI (XII)
式中、TNIは前記液晶組成物がコレステリック相から等方相へと相転移するときの温度であり、TCNは前記液晶組成物が結晶相からコレステリック相へと相転移するときの温度である。
[2]前記偏光照射の前に非偏光を照射する工程を含まない[1]に記載の光学異方性膜の製造方法。
【0008】
[3]前記少なくとも1種の光学活性化合物が、光異性化基又は光2量化基を有する化合物である[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記液晶組成物が、少なくとも1種のアキラルな液晶性化合物を含有すること[1]〜[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5]前記少なくとも1種のアキラルな液晶性化合物が、光異性化及び光2量化基を有しない化合物であることを特徴とする[4]に記載の製造方法。
[6]前記液晶組成物中における前記少なくとも1種の光学活性化合物の前記少なくとも1種のアキラルな液晶性化合物に対する割合が、10〜30質量%である[4]又は[5]に記載の製造方法。
【0009】
[7]前記少なくとも1種の光学活性化合物が、シンナメート基、スチルベン基、又はアゾベンゼン基を有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8]前記少なくとも1種の光学活性化合物が、下記一般式(1a)又は(1b)で表される化合物である[1]〜[7]のいずれか1項に記載の製造方法:
【0010】
【化1】

【0011】
、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又はCN基を表し;
及びPはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、アルキル基又はアリール基を表し;
及びSはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し;
mは2〜4の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ0〜4の整数を表す。
[9]前記少なくとも1種の光学活性化合物が、下記一般式(3a)〜(3d)のいずれかで表される部分構造を側鎖中に有する少なくとも1種の繰り返し単位を有するポリマーである[1]〜[8]のいずれか1項に記載の製造方法:
【0012】
【化2】

【0013】
、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又はCN基を表し;
及びPはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、アルキル基又はアリール基を表し;
及びSはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し;
mは2〜4の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ0〜4の整数を表す。
[10]前記少なくとも1種の繰り返し単位が、下記式(3a’)〜(3e’)のいずれかで表される繰り返し単位であることを特徴とする[9]に記載の製造方法:
【0014】
【化3】

【0015】
式中、式(3a)〜(3d)中と同一の記号についてはそれぞれ同義であり、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
[11]前記ポリマーが、下記式(4)で表される少なくとも1種の部分構造を側鎖中に有する繰り返し単位をさらに有することを特徴とする[9]又は[10]に記載の製造方法:
【0016】
【化4】

【0017】
式中、S41は、2価の連結基を表し;R41は水素原子又は置換基を表す。
[12]前記ポリマーが、前記式(3a)〜(3d)のいずれかで表される少なくとも1種の繰り返し単位と、下記式(4a)で表される少なくとも1種の繰り返し単位とを有するポリマーであることを特徴とする[9]〜[11]のいずれか1項に記載の製造方法:
【0018】
【化5】

【0019】
式中、式(4)中と同一の記号についてはそれぞれ同義であり、R42は、水素原子又はメチル基を表す。
[13]液晶セル用基板の製造方法であって、下記(11)〜(13)をこの順に含む製造方法:
(11)基板上に光により捩れ力が変化する少なくとも1種の光学活性化合物を含む液晶組成物を塗布すること;
(12)前記液晶組成物を、Tの温度に加熱すること;及び
(13)T2の温度で前記液晶組成物に偏光を照射すること、
ただし、T及びTはそれぞれ下記の式(XI)および式(XII)を満たす:
TNI<T1<150 ℃ (XI)
TCN<T2<TNI (XII)
式中、TNIは前記液晶組成物がコレステリック相から等方相へと相転移するときの温度であり、TCNは前記液晶組成物が結晶相からコレステリック相へと相転移するときの温度である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の光学異方性膜を内部に有する液晶セルの作製方法の一例を説明するための概略図である。
【図2】本発明の液晶セル用基板を有する液晶セルの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本明細書において、重合体には、1種類のモノマーからなる重合体のほか、2種類以上のモノマーからなるいわゆる共重合体も含む趣旨である。また、本明細書において、アルキル基等の「基」は、特に述べない限り、置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい。よって、例えば、「炭素数A〜Bのアルキル基」と言う場合、該アルキル基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。また、置換基を有する場合は、該置換基中の炭素数も、炭素数A及びBに含まれると解釈する。
【0022】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルタをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器株式会社製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
【0023】
【数1】

