説明

光学素子及びこれを用いた照明器具

【課題】光学素子において、表面に付着した状態で長期間放置された油脂を、光触媒効果のための光を必要とすることなく、ユーザが容易に除去できる。
【解決手段】光を透過又は反射させる光学素子1は、基材11の表面に撥油層12を備える。光学素子1は、撥油層12のオレイン酸接触角が50°以上であるので、油脂15をはじきやすくなり、油脂15が撥油層12にこびりつくことを防ぐと共に、酸素吸着剤14が空気中の酸素16を吸着するので付着した油脂15の酸化を抑制して固化を防止できる。そのため、油脂15が撥油層12に付着した状態で長期間放置されたとしても、ユーザは油脂15を容易に除去することができる。また、油脂15の除去に光を必要としないので、光学素子1は光の照射量を低下させることなく透過又は反射させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過又は反射制御する光学素子及びこれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
リビングやダイニング、キッチン等に設置された照明器具において、ユーザの気になる主な汚れは油汚れと綿ぼこりである。油汚れは、例えば、焼肉、鍋、お好み焼き等をキッチンや食卓で調理するときに発生する油煙が浮遊して照明器具に接触し、油脂が照明器具に付着することで起こる。綿ぼこりは、静電気で照明器具に付着しているのではなく、照明器具に付着した油脂の介在により強固に照明器具に付着する。そのため、照明器具に付着した油脂を除去すれば、油汚れの除去と同時に綿ぼこりを除去することができる。
【0003】
ところで、キッチン等に設置された照明器具を掃除する頻度は、大半のユーザが年に1回以下である。また、ユーザは、照明器具の光源を覆うカバーが取り外し難いことから、掃除がやり難いという不満を感じている。また、ユーザが行う掃除は、照明器具をハタキで叩いたり、照明器具に取り付けた状態でカバーを水拭きする等といった汚れの物理的除去を行うのが大半である。しかし、このように掃除を行っても照明器具の汚れ、特に、照明器具に付着した油脂を完全に除去することは困難である。また、拭き残した汚れの表面に新たな汚れが付きやすいので、照明器具は汚れやすくなる。
【0004】
照明器具の汚れの除去性を高めるために、界面活性剤やアルカリ性化合物を主成分とする洗剤が用いられる。洗剤が照明器具に対する汚れの付着力を弱めることで、ユーザは汚れを容易に拭き取ることができる。しかし、洗剤は、ユーザの手荒れや皮膚炎などを引き起こしたり、照明器具の表面にダメージを与えたりする。
【0005】
そこで、光源を覆う透光性のカバーを有し、光源に対向している側と反対側のカバーの表面に酸化チタンが被覆された照明器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この照明器具の酸化チタンは、光源から照射された紫外線を吸収することによって、光触媒効果を発現させる。この光触媒効果によりカバーの表面が親水性状態となるので、ユーザはカバーに付着した油汚れを容易に除去できる。しかし、カバーを透過してカバー表面の酸化チタンにまで到達する紫外線量はわずかであるために、十分な光触媒効果を得ることができず、照明器具の汚れの除去性が低い。また、この照明器具は、紫外線波長を含まない光を照射する白熱灯やLED等が光源に用いられた場合、光触媒効果を発現させることができない。
【0006】
また、光源を覆う透光性のカバーを有し、光源に対向している側と反対側のカバーの表面に可視光反応型光触媒が被覆された照明器具が知られている(例えば、特許文献2参照)。この照明器具の可視光反応型光触媒は、光源から照射された可視光を吸収することによって、光触媒効果を発現させる。この光触媒効果により浮遊する有機物を吸着し分解するので、ユーザはカバーに付着した油汚れを容易に除去できる。しかし、カバーが可視光を吸収してしまうので、照明器具から照射される光の照射量の低下を引き起こす。
【0007】
また、図6(a)に示されるように、基材111の表面に撥油層112を備え、光を透過させる光学素子101が知られている(例えば、特許文献3参照)。光学素子101は、撥油層112が油脂15をはじきやすいので、油脂15が付着し難く、付着しても付着直後に拭き取れば容易に除去できる。しかし、油脂15は、撥油層112に付着した状態で長期間放置された場合、図6(b)に示されるように、空気中の酸素16を取り込んで酸化する。酸化した油脂15(灰色表示)は、分子量が増加して粘度が上昇し、固化してしまう。そのため、ユーザは、酸化した油脂15を光学素子101から除去することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−154227号公報
