説明

光学的情報読取装置

【課題】関連する情報がコード化された複数の情報コードから構成される多段コードを読み取る際の読取作業時の作業性の向上を図り得る光学的情報読取装置を提供することにある。
【解決手段】受光センサ28により撮像された撮像画像Fから各情報コードに対応するコード領域Aが検出されると、これら各コード領域Aの総面積が各コード領域Aのすべてが含まれる最小の領域Dに対して占める占有率が算出される。そして、算出された占有率が第1の閾値以上である場合に、各コード領域Aに対応する各情報コードが多段コードであると判定されて一括でデコードされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関連する情報がコード化された複数の情報コードから構成される多段コードを光学的に読み取る光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、関連する情報がコード化された複数の情報コードから構成される多段コードを光学的に読み取る光学的情報読取装置に関する技術として、例えば、下記特許文献1に示す2次元コード読み取り用バーコードリーダが知られている。この特許文献1のバーコードリーダは、横方向に情報を有するバーコードが縦方向に4段重ねられてなる2次元的なコードラベルを、一段ごとに順次読み取るように構成されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、コード種別やコードサイズ等の共通の特徴を少なくとも1つ指定して多段コードを読み取る光学式情報読取装置が記載されている。この光学式情報読取装置では、まず、多段コード読取モードに設定し、読取視野に位置する読取対象のコードのうち最初のコードを読取ってから、全てのコードの読取り処理を終了したかを判断し、終了していない場合は、次のコードを順に読取る。そして、全ての段のコードの読取り処理が終了すると、これらの各コードが指定された共通の特徴を有しているか否かが判断され、共通の特徴を有していない場合にはエラーとなるようにしている。
【0004】
そして、下記特許文献3には、予め読み取り対象の多段バーコードの段数をバーコード段数設定手段によって設定するバーコード読み取り装置が記載されている。このバーコード読み取り装置は、デコードデータ比較手段から得られたデコードデータの数とバーコード段数設定手段によって設定された多段バーコードの段数とを比較して一致した場合に、読み取られてデコードデータ記憶手段に記憶されているデコードデータをホストコンピュータ等の外部機器へ出力するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−162247号公報
【特許文献2】特開2006−134160号公報
【特許文献3】特開平11−3398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および2では、多段コードを何回かに分けて読み取る必要があり、多段コードを一括で読み取る場合に比べ読取作業時の作業性が悪くなるといった問題があった。
【0007】
また、上記引用文献3では、設定された多段バーコードの段数とデコードデータの数が一致していないとデコードデータが出力されないように構成されている。そのため、多段バーコードを構成する複数の情報コードのうち一部のみしかデコードに成功しておらずデコードデータの数と多段バーコードの段数が一致しない場合には、デコードに成功した情報コードがあってもデコードデータが全く出力されないという不都合があった。そして、読み取り対象の多段バーコードの段数を毎回設定しなければならないため、煩わしいという問題もあった。
【0008】
さらに、上記特許文献1〜3では、バーコード等の一次元の情報コードとQRコード(登録商標)等の二次元の情報コードとの異なるコード種別の組み合わせから構成される多段コードや、コードサイズがそれぞれ異なる複数の情報コードから構成される多段コードを一括して読み取ることが難しかった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、関連する情報がコード化された複数の情報コードから構成される多段コードを読み取る際の読取作業時の作業性の向上を図り得る光学的情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の光学的情報読取装置では、関連する情報がコード化された複数の情報コードから構成される多段コードを一括して光学的に読み取り可能な光学的情報読取装置であって、前記情報コードを撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像から前記各情報コードに対応するそれぞれのコード領域を検出するコード領域検出手段と、前記コード領域検出手段により検出された前記各コード領域の面積を総和した総面積が、前記各コード領域のすべてが含まれる最小の領域に対して占める占有率を算出する占有率算出手段と、前記コード領域検出手段により検出された前記各コード領域間の相対的な距離を算出する距離算出手段と、前記占有率算出手段により算出された前記占有率および前記距離算出手段により算出された前記コード領域間距離の少なくともいずれか一方に基づいて前記各情報コードが前記多段コードであるか否かを判定する判定手段と、前記撮像手段により撮像された前記画像内の前記各コード領域をデコードするデコード手段と、を備え、前記デコード手段は、前記判定手段により前記各情報コードが前記多段コードであると判定されるとき、前記各コード領域に対応する当該各情報コードを多段コードとして一括でデコードすることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学的情報読取装置において、前記距離算出手段は、前記コード領域間距離として、前記各コード領域間の一方向およびこの一方向に垂直な他方向の相対的な距離である一方向距離と他方向距離とをそれぞれ算出可能であって、前記判定手段は、前記距離算出手段により算出された前記一方向距離と前記他方向距離、および前記占有率のうち少なくともいずれか1つに基づいて前記各情報コードが前記多段コードであるか否かを判定することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2に記載の光学的情報読取装置において、前記判定手段は、前記占有率、前記一方向距離および前記他方向距離のうち、使用状況に応じてあらかじめ定められる少なくともいずれか1つに基づいて、前記各情報コードが前記多段コードであるか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、撮像手段により撮像された画像から各情報コードに対応するコード領域がコード領域検出手段により検出される。そして、占有率算出手段により、コード領域検出手段により検出された各コード領域の面積を総和した総面積が各コード領域のすべてが含まれる最小の領域に対して占める占有率が算出される。また、距離算出手段により、コード領域検出手段により検出された各コード領域間の相対的な距離が算出される。そして、算出された占有率およびコード領域間距離の少なくともいずれか一方に基づいて、各情報コードが多段コードであると判定手段により判定されると、デコード手段が各コード領域に対応する各情報コードを多段コードとして一括でデコードする。
【0014】
一般に、多段コードは、関連する情報がコード化された複数の情報コードを複数段にそれぞれが近い位置に並べて構成される。この特徴により、各情報コードが多段コードであれば、上述のように算出される占有率が所定の閾値以上になり、また上述のように算出されるコード領域間距離が他の所定の閾値以下になる。このため、上記占有率およびコード領域間距離のうち少なくともいずれか一方に基づいて、画像内の各情報コードが多段コードであるか否かを自動的に判定することで、これら各情報コードが多段コードであれば、多段コードとして一括でデコードされる。このように、コード領域として検出された各情報コードが多段コードであれば一括でデコードされるので、多段コードが複数回に分けてデコードされる場合と比較して、読取作業時の作業性の向上を図ることができる。
【0015】
また、各情報コードが占有率およびコード領域間距離のようにコード種別等によらない要因に基づいて多段コードであるか否かが判定されて読み取りが行われるため、多段コードとして情報コードの種類をあらかじめ指定しておく必要もない。このため、バーコード等の一次元の情報コードとQRコード等の二次元の情報コードとの異なるコード種別の組み合わせから構成される多段コードや、コードサイズがそれぞれ異なる複数の情報コードから構成される多段コードであっても一括でデコードすることができる。
【0016】
さらに、多段コードを構成する1つの情報コードと同じ単独の情報コードを読み取る場合であっても、当該情報コードの周囲に他の情報コードが存在しないことから多段コードと判定されず、単独の情報コードとして読み取られることとなる。このため、多段コードを構成する各情報コードに対して、多段コードを示す特有の情報を持たせる必要もない。
【0017】
請求項2の発明では、距離算出手段が、コード領域間距離として、各コード領域間の一方向の相対的な距離である一方向距離とこの一方向に垂直な他方向の相対的な距離である他方向距離とをそれぞれ算出可能に構成されている。そして、一方向距離と他方向距離、および占有率のうち少なくともいずれか1つに基づいて各情報コードが多段コードであるか否かを判定する。
【0018】
すなわち、コード領域間距離として互いに直交する一方向距離および他方向距離が算出されて、これら一方向距離と他方向距離の両方に基づいて各情報コードが多段コードであるか否かが判定される場合には、一方向距離または他方向距離の一方のみに基づいて各情報コードが多段コードであるか否かが判定される場合と比較して、この判定精度を高めることができる。
また、例えば、一方向距離のずれが小さい情報コードのみで構成される多段コードが読取対象である場合には、他方向距離のみに基づいて各情報コードが多段コードであるか否かを判定手段により判定することもできる。この場合には、一方向距離と他方向距離、および占有率のすべてに基づいて各情報コードが多段コードであるか否かを判定する場合と比較して読取処理の負荷の軽減を図ることができる。
【0019】