注記:上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表し、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
【0024】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記の測定において、平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。
【0025】
また、Rthの符号は面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+20°傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて測定した位相差がReを超える場合を正とし、Reを下回る場合を負とする。ただし、|Rth/Re|が9以上の試料では、回転自由台座付きの偏光顕微鏡を用いて、面内の進相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した状態で、偏光板の検板を用いて決定できる試料の遅相軸がフィルム平面に平行にある場合を正とし、また遅相軸がフィルムの厚み方向にある場合を負とする。
【0026】
また、本明細書におけるλは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmを指し、特に色に関する記載がなければ545±5nm又は590±5nmを指す。
また、本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。更に、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。更に、Reが0でないとは、Reが5nm以上であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、波長550nmを指す。また、本明細書において、「可視光」とは、波長が400nm〜700nmの光のことをいう。
【0027】
1. 光学異方性膜
本発明の製造方法によって、ねじれらせん構造の光学異方性膜、特に変形したねじれらせん構造の光学異方性膜を効率的に作製することができる。変形したねじれらせん構造の光学異方性膜とは、変形したねじれらせん構造を形成した光学異方性材料を含む光学異方性膜を意味する。ここで、光学異方性材料は通常コレステリック構造を形成できる重合性材料であればよく、このような材料として本発明においては、光により捩れ力が変化する光学活性化合物の少なくとも1種を含む液晶組成物が用いられる。すなわち、本発明は、より詳細には、変形したねじれらせん構造の光学異方性膜を、光により捩れ力が変化する光学活性化合物の少なくとも1種を含む液晶組成物をコレステリック配向(コレステリック配列に配向した状態をいう。)させた後、偏光を照射することにより形成する方法に関する。本発明の製造方法により製造される光学異方性膜は、らせん構造が変形することに由来して発生する位相差、すなわち光学的2軸性を示し、液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置、の光学補償に有用である。
【0028】
特に本発明の製造方法は、液晶組成物をコレステリック配向させてコレステリック相を形成する際に、前記液晶組成物をTの温度で加熱することを特徴とする。すなわち、偏光照射の前にTの温度で加熱することを特徴とする。また、Tの温度で加熱後かつ偏光照射の前にTの温度とし、Tの温度のまま偏光照射を行う。なお、TおよびTはそれぞれ下記の式(XI)および(XII)を満たす:
TNI<T1<150 ℃ (XI)
TCN<T2<TNI (XII)
式中、TNIは前記液晶組成物がコレステリック相から等方相へと相転移するときの温度であり、TCNは前記液晶組成物が結晶相からコレステリック相へと相転移するときの温度である。
【0029】
特定の理論に拘泥するものではないが、コレステリック相形成の際にTNIよりも高い温度に液晶組成物を保持することによって、液晶性組成物における光学異方性材料の配向がランダムとなり、その後液晶相形成温度(TCNからTNI の温度)となった際に、面内位相差の発現が望ましい形態で生じると考えられる。また、Tは化合物の安定性のために150 ℃より低く設定される。
【0030】
これらTNI及び、TCNとしては、製造材料に用いる液晶組成物に既知の値があればそれらの値を用いてもよいが、上記の工程前にそれぞれ測定を行って決定した値を用いてもよい。
TNI及び、TCN の測定方法としては特に限定されないが、温度可変装置を備えたホットプレート上に、液晶性組成物を塗布したプレパラートを載せ、偏光顕微鏡を用いた直交ニコル下における観察を行い、結晶相から温度を上昇させ、それぞれ、複屈折があり、かつ流動性のない状態から、複屈折があり、かつ流動性のある状態へ転移する温度をTCN、複屈折があり、かつ、流動性のある状態から、複屈折が観察されなくなる状態へ転移する温度をTNIとする方法を用いればよい
以下、本発明の光学異方性膜の製造方法に好ましく用いることができる材料について説明する。
【0031】
1.−1 光により捩れ力が変化する光学活性化合物
本発明では、光学異方性膜の製造に、光により捩れ力が変化する光学活性化合物を含む液晶組成物を利用する。該光学活性化合物は、併存する液晶性化合物の分子等に対して、所定の捩れ方向のらせん捩れを誘発し得る化合物であり、且つ光照射によって異なる捩れ力を示す少なくとも2つの状態間を変換可能な化合物である。光学活性化合物の一例は、キラルな部位とともに、光異性化基又は光2量化基を部分分子中に有する化合物である。該化合物は、光照射によって異性化又は2量化し、捩れ力の異なる他の状態に変換される。光異性化基及び光2量化基の例には、シンナメート基、スチルベン基、及びアゾベンゼン基が含まれる。
本発明では、上記特性を満足する光学活性化合物であれば、いずれも使用することができる。光により捩れ力の変化する光学活性化合物の例としては、特開2003−306490号公報、特開2003−306491号公報に記載の化合物が挙げられる、それらのいずれも使用することができる。
【0032】
1.−1−1 光学活性化合物の例:イソソルビト化合物類
本発明では、前記光学活性化合物として、イソソルビト化合物類を用いることが好ましく、その例には、下記一般式(1a)又は(1b)で表される化合物が含まれる。
【0033】
【化6】

【0034】
、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又はCN基を表し;
及びPはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、アルキル基又はアリール基を表し;
及びSはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し;
mは2〜4の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ0〜4の整数を表す。
【0035】
前記R、R、R及びRで表される置換基としては、以下の基を挙げることができる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0036】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0037】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。
これらの置換基は更にこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0038】
、R、R及びRで表される置換基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はハロゲン原子であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子であり、更に好ましくはアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。R、R、RおよびRは、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であるのが好ましい。
【0039】
及びRがそれぞれ表す置換もしくは無置換のアルキル基の例も上記と同様である。
【0040】
及びPはそれぞれ、置換もしくは無置換の、アルキル基又はアリール基を表す。P及びPで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。アルキル基は、分岐していてもまた環状であってもよい。P及びPで表されるアリール基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリール基の具体例として、フェニル基、ナフタレン基等が挙げられる。P及びPは、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基である。P及びPで表されるアルキル基、アリール基は置換基を有していてもよく、該置換基の例には、R、R及びRの例が含まれる。P及びPが置換基を有するアルキル基又はアリール基である場合は、該置換基は、重合性基を含んでいてもよい。重合性基を含んでいると、硬膜性が高くなり、また形成される光学異方性膜の光学特性の変動もより軽減できるので好ましい。また、前記化合物は重合性基を2以上含んでいてもよく、例えば、一方の末端であるP中に重合性基を含むとともに、他末端であるP側の末端部にも重合性基を有していてもよい。
重合性基としては特に限定されないが、付加重合(開環重合を含む)反応又は縮合重合反応が可能な重合性基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0041】
【化7】

【0042】
重合性基としては、ラジカル重合又はカチオン重合する重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、(メタ)アクリレート基(アクリレート基及びメタクリレート基の双方を含む意味の用語として用いる)とを挙げることができる。カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。なかでも脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましい。前記化合物は、重合性基を2種以上含んでいてもよく、その場合は、ラジカル重合性基とカチオン重合性基等、重合反応機構が異なる重合性基をそれぞれ有していてもよいし、同一の重合性基を有していてもよい。
【0043】
及びSはそれぞれ、−O−、−CO−、−NR−、アルキレン基、又はアリーレン基を含むことが好ましく、−O−、−CO−、−NR−、アルキレン基を含んでいることが特に好ましく、−O−、−CO−、アルキレン基を含んでいることがより更に好ましい。SおよびSがアルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例には、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラブチレン、ヘキサメチレン基が含まれる。SおよびSが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン、ナフタレン基等が挙げられる。S1およびS2が、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、特に好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。SおよびSとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。
【0044】
前記式中、mは2〜3の整数であることが好ましい。
前記式中、n1及びn2はそれぞれ0〜2の整数であることが好ましい。
【0045】
以下に、前記一般式(1a)又は(1b)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
本発明に用いられる光学活性化合物は、ポリマーであってもよい。その一例として、側鎖に下記一般式(3a)〜(3d)で表される部分構造を有する繰り返し単位を少なくとも1種有するポリマーが挙げられる。
【0049】
【化10】

【0050】
前記式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又はCN基を表し;
及びPはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、アルキル基又はアリール基を表し;
及びSはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し;
mは2〜4の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ0〜4の整数を表す。
これらの具体例、及び好ましい範囲については、上記式(1a)及び(1b)中のそれぞれの具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0051】
前記側鎖が結合している、ポリマーの主鎖の一部又は全部を構成する基については、特に制限はない。選択するモノマーの種類によって決定される。前記繰り返し単位の例には、前記一般式(3a)〜(3d)で表される部分構造をエステル部に有する(メタ)アクリレート類から誘導される下記一般式(3a’)〜(3d’)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0052】
【化11】

