光学素子、光学素子の製造方法及び光学素子の駆動方法
【課題】磁気により光を制御することができるとともに、基板上に集積化することが可能な光学素子、光学素子の製造方法及び光学素子の駆動方法を提供する。
【解決手段】基板51の上には、磁気抵抗効果を示す物質によりクラッド52が形成されており、クラッド52の上にはPLZTからなるコア53が形成されている。コア53はY字形にパターニングされており、これらのクラッド52及びコア53により、入力側光導波路54a,出力側光導波路54b,54cが構成されている。出力側光導波路54b,54cの上にはコイル55b,55cが配置されており、これらのコイル55b,55cから発生する磁場により、光導波路54b,54cを伝搬する光の強度を制御して、光信号をスイッチングする。
【解決手段】基板51の上には、磁気抵抗効果を示す物質によりクラッド52が形成されており、クラッド52の上にはPLZTからなるコア53が形成されている。コア53はY字形にパターニングされており、これらのクラッド52及びコア53により、入力側光導波路54a,出力側光導波路54b,54cが構成されている。出力側光導波路54b,54cの上にはコイル55b,55cが配置されており、これらのコイル55b,55cから発生する磁場により、光導波路54b,54cを伝搬する光の強度を制御して、光信号をスイッチングする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号伝送システムに使用する光学素子、光学素子の製造方法及び光学素子の駆動方法に関し、特に磁気により光を制御する光学素子、光学素子の製造方法及び光学素子の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会の到来によって、光通信における情報の伝送量は増加の一途をたどっている。これに対し、伝送効率を向上させるための波長多重化等の技術が開発されており、光信号伝送システムの高速化及び大容量化が着実に進んでいる。
【0003】
ところで、光信号伝送システムには、光変調素子及び光スイッチなどの光を制御する光学素子が必要であり、従来から種々の光学素子が開発されている。そのような光学素子のひとつに、可動式ミラーを備えた機械駆動方式の光学素子がある。しかし、機械駆動方式の光学素子では、信号伝送速度の高速化及び素子の微細化の要求に対応することが困難である。
【0004】
特許文献1には、電界により光導波路の屈折率を部分的に変化させて光をスイッチングする光学素子が記載されている。この種の光学素子は光信号を高速でスイッチングできるだけでなく、基板上に集積化することが可能であるという利点があり、種々の研究が行われている。しかし、この種の光学素子では、光導波路の上に金属薄膜の電極を形成する必要があり、そのために大きな光損失が発生するという欠点がある。光損失を小さくするためには種々の工夫が必要となり、構造が複雑になって製造コストが上昇するという問題が発生する。
【0005】
一方、磁気により光を制御する光学素子も開発されている。この種の光学素子は、電極による光の損失がなく、構造が簡単であり、応答速度が速いという利点がある。この種の光学素子として、例えば特許文献2には、磁性層と偏光子とを用いた光学素子が記載されている。この光学素子では、磁性層に印加する磁場により磁性層を伝搬する光の偏光面を回転させて、偏光子を通過する光の量を制御している。この光学素子では、磁気駆動部分の領域を拡大すると光損失が大きくなるという欠点があるが、特許文献3には、磁性多層膜を使用することにより、上記の欠点を解消できることが記載されている。
【0006】
また、特許文献4にはクラッド及びコアを磁性体結晶薄膜により形成した光導波路が記載されている。但し、この特許文献4に記載された光導波路は光アイソレータを構成するファラデー回転子に使用するものである。ファラデー回転子は偏光素子の後段に配置されて偏光素子を透過した光の偏光面を回転させるものであるので、特許文献4に記載された光導波路は磁場により光導波路を伝搬する光の強度を制御するものではない。
【特許文献1】特開平9−318978号公報
【特許文献2】特開平9−230398号公報
【特許文献3】特開2004−309700号公報
【特許文献4】特開2000−347135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献2及び特許文献3に記載された光学素子は、比較的大型の光スイッチに適用する場合には有効である。しかしながら、これらの光学素子では、光路内に偏光子を配置する必要があるため、基板上に集積化できないという欠点がある。
【0008】
本発明は、磁気により光を制御することができるとともに、基板上に集積化することが可能な光学素子、光学素子の製造方法及び光学素子の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、基板と、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて前記基板上に配置された光導波路と、前記光導波路に磁場を印加して前記光導波路を伝搬する光の強度を制御する磁場印加手段とを有する光学素子が提供される。
【0010】
本発明の光学素子の光導波路に磁場を印加していないときには、光導波路を伝搬する光の損失は殆どない。しかし、本発明においては、クラッドが磁気抵抗効果を示す物質により形成されているので、磁場を印加するとクラッドの磁気抵抗の変化に伴って光導波路を伝搬する光の一部がクラッドに吸収されるようになり、大きな光損失が発生する。従って、例えば光導波路に磁場を印加していないときの状態をオン状態、磁場を印加しているときの状態をオフ状態に対応させることにより、本発明の光学素子を光スイッチとして機能させることができる。
【0011】
本発明の別の観点によれば、基板上に、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成される光導波路を形成する工程と、前記基板の上側及び下側の少なくとも一方に、前記光導波路に磁場を印加する磁場印加手段を配置する工程とを有する光学素子の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の製造方法によれば、磁気により光導波路を伝搬する光の損失量を制御する光学素子を容易に製造することができる。本発明の製造方法により製造された光学素子は、電界により光導波路の屈折率を制御する方式の光学素子と異なり、光導波路の上に薄膜金属からなる電極を有していない。このため、薄膜金属による光損失が回避される。また、クラッド及びコアを基板上に成膜することにより形成されるので、集積化が容易である。更に、磁場により光導波路を伝搬する光の損失量を制御するので、機械駆動方式の光学素子に比べて高速動作が可能である。
【0013】
本発明の更に別の観点によれば、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて基板上に配置された光導波路に対し磁場を印加して、前記光導波路を伝搬する光の強度を制御する光学素子の駆動方法が提供される。
【0014】
本発明においては、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて基板上に配置された光導波路に対し磁場を印加して、前記光導波路を伝搬する光の強度を制御するので、光学素子に入力される光信号のスイッチングや変調が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する前に、本発明の原理について説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る光学素子において用いる光導波路の一例を示す断面図である。この光導波路10は、SrTiO3 単結晶基板11の上に、La0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド12と、PLZT(Laドープチタン酸ジルコン酸鉛)からなるコア13とを積層して形成されている。コア13は、光の透過率が高く且つクラッド12よりも屈折率が高い物質により形成されていることが必要である。また、本発明においては、クラッド12が磁気抵抗効果を示す物質により形成されていることが必要である。
【0017】
この光導波路10に磁場が印加されていない場合、光導波路10の一端側からコア13に入力された光は、コア13とクラッド12又は空気との界面で反射されながらコア13内を伝搬し、他端側から出力される。
【0018】
