説明

光学純度低下防止方法

【課題】触媒として使用した遷移金属錯体による、還元反応生成物の光学純度低下を抑制すること。
【解決手段】遷移金属錯体を用いて還元反応を行なった反応液に含窒素化合物を添加した後、反応溶媒回収及び/又は蒸留を行なう還元反応生成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元反応により還元反応生成物を製造する際に、触媒として使用した遷移金属錯体を、目的生成物の光学純度を損失することなく失活させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属錯体を用いた水素化及び水素移動反応は光学活性化合物製造における重要な方法であり、一般的にプロキラルなケトンを金属触媒存在下2級アルコール、ギ酸、水素等を水素源として反応を行うことが知られている。
【化1】

還元機能を有する金属触媒は酸化機能も同時に持ち合わせていることから、生成した2級アルコールの酸化も時としておこり生成物の光学純度低下の要因となる。
【化2】

これら反応は中性若しくは塩基性条件下で進行することから、反応停止のためには塩酸などの酸を加える方法などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、生成物の蒸留を行う場合、塩酸の存在下では、蒸留装置内が高温かつ酸性となるために装置を傷めやすく、使用する反応装置及び操作法が制限される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは還元反応の反応溶液に含窒素化合物を加えることにより、(i)含窒素化合物が金属触媒と選択的に反応し、(ii)金属錯体の還元機能及び酸化機能を排除することにより、還元反応生成物の光学純度低下を抑制することを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下の[1]〜[7]の内容を含むものである。
[1]遷移金属錯体を用いて還元反応を行なった反応液に含窒素化合物を添加した後、反応溶媒回収及び/又は蒸留を行なう還元反応生成物の製造方法。
[2]還元反応が不斉水素化又は不斉水素移動である前記[1]に記載の製造方法。
[3]遷移金属錯体がルテニウム錯体、ロジウム錯体又はイリジウム錯体である前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]遷移金属錯体に対して含窒素化合物を1当量以上加える前記[3]に記載の製造方法。
[5]含窒素化合物における窒素原子の数が2以上である前記[4]に記載の製造方法。
[6]含窒素化合物がイミダゾール類である[5]に記載の製造方法。
[7]含窒素化合物の添加が、反応溶媒回収及び/又は蒸留を行なう際の還元反応生成物の光学純度低下を抑制することを目的とするものである前記[1]〜[6]に記載の製造方法。
[8]含窒素化合物の添加により、含窒素化合物を遷移金属錯体と反応させて含窒素化合物を含む錯体を形成させることにより還元反応生成物の光学純度低下を抑制する前記[7]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明により不斉水素化、不斉水素移動などの還元反応を行った後の生成物の精製時に、光学純度の低下を招くことなく光学活性化合物を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に用いられる遷移金属錯体の遷移金属としては、周期表第8〜10族の金属が挙げられ、その中でもロジウム、ルテニウム及びイリジウムが好ましく、ルテニウムが特に好ましい。
好ましい遷移金属錯体としては、配位子としてジアミン類、ジホスフィン、低級アルキル基(例えば、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基である。)置換ベンゼン、ハロゲン原子、ペンタメチルシクロペンタジエン等が配位した錯体が挙げられる。配位子としてのジアミン類及びジホスフィンは光学活性体がより好ましい。
【0007】
ジアミン類としては、例えば一般式(A)で表されるジアミン類が挙げられる。
【化3】

(式中、*は不斉炭素原子を示し、RN1及びRN2は、それぞれ独立して置換基を有してもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC3〜C8シクロアルキル基、置換基を有してもよいC7〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいC6〜C20アリール基、又は置換基を有してもよいC3〜C20ヘテロ環基を表すか、RN1とRN2とでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN3は水素原子または置換基を有してもよいC1〜C20アルキル基を示し、RN4は炭素数1〜10のアルキル基;炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基;又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいC5〜C20アリール基を示す。)
N1及びRN2のC1〜C20アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、C7〜C20アラルキル基、アリール基及びヘテロ環基が有することができる置換基としては、メチル基、エチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、ベンジル、1−フェニルエチル基、フェニル基、o―トルイル基、p−トルイル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、ピペリジノ基等が挙げられる。
【0008】
光学活性ジアミン類の具体例としては、N−(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−メタンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−トリフロロメタンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−ペンタフルオロベンゼンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−(p−メトキシベンゼンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−(3,5-キシリルスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−(2,4、6-トリメチルベンゼンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−((1R)−カンファースルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン, N−(ナフチルスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−(p−トルエンスルホニル)−1,2−シクロヘキサンジアミン、N−メタンスルホニル−1,2−シクロヘキサンジアミン、N−トリフロロメタンスルホニル−1,2−シクロヘキサンジアミンである。
【0009】
ジホスフィンとしては、例えば一般式(B)で表されるジホスフィンが挙げられる。
P1P2P−Q−PRP3P4 (B)
(式中、RP1、RP2、RP3及びRP4は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RP1とRP2とで及び/又はRP3とRP4とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。)
上記式中、RP1、RP2、RP3及びRP4で表される、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は1乃至2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