【0053】
式中、式(3a)〜(3d)中と同一の記号についてはそれぞれ同義であり、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0054】
また、本発明には、前記式(3a)〜(3d)で表される部分構造を側鎖に有する繰り返し単位とともに、メソゲン構造を側鎖に有する繰り返し単位を有するポリマーを用いることができる。メソゲン構造を側鎖に有する繰り返し単位を有するポリマーを用いることにより、別途、液晶性化合物を用いなくても、所望の光学異方性膜を作製できる場合がある。ここで、「メソゲン」とは、液晶の基本骨格をいい、通常、液晶分子は硬い(rigid)部分構造と1以上の柔軟な(flexible)部分構造とからなる。この硬い部分構造が分子を配向させ、一方、柔軟な部分構造は液晶に流動性を与える。この硬い部分構造であって、液晶に不可欠な部分構造を「メソゲン」という。一例としては、下記式(4)で表されるメソゲン構造が挙げられる。前記光学活性化合物として、下記式(4)で表される部分構造の少なくとも1種を側鎖中に有する繰り返し単位をさらに有するポリマーを用いることができる。
【0055】
【化12】

【0056】
式中、S41は、2価の連結基を表し;R41は水素原子又は置換基を表す。
【0057】
41で表される2価の連結基としては、−O−、−CO−、−NR−、アルキレン基、又はアリーレン基を含むことが好ましく、−O−、−CO−、−NR−、アルキレン基を含んでいることが特に好ましく、−O−、−CO−、アルキレン基を含んでいることがより更に好ましい。S41がアルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例には、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラブチレン、ヘキサメチレン基が含まれる。S41が、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン、ナフタレン基等が挙げられる。S1およびS2が、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、特に好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。S41として挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。
【0058】
41が表す置換基については特に制限はない。R等が表す置換基の例と同様であり。その好ましい例には、ハロゲン原子、シアノ基、C〜Cの置換もしくは無置換のアルキル基、及びC〜Cの置換もしくは無置換のアルコキシ基等が含まれる。また、R41は、末端に重合性基を有していてもよく、重合性基の例は、P等の重合性基の例と同様である。
【0059】
前記式(4)で表される部分構造の側鎖が結合している、ポリマーの主鎖の一部又は全部を構成する基については、特に制限はない。選択するモノマーの種類によって決定される。前記繰り返し単位の例には、上記一般式(4)の側鎖をエステル部に有する(メタ)アクリレート類から誘導される下記一般式(4a)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0060】
【化13】

【0061】
式中、式(4)中と同一の記号についてはそれぞれ同義であり、R42は、水素原子又はメチル基を表す。
【0062】
前記光学活性化合物が、前記一般式(3a)〜(3d)のいずれかで表される部分構造の少なくとも1種を側鎖中に有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位A」という場合がある)の少なくとも1種と、上記式(4)で表される部分構造の少なくとも1種を側鎖中に有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位B」という場合がある)を有するポリマーである態様では、繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとの割合については特に制限はない。繰り返し単位Aが5質量%〜40質量%であり、繰り返し単位Bが60質量%〜95質量%であるのが好ましく、繰り返し単位Aが10質量%〜30質量%であり、繰り返し単位Bが70質量%〜90質量%であるのがより好ましい。また、ポリマーの分子量についても特に制限はなく、一般的に高分子として認識される分子量10000以上の範囲であるのは勿論のこと、分子量が1000以上10000未満の準高分子として認識される範囲、及び重合度が2〜20程度のオリゴマーとして認識される範囲も含むものとする(岩波理化学辞典、第3版増補版、玉虫文一ら編集、449頁、岩波書店、1982)。即ち、本明細書で「高分子」及び「重合体」というときは、分子量が1000以上で、かつ重合度が20以上であるものを意味するものとする。前記重合体は、質量平均分子量は1,000〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜500,000であることが特に好ましく、5,000〜100,000であることがより更に好ましい。
前記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定できる。
【0063】
本発明に、光学活性化合物として利用可能なポリマーの例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

【0066】
前記ポリマーは、種々の方法で製造することができる。例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、又は、アニオン重合などの重合方法を用いることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用でき、特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤やラジカル光重合開始剤などの公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。
このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(例えばアセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等);ケトンパーオキサイド(例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等);ハイドロパーオキサイド(例えば過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等);ジアルキルパーオキサイド(例えばジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等);パーオキシエステル類(例えばtert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等);アゾ系化合物(例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等);過硫酸塩類(例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)、などが挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、一種を単独で使用することもできるし、あるいは二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0067】
前記ラジカル重合方法は、特に制限されるものではなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などを取ることができる。典型的なラジカル重合方法である溶液重合については、更に具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子化学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)などに記載されている。
【0068】
前記溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機溶媒が好ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、などが挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、一種単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。更に、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0069】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50℃〜200℃の温度範囲内で10分間〜30時間加熱することが好ましい。更に、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0070】
前記重合体を好ましい分子量範囲で得るためには、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法を利用するのが有効である。上記連鎖移動剤としては、メルカプタン類(例えばオクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等);ポリハロゲン化アルキル(例えば四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタン等);低活性モノマー類(例えばα−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され、精密な制御が必要であるが、通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01mol%〜50mol%程度であり、好ましくは0.05mol%〜30mol%、特に好ましくは0.08mol%〜25mol%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと別途に添加することも可能である。
【0071】
1.−2 液晶性化合物
本発明の光学異方性膜の作製には液晶組成物を利用する。該液晶組成物の一例は、前記光学活性化合物の少なくとも1種と、液晶性化合物の少なくとも1種とを含有する組成物である。一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。更にそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本態様では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物を用いることが好ましい。
【0072】
なお、本発明に用いる液晶性化合物は、前記光学活性化合物の存在下で、コレステリック配向可能な液晶性化合物であればよく、液晶性化合物そのものが、光学活性体である必要はなく、アキラルな液晶性化合物を利用することができる。光学異方性膜の製造過程において、光学特性発現の制御が容易である等の観点から、本発明では、アキラルな液晶性化合物を利用することが好ましい。同様の観点から、本発明では、光異性化基や光2量化基などの官能基を含まない液晶性化合物を利用することが好ましい。
【0073】
棒状液晶性化合物としては、例えばアゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の重合性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の重合性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
【0074】
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
ただし、前記一般式(I)中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3及びL4はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表すが、L3及びL4の少なくとも一方は、−O−又はO−CO−O−が好ましい。A1及びA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
【0075】
以下に、上記一般式(I)で表される重合性基を有する棒状液晶性化合物について更に詳細に説明する。式中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、重合性基である。重合性基は付加重合反応又は縮合重合反応が可能な重合性基であることが好ましい。例えば、前記一般式(1)の部分構造中(具体的にはZ中)に重合性基を有する場合は、該重合性基と重合反応可能な重合性基であってもよい。以下に重合性基の例を示す。
【0076】
【化16】

