説明

光学部材用粘着剤組成物、光学部材用粘着剤層、粘着型光学部材、及び画像表示装置

【課題】架橋処理におけるエージング時間の短縮によって加工性を向上でき、長期の過酷条件下でも耐久性に優れており、かつ液晶パネルから糊残りなく光学部材を容易に剥がすことができるリワーク性を備えた粘着剤層を形成することができる光学部材用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】1)モノマー単位として、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを50重量%以上、及び炭素数4〜12のアルキル基と水酸基を有するモノマーを0.01〜2重量%含有してなる重量平均分子量50万以上の(メタ)アクリル系ポリマー、2)シランカップリング剤として、アミノ基を有するシラン化合物を前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01〜3重量部、並びに3)イソシアネート系架橋剤を前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01〜2重量部含有する光学部材用粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材用粘着剤組成物に関する。また本発明は、当該光学部材用粘着剤組成物により形成される光学部材用粘着剤層に関する。さらに本発明は、当該粘着剤層を有する粘着型光学部材、さらには前記粘着型光学部材を用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどの画像表示装置に関する。前記光学部材としては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は携帯電話やパソコンのみならずテレビジョン用途など幅広く且つ物量も時々刻々と増加している。その液晶表示装置等に用いる光学部材、例えば偏光板や位相差板などは、液晶セルに粘着剤を用いて貼り付けられる。このような光学部材に用いられる材料は、加熱条件下や加湿条件下では伸縮が大きいため、貼り付け後には、それに伴う浮きや剥がれが生じやすい。そのため、光学部材用粘着剤には、加熱条件下や加湿条件下においても対応できる耐久性が要求される。
【0003】
また、光学部材を液晶セルに貼り合わせる際、貼り合わせ位置を誤ったり、貼合せ面に異物が噛み込んだりしたような場合にも光学部材を液晶パネルから剥離し、液晶セルを再利用する場合がある。光学部材を液晶パネルから剥離する際には、液晶セルのギャップを変化させたり、光学部材を破断させるような接着状態にならないこと、すなわち光学部材を容易に剥離できる再剥離性(リワーク性)が必要とされる。しかし、光学部材用粘着剤の耐久性を重視して、単に接着性を向上させるとリワーク性が悪くなる。
【0004】
光学部材用粘着剤としては、その耐候性や透明性などの利点のためにアクリル系粘着剤が一般的に使用されている。アクリル系粘着剤を用いて粘着剤層を形成する際には、リワーク性や耐久性を付与するために、架橋処理が施されるのが通常である。このようなアクリル系粘着剤の架橋方法としては、各種架橋剤が選択されて使用されており、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーの官能基と架橋方法の総説が公表されている(非特許文献1)。
【0005】
光学部材用粘着剤の具体的な架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アルデヒド合物、アミン化合物、金属塩、金属アルコキシド、アンモニウム塩、ヒドラジン化合物など(特許文献1)、グリシジル化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、金属キレートなども知られている(特許文献2)。また、ゴム系粘着剤およびシリコーン系粘着剤の架橋剤として有機過酸化物が例示されているが、アクリル系粘着剤の架橋剤としては記載されていない(非特許文献2)。
【0006】
特許文献3では、重量平均分子量100〜250万の高分子量アクリル系ポリマー100重量部に対して、ガラス転移温度が0〜−80℃である重量平均分子量3〜10万の低分子量アクリル系ポリマーを10〜100重量部、及び多官能性化合物を0.001〜10重量部含有する粘着剤組成物が提案されている。かかる粘着剤組成物は、剥がれ、発泡及び白ヌケ現象の発生を防止でき、且つリワーク性に優れることが記載されている。しかし、特許文献3記載の粘着剤組成物も耐久性、リワーク性が不十分であり、特に大型化した液晶セルの場合には、リワーク性が不十分なためギャップ破損が起こりやすくなる。
【0007】
特許文献4では、天然ゴムからなるゴム系粘着剤をシランカップリング剤で加硫させた加硫天然ゴム系粘着剤が提案されている。また、特許文献5では、ハロゲン含有エラストマとアミノ基含有シランカップリング剤を含有する粘着剤が提案されている。しかし、これら特許文献に記載の粘着剤は、光学用途に使用した場合に着色耐候性及びリワーク性を満足できるものではない。
【0008】
【非特許文献1】粘着ハンドブック(第3版)、粘着テープ工業会編、2005,2.3.3.2 第31頁
【非特許文献2】粘着ハンドブック(第3版)、粘着テープ工業会編、2005,2.3.6.6 第80頁
【特許文献1】特開平8−199131号公報
【特許文献2】特開2003−49141号公報
【特許文献3】特開2002−121521号公報
【特許文献4】特開2003−96419号公報
【特許文献5】特開2006−225634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、架橋処理におけるエージング時間の短縮によって加工性を向上でき、長期の過酷条件下でも耐久性に優れており、かつ液晶パネルから糊残りなく光学部材を容易に剥がすことができるリワーク性を備えた粘着剤層を形成することができる光学部材用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、前記光学部材用粘着剤組成物により形成された粘着剤層、該粘着剤層を有する粘着型光学部材、及び該粘着型光学部材を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記光学部材用粘着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、1)モノマー単位として、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを50重量%以上、及び炭素数4〜12のアルキル基と水酸基を有するモノマーを0.01〜2重量%含有してなる重量平均分子量50万以上の(メタ)アクリル系ポリマー、2)シランカップリング剤として、アミノ基を有するシラン化合物を前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01〜3重量部、並びに3)イソシアネート系架橋剤を前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01〜2重量部含有する光学部材用粘着剤組成物、に関する。
【0013】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、シランカップリング剤としてアミノ基を有するシラン化合物とイソシアネート系架橋剤とを含有している。両成分を特定量添加することにより、加工性、耐久性、及びリワーク性を向上させることができる。
【0014】
前記シラン化合物の添加量が0.01重量部未満の場合には、加湿保存時に粘着剤層の耐久性が低下して剥がれが生じやすくなる。一方、3重量部を超える場合には、粘着剤層のリワーク性が低下する。
【0015】
また、イソシアネート系架橋剤の添加量が0.01重量部未満の場合には、高温時において粘着剤層の弾性率が低下して耐熱性が低下する。一方、2重量部を超える場合には、室温から高温での粘着剤層の弾性率が高くなり、応力緩和性が低下して液晶セルの反りが大きくなる。
【0016】
また、(メタ)アクリル系ポリマーに、モノマー単位として、炭素数4〜12のアルキル基と水酸基を有するモノマーを0.01〜2重量%含有させることで耐久性及びリワーク性を向上させることができる。該モノマーを共重合成分として含有した(メタ)アクリル系ポリマーを用いると、これら共重合成分の酸塩基相互作用、水素結合などが作用してリワーク性の向上とともに耐久性が向上し、加熱条件下や加湿条件下において粘着剤層の浮きや剥がれが抑制されると考えられる。該モノマーの含有量が0.01重量%未満の場合には、イソシアネート系架橋剤との反応性が乏しくなって粘着剤層の耐久性が向上しない。一方、2重量%を超える場合には、イソシアネート系架橋剤との過剰反応により架橋密度が高くなりすぎて粘着剤層の応力緩和性が低下する。
【0017】
