説明

光学発色体

【課題】 顔料、色素、染料など従来の色材のように一部の光を吸収することによる着色方法以外の原理を利用し、どの方向から見ても鮮やかに構造色を発色する球状ナノ微粒子のコロイド微結晶を利用した無毒で、化学的に安定な化粧品組成物用の光学発色体とそれらの化粧品組成物を提供する。
【解決手段】 液状の媒体と、単一材質かつ同一粒径の球状ナノ微粒子が凝集したコロイド微結晶を内包するミセルからなり、該ミセルのミセル形成剤がポリマーによって補強されていることを特徴とする光学発色体によって化粧品組成物を発色させる。前記光学発色体の球状ナノ微粒子のコロイド微結晶が光照射下で、フォトニックバンド効果により、選択的に光を反射、屈折及び干渉させ、特定の波長の光を発色する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に化粧用組成物に使用される、光の反射、干渉、屈折及び吸収によって発色する光学発色体に関する。
【0002】
本発明は、また、前記光学発色体を化粧用として許容可能な媒体中に含んでなる化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
化粧品の分野で、化粧料に着色するための色材としては、顔料、色素、染料等が一般的に広く用いられている。それらの色材を化粧料の組成物に一定量混合することによって、使用する対象に顔料、色素を固定したり、あるいは染料で染色したりして、着色を行ってきた。このような従来の顔料、色素、染料等の色材は、色材表面での吸光度の波長依存性、つまり吸収スペクトル特性の違いによって、その色材表面からの反射光の波長特性に違いが生じ、よって観察者から着色の違いを認識される。
【0004】
前記のような色材の場合、着色の多様性を得るために複数の色材を混合することが一般的に試みられる。また、従来は、化粧料として使用する際に、雲母等の無機層状粉末、真珠光沢剤、液晶化合物等の添加物を化粧用組成物に混合して、皮膚、爪、髪等の表面に光沢を付与することが行われている。
【0005】
例えば、パール光沢と干渉色を持つ雲母チタンに酸化鉄、紺青、水酸化クロム、カーミンなどの着色紛体を混合又は被覆した着色パール剤が、化粧品の光沢性着色材として欠くことのできない原料となっている。
【非特許文献1】機能性化粧品の開発,シーエムシー社,297−306(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の色材を混合することは、それぞれの色材が光を吸収することによる減法混色となることによって、必ずしもそれぞれの色材単独の特性を生かすことができるとは限らず、色材の組み合わせによっては彩度が低下する傾向がある。
【0007】
また、前記無機層状粉末、真珠光沢剤、液晶化合物等の添加物自身は無色、白色であるか、着色の多様性が少ないために、目的の着色を得るために他の色材と組み合わせて使用しなければならない。その場合に、彩度や明度の低い色材との組み合わせから、これらの添加物によって要求される光沢感を生じさせることができるとは限らない。
【0008】
一方、従来の前記組み合わせで彩度が良いとされている前記着色パール剤に混合されている着色紛体は、例えば耐アルカリ性や耐熱性に弱い紺青や耐光性に弱いカーミン等、必ずしも化学的安定性に優れているとは限らない。
【0009】
さらに、従来の顔料、色素、染料等は、使用量によっては、皮膚への影響等について完全に要求を満たしていないものも少なくない。
【0010】
したがって、本発明は、従来の色材のように一部の光を吸収することによる着色方法以外の原理を利用し、どの方向から見ても鮮やかに構造色を発色する無毒で、化学的に安定な化粧品組成物用の光学発色体と、それらを含んでなる化粧品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために本願発明者は、フォトニックバンド効果を利用した化粧用組成物用の、新規の光学発色体を見出した。
【0012】
光学の分野では、屈折率の異なる物質の光波長程度の繰り返し単位(周期パターン)を有する構造体が、フォトニック結晶として知られている。ある単色光波長の半波長長さ(但し、空気以外の媒体中の場合にはその媒体の屈折率に応じて変化する)の繰り返し単位を有する構造体には、電磁モードの存在し得ない周波数領域(フォトニックバンドギャップ)が存在し、その単色光に対して禁制となる。これを、フォトニックバンド効果と呼ぶ。前記のフォトニック結晶の表面上に光を照射した場合、その繰り返しの単位の長さに対応したフォトニックバンドギャップ領域の特定の波長の光を完全に反射する。
