説明

光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体、光学部品及び光ディスク

【課題】 耐熱性と靭性の両特性を有するフィルム状光透過層を巻層体とした際の光透過層同士の貼り付きによる再繰り出し性悪化を改善する合紙、基材付きとする方法の気泡部分の光透過層への転写、剥離困難性をさらに改良し、欠点、異物がなく平滑な光学特性及び表面平滑性が良好で、製造時における作業性が良好な光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体、光学部品及び光ディスクを提供する。
【解決手段】 膜厚が20〜250μm、膜厚精度が±2.0μm以内、かつ、405nmにおける光透過率が90%以上である光透過層と、使用時に剥離除去され、かつ、当該光透過層と接する面が剥離接着処理されたプロテクト層とが、別途形成された後、積層された2層積層フィルムであり、膜厚が30〜350μmである光学部品用積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量化した高密度DVD、有機EL、フレキシブルディスプレイ又は電子ペーパー等の光学用部品の部材として適用可能な光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体、光学部品及び光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、透明なプラスチック基盤よりなる支持基盤上に、微細な凹凸からなるビット列や溝からなる信号情報を記録した記録層を形成しており、記録層が形成された面と対向する面側からレーザー光等を照射し、支持基盤上の信号情報に応じて反射光量が変化することにより、情報を読み出すシステムである。
このような光ディスクの種類として、コンパクトディスク(CD:Compact Disk)、DVD( Digital Versatile Disk)または光磁気記録ディスク等が挙げられる。代表的な光ディスクであるCDにおいては、厚さが0.6mmである支持基盤上に情報を読み出す透明な光透過層が形成されており、光透過層は記録層を有する支持基盤を兼ねた構造である。CDでは、記録再生用として波長780nmのレーザー光を使用しており、光透過層側から記録再生用のレーザー光を照射し、支持基盤上の記録層に刻印されたビット列や溝からなる信号情報に応じて変化する反射光量に基づき記録層に記録された情報を再生する。
【0003】
CDよりも記録容量の高いDVDに代表される光ディスクにおいては、記録再生用のレーザー波長は635nmであり、基本的には、前述したCDと同様に、記録層にレーザー光を照射して信号情報の記録及び再生を行う。
図3は、DVDの構造を概略的に説明するためにDVDの一部を拡大した斜視図であり、図4はその断面図である。図3及び図4に示すように、DVD10は、支持基盤11と、支持基盤11上に形成された記録層12と、記録層12上に形成された光透過層13と、を備える。さらに、具体的に説明すると、単層板においては情報を読み出す透明な支持基盤11の厚さは0.6mmであり、この支持基盤11上にビット14列や記録用溝等の情報が記録された記録層12が形成され、記録層12上に支持基盤11と同厚さ(0.6mm)の透明支持基盤を張り合わせて光透過層13が形成される。なお、記録層12上に張り合わせて形成された光透過層13は、通常「ダミー」と呼ばれ、光ディスク自体の強度を向上させる役割を果たしている。上記図3及び図4に示すように、光透過層13側からレーザー光15を照射して、記録層の情報を記録及び再生する。
さらに、ここ数年、映像情報や動画情報等の発展に伴い、記録容量を大容量化したDVDが求められ、次世代ディスクと呼ばれる記録容量が20GBを超える大容量の高密度DVDの開発が進められている。高密度DVDは、直径12センチのサイズであり従来と同様のサイズであるため、記録層におけるトラックピッチを狭小化しあるいはビット長を縮小化する等により微細化し、高密度化を図ることが要求されている。
具体的には、厚さが1.1mm程度の支持基盤上にビット列や溝等により信号情報が記録された記録層が形成され、記録層の表面には透明な厚さ0.1mm程度のフィルムを接着して光透過層が形成される。そして、光透過層の面側から400nm程度の短波長の青色レーザーを照射して、信号情報の記録及び再生を行う。
上記CD、DVD及び次世代ディスク等の支持基盤及びダミー層である光透過層として、通常、ポリカーボネートが使用されており、次世代ディスクの光透過層としてもポリカーボネートが使用されているが、ポリカーボネートに替わる新たな高分子材料の開発が進められている。
【0004】
