説明

光学的情報読取装置

【課題】複数の情報コードを読み取る際の作業性を向上させ得る光学的情報読取装置を提供する。
【解決手段】対象物Rの表示面S上に予め設定された表示位置および読取順序で表示された複数のバーコードBa〜Bdを順次読み取るように構成されている。そして、相対位置特定処理により表示面S上の所定の基準点である原点位置に対する各バーコードBa〜Bdの相対位置がそれぞれ特定され、これら各相対位置と上記表示位置とに基づいて各バーコードBa〜Bdのデコード結果が上記読取順序に応じて並び替えて処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の情報コードを順次読み取る光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の情報コードを順次読み取る光学的情報読取装置に関する技術として、下記特許文献1に示す印刷物上の位置算出装置が知られている。この位置算出装置は、通信販売のカタログなどの印刷物上に記載された商品番号の付近に所定の位置情報を含んだ位置情報コードを複数配置しておき、顧客がカメラで商品番号を撮影することにより、撮影された画像に含まれる位置情報コードから画像の中央に撮影されている商品番号を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−318341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1つの対象物に複数の情報コードが貼り付けられる場合には、一般に予め設定された読取順序に従って各情報コードを読み取る必要があるため、作業者にとって作業しやすい情報コードから読取作業を行うことができず、読取作業時の作業性が低下する原因となっていた。また、上述のような位置情報コードを各情報コードの周囲に別途複数貼り付け、両コードを撮像することで各情報コードの位置を検出するためには、各コードそれぞれが所定の貼付位置に正確に貼り付けられる必要があり、貼付作業時の作業性が低下するという問題があった。さらに、位置情報コードを採用する場合には、事前に情報コードの貼付位置を決定することが困難であるため、情報コードを作成(印刷)しながら貼り付ける作業が必要であるという問題があった。また、貼り付け後の各情報コードの位置情報を算出する必要があり、処理速度の低下を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、複数の情報コードを読み取る際の作業性を向上させ得る光学的情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の光学的情報読取装置では、対象物の表示面上に予め設定された表示位置および読取順序で表示された複数の情報コードを順次読み取る光学的情報読取装置であって、前記各情報コードを含めた前記表示面に向けて光を例えば連続的に照射する照射手段と、前記照射手段からの照射光に応じて前記各情報コードを含めた前記表示面にて反射された反射光を受光する受光手段と、前記各情報コードのいずれかからの反射光に応じて前記受光手段から出力される信号に基づいて当該情報コードをデコードするデコード手段と、前記表示面上の所定の基準点に対する前記各情報コードの相対位置をそれぞれ特定する相対位置特定手段と、を備え、前記相対位置特定手段により特定された前記各相対位置と前記表示位置とに基づいて前記デコード手段による前記各情報コードのデコード結果を前記読取順序に応じて並び替えて処理することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学的情報読取装置において、前記相対位置特定手段は、前記受光手段から出力される信号に基づいて、前記照射手段からの前記照射光が前記表示面に照射される位置を前記所定の基準点を基準とする相対位置関係の累積に応じて求めることで、デコードされた前記各情報コードの前記相対位置をそれぞれ特定することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の光学的情報読取装置において、前記表示面までの相対距離と前記照射光の光軸と前記表示面との間の相対角度とを測定する測定手段を備え、前記相対位置特定手段は、前記測定手段により測定される前記相対距離および前記相対角度に応じて前記各相対位置をそれぞれ補正して特定することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記所定の基準点は、前記各情報コードのうち前記デコード手段により最初にデコードされた情報コードに応じて設定されることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記相対位置特定手段は、前記デコード手段によりデコードされた情報コードの相対位置を、前回デコードされた情報コードの相対位置に対する相対位置関係に基づいて特定することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記各相対位置は、対応する前記情報コードの