この光導波路10に磁場を印加すると、クラッド12の磁気抵抗の変化に伴って光導波路を伝搬する光の一部がクラッド12に吸収されるようになり、光導波路10を伝搬する光に大きな損失が発生する。図2は、横軸に光導波路の長さをとり、縦軸に光の強度(相対強度)の対数値をとって、光導波路に磁場を印加していないときの光導波路の長さと光の強度との関係、及び3500Gの磁場を印加したときの光導波路の長さと光の強度との関係を、端面乱反射法により調べた結果を示す図である。
【0019】
図3は、端面乱反射法を示す模式図である。この図3に示すように、光導波路10の端面の上に検出器20を配置し、プリズム21を介して光導波路10(コア13)内に光を導入した。また、プリズム21を光導波路10の長さ方向に移動し、光導波路10の端面で乱反射した光を検出器20で検出した。そして、光導波路10の端面からプリズム21までの距離Lを光導波路10の長さとし、検出器20の出力を光の強度として、磁場を印加したとき及び磁場を印加しないときの光導波路10の長さと光の強度との関係を調べた。
【0020】
その結果、図2に示すように、光導波路10に磁場を印加していないときの光損失量は約4.8dB/cmであるのに対し、光導波路10に3500Gの磁場を印加したときの光損失量は約12dB/cmであった。すなわち、3500Gの磁場により約7.2dB/cmの光損失を制御することができることが判明した。
【0021】
この図2から、例えば、磁場を印加していないとき(光の損失が殆どないとき)の状態をオン状態、磁場を印加したとき(光の損失が大きいとき)の状態をオフ状態に対応させることにより、図1に示す光導波路を光スイッチとして機能させることが可能であることがわかる。また、印加する磁場の強さを経時的に変化させることにより光の強度を経時的に変化させることが可能であり、図1に示す光導波路を光変調器として機能させることが可能であることがわかる。
【0022】
(第1の実施形態)
図4は本発明の第1の実施形態の光学素子を示す平面図、図5は図4のI−I線による断面図である。なお、本実施形態は、本発明を1入力2出力(1×2)の光スイッチに適用した例を示している。
【0023】
図5に示すように、SrTiO3 基板51の上には、La0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド52とPLZTからなるコア53とにより構成される光導波路が形成されている。本実施形態においては、クラッド52は基板51の上側全面に形成されており、コア53は図4に示すようにY字形に分岐されて形成されている。以下、信号入力端IN(図4ではコア53の左側端部)から分岐点Aまでの光導波路を入力側光導波路54aと呼び、分岐点Aから信号出力端OUT1,OUT2(図4ではコア53の右側端部)までの2本の光導波路をそれぞれ出力側光導波路54b,54cと呼ぶ。
【0024】
出力側光導波路54bの上にはコイル(電磁石)55bが配置されており、出力側光導波路54cの上にはコイル(電磁石)55cが配置されている。これらのコイル55b,55cは、駆動回路(図示せず)から電流が供給されて磁場を発生し、光導波路54b,54cの透過率(光損失量)を変化させる。
【0025】
以下、本実施形態の光スイッチの動作について説明する。初期状態では、コイル55b,55cに電流が供給されていないものとする。この状態では、信号入力端INから入力側光導波路54aに入力された光信号は分岐点Aで分岐されて、一方の光信号は出力側光導波路54bを通って出力端OUT1から出力され、他方の光信号は出力側光導波路54cを通って出力端OUT2から出力される。すなわち、初期状態では出力側光導波路54b,54cはいずれもオン状態であり、出力端OUT1,OUT2からはいずれも所定の強度の光信号が出力される。
【0026】
次に、図6(a)に示すように、コイル55cへの電流供給を開始すると、コイル55cで発生した磁場によりクラッド52のうちコイル55cの下方の部分の磁気抵抗が変化し、出力側光導波路54cを伝搬する光信号の一部がクラッド52に吸収されて光信号に損失が発生する。すなわち、出力側光導波路54cはオフ状態となり、信号出力端OUT2から出力される光信号の強度が著しく減少する。一方、コイル55bには電流が供給されていないので、出力側光導波路54bはオン状態のままであり、信号出力端OUT1からは所定の強度の光信号が出力される。
【0027】
次に、図6(b)に示すように、コイル55cへの電流供給を停止し、コイル55bへの電流供給を開始すると、コイル55bで発生した磁場によりクラッド52のうちコイル55bの下方の部分の磁気抵抗が変化し、出力側光導波路54bを伝搬する光信号の一部がクラッド52に吸収されて光信号に損失が発生する。すなわち、出力側光導波路53bはオフ状態となり、信号出力端OUT1から出力される光信号の強度が著しく減少する。一方、コイル55cには電流が供給されていないので、出力側光導波路54cはオン状態となり、信号出力端子OUT2からは所定の強度の光信号が出力される。このようにして、光信号の切換え(スイッチング)が行われる。
【0028】
図7(a)〜(c)は、上述した本実施形態の光スイッチの製造方法を工程順に示す断面図である。
【0029】
まず、図7(a)に示すように、基板51を用意する。基板51としては、例えば、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物を主成分とする単結晶基板を使用する。本実施形態では、NbをドープしたSrTiO3 からなる(111)単結晶導電性基板を使用する。基板51の大きさは、例えば幅が10mm、長さが50mm、厚さが0.5mmである。
【0030】
次に、基板51の上に、図7(b)に示すように、La0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド52を例えば100nmの厚さに形成する。本実施形態においては、Nd−YAGレーザを使用したレーザアブレーション法(PLD(Pulsed Laser Deposition )法ともいう)により、基板温度が300℃〜800℃、圧力が1mTorr 〜500mTorr (0.133Pa〜66.5Pa)の酸素雰囲気でクラッド52を成膜する。但し、レーザアブレーション法以外の方法によりクラッド52を形成してもよい。
【0031】
クラッド52は、コア53を構成する物質よりも屈折率が低く、且つ磁気抵抗効果を示す物質により形成することが必要である。そのような物質としては、ペロブスカイト構造の(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)、及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)等の化合物がある。
【0032】
次に、図7(c)に示すように、クラッド52の上にPLZTからなるコア層53aを例えば2μmの厚さに形成し、このコア層52aをパターニングしてコア53を形成する。以下に、ゾルゲル法によるコア層53aの形成方法を示す。但し、ゾルゲル法以外の方法によりコア層53aを形成してもよい。
【0033】
まず、原料となる薬品を用意する。本実施形態では、Pdの有機化合物としてPd(CH3 COO)2 ・3H2 O(酢酸鉛)を使用し、Laの有機化合物としてLa(i−OC3 H7 )3 (ランタンイソプロポキシド)を使用し、Tiの有機化合物としてTi(i−OC3 H7 )4 (チタニウムイソプロポキシド)を使用し、Zrの有機化合物としてZr(OC3 H7 )4 (ジルコニウムプロポキシド)を使用する。また、安定剤としてCH3 COCH2 COCH3 (2,4−ペンタンジオン)を使用し、溶剤としてCH3 OC2 H4 OH(2−メトキシエタノール)を使用する。
【0034】
次に、原料となる上記の各有機化合物と安定剤と溶剤とを用いて、還流によりPLZT溶液を合成する。PLZTのLaとZrとTiとの組成比を9:65:35とするためには、Pb(CH3 COO)2 ・3H2 OとLa(i−OC3 H7 )3 とのモル比を101:9とし、Zr(OC3 H7 )とTi(i−OC3 H7 )4 とのモル比を65:35とすればよい。
【0035】
次いで、上記の方法により合成したPLZT溶液をスピンコート法によりクラッド52の上に塗布する。そして、酸素雰囲気中で350℃の温度で仮焼成した後、更に750℃の温度で焼成する。これにより、厚さが約120μmのPLZT膜が形成される。ゾルゲル法による1回のPLZT成膜工程では、厚さが約120μmのPLZT膜しか形成できないので、塗布、仮焼成及び焼成の各工程を複数回繰り返すことによりPLZT膜を積層し、所望の厚さ(例えば2μm)のコア層53aを形成する。
【0036】
