説明

光学装置

【課題】対象パターンの適切な撮像を低コストで実現することができるとともに小型化を図ることができる光学装置を提供すること。
【解決手段】1つの光源2から出射された光Lを、コリメーションレンズ3、回折光学素子4および計算機合成ホログラム5によって各第1の光L1L、L1Rごとの各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROに分割し、これら各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROによって合焦状態の有無の判別が可能なガイドパターンを形成すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に係り、特に、対象パターンの情報を認識するための対象パターンの撮像を支援するのに好適な光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一次元コードや二次元コード等のそれに含まれる情報を認識する対象となるパターン(以下、対象パターンと称する)を撮像によって読み取り、読み取られた対象パターンの情報を認識するバーコードスキャナ等の情報認識装置が採用されていた。
【0003】
この種の情報認識装置においては、対象パターンの情報を確実に認識するために、対象パターンに対する合焦がなされた状態で対象パターンを適切に撮像することが重要とされていた。
【0004】
このような対象パターンの情報の読み取りを支援するための技術として、これまでにも、例えば、特許文献1に示すような従来技術が提案されていた。
【0005】
すなわち、特許文献1においては、焦点距離での視野の決定の容易化を最小の費用で実現するといった目的を達成するために、シンボルが形成された面に向かって、この面がシンボルを読み取るのに最適な位置となった場合にその面上に規定の形状を呈した状態で結像されるガイド光を出射するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−520249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1においては、その目的に反してガイド光を出射するために複数の光源を搭載していたため、光源に要するコストが高くなるばかりでなく、各光源をある程度間隔を設けて配置する必要上、装置の小型化が困難であるといった問題点を有していた。なお、特許文献1においては、光源の数を特許文献1に記載されている数以上に削減するための有効な手段は何等示唆されていない。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、対象パターンの適切な撮像を低コストで実現することができるとともに小型化を図ることができる光学装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る光学装置は、文字、数字または番号もしくはこれらの配列からなる所定の情報を有する対象パターンの前記情報を認識するために撮像装置によって前記対象パターンを撮像する際に、前記対象パターンが形成されたパターン形成面上に、このパターン形成面に対する前記撮像装置の光軸方向における位置を決定するための光の投影パターンとして、前記撮像装置が前記パターン形成面に対して合焦状態となっている場合にのみ前記パターン形成面上に正規の形状を呈した状態で投影されるガイドパターンを投影する光学装置であって、光を出射する1つの光源と、この光源から出射された光をコリメートするコリメーションレンズと、このコリメーションレンズによってコリメートされた光を互いに異なる方向に向かう複数の第1の光に分割する回折光学素子と、前記複数の第1の光ごとに、各第1の光を複数の第2の光にそれぞれ分割し、これら各第1の光ごとの各第2の光を、互いに異なる出射方向であって、前記合焦状態においてのみ前記各第1の光ごとの各第2の光のそれぞれが他の前記第1の光から変換された各第2の光のそれぞれと互いに重なり合った状態で前記パターン形成面上に投影されるような出射方向に出射する計算機合成ホログラムとを備え、前記各第1の光ごとの各第2の光は、前記計算機合成ホログラムからの出射後に前記ガイドパターンに対応する所定の形状を呈するように形成され、前記ガイドパターンは、前記各第1の光ごとの各第2の光が前記パターン形成面上に投影されてなる点にある。
【0010】
そして、この請求項1に係る発明によれば、1つの光源から出射された光を、コリメーションレンズ、回折光学素子および計算機合成ホログラムによって各第1の光ごとの各第2の光に分割することができ、これら各第2の光をパターン形成面上に投影させることによって合焦状態の有無の判別が可能なガイドパターンを形成することができるので、光源の数を従来よりも削減しつつ対象パターンの適切な撮像を実現することができる。
【0011】
また、請求項2に係る光学装置の特徴は、請求項1において、更に、前記ガイドパターンは、前記合焦状態においては、互いに離間された所定数のパターン構成部からなる投影パターンとして投影され、非合焦状態においては、互いに離間された前記所定数よりも多数のパターン構成部からなる投影パターンとして投影される点にある。
【0012】
そして、この請求項2に係る発明によれば、ガイドパターンを構成するパターン構成部の数に基づいて、合焦状態の有無を更に簡便かつ迅速に判別することができる。
【0013】
さらに、請求項3に係る光学装置の特徴は、請求項1または2において、更に、前記各第1の光ごとの各第2の光の形状および出射方向は、前記計算機合成ホログラムから前記パターン形成面までの距離が、前記合焦状態に相当する最適距離の場合と、前記最適距離よりも短い距離の場合と、前記最適距離よりも長い距離の場合とで、前記ガイドパターンの形状を互いに異ならせることが可能な形状とされている点にある。
【0014】
そして、この請求項3に係る発明によれば、合焦状態の有無だけでなく、計算機合成ホログラムからパターン形成面までの距離についての最適距離に対する大小関係をも判別することができるので、非合焦状態の場合に、撮像装置からパターン形成面までの距離を拡大すればよいのかあるいは縮小すればよいのかを容易に決定することができる。
【0015】
さらにまた、請求項4に係る光学装置の特徴は、請求項1〜3のいずれか1項において、更に、前記各第1の光ごとの各第2の光が呈する前記所定の形状は、その少なくとも一部が所定の線巾を有する線形状とされている点にある。
【0016】
そして、この請求項4に係る発明によれば、ガイドパターンの形状を、正規の形状からのずれを認識し易い形状にすることができる。
【0017】
また、請求項5に係る光学装置の特徴は、請求項4において、更に、前記線巾が、前記合焦状態に対応する前記計算機合成ホログラムから前記パターン形成面までの距離の範囲に応じた値に設定されている点にある。
【0018】
そして、この請求項5に係る発明によれば、正規の形状のガイドパターンが投影された時点において合焦状態を確実に形成することができる。
【0019】
さらに、請求項6に係る光学装置の特徴は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記回折光学素子は、前記コリメーションレンズによってコリメートされた光を2つの前記第1の光に分割する点にある。
【0020】
そして、この請求項6に係る発明によれば、回折光学素子の形状を簡素化することができ、コストを更に削減することができる。
【0021】
さらにまた、請求項7に係る光学装置の特徴は、請求項6において、更に、前記計算機合成ホログラムは、前記2つの第1の光を、それぞれ2つずつの前記第2の光に分割する点にある。
【0022】
そして、この請求項7に係る発明によれば、計算機合成ホログラムの形状を簡素化することができ、コストを更に削減することができる。
【0023】
また、請求項8に係る光学装置の特徴は、請求項1〜7のいずれか1項において、前記回折光学素子は、計算機合成ホログラムとされている点にある。
【0024】
そして、この請求項8に係る発明によれば、第1の光の電界強度分布を最適化することができ、ひいては、合焦状態の有無の判定に最適なガイドパターンを得ることができる。
【0025】