前記光学部材用粘着剤組成物において、さらに、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、有機過酸化物を0.02〜2重量部含有することが好ましい。イソシアネート系架橋剤と(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基との反応によるウレタン結合の形成を利用した架橋方法と、有機過酸化物による熱分解架橋反応を利用した架橋方法とを併用することにより、十分な応力緩和性を維持しつつ、かつ優れた耐久性を保持するとともに、粘着剤層の製造工程において優れたハンドリング性を得ることができる。有機過酸化物の添加量が0.02重量部未満の場合には、架橋反応の進行が不十分になって耐久性が低下する傾向にある。一方、2重量部を超える場合には、架橋構造が過多となって粘着剤層の弾性率が高くなり、応力緩和性が低下して液晶セルの反りが大きくなったり、粘着型光学部材の表面均一性が悪くなる傾向にある。
【0018】
また、前記シラン化合物のアミノ基は第2級アミノ基であることが好ましい。第2級アミノ基を有するシラン化合物を用いることにより、液晶セルに貼付後の粘着剤層の粘着力の上昇を抑制することができる。
【0019】
また、前記イソシアネート系架橋剤は、反応速度が速い観点から脂肪族イソシアネートであることが好ましい。
【0020】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、さらにカルボキシル基含有モノマーを0.01〜2重量%含有することが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー中にカルボキシル基含有モノマーを含有させることで、さらに耐久性及びリワーク性を向上させることができる。カルボキシル基含有モノマーの含有量が0.01重量%未満の場合には、粘着剤層の架橋安定性が乏しくなり、耐久性に悪影響を及ぼす傾向にある。一方、2重量%を超える場合には、粘着剤層の応力緩和性が低下する傾向にある。
【0021】
また本発明は、光学部材用粘着剤組成物を架橋反応させてなる光学部材用粘着剤層、に関する。該光学部材用粘着剤層はゲル分率が45〜90重量%であることが好ましい。本発明の光学部材用粘着剤層は、応力緩和性、耐久性、及びリワーク性に優れたものである。光学部材用粘着剤層のゲル分率が45重量%未満の場合には、耐久性が低下する傾向にあり、90重量%を超える場合には、応力緩和性が低下する傾向にある。
【0022】
また本発明は、光学部材の片面又は両面に、前記光学部材用粘着剤層を有する粘着型光学部材、に関する。
【0023】
さらに本発明は、前記粘着型光学部材を少なくとも1つ用いた画像表示装置、に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、モノマー単位として、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを50重量%以上、及び炭素数4〜12のアルキル基と水酸基を有するモノマーを0.01〜2重量%含有してなる重量平均分子量50万以上の(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いる。
【0025】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が4以上のものを用いる。アルキル基は直鎖、分岐鎖のいずれでもよい。前記アルキル基の炭素数は4〜14であるのが好ましく、より好ましくは4〜12である。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0027】
本発明において、前記アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーの全モノマー成分に対して、50重量%以上用いることが必要であり、好ましくは55〜99.99重量%、より好ましくは60〜99.99重量%である。前記アルキル(メタ)アクリレートが50重量%未満の場合には、接着性に乏しくなり好ましくない。
【0028】
炭素数4〜12のアルキル基と水酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ炭素数4〜12のアルキル基と水酸基を有するものを特に制限なく用いることができる。アルキル基の炭素数は4〜8であることが好ましく、より好ましくは4〜6である。アルキル基の炭素数が3以下の場合には、イソシアネート系架橋剤との反応性が低くなり、該モノマー又はイソシアネート系架橋剤を多く使用する必要があり、粘着剤層を作製する際に乾燥直後の粘着剤層のゲル分率が低くなって加工性が悪くなる。一方、アルキル基の炭素数が13以上の前記モノマーは、入手困難であり実用的でない。
【0029】
前記モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;4−ヒドロキシメチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどがあげられる。これらのうち、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0030】
前記モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して0.01〜2重量%の割合で用いることが必要である。該モノマーの割合は、0.05〜1.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1重量%である。
【0031】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として、前記モノマーの他にカルボキシル基含有モノマーを用いることが好ましい。
【0032】
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等があげられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。これらのなかで、(メタ)アクリル酸、特にアクリル酸を用いることが好ましい。
【0033】
カルボキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して、0.01〜2重量%の割合で用いることが好ましく、より好ましくは0.05〜1.5重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0034】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として、本発明の目的を損なわない範囲で他の共重合モノマーを単独でまたは組み合わせて用いてもよい。他の共重合モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ芳香族環を有する芳香族環含有モノマーがあげられる。芳香族環含有モノマーの具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−ナフトエチル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシ−1−ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0035】
また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;などあげられる。
【0036】
また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマー;アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなども使用することができる。
【0037】
さらに、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0038】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は50万以上であることが必要であり、好ましくは70万以上、より好ましくは80万以上である。重量平均分子量が50万よりも小さい場合には、粘着剤層の耐久性が乏しくなったり、粘着剤層の凝集力が小さくなって糊残りが生じやすくなる。一方、重量平均分子量が300万よりも大きくなると貼り合せ性、粘着力が低下するため好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0039】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0040】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合の例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0041】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0042】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.6重量部程度であることがより好ましい。