アリール基の置換基としてのアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等が挙げられる。
アリール基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基等が挙げられる。
アリール基の置換基としてのアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
アリール基の置換基としての複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられ、脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環、それら単環からなる多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、2−オキソピロリジル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。一方、芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、ヘテロ原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環、それら単環からなる多環又は縮合環のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0010】
また、RP1、RP2、RP3及びRP4で表される、置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、5員環又は6員環のシクロアルキル基が挙げられ、好ましいシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらシクロアルキル基の環上においては、前記アリール基の置換基として挙げたようなアルキル基又はアルコキシ基等の置換基で、1乃至2以上置換されていてもよい。
また、RP1、RP2、RP3及びRP4で表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。これらアルキル基は1乃至2以上の置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、前記アリール基の置換基として記載したアルコキシ基が挙げられる。
また、RP1とRP2及び/又はRP3とRP4とで形成してもよい環としては、RP1、RP2、RP3及びRP4が結合しているリン原子を含めた環として、四員環、五員環又は六員環の環が挙げられる。具体的な環としては、ホスフェタン環、ホスホラン環、ホスファン環、2,4−ジメチルホスフェタン環、2,4−ジエチルホスフェタン環、2,5−ジメチルホスホラン環、2,5−ジエチルホスホラン環、2,6−ジメチルホスファン環、2,6−ジエチルホスファン環等が挙げられ、これらの環は光学活性体でもよい。
【0011】
また、Qで表される、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基等の炭素数が6〜20のアリーレン基が挙げられる。フェニレン基としては、o又はm−フェニレン基が挙げられ、該フェニレン基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等の炭素数が1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数が1〜4のアルコキシ基;水酸基、アミノ基又は置換アミノ基(置換アミノ基の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基)等で置換されていてもよい。ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基としては、1,1'−ビアリール−2,2'−ジイル型の構造を有するものが好ましく、該ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基は、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等のアルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等で置換されていてもよい。また、フェロセンジイル基も置換基を有していてもよく、置換基としては、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等が挙げられる。
【0012】
一般式(B)で表されるジホスフィンの具体例としては、例えば公知のジホスフィンが挙げられ、その内の一つとして下記一般式(C)で表される化合物が挙げられる。
【化4】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示すか、またはシクロペンチル基もしくはシクロヘキシル基を示す。)
上記のR1及びR2における、フェニル基の置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、これら置換基は該フェニル基上に複数置換していてもよい。
【0013】
1及びR2の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロブタン基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基等が挙げられる。
また、一般式(C)で表される化合物の基本骨格であるビナフチル環は、置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、例えばメチル基、t−ブチル基等のC1〜C20アルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等のC1〜C20アルコキシ基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のトリC1〜C20アルキルシリル基及びトリフェニルシリル基等のトリC1〜C20アリールシリル基が挙げられる。
【0014】
また、一般式(B)で表されるジホスフィンの他の具体例としては、下記一般式(D)で表される化合物が挙げられる。
【化5】

(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基を示す。R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R5、R6及びR7のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよく、R8、R9及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。また、R7とR10とで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R7とR10は水素原子ではない。)
【0015】
上記のR3及びR4における、フェニル基の置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、これら置換基は該フェニル基上に複数置換していてもよい。R3及びR4の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロブタン基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基等が挙げられる。
また、R5〜R10で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜10のアシルオキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、ハロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のハロアルキル基が挙げられ、ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジC1〜C20アルキルアミノ基が挙げられる。
【0016】