【0013】
前記光学分野ではフォトニック結晶を、特定の波長の光を完全に反射することができるフォトニックバンド効果の性質を利用して、光導波路や新しいタイプの光ファイバー等に用いることが試みられている。
【0014】
一方、本発明の化粧品の分野において前記フォトニックバンド効果を利用するためには、前記効果を発現するようなフォトニック結晶が形成され、種々の化粧用組成物に対して安定な状態でフォトニック結晶が混合される必要がある。しかしながら、これまで化粧品製品分野において、そのような観点からフォトニック結晶を媒体に分散可能にする粒体状、球状等の形態の発色材料に関しての報告はなされていない。
【0015】
上記の点をふまえ、本願発明者は、既に、液状の媒体と、好ましくは単一材質かつ同一粒径の球状ナノ微粒子が凝集したコロイド微結晶とを内包するミセルからなる光学発色体に関する発明を行っている。前記光学発色体は、前記コロイド微結晶が光照射下で、フォトニックバンド効果により、選択的に特定の波長の光を反射、屈折及び干渉させることにより、特定の波長の光を発色することを特徴とする。
【0016】
前記光学発色体は、用いる球状ナノ微粒子のサイズを変更することによって、赤、緑、青等、任意の可視光領域の発色を得ることができる。
【0017】
本出願の発明においては、それに加えて、上記の光学発色体を改良し、光学発色体のミセル個々がミセル形成状態において安定化できるような構造的補強を施すことを目的とする。
【0018】
具体的には、本願発明は、液状の媒体と、球状ナノ微粒子が凝集したコロイド微結晶とを内包するミセルからなり、該ミセルのミセル形成剤がポリマーによって補強されていることを特徴とする光学発色体、及びその製造方法に関する。
【0019】
さらに、本願発明は、前記光学発色体を含有した化粧用組成物に関する。
【0020】
また、前記光学発色体は、表面が人体に対して無害な隔壁で覆われているために、従来の顔料、染料等に起こるような皮膚や毛髪などの生体への影響についての検討は大幅に低減させることができる。
【0021】
さらに、前記光学発色体の発色効果に加えて、ミセル内に同時に他の物質を封入することによりマイクロカプセルとしての効果も併せ持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付した図面を参照して本発明をさらに詳述する。
【0023】
図1は本発明の光学発色体の実施態様を示す断面図である。本願発明の光学発色体10は、液状の媒体11と、単一材質かつ同一粒径の球状ナノ微粒子12が凝集したコロイド微結晶13を内包するミセルとからなり、ミセルは、ミセル形成剤14を添加して油中に形成され、ポリマーがミセル界面に凝集したミセル形成剤14の間隙に入り込むことによって、ミセルを補強している。
【0024】
前記液状の媒体11は、極性を持つ液体であり、好ましくは水、或いは、C−C12のモノアルコール等、好ましくはC−Cのモノアルコール等、最も好ましくはエタノールである水性溶媒、及びそれらの混合溶媒である。特に好ましくは、水又は水溶液であり、その際ミセルは図1に示すような油中水型となる。
【0025】
コロイド微結晶13とは、多数の球状ナノ微粒子12が規則配列による凝集をした状態の微結晶である。コロイド微結晶13を構成する球状ナノ微粒子12は、好ましくは単一材質かつ同一粒径の微粒子である。球状ナノ微粒子が配列したコロイド微結晶13は、球状ナノ微粒子の懸濁液中の球状ナノ微粒子が静電的斥力又は排除体積効果によって安定化したコロイド微結晶である。懸濁液の液体は、コロイド微結晶の形態を安定にする液体であればよい。また、球状ナノ微粒子の懸濁液の濃度は、ミセルを調製するのに十分な量であることが好ましい。
【0026】
球状ナノ微粒子を懸濁液にする液体は、球状ナノ微粒子を化学的に安定に保つことができ、液体の屈折率が球状ナノ微粒子の屈折率より小さい媒体とそれらの混合物から選ばれる。特に、水が好ましく、或いはC−C12のモノアルコール等、好ましくはC−Cのモノアルコール等、最も好ましくはメタノール、エタノールである極性を有する液体、とそれらの混合物が好ましい。
【0027】
