説明

光学積層体、偏光板及び画像表示装置

【課題】干渉縞が発生せず、ハードコート性、帯電防止性及び反射防止性に優れた光学積層体を安価で提供する。
【解決手段】光透過性基材、上記光透過性基材の一方の面にハードコート層(A)及びハードコート層(B)をこの順に有する光学積層体であって、上記ハードコート層(B)は、上記ハードコート層(A)と接している部分から順に、無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)とからなり、上記無機微粒子非含有領域(B1)と上記無機微粒子含有領域(B2)との境界は凹凸形状であり、上記無機微粒子は、可視光波長よりも小さい粒径を有することを特徴とする光学積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置の最表面には、防眩性、反射防止性や帯電防止性等の種々の性能を有する機能層からなる光学積層体が設けられている。
【0003】
このような光学積層体において、ハードコート性を付与する場合、例えば、光透過性基材上に無機微粒子を含むハードコート層を形成する方法が知られている(特許文献1)。
そのようなハードコート層を単層で作製する場合、上記ハードコート層の膜厚を大きくする必要がある。しかし、上記膜厚を大きくすると、光学積層体はカール(反り)しやすくなり、上記光学積層体を偏光素子に貼り付けて偏光板を作製する際、ロールによる貼り付けが困難となるといった問題があった。また、厚いハードコート層に含ませる無機微粒子量も多くなることから、コストの面で不利であった。
【0004】
これに対して、ハードコート層を2層にした光学積層体が知られている(特許文献2)。しかしながら、少量の無機微粒子の添加でハードコート性を付与するために、例えば、上層(表面側)に無機微粒子を添加すると、上記上層と下層との間に屈折率差が生じる。このため、上記光学積層体を使用して偏光板を形成した場合に、干渉縞が発生して外観不良になるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−160543号公報
【特許文献2】特開平5−8350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、干渉縞が発生せず、ハードコート性、帯電防止性及び反射防止性に優れた光学積層体を安価で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光透過性基材、上記光透過性基材の一方の面にハードコート層(A)及びハードコート層(B)をこの順に有する光学積層体であって、上記ハードコート層(B)は、上記ハードコート層(A)と接している部分から順に、無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)とを有し、上記無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)との境界は凹凸形状であり、上記無機微粒子は、可視光波長よりも小さい粒径を有することを特徴とする光学積層体である。
上記無機微粒子非含有領域(B1)は、無機微粒子含有領域(B2)のバインダー樹脂を主成分とし、かつ、可視光波長以上の平均厚さを有することが好ましい。
上記ハードコート層(A)のバインダー樹脂と、ハードコート層(B)のバインダー樹脂とが相容性を有することが好ましい。
上記ハードコート層(A)の硬度(Ha)と、無機微粒子非含有領域(B1)の硬度(Hb1)と、無機微粒子含有領域(B2)の硬度(Hb2)とが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
Ha≦Hb1<Hb2 (1)
上記無機微粒子の形状が、数珠状であることが好ましい。
上記無機微粒子は、導電性無機微粒子であることが好ましい。
上記無機微粒子のハードコート層(B)中の含有量が10〜80質量%であることが好ましい。
本発明の光学積層体は、ハードコート層(B)のハードコート層(A)と反対側面に、低屈折率層を更に有していてもよい。
本発明の光学積層体は、ハードコート層(B)のハードコート層(A)と反対側面に、防汚層を更に有していてもよい。
【0008】
本発明はまた、偏光素子を有する偏光板であって、上記偏光板は、上記偏光素子の表面に上述の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板でもある。
本発明はまた、最表面に上述の光学積層体、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の光学積層体の断面の模式図である。図1に示すように、本発明の光学積層体は、光透過性基材1、光透過性基材1の一方の面にハードコート層(A)2及びハードコート層(B)3をこの順に有し、ハードコート層(B)3は、無機微粒子非含有領域(B1)4と無機微粒子含有領域(B2)5とを有する。
具体的には、本発明の光学積層体では、ハードコート層(B)3が、無機微粒子非含有領域(B1)4と無機微粒子含有領域(B2)5とを特定の層構成で有する。このため、硬度が高く、ハードコート性に優れた光学積層体とすることができる。
また、本発明において、無機微粒子含有領域(B2)5と無機微粒子非含有領域(B1)4及びハードコート層(A)2とは、硬度の異なる層であるので、その結果、硬度の低い層がいわゆる緩衝層となり、この緩衝層と硬度の高い層との組み合わせにより、ハードコート性がより優れた光学積層体とすることができる。
【0010】
更に、本発明の光学積層体では、無機微粒子非含有領域(B1)4と無機微粒子含有領域(B2)5との境界は凹凸形状である。このため、無機微粒子非含有領域(B1)4と無機微粒子含有領域(B2)5とに屈折率差があっても上記凹凸形状が存在することで干渉縞が発生しない。更に、ハードコート層(A)2と光透過性基材1及び/又は無機微粒子非含有領域(B1)4との界面で干渉縞が生じた場合であっても、上記凹凸形状による拡散により上記干渉縞を軽減することが可能となり、外観が良好な光学積層体とすることができるのである。
なお、本発明の光学積層体において、上記「無機微粒子非含有領域(B1)4と無機微粒子含有領域(B2)5との境界は凹凸形状である」とは、本発明の光学積層体の厚さ方向の断面を観察した場合に、無機微粒子非含有領域(B1)4と無機微粒子含有領域(B2)5との境界に凹凸形状が観察されることをいう。
【0011】
本発明の光学積層体は、光透過性基材1とハードコート層(A)2、ハードコート層(A)2とハードコート層(B)3の間に界面を生じる可能性がある。界面は、各層の間において、物理的又は化学的に親和することがない場合に生じる。特に、各層の屈折率差が大きく影響し、干渉縞を生じ外観不良になることがある。これに対し、本発明の光学積層体は、上述の凹凸形状が存在するため干渉縞を軽減でき、外観が良好となる。
また、この凹凸形状は、無機微粒子の有無によって形成されており、無機微粒子非含有領域(B1)4と無機微粒子含有領域(B2)5の間に明らかな界面はない。凹部にはバインダー樹脂中に無機微粒子が分散した領域が存在し、凸部はバインダー樹脂だけからなり無機微粒子が存在しない。このような凹凸形状であるため、界面の存在に起因する迷光などの問題も生じず、より好ましい光学積層体とすることができるのである。なお、上記境界は、無機微粒子の有無によるものなので、ハードコート層(B)3の断面を観察すると、該境界は、点状、線状両方が混在するか又は点状であり、完全な線状(界面)にはならない。
【0012】
更に、本発明では、ハードコート層を2層に分け、無機微粒子を上記無機微粒子含有領域(B2)5にのみ含有させている。すなわち、本発明では、上記無機微粒子を必要な箇所に最小限で含有させているため、コストの面においても有利なものとなる。
本発明の光学積層体の各構成について以下に詳細に説明する。
【0013】
<光透過性基材>
本発明の光学積層体は、光透過性基材を有する。
上記光透過性基材としては、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものが好ましい。