5、R6及びR7のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合、並びにR8、R9及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合のメチレン鎖としては、例えば、炭素数3〜5のメチレン鎖が好ましく、具体的にはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。また、該置換基を有していてもよいメチレン鎖における置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
また、R5、R6及びR7のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合、R8、R9及びR10の内の二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合、並びにR7とR10とで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合のメチレン鎖の具体例としては、メチレン基。エチレン基。トリメチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜4のメチレン鎖が挙げられる。また、該メチレン鎖に置換する置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
また、R5、R6及びR7のうちの二つで置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成する場合、R8、R9及びR10の内の二つで置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成する場合、並びにR7とR10とで置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成する場合の(ポリ)メチレンジオキシ基の具体例としては、例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等の炭素数1〜4の(ポリ)メチレンジオキシ基が挙げられる。また、該(ポリ)メチレンジオキシ基に置換する置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
【0017】
光学活性ジホスフィンの具体例としては、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル(tolbinap)、2,2’−ビス[ジ(m−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル(xylbinap)、2,2’−ビス[ジ(p−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(シクロペンチル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(シクロヘキシル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル(xylyl−H8−binap)、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−t−ブチルフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(segphos)、(4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)(dm−segphos)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジ(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル(xylyl−MeO−biphep)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン(xylyl−p−phos)、2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン、2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン、2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン、4,12−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、4,12−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、4,12−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、1,1’−ビス(2,4−ジエチルホスフォタノ)フェロセン、1,13−ビス(ジフェニルホスフィノ)−7,8−ジヒドロ−6H−ジベンゾ[f,h][1,5]ジオキソニン、1,13−ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−7,8−ジヒドロ−6H−ジベンゾ[f,h][1,5]ジオキソニン(xylyl−C3−tunephos)、6,6’−ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−5,5’−ビ−1,4−ベンゾジオキシン(xylyl−synphos)等が挙げられる。
【0018】
上記以外にも、本発明で用いることのできるジホスフィンの具体例としては、N,N−ジメチル−1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス[(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)エタン、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N’−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、シクロヘキシルアニシルメチルホスフィン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5−ノルボルネン、3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1−ベンジルピロリジン、1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアルコール、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ジシクロペンタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1−ビナフチル−5,5’−ジスルホン酸ナトリウム、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1−ビナフチル−5,5’−ジスルホン酸ナトリウム、1,1−(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−6,6’−ジイル)ビス(メチレン)グアニジン、1,1−(2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−6,6’−ジイル)ビス(メチレン)グアニジン、(6,6’−ビス(トリス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)シリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(6,6’−ビス(トリス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)シリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイル)ジメタンアミン・臭化水素酸塩、(2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイル)ジメタンアミン・臭化水素酸塩、(4,4’−ビス(トリメチルシリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ビス(トリメチルシリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’−ビス(トリイソプロピルシリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ビス(トリイソプロピルシリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイルジホスホン酸、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイルジホスホン酸、テトラエチル 