球状ナノ微粒子12は、光学発色体で発色させる目的の波長の光に対して、光学的に透明であり、液状の媒体11に対して安定な材質から選択される。例えば、外相の媒体16としてd−リモネンを選択する場合には、ガラス、シリカ、チタニア等の無機材料、シリコーン等の不溶性ポリマーから選択される。さらに、前記球状ナノ微粒子12の材質は、液状の媒体11の屈折率より大きい屈折率を有し、特に、液状の媒体が水の場合、水の屈折率1.33より大きい屈折率を有するものから選択される。或いは、微粒子の屈折率は周囲の液状の媒体の屈折率と等しくなければ、より小さくてもよい。
【0028】
球状ナノ微粒子12の粒径サイズは、光学発色体で発色させる目的の光の波長に応じて、50nm−500nmの範囲から選択される。ここで、一つのコロイド微結晶13は、同一粒径の球状ナノ微粒子からなる凝集体である。ただし、混色を目的として、第一の同一粒径の球状ナノ微粒子からなる第一のコロイド微結晶と、第二の同一粒径の球状ナノ微粒子からなる第二のコロイド微結晶、さらに、それ以上の種類の同一粒径の球状ナノ微粒子からなるコロイド微結晶が、同一ミセル内に混在することを妨げるものではない。
【0029】
ミセルを調製するために用いるミセル形成剤14は、いかなる界面活性剤、乳化剤等から選択されていてもよい。好ましくは、直接化粧用組成物に混合して目的の用途が要求する安定性を満たすものがよい。ミセルの安定性を向上させるために架橋性の界面活性剤等を用いてもよい。例えば、外相の媒体16としてd−リモネンを選択する場合には、ソルビタントリオレエート(Span85)が好ましい。
【0030】
ポリマー15は、ミセルのミセル形成剤14を構造的に補強、安定化するために用いられる。ここで、用いられるポリマーは、前記の効果を有するポリマーであれば、いかなる分子構造を有し、いかなる分子量であってもよい。好ましくは、用いられるポリマーは、ミセルの油相に溶解し易く、ミセル形成剤である界面活性剤や乳化剤等と親和性の高いポリマーである。例えば、外相の媒体16としてd−リモネンを選択する場合には、ポリスチレンが好ましい。
【0031】
ミセル外相の媒体16は、ポリマーの溶解能が高く、ミセル形成剤と内部媒体との組み合わせによって所望のミセルを形成することができる媒体であって、光学発色体で発色させる光の波長に対する吸光度が低いか、好ましくは透明な有機溶媒である。例えば、ポリマーとしてポリスチレンを選択する場合にはd−リモネンが好ましい。ミセル外相の溶媒16は光学発色体のミセルの形成後に、任意の有機溶媒又は水性溶媒によって置換されてよいが、その際に用いられる媒体としては、水、アルコール、C−C28アルカンが挙げられる。光の屈折、散乱等の効果による発光色の減衰を抑えるためには、ミセル外相の溶媒と水の屈折率の差がより小さいことが好ましい。ミセル外相の溶媒は、光学発色体として化粧用組成物に用いる場合には、化粧品として使用可能な媒体から選択される。該液体は、前記の特徴を有する液体の混合液であってもよい。
【0032】
本発明は、また、前記光学発色体の製造方法に関する。
【0033】
前記光学発色体は、前記ポリマーと前記ミセル形成剤とを前記ミセルの外相となる溶媒に溶解させた溶液と、ミセルの内相となる前記球状ナノ微粒子が凝集したコロイド微結晶の懸濁液とを混合することにより、前記ミセル内相に前記球状ナノ微粒子が配列したコロイド微結晶を形成させる方法によって製造される。
【0034】
前記光学発色体は、さらに、前記ミセル形成剤を前記ミセルの外相となる溶媒に溶解させた溶液と、ミセルの内相となる前記球状ナノ微粒子が凝集したコロイド微結晶の懸濁液とを混合することによりミセルを形成させ、前記ミセル内相に前記球状ナノ微粒子が配列したコロイド微結晶を形成させた後に、前記ポリマーをミセルの外相に溶解させてミセルを補強する方法によっても製造されてもよい。
【0035】
また、ミセル調製時の温度は、所望のミセルを形成させることができる温度であれば如何なる温度でもよいが、50〜70℃であることが好ましく、特に、外相となる媒体としてd−リモネン、ミセル形成剤としてソルビタントリオレエート(Span 85)を選択した場合には、前記温度であることが好ましい。
【0036】
ミセル外相の溶媒16は光学発色体のミセルの形成後に、任意の有機溶媒又は水性溶媒によって洗浄及び置換する行程をさらに含んでも良い。その際には、例えば、ミセル外相の媒体16としてd−リモネンを選択した場合、水、アルコール、C−C18アルカン等、化粧品として使用可能な媒体で洗浄及び置換される。
【0037】
本発明は、また、前記光学発色体を化粧用として許容可能な媒体中に含んでなる化粧用組成物に関する。
