説明

光学装置

【課題】 高い光の利用効率を得ることができて高い照度を得ることができる光学装置を提供すること。
【解決手段】 高圧放電ランプと、光軸が高圧放電ランプのアークの方向に沿って延びる状態で、高圧放電ランプを取り囲むよう配置された凹面集光鏡と、この凹面集光鏡の光出射方向前方に配置された、凹面集光鏡の光軸に対して回転対称な非球面レンズとを備えた光学装置において、凹面集光鏡の反射面が、非球面レンズの光出射面において、高圧放電ランプのアーク中心の光軸に垂直な方向に位置される反射位置で反射される光線が非球面レンズから出射される位置での光線密度が最小となる出射光分布が得られるよう、非球面レンズの光入射面および光出射面の形状との関係において設定された形状を有する構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロジェクタ装置用光源などに用いられる光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶プロジェクタなどの投射型表示装置に用いられる光源としては、放電ランプと例えば楕円面反射鏡とを組み合わせて、放電ランプから放射された光を楕円面反射鏡によって反射し、例えばロッドインテグレータやインテグレータレンズ(フライアイレンズ)などの適宜の光学系に入射して照射面に照射する構成の光学装置が知られている。近年においては、液晶プロジェクタの投射画面の、より一層の明るさの要請が高まってきている。
【0003】
図7に示すように、楕円面反射鏡40は、第1焦点F1から発せられる光を第2焦点F2に集光させる機能を有する。しかしながら、このような楕円面反射鏡40が用いられた光学装置においては、楕円面反射鏡40の第1焦点F1に位置される放電ランプから等密度で放射された光線が第2焦点F2に集光されるに際して、光線密度が楕円面反射鏡40の光軸Xから遠くなるに従って小さくなる傾向があり、また、放電ランプのケラレにより光線が飛ばない領域(中抜け領域)が光軸X付近に存在するという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、図8に示すように、リフレクタ40Aの光出射方向前方に非球面レンズ45を配置し、非球面レンズ45における光入射面46または光出射面47の形状に応じてリフレクタ40Aの反射面41の形状を調整することにより非球面レンズ45の光出射面47での出射光分布を光線密度が等密度となるよう調整し、これにより、放電ランプのケラレにより生じる中抜け領域を小さくする技術が提案されている(特許文献1参照。)。
具体的には、リフレクタ40Aの反射面41を、非球面レンズ45に対するリフレクタ40Aの光軸X側の入射光線の光線密度を小さくするような形状とし、さらに、非球面レンズ45から出射される光線の角度を非球面レンズ45により調整して非球面レンズ45における光出射面47での光線密度の均一化、すなわち、非球面レンズ45の光出射面47での光線間の角度間隔dφを一様にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−298625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非球面レンズ45の光出射面47において、光線密度が等密度となる出射光分布が得られるようリフレクタ40Aの反射面41の形状を設計した場合には、リフレクタ40Aの反射面41上における反射点から見たときの放電ランプのアークの大きさを考慮していないため、集光位置Qにおけるアーク像の大きさが一定にならず、光の利用率が低下して十分に高い照度が得られないことがあるという問題があることが判明した。すなわち、図9に示すように、各々の電極の先端42a,42bから放射された光線が反射面41上における任意の反射位置R5に入射されると、当該反射位置R5において反射された光線は、当該反射位置R5に入射される際の光線間の角度αが維持された状態で、非球面レンズ45に入射され、その後、集光位置Qにおいて大きさAで結像される。一方、各々の電極の先端42a,42bから放射された光線が反射面41上における任意の反射位置R6に入射されると、当該反射位置R6において反射された光線は、当該反射位置R6に入射される際の光線間の角度β(>α)が維持された状態で、非球面レンズ45に入射され、その後、集光位置Qにおいて結像されることになるが、非球面レンズ45の光出射面47における光線密度が等密度とされる場合には、集光位置Qにおいて異なる大きさB(>A)で結像されてしまう。