開発が進められている代表的な高分子材料として、例えば、アクリル系樹脂が挙げられるが、アクリル系樹脂は、比較的安価であり、透明性が高く、ゴム状物やガラス状ポリマ等の多様な特徴を有するポリマを比較的容易に製造でき、さらには、変性が容易である等の優れた特性を有している。しかし、優れた特性を備えている反面、アクリル系樹脂をフィルム形状とするためには、強度、耐熱性と靱性の相反する特性を両立させる必要があり、従来のアクリル樹脂では、上記特性を両立させることが困難であるため、大きな課題となっていた。アクリル樹脂全般に共通して靱性が低いことが課題であるが、例えば、樹脂中にゴム粒子を添加して、アクリル樹脂から形成されるフィルムの靭性を高める方法が幾つか報告されている(特許文献1、特許文献2参照)。しかし、樹脂中にゴム粒子を添加する等してフィルムの靭性を改善することが可能であるが、フィルムを折り曲げた際に白化現象が生じてしまい、フィルムの折り曲げ加工性が低下していた。このため、室温(25℃)以上のガラス転移点と靱性の必要な薄膜フィルムの形成能(折り曲げ加工性)を両立するアクリル樹脂は見出されていなかった。
そこで、例えば、1種又は2種以上の合成高分子を混合して分子間に水素結合を形成して擬似的な架橋構造を持たせ、従来の材料では実現できなかった新たな特性を導入した樹脂組成物が開発されている(特許文献3参照)。その一例として、ガラス転移温度が低い重合体としてプロトン供与性原子団である水酸基を含んだアクリル重合体と、ガラス転移温度が高い重合体としてプロトン受容性原子団であるアミン基を含んだアクリル重合体をブレンドし、分子間に水素結合を形成し擬似的な架橋構造として耐熱性と靱性との各特性を両立した光透過層用のフィルムが得られることが報告されている(特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特公昭58−167605号公報
【特許文献2】特開平3−52910号公報
【特許文献3】特開2000−273319号公報
【特許文献4】特開2002−38036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記方法により作製された光透過層用のフィルムは、耐熱性と靭性との両特性を得られるため、本フィルムを使用して、光ディスク等の光学部品を作製している。しかしこの方法で作製された光透過層は、単独で巻き取ると光透過層同士で貼り付いてしまい再繰り出しが難しいという問題が生じた。
そこで、この問題を解決するために、合紙などを挟むことや基材層から剥がさずにそのまま巻き取る方法が検討されたが、前者は張り合わす際、気泡などを巻き込み気泡部分が光透過層に転写する、後者は表面平滑性を維持しつつ巻き取ることが可能となったが、光透過層の表面平滑性が良い物を得るためには、使用する基材層は平滑でありかつ密着性も高い物を使用しなければならないため、加工後基材層を剥がす際、剥がすことが難しいため実用には至らず巻き取り形状の問題は解決されずにいた。
【0007】
大容量化した高密度DVD等の光ディスクでは、前述したようにフィルム表面に用いるレーザー光線の波長に比較して大きな欠点や異物が存在すると、読みとりエラーが発生する等の不具合が生じ、その結果、光学特性が低下してしまうという問題を有していた。このため、光学部品を構成するフィルムには、その表面が平滑であることが要求されている。
本発明は、上述した問題を解決するためのものであり、光学特性及び表面平滑性が良好であり、かつ、製造時における作業性が良好な光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体、光学部品及び光ディスクを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく本発明者らは種々研究した結果、特定の特性を示す2層積層構造のフィルムを形成することにより、フィルム表面上に欠点や異物をなくすことを見出し、本発明を完成させたものである。また、軽剥離接着処理を行ったプロテクトフィルムを用いた2層積層フィルムとしたため、製造時の作業性をも改善できることを見出したものである。
すなわち、本発明は次の各項に関する。
[1] 膜厚が20〜250μm、膜厚精度が±2.0μm以内、かつ、405nmにおける光透過率が90%以上である光透過層と、使用時に剥離除去され、かつ、当該光透過層と接する面が剥離接着処理されたプロテクト層とが、別途形成された後、積層された2層積層フィルムであり、膜厚が30〜350μmである光学部品用積層フィルム体。
[2] 前記プロテクト層が、前記光透過層と接する面の膜厚精度が±2.0μm以内である[1]に記載の光学部品用積層フィルム。
[3] 前記プロテクト層が、剥離接着処理されていない面の膜厚精度が±2.0μm以内である[1]又は[2]記載の光学部品用積層フィルム。
[4] 前記光透過層が、主としてアクリル系重合体からなる[1]〜[3]のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
[5] 前記光透過層は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種の受容性原子団を含むビニル系重合体Bとを含み、前記ビニル系重合体A及びビニル系重合体Bを混合することにより前記プロトン供与性原子団と前記プロトン受容性原子団との間に分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された熱可塑性樹脂から主としてなる[1]〜[4]のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
