説明

光学素子の製造方法、および薄膜パターン基板

【課題】積層方向の光学特性を容易に微調整可能な光学素子の製造方法、および薄膜パターン基板を提供する。
【解決手段】薄膜パターン基板上に離型層を介して薄膜を形成し、薄膜をパターニングして光学素子3A用の1層目〜16層目の複数の薄膜パターン30と、光学素子3B用の1層目〜16層目の複数の薄膜パターン31を形成して薄膜パターン基板を作製する。次に、光学素子3Aを構成する複数の薄膜パターン30のうち、2層目、4層目、6層目、10層目、12層目、14層目、16層目の薄膜パターン30、30、30、3010、3012、3014、3016にフェムト秒レーザ光を照射して屈折率を変化させる。次に、薄膜パターン基板とターゲット基板との接合、離間を繰り返すことにより、複数の薄膜パターン30、31をターゲット基板に積層、転写して光学素子3A,3Bを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶、フィルタ等の光学素子の製造方法、および光学素子を製造するための薄膜パターン基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学素子の製造方法として、複数の薄膜を常温接合により積層して光学素子を製造するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この光学素子の製造方法は、基板上に2次元パターンを有する複数の薄膜を形成し、基板上から複数の薄膜を剥離し、この剥離した複数の薄膜を順次接合して積層することにより、フォトニック結晶を製造するものである。
【特許文献1】特開2000−180606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、積層方向の光学特性を容易に微調整可能な光学素子の製造方法、および薄膜パターン基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の光学素子の製造方法、および屈折率分布薄膜パターン基板を提供する。
【0006】
[1]第1の基板上に目的とする光学素子の断面形状に対応した複数の薄膜パターンを形成する第1の工程と、前記第1の基板上の前記複数の薄膜パターンのうち1つ以上の薄膜パターンの屈折率を変化させる第2の工程と、前記第1の基板と第2の基板との接合、離間を繰り返すことにより、前記第1の基板上の前記複数の薄膜パターンを前記第2の基板上に積層、転写して前記光学素子を形成する第3の工程とを含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【0007】
[2]前記第1の基板と前記第2の基板との接合は、常温接合によることを特徴とする前記[1]に記載の光学素子の製造方法。
【0008】
[3]前記第2の工程は、前記1つ以上の薄膜パターンにフェムト秒レーザ光を照射して屈折率を変化させることを特徴とする前記[1]に記載の光学素子の製造方法。
【0009】
[4]前記第2の工程における前記フェムト秒レーザ光の照射は、照射パワーまたは照射回数を制御して行うことを特徴とする前記[3]に記載の光学素子の製造方法。
【0010】
[5]前記第2の工程は、前記1つ以上の薄膜パターンに紫外線を照射して屈折率を変化させることを特徴とする前記[1]に記載の光学素子の製造方法。
【0011】
[6]前記第2の工程は、前記1つ以上の薄膜パターンにイオンを注入して屈折率を変化させることを特徴とする前記[1]に記載の光学素子の製造方法。
【0012】
[7]前記第2の工程は、前記1つ以上の薄膜パターンを酸化させて屈折率を変化させることを特徴とする前記[1]に記載の光学素子の製造方法。
【0013】
[8]第1の基板上に目的とする第1および第2の光学素子の断面形状にそれぞれ対応した複数の第1の薄膜パターン、および複数の第2の薄膜パターンを形成する第1の工程と、前記第1の基板上の前記複数の第1の薄膜パターンのうち1つ以上の第1の薄膜パターンの屈折率を変化させる第2の工程と、前記第1の基板と第2の基板との接合、離間を繰り返すことにより、前記第1の基板上の前記複数の第1および第2の薄膜パターンを前記第2の基板上に積層、転写して光学特性の異なる前記第1および第2の光学素子を形成する第3の工程とを含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【0014】
[9]基板と、前記基板上に剥離可能に形成され、薄膜パターン間で屈折率の異なる複数の薄膜パターンとを備えたことを特徴とする薄膜パターン基板。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る光学素子の製造方法によれば、積層方向の光学特性を容易に微調整可能となる。
請求項2に係る光学素子の製造方法によれば、請求項1の効果に加えて、薄膜パターンの形状や厚さの変化が少なく、高精度な光学素子を製造することができる。
請求項3に係る光学素子の製造方法によれば、2次元的にレーザ光を照射することが可能であるので、レーザ光の走査が不要となり、または少ない走査量で薄膜パターン全体にレーザ光を照射することができ、レーザ光の照射工程の時間を短縮することができる。