さらに、請求項9に係る光学装置の特徴は、請求項1〜8のいずれか1項において、前記ガイドパターンを撮像する撮像素子と、この撮像素子によって撮像された前記ガイドパターンに基づいて、前記パターン形成面に対する前記撮像装置の光軸方向における位置の適否を判定し、判定結果を出力する判定装置とを備えた点にある。
【0026】
そして、この請求項9に係る発明によれば、判定装置の判定結果に基づいて、パターン形成面に対する撮像装置の光軸方向における位置を手動または自動で調整することができる。
【0027】
さらにまた、請求項10に係る撮像装置の特徴は、請求項1〜9のいずれか1項において、前記対象パターンは、一次元コードまたは二次元コードとされている点にある。
【0028】
そして、この請求項10に係る発明によれば、一次元コードまたは二次元コードを適切に撮像することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、対象パターンの適切な撮像を低コストで実現することができるとともに小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る光学装置の実施形態を示す構成図
【図2】本発明に係る光学装置の実施形態を示す光路図
【図3】本発明に係る光学装置の実施形態において、光の伝搬式を説明するための第1の説明図
【図4】本発明に係る光学装置の実施形態において、光の伝搬式を説明するための第2の説明図
【図5】本発明に係る光学装置の実施形態において、計算機合成ホログラムの具体的な設計方法を示す工程図
【図6】本発明に係る光学装置の実施形態において、第2の計算機合成ホログラムからパターン形成面までの理想的な距離を第2の光の出射方向とともに示す模式図
【図7】本発明に係る光学装置の実施形態において、左右の第1の光の電界強度分布を示す図
【図8】本発明に係る光学装置の実施形態において、左外側および左内側の第2の光が呈する形状を示す図
【図9】本発明に係る光学装置の実施形態において、右外側および右内側の第2の光が呈する形状を示す図
【図10】本発明に係る光学装置の実施形態において、正規の形状のガイドパターンの一例を示す模式図
【図11】本発明に係る光学装置の実施形態において、非正規形状のガイドパターンの一例を示す模式図
【図12】本発明に係る光学装置の実施形態において、図11とは異なる非正規形状のガイドパターンの一例を示す模式図
【図13】本発明の実施例において、第1の計算機合成ホログラムの位相分布解を示す平面図
【図14】図13の位相分布解を有する第1の計算機合成ホログラムによって実現される左右の第1の光の電界強度分布を示す図
【図15】本発明の実施例において、第2の計算機合成ホログラムにおける左側の光学機能部の設計のために取り出された左側の第1の光の電界強度分布を示す図
【図16】本発明の実施例において、第1の計算機合成ホログラムに入射した時点のレーザ光源からの入射光の電界強度分布を示す図
【図17】本発明の実施例において、第2の計算機合成ホログラムによるビーム形状の変換機能を示す概念図
【図18】本発明の実施例において、左側の光学機能部の位相分布解を示す平面図
【図19】図18の位相分布解を有する左側の光学機能部によって実現される第2の光の電界強度分布を示す図
【図20】本発明の実施例において、第2の計算機合成ホログラムにおける右側の光学機能部の設計のために取り出された右側の第1の光の電界強度分布を示す図
【図21】本発明の実施例において、右側の光学機能部の位相分布解を示す平面図
【図22】図21の位相分布解を有する左側の光学機能部によって実現される第2の光の電界強度分布を示す図
【図23】本発明に係る光学装置の実施形態において、第2の計算機合成ホログラムからパターン形成面までの距離と第2の光のパターン形成面上への結像位置との関係を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る光学装置の実施形態について、図1〜図23を参照して説明する。
【0032】
本実施形態における光学装置は、文字、数字または番号もしくはこれらの配列からなる所定の情報を有する対象パターンの情報を認識可能とされた情報認識装置に搭載されており、この情報認識装置による対象パターンの情報の認識に適用されるようになっている。具体的には、本実施形態の光学装置は、この光学装置とともに情報認識装置に搭載された撮像装置が、対象パターンの情報の認識のために対象パターンを撮像する(読み取る)際に、この対象パターンの撮像を支援するようになっている。なお、情報認識装置としては、例えば、対象パターンとしての一次元コードや二次元コード等の情報を認識するバーコードスキャナが挙げられる。バーコードスキャナは、いわゆるハンディタイプのものであってもよい。
【0033】
そして、図1および図2は、このような情報認識装置に適用される本実施形態の光学装置1の具体的な構成を示したものである。
【0034】
本実施形態の光学装置1は、対象パターンの情報の認識のために撮像装置が対象パターンを撮像する際に、対象パターンが所定の範囲に亘って形成されたパターン形成面上に、ガイドパターンを投影するようになっている。ただし、ガイドパターンとは、パターン形成面に対する撮像装置の光軸方向における位置の決定に用いられるパターン形成面上に投影される光の投影パターンであって、撮像装置がパターン形成面に対して合焦状態となっている場合にのみ、パターン形成面上に正規の形状を呈した状態で投影される投影パターンのことをいう。
【0035】
ここで、パターン形成面としては、バーコードが印刷された印刷面やバーコードが印刷されたシールが貼り付けられた貼り付け面(例えば、商品の包装)等の種々のパターン形成面を想定することができる。また、合焦状態とは、撮像装置の物体側の焦点がパターン形成面上の一点に完全に一致している状態または一致しているとみなすことができる状態のことをいう。この合焦状態とされる場合の撮像装置の物体側の焦点とパターン形成面との位置および距離の関係については、コンセプトに応じた好適な関係を設定すればよい。したがって、本実施形態において、合焦状態に相当するパターン形成面に対する撮像装置の光軸方向における位置は、唯一の固定された位置ではなく、一定の変動幅を持った位置となっている。また、詳細は後述するが、ガイドパターンの正規の形状についても、撮像装置とパターン形成面との距離によって線巾が変わるような一定の変動幅を持った形状となっている。
【0036】
図1および図2に示すように、本実施形態の光学装置1は、光源としてのレーザ光源2を有しており、このレーザ光源2は、前方(図1、図2における上方)に向かって所定の広がり角度を持ったレーザ光L(図2参照)を出射するようになっている。このレーザ光源2は、発光ダイオード(LED)または半導体レーザ(LD)であってもよい。
【0037】
また、図1および図2に示すように、レーザ光源2に対するレーザ光Lの出射側の位置には、平凸のコリメーションレンズ3が、レーザ光源2に対して所定の間隔を隔てるようにして配置されている。このコリメーションレンズ3には、レーザ光源2から出射されたレーザ光Lが入射するようになっている。そして、コリメーションレンズ3は、入射したレーザ光Lをコリメート(平行化)して前方に出射するようになっている。
【0038】
さらに、図1および図2に示すように、コリメーションレンズ3に対するレーザ光Lの出射側の位置には、回折光学素子としての第1の計算機合成ホログラム4が、コリメーションレンズ3に対して所定の間隔を隔てるようにしてコリメーションレンズ3の光軸に直交するように配置されている。この第1の計算機合成ホログラム4には、コリメーションレンズ3によってコリメートされたレーザ光Lが、所定のモードフィールド径を有するガウシアンビームとして入射するようになっている。そして、第1の計算機合成ホログラム4は、入射したレーザ光Lを、回折作用によって互いに異なる二方向に向かう2つの第1の光L1L、L1R(図2参照)にほぼ均等な光量で分割するようになっている。このとき、2つの第1の光L1L、L1Rは、図2において左右にほぼ等しい回折角度を有した状態で第1の計算機合成ホログラム4から出射される。以下、必要に応じて、第1の計算機合成ホログラム4から左前方(図2における左上方)に進行する一方の第1の光L1Lを左側の第1の光L1Lと称し、第1の計算機合成ホログラム4から右前方(図2における右上方)に進行する他方の第1の光L1Rを右側の第1の光L1Rと称する。