【特許文献2】特開2005−259389号公報
【特許文献3】特開平5−258336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、表面に付着した状態で長期間放置された油脂を、光触媒効果のための光を必要とすることなく、ユーザが容易に除去できる光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、基材の表面に撥油層を備え、光を透過又は反射させる光学素子において、前記撥油層は、酸素吸着剤を含むと共に、オレイン酸接触角が50°以上であるものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学素子において、前記酸素吸着剤は、アスコルビン酸及びその塩を主剤とするもの、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸エステル、サルコミン類のうちの少なくとも1つが選択されるものである。
【0012】
請求項3の発明は、照明器具であって、請求項1又は請求項2に記載の光学素子を用いて成るものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、撥油層のオレイン酸接触角が50°以上であるので、油脂をはじきやすくなり、油脂が撥油層にこびりつくことを防ぐと共に、酸素吸着剤が空気中の酸素を吸着するので、付着した油脂の酸化を抑制して固化を防止できる。そのため、油脂が撥油層に付着した状態で長期間放置されたとしても、ユーザは油脂を容易に除去することができる。また、油脂の除去に光を必要としないので、光の照射量を低下させることなく透過又は反射させることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、酸素吸着剤が空気中の酸素をより吸着するので、付着した油脂の酸化をより抑制できる。
【0015】
請求項3の発明によれば、上記のような効果が得られる照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学素子を用いて成る照明器具の側断面図。
【図2】同光学素子を部分拡大して示し、(a)は油脂が撥油層に付着したときの側断面図、(b)は酸素吸着剤が酸素を吸着したときの側断面図。
【図3】同光学素子に付着した油脂の粘度と経過時間の関係と、従来の光学素子に付着した油脂の粘度と経過時間の関係を示すグラフ。
【図4】同光学素子の変形例を用いて成る照明器具の分解図。
【図5】同光学素子や従来の光学素子に係る油汚れ拭き取り試験に使用する装置の側断面図。
【図6】従来の光学素子を部分拡大して示し、(a)は油脂が撥油層に付着したときの側断面図、(b)は油脂が酸素を取り込んだときの側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子1を用いて成る照明器具2の構成を示す。光学素子1は、本実施形態では照明器具2から照射される光を透過させるグローブ(カバー)であり、照明器具2の一構成要素を成す。照明器具2は、グローブとしての光学素子1と、光源3と、天井4に設置される器具本体5と、器具本体5に設けられて光源3を保持するホルダ6と、を備える。
【0018】
光源3は、例えば、キセノンランプ、蛍光灯、発光ダイオード(LED)、有機EL、水銀灯やメタルハライドランプ等の高輝度放電灯(HID)等が挙げられる。器具本体5は、光源3の点灯を制御するための点灯回路7と、光学素子1の周縁部8を係止し保持する係止部9と、を有する。
【0019】
図2は、光学素子1の詳細構成及び、油脂15が付着したときの状況を示す。光学素子1は、プラスチックやガラス等から形成される基材11と、基材11の表面に設けられる撥油層12と、を備える。撥油層12は、樹脂材料13と、樹脂材料13に添加される酸素吸着剤14と、を有し、撥油層12におけるオレイン酸接触角が50°以上とされている。
【0020】
光学素子1は、(1)撥油層12の材料を基材11に塗布して硬化させる、(2)共押出成形によって撥油層12と基材11を同時成形する、(3)予め塗布形成しておいた撥油層12を基材11へ転写させるのいずれかの方法によって形成される。また、光学素子1は、器具本体5に設置されているとき、光源3に対向する側と反対側の面に撥油層12が配置されるように形成される。