その結果、反射位置R6からの光線の一部がアパーチャー50に入射されないことがあり、利用できない光線が生じてしまうこととなる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、高い光の利用効率を得ることができて高い照度を得ることができる光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学装置は、高圧放電ランプと、光軸が当該高圧放電ランプのアークの方向に沿って延びる状態で、当該高圧放電ランプを取り囲むよう配置された凹面集光鏡と、この凹面集光鏡の光出射方向前方に配置された、前記凹面集光鏡の光軸に対して回転対称な非球面レンズとを備えた光学装置において、
前記凹面集光鏡の反射面は、前記非球面レンズの光出射面において、前記高圧放電ランプのアーク中心の前記凹面集光鏡の光軸に垂直な方向に位置される反射位置で反射される光線が前記非球面レンズの光出射面から出射される位置での光線密度が最小となる出射光分布が得られるよう、前記非球面レンズの光入射面および光出射面の形状との関係において設定された形状を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の光学装置においては、前記非球面レンズの光出射面における出射光分布は、前記高圧放電ランプのアーク中心から前記凹面集光鏡の反射面における任意の反射位置に向かう光線の方向と前記凹面集光鏡の光軸とがなす角度をθとするとき、光線密度が最小となる位置より前記非球面レンズの周縁側および前記非球面レンズの中心軸側に向かうに従って光線密度が大きくなるよう、光線密度がsinθに従って変化するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の光学装置においては、前記凹面集光鏡の反射面は、前記凹面集光鏡の光軸に対して各々設定された角度で連続して配設された複数の微小反射面要素により構成されていることが好ましい。
このような構成とされた光学装置においては、前記凹面集光鏡の反射面を構成する微小反射面要素が1000個以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学装置によれば、非球面レンズの光入射面および光出射面の形状との関係において調整された形状を有する凹面集光鏡の反射面、および、非球面レンズの光入射面および/または光出射面の作用により、非球面レンズの光出射面において凹面集光鏡の反射面上におけるアーク中心の光軸に垂直な方向に位置される反射位置で反射される光線が非球面レンズの光出射面から出射される位置での光線密度が最小となる出射光分布が得られる構成とされていることにより、凹面集光鏡における反射面上における任意の反射位置に係る各アーク像の光束径を略一致したものとすることができるので、光の利用効率が高くなり、十分に高い照度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光学装置の一例における構成の概略を高圧放電ランプから放射される光の光線追跡線とともに示す説明図である。
【図2】本発明の光学装置を構成する光源装置の一例における構成の概略を示す説明用断面図である。
【図3】アーク中心から反射面上の任意の反射位置に向かう光線の方向と凹面集光鏡の光軸とがなす角度θと、当該反射位置からみたアークの大きさDとの関係を説明するための説明図である。
【図4】アーク中心から反射面上の任意の反射位置に向かう光線の方向と凹面集光鏡の光軸とがなす角度と、非球面レンズの光出射面から出射される各光線間の角度間隔との関係を示す説明図である。
【図5】図1に示す光学装置における、各々の電極の先端から放射される光線の光線追跡線を示す説明図である。
【図6】本発明の光学装置を構成する非球面レンズの他の構成例を光線追跡線とともに示す説明図であって、(A)平行光化性を有するもの、(B)発散性を有するものである。
【図7】楕円面反射鏡における第1焦点から各々等角度間隔で放射される複数本の光線の光線追跡図である。
【図8】従来における光学装置の一例における構成の概略を放電ランプから放射される光の光線追跡線とともに示す説明図である。