請求項4に係る光学素子の製造方法によれば、レーザ光の照射量を制御することで、屈折率の高精度な制御が可能となる。
請求項5、6、7に係る光学素子の製造方法によれば、レーザ光と同様に屈折率を変更することができる。
請求項8に係る光学素子の製造方法によれば、請求項1の効果に加えて、光学特性の異なる複数の光学素子を一括して製造することができる。
請求項9に係る薄膜パターン基板によれば、積層方向の光学特性を容易に微調整可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光学デバイスを示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【0017】
この光学デバイス1は、基板2上に光学特性の異なる複数の光学素子3A,3Bを有する。本実施の形態では、光学素子が2つの場合を示すが、1つでも3つ以上でもよい。
【0018】
光学素子3Aは、角柱状を有し、断面形状に対応した複数の薄膜パターン30(30〜3016)を積層して形成される。光学素子3Aは、複数の薄膜パターン30のうち1つ以上の薄膜パターン30、本実施の形態では、2層目、4層目、6層目、10層目、12層目、14層目、16層目の薄膜パターン30、30、30、3010、3012、3014、3016がレーザ光の照射により屈折率が変化している。
【0019】
光学素子3Bは、円柱状を有し、断面形状に対応した複数の薄膜パターン31(31〜3116)がレーザ光が照射されずに積層して形成される。
【0020】
薄膜パターン30,31は、レーザ光の照射によって屈折率が変化する材料から形成されている。このような材料として、例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、フッ素系樹脂等の高分子材料にラジカル反応性またはイオン反応性を有するオリゴマーおよび/またはモノマーを含有させたものや、Si、InP、GaAs、InGaAsP、InGaAlAsP等の半導体材料を用いることができる。
【0021】
(光学デバイスの製造方法)
次に、本実施の形態に係る光学デバイス1の製造方法を図2および図3を参照して説明する。図2は、薄膜パターン基板を示し、(a)は、薄膜パターン基板全体の平面図、(b)は、(a)の要部拡大図、(c)は、レーザ光照射後の(a)の要部拡大図である。また、図3(a)〜(f)は、積層工程を示す。
【0022】
(1)薄膜パターン基板の作製
まず、Siウェハからなる基板101を準備する。なお、基板101として、Siウェハのほかに、ガラス基板、石英基板等を用いてもよい。
【0023】
次に、基板101上にポリイミドからなる離型層102をスパッタ法により着膜する。なお、離型層102として、上記ポリイミドのほかに、フッ化ポリイミド、酸化シリコン等の公知の材料を用いることができる。なお、離型層として、基板101の熱酸化処理を行って形成される熱酸化膜を用いてもよい。また、離型層102の着膜法として、上記スパッタ法のほかに、分子線ビームエピタキシャル法、化学気相堆積法、真空蒸着法、スピン塗布法等の一般的な薄膜形成方法を用いることができる。離型層102を用いることにより、薄膜パターン基板と薄膜パターンが転写される対向基板とを圧接して離間したとき、薄膜パターンが離型層から容易に剥離してターゲット基板側に転写させることができる。
【0024】
次に、離型層102の表面に光学素子3A,3Bの構成材料となる薄膜をスパッタ法により着膜する。薄膜の着膜法として、上記スパッタ法のほかに、分子線ビームエピタキシャル法、化学気相堆積法、真空蒸着法、スピン塗布法等の一般的な薄膜形成方法を用いることができる。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、薄膜をリソグラフィー法によりパターニングして光学素子3A用の1層目〜16層目の複数の薄膜パターン30(30〜3016)と、光学素子3B用の1層目〜16層目の複数の薄膜パターン31(31〜3116)を形成して、薄膜パターン基板100を作製する。パターニングは、上記リソグラフィー法のほかに、集束イオンビーム(FIB)法、電子ビーム直接描画法等を用いることができるが、高い平面形状精度が得られ、量産性が高い点で、リソグラフィ法が好ましい。図2中、103は、仮想の領域を示すセルであり、1つのセル103に同時に転写される薄膜パターン30,31が形成される。
【0026】
次に、図2(c)に示すように、光学素子3Aを構成する複数の薄膜パターン30のうち、2層目、4層目、6層目、10層目、12層目、14層目、16層目の薄膜パターン30、30、30、3010、3012、3014、3016にアブレーション(凹凸)が起こらない程度にフェムト秒レーザ光を照射して屈折率を高くさせる。図2(c)中、フェムト秒レーザ光を照射した薄膜パターン30を斜線を施して示す。
【0027】
フェムト秒レーザ光の照射は、薄膜パターンの外径よりも小さいビーム径を用いて薄膜パターン上を走査してもよく、薄膜パターンの外径よりも大きいビーム径を用いて薄膜パターン全体を照射してもよい。なお、フェムト秒レーザ光以外のレーザ光を用いてもよい。