【0021】
樹脂材料13は、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フッ素アクリル樹脂、シリコーンアクリル樹脂、シリコーンアクリルとメラミンを含む樹脂、シリコーンアクリルとイソシアネートを含む樹脂、フッ素アクリルとメラミンを含む樹脂、フッ素アクリルとイソシアネートを含む樹脂である。
【0022】
酸素吸着剤14は、酸素を選択的に吸着する物質である。特に、アスコルビン酸及びその塩を主剤とするもの、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸エステル、サルコミン類のうちの少なくとも1つが酸素吸着剤14として選択されるとき、光学素子1は空気中の酸素16をより吸着するので、付着した油脂15の酸化をより抑制できる。
【0023】
上記のように構成された光学素子1の作用効果を次に説明する。図2(a)に示されるように、光学素子1は、調理などによって油煙が発生することで、油脂15が撥油層12に付着する。その後、図2(b)に示されるように、光学素子1は、酸素吸着剤14が光学素子1近傍の空気中の酸素16を吸着するので、付着した油脂15の酸化を抑制して固化を防止する。また、光学素子1は、撥油層12のオレイン酸接触角が50°以上であるので油脂15をはじきやすくなり、油脂15が撥油層12にこびりつくことを防ぐ。そのため、油脂15が撥油層12に付着した状態で長期間放置されたとしても、ユーザは油脂15を光学素子1から容易に除去することができる。また、油脂15の除去に可視光や紫外線などの光触媒効果のための光を必要としないので、光学素子1は光の照射量を低下させることなく透過させることができる。
【0024】
図3は、本実施形態の光学素子1に係る時間の経過に伴う油脂の粘度変化(点線)と、従来の光学素子に係る時間の経過に伴う油脂の粘度変化(実線)とを比較して示す。従来の光学素子に付着した油脂は、a−b−c曲線のように時間の経過と共に酸化反応が進行し、分子量が増加して粘度上昇が起こる。それに対して、本実施形態の光学素子1に付着した油脂は、a'−b'−c'曲線のように時間の経過と共に粘度上昇が起こる。なお、a'、b'、c'点における油脂の粘度の値は、対応するa、b、c点とそれぞれ同じ値である。
【0025】
油脂が一般的に家庭で使用される植物油である場合、a点が油脂の付着から1ヶ月、b点が油脂の付着から3ヶ月、c点が油脂の付着から6ヶ月の時間がおおよそ経過している。同様に、a’点が油脂の付着から6ヶ月、b’点が油脂の付着から12ヶ月、c’点が油脂の付着から18ヶ月の時間がおおよそ経過している。このように、本実施形態の光学素子1に付着した油脂は、酸素吸着剤14が油脂と酸素の会合を抑制することにより、従来の光学素子に付着した油脂に比べて酸化反応が3倍以上遅くなる。
【0026】
図4は、本実施形態の変形例に係る照明器具2を示す。光学素子1は、上記実施形態のような光源3から照射される光を透過させるためのグローブではなく、光源3から照射される光を反射させるための反射鏡であり、その他の構成については上記と同様である。この変形例に係る照明器具2は、光学素子1と、光学素子1が取り付けられる器具本体5と、器具本体5に設けられて光源3を保持するホルダ6と、を備える。反射鏡としての光学素子1は、基材11の材料が金属であり、器具本体5に設置されているとき、光源3に対向する側の面に撥油層12が配置されるように形成される。このような反射鏡としての光学素子1においても、上述のグローブとしての光学素子1と同等の作用効果が得られる。
【0027】
次に、上述した本実施形態の光学素子1における実施例1乃至実施例11、及び比較例1乃至比較例8について説明する(なお、光学素子1については図2を参照)。
【0028】
(実施例1)
撥油層12の樹脂材料13を商品名がフロロサーフFG−5040(株式会社フロロテクノロジー製)であるラッカー型側鎖フッ素アクリル樹脂(以下、樹脂材料Aという)とし、酸素吸着剤14をL−アスコルビン酸ステアリン酸エステルとし、100部の樹脂材料13に対して1部の酸素吸着剤14を添加する。基材11を商品名がアクリペットVH001(三菱レイヨン株式会社製)である厚さ2mmのPMMA板とし、これに酸素吸着剤14が添加された樹脂材料13を、エアスプレーを用いて5〜10μm程度の厚みで塗装した後、100℃で20分間乾燥させることで光学素子1を得た。
【0029】
(実施例2)
