光学顕微鏡装置
【課題】遮光または試料環境を維持することが可能な光学顕微鏡の小型化および低コスト化を図る。
【解決手段】試料Aを載置するステージ4と透過照明光学系6と結像光学系7とを有する顕微鏡2と、該顕微鏡2を取り囲むハウジング3とを備え、ハウジング3が、固定ハウジング24と、可動ハウジング25とを備え、透過照明光学系6または結像光学系7を構成する光学部品のうち、ステージ4の上方に配される少なくとも一部の光学部品が移動可能に設けられ、可動ハウジング25が固定ハウジング24に対して開かれた位置に配置されたときに一部の光学部品をステージ4の上方から退避させ、閉じられた位置に配置されたときに両光学系の光軸を略一致させる切替機構を備える光学顕微鏡装置1を提供する。
【解決手段】試料Aを載置するステージ4と透過照明光学系6と結像光学系7とを有する顕微鏡2と、該顕微鏡2を取り囲むハウジング3とを備え、ハウジング3が、固定ハウジング24と、可動ハウジング25とを備え、透過照明光学系6または結像光学系7を構成する光学部品のうち、ステージ4の上方に配される少なくとも一部の光学部品が移動可能に設けられ、可動ハウジング25が固定ハウジング24に対して開かれた位置に配置されたときに一部の光学部品をステージ4の上方から退避させ、閉じられた位置に配置されたときに両光学系の光軸を略一致させる切替機構を備える光学顕微鏡装置1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に細胞等の生物試料の観察を目的とした、遮光のためまたは試料環境維持のためのハウジングを有する光学顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャーレやマイクロプレートに培養液とともに培養された培養細胞試料等、生物細胞を生かしたままの状態で観察する手段として光学顕微鏡が一般に利用されている。近年、光学顕微鏡は、冷却CCDカメラ等、高感度の撮像手段が組み合わせられて、蛍光標識された培養細胞からの微弱蛍光を検出し、画像データとして記録されるようになった。蛍光標識された培養細胞からの蛍光は極めて微弱であり、この微弱な蛍光を精度よく検出するには、細胞からの蛍光以外の光、すなわち、外乱光が検出されるのを極力抑える必要がある。このため、いくつかの市販されている光学顕微鏡装置は外部からの光が検出されないように倒立型顕微鏡全体をハウジングで覆うことにより、少なくとも画像取得時には外部からの光が検出されないような構造になっている。例えば、ゼネラルエレクトリックヘルスケア社製の倒立型顕微鏡がこのような光学顕微鏡装置の1つである。
【0003】
この光学顕微鏡装置は、倒立型顕微鏡全体を覆うハウジングを構成するとともに、マイクロプレートを載置可能なコンピュータで制御されるXY方向に移動可能な電動ステージを含んでいる。ハウジングには部分的に扉が設けられており、マイクロプレートが載置された状態で電動ステージがこの扉から所定位置まで飛び出すようになっている。操作者は、電動ステージが所定位置にある状態でマイクロプレートを交換あるいはセットすることができる。扉は、操作者からの指令により、電動ステージが所定位置まで飛び出すときに開き、電動ステージがハウジング内に収容されている時には閉じるようになっている。これにより、倒立型顕微鏡全体を遮光でき、また、温度調節器等の生体維持装置との組合せにより試料環境を維持することが可能となっている。
【0004】
また、結像光学系、観察光学系および電動ステージ等をハウジング内に収容した正立型顕微鏡の扉部の安全機構は知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1によれば、観察物を支持する支持台がハウジング内部に引き込まれるときに、扉部における異物の有無を検出する検出手段が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−5079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように電動ステージを扉に押し当てて扉を開状態にする方法は、比較的安価に構成することができるものの、扉と電動ステージとの摩擦の発生を回避できず、繰り返し開閉動作を行うと摩擦による塵埃の発生が問題となる。
この問題を回避するために、前記扉を駆動制御することにより、電動ステージに接触することなく開閉されることが必要となるが、コストが高くつくという不都合がある。
【0007】
また、電動ステージは、本来、観察対象である試料の観察範囲をカバーする動作範囲を有すれば足りる。しかし、特許文献1の顕微鏡装置は、扉を開閉する機能を電動ステージに持たせるために、電動ステージがハウジングから飛び出す位置まで動作範囲を広げており、長い直動ガイドが必要となり、コストが高くつくうえに、装置が大型化するという不都合がある。
また、顕微鏡の電動ステージには直動性能において高い精度が要求されるので、直線ガイドが長くなると高い精度を出すための調整が難しくなり、調整時間が長くなって、組立コストも増大する虞がある。
【0008】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、遮光することまたは試料環境を維持することが可能な、小型かつ低コストの光学顕微鏡を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の態様は、試料を載置するステージと透過照明光学系と結像光学系とを有する倒立型顕微鏡と、該倒立型顕微鏡を取り囲むハウジングとを備え、ハウジングが、固定ハウジングと、該固定ハウジングに対して開閉移動可能に設けられる可動ハウジングとを備え、前記透過照明光学系を構成する光学部品のうち、ステージの上方に配される少なくともコンデンサレンズが移動可能に前記ハウジング内に設けられ、前記可動ハウジングが固定ハウジングに対して持ち上げられることにより開かれた位置に配置されたときにのみ、少なくとも前記コンデンサレンズを他の光学系の光軸から退避させて前記試料を載置可能な空間を前記ステージ上に確保し、閉じられた位置に配置されたときに両光学系の光軸を略一致させる切替機構を備える光学顕微鏡装置である。
【0010】
このようにすることで、ステージ上の試料を交換等する際に、固定ハウジングに対して可動ハウジングを開くと、切替機構の作動により、ステージ上方に配置されていた光学系の一部の光学部品がステージの上方から退避させられるので、ステージの上方に広い空間を確保して、試料の交換作業等を容易にすることができる。一方、固定ハウジングに対して可動ハウジングを閉じると、顕微鏡がハウジングに覆われて遮光されるとともに、顕微鏡を構成しているステージ上方の光学系とステージ下方の光学系の光軸が略一致させられて、透過照明光学系からの照明光を利用して結像光学系により顕微鏡観察を行うことが可能となる。
【0011】
この場合において、ステージの上方に試料の交換作業等のための広い空間を確保するためにステージの動作範囲を拡大する必要がなく、装置の大型化を防止し、かつ、ステージの動作精度を向上することができる。
【0012】
上記態様においては、前記切替機構が、少なくとも前記コンデンサレンズを前記可動ハウジングに固定することより構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、固定ハウジングに対して可動ハウジングを開閉移動させるだけで、ステージの上方に広い空間を確保する作業状態と、透過照明光学系と結像光学系の光軸を略一致させた観察状態とを容易に切り替えることができる。
【0013】
また、上記態様においては、前記可動ハウジングが、前記固定ハウジングに揺動可能に取り付けられていることとしてもよく、前記可動ハウジングが、前記固定ハウジングに対して直線移動可能に取り付けられていることとしてもよい。
可動ハウジングを揺動あるいは直線移動させるだけで、作業状態と観察状態とを容易に切り替えることができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの開閉状態を検出するセンサを備える構成が好ましい。
センサがハウジングの開状態を検出したときには、透過照明光学系からの照明光の照射等は不要となるため、照明光をオフ状態に切り替える一方、閉状態を検出したときには、自動的に観察を開始させることもできる。
【0015】
また、上記態様においては、前記センサからの検出信号を受けて前記ステージの位置を駆動制御する制御部を備えることとしてもよい。
センサがハウジングの開状態を検出したときには、ハウジングが開かれて試料の交換作業等が行われるため、制御部の作動により試料を交換等し易い位置にステージを移動させることにより作業性を向上することができる。また、ハウジングの閉状態が検出されたときには、その後に顕微鏡観察が行われるため、制御部の作動により自動的にステージを観察位置に配置することによって、手間を省くことができる。
【0016】
また、上記態様においては、前記結像光学系に、前記ステージ上の試料を撮像する撮像手段と、前記センサからの検出信号を受けて前記撮像手段を制御する制御部とを備えることとしてもよい。
センサがハウジングの閉状態を検出したときに、制御部の作動により、観察作業への移行開始を自動的に行うことで、観察者の手間を省くことができる。
【0017】
また、上記態様においては、前記ステージ上の試料を照明する光源と、前記センサからの検出信号を受けて前記光源を制御する制御部とを備えることとしてもよい。
センサがハウジングの開状態を検出したときに、制御部の作動により、光源をオフ状態に切り替えることで、観察者が眩しさを感じることなく、試料の交換作業等を行うことができる。
【0018】
また、前記ハウジング内の温度を調節する温度調節器を備え、前記センサからの検出信号を受けて前記温度調節器を制御する制御部を備えることとしてもよい。
また、前記ハウジング内の炭酸ガス濃度を調節する炭酸ガス供給装置を備え、前記センサからの検出信号を受けて前記炭酸ガス供給装置を制御する制御部を備えることとしてもよい。
このようにすることで、センサがハウジングの開状態を検出している状態において、温度調節器が作動したり、炭酸ガス供給装置が作動したりする無駄を省くことができる。