【0077】
、L、L、及びLで表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR−、−NR−CO−O−、及びNR−CO−NR−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記Rは炭素原子数が1〜7のアルキル基又は水素原子である。この場合、L及びLの少なくとも一方は、−O−又はO−CO−O−(カーボネート基)であることが好ましい。前記式(I)中、Q−L及びQ−L−は、CH=CH−CO−O−、CH=C(CH)−CO−O−及びCH=C(Cl)−CO−O−CO−O−が好ましく、CH=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0078】
及びAは、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12の脂肪族基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子、又は硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
【0079】
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W−L−W
ただし、前記一般式(II)中、W及びWは各々独立して、二価の環状脂肪族基、二価の芳香族基又は二価のヘテロ環基を表し、Lは単結合又は連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L〜Lで表される基の具体例、−CH−O−、及びO−CH−が挙げられる。nは1、2又は3を表す。
【0080】
及びWとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、などが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体及びシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W及びWは、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基等)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、炭素原子数1〜10のアシル基(例えばホルミル基、アセチル基等)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、などが挙げられる。
【0081】
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0082】
【化17】

【0083】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報に記載の方法で合成することができる。
【0084】
【化18】

【0085】
【化19】

【0086】
【化20】

【0087】
【化21】

【0088】
【化22】

【0089】
【化23】

【0090】
1.−3 液晶組成物の調製
本発明の光学異方性膜の形成に用いられる液晶組成物中、上記特性を満足する光学活性化合物の含有量は、組成物の全質量(塗布液等、溶媒を含む態様では、溶媒を除いた固形分の全質量)中、5〜40質量%であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。2種以上利用する場合は、合計が前記範囲であるのが好ましい。また、液晶性化合物を含有する態様では、液晶性化合物は、組成物の全質量中、60〜95質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがより好ましい。
【0091】
また、光学活性な部分構造を側鎖に有する繰り返し単位と、メソゲン構造を側鎖に有する繰り返し単位とを有するポリマーを、光学活性化合物として利用する態様では、上記した通り、液晶性化合物を別途用いなくてもよい。従って、本態様では、前記ポリマーは、上記光学活性化合物及び液晶性化合物の好ましい含有量の合計となり、具体的には、50〜99質量%であるのが好ましく、70〜99質量%であることがより好ましい。勿論、当該ポリマーと液晶性化合物を併用してもよい。
【0092】
また、前記液晶組成物が、前記光学活性化合物とともにアキラルな液晶性化合物を含有する態様では、前記光学活性化合物の前記アキラルな液晶性化合物に対する割合が、10〜30質量%であることが好ましい。前記光学活性化合物のアキラルな液晶性化合物に対する割合が、10質量%以下であると、反射波長が可視域となってしまい、光学異方性膜が着色する場合がある。また、前記光学活性化合物のアキラルな液晶性化合物に対する割合が、30質量%を超えると、コレステリック配向状態とならない場合がある。
【0093】
1.−3−1 添加剤
前記液晶組成物は、添加剤を含有していてもよい。
配向剤:
前記組成物は、光学活性化合物として用いるポリマー中のメソゲン構造の配向性、所望により添加される液晶性化合物の配向性の改善のために、配向剤を含有していてもよい。例えば、下記一般式(11)〜(13)で表される化合物の少なくとも一種を含有させることで、前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を実質的に水平配向させることができ、光学活性化合物と併用することにより、安定なコレステリック配向を得ることができる。
以下、下記一般式(11)〜(13)について、順に説明する。
【0094】
【化24】

【0095】
ただし、前記一般式中、R11、R12及びR13は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X11、X12及びX13はそれぞれ単結合又は二価の連結基を表す。R11〜R13で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X11、X12及びX13で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい
【0096】
【化25】

【0097】
ただし、前記一般式(12)中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R11、R12、及びR13で表される置換基の好ましい範囲として挙げてものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0098】
【化26】