樹脂材料13を側鎖ジメチルシロキサンアクリルポリオールとイソシアネートを含む樹脂(以下、樹脂材料Bという)とした以外は、実施例1と同様にして光学素子1を得た。具体的には、樹脂材料Bは、商品名がZX−022(固形分46質量%、水酸基価120)(富士化成工業株式会社製)であるジメチルシロキサン基と架橋基として水酸基を有するアクリル樹脂100部に対して、商品名がTPA100(固形分100%)(旭化成ケミカルズ株式会社製)であるイソシアネート樹脂20部、酢酸エチル100部、酢酸ブチル100部、イソホロン30部を配合し、5分間攪拌混合したものを用いる。
【0030】
(実施例3)
酸素吸着剤14をジブチルヒドロキシトルエン(BHT)とし、100部の樹脂材料13に対して1部の酸素吸着剤14を添加した以外は、実施例2と同様にして光学素子1を得た。
【0031】
(実施例4)
酸素吸着剤14をジブチルヒドロキシアニソール(BHA)とし、100部の樹脂材料13に対して1部の酸素吸着剤14を添加した以外は、実施例2と同様にして光学素子1を得た。
【0032】
(実施例5)
基材11を商品名がBK7(株式会社住田光学ガラス製)である厚さ2mmのホウ珪酸ガラスとし、樹脂材料13を側鎖ジメチルシロキサンアクリルポリオールとメラミンを含む樹脂(以下、樹脂材料Cという)とした以外は、実施例3と同様にして光学素子1を得た。具体的には、樹脂材料Cは、商品名がZX−022(固形分46質量%、水酸基価120)(富士化成工業株式会社製)であるジメチルシロキサン基と架橋基として水酸基を有するアクリル樹脂100部に対して、商品名がユーバン122(固形分60%)(三井化学株式会社製)であるメラミン樹脂20部、メラミン樹脂の触媒として商品名がキャタリスト6000(三井化学株式会社製)であるドデシルスルホン酸3部、酢酸エチル70部、酢酸ブチル70部、n−ブタノール70部、ダイアセトンアルコール30部を配合し、5分間攪拌混合したものを用いる。
【0033】
(実施例6)
樹脂材料13を側鎖フッ素アクリルポリオールとイソシアネートを含む樹脂(以下、樹脂材料Dという)とし、酸素吸着剤14をBHTとし、100部の樹脂材料13に対して1部の酸素吸着剤14を添加した以外は、実施例5と同様にして光学素子1を得た。具体的には、樹脂材料Dは、商品名がKD−220(固形分30質量%、水酸基価60)(関東電化工業株式会社製)であるパーフルオロアルキル基と架橋基として水酸基を有するアクリル樹脂100部に対して、商品名がTPA100(固形分100%)(旭化成ケミカルズ株式会社製)であるイソシアネート樹脂7部、酢酸エチル100部、酢酸ブチル100部、イソホロンを30部を配合し、5分間攪拌混合したものを用いる。
【0034】
(実施例7)
樹脂材料13を側鎖フッ素アクリルポリオールとメラミンを含む樹脂(以下、樹脂材料Eという)とし、酸素吸着剤14を没食子酸プロピルとし、100部の樹脂材料13に対して0.1部の酸素吸着剤14を添加した以外は、実施例5と同様にして光学素子1を得た。具体的には、樹脂材料Eは、商品名がKD−220(固形分30質量%、水酸基価60)(東電化工業株式会社製)であるパーフルオロアルキル基と架橋基として水酸基を有するアクリル樹脂100部、商品名がユーバン122(固形分60%)(三井化学株式会社製)であるメラミン樹脂15部、メラミン樹脂の触媒として商品名がキャタリスト6000(三井化学株式会社製)であるドデシルスルホン酸3部、酢酸エチル40部、酢酸ブチル40部、n−ブタノール40部、ダイアセトンアルコール20部を配合し、5分間攪拌混合したものを用いる。
【0035】
(実施例8)
基材11を商品名がA370(住友軽金属工業株式会社製)である厚さ0.8mmの高光沢Al板とした以外は、実施例1と同様にして光学素子1を得た。
【0036】
(実施例9)
樹脂材料13を樹脂材料Bとし、酸素吸着剤14をBHTとし、100部の樹脂材料13に対して1部の酸素吸着剤14を添加した以外は、実施例8と同様にして光学素子1を得た。
【0037】
(実施例10)
樹脂材料13を樹脂材料Cとし、酸素吸着剤14をBHAとし、100部の樹脂材料13に対して1部の酸素吸着剤14を添加した以外は、実施例8と同様にして光学素子1を得た。
【0038】
(実施例11)
樹脂材料13を樹脂材料Dとし、酸素吸着剤14を没食子酸プロピルとし、100部の樹脂材料13に対して0.1部の酸素吸着剤14を添加した以外は、実施例8と同様にして光学素子1を得た。
【0039】
(比較例1)
撥油層の樹脂材料と酸素吸着剤を有しない以外は、実施例1と同様にして光学素子を得た。
【0040】
(比較例2)