【0038】
前記光学発色体は、本発明において、組成物中に単独で或いは混合物として存在してよく、組成物の総重量に対して0.01%から75%、好ましくは0.1%から20%、特に好ましくは0.5%から10%、更に好ましくは1%から8%、最適には1.5%から5%の量で存在する。
【0039】
本発明による化粧用組成物は、前記光学発色体に加えて、化粧用として許容可能な媒体、すなわち顔面又は体の皮膚、毛髪、まつ毛、眉毛及び爪等のケラチン物質に適合性のある媒体を含んでなる。
【0040】
従って、当該化粧用組成物は、水、或いは、親水性有機溶媒、例えば特にエタノール、イソプロパノール又はn−プロパノール等の炭素を2から5含有する直鎖又は分岐型低級モノアルコール、及び例えばグリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はペンチレングリコール、及びポリエチレングリコール等のポリオール等のアルコール、或いは親水性Cエーテル及びC−Cアルデヒドと水との混合媒体からなる親水性媒体を含んでもよい。当該水、或いは水と親水性有機溶媒の混合物は本発明の組成物中において、組成物の総重量に対して0.1%から99%、好ましくは10%から80%の範囲の量で存在してよい。
【0041】
当該化粧用組成物は、また、無水性であってもよい。当該組成物はまた、室温(一般的に25℃)で液体である脂肪性物質、及び/又はワックス、ペースト状脂肪性物質及びゴム、及びそれらの混合物等の室温で固体である脂肪性物質を含む脂肪相を含んでいてもよい。当該脂肪性物質は、動物性、植物性、鉱物性又は合成由来である。当該脂肪相は、親油性有機溶媒を含んでもよい。本発明で用いられる、一般的に油と称される、室温で液体である脂肪性物質は、ペルヒドロスクアレン等の動物由来の炭化水素ベースオイル類からできていてもよく;炭素数4から10の脂肪酸の液体性トリグリセリド類(例えば、ヘプタン酸又はオクタン酸のトリグリセリド等)、或いは代わりに、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、ブドウ種油、ゴマ種油、アプリコット油、マカダミア油、ヒマシ油、アボガド油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ホホバ油、シアバター等の炭化水素植物油類であってもよく;流動パラフィン及びその誘導体、ワセリン、ポリデセン、パーリーム等の水素化イソブテン、合成エステル及びエーテル(例えばパーセリンオイル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸−2−エチルヘキシル、ステアリン酸−2−オクチルドデシル、エルカ酸−2−オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル等の特に脂肪酸のもの)、水酸化エステル類(例えば、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル)、及びヘプタン酸類、オクタン酸類、デカン酸類の脂肪アルコール、ポリオールエステル類(例えば、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコール)、ペンタエリスリトールエステル類、炭素原子を12から26含む脂肪アルコール類(例えば、オクチルドデカノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルオクタノール、2−ウンデシルペンタデカノール及びオレイルアルコール)、炭化水素ベースの部分フッ素油類及び/又はシリコーンベースの部分フッ素油類、揮発性又は不揮発性のシリコーン油類、室温で液体又はペースト状の直鎖又は環状ポリメチルシロキサン類(PDMSs)(例えば、シクロメチコーン類、ジメチコーン類、任意にフェニルトリメチコーン類、フェニルトリメトキシルシロキシジフェニルシロキサン類、ジフェニルメチルジメチルトリシロキサン類、ジフェニルフィメチコーン類、フェニルジメチコーン類、ポリメチルフェニルシロキサン類)等の直鎖又は分岐の鉱物又は合成由来の炭化水素類であってもよく;それらの混合物であってもよい。これらの油類は、組成物の総重量に対して0.01%から90%、より好ましくは0.1%から85%の範囲の量で存在できる。
【0042】