【0039】
第1の計算機合成ホログラム4から出射された2つの第1の光L1L、L1Rは、第1の計算機合成ホログラム4から或る特定の距離だけ進行した位置において、第1の計算機合成ホログラム4に入射した時点のレーザ光Lとほぼ同じモードフィールド径を有するガウシアンビームとなる。
【0040】
このような2つの第1の光L1L、L1Rは、第1の計算機合成ホログラム4に設定された最適化された位相分布によって実現されている。
【0041】
ここで、一般に、計算機合成ホログラムという素子は、コヒーレントな光源の光を、回折現象を用いることによって最初に目標として設定した特定の電界強度分布の光に変換する素子として知られている。このような計算機合成ホログラムは、通常は、反復フーリエ法(IFTA:Iterative Fourier Transform Algorithm)と呼ばれる手法で設計することが可能である。反復フーリエ法とは、計算機合成ホログラムの最適計算を行うアルゴリズムの総称であり、具体的にはGerchBerg-Saxton法、Direct Binary Search法または遺伝子アルゴリズムなどのアルゴリズムが用いられることが多い。
【0042】
一方で、波動光学的な領域においては、光の伝播も光線追跡とは異なり、角スペクトル伝搬法、フーリエ伝搬法、フレネル伝搬法またはレーリー・ゾンマーフェルト法などを用いて計算できることが知られている。どの計算法を用いるのが適当かは計算容量や光の伝搬距離に依存することになる。
【0043】
なお、光の伝搬に関する式としては、以下に述べる(1)〜(3)の各式が知られている。すなわち、まず、図3に示すような開口面Sを仮定するとともに、この開口面Sの中の一点P(x0、y0、0)を仮定する。また、この開口面Sからz離れた距離のxyz平面上に点Q(x、y、z)を仮定する。そして、点Pを通る光が点Qに作る光の強度は、ホイヘンス−フレネルの式から(1/jλ)・E(x0,y0)exp(−jkr/r)となる。但し、r=z〔1+{(xi−x0)/z}2+{(yi−y0)/z}20.5≒z+(1/2z)・〔(xi−x0)2 + (yi−y0)2]−(1/8z)・〔(x−x0+(y-y022=z+(x+y)/2z−(x+y0)/z+(x+y)/2z−・・・・である。そして、開口面S全体を通る光が点Qに作る光の強度E(xi,yi)は、点Pを通る光が点Qに作る光の強度を開口面Sの全領域にわたって積分すればよい。この積分の結果は次の(1)式のようになる。
【0044】
E(xi,yi)=(1/jλ)・∬E(x0,y0)exp(-jkr/r)dx0dy0 (1)
【0045】
ただし、伝搬距離Z<D/λ(D:開口径、λ:波長)の領域においては、フレネル伝搬式と称される次の(2)式が成立する。
【0046】
E(xi,yi)=exp(jkz)/(jkz)exp(jk(xi2+yi2/(2z))・∬E(x0,y0)exp(jπ/λz(x02+y02)exp((−j2π/λz)x0xi+y0yi) dx0dy0 (2)
【0047】
一方で、伝搬距離Z>D/λの領域においては、フーリエ伝搬式と称される次の(3)式が成立する。
【0048】
E(xi,yi)=(exp(jkz)/(jλz))exp(jk/2z )(xi2+yi2)∬E(x0,y0)exp(−2πj/λz)(x0xi+y0yi)dx0dy0 (3)
【0049】
以上のフーリエ光学系に関する定式化はGoodman著のIntroduction to Fourier Optics (Roberts & Co., 第3版)に詳しく記述されている。
【0050】
次に、計算機合成ホログラムの具体的な設計方法の1つとしての反復フーリエ法について述べる。
【0051】
まず、一般に、レーザーなどのコヒーレントな光源においては、特に横モードがシングルモードである場合に、シングルモードガウシアンと称される次の(4)式に示す電界強度分布が形成されることが知られている。
【0052】
E(x,y)=exp(−(x2+y2/w0))2 (4)
【0053】
そして、このようなガウシアンの直後に位相分布のみからなる回折光学素子が置かれたと仮定する。さらに、その光源から距離f離れた距離に像面があると仮定し、なおかつ像面において目標とする電界強度分布が実現されると仮定する。この様子を図4に示す。図4においては、入射光源の存在する物体面での光の電界強度分布がu(x、y)とされている。ただし、uは、一般に複素数で表されるようになっている。
【0054】
さらに、図4の回折光学素子の位相をφ(x、y)とすると、この回折光学素子を出た直後の光の電界はu(x、y)=|u(x,y)|・exp(φ(x,y))|と表される。ただし、u(x、y)の電界強度は、回折光学素子に入射するレーザ光の振幅分布Iin(x、y)の平方根となる。また、図4においては、回折光学素子の物体側の面(以下、DOE面と称する)が光源とz軸方向における同じ位置に置かれていると仮定している。そして、回折光学素子を出た光は、光源から距離f離れた像面に、フーリエ変換された光として結像されることになる。この像面における光(フーリエ変換された光)の強度分布Uは、U(x,y)=|U(u,v)|・exp(j・φ(u,v))と表すことができる。
【0055】
さらにまた、像面(フーリエ面)における目標とする電界強度分布をIobj(u、v)と仮定する。
【0056】
ここで、反復フーリエ法における繰り返し計算(反復計算)の中で、U(u,v)は、最終的にはIobj(u、v)に収束するはずである。ただし、u(x、y)とU(u、v)は、お互いにフーリエ変換の関係になる。
【0057】
そして、以上のような仮定を前提として、反復フーリエ法による反復計算によって回折光学素子の位相φ(x、y)の最適な最終解を求める。
【0058】
この反復フーリエ法による反復計算のフローチャートは図5に示す通りとなる。
【0059】
すなわち、図5に示すように、反復計算のアルゴリズムは、初期位相φ(x,y)から出発する(図5のSTEP1参照)。このとき、入射光の設定からRe(u(x,y))=√Iin(x,y)となる。ただし、Reは、関数の実数成分である。さらに、Iin(x,y)は、回折光学素子に入射するレーザ光の強度分布である。
【0060】
一方で、回折光学素子の透過直後においては、U(x、y)=|(U(x,y))|・exp(φ(x,y))となる。ただし、一般に、U(x、y)は、複素数の関数となる。
【0061】
次いで、u(x,y)にフーリエ変換を行うことにより、伝搬後の像面が得られてU(u,v)・exp(jφ(u,v))となる(図5のSTEP2参照)。
【0062】
次いで、(u,v)のフーリエ面において、U(u、v)を、目標とする電界強度分布U‘(u,v)=√Iobj(u,v)で置換する(図5のSTEP3参照)。
【0063】
この後で、メリット関数で目標とする像面にどの程度近ずいたかの評価を行った後に、フーリエ逆変換を行うことにより、DOE面での関数u(x,y)・exp(jφ(x、y))が求まることになる(図5のSTEP4参照)。
【0064】
次いで、DOE面においても、u(x、y)・exp(jφ(x,y))のu(x、y)をu’(x、y)=√Iin(x、y)で置換する(図5のSTEP5参照)。この計算ループにおいては、DOE面と像面の両方において置換による束縛条件を課すことになる。
【0065】
そして、このような繰り返し計算を行い、DOE面上のU‘(u、v)が目標とする電界強度分布を示す関数√Iobj(u,v)に十分に近づいたと判断した場合には、計算を終了する。
【0066】
ここで、√Iobj(u,v)とU’(u、v)とがどの程度近づいたかを評価するために、一般には、これら2つの関数の誤差値を表す評価関数を設定し、設定された評価関数によって表される誤差値が予め設定された設定値より小さくなった場合に計算を終了することになる。
【0067】
この計算にあたって、2つの関数の誤差が依然として大きい場合には、さらに、U‘(x、y)・exp(jφ(u,v))に逆フーリエ変換を行って再びu(x,y)・exp(jφ(x,y))を求めた後に、強度分布を表すu(x,y)を入射光の強度√Iinで置き換える。このようにして繰り返し計算を連続的に行う。
【0068】