基材をホウ珪酸ガラスとしたこと以外は、比較例1と同様にして光学素子を得た。
【0041】
(比較例3)
基材を高光沢Al板としたこと以外は、比較例1と同様にして光学素子を得た。
【0042】
(比較例4)
撥油層の酸素吸着剤を有しない以外は、実施例1と同様にして光学素子を得た。
【0043】
(比較例5)
樹脂材料を樹脂材料Bとした以外は、比較例4と同様にして光学素子を得た。
【0044】
(比較例6)
樹脂材料を樹脂材料Cとした以外は、比較例4と同様にして光学素子を得た。
【0045】
(比較例7)
樹脂材料を樹脂材料Dとした以外は、比較例4と同様にして光学素子を得た。
【0046】
(比較例8)
樹脂材料を樹脂材料Eとした以外は、比較例4と同様にして光学素子を得た。
【0047】
<オレイン酸接触角の測定>
上記のように作製した実施例1乃至実施例11の光学素子1と比較例1乃至比較例8の光学素子を、温度23℃、相対湿度50%の条件下で、測定面にオレイン酸の油滴を20μl滴下し、自動接触角計CA−W(協和界面化学株式会社製)を用いて30秒後の接触角を測定した。なお、測定面は、撥油層を有する光学素子の場合、光学素子の撥油層が設けられている側の面とし、撥油層を有しない光学素子の場合、光学素子のどちらか一方の面とした。
【0048】
<油汚れ拭取り試験>
試験を行うための構成を図5に示す。作製した実施例1乃至実施例11に係る光学素子1を金網32に取り付け、その金網32を排気ダクト33が設けられたレンジフード34の開口部近傍に取り付ける。光学素子1の真下にはホットプレート35を設置し、食用油である油脂15をホットプレート35で加熱して蒸発させる。蒸発した油脂(点線の矢印)は、油煙となって、その一部が光学素子1に付着し、その後、レンジフード34を経由して排気ダクト33から排気される。この状態で30分間放置して、光学素子1に油脂15を付着させる。
【0049】
次に、金網32から取り外した光学素子1を60℃に設定した熱風循環槽中で168時間放置した後、油汚れの拭き取りを行った。油汚れの拭き取りは、綿布を用いて行い、拭き取り面積を5cm、拭き取り荷重を100g/cm、拭き取り速度を2cm/s、往復回数を10回という条件で行った。油汚れ拭取り性の判定は、油汚れを拭き残しなく拭き取れる場合を良好とし、拭き筋が残る場合をやや不良とし、拭き取れない場合を不良とした。比較例1乃至比較例8に係る光学素子についても、同様にして油汚れ拭取り試験を行う。各光学素子に係る判定結果及びオレイン酸接触角を下記表1に示す。なお、上記「良好」、「やや不良」、「不良」の各判定を順に○、△、×とした。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1乃至実施例11の光学素子1と比較例1乃至比較例8の光学素子に油汚れ拭取り試験を施した結果から明らかなように、本実施形態の光学素子1によれば、該光学素子1に付着した状態で長期間放置された油脂15であっても容易に除去することができる。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、光学素子は片面に撥油層が設けられたものを示したが、両面に撥油層が設けられたものであっても構わない。
【符号の説明】
【0053】
1 光学素子
2 照明器具
11 基材
12 撥油層
14 酸素吸着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に撥油層を備え、光を透過又は反射させる光学素子において、
前記撥油層は、酸素吸着剤を含むと共に、オレイン酸接触角が50°以上であることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記酸素吸着剤は、アスコルビン酸及びその塩を主剤とするもの、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸エステル、サルコミン類のうちの少なくとも1つが選択されることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光学素子を用いて成る照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−23175(P2011−23175A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166020(P2009−166020)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】