【図9】図8に示す光学装置における、各々の電極の先端から放射される光線の光線追跡線を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の光学装置の一例における構成の概略を高圧放電ランプから放射される光の光線追跡線とともに示す説明図、図2は、本発明の光学装置を構成する光源装置の一例における構成の概略を示す説明用断面図である。
この実施の形態に係る光学装置は、例えば交流点灯型の高圧放電ランプ11および光軸Xが高圧放電ランプ11のアーク方向に沿って延びる状態で高圧放電ランプ11を取り囲むよう配置された凹面集光鏡20により構成された光源装置10と、凹面集光鏡20の光出射方向前方に配置された、凹面集光鏡20の光軸に対して回転対称な非球面レンズ30とを備えており、高圧放電ランプ11からの放射光を凹面集光鏡20および非球面レンズ30により集光しながら所定の大きさに設定されたアパーチャー50(図5参照)を介して照射する構成とされている。
【0014】
光源装置10を構成する高圧放電ランプ11は、例えば超高圧水銀ランプよりなり、例えば球形状の発光管部12およびこの発光管部12の両端に連続するロッド状の封止部13A,13Bにより構成された、例えば石英ガラスよりなる放電容器15を備えている。
発光管部12の内部には、一対の電極16が放電容器15の管軸に沿って互いに対向して配置されている。ここに、電極間距離は、例えば0.5〜2.0mmであって、例えば1.0mmである。各々の電極16は、放電容器15の管軸に沿って延びるロッド状の電極軸部17が封止部13A,13Bにおいて気密に埋設された例えばモリブデンからなる金属箔18を介して封止部13A,13Bの外端より軸方向外方に突出して伸びるロッド状の外部リード19に電気的に接続されている。
【0015】
また、発光管部12の内部には、発光物質としての水銀と、バッファガスとしての希ガスとが封入されている。
水銀の封入量は、0.05mg/mm3以上であって、例えば0.08mg/mm3である。また、水銀の封入量は、プロジェクタ装置用光源として用いられる場合には、0.15mg/mm3以上であることが好ましい。
希ガスは、例えばアルゴンガスであり、その封入量は例えば10kPaである。
【0016】
この光源装置10における凹面集光鏡20は、例えば棚珪酸ガラスなどのガラスよりなる基材における、高圧放電ランプ11から放射される光を反射する反射空間を形成する反射部21に係る内表面に反射面22が形成されてなるものである。具体的には、光軸Xを含む断面において、外面形状が楕円面に沿った形態を有する、前方(図2において右方)に開口する光出射口23が形成された反射部21と、この反射部21の後端(図2における左端)における中央位置に連続して光軸方向後方に延びるよう形成された筒状頸部28とを有する。この凹面集光鏡20は、筒状頸部28内に、高圧放電ランプ11の一方の封止部13Aが挿通され、上述したように、光軸Xが高圧放電ランプ11のアーク方向に沿って延びる状態で、一方の封止部13Aの外周面と筒状頸部28の内周面との間に形成される間隙に充填された接着剤29によって固定されている。
【0017】
この凹面集光鏡20における反射面22は、複数の微小反射面要素25が基材における反射部21に係る内表面に沿って隙間なく連続して配設されて構成されており、各々の微小反射面要素25が凹面集光鏡20の光軸Xに対して各々設定された角度(微小反射面要素25に入射される光線の反射角度)で配設されることにより、非球面レンズ30の光出射面32において後述する特定の出射光分布が得られる内面形状とされている。
各々の微小反射面要素25は、例えば凸曲面を鏡面とする凸曲面鏡よりなり、反射面22を構成する表面には、例えばシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層が交互に積層されてなる、全体で厚さ0.5〜10μmの誘電体多層膜が形成されている。
微小反射面要素25の数は、例えば1000個以上であることが好ましく、これにより、非球面レンズ30の光出射面32における出射光分布を正確に調整することができる。
【0018】
この実施の形態に係る光学装置における非球面レンズ30は、例えば硼珪酸ガラス(例えば「BK7」やテンパックス(登録商標)など)、石英ガラスよりなり、光源装置10からの光が入射される光入射面31が凹凸を有するレンズ面とされていると共に光出射面32が平面形状とされた集光性を有するものとされている。この非球面レンズ30は、その中心軸Cが光源装置10における凹面集光鏡20の光軸Xと一致する状態で、配設されている。
【0019】