本発明による化粧用組成物は、一種或いはそれ以上の生理的に許容可能な有機溶媒を含有してもよい。該溶媒は一般的には、組成物の総重量に対して0.1%から90%、好ましくは0.5%から85%、より好ましくは10%から80%、更に好ましくは30%から50%の範囲の量で存在してよい。特に、該溶媒として、前記の親油性有機溶媒に加えて、室温で液体のケトン類(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、イソフォロン、シクロヘキサノン、アセトン);室温で液体のプロピレングリコールエーテル類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、及びジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル);短鎖エステル類(全体で炭素原子3から8個を含む)(例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソペンチル);25℃で液体であるエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル又はジクロロジエチルエーテル); 25℃で液体であるアルカン類(例えば、デカン、ヘプタン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン);25℃で液体である芳香環化合物類(例えば、トルエン、キシレン); 25℃で液体であるアルデヒド類(例えば、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド);とそれらの混合物が用いられる。
【0043】
また、本発明による化粧用組成物は、一種或いはそれ以上の生理的に許容可能なワックスを含有してもよい。本発明の目的のためには、用語「ワックス」は、室温(25℃)において固体であって、可逆的な固体/液体の相変化を経て、25℃以上120℃以下の融点を有する親油性化合物を意味する。該ワックスは、炭化水素ベースのワックス類、フッ素系ワックス類及び/又はシリコーンワックス類であり、植物、鉱物、動物及び/又は合成由来である。特に、該ワックスは30℃を超える融点を有し、更に好ましくは45℃を超える融点を有する。本発明の組成物中に用いられるワックス類としては、蜜蝋、カルナウバ蝋又はカンデリラ(candellila)ワックス、パラフィン、微結晶ワックス、セレシン(ceresin)又はオゾケライト、合成ワックス(例えば、ポリエチレンワックス類又はフィッシャー−トロプシュ-(Fischer-Tropsch)ワックス類)、シリコンワックス(例えば、炭素原子を16から45個含むアルキル又はアルコキシジメチコーン類)を材料としている。該ゴムは一般的には、高分子量のポリジメチルシロキサン類(PDMSs)又はセルロースゴム又は多糖類であり、そして、該ペースト状物質は一般的には、炭化水素ベースの化合物(例えば、ラノリン類及びそれらの誘導体またはポリジメチルシロキサン類(PDMSs))である。その性質と固体物質の量は、要求される機械特性及び質感に依存する。指針として、該組成物は組成物の総重量に対してワックス類を0.1%から50%、更に好ましくは1%から30%の範囲の重量で含有している。
【0044】
本発明による化粧用組成物は更に、微粒子相に、通常化粧用組成物で用いられる顔料及び/又は真珠母及び/又はフィラーを含んでもよい。該組成物は、また、当業者にはよく知られた水溶性染料及び/又は脂溶性染料から選ばれる他の染料を含んでもよい。用語「顔料」は、白色或いは有色で、いかなる形状でもよい鉱物性或いは有機粒子であって、生理的許容可能媒体に不溶性であって、組成物に着色することを意図している、と解される。用語「フィラー」は、無色或いは白色で、鉱物性或いは合成の、ラメラ又は非ラメラ粒子であって、組成物に粘りと剛性、及び/又は柔軟性を与え、メークアップ結果についてはつや消し効果と均一性を与える、と解される。用語「真珠母」は、いかなる形状でもよい虹色の粒子であり、特に、特定の軟体動物の殻によって作られたものであるか、合成されたものであると解される。該顔料は組成物中に、最終組成物の重量に対して、0.01%から25%の割合、好ましくは3%から10%の割合で存在する。