説明

光学素子、光学キット及びラベル付き印刷物

【課題】右偏光反射層と左偏光反射層とを重ねた2層構造を設けることで、偽造防止の判定のための新たな要素を取り入れ、これより、いっそうの偽造防止効果、装飾効果及び美的効果を有する光学素子、光学キット及びラベル付き印刷物を提供する。
【解決手段】
基材11の上に有色層12を形成する。有色層12の上に、入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層13と、入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層と14を形成する。右偏光反射層13および左偏光反射層14には、互いに重なる部分102が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果、装飾効果及び美的効果を有する光学素子、光学キット及びラベル付き印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造防止の一方法として、潜像が利用されている。
潜像の形成には、様々な方法がある。例えば、万線モアレや凹版印刷を利用して形成することができる。
万線モアレを利用した潜像は、潜像とすべき像と、高密度に配列した多数の線とを重ねることにより得られる。この像は、肉眼で観察した場合には多数の線が識別を困難とし、それらの線を隠すことにより識別が容易になる。凹版印刷を利用した潜像は、インキ層に凹パターン及び/又は凸パターンを設けることにより得られる。凹パターン及び/又は凸パターンが形成している像は、正面から観察した場合には識別が困難であり、斜めから観察することにより可視化する。
万線モアレ又は凹版印刷を利用した潜像技術は、真偽判定が比較的容易である。しかしながら、これらの方法で形成した像は、肉眼で観察した場合に識別が不可能な訳ではない。そのため、これらの潜像はそれ自体の存在を悟られ易い。
【0003】
潜像は、蛍光インキ及び赤外線吸収インキなどの特殊インキによって形成することもできる。
蛍光インキは、紫外線を照射することにより発光するインキであって、これを用いて形成した潜像は、紫外線照射により可視化する。赤外線吸収インキは、赤外線吸収率が高いインキであって、これを用いて形成した潜像は、例えば、赤外線カメラで観察することにより可視化する。
特殊インキ使用して形成した潜像は、それ自体の存在を悟られ難い。しかしながら、その可視化には紫外線ランプ又は赤外線カメラなどの装置が必要である。
【0004】
一方、偽造防止の他の方法として、コレステリック液晶が利用されている。
コレステリック液晶は、それ自体が特徴的な色を呈し、また見る角度によって観察される色が変わるため、カラーコピーなどによる単純な偽造を防止する効果がある。それに加えて、右回りか左回りのどちらか一方の円偏光のみを反射するという特徴を持っており、円偏光フィルタによる検証機能を持たせることも出来るため、一つの材料で偽造防止効果の複合化が実現できる。
例えば、特許文献1は、コレステリック液晶を用いた潜像技術を提案している。このように、複数の偽造防止技術を組み合わせることは、偽造防止効果が向上するため、非常に有効である。
しかしながら、偽造技術の進歩は著しい。それゆえ、偽造防止技術には更なる進歩が望まれている。
【特許文献1】特開2003−170649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来のコレステリック液晶を用いた潜像技術では、入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層と入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層とがそれぞれ基材上の別の領域に印刷されていた。このため、偽造防止の判定のための要素としては、右偏光反射層の判定と左偏光反射層の判定との2種類に限られていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、右偏光反射層と左偏光反射層とを重ねた2層構造を設けることで、偽造防止の判定のための新たな要素を取り入れ、これより、いっそうの偽造防止効果、装飾効果及び美的効果を有する光学素子、光学キット及びラベル付き印刷物を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の光学素子は、基材と、前記基材に形成され、入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層と、前記基材に形成され、入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層とを備え、前記右偏光反射層および前記左偏光反射層には、互いに重なる重合部分が設けられることを特徴とする。
また、本発明の光学キットは、光学素子と、右回りの円偏光を透過する右円偏光フィルタと、左回りの円偏光を透過する左円偏光フィルタとを備え、前記光学素子は、基材と、前記基材に形成され、入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層と、前記基材に形成され、入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層とを備え、前記右偏光反射層および前記左偏光反射層には、互いに重なる重合部分が設けられることを特徴とする。