【0044】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.01〜0.4重量部程度である。
【0045】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して0.3〜5重量部が好ましく、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0047】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、シランカップリング剤として、アミノ基を有するシラン化合物を含有する。該シラン化合物としては、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどがあげられる。該シラン化合物を使用すると粘着剤層の耐久性及びリワーク性が向上する。また、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどの第2級アミノ基を有するシラン化合物は、塩基性の強い第1級アミノ基を有するシラン化合物よりも液晶セルに貼付後の粘着剤層の粘着力の上昇を抑制することができるため好ましく用いられる。
【0048】
前記シラン化合物は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01〜3重量部であることが必要であり、好ましくは0.03〜2重量部であり、より好ましくは0.04〜1重量部である。
【0049】
また、本発明の光学部材用粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を含有する。イソシアネート系架橋剤とは、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。
【0050】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。
【0051】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネートを用いることが好ましい。
【0052】
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01〜2重量部であることが必要であり、好ましくは0.015〜1重量部であり、より好ましくは0.02〜0.8重量部である。
【0053】
また、架橋剤として、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを併用してもよい。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤(エポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう)があげられる。エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート、スピログリコールジグリシジルエーテルなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0054】
多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0055】
また、本発明の光学部材用粘着剤組成物は、有機過酸化物を含有することが好ましい。有機過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものを使用できるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃、好ましくは90℃〜140℃であるものを使用することが好ましい。1分間半減期温度が低すぎると、塗布乾燥する前の保存時に反応が進行し、粘度が高くなり塗布不能となる場合があり、一方、1分間半減期温度が高すぎると、架橋反応時の温度が高くなるため副反応が起こり、また未反応の過酸化物が多く残存して経時での架橋が進行する場合があるため好ましくない。
【0056】
本発明に用いられる有機過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などがあげられる。特に、架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジラウロイルパーオキシド、及びジベンゾイルパーオキシドなどが好ましく用いられる。
【0057】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0058】
前記有機過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.02〜2重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜1重量部であり、さらに好ましくは0.08〜0.6重量部である。
【0059】
粘着剤層の製造にあたり、架橋された粘着剤層のゲル分率は、45〜90重量%となるように架橋剤の添加量を調整することが好ましく、より好ましくは47〜85重量%であり、さらに好ましくは50〜80重量%である。
【0060】
所定のゲル分率の調整は、架橋剤や過酸化物等の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を考慮することにより行うことができる。架橋処理温度や架橋処理時間の調整は、例えば、光学部材用粘着剤組成物に含まれる過酸化物の分解量が75重量%以上になるように設定することが好ましく、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上である。過酸化物の分解量が75重量%より少ないと、光学部材用粘着剤組成物中に残存する過酸化物の量が多くなり、加熱処理後も経時での架橋反応が起こることで結果的にゲル分率が90重量%を超える場合などがあり、好ましくない。
【0061】
より具体的には、例えば、加熱処理温度が1分間半減期温度では、1分間で過酸化物の分解量は50重量%であり、2分間で過酸化物の分解量は75重量%であり、2分間以上の加熱処理時間が必要となる。また、例えば、加熱処理温度における過酸化物の半減期(半減時間)が30秒であれば、1分間以上の加熱処理時間が必要となり、また、例えば、架橋処理温度における過酸化物の半減期が5分であれば、10分間以上の架橋処理時間が必要となる。
【0062】
このように、使用する過酸化物によって架橋処理温度や架橋処理時間は、過酸化物が一次比例すると仮定して半減期から理論計算により算出することが可能であり、添加量を適宜調整することができる。一方、より高温にするほど、副反応が生じる可能性が高くなることから、架橋処理温度は170℃以下であることが好ましい。
【0063】
架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよいが、光学部材に温度がかかって光学部材の特性が変化する場合があるので、光学部材に貼り合わせる前に行うことが望ましい。
【0064】
架橋処理時間に関しては、生産性や作業性を考慮して設定することができるが、通常0.2〜20分間程度であり、0.5〜10分間程度であることが好ましい。
【0065】
本発明の光学部材用粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、例えば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。その際、粘着剤層の弾性率を著しく変化させない程度に添加量を調整する必要がある。
【0066】
本発明の粘着型光学部材は、光学部材の少なくとも片面に、前記粘着剤組成物により粘着剤層を形成したものである。
【0067】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレーターなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に光学部材に転写する方法、または光学部材に前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を光学部材に形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0068】
また、光学部材の表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0069】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0070】
乾燥後の粘着剤層の厚さは特に制限されず、例えば2〜500μm程度であり、好ましくは5〜100μmである。
【0071】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレーター)で粘着剤層を保護してもよい。
【0072】