該顔料は、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化セリウム、また、酸化亜鉛、酸化鉄または酸化クロム、鉄青、クロミウム水和物、カーボンブラック、群青(ultramarines:アルミノケイ酸塩多硫化物)、マンガンピロリン酸塩と特定の金属的粉(例えば、粉末銀またはアルミニウム粉末)の材料であってよく、さらに、一般に唇や皮膚にメークアップ効果を与えるために用いられる、カルシウム塩類、バリウム塩類、アルミニウム塩類、ストロンチウム塩類又はジルコニウム塩類であるD&C色素及びレーキであってもよい。該真珠母は組成物中に、重量比で、0.01%から20%の割合、好ましくは3%から10%の割合で存在する。想定される真珠母としては、天然真珠、或いは、酸化チタン、酸化鉄、天然顔料又はビスマス酸塩化物でコートされた雲母、及び着色されたチタン雲母が材料であってよい。該組成物中に、脂溶性又は水溶性染料は、単独又は混合物として存在し、組成物の総重量に対して0.001%から15%、好ましくは0.01%から5%、特に好ましくは0.1%から2%の割合で存在してよく、ポンソー(ponceau:紅色)の二ナトリウム塩、アリザリン緑の二ナトリウム塩、キノリン黄、アマランス(amaranth)の三ナトリウム塩、タートラジン(tartrazine)の二ナトリウム塩、ローダミンのナトリウム塩、フクシン(fuchsin)の二ナトリウム塩、キサントフィル、メチレンブルー、コチニールカルミン(cochineal carmine)、ハロ酸性(halo-acid)染料、アゾ染料、アントラキノン染料、硫酸銅、硫酸鉄(緑礬)、スーダンブラウン、スーダンレッド及びアンナット(annatto)、及びビート根の絞汁及びカロチンなどの材料であってよい。
【0045】
本発明による化粧用組成物は、一種或いはそれ以上のフィラーを含有してもよく、特に、組成物の総重量に対して0.01%から50%、好ましくは0.02%から30%の範囲の量で存在してよい。該フィラーは、平板型、球体又は楕円体のいかなる形状の鉱物性又は合成系のものであって、タルク、雲母、シリカ、カオリン、ポリアミド(ナイロン(登録商標))粉末類、ポリβ-アラニン粉末及びポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー(テフロン(登録商標))粉末類、ラウロイリシン(lauroyllysine)、澱粉、窒化ホウ素、中空ポリマー小球体(ポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリルの中空ポリマー小球体等、例えばExpancel(登録商標)(Nobel Industrie社)又はアクリル酸共重合体(ダウコーニング社のPolytrap(登録商標))及びシリコーン樹脂ビーズ(例えば、東芝からのTospearls(登録商標))、エラストマー系ポリ有機シロキサン粉末、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ小球体(Maprecos社のSilica Beads(登録商標))、ガラス又はセラミック製のマイクロカプセル、及び炭素原子を8から22、好ましくは12から18個含む有機カルボン酸から誘導される金属石鹸(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛、又はミリスチン酸マグネシウム)などの材料であってよい。
【0046】
本発明による化粧用組成物は、膜形成ポリマー等のポリマーを更に含んでよい。本発明によると、用語「膜形成ポリマー」は、ポリマー単独、或いは補助的な膜形成剤の存在下で、特にケラチン物質に対して接着して支持する連続的な膜を形成することができるポリマーを意味する。本発明の組成物中で用いられる膜形成ポリマーは、合成ポリマーでフリーラジカルタイプ又は重縮合タイプのもの、天然由来のポリマー、及びそれらの混合物、特にアクリル重合体、ポリウレタン、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリ尿素類及びセルロースベースの重合体(例えばニトロセルロース)などの材料であってよい。
【0047】
本発明による化粧用組成物は、ビタミン、増粘剤、ゲル化剤、微量元素、軟化剤、金属イオン封鎖剤、芳香剤、酸化剤又はアルカリ化剤、防腐剤、日焼け止め剤、界面活性剤、酸化防止剤、髪抜け防止のための薬剤、フケ防止薬剤、推進剤、セラミドと、それらの混合物等の一般的に化粧用に用いられる成分を更に含んでよい。
【0048】
いうまでもなく、当業者は、これ又はこれらの任意的付加的化合物、及び/又はそれらの量の選択には、本発明による組成物の有利な特徴が、その選択される添加物によって大幅に悪影響を受けないように注意を払う。