[6] 前記プロテクト層の厚さが、10〜200μmである[1]〜[5]のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
[7] 前記プロテクト層の剥離接着処理は、プロテクト層上への高分子化合物の塗布による離型処理である[1]〜[6]のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
[8] 前記プロテクト層は、主としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂から成[1]〜[7]のいずれかに記載の光学部品用積層フィルム。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムをロール形状に巻き取り形成されたフィルム巻層体。
[10] [1]〜[8]のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムのプロテクト層から剥離された光透過層を貼り付けて形成された光学部品。
[11] 光ディスクである[10]記載の光学部品。
[12] 支持基盤上に記録層、接着層及び光透過層が順次形成された光ディスクであって、前記光透過層が[1]〜[8]のいずれかに記載の光学部品用積層フィルムを用いて形成されたものである光ディスク。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学特性及び表面平滑性が良好であり、かつ、製造時における作業性が良好な光学部品用積層フィルム、フィルム巻層体、光学部品及び光ディスクが得られる。特に、特定の特性を示す2層積層構造のフィルムを形成することにより、フィルム表面上に欠点や異物をなくすことができ、軽剥離接着処理を行ったプロテクトフィルムを用いた2層積層フィルムとしたため、製造時の作業性をも改善できることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、膜厚が20〜250μm、膜厚精度が±2.0μm以内、かつ、405nmにおける光透過率が90%以上である光透過層と、使用時に剥離除去され、かつ、当該光透過層と接する面が剥離接着処理されたプロテクト層とが積層された2層積層フィルムであり、膜厚が30〜350μmである光学部品用積層フィルムである。
本発明において、2層積層フィルムの膜厚を30μm〜350μmと規定したが、膜厚が30μm未満になると表面平滑性や作業性が悪くなり、膜厚が350μmを超えると表面平滑性や405nmの光透過率が悪くなるからである。2層積層フィルムの膜厚は35〜300μmであることが好ましく、より好ましくは40〜250μmの範囲である。また、光透過層の膜厚精度は±2.0μm以内であり、光透過率は90%以上である。なお、膜厚、膜厚精度及び光透過率の測定は、後述する実施例において説明する。
【0011】
上記光学部品用積層フィルムは、光透過層の膜厚が20〜250μm、膜厚精度が±2.0μm以内、かつ、405nmにおける光透過率が90%以上である光透過層を有することを特徴とする。光透過層の膜厚が20μm未満であると表面平滑性や作業性が悪く、膜厚が250μmを超えると表面平滑性や405nmの光透過率が悪くなるからである。また、光透過層の膜厚は25〜200μmであることが好ましく、より好ましくは25〜150μmの範囲である。また、光透過層の膜厚精度は±2.0μm以内であり、光透過率は90%以上とする。
【0012】
一方、プロテクト層の膜厚は15〜150μmであることが好ましく、より好ましくは20〜125μm、膜厚精度は±2.0μm以内、より好ましくは±1.0μm以内であり、表面平滑性は20μm以下であることが好ましい。なお、この膜厚精度は、前記光透過層と接する面の膜厚精度、光透過層と接しない面(剥離接着処理が必須ではない面)の膜厚精度ともに、±2.0μm以内であることが好ましい。
なお、本発明において膜厚の測定は、レーザーフォーカス変位計(キーエンス製、LT−8010)を用いて、任意の大きさ(例えば1cm〜10000cmの面内)について、全体から適切に(例えば25〜1000点)測定点を選択して測定し、その平均値を膜厚とすることができる。
【0013】
本発明におけるプロテクト層は、光透過層と接する面が剥離接着処理されている。ここで剥離接着処理とは、剥離しやすい状態で、その層が光透過層に接着されていることをいい、具体的には、各種離型処理されたものがある。離型処理する方法としては、例えば、フッ素化マグネシウム、フッ素化酸化シリコン(SiOF)、窒化珪素等の無機薄膜を蒸着等により基材層上に成膜する方法や、溶剤に可溶なフッ化オレフィン系高分子やシクロヘキサン構造を有する高分子をディッピング等によりロールに塗布し、溶剤を乾燥して基材層上に成膜する等の方法が挙げられる。ここに示した基材層の離型処理方法は例示にすぎず、これらの方法に限定されるものではないが、高分子化合物の塗布による離型処理が好ましい。
【0014】
また、上記光学部品用積層フィルムにおいて、光透過層は、主としてアクリル系重合体からなることが好ましい。