【0028】
(2)薄膜パターンの積層
次に、図3(a)に示すように、図2(c)に示す薄膜パターン基板100を真空槽内の図示しない下部ステージ上に配置し、ターゲット基板110を真空層内の図示しない上部ステージ上に配置する。ターゲット基板110には、Siウェハ、石英基板、ガラス基板等を用いることができる。なお、光学素子3Aと光学素子3Bの積層方法は、同一であるので、図3には、光学素子3A用の1層目および2層目の薄膜パターン30,30のみを示す。
【0029】
続いて、真空槽内を排気して高真空状態あるいは超高真空状態にする。次に、下部ステージを上部ステージに対して相対的に水平方向に移動させてターゲット基板110の直下に薄膜パターン基板100の1層目の薄膜パターン30,31を位置させる。次に、ターゲット基板110の表面、および1層目の薄膜パターン30,31の表面にアルゴン原子ビームを照射して清浄化する。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、上部ステージを下降させ、所定の荷重力(例えば、10kgf/cm2)でターゲット基板110と薄膜パターン基板100とを所定の時間(例えば、5分間)押圧し、ターゲット基板110と1層目の薄膜パターン30,31とを常温接合する。ここで、「常温接合」とは、被接合物の表面に中性原子ビーム、イオンビームなどを照射して表面を清浄化した後、被接合物を室温で接触させて原子同士を直接接合することをいう。常温接合により薄膜パターンを接合することにより、薄膜パターンの形状や厚みの変化が少なく、高精度な光学素子が得られる。
【0031】
次に、図3(c)に示すように、上部ステージを上昇させると、1層目の薄膜パターン30,31が基板101から剥離し、ターゲット基板110側に転写される。これは、薄膜パターン30,31とターゲット基板110との密着力が薄膜パターン30,31と基板101との密着力よりも大きいからである。
【0032】
次に、図3(d)に示すように、下部ステージを相対的に水平方向に移動させ、ターゲット基板110の直下に薄膜パターン基板100上の2層目の薄膜パターン30,31とを位置させる。次に、ターゲット基板110側に転写された薄膜パターン30,31の表面(基板101に接触していた面)、および2層目の薄膜パターン30,31の表面にアルゴン原子ビームを照射して清浄化する。
【0033】
次に、図3(e)に示すように、上部ステージを下降させ、1層目の薄膜パターン30,31と2層目の薄膜パターン30,31とを接合させ、図3(f)に示すように、上部ステージを上昇させると、2層目の薄膜パターン30,31が基板101から剥離し、ターゲット基板110側に転写される。
【0034】
3層目以降の薄膜パターン30〜3016,31〜3116も同様に、薄膜パターン基板100とターゲット基板110との位置決め、接合、離間を繰り返すことにより、光学素子3A,3Bの各断面形状に対応した複数の薄膜パターン30,31がターゲット基板110上に転写される。ターゲット基板110上に転写された積層体を上部ステージから取り外すと、図1に示した光学素子3A,3Bが得られる。
【0035】
このようにして製造された2つの光学素子3A,3Bは、光学特性が異なっている。すなわち、光学素子3Bは、積層方向に屈折率n、1(空気)が交互に繰り返された周期的構造と、周期的構造の途中に薄膜の存在しない欠陥を有するフィルタを構成することができる。また、光学素子3Aは、積層方向に屈折率(n+Δn)、1(空気)が交互に繰り返された周期的構造と、周期的構造の途中に薄膜の存在しない欠陥を有するフィルタを構成することができる。2つの光学素子3A,3Bに軸方向にそれぞれ光を入射させると、光を遮光するストップバンドと、ストップバンド中に光を透過させる2つのスペクトルが現れる。
【0036】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る光学デバイスおよび薄膜パターン基板を示し、(a)は光学デバイスの断面図、(b)は薄膜パターン基板の要部平面図である。
【0037】
この光学デバイス1は、図4(a)に示すように、ターゲット基板110上に、フェムト秒レーザ光が照射されて屈折率が変化した薄膜パターン30を有する角柱状の光学素子3Cと、フェムト秒レーザ光が照射されない薄膜パターン31から形成された円柱状の光学素子3Dとを有する。
【0038】
薄膜パターン基板は、図4(b)に示すように、基板上に、光学素子3Aの1層目から13層目に対応する複数の薄膜パターン30〜3013が形成され、7層目の薄膜パターン30のみにフェムト秒レーザ光が照射され、屈折率が変化している。また、薄膜パターン基板の基板上に、光学素子3Bの1層目から13層目に対応する複数の薄膜パターン31〜3113がレーザ光は照射されずに形成されている。これらの薄膜パターン30、31を第1の実施の形態と同様にターゲット基板110上に積層、転写することにより、光学特性の異なる狭帯域フィルタを構成することができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る光学デバイスおよび薄膜パターン基板を示し、(a)は光学デバイスの断面図、(b)は薄膜パターン基板の要部平面図である。