また、上記態様においては、前記ステージが、試料を収容したマイクロプレートを載置可能であることとしてもよい。
【0019】
また、上記態様においては、前記透過照明光学系が、固定ハウジングに取り付けられた光源と、可動ハウジングに取り付けられた前記一部の光学部品と、光源からの照明光を該光学部品に向けて伝播する光ファイバとを備えることとしてもよい。
可動ハウジングに電装部品を配置することを防止できるので、可動ハウジングの移動時に変位する電気配線をなくして耐久性を向上することができる。
【0020】
また、上記態様においては、前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングの内壁面に可視光に対する反射防止処理が施されていることとしてもよい。
また、上記態様においては、前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングが閉じられたときに両者間の隙間を遮光する遮光部材が設けられていることとしてもよい。
さらに、上記態様においては、前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングが閉じられたときに、両者の端部が互いに重なるかみ合わせ構造になっていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、遮光することまたは試料環境を維持することが可能な光学顕微鏡を、小型かつ低コストに提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】可動ハウジングが開状態である図1の光学顕微鏡装置を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図1の光学顕微鏡装置の外観形状を示す斜視図である。
【図4】可動ハウジングの端縁に沿って遮光部材を設けた、第1の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置の外観形状を示す斜視図である。
【図5】可動ハウジングが開状態である図4の光学顕微鏡装置を模式的に示す縦断面図である。
【図6】可動ハウジングが閉状態である図4の光学顕微鏡装置の固定ハウジングの端部と可動ハウジングの端部のかみ合わせ構造の縦断面拡大図である。
【図7】固定ハウジングおよび可動ハウジングの内面全体に反射防止処理を施した、第1の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置の外観形状示す斜視図である。
【図8】図7の光学顕微鏡装置の別の斜視図であって、固定ハウジングおよび可動ハウジングの内面を示したものである。
【図9】可動ハウジングの端部が固定ハウジングの端部の内側にかみ合わせられた、第1の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置本体の縦断面図である。
【図10】可動ハウジングの端部が固定ハウジングの端部の外側にかみ合わせられた、第1の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置本体の縦断面図である。
【図11】第1の実施形態の別の変形例に係る光学顕微鏡装置を模式的に示す縦断面図である。
【図12】本発明の参考例としての第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す縦断面図である。
【図13】可動ハウジングが閉状態である図12の光学顕微鏡装置の側方からみた縦断面図である。
【図14】可動ハウジングが開状態である図12の光学顕微鏡装置の側方からみた縦断面図である。
【図15】本発明の参考例としての第3の実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す縦断面図である。
【図16】可動ハウジングが閉状態である図15の光学顕微鏡装置の上方から見た断面図である。
【図17】可動ハウジングが開状態である図15の光学顕微鏡装置の上方から見た断面図である。
【図18】図16の状態の光学顕微鏡装置を側方からみた縦断面図である。
【図19】図17の状態の光学顕微鏡装置を側方からみた縦断面図である。
【図20】可動ハウジングが開状態である、第3の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置の上方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1について、図1〜図3を参照して説明する。
第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1は、図1に示されるように、倒立型顕微鏡2と、該倒立型顕微鏡2を収容するハウジング3とを備えている。
倒立型顕微鏡2は、試料Aを載置し図示しないクランプ機構により試料Aを固定する電動ステージ4と、該電動ステージ4の下方に配置され該電動ステージ4に載置された試料Aに対して、鉛直下方から励起光を照射する落射照明光学系5と、電動ステージ4の上方に配置され、試料Aの鉛直上方から白色光を照射する透過照明光学系6と、試料Aの下方に向けて発せられた蛍光および透過光を検出する検出光学系(結像光学系)7と、制御部8とを備えている。
【0024】
落射照明光学系5は、キセノンランプ9と、該キセノンランプ9から発せられた光を集光するコレクタレンズ10と、特定波長の励起光を選択的に透過させる波長選択フィルタ11と、該波長選択フィルタ11を透過した励起光を反射するダイクロイックミラー12と、該ダイクロイックミラー12により反射された励起光を集光して試料Aに照射する対物レンズ13とを備えている。
【0025】
前記透過照明光学系6は、ハロゲンランプ14と、該ハロゲンランプ14から発せられた白色光を集光するカップリングレンズ15と、該カップリングレンズ15により集光された白色光を一端に入射させる光ファイバ16と、該光ファイバ16により伝播され、他端から出射された白色光を集光するコレクタレンズ17と、該コレクタレンズ17により集光された白色光を反射して鉛直下方に指向させるミラー18と、該ミラー18により反射された白色光を集光するコンデンサレンズ19とを備えている。光ファイバ16は、例えば、液体ファイバのように柔軟な光ファイバであって、自由に湾曲できるようになっている。
【0026】
前記検出光学系7は、落射照明光学系5の対物レンズ13およびダイクロイックミラー12を共有し、試料Aにおいて発生し、対物レンズ13により集光され、ダイクロイックミラー12を透過した蛍光を透過する波長選択フィルタ20と、該波長選択フィルタ20を透過した蛍光を集光する結像レンズ21と、該結像レンズ21により集光された蛍光を検出するCCDカメラ22とを備えている。図中、符号23はミラーである。
【0027】
前記ハウジング3は、下側の固定ハウジング24と、上側の可動ハウジング25とからなる。可動ハウジング25は、ベアリングのような図示しない回転機構により、回転軸26回りに、図1に示す閉状態から図2に示すような開状態となるように、固定ハウジング24に回転可能に支持されている。ハウジング3は、閉状態において、外部からの光が遮断され、倒立型顕微鏡2を遮光状態に保持することができるようになっている。
【0028】
前記透過照明光学系6のハロゲンランプ14、カップリングレンズ15および光ファイバ16の一端は、前記固定ハウジング24に固定され、光ファイバ16の他端、コレクタレンズ17、ミラー18およびコンデンサレンズ19は、可動ハウジング25に固定されている。また、ハウジング3内には、該ハウジング3内の温度を調節するための温度調節器27が配置されている。また、ハウジング3には、炭酸ガスをハウジング3内に供給する炭酸ガス供給装置28がダクト29を介して接続されている。さらに、固定ハウジング24と可動ハウジング25との間には、両者の開閉状態を検出するためのマイクロスイッチまたはフォトインタラプタ等のセンサ30が設けられている。
前記制御部8は、電動ステージ4、キセノンランプ9、ハロゲンランプ14、CCDカメラ22、温度調節器27、炭酸ガス供給装置28およびセンサ30に接続されている。
【0029】
このように構成された第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1の作用について以下に説明する。
第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1を用いて試料の観察を行うには、まず、操作者は、可動ハウジング25を操作して、固定ハウジング24に対して可動ハウジング25を開く。可動ハウジング25は図示しないクランプ機構により、図2に示されるように、持ち上げられた状態に保持される。
【0030】
このとき、可動ハウジング25とともに、電動ステージ4の上方に配置されている透過照明光学系6が持ち上げられるので、電動ステージ4が、その上方に空間を大きくあけた状態に露出させられる。この状態で、操作者は、マイクロプレート31等の容器内に蛍光標識された培養細胞等の試料Aを収容した状態で、該電動ステージ4上にマイクロプレート31を載置し、固定する。
【0031】
また、このとき、可動ハウジング25が固定ハウジング24に対して開かれることにより、センサ30によって開状態が検出されるので、その検出信号に基づいて、制御部8が、電動ステージ4を作動させ、試料Aを搭載し易い位置に配置しておくこととしてもよい。このようにすることで操作性を向上することができる。
【0032】
操作者が試料Aを収容したマイクロプレート31を固定して可動ハウジング25を閉じると、センサ30が閉状態の検出信号を出力する。この状態で、可動ハウジング25に設けられた透過照明光学系6は、コンデンサレンズ19の光軸が対物レンズ13の光軸に一致する位置に配置される。
【0033】
センサ30からの閉状態の検出信号を受けた制御部8は、電動ステージ4を予め定められたプログラムに従って所定位置に駆動制御する。そして、制御部8は、ハロゲンランプ14またはキセノンランプ9を作動させ、かつ、CCDカメラ22を作動させることにより、自動的に試料Aの画像取得を開始する。電動ステージ4の駆動制御は、例えば、自動的に試料Aを収容するマイクロプレート31の各ウェルの画像を順次撮像していくこととしてもよく、また、対物レンズ13の図示しない焦準部を制御して合焦動作制御を行うこととしてもよい。