而して、上記の光学装置においては、凹面集光鏡20における反射面22が、非球面レンズ30の光出射面32において、高圧放電ランプ11のアーク中心Acの凹面集光鏡20の光軸に垂直な方向に位置される反射位置Raで反射される光線が非球面レンズ30の光出射面32から出射される位置での光線密度が最小となる出射光分布が得られるよう、非球面レンズ30の光入射面31の形状との関係において設定された形状とされている。具体的には、凹面集光鏡20における反射面22は、高圧放電ランプ11のアーク中心Acから凹面集光鏡20における反射面22上の任意の反射位置に向かう光線の方向と凹面集光鏡20の光軸Xとがなす角度をθとするとき、非球面レンズ30の光出射面32において、光線密度が最小となる位置より非球面レンズ30の周縁側および非球面レンズ30の中心軸C側に向かうに従って光線密度が大きくなるよう、光線密度がsinθに従って変化する出射光分布の得られる形状とされている。ここに、凹面集光鏡20の有効反射領域は、例えば40°≦θ≦150°の範囲である。凹面集光鏡20における反射面22がこのような形状とされる理由は、次に示すとおりである。
【0020】
非球面レンズ30の光出射面32における出射光分布を調整するためには、点光源としての高圧放電ランプ11においては、実際上は、電極16間に形成されるアークが大きさを有することから、凹面集光鏡20の反射面22上の反射位置からみたアークの大きさを考慮することが必要とされる。具体的には、図3に示すように、凹面集光鏡20における反射面22上の任意の反射位置Rからみたアーク(図3において破線で囲まれた領域)の大きさDは、アーク中心Acから反射位置Rに向かう光線の方向Lpと凹面集光鏡20の光軸Xとがなす角度(以下、「放射角度」という。)をθ、アークの凹面集光鏡20の光軸方向の長さをLとするとき、D=L×sinθで表すことができる。このことから、凹面集光鏡20の反射面22上における任意の反射位置Rからみたアークの大きさDは、sinθに比例して変化するものと考えられ、従って、集光位置Qにおいて結像されるアーク像の大きさを一定にするためには、非球面レンズ30の光出射面32における出射光分布を、光線密度がsinθに従って変化するものに設定すればよいことになる。そして、上記関係式より、θ=90°のときにアークの大きさDが最大となることから、非球面レンズ30の光出射面32における出射光分布においては、凹面集光鏡20における反射面22上の、アーク中心Acの凹面集光鏡20の光軸Xに垂直な方向に位置される反射位置Raで反射される光線が非球面レンズ30の光出射面32から出射される位置での光線密度が最小となり、非球面レンズ30の中心軸C側の位置および非球面レンズ30の周縁側の位置に向かうに従って光線密度が大きくなるよう設定される。
【0021】
そして、凹面集光鏡20の反射面22を構成する各々の微小反射面要素25の配設角度は、次のようにして設定される。すなわち、理解を容易にするために、図4に示すように、点光源としての高圧放電ランプにおけるアーク中心Acから各々等角度間隔dθで放射される4本の光線I1〜I4が、集光角制限(最外、最内光線間の角度)Φで、集光位置Qに集光される場合を例に挙げて説明すると、凹面集光鏡20における反射面22上の反射位置R1において反射される、アーク中心Acから最小放射角度(θ2−dθ)で放射される光線I1が非球面レンズ30の光出射面32から出射される角度と、反射面22における反射位置R2において反射される、アーク中心Acから放射角度(θ2)で放射される光線I2が非球面レンズ30の光出射面32から出射される角度との角度間隔dΦ1,2の値を下記式1に基づいて算出する(下記式1においてk=2のとき)。次に、集光角制限φの範囲内において集光位置Qから角度間隔dΦ1,2で引いた2本の直線と光軸方向における非球面レンズ30の配置位置との各交点位置に、反射位置R1および反射位置R2に配設される微小反射面要素25によって、光線I1、I2がそれぞれ反射されるよう、当該微小反射面要素25の、凹面集光鏡20の光軸Xに対する配設角度が非球面レンズ30の光入射面31の形状との関係において設定される。このような操作を、反射面22における反射位置R3,R4において反射される、アーク中心Acから放射角度(θ2+dθ,θ2+2dθ)で放射される光線I3,I4について、行うことにより、各々の反射位置R3、R4に配設される微小反射面要素25の配設角度が設定され、凹面集光鏡20の反射面22についての連続した形状データを取得することができる。凹面集光鏡20における反射面22の形状の調整(設定)は、実際上、N=1000以上として、換言すれば、1000個以上の微小反射面要素25により反射面22が構成されるよう、行われることが好ましく、これにより、非球面レンズ30の光出射面32における出射光分布の調整を正確に行うことができて所期の効果を確実に得ることができる。