上記光透過性基材を形成する材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、あるいはトリアセチルセルロースを挙げることができる。
【0014】
上記光透過性基材の厚さは、20〜300μmであることが好ましく、より好ましくは下限が30μmであり、上限が200μmである。
上記光透過性基材は、その上に形成する層との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、ケン化、酸化処理等の物理的な処理の他、アンカー剤又はプライマー等の塗料の塗布を予め行ってもよい。
【0015】
<ハードコート層(A)>
本発明の光学積層体は、上記光透過性基材上に、ハードコート層(A)を有する。
上記ハードコート層(A)を形成するためのバインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化性樹脂を挙げることができる。より好ましくは電離放射線硬化型樹脂である。なお、本明細書において、「樹脂」は、モノマー、オリゴマー等の樹脂成分も包含する概念である。
【0016】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物、及び、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等との反応生成物(例えば、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)、等を挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
【0017】
また、上記電離放射線硬化型樹脂として、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。
【0018】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができ、これによってより優れた艶黒感を得ることができる。上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0019】
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶剤(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶剤)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性に優れるという観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0020】
本発明の光学積層体において、上記光透過性基材の材料がトリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂の場合、上記熱可塑性樹脂の好ましい具体例として、セルロース系樹脂、例えば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。セルロース系樹脂を用いることにより、光透過性基材やハードコート層との密着性や透明性を向上させることができる。
更に、上述のセルロース系樹脂の他に、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタアクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0021】
上記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0022】
上記ハードコート層(A)は、上記バインダー樹脂の他に、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては、光重合開始剤、レベリング剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、紫外線吸収剤、衝撃吸収剤、粘度調整剤、有機帯電防止剤等を挙げることができる。
【0023】
上記ハードコート層(A)は、上記バインダー樹脂、その他の成分及び溶剤を均一に混合して調製されたハードコート層(A)用組成物を使用して形成することができる。
上記混合は、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うとよい。
【0024】
上記溶剤としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、PGMEA)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)等を挙げることができる。
【0025】
上記ハードコート層(A)用組成物に使用する溶剤は、浸透性溶剤であることが好ましい。
上記浸透性溶剤とは、その溶剤を含む組成物を塗工する光透過性基材に対して、湿潤性、膨潤性を発現できる溶剤や、更に、光透過性基材の中に浸透することのできる溶剤をいう。上記浸透性溶剤を使用することにより、光透過性基材とハードコート層(A)との界面を実質的に無くすことができるため、層間密着性を良好にし、また干渉縞の発生を防ぐことができる。
例えば、上記光透過性基材としてトリアセチルセルロース(TAC)基材を使用する場合の上記浸透性溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル類;ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;メチルグリコール、メチルグリコールアセテート等のグリコール類;テトラヒドロフラン、1,4―ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン等のハロゲン化炭化水素;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のグリコールエーテル類;その他、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンが挙げられ、又は、これらの混合物が挙げられる。なかでも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
上記ハードコート層(A)の形成方法は、公知の方法に従うとよい。例えば、上記ハードコート層(A)用組成物を上記光透過性基材上に塗布して被膜を形成し、必要に応じて乾燥させた後、上記被膜を硬化させるとよい。
上記塗布して被膜を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
【0027】
上記被膜の硬化方法は、上記組成物の内容等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、上記組成物が紫外線硬化型のものであれば、被膜に紫外線を照射することにより硬化させれば良い。
【0028】
上記ハードコート層(A)は、厚さが1〜10μmであることが好ましい。上記厚さが 1μm未満であると、本発明の光学積層体のハードコート性が不充分となるおそれがある。上記厚さが10μmを超えると、カールが激しく偏光板化加工が困難になるおそれがある。上記厚さは、2〜8μmであることがより好ましい。
上記厚さは、光学積層体の断面を電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察し、測定した値である。
【0029】
<ハードコート層(B)>
本発明の光学積層体は、上記ハードコート層(A)の上にハードコート層(B)を有する。
上記ハードコート層(B)は、上記ハードコート層(A)と接している部分から順に、無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)とを有する。
本発明の光学積層体では、無機微粒子を含む無機微粒子含有領域(B2)が表面側(光透過性基材と反対側)に位置するので、硬度が高くハードコート性に優れたものとなる。また、無機微粒子を含まない無機微粒子非含有領域(B1)は、無機微粒子含有領域(B2)と比較して硬度が低い領域となり、いわゆる緩衝領域となって、光学積層体がカール(反り)するのを防止し、光学積層体に外部から加えられた力を緩衝させてハードコート性をより優れたものとすることができる。