このようにしてクラッド52の上にコア層53aを形成した後、フォトリソグラフィ法によりコア層53aの上にエッチングマスク(図示せず)を形成する。そして、ウェットエッチング又はドライエッチングを実施して、コア層53aを所望の形状にパターニングする。本実施形態では1入力2出力の光スイッチを形成するので、図4に示すように、コア層53aをY字形にパターニングしてコア53とする。ウェットエッチングによりコア層53aをパターニングする場合は、エッチャントとして例えばHClとHFとの混合溶液を使用する。ドライエッチングによりコア層53aをパターニングする場合は、エッチングガスとして例えばAr(アルゴン)とCl(塩素)との混合ガスを使用する。そして、コア層53をパターニングしてコア層53を形成した後、エッチングマスクを除去する。このようにして、クラッド52及びコア53からなるY字形の光導波路、すなわち入力側光導波路54aと出力側光導波路54b,54cとを形成する。
【0037】
次いで、図4,図5に示すように、出力側光導波路54b,54cの上にコイル55b,55cを接合することにより、本実施形態の光スイッチが完成する。本実施形態においては、コイル55b,55cとして、プリント基板への表面実装用として市販されている面実装型積層コイル又は巻き線コイルを使用する。
【0038】
図8(a)は市販の面実装型積層コイルの例(一部を切り欠いた状態を示す斜視図)を示し、図8(b)は市販の面実装型巻き線コイルの例(斜視図)を示している。図8(a)に示す面実装型積層コイル61は、薄膜導電体からなるコイル62をフェライト63中に埋め込んだ構造を有している。コイル62の両端はそれぞれ電極64a,64bに接続されており、これらの電極64a,64bを介して駆動回路(図示せず)から電力が供給される。
【0039】
図8(b)に示す面実装型巻き線コイル65は、断面がH字形に形成されたコア67の中心部に電線66を巻きつけた構造を有している。電線66の両端はそれぞれ電極68a,68bに接続されており、これらの電極68a,68bを介して駆動回路(図示せず)から電力が供給される。
【0040】
本実施形態の光スイッチは、Y字形の光導波路の上にコイル55b,55cを配置した構造であるので、製造が容易である。また、本実施形態の光スイッチは、電界により光導波路の屈折率を変化させる方式の光学素子(前述の特許文献1に記載されているような光学素子)と異なり、光導波路の上に薄膜電極を形成する必要がないので、電極による光損失が発生しない。更に、本実施形態の光スイッチは、磁気により光導波路を伝搬する光信号のスイッチングを行うので、機械駆動方式の光スイッチに比べて動作速度が速い。更に、本実施形態の光スイッチは、基板51上にクラッド52及びコア53を成膜することにより製造されるので、集積化が容易である。
【0041】
なお、本実施形態では磁場印加手段として図8(a),(b)に示す市販の有芯コイルを使用しているが、磁場印加手段としては空芯コイル、鉄芯コイル又は薄膜技術を用いて形成される薄膜コイル等、種々の方式のコイルを使用することができる。有芯コイルのコア材として磁性体を使用する場合は、光導波路に常に磁界が印加された状態となることがあるので、それを考慮した設計が必要となる。
【0042】
(第2の実施形態)
図9は本発明の第2の実施形態の光学素子(光スイッチ)を示す平面図、図10は図9のII−II線による断面図である。なお、本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、コア53がクラッドに囲まれていることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様であるので、図9,図10において図4,図5と同一物には同一符号を付して、それらの詳細な説明は省略する。
【0043】
図10に示すように、SrTiO3 基板51の上にはLa0.5 Sr0.5 CoO3 からなる下部クラッド(第1のクラッド層)52aが形成されており、下部クラッド52aの上にはPLZTからなるコア53が形成されている。本実施形態の光スイッチも、1入力2出力の光スイッチであり、第1の実施形態と同様に、コア53はY字形にパターニングされている(図9参照)。
【0044】
下部クラッド52a及びコア53の上にはLa0.5 Sr0.5 CoO3 からなる上部クラッド(第2のクラッド層)52bが形成されており、コア53の上面及び側面はこの上部クラッド52bに覆われている。これらの下部クラッド52a、コア53及び上部クラッド52bにより、光導波路が構成されている。本実施形態においても、信号入力端IN(図9ではコア53の左側端部)から分岐点Aまでの光導波路を入力側光導波路54aと呼び、分岐点Aから信号出力端OUT1,OUT2(図9ではコア53の右側端部)までの2本の光導波路をそれぞれ出力側光導波路54b,54cと呼ぶ。出力側光導波路54bの上にはコイル55bが配置されており、出力側光導波路54cの上にはコイル55cが配置されている。
【0045】
本実施形態の光スイッチにおいても、下部クラッド52a及び上部クラッド52bが磁気抵抗効果を示す物質により形成されているので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態においては、コア53が下部クラッド52a及び上部クラッド52bに囲まれているため、第1の実施形態に比べて磁場による光導波路の光損失量が大きく、出力側光導波路54b,54cの長さを短縮できるという利点がある。
【0046】
なお、本実施形態においては下部クラッド層52a及び上部クラッド層52bがいずれも磁気抵抗効果を示す物質により形成されているものとしたが、出力側光導波路54b,54cの長さを短縮する必要がないのであれば、下部クラッド層52a及び上部クラッド層52bのいずれか一方のみを磁気抵抗効果を示す物質により形成し、他方を磁気抵抗効果を示さない物質により形成してもよい。
【0047】
(第3の実施形態)
図11は本発明の第3の実施形態の光学素子(光スイッチ)を断面図である。なお、本実施形態が第2の実施形態と異なる点は、出力側光導波路54b,54cの上側だけでなく下側にもコイルが設けられていることにあり、その他の構成は基本的に第2の実施形態と同じであるので、図11において図10と同一物には同一符号を付して、それらの詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施形態においては、基板51の裏面側の出力側光導波路54b,54cに整合する位置にそれぞれ凹部51aが設けられている。そして、それらの凹部51a内にはコイル58b,58cが配置されている。すなわち、本実施形態においては、出力側光導波路54bの上下にそれぞれ配置されたコイル55b,58bにより出力側光導波路54bの光損失を制御し、出力側光導波路54cの上下にそれぞれ配置されたコイル55c,58cにより出力側光導波路54cの光損失を制御するようになっている。
【0049】
本実施形態においても、第2の実施形態の光スイッチと同様にコア53が磁気抵抗効果を示す物質からなる下部クラッド52a及び上部クラッド52bに囲まれているので、第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態の光スイッチは、出力側光導波路54b,54cの光損失をそれぞれ2つのコイル(コイル54bとコイル58b、又はコイル54cとコイル58c)により制御するので、第2の実施形態の光スイッチに比べて磁場による光導波路の光損失量が更に大きい。従って、本実施形態の光スイッチは、第2の実施形態の光スイッチに比べて出力側光導波路54b,54cの長さを更に短縮できるという利点がある。
【0050】
(第4の実施形態)
図12は本発明の第4の実施形態の光学素子を示す平面図、図13は図12のIII −III 線による断面図である。本実施形態は、本発明を光変調器に適用した例を示している。
【0051】
NbをドープしたSrTiO3 からなる単結晶基板71上には、La0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド72が形成されている。また、クラッド72上にはPLZTからなるコア73が形成されて光導波路74を構成している。更に、コア73の上には、面実装型積層コイル75が配置されている。
【0052】
このように構成された本実施形態の光変調器において、入力端INから所定の強度の光を入力し、変調信号に応じて駆動回路(図示せず)からコイル75に供給する電流をオン−オフ制御すると、光導波路74の透過率(光損失)が変調信号に応じて変化し、出力端OUTから変調光が出力される。
【0053】
本実施形態の光変調器は、第1の実施形態と同様に、基板71上にレーザアブレーション法によりLa0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド72を形成し、その上にゾルゲル法によりPLZTからなるコア73を形成した後、コア73上に市販の面実装型積層コイル75を配置することにより製造される。
【0054】