さらに、上記光学部品用積層フィルムにおいて、光透過層は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種の受容性原子団を含むビニル系重合体Bとを含み、前記ビニル系重合体A及びビニル系重合体Bを混合することにより前記プロトン供与性原子団と前記プロトン受容性原子団との間に分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された熱可塑性樹脂から主としてなることが好ましい。
【0015】
この光透過層は、特性の異なる2種以上のビニル系重合体を混合し、分子内の相互間に擬似的な架橋を形成したビニル系重合体から形成したものであり、擬似的な架橋という表現を使用したが、これは、ビニル系重合体の架橋が、熱分解温度以下の熱や溶剤等により切断され、温度を下げるか、或いは溶剤を除去すると架橋構造が再形成されるためである。上記ビニル系重合体を使用してフィルムを形成することにより、1種のビニル系重合体からフィルムとした場合には得ることができない複数の特性を待たせることが可能となる。例えば、2種のビニル系重合体を混合する場合に、耐熱性が良好であり正複屈折である一方のビニル系重合体と、柔軟性を有し負複屈折である他方のビニル系重合体とを使用して、両者のビニル系重合体を混合して擬似架橋を形成する。擬似架橋を形成することにより、耐熱性及び柔軟性の特性を両立すると共に、正負複屈折を相殺しゼロ複屈折化して低複屈折とし、フィルムに相反する特性を持たせることが可能となる。また、2種以上のビニル系重合体を混合することにより相反する特性を導入することができる。
【0016】
また、上記発明においてプロトン供与性原子団は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基、チオフェノール性メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基などの官能基を含む群から選ばれた物とすることが好ましく、プロトン受容性原子団は、カルボニル基、スルホニル基、ホスホリル基、シアノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、含窒素複素環基などの官能基を含む群から選ばれた物とすることが好ましい。
さらに、上記発明において、プロトン供与性原子団は、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基などの官能基を含む群から選ばれた物とすることが好ましく、プロトン受容性原子団は、2級アミノ基、3級アミノ基、含窒素複素環基などの官能基を含む群から選ばれた物とすることが好ましい。
【0017】
また、上記発明において、2層積層フィルムの表面平滑性、具体的には、15ミクロン幅における凹凸が20nm以下であることが好ましい。
本発明の上記光学部品用積層フィルムは、光ディスクの光透過層用として好適である。
【0018】
以下、本発明の光学部品用積層フィルムを使用して光ディスクを構成し、20GBを超える大容量の高密度DVDとした例を挙げて説明する。
図1は、高密度DVDの一部の構造を示す斜視図であり、図2はその断面図である。図1及び図2に示すように、高密度DVD1は、支持基盤2上に記録層3を備え、記録層3上に粘着層4を介して光透過層5が形成される。
DVDは、405nmの短波長レーザー光7を光透過層5側から照射し、光透過層5を介して記録層3の信号情報を再生及び記録するものであり、高密度DVD1は、光透過層5を薄肉化している。
【0019】
本発明の光学部品用積層フィルムは、プロテクト層と光透過層との2層が積層されたフィルムであり、このフィルムの光透過層は剥離されて、上記構成の高密度DVDの光透過層として使用される。
上記高密度DVDを構成する各層は、例えば、支持基盤2の膜厚を0.90mm〜1.15mm、記録層3の膜厚を10μm〜60μm、より好ましくは支持基盤2の膜厚を1.00mm〜1.10mm、記録層3の膜厚を15μm〜50μmとすることが好ましい。
【0020】
上記高密度DVDを構成する各層の構成材料について説明する。なお、光透過層5は、本発明の光学部品用積層フィルムを使用したものであり、また、支持基盤2及び記録層3は、従来と同様の材料から形成されるものを適用することができ、例えば、支持基盤2は、ポリカーボネート等のプラスチック基板から構成される。
粘着層4は、粘着剤を使用してフィルムを作製して形成することができ、粘着層3を形成する粘着剤として、例えば、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エステル系粘着剤等を選択することができる。特に、粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用することが好ましい。但し、ここに示した粘着剤は一例を示したものであり、これらに制限されるものではない。
【0021】