【0099】
ただし、前記一般式(13)中、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R14、R15、R16、R17、R18及びR19でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(7)におけるR11、R12及びR13で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−099248号公報の段落番号[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0100】
前記一般式(11)〜(13)のいずれかで表される化合物の添加量としては、前記液晶組成物の全質量の0.01質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%がより好ましく、0.02質量%〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(11)〜(13)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0101】
重合開始剤:
本発明に用いる液晶組成物は、硬化性であることが好ましく、そのためには、前記光学活性化合物、及び所望により添加される液晶性化合物等の成分のいずれか少なくとも1種が、重合性基を有していればよい。重合反応を迅速に行い、十分な硬度の硬化膜を得るためには、前記液晶組成物は、重合開始剤を含有していることが好ましい。重合開始剤は、進行させる重合反応に応じて、選択される。利用可能な重合反応は、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応のいずれでもよいが、光重合反応がより好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。
【0102】
前記光重合開始剤の使用量は、前記液晶組成物中、固形分として0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
本発明の光学異方性膜の作製に用いられる液晶組成物は二色性重合開始剤を含まないことが好ましい。
【0103】
1.−3−2 溶媒
光学異方性膜の形成に用いる組成物は、塗布液として調製することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。該有機溶媒としては、アミド(例えばN,N−ジメチルホルムアミド);スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド);ヘテロ環化合物(例えばピリジン);炭化水素(例えばベンゼン、ヘキサン);アルキルハライド(例えばクロロホルム、ジクロロメタン);エステル(例えば酢酸メチル、酢酸ブチル);ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン);エーテル(例えばテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン);1,4−ブタンジオールジアセテートなどが含まれる。これらの中でも、アルキルハライド及びケトンが特に好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
本発明の製造方法においては、塗布液として調製された液晶組成物で使用されている溶媒の沸点がTNI以上の場合のみならず、該溶媒の沸点がTNIより低く溶媒の除去(乾燥)にTNI以上での加熱を必要としない場合でも、偏光照射前にTNIより高温のTでの加熱を行うことによって、製造される光学異方性膜に面内位相差を効率的に与えることができる。
【0104】
2. 光学異方性膜の製造方法
以下本発明の製造方法について具体的に説明する。
本発明の光学異方性膜は、光により捩れ力が変化する光学活性化合物を含む液晶組成物をコレステリック配向させた後、偏光を照射することにより形成することができる。
液晶組成物はコレステリック配向させる際、基板又は膜の作製後に剥離可能な仮支持体等の表面に塗布されていればよい。
前記組成物の塗布は、従来公知の種々の方法で行うことができる。後述する様に、本発明の光学異方性膜を液晶セル内に配置して、各画素に対応する領域ごとに形成する場合は、インクジェット方式を利用して、基板表面に塗布することが好ましい。
【0105】
前記組成物を塗布した後、塗膜を乾燥すると、溶媒の蒸発とともに、光学活性化合物の捩れ力により、例えば、併存するアキラルな液晶性化合物の分子がコレステリック配向する。本発明においてはこの際に、Tに加熱することを特徴とする。Tでの保持時間は1〜30分であればよく、2〜10分であることが好ましい。
前記組成物はその後Tとすればよい。TはTNI−1〜TNI−40 ℃であればよく、TNI−10〜TNI−30 ℃であることが好ましい。また、Tでの保持時間は1〜30分であればよく、2〜10分であることが好ましい。
【0106】
次に、コレステリック配向状態にある組成物に、温度Tにおいて偏光を照射し、コレステリック配向のねじれらせん構造を歪ませる。この歪みは、偏光照射によって、光学活性化合物の分子のうち、分子中の光異性化基等は、照射された偏光の振動面に異性化基が存在している分子のみが異性化等して、異性化前の状態とは捩れ力が異なる他の状態に変化する。その状態の光学活性化合物分子の近傍のねじれらせん構造は、捩れ力の変化により歪む。その結果、変形した捩れ配向の光学異方性膜となり、該光学異方性膜は、均一なねじれらせん配向では得られない、光学補償に必要な十分な面内異方性を示す。
なお、本発明の光学異方性膜は、照射される偏光と振動面が平行な方向に面内の遅相軸が存在する。
【0107】
偏光照射の照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることが更に好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることが更に好ましい。照射波長としては300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することが更に好ましい。
【0108】
偏光照射後に加熱すると、配向が熟成されて、より大きな面内レターデーションを得ることができる。 前記加熱温度は50℃〜250℃であることが好ましく、50℃〜200℃がより好ましく、70℃〜170℃が更に好ましい。
【0109】
本発明の方法では、偏光を照射する工程の前に、非偏光を照射する工程を含まないことが好ましい。非偏光を照射する工程を含まないことにより、面内位相差を十分に発現させることができる。なお、偏光を照射した後に、耐熱性の改善のために、さらに光照射を実施するのが好ましい。偏光照射を実施した後の、耐熱性改善のための光照射は、偏光照射であっても、非偏光照射であってもよい。硬化のための光照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることが更に好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることが更に好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300nm〜450nmにピークを有することが好ましく、350nm〜400nmにピークを有することが更に好ましい。非偏光照射の場合は200nm〜450nmにピークを有することが好ましく、250nm〜400nmにピークを有することが更に好ましい。
【0110】
本発明の光学異方性膜の厚さは、0.1μm〜20μmであることが好ましく、0.5μm〜10μmであることが更に好ましい。
【0111】
3. 光学異方性膜の光学特性
本発明製造方法によって、面内レターデーションReが発現した光学異方性膜が容易に作製できる。このような光学異方性膜は、例えば二軸性フィルムに要求される特性を満足し得る。
二軸性を有する光学異方性膜は、特にVAモードの液晶表示装置の光学補償に用いるのに適する。二軸性フィルムは、一般的には、nx、ny及びnzが全て異なるものと理解されている。一例としては、nx>ny>nzを満足する光学特性を示すものが挙げられる。本発明の製造方法によって、Re(550)が20〜300nm程度であり、Nz値(ただし、Nz=Rth(550)/Re(550)+0.5)が、1.1〜7.0程度の特性を示す二軸性フィルムとして機能し得る光学異方性膜の作製が可能である。このような光学異方性膜は、従来用いられている二軸性フィルムの代替として、液晶表示装置の光学補償に利用することができ、特にVAモードの液晶表示装置の光学補償に用いるのに適する。光学異方性膜を二軸性フィルムとして(例えば、VAモードの液晶表示装置の光学補償に)利用する場合は、Nzは、1.5〜8.0であるのが好ましく、2.0〜7.0であるのが好ましい。なお、Reは、値が大きい方が、二軸性が高いことを表すパラメーターである。一方、Nzファクターは、値が小さい方が二軸性が高いことを表すパラメーターである。また、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)は、20nm〜300nmであることが好ましく、20nm〜200nmがより好ましく、20nm〜100nmがより更に好ましい。VAの補償に必要な二軸性光学異方性膜のReは約50nmであり、適したReとNzファクターから外れると、視野角依存性などが低下することがある。
【0112】
本発明の製造方法によって、反射波長400nm未満、及び380〜780nmの波長の光に対して実質的に透明である光学異方性膜の作製が可能である。光学異方性膜の透明性は、用いる液晶材料の屈折率とらせんのピッチとで定まる。らせんのピッチは、カイラル剤の添加量に比例し、多く添加するとピッチも拡がることになる。反射波長は、液晶材料の屈折率とらせんのピッチとの積であるので、液晶材料の屈折率に従ってカイラル剤の添加量を調整することにより、反射波長の値を決定することができる。
【0113】
4. 光学異方性膜の用途
4.−1 インセル光学異方性膜
本発明の製造方法により、配向膜を必要とせずに、偏光を利用して、所望の光学特性を発現した光学異方性膜が作製可能なので、微細な領域ごとの光学異方性膜(光学異方性層)の形成に有利であり、特に、液晶セル内の各画素に対応した領域に形成するのに有利である。
液晶セル内に形成する態様では、前記光学異方性膜の光学特性は、R光、G光及びB光が入射した際の視野角補償に最適な光学特性にそれぞれ調整されていることが好ましい。即ち、カラーフィルタ層のR層に対応する領域に形成する光学異方性膜は、その光学特性が、R光が入射した際の視野角補償に対して最適に調整され、G層に対応する領域に形成する光学異方性膜の光学特性は、G光が入射した際の視野角補償に対して最適に調整され、かつB層に対応する領域に形成する光学異方性膜の光学特性は、B光が入射した際の視野角補償に対して最適に調整されていることが好ましい。光学異方性膜の光学特性は、例えば、光学活性化合物及び液晶性化合物の種類や、配向制御剤の種類又はその添加量、膜厚、及び偏光照射条件のいずれかによって好ましい範囲に調整することができる。
また、光学異方性膜そのものをカラーフィルタとしても機能させてもよい。その場合は、光学異方性膜形成用の組成物中に、R色、G色及びB色それぞれの顔料等を添加する。
【0114】
光学異方性膜を、液晶セル基板の表面上に、各画素に対応する領域ごとに形成する方法の一例として、インクジェット方式を利用する方法が挙げられる。より具体的には、前記光学活性化合物を含有する流体を、ブラックマトリクスによって隔てられた領域内にインクジェット方式で塗布し、その後、偏光照射によって所望の光学特性を発現させた後、所望により加熱熟成して作製することができる。
【0115】
以下に、光学異方性膜を内部に有する液晶セルの作製方法の一例を、図1を参照して詳細に説明する。
ガラス等からなる透明基板11上に、例えば、ネガ型ブラックマトリクスレジスト材料を使用し、フォトリソ法を用いてドットパターンのブラックマトリクス12(隔壁)を形成し、隔壁12によって隔てられた複数の微細領域aを形成する(図1(a))。なお、ブラックマトリクス12の形成においては、ブラックマトリクスの形成材料及び形成プロセスについては特に限定はなく、レジスト材料によるフォトリソ法を利用する方法以外の方法であっても、ブラックマトリクスパターンが形成できれば問題ない。ブラックマトリックス12のパターンは、ドットパターンに限定されるものではなく、形成するカラーフィルタの配列については特に制限はなく、ドット配列、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等いずれであってもよい。
【0116】