セパレーターの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0073】
プラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0074】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0075】
なお、上記の粘着型光学部材の作製に用いた剥離処理したシートは、そのまま粘着型光学部材のセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0076】
光学部材としては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学部材としては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0077】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0078】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0079】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0080】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0081】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
【0082】
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
【0083】
透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0084】
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等があげられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等があげられる。一般的にこれらトリアセチルセルロースは、面内位相差(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向位相差(Rth)は、〜60nm程度を有している。
【0085】
なお、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムは、例えば、上記セルロース樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレスなどの基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などをシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法などがあげられる。
【0086】
また、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムとしては、脂肪置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0087】
環状ポリオレフィン樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などがあげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
【0088】
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」があげられる。
【0089】
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロのフィルムを得ることができる。
【0090】
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)があげられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルがあげられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂があげられる。
【0091】
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系があげられる。
【0092】
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
【0093】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
【0094】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは下記一般式(化1)で表される環擬構造を有する。
【0095】
【化1】

【0096】
式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を示す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0097】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になるおそれがある。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%より多いと、成形加工性に乏しくなるおそれがある。
【0098】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することも有る)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。質量平均分子量が上記範囲から外れると、成型加工性の点から好ましくない。
【0099】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tgが好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることから、例えば、透明保護フィルムとして偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなる。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性などの観点から、好ましくは170℃以下である。
【0100】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定される全光線透過率が、高ければ高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は透明性の目安であり、全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下するおそれがある。
【0101】
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。なお、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0102】
一方、前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0103】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0104】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0105】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0106】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
【0107】
位相差板は、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが同じ場合も含む。
【0108】
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差板では、正面位相差は150〜300nm、Nz係数は0を超え〜0.7を満足するものを用いるのが好ましい。また、上記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足するものを用いることができる。
【0109】
透明保護フィルムは、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(Vertical Alignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護フィルムが位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(ポジティブAプレート,二軸,ネガティブCプレート)の場合が望ましい。VA型では、ポジティブAプレートとネガティブCプレートの組み合わせ、または二軸フィルム1枚で用いるのが好ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、または上下いずれかの透明保護フィルムが位相差を有していてもよい。