画像取得が自動的に行われることにより、操作者の手間を省くことができる。
撮像によりCCDカメラ22により取得された画像情報は、制御部8において画像処理され、蛍光画像としてモニタ32に表示されることになる。
【0034】
制御部8は、センサ30からの検出信号を受けて、ハロゲンランプ14やキセノンランプ9の点灯および消灯を制御することができる。具体的には、操作者が可動ハウジング25を開いたことが検出された場合には、ハロゲンランプ14やキセノンランプ9を消灯し、閉じたことが検出された場合には点灯制御を行う。これにより、試料Aをセットする際に、操作者が眩しさを感じることがなく、快適に試料Aのセット作業を行うことができるし、節電を図ることもできる。同様にして、温度調節器27、炭酸ガス供給装置28についても、制御部8がセンサ30の検出信号に基づいて制御することで、節電や炭酸ガスの排出削減を図ることもできる。
【0035】
このように構成された第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1によれば、可動ハウジング25を固定ハウジング24に対して開くことにより、電動ステージ4の上方に配されている透過照明光学系6を可動ハウジング25とともに退避させて、電動ステージ4の上方に広い空間を確保することができる。したがって、作業者は、その広い空間において試料Aの交換作業等を容易に行うことができる。その際に、電動ステージ4を移動させる必要もないので、試料Aの交換用に電動ステージ4のストロークを拡大する必要がない。したがって、電動ステージ4としては、必要最小限の動作範囲を有するもので足り、直動ガイド等を短くできるので、調整作業の簡易化、コスト低減および小型化を図ることができる。
【0036】
さらに、第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1によれば、可動ハウジング25内に電装系が存在せず、電気配線を引き回す必要がないので、開閉動作に伴う電気配線の劣化等の不都合の発生を防止することができるという利点もある。
【0037】
第1の実施形態においては、図4および図5に示されるように、可動ハウジング25に、その端縁に沿って、遮光部材100が取り付けられていてもよい。固定ハウジング24に対して可動ハウジング25が閉じられた状態では、図6に示されるように、固定ハウジング24の端部と可動ハウジング25の端部とが重なるようにかみ合わせられる。したがって、遮光部材100が固定ハウジング24と可動ハウジング25との隙間を閉塞するので、ハウジング3内への可視光の透過を防止することができる。
【0038】
遮光部材100としては、黒色のゴム、プラスチックあるいは金属製のキャップ状のものを用いることができる。遮光部材100は、可動ハウジング25の端部を覆う略U字状断面を有し、約1mm以上5mm以下の厚さ寸法を有している。なお、遮光部材100は固定ハウジング24側に設けられていてもよい。
【0039】
また、図7および図8に示されるように、固定ハウジング24および可動ハウジング25の内面全体に、反射防止処理が施されていてもよい。反射防止処理としては黒色塗料を塗布することが挙げられる反射防止処理としては、黒色のシート材を内面全体に接着してもよいし、黒色アルマイト処理を施してもよい。
【0040】
また、図9または図10に示されるように、固定ハウジング24および可動ハウジング25の端部どうしが相互に重なるようにしたかみ合わせ構造を採用してもよい。図9に示す例では、可動ハウジング25の端部が固定ハウジング24の端部の内側にかみ合わせられるようになっている。一方、図10に示す例では、可動ハウジング25の端部が固定ハウジング24の端部の外側にかみ合わせられるようになっている。これらのかみ合わせ構造により、可動ハウジング25と固定ハウジング24との隙間から外来のノイズ光がハウジング3内に入射するのを防止することができる。
【0041】
なお、第1の実施形態においては、透過照明光学系6の一部の光学部品、すなわち、光ファイバ16の他端、コレクタレンズ17、ミラー18およびコンデンサレンズ19が、可動ハウジング25に固定されている構成を例示したが、前記一部の光学部品は、必ずしも可動ハウジング25に固定される必要はない。例えば、図11に示すように、光ファイバ16の他端、コレクタレンズ17、ミラー18およびコンデンサレンズ19を含む透過照明光学ユニット200が、固定ハウジング24および可動ハウジング25に回転支持機構202およびバネ203により支持されることとしてもよい。
具体的には、透過照明光学ユニット200が、倒立型顕微鏡2のフレーム201に設けられた回転支持機構202により、所定の回転軸を中心に回転可能に支持されるとともに、可動ハウジング25と透過照明光学ユニット200を連結するバネ203により、可動ハウジング25の開操作にともなって光軸から退避されるように支持されることとしてもよい。
この場合、透過照明光学ユニット200の可動範囲は、倒立型顕微鏡2のフレーム201に設けられたストッパ201a,201bで規制される。可動ハウジング25の閉操作により、透過照明光学ユニット200は、重力によって図中時計周りに回転し、ストッパ201bによって位置決めされる。この状態で、透過照明光学系6は、コンデンサレンズ19の光軸が対物レンズ13の光軸に一致する位置に配置される。
【0042】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の参考例としての第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40について、図12〜図14を参照して以下に説明する。
第2の実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40は、ハウジング41の構造において第1の実施形態と相違し、内部の倒立型顕微鏡2については、全く同じ構成を有している。
第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40のハウジング41は、下側に配される固定ハウジング42上に、直動ガイド43によって水平方向に移動可能な可動ハウジング44を備えている。固定ハウジング42と可動ハウジング44との間には図示しないクリック機構が設けられ、可動ハウジング44は、固定ハウジング42に対して、開状態と閉状態とをそれぞれ保持することができるようになっている。
【0044】
光ファイバ16は、固定ハウジング42と可動ハウジング44との間に掛け渡すように配置されている。光ファイバ16の長さ方向の途中位置は、固定ハウジング42の天井面を貫通してブッシュ45により固定されている。また、該ブッシュ45に対応する可動ハウジング44の壁面には、開状態から閉状態までの間、可動ハウジング44がブッシュ45に干渉しないように維持する長孔46が設けられている。
【0045】
可動ハウジング44が固定ハウジング42に対して閉位置に配置されると、可動ハウジング44に設けられている透過照明光学系6のコンデンサレンズ19の光軸が、対物レンズ13の光軸に略一致するように設けられ、その位置においてクリック機構の作動により可動ハウジング44が固定された状態に維持されるようになっている。そして、この状態で、ハウジング41内部の空間が外光を遮断した遮光状態とされる。
【0046】
逆に、操作者が可動ハウジング44を開状態に移動させると、可動ハウジング44とともに透過照明光学系6も退避させられるので、電動ステージ4の上方に広い空間を確保することができる。したがって、操作者は、その広い空間を利用して試料Aの交換や固定等の作業を容易に行うことができる。
【0047】
このように構成された第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40によれば、固定ハウジング42に対して可動ハウジング44を水平にスライドさせるだけで開閉でき、操作に大きな力を必要としないので操作性がよいという利点がある。
第2の施形態においてはハロゲンランプ14を固定ハウジング42内に設けているが、ランプユニットとしてハウジング41の外部に配置してもよい。
【0048】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の参考例としての第3の実施形態に係る光学顕微鏡装置50について、図15〜図19を参照して以下に説明する。
第3の実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る光学顕微鏡1または第2の実施形態に係る光学顕微鏡40と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
第3の実施形態に係る光学顕微鏡装置50は、正立型顕微鏡51と、該正立型顕微鏡51を収容するハウジング52とを備えている。ハウジング52は、第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40と同様に、固定ハウジング53に対して可動ハウジング54を水平方向にスライドさせて開閉する方式のものである。
正立型顕微鏡51は、試料Aを載置する電動ステージ4と、該電動ステージ4の上方に配置され該電動ステージ4に載置された試料Aに対して、鉛直上方から励起光を照射する落射照明光学系55と、電動ステージ4の下方に配置され、試料Aの鉛直下方から白色光を照射する透過照明光学系56と、試料Aの上方に向けて発せられた蛍光および透過光を検出する検出光学系57と、図示しない制御部8とを備えている。
【0050】
落射照明光学系55は、キセノンランプ9と、該キセノンランプ9から発せられた光を集光するカップリングレンズ58と、該カップリングレンズ58により集光された励起光を一端に入射させる光ファイバ59と、該光ファイバ59により伝播され、他端から出射された励起光を集光するコレクタレンズ60と、特定波長の励起光を選択的に透過させる波長選択フィルタ11と、該波長選択フィルタ11を透過した励起光を反射するダイクロイックミラー12と、該ダイクロイックミラー12により反射された励起光を鉛直下方に向けて反射するミラー61と、該ミラー61により反射された励起光を集光して試料Aに照射する対物レンズ13とを備えている。光ファイバ59は、例えば、液体ファイバのように柔軟な光ファイバであって、自由に湾曲できるようになっている。