本実施形態の光変調器は、光導波路74に印加する磁場をオン−オフすることにより光導波路74を伝搬する光の強度を変えて変調光を生成している。本実施形態においても、磁気により光導波路74を伝播する光の損失を制御するので、高速動作が可能であり、製造が容易である。また、本実施形態の光変調器は、基板71上にクラッド72及びコア73を成膜することにより製造されるので、集積化が容易である。
【0055】
以下、本発明の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
【0056】
(付記1)基板と、
磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて前記基板上に配置された光導波路と、
前記光導波路に磁場を印加して前記光導波路を伝搬する光の強度を制御する磁場印加手段と
を有することを特徴とする光学素子。
【0057】
(付記2)前記クラッドが、前記コアの上側及び下側のいずれか一方にのみ形成されていることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0058】
(付記3)前記クラッドが、前記基板と前記コアとの間に形成された第1のクラッド層と、前記コアの側面及び上面を覆う第2のクラッド層とにより構成されていることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0059】
(付記4)前記クラッドが、(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0060】
(付記5)前記コアが、PLZT、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0061】
(付記6)前記基板が、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0062】
(付記7)前記クラッドを構成する化合物が、ペロブスカイト構造を有することを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0063】
(付記8)前記光導波路が、1本の入力側光導波路と該入力側光導波路に連結する2本の出力側光導波路とにより構成され、各出力側光導波路毎に前記磁場印加手段が設けられていることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0064】
(付記9)前記磁場印加手段が、面実装型コイルであることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0065】
(付記10)前記磁場印加手段が、前記光導波路の上側及び下側の両方に配置されていることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0066】
(付記11)基板上に、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成される光導波路を形成する工程と、
前記基板の上側及び下側の少なくとも一方に、前記光導波路に磁場を印加する磁場印加手段を配置する工程と
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【0067】
(付記12)前記クラッドを、(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)のうちのいずれか1種の化合物により形成することを特徴とする付記11に記載の光学素子の製造方法。
【0068】
(付記13)前記クラッドを、レーザアブレーション法により形成することを特徴とする付記12に記載の光学素子の製造方法。
【0069】
(付記14)前記コアを、PLZT、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物により形成することを特徴とする付記11に記載の光学素子の製造方法。
【0070】
(付記15)前記磁場印加手段として、面実装型コイルを使用することを特徴とする付記11に記載の光学素子の製造方法。
【0071】
(付記16)磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて基板上に配置された光導波路に対し磁場を印加して、前記光導波路を伝搬する光の強度を制御することを特徴とする光学素子の駆動方法。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明に係る光学素子において用いる光導波路の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、光導波路に磁場を印加していないときの光導波路の長さと光の強度との関係、及び3500Gの磁場を印加したときの光導波路の長さと光の強度との関係を、端面乱反射法により調べた結果を示す図である。
【図3】図3は、端面乱反射法を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態の光学素子(光スイッチ)を示す平面図である。
【図5】図5は、図4のI−I線による断面図である。
【図6】図6(a),(b)は、第1の実施形態の光学素子の動作を示す模式図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、第1の本実施形態の光学素子の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図8】図8(a)は市販の面実装型積層コイルの例を示す斜視図(一部を切り欠いた状態)であり、図8(b)は市販の面実装型巻き線コイルの例を示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施形態の光学素子(光スイッチ)を示す平面図である。
【図10】図10は、図9のII−II線による断面図である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施形態の光学素子(光スイッチ)を断面図である。
【図12】図12は本発明の第4の実施形態の光学素子(光変調器)を示す平面図である。
【図13】図13は、図12のIII −III 線による断面図である。
【符号の説明】
【0073】
10,54a,54b,54c,74…光導波路、
11,51,71…基板、
12,52,52a,52b,72…クラッド、
13,53,73…コア、
20…検出器、
21…プリズム、
55b,55c,58b,58c,61,65,75…コイル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号伝送システムに使用する光学素子、光学素子の製造方法及び光学素子の駆動方法に関し、特に磁気により光を制御する光学素子、光学素子の製造方法及び光学素子の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会の到来によって、光通信における情報の伝送量は増加の一途をたどっている。これに対し、伝送効率を向上させるための波長多重化等の技術が開発されており、光信号伝送システムの高速化及び大容量化が着実に進んでいる。
【0003】
ところで、光信号伝送システムには、光変調素子及び光スイッチなどの光を制御する光学素子が必要であり、従来から種々の光学素子が開発されている。そのような光学素子のひとつに、可動式ミラーを備えた機械駆動方式の光学素子がある。しかし、機械駆動方式の光学素子では、信号伝送速度の高速化及び素子の微細化の要求に対応することが困難である。
【0004】
特許文献1には、電界により光導波路の屈折率を部分的に変化させて光をスイッチングする光学素子が記載されている。この種の光学素子は光信号を高速でスイッチングできるだけでなく、基板上に集積化することが可能であるという利点があり、種々の研究が行われている。しかし、この種の光学素子では、光導波路の上に金属薄膜の電極を形成する必要があり、そのために大きな光損失が発生するという欠点がある。光損失を小さくするためには種々の工夫が必要となり、構造が複雑になって製造コストが上昇するという問題が発生する。
【0005】
一方、磁気により光を制御する光学素子も開発されている。この種の光学素子は、電極による光の損失がなく、構造が簡単であり、応答速度が速いという利点がある。この種の光学素子として、例えば特許文献2には、磁性層と偏光子とを用いた光学素子が記載されている。この光学素子では、磁性層に印加する磁場により磁性層を伝搬する光の偏光面を回転させて、偏光子を通過する光の量を制御している。この光学素子では、磁気駆動部分の領域を拡大すると光損失が大きくなるという欠点があるが、特許文献3には、磁性多層膜を使用することにより、上記の欠点を解消できることが記載されている。