更に、上記ハードコート層(B)では、上記無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)との境界が凹凸形状である。上記凹凸形状が存在することにより、上記無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)との屈折率差による干渉縞の発生を防ぐことができる。また、上記無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)との間に界面が存在しないため、反射によるコントラストの低下や迷光の発生も防止できる。
【0030】
上記無機微粒子非含有領域(B1)は、上記ハードコート層(A)と上記無機微粒子含有領域(B2)との間に位置する層である。
上記無機微粒子非含有領域(B1)は、無機微粒子を含まない層である。無機微粒子を含まない無機微粒子非含有領域(B1)と後述する無機微粒子を含む無機微粒子含有領域(B2)とを有する特定の構成とすることにより、本発明の所望の効果を得ることができる。
上記無機微粒子非含有領域(B1)は、上記無機微粒子含有領域(B2)のバインダー樹脂を主成分とするものであることが好ましい。
【0031】
上記無機微粒子非含有領域(B1)は、可視光波長以上の平均厚さを有することが好ましい。上記可視光波長未満の平均厚さであると、干渉縞を抑制出来なくなるおそれがある。
具体的には、上記無機微粒子非含有領域(B1)の平均厚さは、500nm以上であることが好ましい。500nm未満であると、干渉縞を抑制出来なくなるおそれがある。
なお、上記無機微粒子非含有領域(B1)は、上記無機微粒子含有領域(B2)に含まれる無機微粒子の存在の有無により凹凸形状が形成されている。このため、上記無機微粒子非含有領域(B1)の平均厚さとは、光学積層体の厚さ方向の断面を電子顕微鏡(SEM,TEM,STEM)により観察して、ハードコート層(A)とハードコート層(B)との界面と、凸部の山頂又は凹部の谷底との距離を一定範囲において測定して得られた値の平均値を意味する。
【0032】
上記凹凸形状としては、凸部の間隔が可視光波長以上である凹凸形状であることが好ましい。上記凸部の間隔が可視光波長以上であると、上記凹凸形状部分に入射した光が適度に散乱され、干渉縞の発生を防止することができるからである。
【0033】
上記無機微粒子含有領域(B2)は、無機微粒子を含む。
上記無機微粒子を含む上記無機微粒子含有領域(B2)は、上記無機微粒子非含有領域(B1)やハードコート層(A)と比較して、より高い硬度を有する。このような無機微粒子含有領域(B2)をより表層側に位置させることにより、光学積層体の表面の硬度を高め、耐擦傷性を高めることができる。また、本発明の光学積層体が、硬度の異なる層が組み合わされることとなるため、ハードコート性に優れたものとすることができる。
【0034】
上記無機微粒子は、可視光波長よりも小さい粒径を有する。上記無機微粒子の粒径が可視光波長以上であると、透明性が低下するからである。具体的には、上記無機微粒子の平均一次粒子径は、1〜200nmであることがより好ましい。1nm未満であると、硬度が得られないおそれがある。200nmを超えると、ヘイズ値が上昇するおそれがある。上記平均一次粒子径は、5〜150nmであることが更に好ましい。
なお、上記平均一次粒子径は、本発明の光学積層体の断面を電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察し、測定して得られる値である。
【0035】
光学積層体における上記無機微粒子含有領域(B2)の光透過性基材側と反対側面にさらに低屈折率反射防止層を積層する構成の場合においては、上記無機微粒子は、屈折率が高いことが好ましい。後述する低屈折率層を形成した場合に、該低屈折率層との屈折率差を充分にとることができ上記低屈折率層による反射防止効果をより発揮できるからである。
光学積層体の上記無機微粒子含有領域(B2)の光透過性基材側と反対側面にさらに低屈折率反射防止層を積層しない構成の場合においては、上記無機微粒子は、バインダー樹脂よりも屈折率が低いことが好ましい。別途低屈折率層を設けなくとも、表面反射率が低下し視認性のよい光学積層体を得ることができるからである。
また、上述した低屈折率反射防止層の有無に係らず、無機微粒子とバインダー樹脂との間には屈折率差を有することが好ましい。無機微粒子含有領域(B2)と無機微粒子非含有領域(B1)との間に屈折率差が生じ、光透過性基材及び/又は無機微粒子非含有領域(B1)とハードコート層(A)との界面で生じる干渉斑を軽減することができるからである。
【0036】
上記無機微粒子は、上述した所望の態様に応じて、適切な屈折率を有するものを適宜選択するとよいが、通常、屈折率が1.2〜3.5であることが好ましい。屈折率が1.2〜1.5の無機微粒子を用いる場合は、ハードコート層(B)を低屈折率化できるために、別途低屈折率層を設けなくとも、視認性のよい光学積層体を得ることができる。
また、後述する低屈折率層を形成する場合には、よりレベルの高い反射防止効果を得るために、無機微粒子の屈折率は1.5〜3.5であることが好ましい。
【0037】
上記無機微粒子としては、上記無機微粒子含有領域(B2)に充分な硬度を付与できるものであれば良く、公知の無機微粒子を用いることができる。本発明の光学積層体では、上記無機微粒子は、導電性無機微粒子であることが好ましい。本発明の光学積層体に帯電防止性を付与できるからである。
【0038】
上記無機微粒子としては、具体的には、SiO(屈折率1.20〜1.45:多孔質、中空等全ての形態を含む)、MgF(屈折率1.38)、ZnO(屈折率1.90、以下、カッコ内の値はすべて屈折率を表すものである。)、Sb(1.71)、SnO(1.997)、CeO(1.95)、酸化インジウム錫(略称ITO;1.95)、In(2.00)、Al(1.63〜1.76)、アンチモンドープ酸化錫(略称ATO;2.0)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称AZO;2.0)、TiO(ルチル型:2.71)等を挙げることができる。無機微粒子のなかでも、帯電防止性、屈折率及び硬度を光学積層体に好適に付与したい場合は、ATOあるいはSnOであることが好ましい。
【0039】
上記無機微粒子は、単分散のものであってもよいが、数珠状のものであることがより好ましい。数珠状であると、少量の添加でハードコート性や上述の帯電防止性を好適に付与でき、かつ、光学積層体の光透過性を低下させるおそれがない。更に、上記無機微粒子が数珠状であることで、上記無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)とをハードコート層(B)中に好適に形成することができる。このことは後述する。
なお、上記数珠状とは、上記無機微粒子が3〜100個繋がっている状態をいい、上記繋がっている状態は、直鎖状であってもよいし枝状であってもよい。
【0040】
上記無機微粒子は、有機処理を施したものであってもよい。特に、反応性基を有する有機処理をした場合、バインダー樹脂とも反応して架橋することで、ハードコート性能が向上するため好ましい。
上記有機処理としては、上記無機微粒子の表面に化合物を化学的に結合させる方法や、上記無機微粒子の表面とは化学的な結合なしに、無機微粒子を形成する組成物にあるボイドなどに浸透させるような物理的な方法が挙げられ、どちらを使用してもよい。
一般的には、上記有機処理としては、水酸基又はシラノール基等のシリカ表面の活性基を利用する化学的処理法が、処理効率の観点で好ましく用いられる。処理に使用する化合物としては、上述活性基と反応性の高いシラン系、シロキサン系、シラザン系材料などが用いられる。例えば、メチルトリクロロシラン等の、直鎖アルキル単基置換シリコーン材料、分岐アルキル単置換シリコーン材料、或いはジ−n−ブチルジクロロシラン、エチルジメチルクロロシラン等の多置換直鎖アルキルシリコーン化合物や、多置換分岐鎖アルキルシリコーン化合物が挙げられる。同様に、直鎖アルキル基若しくは分岐アルキル基の単置換、多置換シロキサン材料、シラザン材料も有効に使用することができる。