【0040】
この光学デバイス1は、図5(a)に示すように、ターゲット基板110上に、フェムト秒レーザ光が照射されて屈折率が変化した薄膜パターン30を有する角柱状の光学素子3Eと、フェムト秒レーザ光が照射されない薄膜パターン31から形成された円柱状の光学素子3Dとを有する。
【0041】
薄膜パターン基板は、図5(b)に示すように、基板上に、光学素子3Aの1層目から13層目に対応する複数の薄膜パターン30〜3013が形成され、3層目、5層目、7層目、9層目、11層目の薄膜パターン30、30、30、30、3011のみにフェムト秒レーザ光が照射され、屈折率が変化している。フェムト秒レーザ光の照射パワーは、中央の7層目が最も強く、7層目から離れるに従ってレーザ光の照射パワーを小さくしている。また、薄膜パターン基板の基板上に、光学素子3Bの1層目から13層目に対応する複数の薄膜パターン31〜3113がレーザ光は照射されずに形成されている。これらの薄膜パターン30、31を第1の実施の形態と同様にターゲット基板110上に積層、転写することにより、ディップ(落ち込み)が少なく、光学特性の異なる狭帯域フィルタを構成することができる。なお、フェムト秒レーザ光は、照射回数を制御してレーザ光の照射量を変えてもよい。
【0042】
[第4の実施の形態]
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る光学デバイスおよび薄膜パターン基板を示し、(a)は光学デバイスの断面図、(b)は薄膜パターン基板の要部平面図である。
【0043】
この光学デバイス1は、図6(a)に示すように、ターゲット基板110上に、フェムト秒レーザ光が照射されて屈折率が変化した薄膜パターン30を有する角柱状の光学素子3Eと、レーザ光が照射されない薄膜パターン31から形成された円柱状の光学素子3Dと、フェムト秒レーザ光が照射されて屈折率が変化した薄膜パターン32を有する角柱状の光学素子3Fとを有する。
【0044】
薄膜パターン基板は、図6(b)に示すように、基板上に、図5に示す光学素子3Eと同様に、3層目、5層目、7層目、9層目、11層目の薄膜パターン30、30、30、30、3011のみに照射パワーが異なるフェムト秒レーザ光が照射され、屈折率が変化している。また、薄膜パターン基板の基板上に、図5に示す光学素子3Dと同様に、1層目から13層目に対応する複数の薄膜パターン31〜3113がフェムト秒レーザ光は照射されずに形成されている。また、薄膜パターン基板の基板上に、1層目、3層目、5層目、7層目、9層目、11層目、13層目に対応する複数の薄膜パターン32〜3213に同じ照射パワーのフェムト秒レーザ光が照射され、屈折率が変化している。これらの薄膜パターン30、31、32を第1の実施の形態と同様にターゲット基板110上に積層、転写することにより、狭帯域フィルタ、フィルタ、フォトニック結晶等の各種の光学素子を有する光学デバイスを製造することができる。
【実施例1】
【0045】
図7は、本発明の実施例の光学素子3A,3Bの透過率を示す。実線は、フェムト秒レーザ光未照射の屈折率n=3.6の場合の透過率を示す。一点鎖線は、フェムト秒レーザ光を照射して屈折率をレーザ光未照射よりも0.4%高いn=3.6144とした場合の透過率を示す。破線は、レーザ光を照射して屈折率をレーザ光未照射よりも0.8%高いn=3.6288とした場合の透過率を示す。
【0046】
図7から明らかなように、2つの光学素子3A,3Bに軸方向にそれぞれ光を入射させると、1200nm〜2400nmに光を遮断するストップバンドが得られ、ストップバンド中に、屈折率n=3.6の光学素子3Bでは、1248nmに光を透過させるスペクトルが現れ、屈折率n=3.6144の光学素子3Aでは、1252nmに光を透過させるスペクトルが現れ、屈折率n=3.6288の光学素子3Aでは、1254nmに光を透過させるスペクトルが現れる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々な変形が可能である。
【0048】
上記実施の形態では、フェムト秒レーザ光を照射して屈折率を変化させたが、薄膜パターンに紫外線を照射して屈折率を変化させてもよい。紫外線照射によって屈折率が変化する材料として、例えば、Geドープ石英系ガラス、SiN等がある。
【0049】
また、薄膜パターンに不純物原子を拡散させて屈折率を変化させてもよい。例えば、Si等からなる薄膜パターンにリン、ボロン、砒素等のイオンを注入することで屈折率を変化させてもよい。また、イオン注入を用いずに、固相拡散や気相拡散を用いて元素を拡散することで、屈折率を変化させてもよい。また、多結晶Siに対して、Si原子をイオン注入して多結晶構造を断ち切って屈折率を変化させてもよい。
【0050】