【0110】
例えば、IPS(In−Plane Switching,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護フィルムが位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にnx>nz>nyの関係を満足する二軸フィルム、下側に位相差なしの場合や、上側にポジティブAプレート、下側にポジティブCプレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(ポジティブAプレート,二軸,ポジティブCプレート)が望ましい。
【0111】
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
【0112】
前記透明保護フィルムは、接着剤を塗工する前に、偏光子との接着性を向上させるために、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理などがあげられる。また適宜に帯電防止層を形成することができる。
【0113】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0114】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層(例えば、バックライト側の拡散板)との密着防止を目的に施される。
【0115】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0116】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0117】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等があげられる。電子線硬化型偏光板用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
【0118】
また光学部材としては、例えば反射板や反透過板、前記位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学部材として用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0119】
特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視覚補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0120】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0121】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0122】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0123】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵電源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵電源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0124】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0125】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0126】
また、上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学部材としたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0127】
視覚補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視覚補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視覚補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどがあげられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0128】
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコチック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0129】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合せた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性よっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一反反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0130】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0131】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0132】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を、位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0133】
可視光域等の広い波長で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差板と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0134】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組合せにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0135】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていても良い。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであっても良い。
【0136】
偏光板に前記光学層を積層した光学部材は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学部材としたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0137】
なお、本発明の粘着型光学部材の光学部材や粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0138】
本発明の粘着型光学部材は液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学部材、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学部材を用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプなどの任意なタイプのものを用いうる。
【0139】
液晶セルの片側又は両側に粘着型光学部材を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学部材は液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学部材を設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0140】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。本発明の光学部材(偏光板等)は、有機EL表示装置においても適用できる。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組合せをもった構成が知られている。
【0141】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0142】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0143】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0144】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0145】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0146】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0147】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【実施例】