【0051】
前記透過照明光学系56は、ハロゲンランプ14と、該ハロゲンランプ14から発せられた白色光を集光するコレクタレンズ17と、該コレクタレンズ17により集光された白色光を反射して鉛直上方に指向させるミラー18と、該ミラー18により反射された白色光を集光するコンデンサレンズ19とを備えている。
前記検出光学系57は、落射照明光学系55の対物レンズ13、ミラー61およびダイクロイックミラー12を共有している。
【0052】
前記落射照明光学系55のキセノンランプ9、カップリングレンズ58および光ファイバ59の一端は、前記固定ハウジング53内に配置されている。一方、光ファイバ59の他端、コレクタレンズ60、波長選択フィルタ11、ダイクロイックミラー12、ミラー61および対物レンズ13は、図示しない筐体により可動ハウジング54に固定されている。
【0053】
また、検出光学系57を構成する波長選択フィルタ20および結像レンズ21も可動ハウジング54に固定され、CCDカメラ22は固定ハウジング53内に配置されている。結像レンズ21からCCDカメラ22に向かう光軸上に配される可動ハウジング54および固定ハウジング53の壁面には、可動ハウジング54が閉状態に配されたときに一致する貫通孔62,63がそれぞれ設けられている。また、電動ステージ4と対物レンズ13との間に配される可動ハウジング54および固定ハウジング53の壁面にも、可動ハウジング54が閉状態に配されたときに一致する位置に配される貫通孔64,65がそれぞれ設けられている。
【0054】
また、図16〜図19に示されるように、固定ハウジング53と可動ハウジング54との間に延びる光ファイバ59は、その途中位置を固定ハウジング53の壁面にブッシュ45により固定されている。可動ハウジング54の対応部位には、可動ハウジング54が移動しても光ファイバ59に干渉しないようにブッシュ45を収容する長孔66が設けられている。
【0055】
また、可動ハウジング54または固定ハウジング53には、図示しない遮光布のような遮光部材が設けられており、可動ハウジング54が閉状態に配されたときに、両ハウジング53,54間の隙間を遮光して、外光が貫通孔62〜65等からハウジング52内に入射しないように構成されている。
【0056】
図15、図16、図18に示されるように、可動ハウジング54を固定ハウジング53に対して閉じた位置に配置すると、検出光学系57の対物レンズ13の光軸が、透過照明光学系56のコンデンサレンズ19の光軸に略一致させられる。その位置において図示しないクリック機構の作動により可動ハウジング54が固定された状態に維持されるようになっている。そして、この状態で、ハウジング52内部の空間が外光を遮断した遮光状態とされる。
【0057】
逆に、図17および図19に示されるように、操作者が可動ハウジング54を開状態に移動させると、可動ハウジング54とともに検出光学系57および落射照明光学系55も退避させられるので、電動ステージ4の上方に広い空間を確保することができる。したがって、操作者は、その広い空間を利用して試料Aの交換や固定等の作業を容易に行うことができる。
【0058】
第3の実施形態に係る光学顕微鏡装置50によれば、検出光学系57および落射照明光学系55の主要な光学部品は可動ハウジング54に配置されているが、CCDカメラ22およびキセノンランプ9は固定ハウジング53内に配置されているので、可動ハウジング54内から電気配線を排除することができる。したがって、可動ハウジング54の開閉時における電気配線の引き回しをなくすことができる。
【0059】
また、固定ハウジング53内にCCDカメラ22を配置することにより、比較的重量の大きな冷却型CCDカメラを使用することができる。したがって、ノイズを抑えた鮮明な画像を取得することができる。また、固定ハウジング53に対して可動ハウジング54を水平にスライドさせるだけで開閉でき、操作に大きな力を必要としないので操作性がよいという利点がある。
【0060】
第3の実施形態においても、図20に示されるように、固定ハウジング53と可動ハウジング54に設けられた貫通孔63,65および長孔66の周囲に、固定ハウジング53に対して可動ハウジング54が閉じられたときに固定ハウジング53と可動ハウジング54との間の隙間を閉塞する遮光部材100が設けられていてもよい。これにより、可動ハウジング54と固定ハウジング53との隙間から外来のノイズ光がハウジング3内に入射するのを防止することができる。遮光部材100としては、黒色のゴム、プラスチックあるいは金属からなるシート状の部材を採用することができる。
【符号の説明】
【0061】
A 試料
1,40,50 光学顕微鏡装置
2 倒立型顕微鏡(顕微鏡)
3,41,52 ハウジング
4 電動ステージ(ステージ)
6,56 透過照明光学系
7,57 検出光学系(結像光学系)
8 制御部
9 キセノンランプ(光源)
14 ハロゲンランプ(光源)
16 光ファイバ
17 コレクタレンズ(光学部品)
18 ミラー(光学部品)
19 コンデンサレンズ(光学部品)
22 CCDカメラ(撮像手段)
24,42,53 固定ハウジング
25,44,54 可動ハウジング
27 温度調節器
28 炭酸ガス供給装置
30 センサ
31 マイクロプレート
51 正立型顕微鏡(顕微鏡)
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に細胞等の生物試料の観察を目的とした、遮光のためまたは試料環境維持のためのハウジングを有する光学顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャーレやマイクロプレートに培養液とともに培養された培養細胞試料等、生物細胞を生かしたままの状態で観察する手段として光学顕微鏡が一般に利用されている。近年、光学顕微鏡は、冷却CCDカメラ等、高感度の撮像手段が組み合わせられて、蛍光標識された培養細胞からの微弱蛍光を検出し、画像データとして記録されるようになった。蛍光標識された培養細胞からの蛍光は極めて微弱であり、この微弱な蛍光を精度よく検出するには、細胞からの蛍光以外の光、すなわち、外乱光が検出されるのを極力抑える必要がある。このため、いくつかの市販されている光学顕微鏡装置は外部からの光が検出されないように倒立型顕微鏡全体をハウジングで覆うことにより、少なくとも画像取得時には外部からの光が検出されないような構造になっている。例えば、ゼネラルエレクトリックヘルスケア社製の倒立型顕微鏡がこのような光学顕微鏡装置の1つである。
【0003】
この光学顕微鏡装置は、倒立型顕微鏡全体を覆うハウジングを構成するとともに、マイクロプレートを載置可能なコンピュータで制御されるXY方向に移動可能な電動ステージを含んでいる。ハウジングには部分的に扉が設けられており、マイクロプレートが載置された状態で電動ステージがこの扉から所定位置まで飛び出すようになっている。操作者は、電動ステージが所定位置にある状態でマイクロプレートを交換あるいはセットすることができる。扉は、操作者からの指令により、電動ステージが所定位置まで飛び出すときに開き、電動ステージがハウジング内に収容されている時には閉じるようになっている。これにより、倒立型顕微鏡全体を遮光でき、また、温度調節器等の生体維持装置との組合せにより試料環境を維持することが可能となっている。
【0004】
また、結像光学系、観察光学系および電動ステージ等をハウジング内に収容した正立型顕微鏡の扉部の安全機構は知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1によれば、観察物を支持する支持台がハウジング内部に引き込まれるときに、扉部における異物の有無を検出する検出手段が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−5079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように電動ステージを扉に押し当てて扉を開状態にする方法は、比較的安価に構成することができるものの、扉と電動ステージとの摩擦の発生を回避できず、繰り返し開閉動作を行うと摩擦による塵埃の発生が問題となる。
この問題を回避するために、前記扉を駆動制御することにより、電動ステージに接触することなく開閉されることが必要となるが、コストが高くつくという不都合がある。
【0007】
また、電動ステージは、本来、観察対象である試料の観察範囲をカバーする動作範囲を有すれば足りる。しかし、特許文献1の顕微鏡装置は、扉を開閉する機能を電動ステージに持たせるために、電動ステージがハウジングから飛び出す位置まで動作範囲を広げており、長い直動ガイドが必要となり、コストが高くつくうえに、装置が大型化するという不都合がある。
また、顕微鏡の電動ステージには直動性能において高い精度が要求されるので、直線ガイドが長くなると高い精度を出すための調整が難しくなり、調整時間が長くなって、組立コストも増大する虞がある。
【0008】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、遮光することまたは試料環境を維持することが可能な、小型かつ低コストの光学顕微鏡を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の態様は、試料を載置するステージと透過照明光学系と結像光学系とを有する倒立型顕微鏡と、該倒立型顕微鏡を取り囲むハウジングとを備え、ハウジングが、固定ハウジングと、該固定ハウジングに対して開閉移動可能に設けられる可動ハウジングとを備え、前記透過照明光学系を構成する光学部品のうち、ステージの上方に配される少なくともコンデンサレンズが移動可能に前記ハウジング内に設けられ、前記可動ハウジングが固定ハウジングに対して持ち上げられることにより開かれた位置に配置されたときにのみ、少なくとも前記コンデンサレンズを他の光学系の光軸から退避させて前記試料を載置可能な空間を前記ステージ上に確保し、閉じられた位置に配置されたときに両光学系の光軸を略一致させる切替機構を備える光学顕微鏡装置である。