ブラックマトリックス12は、パターン形成後にF原子を含むガス(CF4等)でプラズマ処理され、その表面が撥インク化処理されるのが好ましい。ブラックマトリクス12の撥インク化処理は、上記プラズマ処理以外に、ブラックマトリクス材料中に撥インク剤を含有させてもよいし、ブラックマトリックスを、ガラス基板11に対して撥インク性を示す材料から形成してもよい。
【0117】
次に、所望により撥インク化処理したブラックマトリクス12で隔てられた微細領域aへ、前記光学活性化合物を含有する流体13’を、インクジェット装置を用いて吐出して、微細領域a内に前記流体からなる層(図1(b))を形成する。前記溶液の吐出が完了した後、加熱熟成によりコレステリック配向させ、偏光照射することによって、ねじれらせん構造を歪ませて、面内異方性を発現し、光学異方性膜13を形成する(図1(c))。偏光照射前、偏光照射中、又は偏光照射後に所望により加熱してもよく、その場合は、加熱装置を使用してもよい。
【0118】
このようにして形成された1層目の光学異方性膜13の上に、カラーフィルタ用インク液14’によって2回目のインク吐出を行い(図1(d))、これを乾燥、及び所望により露光等して、2層目のカラーフィルタ層14が形成される((e))。
【0119】
光学異方性膜13及びカラーフィルタ層14を形成する際のインク等の射出条件については特に制限されないが、光学異方性膜形成用の流体やカラーフィルタ層形成用のインクの粘度が高い場合は、室温あるいは加熱下(例えば、20℃〜70℃)において、インク粘度を下げて射出することが射出安定性の点で好ましい。インク等の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク等の温度を出来るだけ一定に保つことが好ましい。
【0120】
前記インクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう)は、特に制限されず、公知の種々のものを使用することができる。コンティニアスタイプ、ドットオンデマンドタイプが使用可能である。ドットオンデマンドタイプのうち、サーマルヘッドでは、吐出のため、特開平9−323420号公報に記載されているような稼動弁を持つタイプが好ましい。ピエゾヘッドでは、例えば、欧州特許A277,703号公報、欧州特許A278,590号公報などに記載されているヘッドを使うことができる。ヘッドは組成物の温度が管理できるよう温調機能を持つものが好ましい。射出時の粘度は5〜25mPa・sとなるよう射出温度を設定し、粘度の変動幅が±5%以内になるよう組成物温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動することが好ましい。
【0121】
なお、光学異方性膜13及びカラーフィルタ層14は、その形成順序が入れ替わっていてもよく、即ち、カラーフィルタ層14の上に光学異方性膜13が積層された構成であってもよい。かかる態様は、前記製造方法例において、光学異方性膜13を形成する工程とカラーフィルタ層14を形成する工程の順番を入れ替えることにより作製することができる。
また、カラーフィルタ形成用インクに前記光学活性化合物を混合して用いてもよい。
【0122】
光学異方性膜13は、同一種の溶液等の流体を用いて形成されていてもよいし、その上に形成されるカラーフィルタ層14の色相に応じて、それぞれ最適な光学異方性を発現するように、互いに異なる材料を含む及び/又は配合量が互いに異なる流体を用いて形成されていてもよい。光学異方性膜13の形成時において、カラーフィルタ層の色相に応じて異なる溶液等を用いる場合は、それぞれの溶液を全て吐出した後、同時に乾燥を行ってもよいし、1種ずつ吐出及び乾燥のプロセスを行ってもよい。また、カラーフィルタ層14の形成時においても、例えば、R層、G層、及びB層それぞれの形成用のインク液を全て吐出した後、同時に乾燥を行ってもよいし、1種ずつ吐出及び乾燥のプロセスを行ってもよい。また、カラーフィルタの色も、赤、緑、青の3色に限定される必要はなく、多原色のカラーフィルタであってもよい。
【0123】
このようにして、第一の基板の各画素に相当する、ブラックマトリックス12で隔てられた領域毎に、光学異方性膜及びカラーフィルタ層を形成した後、この第1の基板と、第2の基板とを貼り合わせる。貼り合わせる前に、カラーフィルタ層14の上に、透明電極層及び/又は配向層を形成してもよい。例えば、特開平11−248921号公報、特許第3255107号公報に記載のように、カラーフィルタを形成する着色樹脂組成物を重ねることで土台を形成し、その上に透明電極を形成し、更に必要に応じて分割配向用の突起を重ねることでスペーサを形成することが、コストダウンの観点で好ましい。
【0124】
第1の基板と第2の基板の対向面間の空壁に、液晶材料を注入して液晶層を形成して、液晶セルを作製することができる。第一の基板は、前記光学異方性膜とカラーフィルタ層が形成された面を内側にして、即ち、対向面にして配置するのが好ましい。その後、双方の基板の外側表面に、それぞれ偏光板、光学補償フィルム等を貼り付けて、液晶表示装置を作製することができる。
【0125】
前記製造方法の例では、光学異方性膜形成用の流体、及びカラーフィルタ層形成用のインク液を所定の位置に配置するにあたって、隔壁であるブラックマトリクスを形成した後、インクジェット方式を利用しているので、第一の基板上の所定の領域に正確に光学異方性膜及びカラーフィルタ層を形成することができる。従って、構造を複雑化することなく、少ない工程数で製造することができる。
【0126】
なお、前記方法では、インクジェット法によるインク吐出を利用して、各微細領域に光学異方性膜及びカラーフィルタ層を形成する例を説明したが、インクジェット法以外の、例えば印刷法等を利用して形成してもよい。
【0127】
4.−2 液晶セル
本発明は、基板と、その上に、本発明の光学異方性膜とを有する液晶セル用基板の製造方法にも関する。本発明の製造方法で製造される液晶セル用基板の一態様は、基板と、液晶セルの視野角補償のための本発明の光学異方性膜と、カラーフィルタ層とを有し、該光学異方性膜が、その下又は上に配置されたカラーフィルタ層の色相に応じて(例えば、R、G、Bの色ごとに)、液晶セルの視野角補償に最適な光学特性を有する液晶セル用基板である。基板の材料としては透明であれば特に限定はなく、例えば、金属性支持体、金属張り合わせ支持体、ガラス、セラミック、合成樹脂フィルム等を使用することができる。複屈折が小さいことが好ましく、ガラスや低複屈折性ポリマー等が好ましい。その他、前記基板の表面には、液晶材料に対して配向規制能を有する配向膜、及び透明電極層が形成されていてもよい。
【0128】
液晶セル用基板は、前記光学異方性膜が形成された側と反対外の表面(液晶表示装置内に組み込まれるときは、液晶セル外として配置される側の表面)に、更に第2の光学異方性膜を有していてもよい。第2の光学異方性膜は、液晶セル内に配置される本発明の光学異方性膜とともに、液晶セルの光学補償に寄与する。第二の光学異方性膜の光学特性は、用いられる液晶表示装置のモードによって好ましい範囲が異なる。例えば、VAモード用の液晶セル基板とする場合は、基板の内側表面に、光学異方性膜を配置し、基板外側表面に第2の光学異方性膜を配置してもよい。
【0129】
図2に液晶セル基板を有する液晶セルの一例の概略断面図を示す。
図2(a)に示す液晶セル用基板は、透明基板21上に、隔壁としてブラックマトリクス22が形成され、隔壁で隔てられた微細領域内にインクジェット方式により吐出して形成された、パターン状のカラーフィルタ層23及び光学異方性膜27が形成されている。更にその上に透明電極層25と配向層26とを有する。図2には、R、G、Bのカラーフィルタ層23を形成した態様を示したが、R、G、B、W(白)の層からなるカラーフィルタ層を形成してもよい。光学異方性膜27はr、g、b領域に分割され、R、G、Bそれぞれのフィルタ層23の色相に対して、それぞれ最適な位相差特性を有している。
【0130】
更に、図2(b)のように光学異方性膜27とともに光学補償に寄与する第2の光学異方性膜24を液晶セル基板の外側表面に配置してもよい。第2の光学異方性膜24をセル内の光学異方性膜27と同じカラーフィルタ側基板側に配置してもよいし、図は省略するが対向基板側に配置してもよい。対向基板側には一般にTFTアレイなどの駆動用電極が配置されていることが多く、対向基板上であればどの位置に配置されてもよいが、TFTを有するアクティブ駆動型の場合、光学異方性膜の耐熱性からシリコン層よりも上であることが好ましい。
【0131】
4.−3 液晶表示装置
本発明の製造方法で製造された光学異方性膜は液晶表示装置に適用することができる。前記光学異方性膜は、液晶セルの外側であって、液晶セルと偏光子との間に配置してもよいし、上記した通り、液晶セル内に配置してもよい。また、本発明の光学異方性膜とともに光学補償に寄与する第2の光学異方性膜を更に有していてもよい。
図3は液晶表示装置の一例の概略断面図である。
図3(a)及び(b)の例はそれぞれ、図2(a)及び(b)の基板を上側基板として用い、TFT32付の透明電極層25及びその上に配向層26を有するガラス基板21を対向基板として配置し、その間に液晶31を挟んだ液晶セル37を有する液晶表示装置である。液晶セル37の両側には、セルロースアセテート(TAC)フィルム等からなる保護層34及び35に挟まれた偏光層33からなる偏光板36が配置されている。液晶セル側の保護層35は光学補償シートとしての光学特性を満足するTACフィルム等の高分子フィルムであってもよいし、保護層34と同一の高分子フィルムからなっていてもよい。図には示さないが、反射型液晶表示装置の態様では偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セルの背面あるいは液晶セルの下側基板の内面に反射膜を設置する。もちろんフロントライトを液晶セル観察側に設けることも可能である。更に、表示装置の1画素内に、透過部と反射部を設けた半透過型も可能である。本液晶表示装置の表示モードは特に制限がなく、全ての透過型、半透過型、及び反射型液晶表示装置に用いることが可能である。中でも色視野角特性改良が望まれるVAモードに対して、本発明は効果を発揮する。
【0132】
液晶表示装置の一例は、VAモード液晶表示装置である。VAモード液晶表示装置には、負のC−プレート及びA−プレートを光学補償に利用する方式と、二軸性フィルムを一枚光学補償に利用する方式が知られている。本発明の光学異方性膜は、二軸性フィルムとして利用することができる。
【0133】
上記では、VAモード液晶表示装置の例を説明したが、本発明の光学異方性膜は、他のモードの液晶表示装置の光学補償にも利用することができる。TNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平6−214116号公報、米国特許第5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモード又はFLCモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平10−54982号公報に記載がある。更に、OCBモード又はHANモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、米国特許第5805253号明細書及び国際公開WO96/37804号パンフレットに記載がある。更にまた、STNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特許第2866372号公報に記載がある。これらの光学補償シートの代替として利用することができる。
更にエレクトロルミネセンス装置やフィールドエミッション表示装置などの反射防止の目的にも偏光板と組み合わせて、本発明の光学異方性膜を使用する効果がある。
【実施例】
【0134】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0135】
光学異方性膜用塗布液LC−11の調製:
下記の組成物を調製した後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性膜用塗布液LC−1として用いた。
なお、LC−1−1はTetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
光学異方性膜用塗布液LC−1の組成:
・重合性液晶 例示化合物I−2 17.4質量%
・カイラル剤 例示化合物C−3 2.6質量%
・メチルエチルケトン (沸点 80℃) 79.28質量%
・下記構造式で表される水平配向剤(LC−1−1) 0.02質量%
・Irg−907(チバスペシャリティーケミカルズ社製) 0.5質量%
・DETX(日本化薬社製) 0.2質量%
【0136】
【化27】