【0006】
また、特許文献4にはクラッド及びコアを磁性体結晶薄膜により形成した光導波路が記載されている。但し、この特許文献4に記載された光導波路は光アイソレータを構成するファラデー回転子に使用するものである。ファラデー回転子は偏光素子の後段に配置されて偏光素子を透過した光の偏光面を回転させるものであるので、特許文献4に記載された光導波路は磁場により光導波路を伝搬する光の強度を制御するものではない。
【特許文献1】特開平9−318978号公報
【特許文献2】特開平9−230398号公報
【特許文献3】特開2004−309700号公報
【特許文献4】特開2000−347135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献2及び特許文献3に記載された光学素子は、比較的大型の光スイッチに適用する場合には有効である。しかしながら、これらの光学素子では、光路内に偏光子を配置する必要があるため、基板上に集積化できないという欠点がある。
【0008】
本発明は、磁気により光を制御することができるとともに、基板上に集積化することが可能な光学素子、光学素子の製造方法及び光学素子の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、基板と、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて前記基板上に配置された光導波路と、前記光導波路に磁場を印加して前記光導波路を伝搬する光の強度を制御する磁場印加手段とを有する光学素子が提供される。
【0010】
本発明の光学素子の光導波路に磁場を印加していないときには、光導波路を伝搬する光の損失は殆どない。しかし、本発明においては、クラッドが磁気抵抗効果を示す物質により形成されているので、磁場を印加するとクラッドの磁気抵抗の変化に伴って光導波路を伝搬する光の一部がクラッドに吸収されるようになり、大きな光損失が発生する。従って、例えば光導波路に磁場を印加していないときの状態をオン状態、磁場を印加しているときの状態をオフ状態に対応させることにより、本発明の光学素子を光スイッチとして機能させることができる。
【0011】
本発明の別の観点によれば、基板上に、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成される光導波路を形成する工程と、前記基板の上側及び下側の少なくとも一方に、前記光導波路に磁場を印加する磁場印加手段を配置する工程とを有する光学素子の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の製造方法によれば、磁気により光導波路を伝搬する光の損失量を制御する光学素子を容易に製造することができる。本発明の製造方法により製造された光学素子は、電界により光導波路の屈折率を制御する方式の光学素子と異なり、光導波路の上に薄膜金属からなる電極を有していない。このため、薄膜金属による光損失が回避される。また、クラッド及びコアを基板上に成膜することにより形成されるので、集積化が容易である。更に、磁場により光導波路を伝搬する光の損失量を制御するので、機械駆動方式の光学素子に比べて高速動作が可能である。
【0013】
本発明の更に別の観点によれば、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて基板上に配置された光導波路に対し磁場を印加して、前記光導波路を伝搬する光の強度を制御する光学素子の駆動方法が提供される。
【0014】
本発明においては、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて基板上に配置された光導波路に対し磁場を印加して、前記光導波路を伝搬する光の強度を制御するので、光学素子に入力される光信号のスイッチングや変調が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する前に、本発明の原理について説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る光学素子において用いる光導波路の一例を示す断面図である。この光導波路10は、SrTiO3 単結晶基板11の上に、La0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド12と、PLZT(Laドープチタン酸ジルコン酸鉛)からなるコア13とを積層して形成されている。コア13は、光の透過率が高く且つクラッド12よりも屈折率が高い物質により形成されていることが必要である。また、本発明においては、クラッド12が磁気抵抗効果を示す物質により形成されていることが必要である。
【0017】
この光導波路10に磁場が印加されていない場合、光導波路10の一端側からコア13に入力された光は、コア13とクラッド12又は空気との界面で反射されながらコア13内を伝搬し、他端側から出力される。
【0018】
この光導波路10に磁場を印加すると、クラッド12の磁気抵抗の変化に伴って光導波路を伝搬する光の一部がクラッド12に吸収されるようになり、光導波路10を伝搬する光に大きな損失が発生する。図2は、横軸に光導波路の長さをとり、縦軸に光の強度(相対強度)の対数値をとって、光導波路に磁場を印加していないときの光導波路の長さと光の強度との関係、及び3500Gの磁場を印加したときの光導波路の長さと光の強度との関係を、端面乱反射法により調べた結果を示す図である。
【0019】
図3は、端面乱反射法を示す模式図である。この図3に示すように、光導波路10の端面の上に検出器20を配置し、プリズム21を介して光導波路10(コア13)内に光を導入した。また、プリズム21を光導波路10の長さ方向に移動し、光導波路10の端面で乱反射した光を検出器20で検出した。そして、光導波路10の端面からプリズム21までの距離Lを光導波路10の長さとし、検出器20の出力を光の強度として、磁場を印加したとき及び磁場を印加しないときの光導波路10の長さと光の強度との関係を調べた。
【0020】
その結果、図2に示すように、光導波路10に磁場を印加していないときの光損失量は約4.8dB/cmであるのに対し、光導波路10に3500Gの磁場を印加したときの光損失量は約12dB/cmであった。すなわち、3500Gの磁場により約7.2dB/cmの光損失を制御することができることが判明した。
【0021】
この図2から、例えば、磁場を印加していないとき(光の損失が殆どないとき)の状態をオン状態、磁場を印加したとき(光の損失が大きいとき)の状態をオフ状態に対応させることにより、図1に示す光導波路を光スイッチとして機能させることが可能であることがわかる。また、印加する磁場の強さを経時的に変化させることにより光の強度を経時的に変化させることが可能であり、図1に示す光導波路を光変調器として機能させることが可能であることがわかる。
【0022】
(第1の実施形態)
図4は本発明の第1の実施形態の光学素子を示す平面図、図5は図4のI−I線による断面図である。なお、本実施形態は、本発明を1入力2出力(1×2)の光スイッチに適用した例を示している。
【0023】
図5に示すように、SrTiO3 基板51の上には、La0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド52とPLZTからなるコア53とにより構成される光導波路が形成されている。本実施形態においては、クラッド52は基板51の上側全面に形成されており、コア53は図4に示すようにY字形に分岐されて形成されている。以下、信号入力端IN(図4ではコア53の左側端部)から分岐点Aまでの光導波路を入力側光導波路54aと呼び、分岐点Aから信号出力端OUT1,OUT2(図4ではコア53の右側端部)までの2本の光導波路をそれぞれ出力側光導波路54b,54cと呼ぶ。
【0024】
出力側光導波路54bの上にはコイル(電磁石)55bが配置されており、出力側光導波路54cの上にはコイル(電磁石)55cが配置されている。これらのコイル55b,55cは、駆動回路(図示せず)から電流が供給されて磁場を発生し、光導波路54b,54cの透過率(光損失量)を変化させる。
【0025】
以下、本実施形態の光スイッチの動作について説明する。初期状態では、コイル55b,55cに電流が供給されていないものとする。この状態では、信号入力端INから入力側光導波路54aに入力された光信号は分岐点Aで分岐されて、一方の光信号は出力側光導波路54bを通って出力端OUT1から出力され、他方の光信号は出力側光導波路54cを通って出力端OUT2から出力される。すなわち、初期状態では出力側光導波路54b,54cはいずれもオン状態であり、出力端OUT1,OUT2からはいずれも所定の強度の光信号が出力される。