必要機能に応じ、アルキル鎖の末端、乃至中間部位に、ヘテロ原子、不飽和結合基、環状結合基、芳香族官能基等を有するものを使用してもよい。
【0041】
上記無機微粒子の含有量は、上記ハードコート層(B)中10〜80質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、本発明の光学積層体のハードコート性等が劣ることがある。80質量%を超えると、無機微粒子含有層の透明性の低下や硬度の低下のおそれがある。上記含有量は、15〜60質量%であることがより好ましい。
【0042】
上記無機微粒子非含有領域(B1)及び上記無機微粒子含有領域(B2)を有するハードコート層(B)は、バインダー樹脂及び上記無機微粒子を含むハードコート層(B)用組成物を使用して形成することができる。
上記ハードコート層(B)を形成するためのバインダー樹脂としては、上述したハードコート層(A)を形成するためのバインダー樹脂と同様の樹脂を挙げることができる。なかでも、上記ハードコート層(B)を形成するためのバインダー樹脂としては、上記ハードコート層(A)のバインダー樹脂と相容性がある樹脂であることが好ましい。特に、ハードコート層(A)のバインダー樹脂と同じ樹脂を用いた場合は、密着性が向上し、干渉縞の原因になる界面も目立たなくなるため好ましい。また、上記ハードコート層(B)のバインダー樹脂と上記ハードコート層(A)のバインダー樹脂とが同じである場合は、無機微粒子非含有領域(B1)の硬度は、上記ハードコート層(A)の硬度とほぼ同じになり、上記無機微粒子非含有領域(B1)と上記ハードコート層(A)とは、共に緩衝領域として機能し、ハードコート性がより優れた光学積層体とすることができる。
【0043】
上記ハードコート層(B)用組成物は、上記ハードコート層(B)を形成するためのバインダー樹脂と、上記無機微粒子と、必要に応じてその他の成分とを溶剤と混合して調製することができる。
上記その他の成分及び溶剤としては、上述したハードコート層(A)用組成物に使用できるその他の成分及び溶剤を挙げることができる。また、帯電防止性を向上させるため、上記無機導電性微粒子とともに、有機帯電防止剤を添加してもよい。
上記混合して調製する方法としては、上述したハードコート層(A)用組成物の調製方法と同様の方法を挙げることができる。
【0044】
上記ハードコート層(B)は、例えば、上記ハードコート層(B)用組成物を上記ハードコート層(A)上に、ウェッブ速度と塗布速度とが異なるようにして、せん断力を与えるように塗布して被膜を形成したのち、乾燥、硬化させることで形成することができる。
ここで、上記ハードコート層(B)用組成物中では、上記無機微粒子が均一に分散している。しかしながら、硬化後のハードコート層(B)において無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)との境界が凹凸形状となるように無機微粒子が分離するのは、上記被膜の形成において、上記被膜中でハードコート層(A)との間に働くせん断応力によりハードコート層(A)側の界面付近から無機微粒子が反対側界面の方向に移動するためであると推察される。このような状態の被膜を乾燥、硬化させることで無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)とを有するハードコート層(B)を形成することができるものと考えられる。また、上記ハードコート層(B)用組成物の組成や塗布速度、乾燥方法等を調整することで、形成する無機微粒子非含有領域(B1)の厚さ及び凹凸形状を制御することができる。
【0045】
また、上記ハードコート層(B)を形成する他の方法としては、例えば、離型性を有する基材上に上記ハードコート層(B)用組成物を塗布し、塗液中での無機微粒子の比重差を利用しつつ対流が生ずるように乾燥させることで、無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)との境界に凹凸形状が形成された後、上記被膜を硬化させてハードコート層(B)を形成し、その上にハードコート層(A)を形成し、基材にハードコート層(A)面を転写する方法等が挙げられる。ハードコート層(B)を硬化する場合は、半硬化であると、ハードコート層(A)との密着性を向上させ、ハードコート間の界面を生じにくくできるため、好ましい。
【0046】
上記ハードコート層(B)用組成物の塗布方法としては、一定のせん断力を被膜にかけることができる方法であれば、特に限定されず、上述したハードコート層(A)の形成における塗布方法と同様の方法を挙げることができる。
上記塗布量は、1.5〜15g/cmが好ましい。
上記乾燥方法としては一般的な乾燥方法が用いられるが、具体的には40〜150℃の温風を一定時間吹き付けるあるいは滞留させることにより行う。
上記被膜を硬化させる方法としては、上述したハードコート層(A)の硬化方法と同様の方法を挙げることができる。
このような方法でハードコート層(B)を形成することで、無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)とを有するハードコート層(B)を形成することができる。
【0047】
上記ハードコート層(B)は、厚さが1〜10μmであることが好ましい。上記厚さが1μm未満であると、ハードコート性が不十分となるおそれがある。上記厚さが10μmを超えると、カールが激しく偏光板化加工が困難になるおそれがある。上記厚さは、2〜8μmであることがより好ましい。
上記厚さは、光学積層体の断面を電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察し、測定した値である。
【0048】
本発明の光学積層体において、上記ハードコート層(A)の硬度(Ha)と、上記無機微粒子非含有領域(B1)の硬度(Hb1)と、上記無機微粒子含有領域(B2)の硬度(Hb2)とが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
Ha≦Hb1<Hb2 (1)
上記式を満たすことにより、光学積層体として適度な硬度を有し、かつ、カール等の変形を防ぐことができる。
上記ハードコート層(A)、上記無機微粒子非含有領域(B1)及び上記無機微粒子含有領域(B2)の硬度については、各層及び領域を形成する成分を含む組成物により単独で形成したフィルムを用いて、H・フィッシャー社製表面被膜物性試験機(ピコデンター HM500)により測定することができる。
【0049】
<低屈折率層>
上記光学積層体は、更に、低屈折率層を有することが好ましい。
上記低屈折率層を形成することにより、反射防止性に優れた光学積層体とすることができる。
【0050】
上記低屈折率層は、上記ハードコート層(A)及び(B)よりも低い屈折率を有するものが好ましい。本発明の好ましい態様によれば、上記ハードコート層(A)及び(B)の屈折率が1.5以上であり、低屈折率層の屈折率が1.5未満であることが好ましい。上記低屈折率層の屈折率は、より好ましくは1.45以下、更に好ましくは1.35以下である。
【0051】
上記低屈折率層は、1)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有する樹脂、2)低屈折率樹脂であるフッ素系材料、3)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有するフッ素系材料、4)シリカ又はフッ化マグネシウムの薄膜、等のいずれかで構成されていてもよい。
【0052】
上記フッ素系材料とは、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物又はその重合体である。上記重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、電離放射線で硬化する官能基(電離放射線硬化性基)や熱で硬化する極性基(熱硬化極性基)等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。また、これらの反応性の基を同時に併せ持つ化合物でもよい。