そして、図5に示すようなループを何十回と回転させることにより、目標とする位相分布φ(x、y)を求めることができる(STEP6)。
【0069】
この図5に示すようなアルゴリズムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムとして知られている。このようなGerchberg-Saxton アルゴリズムはOSAが発行するApplied Optics の July 1989 Vol 28.NO13. p2641-2650に記述されている。
【0070】
以上述べたように、像面において目標とする電界強度分布を実現することができる最適な位相分布解は、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムによって求めることができる。このような位相分布解が具現化された計算機合成ホログラムを実際に製造する方法としては、例えば、薄い透光性の基板に、屈折率が場所によって局所的に変化するような屈折率分布を形成する方法や、透明基板の表面に凹凸形状を形成する方法等が知られている。
【0071】
ここで、前述した最適な位相分布解を透明基板の表面に凹凸形状を形成することによって実現するタイプの計算機合成ホログラムでは、次の(5)式で表される関係式が成立する。
【0072】
h=(λ/2π)×ψ/(n−1) (5)
【0073】
但し、(5)式におけるhは、計算機合成ホログラムの凹凸形状における凹部の基準平面からの物理深さ〔μm〕である。また、(5)式におけるλは、計算機合成ホログラムを通る光の波長〔μm〕である。さらに、(5)式におけるψは、計算機合成ホログラムの位相〔rad〕である。さらにまた、(5)式におけるnは、計算機合成ホログラムを構成する基板媒質の屈折率である。
【0074】
そして、このような計算機合成ホログラムを製造する具体的な方法としては、石英基板の表面にフォトレジストまたは電子ビーム露光用レジストを塗布した上で、i線のステッパーなどのUV光を用いた露光装置によってマスク露光を行う方法や、EB描画装置によって露光した後に現像を行うことにより、レジストからなる特定のパターンを形成する方法等がある。ここで、石英製の計算機合成ホログラムは、それ自身も製品として使用することもできるが、この作製されたホログラムをマスターとして、ナノインプリントやホットエンボシングプロセスによる高速な転写技術により、樹脂基板上へも大量に複製を作製することもできる。また、凹凸形状(ミクロ構造)を最初に形成する基板としては、前述のように石英やSiを用いることが一般的であるが、これら以外にも、透明な誘電体材質であればガラスやセラミックスなどを使用してもよい。
【0075】
ところで、計算から得られる位相解としては、連続的に0〜2πの範囲内でなだらかに位相が変化しているような曲面からなるアナログ解の位相解が一般的であるが、このような位相解を実現するのは製造上困難である。このため、実際には、計算によって得られた位相解を、xy平面で正方形のピクセルに分解しつつz方向の高さも8段、16段といった2の段数で代表して置換した形状近似がしばしば行われる。このようなピクセルで構成されるホログラム(計算機合成ホログラム)は、アナログ型ホログラムと対比してデジタル型のホログラムと呼ばれている。このようなデジタル型の計算機合成ホログラムは、リソグラフィーやドライエッチングを用いた半導体製造プロセスを用いて比較的容易な製造が可能であるといったメリットを有している。
【0076】
また、一般に、回折光学素子は、使用する光の波長をλ〔μm〕、回折光学素子の周期サイズをΛ〔μm〕、回折次数をn、回折角度をθ〔°〕とすると、次式の法則にしたがう。
【0077】
Λ・sinθ=n・λ (6)
【0078】
なお、(6)式において、特に、次数が±1次に限定すればΛ・sinθ=λとさらに簡単な式になる。
【0079】
このような(6)式は、計算機合成ホログラムにも適用することができ、その場合には、Λとして、前述したデジタル型の計算機合成ホログラムのピクセルのサイズを代入し、θとして、計算機合成ホログラムからの光の出射角度を代入すればよい。
【0080】
そして、以上のようにして設計された第1の計算機合成ホログラム4を備えた上で、さらに、光学装置1は、図1および図2に示すように、第1の計算機合成ホログラム4に対する第1の光L1L、L1Rの出射側の位置に、第1の計算機合成ホログラム4に対して所定の間隔を隔てて平行に配置された第2の計算機合成ホログラム5を有している。
【0081】
図1に示すように、第2の計算機合成ホログラム5は、透明基板5aと、この透明基板5aに図1における横方向に互いに間隔を隔てるようにして形成された左右一対の光学機能部5b,5cとを有している。なお、光学機能部5b,5cは、第2の計算機合成ホログラム5のうちの後述する光学的な機能(光分割機能およびビームシェーパ機能)を発揮する部位である。
【0082】
ここで、2つの第1の光L1L、L1Rが第1の計算機合成ホログラム4から或る特定の距離だけ進行した位置においてホログラム4に入射した時点のレーザ光Lとほぼ同じモードフィールド径を有するガウシアンビームとなることについては、前述した通りである。
【0083】
このような前提で、一対の光学機能部5b,5cのうちの左側の光学機能部5bは、左側の第1の光L1Lの光路上であって、この左側の第1の光L1Lの第1の計算機合成ホログラム4からの進行距離が特定の距離となる位置に配置されている。同様に、一対の光学機能部5b,5cのうちの右側の光学機能部5cは、右側の第1の光L1Rの光路上であって、この右側の第1の光L1Rの第1の計算機合成ホログラム4からの進行距離が特定の距離となる位置に配置されている。
【0084】
したがって、第1の計算機合成ホログラム4から出射された左側の第1の光L1Lは、第2の計算機合成ホログラム5の左側の光学機能部5bに、第1の計算機合成ホログラム4に入射した時点のレーザ光Lとほぼ同じモードフィールド径を有するガウシアンビームとして入射することになる。また、第1の計算機合成ホログラム4から出射された右側の第1の光L1Rは、第2の計算機合成ホログラム5の右側の光学機能部5cに、第1の計算機合成ホログラム4に入射した時点のレーザ光Lとほぼ同じモードフィールド径を有するガウシアンビームとして入射することになる。
【0085】
そして、第2の計算機合成ホログラム5は、各光学機能部5b,5cにそれぞれ入射した各第1の光L1L、L1Rを、各2つずつの合計4つの第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROに分割し、これら4つの第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROを互いに異なる出射方向に出射するようになっている。ここで、これら4つの第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROのうちの1つL2LOは、左側の第1の光L1Lから分割された左外側の第2の光L2LOとされている。また、他の3つの第2の光L2LI、L2RI、L2ROのうちの1つL2LIは、左側の第1の光L1Lから分割された左内側の第2の光L2LIとされており、この左内側の第2の光L2LIは、左外側の第2の光L2LOの発生(分割)位置に対して図1、図2における横方向の内側(右側)近傍位置において発生するようになっている。さらに、残りの2つの第2の光L2RI、L2ROのうちの1つL2RIは、右側の第1の光L1Rから分割された右内側の第2の光L2RIとされている。最後の1つの第2の光L2ROは、右側の第1の光L1Rから分割された右外側の第2の光L2ROとされており、この右外側の第2の光L2ROは、右内側の第2の光L2RIの発生位置に対して図1、図2における横方向の外側(右側)近傍位置において発生するようになっている。
【0086】
ただし、左外側の第2の光L2LOの発生位置と左内側の第2の光L2LIの発生位置とは極めて近いので、図2においては、両者L2LO、L2LIが同一点で発生したような光として図示されている。同様に、右外側の第2の光L2ROの発生位置と右内側の第2の光L2RIの発生位置とは極めて近いので、図2においては、両者L2RO、L2RIが同一点で発生したような光として図示されている。