【0010】
このようにすることで、ステージ上の試料を交換等する際に、固定ハウジングに対して可動ハウジングを開くと、切替機構の作動により、ステージ上方に配置されていた光学系の一部の光学部品がステージの上方から退避させられるので、ステージの上方に広い空間を確保して、試料の交換作業等を容易にすることができる。一方、固定ハウジングに対して可動ハウジングを閉じると、顕微鏡がハウジングに覆われて遮光されるとともに、顕微鏡を構成しているステージ上方の光学系とステージ下方の光学系の光軸が略一致させられて、透過照明光学系からの照明光を利用して結像光学系により顕微鏡観察を行うことが可能となる。
【0011】
この場合において、ステージの上方に試料の交換作業等のための広い空間を確保するためにステージの動作範囲を拡大する必要がなく、装置の大型化を防止し、かつ、ステージの動作精度を向上することができる。
【0012】
上記態様においては、前記切替機構が、少なくとも前記コンデンサレンズを前記可動ハウジングに固定することより構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、固定ハウジングに対して可動ハウジングを開閉移動させるだけで、ステージの上方に広い空間を確保する作業状態と、透過照明光学系と結像光学系の光軸を略一致させた観察状態とを容易に切り替えることができる。
【0013】
また、上記態様においては、前記可動ハウジングが、前記固定ハウジングに揺動可能に取り付けられていることとしてもよく、前記可動ハウジングが、前記固定ハウジングに対して直線移動可能に取り付けられていることとしてもよい。
可動ハウジングを揺動あるいは直線移動させるだけで、作業状態と観察状態とを容易に切り替えることができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの開閉状態を検出するセンサを備える構成が好ましい。
センサがハウジングの開状態を検出したときには、透過照明光学系からの照明光の照射等は不要となるため、照明光をオフ状態に切り替える一方、閉状態を検出したときには、自動的に観察を開始させることもできる。
【0015】
また、上記態様においては、前記センサからの検出信号を受けて前記ステージの位置を駆動制御する制御部を備えることとしてもよい。
センサがハウジングの開状態を検出したときには、ハウジングが開かれて試料の交換作業等が行われるため、制御部の作動により試料を交換等し易い位置にステージを移動させることにより作業性を向上することができる。また、ハウジングの閉状態が検出されたときには、その後に顕微鏡観察が行われるため、制御部の作動により自動的にステージを観察位置に配置することによって、手間を省くことができる。
【0016】
また、上記態様においては、前記結像光学系に、前記ステージ上の試料を撮像する撮像手段と、前記センサからの検出信号を受けて前記撮像手段を制御する制御部とを備えることとしてもよい。
センサがハウジングの閉状態を検出したときに、制御部の作動により、観察作業への移行開始を自動的に行うことで、観察者の手間を省くことができる。
【0017】
また、上記態様においては、前記ステージ上の試料を照明する光源と、前記センサからの検出信号を受けて前記光源を制御する制御部とを備えることとしてもよい。
センサがハウジングの開状態を検出したときに、制御部の作動により、光源をオフ状態に切り替えることで、観察者が眩しさを感じることなく、試料の交換作業等を行うことができる。
【0018】
また、前記ハウジング内の温度を調節する温度調節器を備え、前記センサからの検出信号を受けて前記温度調節器を制御する制御部を備えることとしてもよい。
また、前記ハウジング内の炭酸ガス濃度を調節する炭酸ガス供給装置を備え、前記センサからの検出信号を受けて前記炭酸ガス供給装置を制御する制御部を備えることとしてもよい。
このようにすることで、センサがハウジングの開状態を検出している状態において、温度調節器が作動したり、炭酸ガス供給装置が作動したりする無駄を省くことができる。
また、上記態様においては、前記ステージが、試料を収容したマイクロプレートを載置可能であることとしてもよい。
【0019】
また、上記態様においては、前記透過照明光学系が、固定ハウジングに取り付けられた光源と、可動ハウジングに取り付けられた前記一部の光学部品と、光源からの照明光を該光学部品に向けて伝播する光ファイバとを備えることとしてもよい。
可動ハウジングに電装部品を配置することを防止できるので、可動ハウジングの移動時に変位する電気配線をなくして耐久性を向上することができる。
【0020】
また、上記態様においては、前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングの内壁面に可視光に対する反射防止処理が施されていることとしてもよい。
また、上記態様においては、前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングが閉じられたときに両者間の隙間を遮光する遮光部材が設けられていることとしてもよい。
さらに、上記態様においては、前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングが閉じられたときに、両者の端部が互いに重なるかみ合わせ構造になっていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、遮光することまたは試料環境を維持することが可能な光学顕微鏡を、小型かつ低コストに提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】可動ハウジングが開状態である図1の光学顕微鏡装置を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図1の光学顕微鏡装置の外観形状を示す斜視図である。
【図4】可動ハウジングの端縁に沿って遮光部材を設けた、第1の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置の外観形状を示す斜視図である。
【図5】可動ハウジングが開状態である図4の光学顕微鏡装置を模式的に示す縦断面図である。
【図6】可動ハウジングが閉状態である図4の光学顕微鏡装置の固定ハウジングの端部と可動ハウジングの端部のかみ合わせ構造の縦断面拡大図である。
【図7】固定ハウジングおよび可動ハウジングの内面全体に反射防止処理を施した、第1の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置の外観形状示す斜視図である。
【図8】図7の光学顕微鏡装置の別の斜視図であって、固定ハウジングおよび可動ハウジングの内面を示したものである。
【図9】可動ハウジングの端部が固定ハウジングの端部の内側にかみ合わせられた、第1の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置本体の縦断面図である。
【図10】可動ハウジングの端部が固定ハウジングの端部の外側にかみ合わせられた、第1の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置本体の縦断面図である。
【図11】第1の実施形態の別の変形例に係る光学顕微鏡装置を模式的に示す縦断面図である。
【図12】本発明の参考例としての第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す縦断面図である。
【図13】可動ハウジングが閉状態である図12の光学顕微鏡装置の側方からみた縦断面図である。
【図14】可動ハウジングが開状態である図12の光学顕微鏡装置の側方からみた縦断面図である。
【図15】本発明の参考例としての第3の実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す縦断面図である。
【図16】可動ハウジングが閉状態である図15の光学顕微鏡装置の上方から見た断面図である。
【図17】可動ハウジングが開状態である図15の光学顕微鏡装置の上方から見た断面図である。
【図18】図16の状態の光学顕微鏡装置を側方からみた縦断面図である。
【図19】図17の状態の光学顕微鏡装置を側方からみた縦断面図である。
【図20】可動ハウジングが開状態である、第3の実施形態の一変形例に係る光学顕微鏡装置の上方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1について、図1〜図3を参照して説明する。
第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1は、図1に示されるように、倒立型顕微鏡2と、該倒立型顕微鏡2を収容するハウジング3とを備えている。
倒立型顕微鏡2は、試料Aを載置し図示しないクランプ機構により試料Aを固定する電動ステージ4と、該電動ステージ4の下方に配置され該電動ステージ4に載置された試料Aに対して、鉛直下方から励起光を照射する落射照明光学系5と、電動ステージ4の上方に配置され、試料Aの鉛直上方から白色光を照射する透過照明光学系6と、試料Aの下方に向けて発せられた蛍光および透過光を検出する検出光学系(結像光学系)7と、制御部8とを備えている。
【0024】
落射照明光学系5は、キセノンランプ9と、該キセノンランプ9から発せられた光を集光するコレクタレンズ10と、特定波長の励起光を選択的に透過させる波長選択フィルタ11と、該波長選択フィルタ11を透過した励起光を反射するダイクロイックミラー12と、該ダイクロイックミラー12により反射された励起光を集光して試料Aに照射する対物レンズ13とを備えている。
【0025】
前記透過照明光学系6は、ハロゲンランプ14と、該ハロゲンランプ14から発せられた白色光を集光するカップリングレンズ15と、該カップリングレンズ15により集光された白色光を一端に入射させる光ファイバ16と、該光ファイバ16により伝播され、他端から出射された白色光を集光するコレクタレンズ17と、該コレクタレンズ17により集光された白色光を反射して鉛直下方に指向させるミラー18と、該ミラー18により反射された白色光を集光するコンデンサレンズ19とを備えている。光ファイバ16は、例えば、液体ファイバのように柔軟な光ファイバであって、自由に湾曲できるようになっている。