【0053】
フッ素原子を含有する電離放射線硬化性基を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールなど)を例示することができる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものとして、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロメタクリル酸メチル、α−トリフルオロメタクリル酸エチルのような、分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中に、フッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物などもある。
【0054】
フッ素原子を含有する熱硬化性極性基を有する重合性化合物としては、例えば、4−フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン−炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品などを例示することができる。上記熱硬化性極性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基が好ましく挙げられる。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカなどの無機超微粒子との親和性にも優れている。
【0055】
電離放射線硬化性基と熱硬化性極性基とを併せ持つ重合性化合物(フッ素系樹脂)としては、アクリル又はメタクリル酸の部分及び完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類、完全または部分フッ素化ビニルエステル類、完全または部分フッ素化ビニルケトン類等を例示することができる。
【0056】
フッ素原子を含有する上記重合性化合物の重合体としては、例えば、上記電離放射線硬化性基を有する重合性化合物の含フッ素(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種類含むモノマー又はモノマー混合物の重合体;含フッ素(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種類と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの如き分子中にフッ素原子を含まない(メタ)アクリレート化合物との共重合体;フルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンのような含フッ素モノマーの単独重合体又は共重合体;などが挙げられる。
【0057】
また、これらの共重合体にシリコーン成分を含有させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体も、上記重合性化合物の重合体として用いることができる。この場合のシリコーン成分としては、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサンや、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が例示できる。中でもジメチルシロキサン構造を有するものが好ましい。
【0058】
上記したほか、さらには、分子中に少なくとも1個のイソシアナト基を有する含フッ素化合物と、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等のイソシアナト基と反応する官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物とを反応させて得られる化合物;フッ素含有ポリエーテルポリオール、フッ素含有アルキルポリオール、フッ素含有ポリエステルポリオール、フッ素含有ε−カプロラクトン変性ポリオール等のフッ素含有ポリオールと、イソシアナト基を有する化合物とを反応させて得られる化合物;なども、フッ素系樹脂として用いることができる。
【0059】
低屈折率層の形成にあっては、例えば原料成分を含む組成物(屈折率層用組成物)を用いて形成することができる。より具体的には、原料成分(樹脂等)及び必要に応じて添加剤(例えば、後述の「空隙を有する微粒子」、重合開始剤、帯電防止剤、防汚剤、防眩剤等)を溶剤に溶解又は分散してなる溶液又は分散液を、低屈折率層用組成物として用い、上記組成物による塗膜を形成し、上記塗膜を硬化させることにより低屈折率層を得ることができる。なお、重合開始剤、帯電防止剤、防汚剤、防眩剤等の添加剤は、公知のものを使用することができる。また、有機帯電防止剤を添加することで帯電防止性能を付与できる。
【0060】
上記溶剤としては、上述のハードコート層(A)の形成において使用できる溶剤と同様の溶剤を挙げることができる。なかでも、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が好ましい。
【0061】
上記組成物の調製方法は、成分を均一に混合できれば良く、公知の方法に従って実施すれば良い。例えば、上記ハードコート層の形成で上述した公知の装置を使用して混合分散することができる。
低屈折率層の形成方法は、公知の方法に従うとよい。例えば、上記ハードコート層の形成で上述した各種方法を用いることができる。
【0062】
上記低屈折率層においては、低屈折率剤として、「空隙を有する微粒子」を利用することが好ましい。「空隙を有する微粒子」は低屈折率層の層強度を保持しつつ、その屈折率を下げることができる。本発明において、「空隙を有する微粒子」とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。また、本発明にあっては、微粒子の形態、構造、凝集状態、被膜内部での微粒子の分散状態により、内部、及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。この微粒子を使用した低屈折率層は、屈折率を1.25〜1.45に調節することが可能である。
【0063】
空隙を有する無機系の微粒子としては、例えば、特開2001−233611号公報に記載された方法によって調製されたシリカ微粒子を挙げることができる。また、特開平7−133105号公報、特開2002−79616号公報、特開2006−106714号公報等に記載された製法によって得られるシリカ微粒子であってもよい。空隙を有するシリカ微粒子は製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、バインダーと混合して低屈折率層を形成した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率を1.20〜1.45程度の範囲内に調整することを可能とする。特に、空隙を有する有機系の微粒子の具体例としては、特開2002−80503号公報で開示されている技術を用いて調製した中空ポリマー微粒子が好ましく挙げられる。
【0064】
被膜の内部及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子としては先のシリカ微粒子に加え、比表面積を大きくすることを目的として製造され、充填用のカラム及び表面の多孔質部に各種化学物質を吸着させる除放材、触媒固定用に使用される多孔質微粒子又は断熱材や低誘電材に組み込むことを目的とする中空微粒子の分散体や凝集体を挙げることができる。そのような具体例としては、市販品として日本シリカ工業株式会社製の商品名NipsilやNipgelの中から多孔質シリカ微粒子の集合体、日産化学工業社製のシリカ微粒子が鎖状に繋がった構造を有するコロイダルシリカUPシリーズ(商品名)から、本発明の好ましい粒子径の範囲内のものを利用することが可能である。
【0065】