【0087】
これら各第2の光のL2LO、L2LI、L2RI、L2ROの第2の計算機合成ホログラム5からの具体的な出射方向は、図6に示すようになっている。すなわち、図6に示すように、左外側の第2の光L2LOは、その第2の計算機合成ホログラム5上の出射位置から左前方(図6における左上方)の角度(回折角)θ°の方向に向かって出射されるようになっている。また、図6に示すように、左内側の第2の光L2LIは、その第2の計算機合成ホログラム5上の出射位置から右前方(図6における右上方)の角度θ°の方向に向かって出射されるようになっている。さらに、図6に示すように、右内側の第2の光L2RIは、その第2の計算機合成ホログラム5上の出射位置から左前方の角度θ°の方向に向かって出射されるようになっている。さらにまた、図6に示すように、右外側の第2の光L2ROは、その第2の計算機合成ホログラム5上の出射位置から右前方の角度θ°の方向に向かって出射されるようになっている。ただし、各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROの出射角の基準(0°)は、第2の計算機合成ホログラム5の前方となっている。これら各第2の光のL2LO、L2LI、L2RI、L2ROの出射方向は、後述するように、合焦状態においてのみ、各第2の光のL2LO、L2LI、L2RI、L2ROのそれぞれが他の1つの第2の光のL2LO、L2LI、L2RI、L2ROと互いに重なり合った状態でパターン形成面6(図2、図6参照)上に投影されるような出射方向とされている。
【0088】
さらに、第2の計算機合成ホログラム5は、図6に示したように単に2つの異なる角度θ、θにビームを分割する機能だけでなく、ビームの形状を変換するビームシェーパとしての機能をも有するように設計されている。
【0089】
そして、このようなビームシェーパとしての機能によって、各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROは、第2の計算機合成ホログラム5からの出射後に、第1の光L1L、L1Rの段階におけるガウシアン形状(光の進行方向に直交する断面の形状が円形状)から、パターン形成面6に投影されるべきガイドパターンの形状に対応する形状へと変換されている。
【0090】
例えば、図7に示すような2つのガウシアンビームが第1の光L1L、L1Rとして左右の光学機能部5b、5cにそれぞれ入射した場合に、左側の光学機能部5bは、図8に示すようなパターン形状を光学機能部5bからの出射後(フラウンフォーファ領域において)に呈することが可能な形状の第2の光L2LO、L2LIを発生させるようにしてもよい。また、この場合に、右側の光学機能部5cは、図9に示すようなパターン形状を光学機能部5cからの出射後(フラウンフォーファ領域において)に呈することが可能な形状の第2の光L2RI、L2ROを発生させるようにしてもよい。
【0091】
ただし、図8、図9における上方向は、図2、図6における紙面垂直方向の手前側に相当し、図8、図9における下方向は、図2、図6における紙面垂直方向の奥側に相当する。
【0092】
ここで、図8に示す左外側の第2の光L2LOは、所定の線巾(横幅)を持った図8における縦方向に長尺な直線形状を有している。また、図8に示す左内側の第2の光L2LIは、左外側の第2の光L2LOと平行かつ同一の大きさおよび形状とされた長辺部と、この長辺部の長手方向の両端から左外側の第2の光L2LO側に向かって垂直に延びる一対の短辺部とからなるコの字形状を有している。一方、図9に示す右内側の第2の光L2RIは、図8に示す左内側の第2の光L2LIと線対称の逆コの字形状を有している。また、図9に示す右外側の第2の光L2ROは、図8に示す左外側の第2の光L2LOと線対称の直線形状を有している。
【0093】
このような各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROは、第2の計算機合成ホログラム5から出射されてそれぞれの光路を進行した後に、第2の計算機合成ホログラム5に対する出射側の位置に第2の計算機合成ホログラム5に平行に配置された平面状のパターン形成面6上に、各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROの形状を反映した投影パターンとして投影されることになる。
【0094】
このとき、第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離l(図6参照)が合焦状態に相当する最適距離(ただし、一定の変動幅を持った距離)の場合には、各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROは、互いに離間された合計2つ(所定数)のパターン構成部からなる投影パターンとしてパターン形成面6上に投影されるようになっている。すなわち、この場合には、左外側の第2の光L2LOと右内側の第2の光L2RIとが互いに重なり合った状態で投影されることによって、互いに一体とされた1つのパターン構成部をなすことになる。また、この場合には、左内側の第2の光L2LIと右外側の第2の光L2ROとが互いに重なり合った状態で投影されることによって、互いに一体とされたもう1つのパターン構成部をなすことになる。このとき、2つのパターン構成部は互いに線対称となる。
【0095】
そして、このようにして合焦状態において投影された2つのパターン構成部からなる投影パターンは、正規な形状のガイドパターンをなすようになっている。
【0096】
なお、このような正規な形状のガイドパターンが投影される合焦状態のうち、最も理想的な状態(すなわち、撮像装置の物体側の焦点がパターン形成面上の一点に完全に一致した状態)においては、次式が成立することになる。
【0097】
l(tanθ−tanθ)=d (6)
【0098】
ただし、(6)式におけるlは、図6に示す第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離(最短距離)である。また、(6)式におけるθ、θは、前述した第2の計算機合成ホログラム5からの各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROのそれぞれの出射方向(角度)である。さらに、(6)式におけるdは、第2の計算機合成ホログラム5に入射する各第1の光L1L、L1Rの中心間距離である。図6は、このような理想的な合焦状態における第2の計算機合成ホログラム5とパターン形成面6との位置関係を示している。
【0099】
一方、第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離lが合焦状態に相当する最適距離よりも短いまたは長い距離の場合、換言すれば、非合焦状態に相当する距離の場合には、各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROは、互いに離間された合計4つのパターン構成部からなる投影パターンとしてパターン形成面6上に投影されるようになっている。すなわち、この場合には、左外側の第2の光L2LOと右内側の第2の光L2RIとが互いに離間された状態で投影されることによって、互いに離間された2つのパターン構成部をなすことになる。また、この場合には、左内側の第2の光L2LIと右外側の第2の光L2ROとが互いに離間された状態で投影されることによって、互いに離間されたもう2つのパターン構成部をなすことになる。
【0100】
そして、このようにして非合焦状態において投影された4つのパターン構成部からなる投影パターンは、正規の形状から逸脱した形状(以下、非正規形状と称する)すなわち別々に分離した状態のガイドパターンをなすようになっている。
【0101】
ここで、ガイドパターンの具体例として、図8および図9に示したような形状を呈することが可能とされた第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROが図6に示したような出射方向に出射される場合の例(以下、本具体例と称する)について説明する。
【0102】