請求項3の発明では、占有率、一方向距離および他方向距離のうち、使用状況に応じてあらかじめ定められる少なくともいずれか1つに基づいて、各情報コードが多段コードであるか否かを判定手段により判定するように構成されている。このように、例えば、一方向距離のずれが小さい情報コードのみで構成される多段コードが読取対象である場合には、他方向距離を優先的に考慮して各情報コードが多段コードであるか否かを判定してもよい。これにより、読取処理の負荷の軽減を図ることができるとともに、各情報コードが多段コードであるか否かの判定精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本第1実施形態に係る光学的情報読取装置10の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本第1実施形態に係る制御回路40における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図3】バーコードB,Bに対する占有率算出処理を説明するための図である。
【図4】バーコードB,Bに対する占有率算出処理を説明するための図である。
【図5】バーコードB,Bに対する占有率算出処理を説明するための図である。
【図6】バーコードB,Bに対する占有率算出処理を説明するための図である。
【図7】バーコードBとQRコードQに対する占有率算出処理を説明するための図である。
【図8】本第2実施形態に係る制御回路40における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図9】バーコードB,Bに対する距離算出処理を説明するための図である。
【図10】本第3実施形態に係る制御回路40における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る光学的情報読取装置の実施形態について図を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、光学的情報読取装置10は、対象物に表示されたバーコード等の情報コード(以下、単に「バーコードB」ともいう)を読み取る装置として構成されている。この光学的情報読取装置10は、図示しないケースの内部に回路部20が収容されてなるものであり、回路部20は、主に、照明光源21、受光センサ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、トリガースイッチ42等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。なお、受光センサ28等の光学系は、特許請求の範囲に記載の「撮像手段」の一例に相当する。
【0022】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する照明光源21は、照明光Lfを発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられるレンズとから構成されている。なお、図1では、バーコードBが表示された対象物Rに向けて照明光Lfを照射する例を概念的に示している。
【0023】
受光光学系は、受光センサ28、結像レンズ27、反射鏡(図示略)などによって構成されている。受光センサ28は、CCDエリアセンサとして構成されるものであり、バーコードBまたは対象物Rに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されている。この受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板(図示略)に実装されている。
【0024】
結像レンズ27は、外部から読取口(図示略)を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面28aに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本第1実施形態では、照明光源21から照射された照明光LfがバーコードBにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光し、受光センサ28の受光面28aにコード像を結像させている。
【0025】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。
【0026】
光学系の受光センサ28から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、生成されてメモリ35に入力されると、所定のコード画像情報格納領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ28およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0027】
制御回路40は、光学的情報読取装置10全体を制御可能なマイコンによって構成されており、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有するとともに、情報処理機能を備えており、メモリ35とともに情報処理装置を構成している。本実施形態では、制御回路40に対し、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。
【0028】
これにより、制御回路40は、例えば、トリガースイッチ42の監視や管理、バーコードBの読み取りに関する情報を報知するインジケータとして機能する発光部43の点灯・消灯、ビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、当該光学的情報読取装置10の使用者に伝達し得る振動を発生可能なバイブレータ45の駆動制御、液晶表示器46の表示制御や外部装置とのシリアル通信を可能にする通信インタフェース48の通信制御等を可能にしている。