また、本発明のラベル付き印刷物は、光学素子と、前記光学素子がラベルとして貼付された印刷物とを備え、前記光学素子は、基材と、前記基材に形成され、入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層と、前記基材に形成され、入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層とを有し、前記右偏光反射層および前記左偏光反射層には、互いに重なる重合部分が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学素子、光学キット及びラベル付き印刷物によれば、基材上に右偏光反射層と左偏光反射層とが形成され、これら右偏光反射層および左偏光反射層には、互いに重なる重合部分が設けられる。
したがって、単層の右偏光反射層および左偏光反射層による従来の偽造防止の判定のための要素に、右偏光反射層と左偏光反射層とが重なる2層構造による偽造防止の判定のための新たな要素が加えられる。したがって、いっそうの偽造防止効果、装飾効果及び美的効果を有する光学素子、光学キット及びラベル付き印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の光学素子、光学キット及びラベル付き印刷物について図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態の光学素子は、基材と、基材に形成され、入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層と、基材に形成され、入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層とを備え、これら右偏光反射層および前記左偏光反射層には、互いに重なる重合部分が設けられる。
【0010】
図1は、本発明の実施形態の光学素子を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示される光学素子のII-II線に沿った断面図である。
光学素子10は、真正品であることが確認されるべきものであり、図1に示すように、光学素子10をその前面から見て表示部101と表示部102とを有する。
光学素子10は、図2に示すように、基材11と、基材11の上に形成された有色層12と、有色層12の上の一部にT字状に形成された左偏光反射層14と、有色層12および左偏光反射層14の上に形成された右偏光反射層13とを備える。
【0011】
光学素子10の前面は、基材11の最上層である左偏光反射層13の上面である。右偏光反射層13および左偏光反射層14には、互いに重なる重合部分102が設けられている。表示部102は、右偏光反射層13および左偏光反射層14が重ねられた重合部分102であり、表示部101は、右偏光反射層13のみが形成された部分である。
【0012】
基材11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂や紙などのシートである。
有色層12は、光学素子10の前面側から見た右偏光反射層13および左偏光反射層14の色を鮮明にするためのものであり、例えば黒色の墨インキを使用してスクリーン印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷などにより形成される。
【0013】
右偏光反射層13は、固化された右巻きの螺旋構造を有するコレステリック液晶材料からなる。右偏光反射層13は、流動性を有するコレステリック液晶材料を非流動化し形成される。左偏光反射層14は、固化された左巻きの螺旋構造を有するコレステリック液晶材料からなる。左偏光反射層14は、流動性を有するコレステリック液晶材料を非流動化して形成される。
【0014】
右偏光反射層13及び左偏光反射層14は、典型的には、流動性を有する重合性のコレステリック液晶材料を紫外線または熱により硬化させてなる高分子コレステリック液晶層である。
【0015】
コレステリック液晶は、層構造からなり、液晶分子の配向方向が膜厚方向に規則的にねじれた螺旋構造を有している。具体的には、ある面内では、液晶分子のディレクター(平均的な配向方向)nは一定方向にあるが、この面に平行な隣り合う面内では、nの方向がいくらかねじれている。nが360°回転するための面間距離がこのコレステリック液晶の螺旋ピッチPとなる。
【0016】
コレステリック液晶では、その螺旋軸に沿って光の屈折率が周期的に変化する。そのときの螺旋ピッチPと、入射光の波長とがほぼ等しいときに、選択反射性と円偏光選択性という2つの光学的性質を示すことが知られている。すなわち、波長が螺旋ピッチと等しく、かつ螺旋のねじれと同じ方向の円偏光を反射するという性質を持つ。従って、螺旋構造のピッチを制御することで所望の反射色を得ることが可能であり、また、特定の波長域の成分が反射されるため、色純度の高い反射光を得ることができる。
【0017】
各分子の配向は公知の方法、例えば配向層又は電界又は磁界によって制御できる。またその固定化の代表的な方法には、キラル相を有する三次元架橋性液晶物質と多官能性重合性化合物を組合せ、紫外線照射することで、三次元架橋し、螺旋構造を固定化でき、高分子コレステリック液晶が得られる。
【0018】
高分子コレステリック液晶層は、例えば、以下の方法により形成することができる。