まず、本具体例において、第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離lが最適距離となる場合、すなわち、第2の計算機合成ホログラム5に対してパターン形成面6が図23における(a)の位置関係を有する場合には、図10に示すようなガイドパターン8が投影されることになる。この図10に示すガイドパターン8は、逆コの字形状の左側のパターン構成部8aと、この左側のパターン構成部8aと線対称のコの字形状の右側のパターン構成部8bとによって構成されている。ここで、左側のパターン構成部8aは、図9に示した右内側の第2の光L2RIと図8に示した左外側の第2の光L2LOとが、図8、図9における形状を保ったままパターン形成面6上に互いに重なり合った状態で投影されてなるものである。また、右側のパターン構成部8bは、図8に示した左内側の第2の光L2LIと図9に示した右外側の第2の光L2ROとが、図8、図9における形状を保ったままパターン形成面6上に互いに重なり合った状態で投影されてなるものである。したがって、本具体例におけるガイドパターンの正規の形状は、逆コの字形状とコの字形状とが違いに向かい合うような括弧形状([ ]形状)となる。ただし、本具体例において、正規の形状には、右内側の第2の光L2RIと左外側の第2の光L2LO、また、左内側の第2の光L2LIと右外側の第2の光L2ROがそれぞれ横ずれおよび縦ずれ無く完全に重なり合った状態で投影された場合のガイドパターンの形状に限らず、設計コンセプトに応じた若干のずれを有しつつ重なり合った状態で投影された場合のガイドパターンの形状も含まれている。したがって、例えば、各パターン構成部8a、8bの横幅(線巾)が図10に示す理想的な状態(ずれが無い投影状態)よりも太くなった場合においても、正規の形状であることを妨げない。
【0103】
一方、本具体例において、第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離lが最適距離よりも短い距離となる場合、すなわち、第2の計算機合成ホログラム5に対してパターン形成面6が図23における(b)の位置関係を持つ場合には、図11に示すような非正規形状のガイドパターン9が投影されることになる。この図11に示すガイドパターン9は、図10に示したものと同様の括弧状をなす2つのパターン構成部9b、9cのそれぞれの外側に直線形状のパターン構成部9a、9dが配置されたものとなっている。各パターン構成部9a、9b、9c、9dは、左側から順に、左外側の第2の光L2LO、右内側の第2の光L2RI、左内側の第2の光L2LI、右外側の第2の光L2ROが投影されてなるものであり、各第2の光のそれぞれの図8、図9における形状に相当する形状を有している。
【0104】
また、本具体例において、第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離lが最適距離よりも長い距離となる場合、すなわち、第2の計算機合成ホログラム5に対してパターン形成面6が図23における(c)の位置関係を持つ場合には、図12に示すような非正規形状のガイドパターン10が投影されることになる。この図12に示すガイドパターン10は、図10に示したものと同様の括弧状をなす2つのパターン構成部10a、10dのそれぞれの内側に直線形状のパターン構成部10b、10cが配置されたものとなっている。各パターン構成部10a、10b、10c、10dは、左側から順に、右内側の第2の光L2RI、左外側の第2の光L2LO、右外側の第2の光L2RO、左内側の第2の光L2LIが投影されてなるものであり、各第2の光のそれぞれの図8、図9における形状に相当する形状を有している。
【0105】
なお、本具体例においては、各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROの図8、図9における縦方向に延びる直線部分の線巾(横幅)によって、ガイドパターンが正規の形状をなすか否かを制御することができる。したがって、この線巾は、合焦状態に対応する第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離の範囲に応じた線巾に設定すればよい。このとき、合焦状態とされる場合の第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離の範囲が狭い場合、すなわち、情報認識装置の情報認識性能が低い等の理由によって厳密な合焦状態が求められる場合には、各第2の光の線巾が小さくなるように第2の計算機合成ホログラム5を設計すればよい。一方、合焦状態とされる場合の第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離の範囲が広い場合、すなわち、情報認識装置の情報認識性能が高い等の理由によって求められる合焦状態が緩和されている場合には、各第2の光の線巾が大きくなるように第2の計算機合成ホログラム5を設計すればよい。
【0106】
このようなガイドパターンを投影する第2の計算機合成ホログラム5は、第1の計算機合成ホログラム4と同様に、IFTAを用いた最適な位相分布解の計算によって設計することができる。
【0107】
図1および図2に戻って、更に、本実施形態における光学装置1は、ガイドパターンを撮像する撮像素子14を有しており、この撮像素子14には、不図示のレンズ等の光学系を介してガイドパターンの像が結像するようになっている。なお、この撮像素子14は、対象パターン7(図2参照)を撮像する撮像装置の撮像素子を兼ねていてもよい。また、ガイドパターンは、対象パターン7と同一の光学系(撮像装置を構成する光学系)を介して光学装置1内に取込まれるようにしてもよい。なお、撮像素子14として、CCDやCMOS等の固体撮像素子を適用してもよい。
【0108】
また、図1および図2に示すように、撮像素子14には、判定装置としての情報処理部15が接続されている。この情報処理部15は、撮像素子14によって撮像されたガイドパターンにおけるパターン構成部の数を画像認識によって把握し、把握されたパターン構成部の数に基づいて、パターン形成面6に対する撮像装置の光軸方向における位置の適否を判定するようになっている。具体的には、把握されたパターン構成部の数が2つであれば、位置が適切と判定し、数が4つであれば位置が不適切と判定する。そして、情報処理部15は、判定結果を出力するようになっている。
【0109】
このとき、図10〜図12に示したような各ガイドパターン8、9、10を投影する場合であって、情報処理部15が、パターン構成部の数を把握する性能だけでなく、各ガイドパターン8、9、10の形状を峻別する性能をも有しているのであれば、情報処理部15は、パターン形成面6に対する撮像装置の光軸方向における距離が、最適距離、最適距離よりも短い距離または最適距離よりも長い距離のいずれであるかにまでも及んだ判定を行うようにすることが望ましい。
【0110】
また、撮像素子14が撮像装置の撮像素子を兼ねる場合には、情報処理部15は、撮像素子14によって撮像された対象パターンの情報を認識する性能を併有するものであってもよい。
【0111】
さらに、図1および図2に示すように、情報処理部15には、撮像位置情報表示処理部16が接続されており、この撮像位置情報表示処理部16には、情報処理部15によって出力された判定結果が入力されるようになっている。
【0112】
そして、撮像位置情報表示処理部16は、情報処理部15から入力された判定結果に応じたパターン形成面6に対する撮像装置の光軸方向における位置に関する情報をディスプレイ等の表示部に表示するようになっている。ここで、パターン形成面6に対する撮像装置の光軸方向における位置が適切な場合には、撮像位置情報表示処理部16は、位置が適切である旨の記号やメッセージを表示すればよい。一方、パターン形成面6に対する撮像装置の光軸方向における位置が不適切な場合には、撮像位置情報表示処理部16は、位置が不適切である旨の記号やメッセージ(例えば、「バーコード位置が正しくありません」、「バーコード位置が近すぎます」、「バーコード位置が遠すぎます」等)を表示すればよい。このような情報が表示されることにより、ユーザは、パターン形成面6に対する撮像装置の光軸方向における位置を手動によって最適な位置に調整することができる。この場合に、ユーザは、情報認識装置を図2、図6における縦方向に移動させることによって、光学装置1と撮像装置とを同方向に一体的に移動させればよい。