【0029】
次に、上述のように構成される光学的情報読取装置10において、関連する情報がコード化された複数の情報コードから構成される多段コードを読み取る場合に制御回路40により実施される読取処理について図2〜図7を参照して説明する。
【0030】
まず、図2のステップS101において撮像処理がなされ、作業者のトリガースイッチ42の操作に応じて照明光源21から照明光Lfが、バーコードBが表示された対象物Rに向けて照射される。そして、図1に示すように、対象物Rにて反射された反射光Lrが受光センサ28にて受光されることにより受光センサ28から出力される信号に基づいて撮像画像Fが取得される。
【0031】
そして、ステップS103において、コード領域検出処理がなされる。この処理では、ステップS101にて撮像された撮像画像Fに含まれる1または複数の情報コードに対応するコード領域Aがそれぞれ検出される。具体的には、例えば図3に示すように、2つのバーコードB,Bが撮像された撮像画像Fからこれら両バーコードB,Bに対応するコード領域A,Aが検出される。これらコード領域A,Aは、具体的には、撮像画像F内において明色領域および暗色領域が複数集合していることからバーコードとして判断されうる領域である。なお、ステップS103のコード領域検出処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「コード領域検出手段」の一例に相当する。
【0032】
次に、ステップS103にて検出されたコード領域Aが1つのみである場合には、ステップS105にてNoと判定されて、後述するステップS113の処理がなされることとなる。一方、検出されたコード領域Aが図3のように複数ある場合には、ステップS105にてYesと判定されて、ステップS107にてこのコード領域に対して占有率算出処理がなされる。なお、ステップS105の処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「判定手段」の一例に相当する。
【0033】
ここで、占有率とは、各コード領域Aの面積を総和した総面積が、各コード領域Aのすべてが含まれる最小の領域Dの面積に対して占める割合のことをいう。そして、例えば図3に示すコード領域A,Aの面積は、x軸とy軸とが互いに直交する座標系(以下、直交座標系という)において、各コード領域A,Aのそれぞれの4つの角部A1a〜A1dおよびA2a〜A2dの座標からそれぞれ求めることができる。またここで、最小の領域Dとは、各コード領域を構成する複数の角部のうち最も離間した2点を対角とする長方形に相当する領域のことをいう。すなわち、最小の領域Dとは、コード領域A,Aが含まれる最小の長方形に相当する領域のことである。そして、図3において最も離間した2点とは、A1a,A2cであり、それぞれが最小の領域Dの頂点の一部を構成する。そして、コード領域A,Aの総面積を最小の領域Dの面積で除算することにより占有率が算出される。
【0034】
こうして算出された占有率に基づいてステップS109にて各コード領域Aが多段コードであるか否かが判定される。一般に、多段コードは、関連する情報がコード化された複数の情報コードがそれぞれ近い位置に並べられて構成されることから、上述のように算出される占有率が所定の閾値(以下、第1の閾値という)以上になる。例えば、図4に示すように、多段コードとして2つのバーコードB,Bがx軸方向にずれが小さくy軸方向に所定の隙間を設けるように近接して配置された状態では、占有率が上記第1の閾値以上になる。本第1実施形態では、上記を考慮して、第1の閾値が60%に設定されている。すなわち、占有率が60%以上である各情報コードが多段コードと判定され、占有率が60%未満である各情報コードが多段コードではなくそれぞれ独立した情報コードと判定される。
【0035】
なお、この第1の閾値は使用状況に応じて適宜変更することができる。例えば、上記第1の閾値が50%程度と低く設定されることで、図5に示すように互いに直交して近接するように配置される2つのバーコードB,Bも多段コードとして判定することができる。そして、互いに異なる規格のコード(例えばEANコードとUPCコード)が近接して配置される各情報コードや、図6に示すように大小2つのバーコードB,Bが近接して配置される各情報コードや、図7に示すように一次元コードであるバーコードBと二次元コードであるQRコードQとが近接して配置される各情報コードも多段コードとして判定することができる。このように、コード種別等によらない占有率に基づいてコード領域A,Aが多段コードであるか否かが判定されるため、多段コードとして情報コードの種類をあらかじめ指定しておく必要がない。
【0036】
そして、上記ステップS107にて算出された占有率が60%以上であることからコード領域A,Aに対応するバーコードB,Bが多段コードと判定されると(S109でYes)、ステップS111にてバーコードB,Bが多段コードとして一括してデコード処理されることとなる。このように、バーコードB,Bが多段コードとして一括でデコードされるので、バーコードB,Bが複数回に分けてデコードされる場合と比較して、読取作業時の作業性の向上を図ることができる。
【0037】