中心位置、例えば面積の中心位置を基準として特定されることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記各相対位置は、対応する前記情報コードの外縁の一部を基準として特定されることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記各相対位置は、対応する前記情報コードにスタートキャラクタ、ストップキャラクタまたはファインダパターンとして含まれるシンボルを基準として特定されることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記相対位置特定手段は、前記表示面に沿い所定の回転角度だけ回転した前記各相対位置と前記表示位置との位置関係が一致するとみなされる前記回転角度が2つ以上ある場合には、前記各情報コードの読取方向に基づいて前記各相対位置をそれぞれ補正して特定することを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記表示位置において所定の位置に表示される情報コードは、他の情報コードと異なる特徴を有するように構成されることを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記デコード手段によりデコードされた前記情報コードとこの情報コードの前記相対位置とを対として順次記憶する記憶手段を備え、前記デコード手段によりデコードされた前記情報コードの前記相対位置が前記記憶手段に記憶された他の相対位置に一致するとみなされるとき当該情報コードの読み取りを無効とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、光学的情報読取装置は、対象物の表示面上に予め設定された表示位置および読取順序で表示された複数の情報コードを順次読み取るように構成されている。そして、相対位置特定手段により表示面上の所定の基準点に対する各情報コードの相対位置がそれぞれ特定され、これら各相対位置と上記表示位置とに基づいてデコード手段による各情報コードのデコード結果を上記読取順序に応じて並び替えて処理する。
【0018】
これにより、表示面上に貼り付け等により表示された各情報コードを上記読取順序と異なる順序で読み取る場合でも、相対位置特定手段により特定された各情報コードの相対位置と予め設定された上記表示位置とに基づいてデコード手段による各情報コードのデコード結果が上記読取順序に応じて並び替えられるため、予め設定された読取順序に従い読み取り作業を実施する必要がなくなるので、各情報コードを読み取る際の作業性を向上させることができる。
【0019】
請求項2の発明では、相対位置特定手段は、照射手段からの照射光が表示面に照射される位置を所定の基準点を基準とする相対位置関係の累積に応じて求めることで、デコードされた各情報コードの相対位置をそれぞれ特定する。このため、各相対位置を特定するための専用のセンサ等を採用することなく光学的情報読取装置として通常備えている構成部品の流用により、各情報コードの相対位置をそれぞれ特定することができる。
【0020】
請求項3の発明では、相対位置特定手段は、測定手段により測定される表示面までの相対距離と、照射光の光軸と表示面との間の相対角度とに応じて各相対位置をそれぞれ補正して特定するため、読取作業時に装置本体と表示面との間の距離が変化する場合や照射光の光軸と表示面との間の角度が変化する場合であっても、確実に各情報コードの相対位置を特定することができる。
【0021】
請求項4の発明では、所定の基準点は、各情報コードのうちデコード手段により最初にデコードされた情報コードに応じて設定されるため、最初の情報コードがデコードされるまで相対位置を特定するための処理を実施する必要がないので、相対位置を特定するための処理に関する負荷を軽減することができる。
【0022】
また、請求項5の発明のように、相対位置特定手段は、デコード手段によりデコードされた情報コードの相対位置を、前回デコードされた情報コードの相対位置に対する相対位置関係に基づいて特定してもよい。
【0023】
請求項6の発明では、各相対位置は、対応する情報コードの中心位置、例えば面積の中心位置を基準として特定されるため、各情報コードが様々な大きさで異なるように形成される場合であっても、相対位置を特定するための基準を明確に規定することができる。
【0024】
請求項7の発明では、各相対位置は、対応する情報コードの外縁の一部を基準として特定されるため、貼り付けなどの作業時に作業の基準になりやすい情報コードの外縁の一部、例えば四隅の1つを基準に特定されることとなり、実際に表示された各情報コードと予定された表示位置との位置ずれが抑制される。これにより実際に特定された各相対位置と表示位置との位置ずれを抑制することができる。
【0025】
請求項8の発明では、各相対位置は、対応する情報コードにスタートキャラクタ、ストップキャラクタまたはファインダパターン等として含まれるシンボルを基準として特定されるため、当該相対位置の特定を迅速かつ容易にすることができる。
【0026】