【0113】
なお、このような撮像位置情報表示処理部16を設ける代わりに、情報処理部15の判定結果に応じてパターン形成面6に対する撮像装置の光軸方向における位置を最適な位置に自動的に調整する自動調整装置を設けるようにしてもよい。
【0114】
また、撮像装置を構成する光学系は、ガイドパターンが正規の形状となった場合に撮像装置がパターン形成面6に合焦されるものであれば、その最も物体側における光軸(光軸方向)が、コリメーションレンズ3の光軸に対して傾いているものであってもよい。この場合であっても、第2の計算機合成ホログラム5からパターン形成面6までの距離を調整する方向(図1、図2における縦方向)に光学装置1と撮像装置とを一体的に移動させれば、パターン形成面6に対する撮像装置の光軸方向における位置を合焦状態に調整することができ、ひいては、撮像装置を対象パターン7に合焦させることができることに変わりはない。
【0115】
さらに、図10に示したようなガイドパターン8を投影する場合には、左右のパターン構成部8a、8bの間に対象パターン7が位置される場合に、撮像装置が対象パターン7に合焦されるように構成してもよい。
【実施例】
【0116】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0117】
まず、本実施例においては、図7に示したような第1の光L1L、L1R(ガウシアンビーム)の電界強度分布(振幅分布)を目標(束縛条件)として、IFTAアルゴリズムを用いて第1の計算機合成ホログラム4の位相分布解(凹凸形状)を求めた。
【0118】
ただし、このとき、図7の電界強度分布は、第1の光L1L、L1Rが第1の計算機合成ホログラム4から25mm伝搬(進行)した位置において、モードフィールド半径=500μm、両光L1L、L1Rの中心間距離=3.0mmの状態で得られる電界強度分布と仮定した。なお、モードフィールド半径=500μmは、第1の計算機合成ホログラム4に入射した時点のレーザ光源2からの入射光(ガウシアンビーム)(図16参照)の半径と同一と仮定した。また、レーザ光源2は、λ=650nmの赤色光を出射するNA=0.6程度のLDと仮定した。さらに、コリメーションレンズ3は、レーザ光源2からの入力光を半径500μmのガウシアンビームにすることができる焦点距離=0.64mm程度の非球面レンズと仮定した。ただし、レーザ光源2から出射された時点のレーザ光の位相分布は自由としており、IFTAアルゴリズムの束縛条件として加味しなかった。
【0119】
さらに、ホログラムの基本構成は、ピクセルの数が縦1024個×横1024個、1個のピクセルのサイズが5μm、段数が16段と仮定した。なお、前述した(6)式において、第1の光L1L、L1Rを±1次光とみなして、Λにピクセルサイズとしての5μmを代入した場合には、本実施例における第1の光L1L、L1Rの出射角度(回折角)は7.47°となる。
【0120】
そして、このような仮定の下で、第1の光L1L、L1Rの伝搬計算として角スペクトル伝搬法を採用して、GerchBerg-Saxtonアルゴリズムで繰り返し計算を行った。
【0121】
このような繰り返し計算によって得られた第1の計算機合成ホログラム4の位相分布解は図13のようになった。そして、このようにして得られた第1の計算機合成ホログラム4から25mm離れた位置での第1の光L1L、L1Rの電界強度分布は図14のようになった。ここで、図14の電界強度分布は、図7に示した目標の電界強度分布に比べて多少のノイズ光があるものの、ほぼ目標通りの電界強度分布となった。
【0122】
次いで、本実施例においては、第2の計算機合成ホログラム5の位相分布解(凹凸形状)をIFTAアルゴリズムを用いて求めた。
【0123】
ただし、前述のように、第2の計算機合成ホログラム5は、左右一対の光学機能部5b、5cを有するため、IFTAによる繰り返し計算を2種類行って、左側の光学機能部5bの位相分布解と右側の光学機能部5cの位相分布解とを別々に求めた。
【0124】
ここでまず、左側の光学機能部5bの位相分布解を求めるにあたっては、図7に示した電界強度分布のうちの左側の第1の光L1Lの中心から図7の電界強度分布全体の1/4の領域の電界強度分布を取り出した。なお、図7の電界強度分布全体を縦1024ピクセル×横1024ピクセルの画像とみなせば、このとき取り出される電界強度分布は、第1の光L1Lの中心から縦1024ピクセル×横1024ピクセルの画像領域内の電界強度分布となる。
【0125】
次いで、取り出された電界強度分布を、セルを2倍にすることによって縦1024ピクセル×横1024ピクセルの領域内の電界強度分布に変換した。この変換された電界強度分布は図15のようになる。
【0126】
ここで、左側の光学機能部5bは、第1の計算機合成ホログラム4から25mm離れた位置にあるべきなので、この図15の電界強度分布に示す第1の光L1Lの直後に左側の光学機能部5bを配置すると仮定した。
【0127】
また、左側の光学機能部5bは、ピクセルの数が縦1024個×横1024個、1個のピクセルのサイズが5μm、段数が16段と仮定した。
【0128】
さらに、左側の光学機能部5bから出射された第2の光L2LO、L2LIは、左側の光学機能部5bからある程度離れた位置において目標とする電界強度分布である図8に示したような形状に変換されると仮定した。ここで、ある程度離れた位置としているのは、フラウンフォーファ領域において第2の光L2LO、L2LIが図8の形状に変換されることを想定している。ここでのビーム形状の変化は図17に示す通りである。
【0129】
このような仮定の下で、IFTAの繰り返し計算によって得られた左側の光学機能部5bの位相分布解は図18のようになった。なお、このとき、光の伝搬計算には、フーリエ伝搬による計算を用いた。そして、このようにして得られた左側の光学機能部5bから出射された第2の光L2LO、L2LIの電界強度分布は図19のようになった。ここで、図19の電界強度分布は、図8に示したものとほぼ一致する目標通りの分布となった。また、図18の位相分布解によって得られる回折効率は87.8%となり、SNRは33.6dBとなった。また、第2の光L2LO、L2LIの出射角度は、図6を用いて説明すれば、θ=5.84°、θ=3.74°となった。
【0130】
次に、右側の光学機能部5cの位相分布解を求めるにあたっても、左側の光学機能部5bと同様の手法を用いた。
【0131】
すなわち、まず、図7に示した電界強度分布のうちの右側の第1の光L1Rの中心から図7の電界強度分布全体の1/4の領域の電界強度分布を取り出した。
【0132】
次いで、取り出された電界強度分布を、セルを2倍にすることによって縦1024ピクセル×横1024ピクセルの領域内の電界強度分布に変換した。この変換された電界強度分布は図20のようになる。
【0133】
ここで、右側の光学機能部5cも、第1の計算機合成ホログラム4から25mm離れた位置にあるべきなので、この図20の電界強度分布に示す第1の光L1Rの直後に右側の光学機能部5cを配置すると仮定した。
【0134】
また、右側の光学機能部5cも、ピクセルの数が縦1024個×横1024個、1個のピクセルのサイズが5μm、段数が16段と仮定した。
【0135】
さらに、右側の光学機能部5cから出射された第2の光L2RO、L2RIは、右側の光学機能部5cからある程度離れた位置において目標とする電界強度分布である図9に示したような形状に変換されると仮定した。ここで、ある程度離れた位置としているのは、フラウンフォーファ領域において第2の光L2RO、L2RIが図9の形状に変換されることを想定している。
【0136】
このような仮定の下で、IFTAの繰り返し計算によって得られた右側の光学機能部5cの位相分布解は図21のようになった。なお、このとき、光の伝搬計算には、フーリエ伝搬による計算を用いた。そして、このようにして得られた右側の光学機能部5cから出射された第2の光L2RO、L2RIの電界強度分布は図22のようになった。ここで、図22の電界強度分布は、図9に示したものとほぼ一致する目標通りの分布となった。また、図21の位相分布解によって得られる回折効率は88.6%となり、SNRは33.8dBとなった。このことは、左右の光学機能部5b、5cとしてほぼ線対称の光学機能部5b、5cが得られたことを示している。