また、非球面レンズ30の光入射面31の形状は、当該非球面レンズ30を構成する材料の屈折率に応じて、光線の入射角と出射角の関係から設定することができる。
【0022】
【数1】

【0023】
上記式1は、次のようにして得られたものである。すなわち、まず、アーク中心Acから最小放射角度(θ2−dθ)で放射される、凹面集光鏡20の反射面22における反射位置R1において反射される光線I1が非球面レンズ30の光出射面32から出射される角度と、アーク中心Acから放射角度θ2で放射される、光線I2が凹面集光鏡20の反射面22における反射位置R2において反射される光線I2が非球面レンズ30の光出射面32から出射される角度との角度間隔dΦ1,2を、凹面集光鏡20の反射面22および非球面レンズ30の光入射面31の作用によりsinθ2に比例させた場合、dΦ1,2は、下記式2で与えられる。また、非球面レンズ30の光出射面32から出射される光線I2と光線I3との角度間隔dΦ2,3、および、光線I3と光線I4との角度間隔dΦ3,4についても、同様であり、それぞれ、光線I3が凹面集光鏡20における反射面22上の反射位置R3に向かう方向と凹面集光鏡20の光軸Xとがなす角度(θ2+dθ)、光線I4が凹面集光鏡20における反射面22上の反射位置R4に向かう方向と凹面集光鏡20の光軸Xとがなす角度(θ2+2dθ)によって与えられる。
【0024】
【数2】

【0025】
非球面レンズ30の光出射面32から出射される各光線I1〜I4の角度間隔の総和S1(=dΦ1,2+dΦ2,3+dΦ3,4)は、sinθ2、sin(θ2+dθ)、sin(θ2+2dθ)の値がいずれも1以下であるので、S1<Φとなる。そのため、非球面レンズ30の光出射面32から出射される各光線I1〜I4の角度間隔の総和S1と集光角制限Φとの差分についても、sinθkに比例するように分割して、上記dΦ1,2、dΦ2,3、dΦ3,4に加える必要がある。従って、dΦ1,2は下記式3によって与えられ、非球面レンズ30の光出射面32から出射される各光線I1〜I4の角度間隔の総和S2は、下記式4で与えられる。
【0026】
【数3】

【0027】
【数4】

【0028】
上記式4において、sinθ2の値は1以下であるので、S2<Φとなる。そこで、dΦ1,2、dΦ2,3、dΦ3,4の総和SMと集光角制限Φとの差分を、sinθに比例するように分割してdΦ1,2、dΦ2,3、dΦ3,4に加える作業を、例えばM回繰り返して行ったときに、当該総和SMと集光角制限Φとの差がほとんどない状態(SM≒Φ)になったとすると、非球面レンズ30の光出射面32から出射される各光線I1〜I4の角度間隔の総和SMは、下記式5によって与えられ、また、光線I1と光線I2との角度間隔dΦ1,2は、下記式6によって与えられ、この式6から、上記式1が導出される。
【0029】
【数5】

【0030】
【数6】

【0031】
而して、上記の光学装置においては、上述したように、凹面集光鏡20における反射面22上の任意の反射位置からみたときのアークの大きさを考慮して、凹面集光鏡20における反射面22の形状が、高圧放電ランプ11のアーク中心Acから凹面集光鏡20の反射面22における任意の反射位置に向かう光線の方向と凹面集光鏡20の光軸Xとがなす角度をθとするとき、非球面レンズ30の光出射面32において、光線密度が最小となる位置より非球面レンズ30の周縁側の位置および非球面レンズ30の中心軸C側の位置に向かうに従って光線密度が大きくなるよう、光線密度がsinθに従って変化する出射光分布の得られる形状とされている。
これにより、図5に示すように、各々の電極の先端16a,16aから放射された光線が反射面22における反射位置R5に入射されると、当該反射位置R5において反射された光線は、当該反射位置R5に入射される際の光線間の角度αが維持された状態で、非球面レンズ30の光入射面31に入射され、その後、集光位置Qにおいて大きさAのアーク像として結像される。また、各々の電極の先端16a,16aから放射された光線が反射面22における任意の反射位置R6に入射されると、当該反射位置R6において反射された光線は、当該反射位置R6に入射される際の光線間の角度β(>α)が維持された状態で、非球面レンズ30の光入射面31に入射され、その後、集光位置Qにおいて結像されることになるが、特定の形状に調整された凹面集光鏡20の反射面22および非球面レンズ30の光入射面31の作用によって、集光位置Qにおいて一定の大きさAのアーク像として結像される。