一方、占有率が60%未満であることからコード領域A,Aに対応するバーコードB,Bが多段コードでないと判定されると(S109でNo)、バーコードB,BはステップS113にてそれぞれ別々にデコード処理される。このように、多段コードでないと判定されたバーコードB,Bは自動的にそれぞれ単独の情報コードとしてデコードすることができる。
【0038】
以上説明したように、本第1実施形態に係る光学的情報読取装置10では、受光センサ28により撮像された撮像画像Fから各情報コードに対応するコード領域Aが検出されると、これら各コード領域Aの総面積が各コード領域Aのすべてが含まれる最小の領域Dに対して占める占有率が算出される。そして、算出された占有率が第1の閾値以上である場合に、各コード領域Aに対応する各情報コードが多段コードであると判定されて一括でデコードされる。
【0039】
このように、上記占有率に基づいて、撮像画像F内の各情報コードが多段コードであるか否かが自動的に判定されて、これら各情報コードが多段コードであれば多段コードとして一括でデコードされるので、各情報コードが複数回に分けてデコードされる場合と比較して、読取作業時の作業性の向上を図ることができる。
【0040】
また、各情報コードが占有率のようにコード種別等によらない要因に基づいて多段コードであるか否かが判定されて読み取りが行われるため、多段コードとして情報コードの種類をあらかじめ指定しておく必要もない。このため、互いに異なる規格のバーコードの組み合わせから構成される多段コードや、バーコードB等の一次元の情報コードとQRコードQ等の二次元の情報コードとの異なるコード種別の組み合わせから構成される多段コード、コードサイズがそれぞれ異なる複数の情報コードから構成される多段コードであっても一括でデコードすることができる。
【0041】
さらに、多段コードを構成する1つの情報コードと同じ単独の情報コードを読み取る場合であっても、当該情報コードの周囲に他の情報コードが存在しないことから多段コードと判定されず、単独の情報コードとして読み取られることとなる。このため、多段コードを構成する各情報コードに対して、多段コードを示す特有の情報を持たせる必要もない。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る光学的情報読取装置10について、図8および図9を参照して説明する。本第2実施形態では、上述したステップS107の占有率算出処理に代えて、後述するステップS108の距離算出処理に基づいて各情報コードが多段コードであるか否かを判定する点が主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の光学的情報読取装置10と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0043】
以下、本第2実施形態に係る制御回路40による読取処理について図8および図9を用いて説明する。
まず、上記第1実施形態と同様に、図8のステップS101にて撮像処理がなされると、ステップS103にてコード領域検出処理がなされ、撮像された撮像画像Fからコード領域Aが検出される。そして、検出されたコード領域Aが1つのみである場合には、ステップS105にてNoと判定されて、ステップS113の処理がなされることとなる。一方、検出されたコード領域Aが複数ある場合には、ステップS105にてYesと判定されて、ステップS108にてこれら各コード領域Aに対して距離算出処理がなされる。
【0044】
ここで、ステップS108での距離算出処理について、図9を参照して説明する。距離算出処理では、各情報コードが多段コードであるか否かを判定するための要因として、各コード領域A間の相対的な距離(以下、コード領域間距離という)が算出される。具体的には、例えば図9に示すように、バーコードB,Bに対応するコード領域A,Aが検出されると、各コード領域A,A間の一方向(図9中y軸方向)の相対的な距離a,cとこの一方向に垂直な他方向(図9中x軸方向)の相対的な距離b,dとが直交座標系から算出される。ここで、距離aはy軸方向において各コード領域A,Aのうちで最も近接する部位間の距離を示し、距離cはy軸方向において各コード領域A,Aのうちで最も離間する部位間の距離を示す。また、距離bはx軸方向において各コード領域A,Aが重なる領域に対応する距離を示し、距離dはx軸方向において各コード領域A,Aのうちで最も離間する部位間の距離を示す。
【0045】
こうして求められた各距離a〜dに基づいて、ステップS109aにて各コード領域A,Aに対応するバーコードB,Bが多段コードであるか否かが判定される。ここで、y軸方向において距離cに対する距離aの比が所定の閾値(以下、第2の閾値という)以下になる場合には、各コード領域A,Aのy軸方向のずれが小さくなることから多段コードである可能性が高くなる。また、x軸方向において距離dに対する距離bの比が所定の閾値(以下、第3の閾値という)以上になる場合には、各コード領域A,Aのx軸方向のずれが小さくなることから多段コードである可能性が高くなる。本第2実施形態では、上記を考慮して、例えば、y軸方向の閾値である第2の閾値が20%に設定され、x軸方向の閾値である第3の閾値が80%に設定されている。すなわち、距離cに対する距離aの比が20%以下でありかつ距離dに対する距離bの比が80%以上である各情報コードが多段コードと判定され、一方、距離cに対する距離aの比が20%を超えるかまたは距離dに対する距離bの比が80%未満である各情報コードが多段コードではなくそれぞれ独立した情報コードと判定される。