【0049】
本発明の組成物は、特にベシクル法による水中油型の懸濁液、分散液;任意に増粘又はゲル化された水性或いは油性溶液;水中油、油中水或いは複合エマルジョン;ジェル又はムース;油性又は乳化ゲル;ベシクル分散体であって特に脂質性ベシクル;2相又は多相ローション;スプレー;遊離型で、成型された又は鋳造されたパウダー;無水ペースト、の形態であってよい。該組成物は、ローション、クリーム、膏薬、柔らかいペースト、軟膏、ムース、キャストまたは成型された固体で特にスティック状又は皿状、或いは成型固体、等の外見を有する。
【0050】
本発明の化粧用組成物は、体又は顔面の皮膚、唇、爪、まつ毛、眉毛、及び/又は毛髪のためのケアー及び/又はメークアップ製品、抗日光製品、セルフ・タンニング(self-tanning)製品、又は、毛髪のカーリング、トリーティング、シェーピング、メークアップ或いは着色のための製品としての形態である。
【0051】
該組成物はメークアップ組成物の形態であって、特に、ファンデーション、メークアップルージュ又はアイシャドー等の肌つや製品;口紅又は唇ケアー製品等の唇用製品;コンシーラー製品;ほお紅、マスカラ又はアイライナー;眉用メークアップ製品、リップペンシル又はアイペンシル;爪用製品(例えばマニキュア液又は爪ケアー製品);体用メークアップ製品;髪用メークアップ製品(ヘアーマスカラ又はヘアーラッカー)の形態であってもよい。また、顔、首、手又は体の皮膚のための保護又はケアー組成物の形態であって、特に、抗しわ組成物、保湿又はトリートメント組成物;抗日光組成物又は人工日焼け組成物の形態であってもよい。また、毛髪用製品の形態であって、特に、着色、ヘアースタイル保持、髪型形成、毛髪のカーリング、トリーティング又はクレンジング、例えば、シャンプー、ヘアーセッティングジェル又はローション、送風乾燥用ローション、及び固定及びスタイリング組成物(ラッカー又はスプレー等)の形態であってよい。
【実施例】
【0052】
本発明を例証する実施例を提供するが、本発明を制限するものではない。
【0053】
実施例1:シリカ懸濁液(分散液)の調整
シリカ微粒子(商品名:シーホスターKE−P30、平均粒径:300nm、日本触媒株式会社)の水懸濁液を超遠心分離機を用いて、シリカ微粒子の濃度を全体の重量に対して20重量%に濃縮した。
【0054】
実施例2: 光学発色体の調整
界面活性剤スパン85(Span85(HLB=1.4)、ソルビタントリオレエート、和光ケミカル社)を0.1Mに調製した2mLのd−リモネンに対して、ポリスチレン(平均分子量200,000、アルドリッチ)を5−10wt%、実施例1によって得たシリカ微粒子(平均粒径300nm)の水懸濁液10μLを加え、50−70℃において試験管中にて激しく攪拌した。その後、試験管を50−70℃の水浴中に5−10分間放置した。余剰なポリスチレンを取り除くために、得られた混合物の上澄みを取り除き、代わりに新たなd−リモネンを加えた。この洗浄プロセスを2回行った。最後に、ヘプタン及びその他の有機溶媒又は水溶液によって、d−リモネンを置換して所望の光学発色体を得た。
【0055】
得られた光学発色体は、シリカ微粒子の場合でも、直径約20−40μmの油中水型の球状ミセル状であり、白色光を照射する方向に対して反射光を観察する角度を変えることにより、赤(0°:垂直反射側)〜黄〜緑〜青(180°側)の光が観察された。
【0056】
図3は、落射顕微鏡のハロゲン光源をそれぞれの光学発色体に照射し、その反射光を前記顕微鏡によって集光し、顕微鏡に装着された光ファイバーによって小型分光器(USB2000,オーシャンオプティクス社)に反射光を導入し、反射スペクトル測定をした結果を示す。平均粒径300nmのシリカ微粒子を含む光学発色体には、「グレーティングNo.3」タイプの回折格子と、「スリット5ミクロン」タイプのスリットとを用いて測定した。
【0057】
上記測定結果によると、平均粒径300nmのシリカ微粒子を含む光学発色体からは620nmを極大反射波長とする反射特性を得られることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による実施形態の光学発色体を示す断面図である。
【図2】本発明により作製された光学発色体の光学顕微鏡写真である。
【図3】本発明による実施形態の光学発色体の反射スペクトルである(シリカ微粒子平均粒径300nm)。
【符号の説明】
【0059】
10 光学発色体