すなわち、反射面22上の反射位置R5において反射される光線は、当該反射位置R5に対応する非球面レンズ30の光出射面32の位置付近の光線密度を等密度で出射する場合(図9参照。)に比べて大きくしているために、非球面レンズ30の光出射面32での出射光分布が等密度で出射する場合に比べて大きなアーク像として集光位置Qにおいて結像される。また、反射面22上の反射位置R6において反射される光線は、当該反射位置R6に対応する非球面レンズ30の光出射面32の位置付近の光線密度を等密度で出射する場合(図9参照。)に比べて小さくしているために、非球面レンズ30の光出射面32での出射光分布が等密度で出射する場合に比べて小さなアーク像として集光位置Qにおいて結像される。これにより、集光位置Qにおいて、アパーチャー50の大きさの範囲内で形成された一定の大きさAのアーク像として結像されることとなる。
従って、上記構成の光学装置によれば、集光位置Qにおいて、アーク像の大きさが揃うので、高圧放電ランプ11のアークの大きさに起因してアパーチャー50に入射されなかった光線を利用することができるようになって光の利用効率が高くなる結果、十分に高い照度を得ることができる。
【0032】
以上のように、上記構成の光学装置は、集光位置においてアーク像の大きさが揃うので、例えばロッドインテグレータ,インテグレータレンズ等の小型の光学部材を有効に使うことができ、例えばLCDプロジェクタなどのプロジェクタ装置用の光源として有用なものとなる。このような投影装置においては、例えばインテグレータレンズの入射面において、凹面集光鏡の反射上における任意の反射位置に係る各アーク像の光束径を略一致したものとすることができるので、インテグレータレンズの入射面から外れる光がなくなって光の利用率が向上する結果、投影装置の投射画面に十分な明るさを得ることができる。
【0033】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
<実験例1>
図1および図2に示す構成に従って、本発明に係る光学装置を作製した。各構成部材の仕様は次に示すとおりである。
〔高圧放電ランプの仕様〕
放電容器:材質;石英ガラス、発光管部の最大外径;φ12mm、発光管部の肉厚;3.2mm、発光管部の内容積;75mm3
電極間距離:1.0mm、
水銀の封入量:0.15mg/mm3、アルゴン(希ガス)の封入量:10kPa、
定格電圧:75V、定格消費電力:300W、
〔凹面集光鏡の仕様〕
基材の材質:硼珪酸ガラス
光出射口の開口径:φ52mm、反射部の光軸方向の長さ:28mm、
反射面を構成する微小反射面要素:凸曲面鏡、数:1000個
配設位置:高圧放電ランプのアーク中心位置が光出射口の開口端面より21mm光軸方向内方側に位置される位置、
〔非球面レンズの仕様〕
材質:硼珪酸ガラス(テンパックス(登録商標))、屈折率:1.47、
配設位置:凹面集光鏡の光出射口の開口端面より25mm光軸方向外方側の位置、
集光位置:光出射面より30mm光軸方向外方側の位置
凹面集光鏡の反射面の形状および非球面レンズの光入射面の形状:非球面レンズの光出射面において、凹面集光鏡における反射面上の、アーク中心の光軸に垂直な方向(θ=90°)に位置される反射位置で反射される光線が非球面レンズの光出射面から出射される位置での光線密度が最小となり、当該位置より非球面レンズの中心軸側および非球面レンズの周縁側に向かうに従って光線密度が大きくなるよう、光線密度がsinθに従って変化する出射光分布の得られる形状、非球面レンズの光出射面での最大光線密度を1としたときの最小光線密度(相対値);0.64、
有効反射領域:40°≦θ≦140°の範囲、
【0034】
また、上記において作製した本発明に係る光学装置において、凹面集光鏡として、凹面集光鏡の反射面の形状を、非球面レンズの光入射面の形状との関係において、非球面レンズの光出射面において光線密度が等密度となる出射光分布の得られる形状としたものを用いたことの他は、上記光学装置と同一の構成を有する比較用の光学装置を作製した。