「空隙を有する微粒子」の平均粒子径は、5nm以上300nm以下であることが好ましく、下限が5nmであり上限が100nmであることがより好ましく、下限が10nmであり上限が80nmであることが更に好ましい。微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、低屈折率層に優れた透明性を付与することが可能となる。なお、上記平均粒子径は、動的光散乱法によって測定した値である。「空隙を有する微粒子」は、上記低屈折率層中にマトリックス樹脂100質量部に対して、通常0.1〜500質量部程度、好ましくは10〜200質量部程度とするのが好ましい。
【0066】
低屈折率層の形成においては、上記低屈折率層用組成物の粘度は、好ましい塗布性が得られる0.5〜5cps(25℃)の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.7〜3cps(25℃)である。上記範囲の粘度とすることにより、可視光線の優れた反射防止膜を実現でき、かつ、均一で塗布ムラのない薄膜を形成することができ、かつ基材に対する密着性に特に優れた低屈折率層を形成することができる。
【0067】
樹脂の硬化手段は、上記ハードコート層で説明した方法と同様であってよい。硬化処理のために光照射手段が利用される場合には、光照射により、例えばラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始させる光重合開始剤がフッ素系樹脂組成物に添加されることが好ましい。
【0068】
低屈折率層の膜厚(nm)dは、下記式(I):
=mλ/(4n) (I)
(上記式中、
は低屈折率層の屈折率を表し、
mは正の奇数を表し、好ましくは1を表し、
λは波長であり、好ましくは480〜580nmの範囲の値である)
を満たすものが好ましい。
【0069】
また、本発明にあっては、低屈折率層は下記式(II):
120<n<145 (II)
を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
【0070】
<他の層>
上記光学積層体は、上述した光透過性基材、ハードコート層(A)及び(B)、並びに、低屈折率層の他に、他の任意の層を有していてもよい。上記任意の層としては、防眩層、防汚層、高屈折率層、中屈折率層、帯電防止層等を挙げることができる。これらの層は、公知の防眩剤、低屈折率剤、高屈折率剤、帯電防止剤、防汚剤等と樹脂及び溶剤等とを混合して、公知の方法により形成するとよい。なかでも、防汚層を更に形成することが好ましい。
【0071】
<光学積層体>
本発明の光学積層体は、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、2H〜5Hであることが好ましい。
【0072】
本発明の光学積層体は、表面抵抗値が1011Ω/□以下であることが好ましい。
1011Ω/□を超えると、目的とする帯電防止性能が発現しなくなるおそれがある。上記表面抵抗値は、10Ω/□以下であることがより好ましい。
上記表面抵抗値は、表面抵抗値測定器(三菱化学社製、製品番号;Hiresta IP MCP−HT260)にて測定することができる。
【0073】
本発明の光学積層体は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。80%未満であると、ディスプレイ表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある。上記全光線透過率は、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
【0074】
本発明の光学積層体を製造する方法としては、例えば、光透過性基材の片方の表面にハードコート層(A)を形成した後、ハードコート層(B)を上記ハードコート層(A)上に形成する方法が挙げられる。
上記ハードコート層(A)を形成する方法、及び、上記ハードコート層(B)を形成する方法としては、上述した通りである。
【0075】
<偏光板及び画像表示装置>
本発明の光学積層体は、偏光素子の表面に、上記光学積層体の、光透過性基材のハードコート層が存在する面と反対側の面側を、設けることによって、偏光板とすることができる。このような偏光板もまた本発明の一つである。
【0076】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と上記光学積層体とのラミネート処理においては、光透過性基材にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。また、粘着剤を使用して接着させてもよい。上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン粘着剤、シリコーン系粘着剤、又は、水系粘着剤等を挙げることができる。
【0077】
本発明の光学積層体及び上記偏光板は、画像表示装置の最表面に備えることができる。このような画像表示装置もまた本発明の一つである。
上記画像表示装置は、LCD等の非自発光型画像表示装置であっても、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT等の自発光型画像表示装置であってもよい。
【0078】
上記非自発光型の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、上記光学積層体又は上記偏光板が形成されてなるものである。
【0079】
本発明の光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の光透過性基材側から照射される。なお、STN型、VA型、IPS型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0080】
上記自発光型画像表示装置であるPDPは、表面ガラス基板(表面に電極を形成)と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板(電極及び、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成)とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した光学積層体を備えるものでもある。
【0081】
上記自発光型画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した光学積層体を備えるものである。
【0082】
本発明の光学積層体は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、ワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル、PDP、ELD、FEDなどの高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0083】
本発明の光学積層体は、上記構成よりなるので、ハードコート性に優れ、干渉縞の発生を防止することができるものである。このため、本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の光学積層体の一例の断面の模式図である。
【図2】実施例1に係る光学積層体の断面の一部を拡大した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
【0086】
実施例1
下記に示す組成の成分を配合してハードコート層(A)用組成物及びハードコート層(B)用組成物をそれぞれ調製した。
(ハードコート層(A)用組成物)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA):30質量部
IPDI骨格ウレタンアクリレート(紫光1700B、製品名、日本合成化学社製):20質量部
イルガキュアー184(チバ・ジャパン社製):4質量部
メチルエチルケトン(MEK):50質量部
(ハードコート層(B)用組成物)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA):25質量部