【0026】
次に、図6(a)に示すように、コイル55cへの電流供給を開始すると、コイル55cで発生した磁場によりクラッド52のうちコイル55cの下方の部分の磁気抵抗が変化し、出力側光導波路54cを伝搬する光信号の一部がクラッド52に吸収されて光信号に損失が発生する。すなわち、出力側光導波路54cはオフ状態となり、信号出力端OUT2から出力される光信号の強度が著しく減少する。一方、コイル55bには電流が供給されていないので、出力側光導波路54bはオン状態のままであり、信号出力端OUT1からは所定の強度の光信号が出力される。
【0027】
次に、図6(b)に示すように、コイル55cへの電流供給を停止し、コイル55bへの電流供給を開始すると、コイル55bで発生した磁場によりクラッド52のうちコイル55bの下方の部分の磁気抵抗が変化し、出力側光導波路54bを伝搬する光信号の一部がクラッド52に吸収されて光信号に損失が発生する。すなわち、出力側光導波路53bはオフ状態となり、信号出力端OUT1から出力される光信号の強度が著しく減少する。一方、コイル55cには電流が供給されていないので、出力側光導波路54cはオン状態となり、信号出力端子OUT2からは所定の強度の光信号が出力される。このようにして、光信号の切換え(スイッチング)が行われる。
【0028】
図7(a)〜(c)は、上述した本実施形態の光スイッチの製造方法を工程順に示す断面図である。
【0029】
まず、図7(a)に示すように、基板51を用意する。基板51としては、例えば、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物を主成分とする単結晶基板を使用する。本実施形態では、NbをドープしたSrTiO3 からなる(111)単結晶導電性基板を使用する。基板51の大きさは、例えば幅が10mm、長さが50mm、厚さが0.5mmである。
【0030】
次に、基板51の上に、図7(b)に示すように、La0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド52を例えば100nmの厚さに形成する。本実施形態においては、Nd−YAGレーザを使用したレーザアブレーション法(PLD(Pulsed Laser Deposition )法ともいう)により、基板温度が300℃〜800℃、圧力が1mTorr 〜500mTorr (0.133Pa〜66.5Pa)の酸素雰囲気でクラッド52を成膜する。但し、レーザアブレーション法以外の方法によりクラッド52を形成してもよい。
【0031】
クラッド52は、コア53を構成する物質よりも屈折率が低く、且つ磁気抵抗効果を示す物質により形成することが必要である。そのような物質としては、ペロブスカイト構造の(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)、及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)等の化合物がある。
【0032】
次に、図7(c)に示すように、クラッド52の上にPLZTからなるコア層53aを例えば2μmの厚さに形成し、このコア層52aをパターニングしてコア53を形成する。以下に、ゾルゲル法によるコア層53aの形成方法を示す。但し、ゾルゲル法以外の方法によりコア層53aを形成してもよい。
【0033】
まず、原料となる薬品を用意する。本実施形態では、Pdの有機化合物としてPd(CH3 COO)2 ・3H2 O(酢酸鉛)を使用し、Laの有機化合物としてLa(i−OC3 H7 )3 (ランタンイソプロポキシド)を使用し、Tiの有機化合物としてTi(i−OC3 H7 )4 (チタニウムイソプロポキシド)を使用し、Zrの有機化合物としてZr(OC3 H7 )4 (ジルコニウムプロポキシド)を使用する。また、安定剤としてCH3 COCH2 COCH3 (2,4−ペンタンジオン)を使用し、溶剤としてCH3 OC2 H4 OH(2−メトキシエタノール)を使用する。
【0034】
次に、原料となる上記の各有機化合物と安定剤と溶剤とを用いて、還流によりPLZT溶液を合成する。PLZTのLaとZrとTiとの組成比を9:65:35とするためには、Pb(CH3 COO)2 ・3H2 OとLa(i−OC3 H7 )3 とのモル比を101:9とし、Zr(OC3 H7 )とTi(i−OC3 H7 )4 とのモル比を65:35とすればよい。
【0035】
次いで、上記の方法により合成したPLZT溶液をスピンコート法によりクラッド52の上に塗布する。そして、酸素雰囲気中で350℃の温度で仮焼成した後、更に750℃の温度で焼成する。これにより、厚さが約120μmのPLZT膜が形成される。ゾルゲル法による1回のPLZT成膜工程では、厚さが約120μmのPLZT膜しか形成できないので、塗布、仮焼成及び焼成の各工程を複数回繰り返すことによりPLZT膜を積層し、所望の厚さ(例えば2μm)のコア層53aを形成する。
【0036】
このようにしてクラッド52の上にコア層53aを形成した後、フォトリソグラフィ法によりコア層53aの上にエッチングマスク(図示せず)を形成する。そして、ウェットエッチング又はドライエッチングを実施して、コア層53aを所望の形状にパターニングする。本実施形態では1入力2出力の光スイッチを形成するので、図4に示すように、コア層53aをY字形にパターニングしてコア53とする。ウェットエッチングによりコア層53aをパターニングする場合は、エッチャントとして例えばHClとHFとの混合溶液を使用する。ドライエッチングによりコア層53aをパターニングする場合は、エッチングガスとして例えばAr(アルゴン)とCl(塩素)との混合ガスを使用する。そして、コア層53をパターニングしてコア層53を形成した後、エッチングマスクを除去する。このようにして、クラッド52及びコア53からなるY字形の光導波路、すなわち入力側光導波路54aと出力側光導波路54b,54cとを形成する。
【0037】
次いで、図4,図5に示すように、出力側光導波路54b,54cの上にコイル55b,55cを接合することにより、本実施形態の光スイッチが完成する。本実施形態においては、コイル55b,55cとして、プリント基板への表面実装用として市販されている面実装型積層コイル又は巻き線コイルを使用する。
【0038】
図8(a)は市販の面実装型積層コイルの例(一部を切り欠いた状態を示す斜視図)を示し、図8(b)は市販の面実装型巻き線コイルの例(斜視図)を示している。図8(a)に示す面実装型積層コイル61は、薄膜導電体からなるコイル62をフェライト63中に埋め込んだ構造を有している。コイル62の両端はそれぞれ電極64a,64bに接続されており、これらの電極64a,64bを介して駆動回路(図示せず)から電力が供給される。
【0039】
図8(b)に示す面実装型巻き線コイル65は、断面がH字形に形成されたコア67の中心部に電線66を巻きつけた構造を有している。電線66の両端はそれぞれ電極68a,68bに接続されており、これらの電極68a,68bを介して駆動回路(図示せず)から電力が供給される。
【0040】
本実施形態の光スイッチは、Y字形の光導波路の上にコイル55b,55cを配置した構造であるので、製造が容易である。また、本実施形態の光スイッチは、電界により光導波路の屈折率を変化させる方式の光学素子(前述の特許文献1に記載されているような光学素子)と異なり、光導波路の上に薄膜電極を形成する必要がないので、電極による光損失が発生しない。更に、本実施形態の光スイッチは、磁気により光導波路を伝搬する光信号のスイッチングを行うので、機械駆動方式の光スイッチに比べて動作速度が速い。更に、本実施形態の光スイッチは、基板51上にクラッド52及びコア53を成膜することにより製造されるので、集積化が容易である。
【0041】
なお、本実施形態では磁場印加手段として図8(a),(b)に示す市販の有芯コイルを使用しているが、磁場印加手段としては空芯コイル、鉄芯コイル又は薄膜技術を用いて形成される薄膜コイル等、種々の方式のコイルを使用することができる。有芯コイルのコア材として磁性体を使用する場合は、光導波路に常に磁界が印加された状態となることがあるので、それを考慮した設計が必要となる。
【0042】
(第2の実施形態)
図9は本発明の第2の実施形態の光学素子(光スイッチ)を示す平面図、図10は図9のII−II線による断面図である。なお、本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、コア53がクラッドに囲まれていることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様であるので、図9,図10において図4,図5と同一物には同一符号を付して、それらの詳細な説明は省略する。
【0043】