なお、第2の閾値および第3の閾値は使用状況に応じて適宜変更することができる。このように、コード領域間距離としてy軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dがそれぞれ算出されて、これらy軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dの両方に基づいて各コード領域A,Aに対応するバーコードB,Bが多段コードであるか否かが判定されるので、y軸方向の距離a,cまたはx軸方向の距離b,dの一方のみに基づいて各コード領域A,Aに対応するバーコードB,Bが多段コードであるか否かが判定される場合と比較して、この判定精度を高めることができる。
【0046】
また、例えば、y軸方向のずれが小さい情報コードのみで構成される多段コードが読取対象である場合には、x軸方向の距離b,dのみに基づいて各コード領域A,Aに対応するバーコードB,Bが多段コードであるか否かが判定されるようにしてもよい。これにより、y軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dの両方に基づいて各コード領域A,Aに対応するバーコードB,Bが多段コードであるか否かを判定する場合と比較して読取処理の負荷の軽減を図ることができる。
【0047】
そして、上記ステップS109aにてコード領域A,Aに対応するバーコードB,Bが各距離a〜dに基づいて多段コードと判定されると(S109aでYes)、ステップS111にてバーコードB,Bが多段コードとして一括してデコード処理される。一方、上記ステップS109aにてコード領域A,Aに対応するバーコードB,Bが各距離a〜dに基づいて多段コードでないと判定されると(S109aでNo)、バーコードB,BはステップS113にてそれぞれ別々にデコード処理される。
【0048】
以上説明したように、本第2実施形態では、各情報コードが多段コードであるか否かを判定するための要因であるコード領域間距離として、各コード領域A間のy軸方向の相対的な距離a,c(一方向距離)とx軸方向の相対的な距離b,d(他方向距離)とがそれぞれ算出される。そして、y軸方向において距離cに対する距離aの比が第2の閾値以下であり、かつx軸方向において距離dに対する距離bの比が第3の閾値以上になる場合に、各コード領域Aに対応する各情報コードが多段コードであると判定される。このように、y軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dの両方に基づいて各コード領域Aに対応する各情報コードが多段コードであるか否かが判定されるので、y軸方向の距離a,cまたはx軸方向の距離b,dの一方のみに基づいて各コード領域Aに対応する各情報コードが多段コードであるか否かが判定される場合と比較して、この判定精度を高めることができる。
【0049】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る光学的情報読取装置10について、図10を参照して説明する。本第3実施形態では、上述したステップS107の占有率算出処理およびステップS108の距離算出処理の両方に基づいて各情報コードが多段コードであるか否かを判定する点が主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の光学的情報読取装置10と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0050】
以下、本第3実施形態に係る制御回路40による読取処理について図10を用いて説明する。
まず、上記第1実施形態と同様に、図10のステップS101にて撮像処理がなされると、ステップS103にてコード領域検出処理がなされ、撮像された撮像画像Fからコード領域Aが検出される。そして、検出されたコード領域Aが1つのみである場合には、ステップS105にてNoと判定されて、ステップS113の処理がなされることとなる。一方、検出されたコード領域Aが複数ある場合には、ステップS105にてYesと判定されて、ステップS107にてこれら各コード領域Aに対して上記第1実施形態にて述べた占有率算出処理がなされる。そして、ステップS108にてこれら各コード領域Aに対してさらに上記第2実施形態にて述べた距離算出処理がなされることとなる。
【0051】
次に、ステップS107にて算出された占有率とステップS108にて算出されたy軸方向の相対的な距離a,cおよびx軸方向の相対的な距離b,dとのすべてに基づいてステップS109bにて各コード領域Aに対応する各情報コードが多段コードであるか否かが判定される。すなわち、本第3実施形態では、占有率とy軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dのすべてに基づいて各コード領域Aが多段コードであるか否かが判定されるので、この判定精度をより高めることができる。
【0052】