請求項9の発明では、相対位置特定手段は、表示面に沿い所定の回転角度だけ回転した各相対位置と表示位置との位置関係が一致するとみなされる回転角度が2つ以上ある場合には、各情報コードの読取方向に基づいて各相対位置をそれぞれ補正して特定する。
【0027】
表示位置が対称に設定されている場合など、表示面に沿い所定の回転角度だけ回転した各相対位置と表示位置との位置関係が一致するとみなされる回転角度が2つ以上存在する場合には、誤った相対位置がそれぞれ特定されてしまう可能性がある。このような誤った各相対位置に基づいて特定された各情報コードのデコード結果を上記読取順序に応じて並び替えると、デコード結果が正しく並び替えられないために、各情報コードを正確に読み取ることができなくなってしまう。
【0028】
そこで、このような場合には、上記表示位置に対応する読取方向と各情報コードのスタートキャラクタ等から把握される読取方向とを一致させるように各相対位置を回転補正することにより、上記表示位置に対応する各相対位置を確実に特定することができる。
【0029】
請求項10の発明では、表示位置において所定の位置に表示される情報コードは、他の情報コードと異なる特徴を有するように構成されるため、上述のように表示位置が対称に設定されている場合であっても表示位置に対応する各相対位置が1つに決まるので、特別な処理を実施することなく、上記表示位置に対応する各相対位置を確実に特定することができる。
【0030】
請求項11の発明では、デコード手段によりデコードされた情報コードの相対位置が前記記憶手段に記憶された他の相対位置に一致するとみなされるとき当該情報コードの読み取りが無効とされるため、相対位置が同じ情報コードを重複して読み取ることがないので、不要な処理をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係るバーコード読取装置10の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】対象物Rの表示面S上に表示された各バーコードBa〜Bdを説明するための説明図である。
【図3】制御回路40における読取処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図4】制御回路40における読取処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図5】図5(A)は要求データと表示位置情報との関係を示す説明図であり、図5(B)は読取データと相対位置情報との関係を示す説明図であり、図5(C)は要求データと読取データとの関係を示す説明図である。
【図6】各バーコードBa〜Bdとその相対位置との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の光学的情報読取装置をバーコードリーダに適用した一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、光学的情報読取装置10は、対象物に表示されたバーコード等の情報コードを読み取る装置として構成されている。この光学的情報読取装置10は、図示しないケースの内部に回路部20が収容されてなるものであり、回路部20は、主に、照明光源21、受光センサ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、トリガースイッチ42等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。
【0033】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する照明光源21は、照明光Lfを連続的に発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられるレンズとから構成されている。なお、図1では、バーコードBが表示された対象物Rに向けて照明光Lfを照射する例を概念的に示している。また、照明光源21は、特許請求の範囲に記載の「照射手段」の一例に相当し得るものである。
【0034】
受光光学系は、受光センサ28、結像レンズ27、反射鏡(図示略)などによって構成されている。受光センサ28は、CCDエリアセンサとして構成されるものであり、バーコードBまたは対象物Rに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されている。この受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板(図示略)に実装されている。なお、受光センサ28は、特許請求の範囲に記載の「受光手段」の一例に相当し得るものである。
【0035】
結像レンズ27は、外部から読取口(図示略)を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面28aに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本第1実施形態では、照明光源21から照射された照明光LfがバーコードBにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光し、受光センサ28の受光面28aにコード像を結像させている。