IPDI骨格ウレタンアクリレート(紫光1700B、製品名、日本合成化学社製):15質量部
イルガキュアー184(チバ・ジャパン社製):4質量部
SnO(S−2000、商品名、φ=30nm、屈折率1.997、三菱マテリアル社製):10質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK):50質量部
【0087】
次に、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)基材(TD80UL、フジフィルム社製)の片面に、上述のハードコート層(A)用組成物をグラビアロールコーティング方法にて塗布し、溶剤分を蒸発させて厚さ約3.5μmの塗布層を形成した後、該塗布層側より20mJ/cmの紫外線を照射して半硬化処理を行い、塗膜を形成した。その後、該塗膜上に、上述のハードコート層(B)用組成物をグラビアロールコーティング方法にてウェッブ速度と塗布速度が異なるようにせん断力を与えるように塗布し乾燥させ、厚さ約3.5μmの塗布層を形成した後、該塗布層側より100mJ/cmの紫外線を照射して硬化処理を行い、TAC基材上に、順にハードコート層(A)とハードコート層(B)とを有する光学積層体を得た。なお、TAC基材と上記ハードコート層(A)間、上記ハードコート層(A)と上記ハードコート層(B)間の密着性は良好であった。
【0088】
実施例2
ハードコート層(B)用組成物の塗布層に20mJ/cmの紫外線を照射して半硬化処理を行った以外は、実施例1と同様に作製した光学積層体の塗工面側に、更に、下記低屈折率層用組成物Cをグラビアロールコーティング方法にて塗布し溶剤分を蒸発させて厚さ約0.1μmの塗布層を形成した後、塗布側より100mJ/cmの紫外線を照射して硬化処理を行い、光学積層体を得た。
(低屈折率層用組成物C)
ペンタエリスリトールトリアクリレート:5質量部
表面処理中空シリカゾル(φ=50nm、20%MIBK希釈品):25質量部
イルガキュアー184:0.4質量部
MEK:70質量部
【0089】
実施例3
離型処理された厚さ100μmのPET基材(東レ社製)の片面に、表1中に記載のハードコート層(B)用組成物をグラビアロールコーティング方法にて塗布し溶剤分を蒸発させて、厚さ約3.5μmの塗布層を形成した後、該塗布層側より20mJ/cmの紫外線を照射して半硬化処理を行い、塗膜を形成した。その後、該塗膜上に、表1中のハードコート層(A)用組成物をグラビアロールコーティング方法にてウェッブ速度と塗布速度が異なるようにせん断力を与えるように塗布し乾燥させ、厚さ約3.5μmの塗布層を形成した後、該塗布層側より100mJ/cmの紫外線を照射して硬化処理を行った。
硬化したハードコート層(A)の上に、下記接着組成物を約10μm塗布し溶剤分を乾燥し、TAC基材と張り合わせた。この積層体を、40℃で3日間エージングして接着層を熱硬化した後、PET離型フィルムを剥離することにより、光学積層体を作製した。
(接着組成物(2液熱硬化型ウレタン系接着剤))
主剤 LX660(DIC社製):8質量部
硬化剤 芳香族系ポリイソシアネート KW75(DIC社製):2質量部
酢酸エチル:32質量部
【0090】
実施例4〜9、12、比較例2〜4、参考例
表1及び2に示す組成のハードコート層(A)用組成物及びハードコート層(B)用組成物をそれぞれ使用した以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。
なお、表1及び2中、アクリル樹脂としては、上記PETA以外に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を使用した。
無機微粒子としては、SnOは実施例1と同様のものを使用し、ATOは、TDL−1(商品名、屈折率2.0、粒径100nm、三菱マテリアル社製)を使用した。
【0091】
実施例10、11
表1に示す組成のハードコート層(A)用組成物及び以下に示すハードコート層(B)用組成物を使用した以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。
(ハードコート層(B)用組成物)
(1)数珠状シリカ微粒子の調製
シリカ微粒子(1)(SI−550、日揮触媒化成社製、平均1次粒径5nm、SiO濃度20質量%、シリカ中Na2700ppm)2000gにイオン交換水6000gを加え、次いで、陽イオン交換樹脂(SK−1BH、三菱化学社製)400gを添加し、1時間撹拌して脱アルカリ処理を行った。次いで、陽イオン交換樹脂を分離した後、陰イオン交換樹脂(SANUPC、三菱化学社製)400gを添加し、1時間撹拌して脱アニオン処理を行った。再び陽イオン交換樹脂(SK−1BH、三菱化学社製)400gを添加し、1時間撹拌して脱アルカリ処理してSiO濃度5質量%のシリカ微粒子分散液を調製した。このとき、シリカ粒子中のNa含有量は200ppmであった。
次に、希塩酸にて分散液のpHを4.0に調製し、オートクレーブにて、200℃で1時間処理した。次いで、室温で陽イオン交換樹脂を添加し、1時間撹拌して脱アルカリ処理し、陽イオン交換樹脂を分離した後、陰イオン交換樹脂を添加し、1時間撹拌して脱アニオン処理してSiO濃度5質量%の数珠状シリカ微粒子分散液を調製した。尚、数珠状シリカ微粒子の平均連結数は3個であった。
次に、SiO濃度5質量%の数珠状シリカ微粒子分散液をSiO濃度10質量%に濃縮し、次いで、限外濾過膜法でメタノールに溶剤置換し、SiO濃度10質量%の数珠状シリカ微粒子メタノール分散液を調製した。
【0092】
(2)反応性数珠状シリカ微粒子(1)の調製
上記方法で調製した数珠状シリカ微粒子メタノール分散液93質量部に、メタアクリル系シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業社製KBM−503)を1質量部添加し、HCl水溶液にて全体の溶液をpH=4に調節した後、80℃で5時間加熱撹拌した。これにより、表面にメタクリロイル基を導入したγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理シリカ微粒子(反応性数珠状シリカ微粒子A(1))を得た。調製した溶液は、メタノールからメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶剤置換を行い、上記反応性数珠状シリカ微粒子A(1)の固形分40質量%MIBK分散液を得た。
【0093】
(3)ハードコート層(B)用組成物の調製(実施例10)
下記に示す組成の成分を配合して、ハードコート層(B)用組成物を調製した。
反応性数珠状シリカ微粒子A(1):150質量部(固形分:60質量部)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬社製):40質量部
イルガキュアー184(商品名、チバ・ジャパン社製、ラジカル重合開始剤):4質量部
【0094】
(4)ハードコート層(B)用組成物の調製 (実施例11)
下記に示す組成の成分を配合して、ハードコート層(B)用組成物を調製した。
反応性数珠状シリカ微粒子A(1):150質量部(固形分:70質量部)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬社製):30質量部
イルガキュアー184(商品名、チバ・ジャパン社製、ラジカル重合開始剤):4質量部
【0095】
比較例1
厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)基材(TD80UL、フジフィルム社製)の片面に、実施例1で使用したのと同様のハードコート層(A)用組成物をグラビアロールコーティング方法にて塗布し、溶剤分を蒸発させて厚さ約3.5μmの塗布層を形成した後、該塗布層側より20mJ/cmの紫外線を照射して半硬化処理を行い、塗膜を形成した。その後、該塗膜上に、実施例1で使用したのと同様のハードコート層(B)用組成物をダイコートにてウェッブ速度と塗布条件を合わせてシェアーが掛からないように塗布し乾燥させ、厚さ約3.5μmの塗布層を形成した後、該塗布層側より100mJ/cmの紫外線を照射して硬化処理を行い、TAC基材上に、光学積層体を得た。なお、TAC基材と上記ハードコート層(A)間、上記ハードコート層(A)と上記ハードコート層(B)間の密着性は良好であった。