2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイルジホスホネート、テトラエチル 2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイルジホスホネート、(4,4’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’−ジクロロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ジクロロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’−ジブロモ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ジブロモ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)、(2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)、(4,4’−ビス(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘキサコサフルオロ−7−(ペルフルオロヘキシル)トリデカン−7−イル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ビス(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘキサコサフルオロ−7−(ペルフルオロヘキシル)トリデカン−7−イル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(7,7’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(7,7’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、4,4’−ジ−tert−ブチル−4,4’,5,5’−テトラヒドロ−3H,3’H−3,3’−ビジナフト[2,1−c:1’,2’−e]ホスファピン、1,2−ビス(3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]ホスファピン−4(5H)−イル)ベンゼン、3,3’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビフェナンスレン、3,3’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−4,4’−ビフェナンスレン、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(メチレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(メチレン)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノオキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノオキシ)−1,1’−ビナフチル、(3,3’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3’−ビス(3,5−ジメチルフェニル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ビス(3,5−ジメチルフェニル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)、N2,N2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジアミン、N2,N2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジアミン、(SP)−1−[(S)−α−(ジメチルアミノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンジル]−2−ジフェニルホスフィノフェロセン、(RP)−1−[(R)−α−(ジメチルアミノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンジル]−2−ジフェニルホスフィノフェロセン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジフェニルホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジフェニルホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジシクロホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジシクロホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(2−ノルボニル)ホスフィン、(S)−1−{SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(2−ノルボニル)ホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−[ビス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−[ビス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、3,3’,4,4’−テトラメチル−1,1’−ジフェニル−2,2’,5,5’−テトラヒドロ−1H,1’H−2,2’−ビホスホール、1,1’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビホスホラン、2,2’−ジ−tert−ブチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−1H,1’H−1,1’−ビスイソホスホインドール、1,2−ビス(2,4−ジメチルホスフェタン−1−イル)エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)エタン、1,2−ビス(2,4−ジメチルホスフェタン−1−イル)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)ベンゼン、3,4−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)フラン−2,5−ジオン、3,4−ビス(2,5−ジエチルホスホラン−1−イル)フラン−2,5−ジオン、3,4−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−((1R,2S,4R,5S)−2,5−ジメチル−7−ホスファビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−((2R,5S)−2,5−ジメチル−7−ホスファビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)ベンゼン、1,1’−(ベンゾ[b]チオフェン−2,3−ジイル)ビス(2,5−ジメチルホスホラン)、(2,2’,4,4’−テトラメチル−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−6,6’−ビベンゾ[b][1,4]ジオキセピン−7,7’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(2,2’,4,4’−テトラメチル−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−6,6’−ビベンゾ[b][1,4]ジオキセピン−7,7’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)