そして、上記ステップS109bにて各コード領域Aに対応する各情報コードが占有率とy軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dとに基づいて多段コードと判定されると(S109bでYes)、ステップS111にて各情報コードが一括してデコード処理される。一方、上記ステップS109bにてコード領域Aに対応する情報コードが占有率とy軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dとに基づいて多段コードでないと判定されると(S109bでNo)、各情報コードはステップS113にてそれぞれ別々にデコード処理される。
【0053】
このように、本第3実施形態では、各情報コードが多段コードであるか否かを判定するための要因として、占有率とy軸方向の相対的な距離a,c(一方向距離)およびx軸方向の相対的な距離b,d(他方向距離)とがそれぞれ算出される。そして、占有率が第1の閾値以上であり、かつy軸方向において距離cに対する距離aの比が第2の閾値以下であり、かつx軸方向において距離dに対する距離bの比が第3の閾値以上になる場合に、各コード領域Aに対応する各情報コードが多段コードであると判定される。このように、占有率とy軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dのすべてに基づいて各コード領域Aが多段コードであるか否かが判定されるので、この判定精度をより高めることができる。
【0054】
なお、上記第3実施形態の変形例として、上記ステップS109bにおいて、ステップS107にて算出された占有率とステップS108にて算出されたy軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dとのうち、使用状況に応じてあらかじめ定められる少なくともいずれか1つに基づいて、各情報コードが多段コードであるか否かが判定されるようにしてもよい。これにより、例えば、y軸方向の距離a,cのずれが小さい情報コードのみで構成される多段コードが読取対象である場合には、x軸方向の距離b,dを優先的に考慮して、距離dに対する距離bの比が第3の閾値以上になる場合に、各情報コードが多段コードであると判定される。これにより、読取処理の負荷の軽減を図ることができるとともに、各情報コードが多段コードであるか否かの判定精度をより高めることができる。
【0055】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)光学的情報読取装置10により読み取られる各情報コードは2つに限らず、3つ以上でも上記作用効果を奏する。
(2)上記第2実施形態および第3実施形態において、各コード領域間の相対的な距離は、上記y軸方向の距離a,cおよびx軸方向の距離b,dを用いることに限らず、例えば、各コード領域の各中心間の距離を用いてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…光学的情報読取装置
28…受光センサ(撮像手段)
40…制御回路(コード領域検出手段,占有率算出手段,距離算出手段,デコード手段,判定手段)
,A…コード領域
D…最小の領域
F…撮像画像
,B…バーコード(情報コード)
Q…QRコード(情報コード)
R…対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関連する情報がコード化された複数の情報コードから構成される多段コードを一括して光学的に読み取り可能な光学的情報読取装置であって、
前記情報コードを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像から前記各情報コードに対応するそれぞれのコード領域を検出するコード領域検出手段と、
前記コード領域検出手段により検出された前記各コード領域の面積を総和した総面積が、前記各コード領域のすべてが含まれる最小の領域に対して占める占有率を算出する占有率算出手段と、
前記コード領域検出手段により検出された前記各コード領域間の相対的な距離を算出する距離算出手段と、
前記占有率算出手段により算出された前記占有率および前記距離算出手段により算出された前記コード領域間距離の少なくともいずれか一方に基づいて前記各情報コードが前記多段コードであるか否かを判定する判定手段と、
前記撮像手段により撮像された前記画像内の前記各コード領域をデコードするデコード手段と、を備え、
前記デコード手段は、前記判定手段により前記各情報コードが前記多段コードであると判定されるとき、前記各コード領域に対応する当該各情報コードを多段コードとして一括でデコードすることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記距離算出手段は、前記コード領域間距離として、前記各コード領域間の一方向およびこの一方向に垂直な他方向の相対的な距離である一方向距離と他方向距離とをそれぞれ算出可能であって、
前記判定手段は、前記距離算出手段により算出された前記一方向距離と前記他方向距離、および前記占有率のうち少なくともいずれか1つに基づいて前記各情報コードが前記多段コードであるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記占有率、前記一方向距離および前記他方向距離のうち、使用状況に応じてあらかじめ定められる少なくともいずれか1つに基づいて、前記各情報コードが前記多段コードであるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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