11 ミセル内相の液状の媒体
12 球状ナノ微粒子
13 コロイド微結晶
14 ミセル形成剤
15 ポリマー
16 ミセル外相の媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の媒体と、球状ナノ微粒子が凝集したコロイド微結晶とを内包するミセルからなり、該ミセルのミセル形成剤がポリマーによって補強されていることを特徴とする光学発色体。
【請求項2】
前記コロイド微結晶が光照射下で、フォトニックバンド効果により、特定の波長の光を選択し、発色することを特徴とする請求項1に記載の光学発色体。
【請求項3】
前記液状の媒体が、極性液体から選択される一つの媒体である請求項1又は2に記載の光学発色体。
【請求項4】
前記球状ナノ微粒子が、単一材質の球状ナノ微粒子であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光学発色体。
【請求項5】
前記球状ナノ微粒子が、同一粒径の球状ナノ微粒子であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光学発色体。
【請求項6】
前記球状ナノ微粒子が、前記特定の波長の光に対して光学的に透明であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の光学発色体。
【請求項7】
前記球状ナノ微粒子の材質の屈折率が、前記液状の媒体の屈折率よりも大きい又は小さいことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光学発色体。
【請求項8】
前記ポリマーの分子が、前記ミセル形成剤の分子の間隙に入り込むことによってミセルを補強していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光学発色体。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の光学発色体を含有した化粧用組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の光学発色体の製造方法であって、前記ポリマーと前記ミセル形成剤とをミセルの外相となる溶媒に溶解させた溶液と、ミセルの内相となる前記球状ナノ微粒子が凝集したコロイド微結晶の懸濁液とを混合することにより、前記ミセル内相に前記球状ナノ微粒子が配列したコロイド微結晶を形成させる方法。
【請求項11】
請求項1に記載の光学発色体の製造方法であって、前記ミセル形成剤をミセルの外相となる溶媒に溶解させた溶液と、ミセルの内相となる前記球状ナノ微粒子が凝集したコロイド微結晶の懸濁液とを混合することによりミセルを形成させ、前記ミセル内相に前記球状ナノ微粒子が配列したコロイド微結晶を形成させた後に、前記ポリマーをミセルの外相に溶解させてミセルを補強する方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の光学発色体の製造方法であって、前記ミセルの外相となる溶媒がd−リモネンであり、前記ミセル形成剤がソルビタントリオレエートであって、前記球状ナノ微粒子の材質が無機材料であって、前記ポリマーが有機ポリマーであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれかに記載の光学発色体の製造方法であって、前記球状ナノ微粒子がシリカ微粒子であって、前記ポリマーがポリスチレンであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれかに記載の光学発色体の製造方法であって、ミセル調製時の混合温度が50〜70℃であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10ないし14のいずれかに記載の光学発色体の製造方法であって、前記光学発色体のミセルの外相の媒体を他の有機溶媒又は水性溶媒によって洗浄及び置換する行程をさらに含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−182392(P2007−182392A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188(P2006−188)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】