【0036】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。
【0037】
光学系の受光センサ28から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、生成されてメモリ35に入力されると、所定のコード画像情報格納領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ28およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0038】
制御回路40は、光学的情報読取装置10全体を制御可能なマイコンによって構成されており、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有するとともに、情報処理機能を備えており、メモリ35とともに情報処理装置を構成している。本実施形態では、制御回路40に対し、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。
【0039】
これにより、制御回路40は、例えば、トリガースイッチ42の監視や管理、バーコードBの読み取りに関する情報を報知するインジケータとして機能する発光部43の点灯・消灯、ビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、当該光学的情報読取装置10の使用者に伝達し得る振動を発生可能なバイブレータ45の駆動制御、液晶表示器46の表示制御や外部装置とのシリアル通信を可能にする通信インタフェース48の通信制御等を可能にしている。
【0040】
次に、上述のように構成される光学的情報読取装置10において制御回路40により実施される読取処理について図2〜図5を参照して説明する。
本実施形態に係る読取処理では、図2に示すように、梱包箱などの対象物Rの表示面S上に予め設定された表示位置および読取順序で貼り付けて表示された複数のバーコード(図2では4つのバーコードBa〜Bdを例示)を順次読み取る際に、作業者にとって作業しやすいバーコードからの読取作業を許容するために、以下に示す読取処理が実施される。
【0041】
まず、図3のステップS101において、フォーマットデータ入力処理がなされる。この処理では、図5(A)に例示する要求データと表示位置情報とが組み付けられたフォーマットに相当するデータや要求データの総数n(n=4)が通信インタフェース48等を介してホストコンピュータ等の上位システムから入力される。本実施形態では、図5(A)からも判るように、表示位置情報は、1および0(ゼロ)のみの組み合わせで構成されて4つの表示位置をそれぞれ示している。また、各要求データ(製品型式、製造番号、国コード、年月日)は、上記読取順序に応じた順序で配列されている。特に、要求データの総数nが多くなる場合には、表示位置情報は、1および0(ゼロ)に加えて他の基準値を組み合わせてもよい。なお、例えば、所定のバーコードを光学的に読み取ることで上記データが制御回路40に入力されてもよい。
【0042】
次に、ステップS103において、照射処理がなされ、作業者のトリガースイッチ42の操作に応じて照明光源21から照明光Lfが対象物Rの表示面Sに向けて照射される。なお、この照明処理により、後述するステップS131の照射停止処理がなされるまで、継続して照明光Lfが照射されることとなる。
【0043】
続いて、ステップS105において、画像データ取得処理がなされ、バーコードBa〜Bdのいずれかまたは表示面Sにて反射された反射光Lrが受光センサ28にて受光されることにより受光センサ28から出力される信号に基づいて画像データが取得される。
【0044】
そして、作業者が当該読取処理を中止するための操作を実行するまで、ステップS107にてYesと判定され、最初のバーコードが含まれた画像データが取得されるまでステップS109にてNoと判定される。続いて、ステップS111にて原点位置が設定済みか否かについて判定され、後述するステップS113にて原点位置が設定されるまでNoと判定されて、ステップS105からの処理が繰り返される。
【0045】
そして、作業者が読取作業しやすいバーコード、例えばバーコードBaを読み取るために、照明光LfをバーコードBaに向けて撮像することで、ステップS105にてバーコードBaが含まれる画像データが取得されると、最初のバーコードが含まれた画像データが取得されたとしてステップS109にてYesと判定される。
【0046】
次に、ステップS113にて原点位置設定処理がなされる。この処理では、表示面S上において最初に取得されたバーコードBaが占める面積の中心に対応する中心位置が、原点位置(0,0)として設定されるとともに、当該バーコードBaの相対位置も、(0,0)として設定される。なお、原点位置は、特許請求の範囲に記載の「所定の基準点」の一例に相当する。