また、薄膜パターンを酸化させて屈折率を変化させてもよい。酸化処理は、熱酸化処理等を用いることができる。酸化によって屈折率が変化する材料として、例えば、Si等がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光学デバイスを示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜パターン基板を示し、(a)は、薄膜パターン基板全体の平面図、(b)は、(a)の要部拡大図、(c)は、レーザ光照射後の(a)の要部拡大図である。
【図3】(a)〜(f)は、本発明の第1の実施の形態に係る光学デバイスの積層工程を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る光学デバイスおよび薄膜パターン基板を示し、(a)は光学デバイスの断面図、(b)は薄膜パターン基板の要部平面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る光学デバイスおよび薄膜パターン基板を示し、(a)は光学デバイスの断面図、(b)は薄膜パターン基板の要部平面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る光学デバイスおよび薄膜パターン基板を示し、(a)は光学デバイスの断面図、(b)は薄膜パターン基板の要部平面図である。
【図7】本発明の実施例に係る光学デバイスの透過率を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 光学デバイス
2 基板
3A〜3F 光学素子
30,30〜3016,31,31〜3116,32,32〜3212 薄膜パターン
100 薄膜パターン基板
101 基板
102 離型層
103 セル
110 ターゲット基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に目的とする光学素子の断面形状に対応した複数の薄膜パターンを形成する第1の工程と、
前記第1の基板上の前記複数の薄膜パターンのうち1つ以上の薄膜パターンの屈折率を変化させる第2の工程と、
前記第1の基板と第2の基板との接合、離間を繰り返すことにより、前記第1の基板上の前記複数の薄膜パターンを前記第2の基板上に積層、転写して前記光学素子を形成する第3の工程とを含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の基板と前記第2の基板との接合は、常温接合によることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程は、前記1つ以上の薄膜パターンにフェムト秒レーザ光を照射して屈折率を変化させることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程における前記フェムト秒レーザ光の照射は、照射パワーまたは照射回数を制御して行うことを特徴とする請求項3に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記第2の工程は、前記1つ以上の薄膜パターンに紫外線を照射して屈折率を変化させることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2の工程は、前記1つ以上の薄膜パターンにイオンを注入して屈折率を変化させることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程は、前記1つ以上の薄膜パターンを酸化させて屈折率を変化させることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
第1の基板上に目的とする第1および第2の光学素子の断面形状にそれぞれ対応した複数の第1の薄膜パターン、および複数の第2の薄膜パターンを形成する第1の工程と、
前記第1の基板上の前記複数の第1の薄膜パターンのうち1つ以上の第1の薄膜パターンの屈折率を変化させる第2の工程と、
前記第1の基板と第2の基板との接合、離間を繰り返すことにより、前記第1の基板上の前記複数の第1および第2の薄膜パターンを前記第2の基板上に積層、転写して光学特性の異なる前記第1および第2の光学素子を形成する第3の工程とを含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に剥離可能に形成され、薄膜パターン間で屈折率の異なる複数の薄膜パターンとを備えたことを特徴とする薄膜パターン基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−116633(P2008−116633A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298953(P2006−298953)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成13年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)常温接合を用いた3次元ナノ構造・システム形成技術の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】