【0148】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0149】
<重量平均分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。サンプルは、試料をテトラヒドロフランに溶解して約0.1重量%の溶液とし、これを一晩静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液を用いた。
分析装置:東ソー製、HLC−8120GPC
カラム:東ソー製、G7000HXL−H+GMHXL−H+GMHXL
カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
カラム温度:40℃
流速:0.8mL/min
溶離液:テトラヒドロフラン
溶液濃度:約0.1重量%
注入量:100μL
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
データ処理装置:東ソー製,GPC‐8020
【0150】
<ゲル分率の測定>
架橋処理した直後の粘着剤層を約0.1gとり、これを秤量して重量(W)を求めた。次いでこれを微孔性テトラフルオロエチレン膜に包んで(膜重量W)、約50mlの酢酸エチル中に23℃で2日間浸漬したのち、可溶分を抽出した。その後、上記粘着剤層を膜と一緒に取り出し、これを120℃で2時間乾燥し、全体の重量(W)を測定した。これらの測定値から下記式に従って粘着剤層のゲル分率(重量%)を求めた。また、塗工後、室温で1週間保存したのちの粘着剤層のゲル分率を測定した。
ゲル分率=〔(W−W)/W〕×100
【0151】
実施例1
(アクリル系ポリマーAの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート50部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.3部、アクリル酸0.3部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1部を酢酸エチル200部と共に仕込み、充分に窒素置換した後、窒素気流下で攪拌しながらフラスコ内の液温を60℃付近に保って9時間重合反応を行い、アクリル系ポリマーA溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマーAの重量平均分子量は163万であった。
【0152】
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーA溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM573)0.1部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(三井武田ケミカル社製、D−160N)0.15部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物1を調製した。
【0153】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物1を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は45重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は66重量%であった。
【0154】
実施例2
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーA溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)0.1部、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期130℃)(和光純薬製)0.2部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.05部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物2を調製した。
【0155】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物2を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は59重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は64重量%であった。
【0156】
実施例3
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーA溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)0.05部、ジベンゾイルパーオキシド(和光純薬製)0.3部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.02部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物3を調製した。
【0157】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物3を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は60重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は63重量%であった。
【0158】
実施例4
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーA溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤として3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製、KBE903)0.1部、ジベンゾイルパーオキシド(和光純薬製)0.25部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.05部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物4を調製した。
【0159】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物4を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は60重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は63重量%であった。
【0160】
実施例5
(アクリル系ポリマーBの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、水添テルペンアクリレート(ヤスハラケミカル社製、TMA−2)50部、ブチルアクリレート50部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.5部、アクリル酸0.5部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1部を酢酸エチル200部と共に仕込み、充分に窒素置換した後、窒素気流下で攪拌しながらフラスコ内の液温を60℃付近に保って10時間重合反応を行い、アクリル系ポリマーB溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマーBの重量平均分子量は135万であった。
【0161】
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーB溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)0.1部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.25部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物5を調製した。
【0162】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物5を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は65重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は80重量%であった。