【0047】
そして、ステップS123にてデコード処理がなされ、バーコードBaのデコード結果であるデータAが取得されると、図4のステップS125にて記憶処理がなされ、デコード結果および相対位置が対となってメモリ35に記憶される。具体的には、例えば、図5(B)に示すように、データAと相対位置(0,0)とが対となってメモリ35に記憶される。なお、ステップS123を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「デコード手段」の一例に相当し得るものである。
【0048】
そして、ステップS127にてインクリメント(n=n+1)された後に、ステップS129にてnがn以上であるか否かについて判定される。ここで、nは、デコードされたバーコードの数に相当するため、全てのバーコードがデコードされるまでNoと判定されて、ステップS105からの処理が繰り返される。
【0049】
上述したように最初にバーコードBaが撮像されると、作業者は次に読取作業しやすいバーコードとして、例えばバーコードBbを撮像するために、バーコードBaに向けた照明光LfをバーコードBbに向けることとなる。このとき、照明光Lfの光軸が表示面S上に交わる点をスキャン位置とすると、このスキャン位置は、図2の矢印αに例示するように、バーコードBaからバーコードBbに向けて変化する。
【0050】
上述のようにスキャン位置がバーコードBaからバーコードBbに向けて変化するとき、ステップS105にて画像データが取得され、ステップS107にてYes、ステップS109にてNo、ステップS111にてYesと判定されると、ステップS115にてスキャン位置演算処理がなされる。この処理では、ステップS113にて設定された原点位置を基準に現時点における表示面S上でのスキャン位置の座標が演算される。このスキャン位置の座標は、例えば、ステップS105にて取得された画像データと前回取得された画像データとの差からスキャン位置の絶対的な移動量を検出しこの移動量の累積に応じて演算される。なお、本実施形態では、最初のバーコードBaの長手方向(読取方向)をX軸とする。
【0051】
上述のようにスキャン位置が演算されると、ステップS117にてバーコードが撮像されたか否かについて判定され、次のバーコードが撮像されるまでNoと判定されて、上記ステップS105からの処理が繰り返される。これにより、ステップS115の処理によりスキャン位置の座標が順次累積するように演算されることとなる。
【0052】
そして、バーコードBbが撮像されることでステップS117にてYesと判定されると、ステップS119にて相対位置特定処理がなされる。この処理では、ステップS115にて演算されたスキャン位置の座標と撮像されたバーコードBbが占める面積の中心に対応する中心位置との位置関係に基づいて、バーコードBbの中心位置に対応する相対位置が例えば(1,−3)として特定される。なお、ステップS119を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「相対位置特定手段」の一例に相当し得るものである。
【0053】
次に、ステップS121にて上記相対位置がメモリ35に記憶されているか否かについて判定される。ステップS119にて特定された相対位置が既にメモリ35に記憶されている場合には既に撮像済みのバーコードを再度撮像したとみなされるので、ステップS121にてYesと判定されて、デコード処理を実施することなく無効とされて上記ステップS105からの処理がなされる。
【0054】
一方、ステップS119にて特定された相対位置がメモリ35に記憶されていない場合には(S121でNo)、ステップS123にてバーコードBbのデコード結果であるデータBが取得されて、ステップS125にてデコード結果および相対位置が対となってメモリ35に記憶される。具体的には、例えば、図5(B)に示すように、データBと相対位置(1,−3)とが対となってメモリ35に記憶される。そして、インクリメントされた後にステップS129にてNoと判定されて、再びステップS105からの処理が繰り返される。
【0055】
上述のようにバーコードBbが撮像されると、作業者は次に読取作業しやすいバーコードとして、例えばバーコードBcを撮像するために、バーコードBbに向けた照明光LfをバーコードBcに向けることとなる。このとき、スキャン位置は、図2の矢印αに例示するように、バーコードBbからバーコードBcに向けて変化する。
【0056】
このようにスキャン位置がバーコードBbからバーコードBcに向けて変化するとき、ステップS115にてスキャン位置演算処理がなされて原点位置を基準に現時点における表示面S上でのスキャン位置の座標が演算される。そして、バーコードBcが撮像されると(S117でYes)、ステップS119にてバーコードBcが占める面積の中心位置に対応する相対位置が例えば(5,−1)として特定されるとともに、ステップS123にてデコード結果であるデータCが取得される。
【0057】