上記粘着層としてフィルムを作製する際、粘着剤を基材に予め塗布したフィルムを使用することができる。粘着剤を塗布するための基材として、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレン系エラストマーフィルム、ポリオレフィン系エラストマーフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートセロハンフィルム、アセテートフィルム、各種フッ素フィルム、ポリイミドフィルム等を選択することができる。但し、ここに示した粘着剤を塗布するための基材は一例であり、これらに制限されるものではない。
また、フィルムに粘着層をラミネート処理する時期は、フィルムを塗工、乾燥した後とすることが特に好ましい。但し、ここに示したフィルムに粘着層をラミネート処理する時期は、一例であり、これらに制限されるものではない。
【0022】
本発明におけるプロテクト層は、剥離接着処理された面を、光透過層側の面に設けたものであり、必要に応じて同様の処理を反対側の面に設けることもできる。2層積層構造のフィルムのプロテクト層として、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルム、PENフィルム、ステンレス、テフロン(登録商標)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、エポキシ樹脂フィルム、ノルボルネン系高分子およびこれをブレンドした樹脂等が選択できる。なお、ここに示したプロテクト層は、一例を示したものであり、上述したフィルムに限定されるものではない。
【0023】
上記方法により得られたフィルムは、強靱かつ柔軟性を有しており、機械特性に優れ、形状を維持することが容易である。
光透過層5は、主として熱可塑性樹脂から形成されたフィルムであり、この熱可塑性樹脂は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと分子内に少なくとも1種の受容性原子団を含むビニル系重合体Bと、を含むビニル系重合体であると好ましい。このビニル系重合体は、ビニル系重合体A及びビニル系重合体Bの両者を混合することにより、プロトン供与性原子団とプロトン受容性原子団との間に分子間水素結合による擬似的な架橋が形成されているものであることが好ましい。
【0024】
分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aを作製するためのビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイロキシプロピルアクリレート、ビニル安息香酸、安息香酸ビニル及びその誘導体等が挙げられる。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに制限されるものではない。
【0025】
また、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bを作製するためのビニル系単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−ジエチルアクリルアミド、N−ジメチルメタクリルアミド、N−ジエチルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、ビニルピリジン及びその誘導体等が挙げられる。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに制限されるものではない。
【0026】
さらに、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとのそれぞれに対して、後述する他のビニル系重合体とを共重合することができる。使用できる単量体としては、得られる共重合体の透明性を損なわない物であれば特に限定されず、具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸ノルボルニルメチル、アクリル酸シアノノルボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸メンチル、アクリル酸フェンチル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ジメチルアダマンチル、アクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル、アクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−4−メチル、アクリル酸シクロデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸フェニルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−4−メチル、メタクリル酸シクロデシル等のメタクリル酸エステル類、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、α−クロルスチレン、α−ブロモスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸カルシウム、アクリル酸バリウム、アクリル酸鉛、アクリル酸すず、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸バリウム、メタクリル酸鉛、メタクリル酸すず、メタクリル酸亜鉛等の(メタ)アクリル酸金属塩、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド等が挙げられる。また、これらは1種又は2種以上で使用してもよい。但し、ここに示した化合物は一例であり、これらに制限されるものではない。