【0096】
上記の実施例、比較例及び参考例で得られた光学積層体について、各項目について下記の測定方法により評価した。結果を表3に示す。また、各光学積層体の断面をSTEMにより電子顕微鏡観察した。実施例1の光学積層体の断面の電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0097】
<硬度(光学積層体)>
異なる硬度の鉛筆を用い、荷重4.9NでJIS K5600−5−4(1999)で示される試験法で、5回の試験で傷がつかなかった回数を測定した。表3において、例えば、2/5は、5回の試験中、2回は傷がつかなかったことを意味する。
【0098】
<カール幅>
光学積層体のカールの度合い(カール幅)は、得られた光学積層体を10cm×10cmにカットしたサンプル片を、水平な台(平面)の上に置き、上記水平な台(平面)から上記サンプル片の端部(4点)までの高さを測定したときの距離の平均値(mm)で表した。
【0099】
<干渉縞>
光学積層体の塗膜が無いほうに黒色のテープを貼合した後、三波長管蛍光灯下にて目視にて評価を行った。干渉縞が視認出来ない場合を○とし、薄く視認出来た場合を△とし、視認出来た場合を×とした。また、表3中の−は、透明なハードコート層(B)が形成されなかったため干渉縞の評価が出来なかったことを表す。
【0100】
<硬度(ハードコート層(A)、ハードコート層(B)の無機微粒子非含有領域(B1)及び無機微粒子含有領域(B2))>
(1)ハードコート層(A)及び無機微粒子含有領域(B2)測定用サンプルフィルムの調製
50μmPET基材上に、表1及び2中のハードコート層(A)用組成物及びハードコート層(B)用組成物を、グラビアロールコーティング方法で塗工し、溶剤を乾燥し、約120mJ/cmのUVで硬化し、樹脂膜の膜厚を約10μmとしたハードコート層(A)用サンプルフィルム及びハードコート層(B)用サンプルフィルムを作製した。なお作製したサンプルフィルムの構成はそれぞれ、PET基材/ハードコート層(A)とPET基材/無機微粒子非含有領域(B1)/無機微粒子含有領域(B2)とであった。
(2)無機微粒子非含有領域(B1)測定用サンプルフィルムの調製
50μmの離型処理PET基材に、表1及び2中のハードコート層(B)用組成物を、グラビアロールコーティング方法でウェッブ速度と塗布速度が異なるようにせん断力を与えるように塗布し、約120mJ/cmのUVで硬化し、樹脂膜厚を約15μmとしたサンプルを作製した。
次いで、光学用の膜厚25〜50μmの透明両面粘着テープ又はフィルム(例えば、日東電工社製 LUCIACS CS9622T)の片面に上記(1)で用いた50μmのPET基材を貼り、残りの片面に、上記形成したハードコート層(B)の表面を、粘着剤を介して張り合わせた。その後、離型処理PET基材を剥いで、ハードコート層(B)の離型処理PET側面、すなわち無機微粒子非含有領域(B1)に相当する面を出し、PET基材/粘着剤/無機微粒子含有領域(B2)/無機微粒子非含有領域(B1)の構成からなるサンプルフィルムを作製した。
なお、測定サンプルの最表面は、平坦であることが望ましいので、各層用組成物のみで表面平坦性が得にくい場合には、樹脂質量0.1〜3%のレベリング剤を適宜添加した。
【0101】
ガラス基板上に、上記の作製した3種類のサンプルフィルムを2cm×2cmに切出し、瞬間接着剤(アロンアルファ(登録商標)、東亜合成社製)で接着し、一日室温で放置した。
H.フィッシャー社製表面被膜物性試験機(ピコデンター HM500)試験台にこのガラス板状に固着したサンプルを設置し、押し込み荷重を10mNにて測定を行い、得られた押し込み深さの値によって、硬度を5レベルに分けて評価した。レベル1<2<3<4<5で、5が一番硬度が高いことを表す。また、押し込み深さは深いほど柔軟で、浅いほど硬い。また、表3中の−は、それぞれの層が存在しないため評価出来なかったことを表す。
1:1.40μm以上
2:1.40未満1.10μm以上
3:1.10未満0.90μm以上
4:0.90未満0.70μm以上
5:0.70μm未満
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
表3より、実施例の光学積層体は、いずれも、硬度が高く、かつ、干渉縞が発生しないものであった。また、カール幅も小さいものであった。
また、実施例及び参考例の光学積層体は、断面の電子顕微鏡観察において、ハードコート層(B)中に凹凸形状があるのが確認された。一方、比較例の光学積層体では、上記凹凸形状は確認できなかった。また、比較例2の光学積層体は、ハードコート層(B)用組成物中の無機微粒子の量が多く、無機微粒子含有領域(B2)のみになり、無機微粒子非含有領域(B1)が形成されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 光透過性基材
2 ハードコート層(A)
3 ハードコート層(B)
4 無機微粒子非含有領域(B1)
5 無機微粒子含有領域(B2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材、前記光透過性基材の一方の面にハードコート層(A)及びハードコート層(B)をこの順に有する光学積層体であって、
前記ハードコート層(B)は、前記ハードコート層(A)と接している部分から順に、無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)とを有し、
前記無機微粒子非含有領域(B1)と無機微粒子含有領域(B2)との境界は凹凸形状であり、
前記無機微粒子は、可視光波長よりも小さい粒径を有する
ことを特徴とする光学積層体。
【請求項2】
無機微粒子非含有領域(B1)は、無機微粒子含有領域(B2)のバインダー樹脂を主成分とし、かつ、可視光波長以上の平均厚さを有する請求項1記載の光学積層体。
【請求項3】
ハードコート層(A)のバインダー樹脂と、ハードコート層(B)のバインダー樹脂とが相容性を有する請求項1又は2記載の光学積層体。
【請求項4】
ハードコート層(A)の硬度(Ha)と、無機微粒子非含有領域(B1)の硬度(Hb1)と、無機微粒子含有領域(B2)の硬度(Hb2)とが、下記式(1)を満たす請求項1、2又は3記載の光学積層体。
Ha≦Hb1<Hb2 (1)
【請求項5】
無機微粒子の形状が、数珠状である請求項1、2、3又は4記載の光学積層体。
【請求項6】
無機微粒子は、導電性無機微粒子である請求項1、2、3、4又は5記載の光学積層体。
【請求項7】
無機微粒子のハードコート層(B)中の含有量が10〜80質量%である請求項1、2、3、4、5又は6記載の光学積層体。
【請求項8】
ハードコート層(B)のハードコート層(A)と反対側面に、低屈折率層を更に有する請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の光学積層体。
【請求項9】
ハードコート層(B)のハードコート層(A)と反対側面に、防汚層を更に有する請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の光学積層体。
【請求項10】
偏光素子を有する偏光板であって、
前記偏光板は、前記偏光素子の表面に請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板。
【請求項11】
最表面に請求項1、2、3、4、5、6、7、8若しくは9記載の光学積層体、又は、請求項10記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−33948(P2011−33948A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181938(P2009−181938)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】