【0163】
実施例6
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーB溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)0.1部、ジベンゾイルパーオキシド(和光純薬製)0.25部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.05部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物6を調製した。
【0164】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物6を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は40重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は55重量%であった。
【0165】
実施例7
(アクリル系ポリマーCの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート100部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.5部、アクリル酸0.5部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1部を酢酸エチル200部と共に仕込み、充分に窒素置換した後、窒素気流下で攪拌しながらフラスコ内の液温を60℃付近に保って10時間重合反応を行い、アクリル系ポリマーC溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマーCの重量平均分子量は168万であった。
【0166】
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーC溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)0.05部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.15部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物7を調製した。
【0167】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物7を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は53重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は82重量%であった。
【0168】
実施例8
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーC溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤として3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM903)0.1部、ジベンゾイルパーオキシド(和光純薬製)0.3部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.06部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物8を調製した。
【0169】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物8を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は63重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は77重量%であった。
【0170】
実施例9
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーC溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)0.05部、ジベンゾイルパーオキシド(和光純薬製)0.3部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.02部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物9を調製した。
【0171】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物9を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は65重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は77重量%であった。
【0172】
実施例10
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーC溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)0.05部、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)0.35部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物10を調製した。
【0173】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物10を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は10重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は88重量%であった。
【0174】
比較例1
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーA溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM403)0.05部、ジベンゾイルパーオキシド(和光純薬製)0.3部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.02部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物11を調製した。
【0175】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物11を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は60重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は68重量%であった。
【0176】
比較例2
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーA溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)4.0部、ジベンゾイルパーオキシド(和光純薬製)0.2部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.05部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物12を調製した。
【0177】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物12を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は1重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は40重量%であった。
【0178】
比較例3
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーC溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)0.3部、ジベンゾイルパーオキシド(和光純薬製)0.3部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.06部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物13を調製した。
【0179】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物13を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は66重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は76重量%であった。