まず、光重合性を有するコレステリック液晶材料を有色層12上に塗布する。このとき、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷などの印刷法を用いてパターン状に液晶材料を塗布すると、必要な部分のみにコレステリック液晶層を形成することができる。次いで、液晶材料に紫外線を照射して、それらの重合を生じさせる。これにより、螺旋構造が固定化された高分子コレステリック液晶層である右偏光反射層13および左偏光反射層14を得ることができる。
【0019】
コレステリック液晶材料は、コレステリック液晶材料そのものでも良く、コレステリック液晶材料を固化した後に粉砕し、顔料化したものを用いても良い。顔料化することで、各種の結着剤、分散剤、助剤等との混錬が可能となり、グラビア印刷用、スクリーン印刷用等の各種印刷に用いるインキとしての特性を向上させることができる。
なお、右偏光反射層13及び左偏光反射層14に用いるコレステリック液晶材料の色相は同じである方が望ましい。
【0020】
次に、この光学素子10に白色光を照射し、これを肉眼で観察した場合に見える画像について説明する。なお、白色光とは、可視領域内のすべての波長の非偏光からなる光である。
【0021】
図3は、図1及び図2に示す光学素子が表示する像の一例を示す平面図である。
光学素子10に白色光を照射し、これを肉眼で観察した場合、図3に示すように、表示部101及び102は互いからの判別が不可能又は困難である。これについてより詳細に説明する。
【0022】
表示部101に入射した照明光としての白色光は、図2に示す右偏光反射層13によって右円偏光のみが反射される。このとき、左円偏光は右偏光反射層13を透過し、有色層12に吸収される。すなわち、表示部101では、右偏光反射層13より反射された右円偏光を観察することとなる。
【0023】
表示部102に入射した照明光としての白色光は、図2に示す右偏光反射層13によって右円偏光のみが反射される。このとき、左円偏光は右偏光反射層13を透過し、左偏光反射層14に入射する。左偏光反射層14に入射した左円偏光は左偏光反射層14によって反射される。すなわち、表示部102では、右偏光反射層13より反射された右円偏光と、左偏光反射層14より反射された左円偏光を観察することとなる。
人間の目は、円偏光の回転方向の違いを認識できないため、表示部101と表示部102は同じ色、例えば、赤色に見え、互いからの判別が不可能又は困難である。
【0024】
なお、表示部101と表示部102の判別をより困難にするためには、例えば、表示部102を形成している右偏光反射層13を網点印刷で設けると良い。網点印刷は、スクリーン印刷やオフセット印刷などの印刷法において、インキをドット形状で設けることを指す。網点印刷によって右偏光反射層13を設けると、左偏光反射層14との境界線がわかりにくくなり、より判別を困難にすることができる。
【0025】
また、表示部101と表示部102の判別をより困難にするために、例えば、表示部101を形成する左偏光反射層14上に、さらに地紋模様等の印刷パターンを重ねることも出来る。印刷パターンを重ねることによって、右偏光反射層13と左偏光反射層14の境界線がわかりにくくなり、より判別を困難にすることが出来ると共に、さらに意匠性を向上させることができる。
【0026】
図4は、図1及び図2に示す光学素子の観察方法の例を示す概念図である。
図4に示すように、図3に示す状態から観察方向をX方向に垂直な面内で傾けると、表示部101及び102の表示色が変化する。例えば、法線方向20から観察した場合に表示部101及び102は赤色に見えていたとすると、観察方向を視点21から25までX方向に垂直な面内で傾けることにより、表示部101及び102の色はオレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色と順次変化する。表示部101及び102で生じる色変化の理由を以下に説明する。
【0027】
照明光である白色光が斜めから入射すると、螺旋ピッチが見かけ上減少し、反射光の中心波長が短波長側へシフトする(ブルーシフト)。そのシフト量は入射角に依存する。そのため、光学素子10をX方向に垂直な面内で傾けると、例えば、法線方向20から観察して赤色に見えるコレステリック液晶の反射色は、傾ける角度を大きくするにつれ、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色と順次変化する。
【0028】
次に、偏光フィルタを介して光学素子10を観察した場合に見える画像について説明する。ここでは、偏光フィルタとして左円偏光フィルム50を使用することとする。左円偏光フィルム50は、左回りの円偏光を透過するように設計された偏光フィルタである。
【0029】
図5は、図1及び図2に示す光学素子10と左円偏光フィルム50とを重ねた場合に観察可能な像の一例を概略的に示す平面図である。
図5では、図1及び図2に示す光学素子10と左円偏光フィルム50とを重ねている。これを正面から観察すると、図5に示すように、表示部101表示部102の互いからの判別が容易である。これについてより詳細に説明する。
【0030】
表示部101に入射した照明光としての白色光は、図2に示す右偏光反射層13によって右円偏光のみが反射される。このとき、左円偏光は右偏光反射層13を透過し、有色層12に吸収される。すなわち、表示部101では、右偏光反射層13より反射される右円偏光を観察することとなる。これを左円偏光フィルム50を通して観察するとき、この右円偏光は左円偏光フィルム50を透過できないため、表示部101は黒く見える。
【0031】