【0137】
光学異方性膜用塗布液LC−11のTNIおよび測定:
上記光学異方性膜用塗布液LC−11の液晶組成物がコレステリック相から等方相へと相転移するときの温度(TNI)および結晶相からコレステリック相へと相転移するときの温度(TCN)を温度制御装置の装備されたホットステージ(METTLER TOLED FP82HT Hot Stage)上で、偏光顕微鏡(NIKON ECLIPSE LV100POL)を用いた観察を行うことにより決定した。光学異方性膜用塗布液LC−1のTNIは85 ℃であり、TCNは40℃であった。
【0138】
(実施例1)
光学異方性膜の作製:
R用光学異方性膜R−1として、上記で得られた光学異方性膜用塗布液LC−11をピエゾ方式のヘッドを用いてブラックマトリックス(遮光性隔壁)に囲まれたR層が形成される予定の凹部に打滴し、90℃で2分間加熱した。さらに、温度65℃で2分間熟成後、直ちにこの層に対して偏光UVを照射(照度200mW/cm、照射量200mJ/cm)した後、130℃加熱熟成し、厚さ2.8μmの光学異方性膜R−1を形成した。
同様にして、G層及びB層用光学異方性膜G−1及びB−1をそれぞれ、G層及びB層が形成される予定の微細領域に形成した。光学異方性膜用塗布液LC−11を用い、打滴量を変えることで、光学異方性膜G−1及びB−1のそれぞれの厚みを、2.9μm及び2.6μmとした。
なお、本実施例では、R、G、B各画素に対応する部分に、搬送速度、駆動周波数を制御し、所望するR、G、Bに対応する凹部に各光学異方性膜用塗布液を打滴した。
【0139】
位相差測定:
ファイバ型分光計(KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器株式会社製))を用いた平行ニコル法により、任意の波長λにおける面内レターデーションRe(λ)、及び遅相軸を回転軸として±40度サンプルを傾斜させたときのレターデーションをそれぞれ測定し、Rth(λ)を算出し、Nz値も求めた。R、G、Bに対して波長λは、それぞれ611nm、545nm、435nmとして、レターデーションを測定した。
光学異方性膜の位相差は、あらかじめ測定した光学異方性膜のない基板の透過率データで較正を行うことにより、光学異方性膜の位相差のみを求めた。位相差の測定結果を表1に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
(実施例2)
光学異方性形成用塗布液LC−11を用い、T1として90℃の代わりに140 ℃を用いた以外は、実施例1と同様にして、光学異方性層をそれぞれ形成した。得られた光学異方性層について光学異方性膜R−2、G−2及びB−2をそれぞれ形成した。得られた光学異方性膜について、実施例1と同様にして、位相差を求めた。位相差の測定結果を表2に示す。
【0142】
【表2】