図10に示すように、SrTiO3 基板51の上にはLa0.5 Sr0.5 CoO3 からなる下部クラッド(第1のクラッド層)52aが形成されており、下部クラッド52aの上にはPLZTからなるコア53が形成されている。本実施形態の光スイッチも、1入力2出力の光スイッチであり、第1の実施形態と同様に、コア53はY字形にパターニングされている(図9参照)。
【0044】
下部クラッド52a及びコア53の上にはLa0.5 Sr0.5 CoO3 からなる上部クラッド(第2のクラッド層)52bが形成されており、コア53の上面及び側面はこの上部クラッド52bに覆われている。これらの下部クラッド52a、コア53及び上部クラッド52bにより、光導波路が構成されている。本実施形態においても、信号入力端IN(図9ではコア53の左側端部)から分岐点Aまでの光導波路を入力側光導波路54aと呼び、分岐点Aから信号出力端OUT1,OUT2(図9ではコア53の右側端部)までの2本の光導波路をそれぞれ出力側光導波路54b,54cと呼ぶ。出力側光導波路54bの上にはコイル55bが配置されており、出力側光導波路54cの上にはコイル55cが配置されている。
【0045】
本実施形態の光スイッチにおいても、下部クラッド52a及び上部クラッド52bが磁気抵抗効果を示す物質により形成されているので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態においては、コア53が下部クラッド52a及び上部クラッド52bに囲まれているため、第1の実施形態に比べて磁場による光導波路の光損失量が大きく、出力側光導波路54b,54cの長さを短縮できるという利点がある。
【0046】
なお、本実施形態においては下部クラッド層52a及び上部クラッド層52bがいずれも磁気抵抗効果を示す物質により形成されているものとしたが、出力側光導波路54b,54cの長さを短縮する必要がないのであれば、下部クラッド層52a及び上部クラッド層52bのいずれか一方のみを磁気抵抗効果を示す物質により形成し、他方を磁気抵抗効果を示さない物質により形成してもよい。
【0047】
(第3の実施形態)
図11は本発明の第3の実施形態の光学素子(光スイッチ)を断面図である。なお、本実施形態が第2の実施形態と異なる点は、出力側光導波路54b,54cの上側だけでなく下側にもコイルが設けられていることにあり、その他の構成は基本的に第2の実施形態と同じであるので、図11において図10と同一物には同一符号を付して、それらの詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施形態においては、基板51の裏面側の出力側光導波路54b,54cに整合する位置にそれぞれ凹部51aが設けられている。そして、それらの凹部51a内にはコイル58b,58cが配置されている。すなわち、本実施形態においては、出力側光導波路54bの上下にそれぞれ配置されたコイル55b,58bにより出力側光導波路54bの光損失を制御し、出力側光導波路54cの上下にそれぞれ配置されたコイル55c,58cにより出力側光導波路54cの光損失を制御するようになっている。
【0049】
本実施形態においても、第2の実施形態の光スイッチと同様にコア53が磁気抵抗効果を示す物質からなる下部クラッド52a及び上部クラッド52bに囲まれているので、第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態の光スイッチは、出力側光導波路54b,54cの光損失をそれぞれ2つのコイル(コイル54bとコイル58b、又はコイル54cとコイル58c)により制御するので、第2の実施形態の光スイッチに比べて磁場による光導波路の光損失量が更に大きい。従って、本実施形態の光スイッチは、第2の実施形態の光スイッチに比べて出力側光導波路54b,54cの長さを更に短縮できるという利点がある。
【0050】
(第4の実施形態)
図12は本発明の第4の実施形態の光学素子を示す平面図、図13は図12のIII −III 線による断面図である。本実施形態は、本発明を光変調器に適用した例を示している。
【0051】
NbをドープしたSrTiO3 からなる単結晶基板71上には、La0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド72が形成されている。また、クラッド72上にはPLZTからなるコア73が形成されて光導波路74を構成している。更に、コア73の上には、面実装型積層コイル75が配置されている。
【0052】
このように構成された本実施形態の光変調器において、入力端INから所定の強度の光を入力し、変調信号に応じて駆動回路(図示せず)からコイル75に供給する電流をオン−オフ制御すると、光導波路74の透過率(光損失)が変調信号に応じて変化し、出力端OUTから変調光が出力される。
【0053】
本実施形態の光変調器は、第1の実施形態と同様に、基板71上にレーザアブレーション法によりLa0.5 Sr0.5 CoO3 からなるクラッド72を形成し、その上にゾルゲル法によりPLZTからなるコア73を形成した後、コア73上に市販の面実装型積層コイル75を配置することにより製造される。
【0054】
本実施形態の光変調器は、光導波路74に印加する磁場をオン−オフすることにより光導波路74を伝搬する光の強度を変えて変調光を生成している。本実施形態においても、磁気により光導波路74を伝播する光の損失を制御するので、高速動作が可能であり、製造が容易である。また、本実施形態の光変調器は、基板71上にクラッド72及びコア73を成膜することにより製造されるので、集積化が容易である。
【0055】
以下、本発明の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
【0056】
(付記1)基板と、
磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて前記基板上に配置された光導波路と、
前記光導波路に磁場を印加して前記光導波路を伝搬する光の強度を制御する磁場印加手段と
を有することを特徴とする光学素子。
【0057】
(付記2)前記クラッドが、前記コアの上側及び下側のいずれか一方にのみ形成されていることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0058】
(付記3)前記クラッドが、前記基板と前記コアとの間に形成された第1のクラッド層と、前記コアの側面及び上面を覆う第2のクラッド層とにより構成されていることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0059】
(付記4)前記クラッドが、(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0060】
(付記5)前記コアが、PLZT、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0061】
(付記6)前記基板が、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0062】
(付記7)前記クラッドを構成する化合物が、ペロブスカイト構造を有することを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0063】
(付記8)前記光導波路が、1本の入力側光導波路と該入力側光導波路に連結する2本の出力側光導波路とにより構成され、各出力側光導波路毎に前記磁場印加手段が設けられていることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0064】
(付記9)前記磁場印加手段が、面実装型コイルであることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0065】
(付記10)前記磁場印加手段が、前記光導波路の上側及び下側の両方に配置されていることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0066】
(付記11)基板上に、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成される光導波路を形成する工程と、
前記基板の上側及び下側の少なくとも一方に、前記光導波路に磁場を印加する磁場印加手段を配置する工程と
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【0067】
(付記12)前記クラッドを、(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)のうちのいずれか1種の化合物により形成することを特徴とする付記11に記載の光学素子の製造方法。