【0137】
そして、このようにして得られた第1の計算機合成ホログラム4および第2の計算機合成ホログラム5を備えた光学装置1によれば、まず、レーザ光源2から出射されたレーザ光Lは、コリメーションレンズ3によってコリメートされて半径500μmのモードフィールド径のガウシアンビームに変換される。次に、コリメート後のレーザ光Lは、第1の計算機合成ホログラム4によってほぼ均等のパワーの左右の第1の光L1L、L1Rに分割されるとともに、第1の計算機合成ホログラム4の回折作用によって左右に等しい角度で出射される。次に、第1の計算機合成ホログラム4から出射された各第1の光L1L、L1Rは、第2の計算機合成ホログラム5によって第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROに分割されて出射される。そして、第2の計算機合成ホログラム5から出射された第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROは、その形状がガイドパターンに対応する所定の形状(図8、図9)に変換された後にパターン形成面6上に投影されてガイドパターンを形成する。このとき、合焦状態となっている場合には、図10に示したような正規の形状のガイドパターン8が投影される。一方、非合焦状態となっている場合には、図11または図12に示したような互いに分離した状態の非正規形状のガイドパターン9、10が投影される。そして、このガイドパターンの形状を画像認識することによって、パターン形成面6に対する撮像装置の位置の適否を判断することができる。
【0138】
以上述べたように、本発明によれば、1つのレーザ光源2から出射されたレーザ光を、コリメーションレンズ3、第1の計算機合成ホログラム4および第2の計算機合成ホログラム5によって第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROに分割することができ、これら各第2の光L2LO、L2LI、L2RI、L2ROをパターン形成面6に投影させることによって合焦状態の有無の判別が可能なガイドパターンを形成することができる。この結果、光源の数を従来よりも削減しつつ対象パターンの適切な撮像を実現することができる。さらに、光源数の削減にともなって、光源を設置するスペースを小さくすることができるため、小型化を実現することができる。
【0139】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することができる。
【0140】
例えば、第1の計算機合成ホログラム4の代わりに、この第1の計算機合成ホログラム4と同様の回折作用を実現することができる回折格子を配置するようにしてもよい。
【0141】
また、正規の形状のガイドパターンは、図10に示したものに限定する必要はなく、例えば、2つの円弧状のパターン構成部を向かい合わせた形状(すなわち、( )形状)や、くの字状のパターン構成部と逆くの字状のパターン構成部とを向かい合わせた形状(すなわち、< >形状)等の種々の形状を採用することができる。さらに、正規な形状のガイドパターンを構成するパターン構成部の数は、前述した2つには限定されない。さらにまた、正規な形状のガイドパターンを構成する複数のパターン構成部の形状は、線形状を有するものに限定されるものではなく、線形状以外の多角形状であってもよい。
【符号の説明】
【0142】
1 光学装置
2 レーザ光源
3 コリメーションレンズ
4 第1の計算機合成ホログラム
5 第2の計算機合成ホログラム
6 パターン形成面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字、数字または番号もしくはこれらの配列からなる所定の情報を有する対象パターンの前記情報を認識するために撮像装置によって前記対象パターンを撮像する際に、前記対象パターンが形成されたパターン形成面上に、このパターン形成面に対する前記撮像装置の光軸方向における位置を決定するための光の投影パターンとして、前記撮像装置が前記パターン形成面に対して合焦状態となっている場合にのみ前記パターン形成面上に正規の形状を呈した状態で投影されるガイドパターンを投影する光学装置であって、
光を出射する1つの光源と、
この光源から出射された光をコリメートするコリメーションレンズと、
このコリメーションレンズによってコリメートされた光を互いに異なる方向に向かう複数の第1の光に分割する回折光学素子と、
前記複数の第1の光ごとに、各第1の光を複数の第2の光にそれぞれ分割し、これら各第1の光ごとの各第2の光を、互いに異なる出射方向であって、前記合焦状態においてのみ前記各第1の光ごとの各第2の光のそれぞれが他の前記第1の光から変換された各第2の光のそれぞれと互いに重なり合った状態で前記パターン形成面上に投影されるような出射方向に出射する計算機合成ホログラムと
を備え、
前記各第1の光ごとの各第2の光は、前記計算機合成ホログラムからの出射後に前記ガイドパターンに対応する所定の形状を呈するように形成され、
前記ガイドパターンは、前記各第1の光ごとの各第2の光が前記パターン形成面上に投影されてなること
を特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記ガイドパターンは、前記合焦状態においては、互いに離間された所定数のパターン構成部からなる投影パターンとして投影され、非合焦状態においては、互いに離間された前記所定数よりも多数のパターン構成部からなる投影パターンとして投影されること
を特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記各第1の光ごとの各第2の光の形状および出射方向は、前記計算機合成ホログラムから前記パターン形成面までの距離が、前記合焦状態に相当する最適距離の場合と、前記最適距離よりも短い距離の場合と、前記最適距離よりも長い距離の場合とで、前記ガイドパターンの形状を互いに異ならせることが可能な形状とされていること
を特徴とする請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記各第1の光ごとの各第2の光が呈する前記所定の形状は、その少なくとも一部が所定の線巾を有する線形状とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記線巾が、前記合焦状態に対応する前記計算機合成ホログラムから前記パターン形成面までの距離の範囲に応じた値に設定されていること
を特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記回折光学素子は、前記コリメーションレンズによってコリメートされた光を2つの前記第1の光に分割すること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記計算機合成ホログラムは、前記2つの第1の光を、それぞれ2つずつの前記第2の光に分割すること
を特徴とする請求項6に記載の光学装置。
【請求項8】
前記回折光学素子は、計算機合成ホログラムとされていること
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記ガイドパターンを撮像する撮像素子と、
この撮像素子によって撮像された前記ガイドパターンに基づいて、前記パターン形成面に対する前記撮像装置の光軸方向における位置の適否を判定し、判定結果を出力する判定装置と
を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記対象パターンは、一次元コードまたは二次元コードとされていること
を特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図17】
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【図23】
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【図7】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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