【0026】
前記検出光学系7は、落射照明光学系5の対物レンズ13およびダイクロイックミラー12を共有し、試料Aにおいて発生し、対物レンズ13により集光され、ダイクロイックミラー12を透過した蛍光を透過する波長選択フィルタ20と、該波長選択フィルタ20を透過した蛍光を集光する結像レンズ21と、該結像レンズ21により集光された蛍光を検出するCCDカメラ22とを備えている。図中、符号23はミラーである。
【0027】
前記ハウジング3は、下側の固定ハウジング24と、上側の可動ハウジング25とからなる。可動ハウジング25は、ベアリングのような図示しない回転機構により、回転軸26回りに、図1に示す閉状態から図2に示すような開状態となるように、固定ハウジング24に回転可能に支持されている。ハウジング3は、閉状態において、外部からの光が遮断され、倒立型顕微鏡2を遮光状態に保持することができるようになっている。
【0028】
前記透過照明光学系6のハロゲンランプ14、カップリングレンズ15および光ファイバ16の一端は、前記固定ハウジング24に固定され、光ファイバ16の他端、コレクタレンズ17、ミラー18およびコンデンサレンズ19は、可動ハウジング25に固定されている。また、ハウジング3内には、該ハウジング3内の温度を調節するための温度調節器27が配置されている。また、ハウジング3には、炭酸ガスをハウジング3内に供給する炭酸ガス供給装置28がダクト29を介して接続されている。さらに、固定ハウジング24と可動ハウジング25との間には、両者の開閉状態を検出するためのマイクロスイッチまたはフォトインタラプタ等のセンサ30が設けられている。
前記制御部8は、電動ステージ4、キセノンランプ9、ハロゲンランプ14、CCDカメラ22、温度調節器27、炭酸ガス供給装置28およびセンサ30に接続されている。
【0029】
このように構成された第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1の作用について以下に説明する。
第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1を用いて試料の観察を行うには、まず、操作者は、可動ハウジング25を操作して、固定ハウジング24に対して可動ハウジング25を開く。可動ハウジング25は図示しないクランプ機構により、図2に示されるように、持ち上げられた状態に保持される。
【0030】
このとき、可動ハウジング25とともに、電動ステージ4の上方に配置されている透過照明光学系6が持ち上げられるので、電動ステージ4が、その上方に空間を大きくあけた状態に露出させられる。この状態で、操作者は、マイクロプレート31等の容器内に蛍光標識された培養細胞等の試料Aを収容した状態で、該電動ステージ4上にマイクロプレート31を載置し、固定する。
【0031】
また、このとき、可動ハウジング25が固定ハウジング24に対して開かれることにより、センサ30によって開状態が検出されるので、その検出信号に基づいて、制御部8が、電動ステージ4を作動させ、試料Aを搭載し易い位置に配置しておくこととしてもよい。このようにすることで操作性を向上することができる。
【0032】
操作者が試料Aを収容したマイクロプレート31を固定して可動ハウジング25を閉じると、センサ30が閉状態の検出信号を出力する。この状態で、可動ハウジング25に設けられた透過照明光学系6は、コンデンサレンズ19の光軸が対物レンズ13の光軸に一致する位置に配置される。
【0033】
センサ30からの閉状態の検出信号を受けた制御部8は、電動ステージ4を予め定められたプログラムに従って所定位置に駆動制御する。そして、制御部8は、ハロゲンランプ14またはキセノンランプ9を作動させ、かつ、CCDカメラ22を作動させることにより、自動的に試料Aの画像取得を開始する。電動ステージ4の駆動制御は、例えば、自動的に試料Aを収容するマイクロプレート31の各ウェルの画像を順次撮像していくこととしてもよく、また、対物レンズ13の図示しない焦準部を制御して合焦動作制御を行うこととしてもよい。
画像取得が自動的に行われることにより、操作者の手間を省くことができる。
撮像によりCCDカメラ22により取得された画像情報は、制御部8において画像処理され、蛍光画像としてモニタ32に表示されることになる。
【0034】
制御部8は、センサ30からの検出信号を受けて、ハロゲンランプ14やキセノンランプ9の点灯および消灯を制御することができる。具体的には、操作者が可動ハウジング25を開いたことが検出された場合には、ハロゲンランプ14やキセノンランプ9を消灯し、閉じたことが検出された場合には点灯制御を行う。これにより、試料Aをセットする際に、操作者が眩しさを感じることがなく、快適に試料Aのセット作業を行うことができるし、節電を図ることもできる。同様にして、温度調節器27、炭酸ガス供給装置28についても、制御部8がセンサ30の検出信号に基づいて制御することで、節電や炭酸ガスの排出削減を図ることもできる。
【0035】
このように構成された第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1によれば、可動ハウジング25を固定ハウジング24に対して開くことにより、電動ステージ4の上方に配されている透過照明光学系6を可動ハウジング25とともに退避させて、電動ステージ4の上方に広い空間を確保することができる。したがって、作業者は、その広い空間において試料Aの交換作業等を容易に行うことができる。その際に、電動ステージ4を移動させる必要もないので、試料Aの交換用に電動ステージ4のストロークを拡大する必要がない。したがって、電動ステージ4としては、必要最小限の動作範囲を有するもので足り、直動ガイド等を短くできるので、調整作業の簡易化、コスト低減および小型化を図ることができる。
【0036】
さらに、第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1によれば、可動ハウジング25内に電装系が存在せず、電気配線を引き回す必要がないので、開閉動作に伴う電気配線の劣化等の不都合の発生を防止することができるという利点もある。
【0037】
第1の実施形態においては、図4および図5に示されるように、可動ハウジング25に、その端縁に沿って、遮光部材100が取り付けられていてもよい。固定ハウジング24に対して可動ハウジング25が閉じられた状態では、図6に示されるように、固定ハウジング24の端部と可動ハウジング25の端部とが重なるようにかみ合わせられる。したがって、遮光部材100が固定ハウジング24と可動ハウジング25との隙間を閉塞するので、ハウジング3内への可視光の透過を防止することができる。
【0038】
遮光部材100としては、黒色のゴム、プラスチックあるいは金属製のキャップ状のものを用いることができる。遮光部材100は、可動ハウジング25の端部を覆う略U字状断面を有し、約1mm以上5mm以下の厚さ寸法を有している。なお、遮光部材100は固定ハウジング24側に設けられていてもよい。
【0039】
また、図7および図8に示されるように、固定ハウジング24および可動ハウジング25の内面全体に、反射防止処理が施されていてもよい。反射防止処理としては黒色塗料を塗布することが挙げられる反射防止処理としては、黒色のシート材を内面全体に接着してもよいし、黒色アルマイト処理を施してもよい。
【0040】
また、図9または図10に示されるように、固定ハウジング24および可動ハウジング25の端部どうしが相互に重なるようにしたかみ合わせ構造を採用してもよい。図9に示す例では、可動ハウジング25の端部が固定ハウジング24の端部の内側にかみ合わせられるようになっている。一方、図10に示す例では、可動ハウジング25の端部が固定ハウジング24の端部の外側にかみ合わせられるようになっている。これらのかみ合わせ構造により、可動ハウジング25と固定ハウジング24との隙間から外来のノイズ光がハウジング3内に入射するのを防止することができる。
【0041】
なお、第1の実施形態においては、透過照明光学系6の一部の光学部品、すなわち、光ファイバ16の他端、コレクタレンズ17、ミラー18およびコンデンサレンズ19が、可動ハウジング25に固定されている構成を例示したが、前記一部の光学部品は、必ずしも可動ハウジング25に固定される必要はない。例えば、図11に示すように、光ファイバ16の他端、コレクタレンズ17、ミラー18およびコンデンサレンズ19を含む透過照明光学ユニット200が、固定ハウジング24および可動ハウジング25に回転支持機構202およびバネ203により支持されることとしてもよい。
具体的には、透過照明光学ユニット200が、倒立型顕微鏡2のフレーム201に設けられた回転支持機構202により、所定の回転軸を中心に回転可能に支持されるとともに、可動ハウジング25と透過照明光学ユニット200を連結するバネ203により、可動ハウジング25の開操作にともなって光軸から退避されるように支持されることとしてもよい。
この場合、透過照明光学ユニット200の可動範囲は、倒立型顕微鏡2のフレーム201に設けられたストッパ201a,201bで規制される。可動ハウジング25の閉操作により、透過照明光学ユニット200は、重力によって図中時計周りに回転し、ストッパ201bによって位置決めされる。この状態で、透過照明光学系6は、コンデンサレンズ19の光軸が対物レンズ13の光軸に一致する位置に配置される。
【0042】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の参考例としての第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40について、図12〜図14を参照して以下に説明する。
第2の実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る光学顕微鏡装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40は、ハウジング41の構造において第1の実施形態と相違し、内部の倒立型顕微鏡2については、全く同じ構成を有している。
第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40のハウジング41は、下側に配される固定ハウジング42上に、直動ガイド43によって水平方向に移動可能な可動ハウジング44を備えている。固定ハウジング42と可動ハウジング44との間には図示しないクリック機構が設けられ、可動ハウジング44は、固定ハウジング42に対して、開状態と閉状態とをそれぞれ保持することができるようになっている。
【0044】
光ファイバ16は、固定ハウジング42と可動ハウジング44との間に掛け渡すように配置されている。光ファイバ16の長さ方向の途中位置は、固定ハウジング42の天井面を貫通してブッシュ45により固定されている。また、該ブッシュ45に対応する可動ハウジング44の壁面には、開状態から閉状態までの間、可動ハウジング44がブッシュ45に干渉しないように維持する長孔46が設けられている。
【0045】
可動ハウジング44が固定ハウジング42に対して閉位置に配置されると、可動ハウジング44に設けられている透過照明光学系6のコンデンサレンズ19の光軸が、対物レンズ13の光軸に略一致するように設けられ、その位置においてクリック機構の作動により可動ハウジング44が固定された状態に維持されるようになっている。そして、この状態で、ハウジング41内部の空間が外光を遮断した遮光状態とされる。
【0046】
逆に、操作者が可動ハウジング44を開状態に移動させると、可動ハウジング44とともに透過照明光学系6も退避させられるので、電動ステージ4の上方に広い空間を確保することができる。したがって、操作者は、その広い空間を利用して試料Aの交換や固定等の作業を容易に行うことができる。
【0047】
このように構成された第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40によれば、固定ハウジング42に対して可動ハウジング44を水平にスライドさせるだけで開閉でき、操作に大きな力を必要としないので操作性がよいという利点がある。
第2の施形態においてはハロゲンランプ14を固定ハウジング42内に設けているが、ランプユニットとしてハウジング41の外部に配置してもよい。
【0048】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の参考例としての第3の実施形態に係る光学顕微鏡装置50について、図15〜図19を参照して以下に説明する。
第3の実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る光学顕微鏡1または第2の実施形態に係る光学顕微鏡40と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
第3の実施形態に係る光学顕微鏡装置50は、正立型顕微鏡51と、該正立型顕微鏡51を収容するハウジング52とを備えている。ハウジング52は、第2の実施形態に係る光学顕微鏡装置40と同様に、固定ハウジング53に対して可動ハウジング54を水平方向にスライドさせて開閉する方式のものである。
正立型顕微鏡51は、試料Aを載置する電動ステージ4と、該電動ステージ4の上方に配置され該電動ステージ4に載置された試料Aに対して、鉛直上方から励起光を照射する落射照明光学系55と、電動ステージ4の下方に配置され、試料Aの鉛直下方から白色光を照射する透過照明光学系56と、試料Aの上方に向けて発せられた蛍光および透過光を検出する検出光学系57と、図示しない制御部8とを備えている。
【0050】
落射照明光学系55は、キセノンランプ9と、該キセノンランプ9から発せられた光を集光するカップリングレンズ58と、該カップリングレンズ58により集光された励起光を一端に入射させる光ファイバ59と、該光ファイバ59により伝播され、他端から出射された励起光を集光するコレクタレンズ60と、特定波長の励起光を選択的に透過させる波長選択フィルタ11と、該波長選択フィルタ11を透過した励起光を反射するダイクロイックミラー12と、該ダイクロイックミラー12により反射された励起光を鉛直下方に向けて反射するミラー61と、該ミラー61により反射された励起光を集光して試料Aに照射する対物レンズ13とを備えている。光ファイバ59は、例えば、液体ファイバのように柔軟な光ファイバであって、自由に湾曲できるようになっている。
【0051】
前記透過照明光学系56は、ハロゲンランプ14と、該ハロゲンランプ14から発せられた白色光を集光するコレクタレンズ17と、該コレクタレンズ17により集光された白色光を反射して鉛直上方に指向させるミラー18と、該ミラー18により反射された白色光を集光するコンデンサレンズ19とを備えている。
前記検出光学系57は、落射照明光学系55の対物レンズ13、ミラー61およびダイクロイックミラー12を共有している。
【0052】
前記落射照明光学系55のキセノンランプ9、カップリングレンズ58および光ファイバ59の一端は、前記固定ハウジング53内に配置されている。一方、光ファイバ59の他端、コレクタレンズ60、波長選択フィルタ11、ダイクロイックミラー12、ミラー61および対物レンズ13は、図示しない筐体により可動ハウジング54に固定されている。
【0053】
また、検出光学系57を構成する波長選択フィルタ20および結像レンズ21も可動ハウジング54に固定され、CCDカメラ22は固定ハウジング53内に配置されている。結像レンズ21からCCDカメラ22に向かう光軸上に配される可動ハウジング54および固定ハウジング53の壁面には、可動ハウジング54が閉状態に配されたときに一致する貫通孔62,63がそれぞれ設けられている。また、電動ステージ4と対物レンズ13との間に配される可動ハウジング54および固定ハウジング53の壁面にも、可動ハウジング54が閉状態に配されたときに一致する位置に配される貫通孔64,65がそれぞれ設けられている。
【0054】
また、図16〜図19に示されるように、固定ハウジング53と可動ハウジング54との間に延びる光ファイバ59は、その途中位置を固定ハウジング53の壁面にブッシュ45により固定されている。可動ハウジング54の対応部位には、可動ハウジング54が移動しても光ファイバ59に干渉しないようにブッシュ45を収容する長孔66が設けられている。
【0055】
また、可動ハウジング54または固定ハウジング53には、図示しない遮光布のような遮光部材が設けられており、可動ハウジング54が閉状態に配されたときに、両ハウジング53,54間の隙間を遮光して、外光が貫通孔62〜65等からハウジング52内に入射しないように構成されている。
【0056】
図15、図16、図18に示されるように、可動ハウジング54を固定ハウジング53に対して閉じた位置に配置すると、検出光学系57の対物レンズ13の光軸が、透過照明光学系56のコンデンサレンズ19の光軸に略一致させられる。その位置において図示しないクリック機構の作動により可動ハウジング54が固定された状態に維持されるようになっている。そして、この状態で、ハウジング52内部の空間が外光を遮断した遮光状態とされる。
【0057】
逆に、図17および図19に示されるように、操作者が可動ハウジング54を開状態に移動させると、可動ハウジング54とともに検出光学系57および落射照明光学系55も退避させられるので、電動ステージ4の上方に広い空間を確保することができる。したがって、操作者は、その広い空間を利用して試料Aの交換や固定等の作業を容易に行うことができる。
【0058】
第3の実施形態に係る光学顕微鏡装置50によれば、検出光学系57および落射照明光学系55の主要な光学部品は可動ハウジング54に配置されているが、CCDカメラ22およびキセノンランプ9は固定ハウジング53内に配置されているので、可動ハウジング54内から電気配線を排除することができる。したがって、可動ハウジング54の開閉時における電気配線の引き回しをなくすことができる。
【0059】
また、固定ハウジング53内にCCDカメラ22を配置することにより、比較的重量の大きな冷却型CCDカメラを使用することができる。したがって、ノイズを抑えた鮮明な画像を取得することができる。また、固定ハウジング53に対して可動ハウジング54を水平にスライドさせるだけで開閉でき、操作に大きな力を必要としないので操作性がよいという利点がある。
【0060】
第3の実施形態においても、図20に示されるように、固定ハウジング53と可動ハウジング54に設けられた貫通孔63,65および長孔66の周囲に、固定ハウジング53に対して可動ハウジング54が閉じられたときに固定ハウジング53と可動ハウジング54との間の隙間を閉塞する遮光部材100が設けられていてもよい。これにより、可動ハウジング54と固定ハウジング53との隙間から外来のノイズ光がハウジング3内に入射するのを防止することができる。遮光部材100としては、黒色のゴム、プラスチックあるいは金属からなるシート状の部材を採用することができる。
【符号の説明】
【0061】
A 試料
1,40,50 光学顕微鏡装置
2 倒立型顕微鏡(顕微鏡)
3,41,52 ハウジング
4 電動ステージ(ステージ)
6,56 透過照明光学系
7,57 検出光学系(結像光学系)
8 制御部
9 キセノンランプ(光源)
14 ハロゲンランプ(光源)
16 光ファイバ
17 コレクタレンズ(光学部品)
18 ミラー(光学部品)
19 コンデンサレンズ(光学部品)
22 CCDカメラ(撮像手段)
24,42,53 固定ハウジング
25,44,54 可動ハウジング
27 温度調節器
28 炭酸ガス供給装置
30 センサ
31 マイクロプレート
51 正立型顕微鏡(顕微鏡)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置するステージと透過照明光学系と結像光学系とを有する倒立型顕微鏡と、該倒立型顕微鏡を取り囲むハウジングとを備え、
ハウジングが、固定ハウジングと、該固定ハウジングに対して開閉移動可能に設けられる可動ハウジングとを備え、
前記透過照明光学系を構成する光学部品のうち、ステージの上方に配される少なくともコンデンサレンズが移動可能に前記ハウジング内に設けられ、