ホスフィン)、((6R)−6,7−ジメチル−6,7−ジヒドロジベンゾ[e,g][1,4]ジオキソシン−1,12−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、((6R)−6,7−ジメチル−6,7−ジヒドロジベンゾ[e,g][1,4]ジオキソシン−1,12−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(5,5’−ジクロロ−4,4’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5,5’−ジクロロ−4,4’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(5,5’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5,5’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシビフェニル−3,3’−ジオール、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−6,6’−ジメトキシビフェニル−3,3’−ジオール、(3,3’,6,6’−テトラメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’,6,6’−テトラメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3’−ジイソプロピル−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ジイソプロピル−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(6,6’−ジメトキシ−3,3’−ビス(p−トリルオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(6,6’−ジメトキシ−3,3’−ビス(p−トリルオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシビフェニル−3,3’−ジイル ビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−6,6’−ジメトキシビフェニル−3,3’−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、(5,5’−ジクロロ−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5,5’−ジクロロ−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイル ジアセテート、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイル ジアセテート、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイルビス(2−メチルプロパノエート)、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイルビス(2−メチルプロパノエート、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイル ジシクロヘキサンカルボキシレート、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイル ジシクロヘキサンカルボキシレート、(4,4’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(5−メトキシ−4,6−ジメチル−4’,6’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5−メトキシ−4,6−ジメチル−4’,6’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(2,2,2’,2’−テトラメチル−4,4’−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(2,2,2’,2’−テトラメチル−4,4’−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−7,7’−ビベンゾフラン、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−7,7’−ビベンゾフラン、(2,2,2’,2’−テトラフルオロ−4,4’−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(2,2,2’,2’−テトラフルオロ−4,4’−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2−(ナフチル)−8−ジフェニルホスフィノ−1−[3,5−ジオサ−4−ホスファ−シクロヘプタ[2,1−a;3,4−a’]ジナフタレン−4−イル]−1,2−ジヒドロキノリン、4,12−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、7,7’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−1,1’−スピロビインダン(Xyl−SDP)、7,7’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−1,1’−スピロビインダン(SDP)、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEphos)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(DIOP)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1,2−ビス[(2−メトキシフェニル)(フェニル)ホスフィノ]エタン(DIPAMP)、3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1−ベンジルピロリジン(DEGUPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン(NORPHOS)、1−ターシャリーブトキシカルボニル−4−ジフェニルホスフィノ−2−(ジフェニルホスフィノメチル)ピロリジン(BPPM)、(2,2’−ビス−(ジベンゾフラン−3,3−ジイル)−ビス−ジフェニルホスフィン(BIBFUP)、2,2‐ビス(ジフェニルホスフィノ)‐3,3‐ビナフト[b]フラン(BINAPFu)、2,2’‐ビス(ジフェニルホスフィノ)‐3,3’‐ビ[ベンゾ[b]チオフェン](BITIANP)、N,N’−ジメチル−7,7’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−8,8’−ビ−2H−1,4−ベンズオキサジン(Xyl−Solphos)、2,3−ビス(ターシャリーブチルメチルホスフィノ)キノキサリン(QuinoxP*)、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、2,4−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ペンタン(XylSKEWPHOS)、4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2’,5,5’−テトラメチル−3,3’−ビチオフェン(TMBTP)、3,3’−ビス(ジフェニルホスホニル)−1,1’−2,2’−ビインドール(N−Me−2−BINPO)、(2,2’,5,5’−テトラメチル−3,3’−ビチオフェン−4,4’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(BITIANP)、(4,4’,6,6’−テトラメチル−3,3’−ビベンゾ[b]チオフェン−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(tetraMe−BITIANP)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ジメチル−1H,1’H−2,2’−ビインドール(BISCAP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビベンゾフラン(BICUMP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビベンゾ[d]イミダゾール(BIMIP)などが挙げられる。
【0019】
具体的な遷移金属錯体としては例えば以下のものが挙げられる。
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
本発明において添加される含窒素化合物としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、含窒素複素環化合物が挙げられ、この中でも窒素原子を2つ以上有する含窒素化合物が好ましい。
脂肪族アミンとはアンモニア(NH3)の水素原子の代わりに脂肪族基が置換したものを意味する。脂肪族基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基あるいは脂環式基が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基あるいは脂環式基である。具体的な脂肪族アミンとしては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン、tert−ブチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリス(2,2’,2’’−アミノエチル)アミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペリジン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。好ましくは、脂肪族アミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリス(2,2’,2’’−アミノエチル)アミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペリジン等であり、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンがより好ましい。
【0022】
芳香族アミンとは、アンモニアの水素原子の代わりに芳香族基が置換したものを意味する。芳香族基としては、芳香族性を示す単環あるいは複数の環(縮合環)からなる芳香族基が挙げられる。具体的な芳香族アミンとしては、例えばアニリン、トルイジン、キシリジン、アニシジン、ナフチルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ベンジジン、1,2−フェニレンジアミン、4−フルオロー1,2−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,3−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、3,3‘−ジアミノベンジン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、2,5−ジアミノ−5−ブロモピリジン、6,6’−ジアミノ−2,2’−ビピリジル、4,5−ジクロロ−1,2−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノ安息香酸、2、2’−ビピリジル、2、2’−ビ−4−ピコリン、6,6’−ビ−3−ピコリン、2、2’−ビキノリン等が挙げられる。好ましい芳香族アミンとしては、1,2−フェニレンジアミン、4−フルオロー1,2−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,3−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、3,3‘−ジアミノベンジン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、2,5−ジアミノ−5−ブロモピリジン、6,6’−ジアミノ−2,2’−ビピリジル、4,5−ジクロロ−1,2−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノ安息香酸、2、2’−ビピリジル、2、2’−ビ−4−ピコリン、6,6’−ビ−3−ピコリン、2、2’−ビキノリン等であり、1,2−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノ安息香酸がより好ましい。
含窒素複素環化合物としては、ピロール、ピリジン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,3−チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、1,2,4−トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、キノリン、プリン等の芳香族化合物、またはジアザビシクロウンデカン(DBU)、ピペリジン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、スパルテイン等の環内脂環式アミンが挙げられる。好ましい含窒素複素環化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,3−チアゾール、1,3−オキサゾール、ピラゾール、1,2,4−トリアゾール等であり、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、イミダゾールなどのイミダゾール類がより好ましい。
【0023】
含窒素化合物の添加量としては、遷移金属錯体に対して、含窒素化合物中の窒素原子の数が1つである化合物の場合は等モル以上、好ましくは2倍モル以上、より好ましくは3倍モル以上であり、含窒素化合物中の窒素原子の数が2つ以上である化合物の場合は、等モル以上、好ましくは1.5倍モル以上である。
本発明により、特に光学活性な遷移金属錯体を触媒として用いた不斉還元反応後に、触媒を分離することなく生成物の光学純度の低下を避けることができる。
【0024】
本発明の製造方法において行われる不斉還元方法としては、不斉水素化反応及び不斉水素移動反応等が挙げられる。
不斉水素化反応としては、特に限定されるものではないが、カルボニル基の不斉水素化による光学活性アルコールの製法(例えば、文献(第5版 実験化学講座19 有機化合物の合成VII 丸善株式会社 p122)など)、炭素−炭素二重結合及びイミノ基などの不斉水素化による光学活性化合物の製法(例えば、文献(Asymmetric Catalysis In Organic Synthesis, p16−p94)など)が挙げられる。