【0027】
また、本発明において、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種以上のプロトン受容性原子団を含むビニル系重合体Bとを混合する方法は、溶融混練法、ワニスブレンド法等を適用することができ、特に方法は問わない。
また、光透過層用のフィルムを形成する樹脂組成物を製造するための重合方法としては、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の既存の方法を使用することができる。
重合を行う際には、重合開始剤を用いることができる。具体的には、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒及び過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用可能である。
【0028】
分子量調整剤として、メルカプタン系化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー等を必要に応じて添加することもできる。なお、ここに示した分子量調整剤は、一種または二種以上を必要により使用しても良いものであるが、ここに示した分子量調整剤は一例を示したにすぎず、例示した分子量調整剤に制限されるものではない。
重合方法として熱重合を使用する場合には、重合温度は、0〜200℃の間で適宜選択することができ、より好ましい重合温度は50〜120℃の範囲である。
重合体(光透過層)には、その使用にあたって、劣化防止、熱的安定性、成形性及び加工性などの観点から、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などの抗酸化剤、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、トリグリセライド類、フッ素系界面活性剤、高級脂肪酸金属塩などの離型剤、その他滑剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重金属不活性化剤などを添加して使用しても良い。
本発明では、得られた重合体から、溶融混練法や溶媒キャスト法により有機溶媒を揮発させてフィルムを得ることができる。係るキャストの条件は特に限定されるものではないが、例えば、空気中や不活性ガス中において50℃〜160℃の温度条件下で行うことが可能である。また、これら条件を用いて予備乾燥した後、フィルムを剥がし、さらに、これを160〜350℃の高温で乾燥して乾燥時間を短縮することが可能である。
【0029】
上記材料を使用して光透過層としてのフィルムを作製する場合には、基材層を選択すると良い。基材層としては、具体的に、PETフィルム、PENフィルム、ステンレス、テフロン(登録商標)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、エポキシ樹脂フィルム、ノルボルネン系高分子およびこれをブレンドした樹脂等が選択でき、特に、PETフィルム、PENフィルムを使用するのが好ましく、より好ましくはPETフィルムを使用すると良い。なお、ここに示した基材層は、一例を示したものであり、基材層は表面平滑性が良好であれば良く、上述したフィルムに限定されるものではない。
【0030】
本発明では、この光透過層と、プロテクト層を、ラミネートして2層フィルムとするが、ラミネートする時期は、前記基材層をはがす前、はがした後のいずれでもよい。はがした後の方が、ラミネート後に基材層を剥がす操作により2層フィルムを損傷することがないので好ましい。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
本実施例では、光透過層として、ポリマAとポリマBとを混合した溶液を使用して基材層のフィルム上に光透過層用のフィルムを作製し、基材フィルムを剥がした後、プロテクトフィルムを積層し、光透過層用のフィルムとプロテクト用のフィルムから2層積層フィルムに形成した。
【0032】