表示部102に入射した照明光としての白色光は、図2に示す右偏光反射層13によって右円偏光のみが反射される。このとき、左円偏光は右偏光反射層13を透過し、左偏光反射層14に入射する。左偏光反射層14に入射した左円偏光は左偏光反射層14によって反射される。すなわち、表示部102では、右偏光反射層13より反射された右円偏光と、左偏光反射層14より反射された左円偏光を観察することとなる。これを左円偏光フィルム50を通して観察するとき、左偏光反射層14より反射された左円偏光が透過し、表示部102は、例えば、赤色に見える。
【0032】
このように、表示部101は黒色に見え、表示部102は着色して見える。したがって、光学素子10に偏光フィルム50を重ね、これに白色光を照射して正面から観察した場合、図5に示すように、表示部101及び102の判別が容易となる。
また、表示部102では、図4で説明したのと同様の色変化が左円偏光フィルム50を通しても観察できる。
【0033】
次に、偏光フィルタを介して光学素子10を観察した場合に見える画像の別の例について説明する。ここでは、偏光フィルタとして右円偏光フィルム60を使用することとする。右円偏光フィルム60は、右回りの円偏光を透過するように設計された偏光フィルタである。
【0034】
図6は、図1及び図2に示す光学素子10と直線偏光フィルム60とを重ねた場合に観察可能な像の一例を概略的に示す平面図である。
図6では、図1及び図2に示す光学素子10と右円偏光フィルム60とを重ねている。これを正面から観察すると、図6に示すように、表示部101表示部102の互いからの判別が不可能又は困難である。これについてより詳細に説明する。
【0035】
表示部101に入射した照明光としての白色光は、図2に示す右偏光反射層13によって右円偏光のみが反射される。このとき、左円偏光は右偏光反射層13を透過し、有色層12に吸収される。すなわち、表示部101では、右偏光反射層13より反射される右円偏光を観察することとなる。これを右円偏光フィルム60を通して観察するとき、この右円偏光は右円偏光フィルム60を透過するため、表示部101は、例えば、赤色に見える。
【0036】
表示部102に入射した照明光としての白色光は、図2に示す右偏光反射層13によって右円偏光のみが反射される。このとき、左円偏光は右偏光反射層13を透過し、左偏光反射層14に入射する。左偏光反射層14に入射した左円偏光は左偏光反射層14によって反射される。すなわち、表示部102では、右偏光反射層13より反射された右円偏光と、左偏光反射層14より反射された左円偏光を観察することとなる。これを右円偏光フィルム60を通して観察するとき、右偏光反射層13より反射された右円偏光が透過し、表示部102は、例えば、赤色に見える。
【0037】
このように表示部101及び102は着色して見える。したがって、光学素子10に右円偏光フィルム60を重ね、これに白色光を照射して正面から観察した場合、図6に示すように、表示部101及び102の判別は不可能又は困難である。
また、表示部101及び102では、図4で説明したのと同様の色変化が左円偏光フィルム60を通しても観察できる。
【0038】
表示部101及び102の観察をまとめると、真偽判定に有効な以下の特徴が認められる。
(1)表示部101及び102は、左円偏光フィルム50及び右円偏光フィルム60なしで法線方向から観察した場合に、互いにほぼ等しい色を表示する。
(2)表示部101及び102は、左円偏光フィルム50及び右円偏光フィルム60なしで法線方向から観察した場合と、左円偏光フィルム50及び右円偏光フィルム60なしで斜め方向から観察した場合とで同様の色変化を示す。
(3)表示部101及び102は、左円偏光フィルム50を介して法線方向から観察した場合に、互いに異なる色を表示する。
(4)表示部101及び102は、左円偏光フィルム50を介して斜め方向から観察した場合に、互いに異なる色を表示する。
(5)表示部102は、左円偏光フィルム50を介して法線方向から観察した場合と、左円偏光フィルムを介して斜め方向から観察した場合とで異なる色を表示する。
(6)表示部101及び102は、右円偏光フィルム60を介して法線方向から観察した場合に、互いにほぼ等しい色を表示する。
(7)表示部101及び102は、右円偏光フィルム60を介して斜め方向から観察した場合に、互いにほぼ等しい色を表示する。
(8)表示部102は、右円偏光フィルム60を介して法線方向から観察した場合と、右円偏光フィルムを介して斜め方向から観察した場合とで互いにほぼ等しい色を表示する。
【0039】
光学素子10と、この光学素子10がラベルとして貼付された印刷物とからなるラベル付き印刷物を真正品とした場合、真正であるか否かが未知の物品が、上記の特徴の1つ以上を示さないときには、その物品は非真正品であると判断することができる。すなわち、真正であるか否かが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別することができる。
【0040】
印刷物は、例えば、有価証券、銀行券、身分証明書、クレジットカードであり、真正品であることの証明が必要なものである。ここに本発明の光学素子をラベルとして貼付することで、印刷物や美術品、ひいては様々な物品などの偽造を防止又は抑制することができる。なお、ここでは、ラベルとは、ステッカーシールや、熱圧によって貼付する転写箔など、本発明の光学素子を貼付するための加工品を指すこととする。
また、この光学素子10と右円偏光フィルム50及び左円偏光フィルム60とを含んだ光学キットは、先の真偽判定に利用可能であるのに加え、玩具、学習教材又は装飾品としても利用することができる。