【0143】
(実施例3)
光学異方性形成用塗布液LC−11を用い、Tとして65℃の代わりに50℃を用いた以外は、実施例1と同様にして、光学異方性層をそれぞれ形成した。得られた光学異方性層について光学異方性膜R−3、G−3及びB−3をそれぞれ形成した。得られた光学異方性膜について、実施例1と同様にして、位相差を求めた。位相差の測定結果を表3に示す。
【0144】
【表3】

【0145】
(比較例1)
光学異方性形成用塗布液LC−1を用い、T1として90℃の代わりに80℃を用いた以外は、実施例1と同様にして、光学異方性層をそれぞれ形成した。得られた光学異方性層について光学異方性膜R−1c、G−1c及びB−1cをそれぞれ形成した。得られた光学異方性膜について、実施例1と同様にして、位相差を求めた。位相差の測定結果を表4に示す。下記表に示す通り、R−1c、G−1c、B−1cにおいて、いずれのNz値も8.0以上であり、また、面内レターデーションReも低く、二軸性の発現性に乏しかった。
【0146】
【表4】

【0147】
(比較例2)
光学異方性形成用塗布液LC−1を用い、T1として90℃の代わりに160℃を用いた以外は、実施例1と同様にして、光学異方性層をそれぞれ形成した。得られた位相差層は、可視領域に選択反射が観察された。
【0148】
(比較例3)
光学異方性形成用塗布液LC−1を用い、Tとして65℃の代わりに30℃を用いた以外は、実施例1と同様にして、光学異方性層をそれぞれ形成した。得られた位相差層は、部分的結晶化により白濁した。
【符号の説明】
【0149】
11 透明基板
12 ブラックマトリックス(隔壁)
13 光学異方性膜
14 カラーフィルタ層
21 被転写基板
22 ブラックマトリクス(隔壁)
23 カラーフィルタ層
24 ベタ光学異方性膜
25 透明電極層
26 配向層
27 パターニング光学異方性膜
31 液晶
32 TFT
33 偏光層
34 セルロースアセテートフィルム(偏光板保護フィルム)
35 セルロースアセテートフィルム、又は光学補償シート
36 偏光板
37 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじれらせん構造の光学異方性膜の製造方法であって、下記(1)及び(2)をこの順に含む製造方法:
(1)光により捩れ力が変化する少なくとも1種の光学活性化合物を含む液晶組成物を、Tの温度に加熱すること、及び
(2)T2の温度で前記液晶組成物に偏光を照射すること、
ただし、T及びTはそれぞれ下記の式(XI)および式(XII)を満たす:
TNI<T1<150 ℃ (XI)
TCN<T2<TNI (XII)
式中、TNIは前記液晶組成物がコレステリック相から等方相へと相転移するときの温度であり、TCNは前記液晶組成物が結晶相からコレステリック相へと相転移するときの温度である。
【請求項2】
前記偏光照射の前に非偏光を照射する工程を含まない請求項1に記載の光学異方性膜の製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の光学活性化合物が、光異性化基又は光2量化基を有する化合物である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記液晶組成物が、少なくとも1種のアキラルな液晶性化合物を含有すること請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のアキラルな液晶性化合物が、光異性化及び光2量化基を有しない化合物であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記液晶組成物中における前記少なくとも1種の光学活性化合物の前記少なくとも1種のアキラルな液晶性化合物に対する割合が、10〜30質量%である請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の光学活性化合物が、シンナメート基、スチルベン基、又はアゾベンゼン基を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の光学活性化合物が、下記一般式(1a)又は(1b)で表される化合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法:
【化1】

、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又はCN基を表し;
及びPはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、アルキル基又はアリール基を表し;
及びSはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し;
mは2〜4の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ0〜4の整数を表す。
【請求項9】
前記少なくとも1種の光学活性化合物が、下記一般式(3a)〜(3d)のいずれかで表される部分構造を側鎖中に有する少なくとも1種の繰り返し単位を有するポリマーである請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法:
【化2】

、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又はCN基を表し;
及びPはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、アルキル基又はアリール基を表し;
及びSはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し;
mは2〜4の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ0〜4の整数を表す。
【請求項10】
前記少なくとも1種の繰り返し単位が、下記式(3a’)〜(3e’)のいずれかで表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法:
【化3】

式中、式(3a)〜(3d)中と同一の記号についてはそれぞれ同義であり、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【請求項11】
前記ポリマーが、下記式(4)で表される少なくとも1種の部分構造を側鎖中に有する繰り返し単位をさらに有することを特徴とする請求項9又は10に記載の製造方法:
【化4】

式中、S41は、2価の連結基を表し;R41は水素原子又は置換基を表す。
【請求項12】
前記ポリマーが、前記式(3a)〜(3d)のいずれかで表される少なくとも1種の繰り返し単位と、下記式(4a)で表される少なくとも1種の繰り返し単位とを有するポリマーであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造方法:
【化5】

式中、式(4)中と同一の記号についてはそれぞれ同義であり、R42は、水素原子又はメチル基を表す。
【請求項13】
液晶セル用基板の製造方法であって、下記(11)〜(13)をこの順に含む製造方法:
(11)基板上に光により捩れ力が変化する少なくとも1種の光学活性化合物を含む液晶組成物を塗布すること;
(12)前記液晶組成物を、Tの温度に加熱すること;及び
(13)T2の温度で前記液晶組成物に偏光を照射すること、
ただし、T及びTはそれぞれ下記の式(XI)および式(XII)を満たす:
TNI<T1<150 ℃ (XI)
TCN<T2<TNI (XII)
式中、TNIは前記液晶組成物がコレステリック相から等方相へと相転移するときの温度であり、TCNは前記液晶組成物が結晶相からコレステリック相へと相転移するときの温度である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−44352(P2010−44352A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3328(P2009−3328)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】