【0035】
本発明に係る光学装置および比較用の光学装置について、非球面レンズによる集光位置に、光入射面の外径寸法がφ3mmであるロッド状のインテグレータレンズを配設し、このインテグレータレンズから照射される光の照度を測定したところ、本発明に係る光学装置によれば、比較用の光学装置を用いた場合より3%程度高い照度が得られることが確認された。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の光学装置においては、非球面レンズは、光出射面が凹凸を有するレンズ面とされた構成のものであってもよく、また、光入射面および光出射面の両方が凹凸を有するレンズ面とされた構成のものであってもよい。
また、非球面レンズは、集光性を有するものに限定されず、例えば図6(A)に示すように、平行光化性を有するもの30Aであっても、図6(B)に示すように、発散性を有するもの30Bであってもよい。例えば、平行光化性を有する非球面レンズ30Aが用いられる場合には、例えばインテグレータレンズ等の光学部材の光入射面において、各アーク像の光束径を略一致したものとすることができるので、インテグレータレンズの入射面から外れる光がなくなって光の利用率が向上する結果、高い照度を得ることができる。
さらにまた、本発明の光学装置を構成する高圧放電ランプは、超高圧水銀ランプに限定されるものではなく、例えばショートアーク型のキセノンランプを用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 光源装置
11 高圧放電ランプ
12 発光管部
13A,13B 封止部
15 放電容器
16 電極
16a 先端
17 電極軸部
18 金属箔
19 外部リード
Ac アーク中心
20 凹面集光鏡
21 反射部
22 反射面
23 光出射口
25 微小反射面要素
28 筒状頸部
29 接着剤
X 凹面集光鏡の光軸
30,30A,30B 非球面レンズ
31 光入射面
32 光出射面
Q 集光位置
40 楕円面反射鏡
40A リフレクタ
41 反射面
42a,42b 電極の先端
45 非球面レンズ
46 光入射面
47 光出射面
50 アパーチャー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧放電ランプと、光軸が当該高圧放電ランプのアークの方向に沿って延びる状態で、当該高圧放電ランプを取り囲むよう配置された凹面集光鏡と、この凹面集光鏡の光出射方向前方に配置された、前記凹面集光鏡の光軸に対して回転対称な非球面レンズとを備えた光学装置において、
前記凹面集光鏡の反射面は、前記非球面レンズの光出射面において、前記高圧放電ランプのアーク中心の前記凹面集光鏡の光軸に垂直な方向に位置される反射位置で反射される光線が前記非球面レンズの光出射面から出射される位置での光線密度が最小となる出射光分布が得られるよう、前記非球面レンズの光入射面および光出射面の形状との関係において設定された形状を有することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記非球面レンズの光出射面における出射光分布は、前記高圧放電ランプのアーク中心から前記凹面集光鏡の反射面における任意の反射位置に向かう光線の方向と前記凹面集光鏡の光軸とがなす角度をθとするとき、光線密度が最小となる位置より前記非球面レンズの周縁側および前記非球面レンズの中心軸側に向かうに従って光線密度が大きくなるよう、光線密度がsinθに従って変化するものであることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記凹面集光鏡の反射面は、前記凹面集光鏡の光軸に対して各々設定された角度で連続して配設された複数の微小反射面要素により構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記凹面集光鏡の反射面を構成する微小反射面要素が1000個以上であることを特徴とする請求項3に記載の光学装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−204123(P2012−204123A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67170(P2011−67170)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】