【0068】
(付記13)前記クラッドを、レーザアブレーション法により形成することを特徴とする付記12に記載の光学素子の製造方法。
【0069】
(付記14)前記コアを、PLZT、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物により形成することを特徴とする付記11に記載の光学素子の製造方法。
【0070】
(付記15)前記磁場印加手段として、面実装型コイルを使用することを特徴とする付記11に記載の光学素子の製造方法。
【0071】
(付記16)磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて基板上に配置された光導波路に対し磁場を印加して、前記光導波路を伝搬する光の強度を制御することを特徴とする光学素子の駆動方法。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明に係る光学素子において用いる光導波路の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、光導波路に磁場を印加していないときの光導波路の長さと光の強度との関係、及び3500Gの磁場を印加したときの光導波路の長さと光の強度との関係を、端面乱反射法により調べた結果を示す図である。
【図3】図3は、端面乱反射法を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態の光学素子(光スイッチ)を示す平面図である。
【図5】図5は、図4のI−I線による断面図である。
【図6】図6(a),(b)は、第1の実施形態の光学素子の動作を示す模式図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、第1の本実施形態の光学素子の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図8】図8(a)は市販の面実装型積層コイルの例を示す斜視図(一部を切り欠いた状態)であり、図8(b)は市販の面実装型巻き線コイルの例を示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施形態の光学素子(光スイッチ)を示す平面図である。
【図10】図10は、図9のII−II線による断面図である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施形態の光学素子(光スイッチ)を断面図である。
【図12】図12は本発明の第4の実施形態の光学素子(光変調器)を示す平面図である。
【図13】図13は、図12のIII −III 線による断面図である。
【符号の説明】
【0073】
10,54a,54b,54c,74…光導波路、
11,51,71…基板、
12,52,52a,52b,72…クラッド、
13,53,73…コア、
20…検出器、
21…プリズム、
55b,55c,58b,58c,61,65,75…コイル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて前記基板上に配置された光導波路と、
前記光導波路に磁場を印加して前記光導波路を伝搬する光の強度を制御する磁場印加手段と
を有することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記クラッドが、(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記コアが、PLZT、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記光導波路が、1本の入力側光導波路と該入力側光導波路に連結する2本の出力側光導波路とにより構成され、各出力側光導波路毎に前記磁場印加手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記磁場印加手段が、面実装型コイルであることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
基板上に、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成される光導波路を形成する工程と、
前記基板の上側及び下側の少なくとも一方に、前記光導波路に磁場を印加する磁場印加手段を配置する工程と
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記クラッドを、(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)のうちのいずれか1種の化合物により形成することを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記コアを、PLZT、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物により形成することを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて基板上に配置された光導波路に対し磁場を印加して、前記光導波路を伝搬する光の強度を制御することを特徴とする光学素子の駆動方法。
【請求項1】
基板と、
磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて前記基板上に配置された光導波路と、
前記光導波路に磁場を印加して前記光導波路を伝搬する光の強度を制御する磁場印加手段と
を有することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記クラッドが、(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記コアが、PLZT、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記光導波路が、1本の入力側光導波路と該入力側光導波路に連結する2本の出力側光導波路とにより構成され、各出力側光導波路毎に前記磁場印加手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記磁場印加手段が、面実装型コイルであることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
基板上に、磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成される光導波路を形成する工程と、
前記基板の上側及び下側の少なくとも一方に、前記光導波路に磁場を印加する磁場印加手段を配置する工程と
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記クラッドを、(Cax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Bax Sr1-x )RuO3 (但し、0≦x≦1)、(Lax Sr1-x )CoO3 (但し、0≦x≦1)及び(Lax Sr1-x )MnO3 (但し、0≦x≦1)のうちのいずれか1種の化合物により形成することを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記コアを、PLZT、SrTiO3 、MgO、LaAlO3 、LiNbO3 及びLiTaO3 のうちのいずれか1種の化合物により形成することを特徴とする請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
磁気抵抗効果を示す物質からなるクラッドと該クラッドよりも屈折率が高い物質からなるコアとにより構成されて基板上に配置された光導波路に対し磁場を印加して、前記光導波路を伝搬する光の強度を制御することを特徴とする光学素子の駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−140333(P2007−140333A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336713(P2005−336713)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「フォトニックネットワーク技術の開発事業」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「フォトニックネットワーク技術の開発事業」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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