不斉水素移動反応としては、特に限定されるものではないが、例えば、文献(J.Am.Chem.Soc., 1997, 119, 8378、J.Am.Chem.Soc.1996, 118,2521など)に記載のような、カルボニル基の不斉還元による光学活性アルコールの製法等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、遷移金属錯体を用いて還元反応を行なった反応液に含窒素化合物を添加した後、反応溶媒回収及び/又は蒸留を行なう。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例においてMSスペクトルは、SHIMADZU製LCMS−IT−TOF型装置で測定した。またGC分析はGC:Chirasil Dex−CB(0.25mm×25m,DF=0.25)で行った。
【0026】
(実施例1)
200ml反応容器にアセトフェノン0.5g(4.15mmol)、[Ru(R,R)−Tsdpen(p-cymene)]250mg(0.415mmol)及び2−プロパノール42mgを加え窒素置換を行った。この溶液を室温で2時間反応を行なった。(R)−フェニルエタノールへの転化率は86%及び光学純度は91%eeであった。
さらに、反応溶液に、α−フェニレンジアミン67.3mg(0.622mmol)を加えて攪拌したところ、溶液の色は赤褐色から紫色に変化した。減圧下溶媒を留去し、さらにヘプタンリスラリーを行いアセトフェノンとフェニルエタノールを除き、乾燥後質量分析を行ったところ679.1438であった。質量分析から、得られた化合物はRu[(R,R)−Tsdpen](フェニレンジアミン)2であると推定される。
【0027】
((R)―フェニチルアルコールのラセミ化実験)
基質((R)−フェニルエタノールの光学純度が94.5%eeであるフェニルエタノール)に対して0.5当量のRu[(R,R)−Tsdpen](フェニレンジアミン)2の存在下で下記反応を行った。また、Ru[(R,R)−Tsdpen](フェニレンジアミン)2に代えて、[Ru(R,R)−Tsdpen(p-cymene)]の存在下で同様に下記反応を行った。さらに、[Ru(R,R)−Tsdpen(p-cymene)]に加えて1.5当量のα−フェニレンジアミンを添加して同様に下記反応を行った。
【化8】

得られた結果を表1に示す。表1からRu[(R,R)−Tsdpen](フェニレンジアミン)2又は[Ru(R,R)−Tsdpen(p-cymene)]+α−フェニレンジアミンの存在下ではラセミ化は進行しないことが分かる。
【表1】

【0028】
(参考例1:アセトフェノンの不斉水素移動反応)
200ml反応容器にアセトフェノン10g(8.32mmol)、[RuCl(S,S)−Tsdpen(p−cymene)]1.06g(1.6646mmol)及びギ酸/トリエチルアミン(5/2(容量比))41.5mlを加え窒素置換を行った。この溶液を30℃で17時間攪拌を行なった後に塩化メチレン45ml及び水40mlを加えて有機層を分液した。有機層から塩化メチレンを留去して13.5gの(S)−フェニルエタノール濃縮物を得た。この濃縮物を5℃で4日間保管したところ、反応終了時からの光学純度の変化は以下の通りであった。
【表2】

【0029】
(比較例1)
参考例1で得た、5℃で4日間保管した光学純度79.5%eeの(S)−フェニルエタノール濃縮物1gを80℃で16時間加熱を行ったところ光学純度は13.6%eeまで低下した。
【0030】
(実施例2−5)
参考例1で得た、5℃で4日間保管した光学純度79.5%eeの(S)−フェニルエタノール濃縮物1g(Ru:0.123mmol)に、含窒素化合物を加え80℃で16時間加熱を行った結果は下表の通りである。
【表3】

【0031】
(実施例6:(R)−4−(1−ヒドロキシエチル)ベンゾニトリルの合成)
200mLの四つ口フラスコに4−アセチルベンゾニトリル15.0g(103.3mmol)、MeOH30ml及び[RuCl(R,R)−Tsdpen(p−cymene)]126mg(0.2mmol)を加えた。温度を15℃に保ちながら、ギ酸/トリエチルアミン(5/2(容量比))75mlを20℃以下で30分かけて滴下し、25℃まで昇温後64時間撹拌した。反応終了後、15℃に冷却し、水30mlを加え、酢酸エチル90mlで抽出した後、水30mlで2回洗浄した。続いて、300mlのナスフラスコにトリエチレンテトラミン75.5mg(0.5mmol)を計量し、酢酸エチル抽出溶液を加え減圧下で酢酸エチルを留去した。得られた濃縮液14.4g(95.9%ee)を減圧蒸留(118〜120℃/1torr)により精製して、目的とする(R)−4−(1−ヒドロキシエチル)ベンゾニトリル11.7g (収率76.9%)を得た。光学純度は95.6%eeであった。
【0032】
(比較例2)
実施例6においてトリエチレンテトラミンを添加しない以外は同様の操作を行ったところ、蒸留物の光学純度は86.2%eeであった。
【0033】
(参考例2:アセトフェノンの不斉水素移動反応)
200ml反応容器にアセトフェノン10g(8.30mmol)、[RuCl(S,S)−Tsdpen(p−cymene)]1.00g(1.5712mmol)、2−プロパノール300ml及び水酸化ナトリウム300mg(7.500mmol)を加え窒素置換を行った。この溶液を40℃で22時間攪拌を行なった後に溶媒を留去して11.3gの(S)−フェニルエタノール濃縮物を得た。反応終了時からの光学純度の変化は以下の通りであった。
【表4】

【0034】
(比較例2)
参考例2で得た、光学純度83.9%eeの(S)−フェニルエタノール濃縮物1gを80℃で17時間加熱を行ったところ光学純度は78.2%eeまで低下した。
【0035】
(実施例7−9)
参考例2と同様の操作で得た、光学純度83.9%eeの(S)−フェニルエタノール濃縮物1g(Ru:0.138mmol)に、含窒素化合物を加え80℃で17時間加熱を行った結果は下表の通りである。
【表5】

【0036】
(参考例3:光学活性(R)−フェニルエタノールのラセミ化)
200ml反応容器に94.5%eeの(R)−フェニルエタノール100mg(0.819mmol)、[Ru(R,R)−Tsdpen(p−cymene)]24.6mg(0.041mmol)及びギ酸/トリエチルアミン(5/2(容量比))2mlを加え窒素置換を行った。この溶液を80℃で17時間攪拌を行なったところ、光学純度は55.4%eeであった。
【0037】
(実施例10−15)
反応容器に含窒素化合物を加えた以外は参考例3と同様の操作を行った。結果は下表の通りである。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属錯体を用いて還元反応を行なった反応液に含窒素化合物を添加した後、反応溶媒回収及び/又は蒸留を行なう還元反応生成物の製造方法。
【請求項2】
還元反応が不斉水素化又は不斉水素移動である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
遷移金属錯体がルテニウム錯体、ロジウム錯体又はイリジウム錯体である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
遷移金属錯体に対して含窒素化合物を1当量以上加える請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
含窒素化合物における窒素原子の数が2以上である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
含窒素化合物がイミダゾール類である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
含窒素化合物の添加が、反応溶媒回収及び/又は蒸留を行なう際の還元反応生成物の光学純度低下を抑制することを目的とするものである請求項1〜6に記載の製造方法。
【請求項8】
含窒素化合物の添加により、含窒素化合物を遷移金属錯体と反応させて含窒素化合物を含む錯体を形成させることにより還元反応生成物の光学純度低下を抑制する請求項7記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−82179(P2012−82179A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231523(P2010−231523)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】