(ポリマA) 耐圧2.3kg/cmGの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてアセトン1279gを投入し、アクリル酸ブチル(BA、和光純薬(株)製)994g、アクリル酸(AA、和光純薬(株)製)86g、イソプロピルアルコール(IPA、トクヤマ(株)製)160gを秤取した。その後、室温(25℃)にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド(LPO、日本油脂(株)製)0.72g、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート(PBO、日本油脂(株)製)0.24g、分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー0.054gをアセトン40gに溶解して、室温にて窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。その後、オートクレーブ内を加圧・密閉にして、60℃まで昇温し、同温度で約20時間保持した後、90℃まで昇温した。その後同温度で約10時間保持して高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
【0033】
(ポリマB) 耐圧2.3kg/cmGの4リットルのステンレス鋼製オートクレーブに重合溶媒としてアセトン1279gを投入し、メタクリル酸メチル(MMA、旭化成(株)製)810g、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル(TCDMA、日立化成(株)製)205g、アクリル酸ブチル(BA)32g、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(FA712HM、日立化成(株)製)32gを秤取した。その後、室温にて窒素ガスを約1時間通し、溶存酸素を置換した後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、和光純薬(株)製)2.88g、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル(ACHN、和光純薬(株)製)0.96gをアセトン40gに溶解して、室温にて窒素ガスを約10分間通し、溶存酸素を置換した混合溶液を添加した。その後、オートクレーブ内を加圧・密閉にして60℃まで昇温し、同温度を約20時間保持した。さらに、90℃まで昇温した後、同温度で約10時間保持し、高分子溶液を得た。得られた高分子溶液の重合率は97%以上であった。
得られたポリマAワニスとポリマBワニスを4:6の固形分の重量比率で混合して混合溶液を得た。
【0034】
<2層積層フィルムの作製>
上記ポリマA及びポリマBの混合溶液を使用し、ヒラノテクシード製コンマコータヘッドの塗工機を用い、コスモシャインA−4100(東洋紡(株))の基材層上に塗工し、乾燥した。その後、基材層であるコスモシャインA−4100を剥がした後、トレテック#7531(東レ(株)、高分子化合物による離型処理がされたもの)のプロテクト層を用いて、離型処理側を光透過層とラミネートし、これを試料とした。この時の2層積層フィルムの厚さは111μmであった。また、光透過層の単独のフィルムにおける波長405nmの光透過率は92.5%であり、膜厚精度は±1.6μmであった。
【0035】
(実施例2)
実施例1で用いたトレテック#7531をヒタレックスL−8110(日立化成(株)、高分子による離型処理がされたもの)に変えた以外は同様の操作を行った。この時の2層積層フィルムの厚さは130μmであった。また、光透過層の単独のフィルムにおける波長405nmの光透過率は92.3%であり、膜厚精度は±1.8μmであった。
【0036】
(比較例1)
実施例1で用いたトレテック#7531をサニテクトPAC−2(サンエー化研(株)、離型処理がされていないもの)に変えた以外は同様の操作を行った。この時の2層積層フィルムの厚さは152μmであった。また、光透過層の単独のフィルムにおける波長405nmの光透過率は91.9%であり、膜厚精度は±2.1μmであった。
【0037】
上記実施例1、実施例2および比較例1より作製されたサンプルについて、以下に示す測定方法を用いて各種の特性を評価し、評価結果を表1に示した。
[405nmの光透過率]
光透過層の光透過率は、JASCO社製V−570の分光光度計を用いて測定し、測定条件は、室温(25℃)で波長405nmの領域とした。
[膜厚(μm)、膜厚精度(μm)]
膜厚は、レーザーフォーカス変位計(キーエンス製、LT−8100)を使用し、サイズ12cm×12cmの正方形フィルムについて測定した。
正方形フィルムの4つの辺を、それぞれ直線A、直線B、直線C、直線Dとし、直線Aに対向する辺を直線Cとし、直線Bに対向する辺を直線Dとした。直線Aから直線Cに向かって3cmの間隔を空けた3本の平行直線を各々直線A1、直線A2、直線A3とし、これら3本の平行直線(直線A1、直線A2、直線A3)と、直線Aと、直線Cとの合計5本について、以下の手順により直線上の各点におけるフィルムの膜厚を測定した。まず、直線Aの一端部から正方形内側の1cmの点を基準点とし、基準点から直線Aの他端部に向かい1mmの間隔を空けた各点について、他端部から正方形内側1cmの点までの長さ10cmに亘る合計101個の各点についてフィルムの膜厚を測定した。次に、直線Aと同様の方法を用いて、直線A1、直線A2、直線A3及び直線Cについての各点の膜厚を測定し、5本の直線について合計505個の各点の膜厚を測定した。さらに、前述した直線Aから直線Cまでの各直線と同様に、直線Bから直線Dに向かう5本の直線(直線B、直線B1、直線B2、直線B3、直線D)の合計505個の各点について膜厚を測定した。最後に、前述した方法により測定された正方形フィルム内の総計1010個についての膜厚の平均値をフィルムの膜厚とした。