そして、ステップS125にてデコード結果および相対位置が対となってメモリ35に記憶される。具体的には、例えば、図5(B)に示すように、データCと相対位置(5,−1)とが対となってメモリ35に記憶される。そして、インクリメントされた後にステップS129にてNoと判定されて、再びステップS105からの処理が繰り返される。
【0058】
上述のようにバーコードBcが撮像されると、作業者は次に読取作業しやすいバーコードとして、バーコードBdを撮像するために、バーコードBcに向けた照明光LfをバーコードBdに向けることとなる。このとき、スキャン位置は、図2の矢印αに例示するように、バーコードBcからバーコードBdに向けて変化する。
【0059】
このようにスキャン位置がバーコードBcからバーコードBdに向けて変化するとき、ステップS115にてスキャン位置演算処理がなされて原点位置を基準に現時点における表示面S上でのスキャン位置の座標が演算される。そして、バーコードBdが撮像されると(S117でYes)、ステップS119にてバーコードBdが占める面積の中心位置に対応する相対位置が例えば(7,−4)として特定されるとともに、ステップS123にてデコード結果であるデータDが取得される。
【0060】
そして、ステップS125にてデコード結果および相対位置が対となってメモリ35に記憶される。具体的には、例えば、図5(B)に示すように、データDと相対位置(7,−4)とが対となってメモリ35に記憶される。これにより、全てのバーコードBa〜Bdのデコード結果とその相対位置とが、例えば図6に例示するように演算されることとなる。
【0061】
これにより、全てのバーコードのデコード結果と相対位置がメモリ35に記憶されてインクリメントされたnが4となることから、ステップS129にてYesと判定されると、ステップS131にて照射停止処理がなされて、照明光源21からの照射が停止される。
【0062】
次に、ステップS133にて各相対位置が対称関係にあるか否かについて判定される。各相対位置が点対称または線対称の関係にある場合、すなわち、表示面Sに沿い所定の回転角度だけ回転した各相対位置と表示位置との位置関係が一致するとみなされる回転角度が2つ以上ある場合には、例えば、上下転地して読取作業がなされてしまう場合も想定される。このように上下転地した状態で読取作業がなされると、誤った相対位置がそれぞれ特定されてしまう可能性がある。
【0063】
そこで、各相対位置が対称関係にある場合には(S133でYes)、ステップS135にて、各相対位置の位置補正がなされてメモリ35に記憶された各値が置換される。具体的には、上記表示位置に対応する読取方向と各情報コードのスタートキャラクタ等から把握される読取方向とを一致させるように各相対位置を回転補正することにより、上下転地して読取作業がなされた場合でも上記表示位置に対応する各相対位置を確実に特定することができる。
【0064】
ステップS133にてNoと判定されるかステップS135にて補正処理がなされると、ステップS137にて相対位置変換処理がなされ、メモリ35に記憶された各バーコードBa〜Bdの相対位置を表示位置に対応する値に変換する処理がなされる。具体的には、上述したように表示位置は1および0(ゼロ)のみの組み合わせで構成されているので、例えば、X座標を基準に2つのグループに分けるとともにY座標を基準に2つのグループに分けることで、相対位置(1,−3)は(0,0)に変換され、相対位置(0,0)は(0,1)に変換され、相対位置(5,−1)は(1,1)に変換され、相対位置(7,−4)は(1,0)に変換される。
【0065】
次に、ステップS139において、並び替え処理がなされる。この処理では、ステップS137にて各相対位置が変換された値と表示位置情報との比較に基づいて、各バーコードBa〜Bdのデコード結果である読取データが図5(C)に示すように上記読取順序に応じて並び替えられることで、読取データと要求データとが組み付けられる。そして、ステップS141にてデータ出力処理がなされて、ステップS139にて並び替えられて組み付けられた各読取データ等が通信インタフェース48等を介して上位システムに出力されることにより、当該読取処理が終了する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、対象物Rの表示面S上に予め設定された表示位置および読取順序で表示された複数のバーコードBa〜Bdを順次読み取るように構成されている。そして、相対位置特定処理により表示面S上の所定の基準点である原点位置に対する各バーコードBa〜Bdの相対位置がそれぞれ特定され、これら各相対位置と上記表示位置とに基づいて各バーコードBa〜Bdのデコード結果が上記読取順序に応じて並び替えて処理される。
【0067】