【0180】
比較例4
(アクリル系ポリマーDの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート100部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1部を酢酸エチル200部と共に仕込み、充分に窒素置換した後、窒素気流下で攪拌しながらフラスコ内の液温を60℃付近に保って10時間重合反応を行い、アクリル系ポリマーD溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマーDの重量平均分子量は158万であった。
【0181】
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーD溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)0.05部、ジベンゾイルパーオキシド(和光純薬製)0.3部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物14を調製した。
【0182】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物14を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して(計算で得られる過酸化物の分解量は約88%)乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は54重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は54重量%であった。
【0183】
比較例5
(アクリル系ポリマーEの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート50部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5部、アクリル酸0.5部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1部を酢酸エチル200部と共に仕込み、充分に窒素置換した後、窒素気流下で攪拌しながらフラスコ内の液温を60℃付近に保って9時間重合反応を行い、アクリル系ポリマーE溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマーEの重量平均分子量は165万であった。
【0184】
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系ポリマーE溶液の固形分100部に対して、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573)0.05部、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物(D−160N)0.15部を加え、均一に混合攪拌して粘着剤組成物15を調製した。
【0185】
(粘着剤層付偏光板の作製)
粘着剤組成物15を、シリコーン処理を施したPETフィルム(東レ社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間加熱して乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。乾燥直後の粘着剤層のゲル分率は2重量%であった。次いで、当該粘着剤層を偏光板に貼り合せ、転写して粘着剤層付偏光板を作製した。なお、粘着剤層のエージング後のゲル分率は57重量%であった。
【0186】
上記実施例および比較例で得られた、粘着剤層付偏光板(サンプル)について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0187】
<初期接着力の測定>
上記サンプルを25mm幅に裁断し、無アルカリガラス(コーニング社製、1737)に、2kgローラーで1往復圧着して貼り付け、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて30分間処理した後、次いで23℃/50%RHの条件下で3時間放置した。かかるサンプルを、引張り試験機にて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで引き剥がす際の接着力(N/25cm)を測定した。
【0188】
<60℃/300時間後の接着力、及びリワーク性の測定>
上記サンプルを25mm幅に裁断し、無アルカリガラス(コーニング社製、1737)に、2kgローラーで1往復圧着して貼り付け、50℃、0.5Mpaのオートクレーブにて30分間処理した後、60℃の条件下に300時間放置し、次いで23℃、湿度50%の条件下で3時間放置した。かかるサンプルを、引張り試験機にて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで引き剥がす際の接着力(N/25cm)を測定した。また、ガラスに粘着剤層や光学部材が残っているか否かを目視にて観察し下記基準で評価した。
○:糊残りなし。
×:糊残りあり。
【0189】
<耐久性>
上記サンプルを320mm×240mmに裁断し、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、♯1737)に貼り付け、50℃、0.5MPaのオートクレーブにて15分間処理した後、60℃/90%RH(加湿試験)、又は80℃(耐熱試験)の条件下で500時間放置した。その後、サンプルの状態を目視にて下記基準で評価した。
○:偏光板の剥がれや浮きがない。
×:偏光板の剥がれや浮きがある。
【0190】
<加工性>
上記サンプルをエージング処理を行わずに、プレス機を用いて打ち抜き加工した。その際、切断刃に粘着剤層が付着していない場合を○とし、粘着剤層が付着した場合を×とした。
【0191】
【表1】

【0192】
以上のように、本発明の粘着型光学部材は、エージング時間の短縮による加工性の向上と、長期の過酷条件下における耐久性が優れている。一方、比較例の粘着型光学部材は、耐久性を向上させようとすると接着力が大きくなり、接着力を小さくしようとすると耐久性が悪くなり、その両立が困難である。また、本発明の粘着型光学部材は、60℃長期保存接着性試験でも糊残りがなく、廃棄時などの長期間貼り付け後でも接着力が小さく、ガラスと光学部材を分別するのが容易であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)モノマー単位として、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを50重量%以上、及び炭素数4〜12のアルキル基と水酸基を有するモノマーを0.01〜2重量%含有してなる重量平均分子量50万以上の(メタ)アクリル系ポリマー、
2)シランカップリング剤として、アミノ基を有するシラン化合物を前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01〜3重量部、並びに
3)イソシアネート系架橋剤を前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01〜2重量部含有する光学部材用粘着剤組成物。
【請求項2】
さらに、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、有機過酸化物を0.02〜2重量部含有する請求項1記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記シラン化合物のアミノ基が第2級アミノ基である請求項1又は2記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート系架橋剤が脂肪族イソシアネートである請求項1〜3のいずれかに記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、さらにカルボキシル基含有モノマーを0.01〜2重量%含有する請求項1〜4のいずれかに記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学部材用粘着剤組成物を架橋反応させてなる光学部材用粘着剤層。
【請求項7】
ゲル分率が45〜90重量%である請求項6記載の光学部材用粘着剤層。
【請求項8】
光学部材の片面又は両面に、請求項6又は7記載の光学部材用粘着剤層を有する粘着型光学部材。
【請求項9】
請求項8記載の粘着型光学部材を少なくとも1つ用いた画像表示装置。

【公開番号】特開2009−173772(P2009−173772A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13852(P2008−13852)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】