また、膜厚の最大値から平均膜厚を差し引いた値、及び平均膜厚から膜厚の最小値を差し引いた値を各々算出し、算出した値のうち大きい値を膜厚精度とした。
[ガラス転移温度(Tg)]
DVAで測定した。測定装置として、(株)ユービーエム製レオスペクトラーDVE−V4を使用した。測定条件は、昇温速度3.0℃/min、周波数10.0hzとして引張り弾性率を測定し、得られたデータのうちtanδのピークトップをガラス転移温度(Tg)とした。
【0038】
【表1】

【0039】
本発明の光透過層と接する面が剥離接着処理されたプロテクト層とが、別途形成された後、積層された2層積層フィルムである光学部品用積層フィルムは、耐熱性と靭性の両特性を有し、再繰り出し性が良好で、製造時における作業性が良い。一方、比較例のプロテクト層のない2層積層フィルムは、再繰り出し性に劣り作業性が悪化した。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態における、高密度DVDの一部の構造を示す斜視図。
【図2】図1に示した高密度DVDの一部の構造を示す断面図。
【図3】従来例における、DVDの構造を概略的に説明するためにDVDの一部を拡大した斜視図。
【図4】図3に示したDVDの断面図。
【符号の説明】
【0041】
1 高密度DVD
2 支持基盤
3 記録層
4 粘着層
5 光透過層
6 ハードコート層
7 レーザー光
10 DVD
11 支持基盤
12 記録層
13 光透過層
14 ビット
15 レーザー光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚が20〜250μm、膜厚精度が±2.0μm以内、かつ、405nmにおける光透過率が90%以上である光透過層と、使用時に剥離除去され、かつ、当該光透過層と接する面が剥離接着処理されたプロテクト層とが、別途形成された後、積層された2層積層フィルムであり、膜厚が30〜350μmである光学部品用積層フィルム。
【請求項2】
前記プロテクト層が、前記光透過層と接する面の膜厚精度が±2.0μm以内である請求項1に記載の光学部品用積層フィルム。
【請求項3】
前記プロテクト層が、剥離接着処理されていない面の膜厚精度が±2.0μm以内である請求項1又は2記載の光学部品用積層フィルム。
【請求項4】
前記光透過層が、主としてアクリル系重合体からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部品用積層フィルム。
【請求項5】
前記光透過層は、分子内に少なくとも1種のプロトン供与性原子団を含むビニル系重合体Aと、分子内に少なくとも1種の受容性原子団を含むビニル系重合体Bとを含み、前記ビニル系重合体A及びビニル系重合体Bを混合することにより前記プロトン供与性原子団と前記プロトン受容性原子団との間に分子間水素結合による擬似的な架橋が形成された熱可塑性樹脂から主としてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部品用積層フィルム。
【請求項6】
前記プロテクト層の厚さが、10〜200μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学部品用積層フィルム。
【請求項7】
前記プロテクト層の剥離接着処理は、プロテクト層上への高分子化合物の塗布による離型処理である請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品用積層フィルム。
【請求項8】
前記プロテクト層は、主としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学部品用積層フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学部品用積層フィルムをロール形状に巻き取り形成されたフィルム巻層体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学部品用積層フィルムのプロテクト層から剥離された光透過層を貼り付けて形成された光学部品。
【請求項11】
光ディスクである請求項10記載の光学部品。
【請求項12】
支持基盤上に記録層、接着層及び光透過層が順次形成された光ディスクであって、前記光透過層が請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学部品用積層フィルムを用いて形成されたものである光ディスク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−196043(P2006−196043A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3729(P2005−3729)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】