【0041】
光学素子10は、以下に説明する保護層や粘着層をさらに含んでいてもよい。
図7は、図1に示す光学素子の一変形例を示す断面図である。
図7に示す光学素子10は、右偏光13を被覆した保護層15をさらに含んでいること以外は、図1及び図2を参照しながら説明した光学素子10と同様の構造を有している。保護層15を設けると、右偏光反射層13などの損傷や光劣化を生じ難くすることができ、それゆえ、光学素子10が表示する像の劣化を抑制することができる。
保護層15の材料としては、例えば、耐傷性に優れたハードコート材料を使用することができる。また、保護層15の材料としては、典型的には透明性の高い材料を使用する。保護層15は無色透明であってもよく、有色透明であってもよい。
【0042】
図8は、図1に示す光学素子の他の変形例を示す断面図である。
図8に示す光学素子10は、基材11の裏面を被覆した粘着層16をさらに含んでいること以外は、図7を参照しながら説明した光学素子10と同様の構造を有している。この光学素子10は、物品に貼り付けて使用する用途に適している。なお、粘着層16は、剥離紙で被覆してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態の光学素子を概略的に示す平面図である。
【図2】図1に示される光学素子のII−II線に沿った断面図である。
【図3】光学素子が表示する像の一例を示す平面図である。
【図4】光学素子の観察方法の例を示す図である。
【図5】左円偏光フィルムにより観察可能な像の一例を示す図である。
【図6】右円偏光フィルムにより観察可能な像の一例を示す図である。
【図7】光学素子の一変形例を示す断面図である。
【図8】光学素子の他の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10…光学素子、11…基材、12…有色層、13…右偏光反射層、14…左偏光反射層、15…保護層、16…粘着層、20、21、22、23、24、25…視点、50…左円偏光フィルタ、60…右円偏光フィルタ、101…表示部、102…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に形成され、入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層と、
前記基材に形成され、入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層とを有し、
前記右偏光反射層および前記左偏光反射層には、互いに重なる重合部分が設けられる、
ことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記右偏光反射層は、螺旋構造の回転方向が右巻きであるコレステリック液晶材料からなることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記左偏光反射層は、螺旋構造の回転方向が左巻きであるコレステリック液晶材料からなることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項4】
前記基材と前記右偏光反射層との間および前記基材と前記左偏光反射層との間には、有色層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の光学素子。
【請求項5】
前記右偏光反射層および前記左偏光反射層は、網点印刷により形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の光学素子。
【請求項6】
前記右偏光反射層および前記左偏光反射層の上に形成された印刷パターン層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の光学素子。
【請求項7】
光学素子と、
右回りの円偏光を透過する右円偏光フィルタと、
左回りの円偏光を透過する左円偏光フィルタとを備え、
前記光学素子は、
基材と、
前記基材に形成され、入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層と、
前記基材に形成され、入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層とを有し、
前記右偏光反射層および前記左偏光反射層には、互いに重なる重合部分が設けられる、
ことを特徴とする光学キット。
【請求項8】
光学素子と、
前記光学素子がラベルとして貼付された印刷物とを備え、
前記光学素子は、
基材と、
前記基材に形成され、入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層と、
前記基材に形成され、入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層とを有し、
前記右偏光反射層および前記左偏光反射層には、互いに重なる重合部分が設けられる、
ことを特徴とするラベル付き印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−98454(P2009−98454A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270499(P2007−270499)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】