前記可動ハウジングが固定ハウジングに対して持ち上げられることにより開かれた位置に配置されたときにのみ、少なくとも前記コンデンサレンズを他の光学系の光軸から退避させて前記試料を載置可能な空間を前記ステージ上に確保し、閉じられた位置に配置されたときに両光学系の光軸を略一致させる切替機構を備える光学顕微鏡装置。
【請求項2】
前記切替機構が、少なくとも前記コンデンサレンズを前記可動ハウジングに固定することより構成されている請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項3】
前記可動ハウジングが、前記固定ハウジングに揺動可能に取り付けられている請求項1または請求項2に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項4】
前記可動ハウジングが、前記固定ハウジングに対して直線移動可能に取り付けられている請求項1または請求項2に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項5】
前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの開閉状態を検出するセンサを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項6】
前記センサからの検出信号を受けて前記ステージの位置を駆動制御する制御部を備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項7】
前記結像光学系に、前記ステージ上の試料を撮像する撮像手段と、前記センサからの検出信号を受けて前記撮像手段を制御する制御部とを備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項8】
前記ステージ上の試料を照明する光源と、前記センサからの検出信号を受けて前記光源を制御する制御部とを備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項9】
前記ハウジング内の温度を調節する温度調節器を備え、前記センサからの検出信号を受けて前記温度調節器を制御する制御部を備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項10】
前記ハウジング内の炭酸ガス濃度を調節する炭酸ガス供給装置を備え、前記センサからの検出信号を受けて前記炭酸ガス供給装置を制御する制御部を備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項11】
前記ステージが、試料を収容したマイクロプレートを載置可能である請求項1から請求項10のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項12】
前記透過照明光学系が、光源と、可動ハウジングに取り付けられた前記一部の光学部品と、光源からの照明光を該光学部品に向けて伝播する光ファイバとを備える請求項1から請求項11のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項13】
前記光源が固定ハウジングに取り付けられている請求項12に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項14】
前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングの内壁面に可視光に対する反射防止処理が施されている請求項1から請求項13のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項15】
前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングが閉じられたときに両者間の隙間を遮光する遮光部材が設けられている請求項1から請求項14のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項16】
前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングが閉じられたときに、両者の端部が互いに重なるかみ合わせ構造になっている請求項1から請求項14のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項1】
試料を載置するステージと透過照明光学系と結像光学系とを有する倒立型顕微鏡と、該倒立型顕微鏡を取り囲むハウジングとを備え、
ハウジングが、固定ハウジングと、該固定ハウジングに対して開閉移動可能に設けられる可動ハウジングとを備え、
前記透過照明光学系を構成する光学部品のうち、ステージの上方に配される少なくともコンデンサレンズが移動可能に前記ハウジング内に設けられ、
前記可動ハウジングが固定ハウジングに対して持ち上げられることにより開かれた位置に配置されたときにのみ、少なくとも前記コンデンサレンズを他の光学系の光軸から退避させて前記試料を載置可能な空間を前記ステージ上に確保し、閉じられた位置に配置されたときに両光学系の光軸を略一致させる切替機構を備える光学顕微鏡装置。
【請求項2】
前記切替機構が、少なくとも前記コンデンサレンズを前記可動ハウジングに固定することより構成されている請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項3】
前記可動ハウジングが、前記固定ハウジングに揺動可能に取り付けられている請求項1または請求項2に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項4】
前記可動ハウジングが、前記固定ハウジングに対して直線移動可能に取り付けられている請求項1または請求項2に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項5】
前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの開閉状態を検出するセンサを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項6】
前記センサからの検出信号を受けて前記ステージの位置を駆動制御する制御部を備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項7】
前記結像光学系に、前記ステージ上の試料を撮像する撮像手段と、前記センサからの検出信号を受けて前記撮像手段を制御する制御部とを備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項8】
前記ステージ上の試料を照明する光源と、前記センサからの検出信号を受けて前記光源を制御する制御部とを備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項9】
前記ハウジング内の温度を調節する温度調節器を備え、前記センサからの検出信号を受けて前記温度調節器を制御する制御部を備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項10】
前記ハウジング内の炭酸ガス濃度を調節する炭酸ガス供給装置を備え、前記センサからの検出信号を受けて前記炭酸ガス供給装置を制御する制御部を備える請求項5に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項11】
前記ステージが、試料を収容したマイクロプレートを載置可能である請求項1から請求項10のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項12】
前記透過照明光学系が、光源と、可動ハウジングに取り付けられた前記一部の光学部品と、光源からの照明光を該光学部品に向けて伝播する光ファイバとを備える請求項1から請求項11のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項13】
前記光源が固定ハウジングに取り付けられている請求項12に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項14】
前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングの内壁面に可視光に対する反射防止処理が施されている請求項1から請求項13のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項15】
前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングが閉じられたときに両者間の隙間を遮光する遮光部材が設けられている請求項1から請求項14のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【請求項16】
前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングが閉じられたときに、両者の端部が互いに重なるかみ合わせ構造になっている請求項1から請求項14のいずれかに記載の光学顕微鏡装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−118435(P2011−118435A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55823(P2011−55823)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2007−545271(P2007−545271)の分割
【原出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2007−545271(P2007−545271)の分割
【原出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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