これにより、表示面S上に表示された各バーコードBa〜Bdを上記読取順序と異なる順序で読み取る場合でも、相対位置特定処理により特定された各バーコードBa〜Bdの相対位置と予め設定された上記表示位置とに基づいて、各デコード結果が上記読取順序に応じて並び替えられるため、予め設定された読取順序に従い読み取り作業を実施する必要がなくなるので、各バーコードBa〜Bdを読み取る際の作業性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、照明光源21からの照射光Lfが表示面Sに照射される位置を原点位置(所定の基準点)を基準とする相対位置関係の累積に応じて求めることで、デコードされた各バーコードBa〜Bdの相対位置がそれぞれ特定される。このため、各相対位置を特定するための専用のセンサ等を採用することなく光学的情報読取装置として通常備えている構成部品の流用により、各バーコードBa〜Bdの相対位置をそれぞれ特定することができる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、原点位置(所定の基準点)は、各バーコードBa〜Bdのうち最初にデコードされたバーコードに応じて設定されるため、最初のバーコードがデコードされるまで相対位置を特定するための処理を実施する必要がないので、相対位置を特定するための処理に関する負荷を軽減することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、各相対位置は、対応する各バーコードBa〜Bdの中心位置をそれぞれ基準として特定されるため、各バーコードBa〜Bdが様々な大きさで異なるように形成される場合であっても、相対位置を特定するための基準を明確に規定することができる。
【0071】
さらに、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、ステップS133にて各相対位置が対称関係にある場合、すなわち、表示面Sに沿い所定の回転角度だけ回転した各相対位置と表示位置との位置関係が一致するとみなされる回転角度が2つ以上ある場合には、各バーコードBa〜Bdの読取方向に基づいて各相対位置がそれぞれ補正して特定される。これにより、上下転地して読取作業がなされた場合でも上記表示位置に対応する各相対位置を確実に特定することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、デコードされたバーコードの相対位置がメモリ35に記憶された他の相対位置に一致するとみなされるとき当該バーコードの読み取りが無効とされるため、相対位置が同じバーコードを重複して読み取ることがないので、不要な処理をなくすことができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)上記ステップS115において、スキャン位置の座標は、画像データと前回取得された画像データとの差からスキャン位置の移動量を検出しこの移動量の累積に応じて演算することに限らず、スキャン位置の座標を直接測定するための専用のセンサ等を設けてもよい。
【0074】
(2)表示面Sまでの相対距離と照射光Lfの光軸と表示面Sとの間の相対角度とを測定するための測定手段を設けることで、上記ステップS115にて演算されたスキャン位置の座標を補正してもよい。これにより、読取作業時に装置本体(読取口)が表示面Sに対して前後に移動したり傾斜する場合であってもスキャン位置を正確に演算することができる。
【0075】
(3)原点位置(所定の基準点)は、各バーコードBa〜Bdのうち最初に撮像されたバーコードに応じて設定されることに限らず、例えば、ステップS105にて取得された画像データの中心位置等に応じて設定されてもよい。このとき、このように設定された原点位置に基づいて、最初に撮像されたバーコードの相対位置が特定されることとなる。
【0076】
(4)各バーコードBb〜Bdの相対位置は、最初に撮像されたバーコードBaに応じた原点位置を基準に特定されることに限らず、前回デコードされたバーコードの相対位置に対する相対位置関係に基づいて特定されてもよい。
【0077】
(5)各バーコードBa〜Bdの相対位置は、その中心位置を基準として特定されることに限らず、例えば、そのバーコードの外縁の一部を基準として特定されてもよい。これにより、貼り付けなどの作業時に作業の基準になりやすいバーコードの外縁の一部、例えば四隅の1つを基準に特定されることとなり、実際に表示された各バーコードと予定された表示位置との位置ずれが抑制される。これにより実際に特定された各相対位置と表示位置との位置ずれを抑制することができる。
【0078】
(6)各バーコードBa〜Bdの相対位置は、その中心位置を基準として特定されることに限らず、例えば、対応するバーコードにスタートキャラクタまたはストップキャラクタ等として含まれるシンボルを基準として特定されてもよい。また、QRコードなどの二次元コードが読み取り対象である場合には、各相対位置は、対応する二次元コードにファインダパターン等として含まれるシンボルを基準として特定されてもよい。これにより、当該相対位置の特定を迅速かつ容易にすることができる。
【0079】
(7)複数のバーコードBa〜Bdのうち所定の表示位置に表示されるバーコードは、他のバーコードと異なる特徴を有するように構成されてもよい。これにより、上述のように表示位置が対称に設定されている場合であっても表示位置に対応する各相対位置が1つに決まるので、特別な処理を実施することなく、上記表示位置に対応する各相対位置を確実に特定することができる。
【0080】
(8)光学的情報読取装置10は、複数のバーコードを読み取り対象とすることに限らず、例えば、他の一次元コードやQRコードなどの二次元コードを読み取り対象とする場合でも上記作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0081】
10…光学的情報読取装置
21…照明光源(照射手段)
28…受光センサ(受光手段)
35…メモリ(記憶手段)
40…制御回路(デコード手段、相対位置特定手段、測定手段)
Ba〜Bd…バーコード(情報コード)
R…対象物
S…表示面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表示面上に予め設定された表示位置および読取順序で表示された複数の情報コードを順次読み取る光学的情報読取装置であって、
前記各情報コードを含めた前記表示面に向けて光を照射する照射手段と、
前記照射手段からの照射光に応じて前記各情報コードを含めた前記表示面にて反射された反射光を受光する受光手段と、
前記各情報コードのいずれかからの反射光に応じて前記受光手段から出力される信号に基づいて当該情報コードをデコードするデコード手段と、
前記表示面上の所定の基準点に対する前記各情報コードの相対位置をそれぞれ特定する相対位置特定手段と、
を備え、
前記相対位置特定手段により特定された前記各相対位置と前記表示位置とに基づいて前記デコード手段による前記各情報コードのデコード結果を前記読取順序に応じて並び替えて処理することを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記相対位置特定手段は、前記受光手段から出力される信号に基づいて、前記照射手段からの前記照射光が前記表示面に照射される位置を前記所定の基準点を基準とする相対位置関係の累積に応じて求めることで、デコードされた前記各情報コードの前記相対位置をそれぞれ特定することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記表示面までの相対距離と前記照射光の光軸と前記表示面との間の相対角度とを測定する測定手段を備え、
前記相対位置特定手段は、前記測定手段により測定される前記相対距離および前記相対角度に応じて前記各相対位置をそれぞれ補正して特定することを特徴とする請求項1または2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記所定の基準点は、前記各情報コードのうち前記デコード手段により最初にデコードされた情報コードに応じて設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記相対位置特定手段は、前記デコード手段によりデコードされた情報コードの相対位置を、前回デコードされた情報コードの相対位置に対する相対位置関係に基づいて特定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記各相対位置は、対応する前記情報コードの中心位置を基準として特定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記各相対位置は、対応する前記情報コードの外縁の一部を基準として特定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項8】
前記各相対位置は、対応する前記情報コードにスタートキャラクタ、ストップキャラクタまたはファインダパターンとして含まれるシンボルを基準として特定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項9】
前記相対位置特定手段は、前記表示面に沿い所定の回転角度だけ回転した前記各相対位置と前記表示位置との位置関係が一致するとみなされる前記回転角度が2つ以上ある場合には、前記各情報コードの読取方向に基づいて前記各相対位置をそれぞれ補正して特定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項10】
前記表示位置において所定の位置に表示される情報コードは、他の情報コードと異なる特徴を有するように構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項11】
前記デコード手段によりデコードされた前記情報コードとこの情報コードの前記相対位置とを対として順次記憶する記憶手段を備え、
前記デコード手段によりデコードされた前記情報コードの前記相対位置が前記記憶手段に記憶された他の相対位置に一致するとみなされるとき当該情報コードの読み取りを無効とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−282325(P2010−282325A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133836(P2009−133836)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】