光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器
【課題】クラッド部を伝搬する光をコア部から遠ざける手段を有することにより、信号光のS/N比を向上させ、高品質の光通信が可能な光導波路、およびかかる光導波路を備えた高性能の光配線、光電気混載基板および電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の光導波路は、コア部と、コア部に隣接して設けられたクラッド部とを備える光導波路であって、クラッド部中に設けられ、コア部よりも屈折率が低く、コア部に接した低屈折率領域と、低屈折率領域よりも屈折率が高く、低屈折率領域を介してコア部から離間した平面視で粒状をなす複数の高屈折率領域とを有しており、複数の高屈折率領域は、クラッド部中に点在または整列している。また、各高屈折率領域は、それぞれコア部と同種の材料で構成されているのが好ましい。
【解決手段】本発明の光導波路は、コア部と、コア部に隣接して設けられたクラッド部とを備える光導波路であって、クラッド部中に設けられ、コア部よりも屈折率が低く、コア部に接した低屈折率領域と、低屈折率領域よりも屈折率が高く、低屈折率領域を介してコア部から離間した平面視で粒状をなす複数の高屈折率領域とを有しており、複数の高屈折率領域は、クラッド部中に点在または整列している。また、各高屈折率領域は、それぞれコア部と同種の材料で構成されているのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光周波搬送波を使用してデータを移送する光通信がますます重要になっている。このような光通信において、光周波搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路がある。
【0003】
この光導波路は、例えば、一対のクラッド層と、一対のクラッド層の間に設けられたコア層を有して構成される。コア層は、線状のコア部とそれを挟み込むようにコア部の両側に設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光周波搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド層およびクラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0004】
特許文献1には、2層のクラッド層(上方クラッド層および下方クラッド層)と、その間に設けられ、ポリシランと有機過酸化物を含むポリシラン組成物を用いて形成されたポリシラン層とを有するポリマー光導波路が開示されている。また、ポリシラン層中には、コア層(コア部)とその両側に設けられた側面クラッド層(クラッド部)とが形成されている。
【0005】
このような光導波路では、コア部が、コア部よりも屈折率が低いクラッド層およびクラッド部によって囲まれた構成となっている。したがって、コア部の端部から導入された光は、クラッド層およびクラッド部との境界で反射しながら、コア部の軸に沿って搬送される。
【0006】
また、光導波路の入射側には、半導体レーザ等の発光素子が配置され、この発光素子から発生した光を光導波路のコア部に入射する。一方、光導波路の出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置され、コア部を伝搬してきた光を受光素子により受光する。そして、受光素子により受光した光の明滅パターンに基づいて光通信を可能にする。
【0007】
ところで、光導波路が低屈折率の媒体に隣接している場合、具体的には、光導波路が空気中に存在している場合、コア部とクラッド部との境界のみでなく、クラッド部と空気との境界においても光が反射される。
【0008】
ここで、光導波路の入射側では、発光素子が発生する光の全てをコア部に入射させることが好ましいが、一般には、光導波路と発光素子との間で光軸のずれや開口数のマッチング不良等の原因により、一部の光がクラッド部に入射することがある。
【0009】
このようにしてクラッド部に入射された光は、空気との境界で反射を繰り返し、終端まで伝搬する。そして、最終的には、クラッド部の終端から出射し、コア部から出射した光とともに受光素子によって受光される。その結果、クラッド部を伝搬してきた光がノイズとなってS/N比を低下させ、クロストーク等による光通信の品質低下を招くことが問題となっている。
【0010】
また、コア部とクラッド部との屈折率差が著しく小さい部分が含まれていると、この部分からコア部を伝搬する光がクラッド部側に漏れ出ることがある。この漏れ出た光も、クラッド部を伝搬し、ノイズとなってしまう。その結果、光通信の品質のさらなる低下を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−333883号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、クラッド部を伝搬する光をコア部から遠ざける手段を有することにより、信号光のS/N比を向上させ、高品質の光通信が可能な光導波路、およびかかる光導波路を備えた高性能の光配線、光電気混載基板および電子機器を提供することにある。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、
コア部と、該コア部に隣接して設けられたクラッド部と、を備える光導波路であって、
前記クラッド部中に設けられ、前記コア部よりも屈折率が低く、前記コア部に接した低屈折率領域と、該低屈折率領域よりも屈折率が高く、該低屈折率領域を介して前記コア部から離間した平面視で粒状をなす複数の高屈折率領域と、を有しており、
該複数の高屈折率領域は、前記クラッド部中において、前記コア部に沿って点在または整列していることを特徴とする光導波路である。
【0014】
また、本発明の光導波路では、前記各高屈折率領域は、それぞれ前記コア部と同種の材料で構成されているのが好ましい。
【0015】
また、本発明の光導波路では、前記各高屈折率領域の屈折率と前記低屈折率領域の屈折率との差は、0.5%以上であるのが好ましい。
【0016】
また、本発明の光導波路では、前記複数の高屈折率領域は、前記クラッド部を通過する光を散乱させるものであるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の光導波路では、前記各高屈折率領域は、それぞれ、その輪郭に凹凸を有しているのが好ましい。
【0018】
また、本発明の光導波路では、前記各高屈折率領域は、前記クラッド部中に不規則に点在しているのが好ましい。
【0019】
また、本発明の光導波路では、前記複数の高屈折率領域は、当該光導波路の光入射側の端面および光出射側の端面に露出しないよう配置されているのが好ましい。
【0020】
また、本発明の光導波路では、前記複数の高屈折率領域は、前記コア部と同一の製造工程で形成されたものであるのが好ましい。
【0021】
また、本発明の光導波路では、当該光導波路は、第1の層、第2の層および第3の層をこの順で積層してなる積層体を有し、
前記第2の層の一部が、前記コア部をなしており、
前記第2の層の残部、前記第1の層および前記第3の層が、前記クラッド部を構成しているのが好ましい。
【0022】
また、本発明の光導波路では、前記複数の高屈折率領域は、前記第2の層中に設けられているのが好ましい。
【0023】
また、本発明の光導波路では、当該光導波路の前記コア部と、前記クラッド部の少なくとも一部とは、それぞれノルボルネン系ポリマーを主材料として構成されているのが好ましい。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、
上記光導波路を備えたことを特徴とする光配線である。
【0025】
上記目的を達成するために、本発明は、
電気配線と、上記光配線とを、基板上に混載してなることを特徴とする光電気混載基板である。
【0026】
上記目的を達成するために、本発明は、
上記光電気混載基板を備えたことを特徴とする電子機器である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す光導波路のコア層のみを示す平面図である。
【図3】図3は、図2に示すコア層を伝搬する光の伝搬経路の一例を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図7】図7は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図8】図8は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は、図2に示す第1実施形態の別の構成例を示す図である。
【図10】図10は、図2に示す第1実施形態のさらに別の構成例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の光導波路の第2実施形態のコア層のみを示す平面図である。
【図12】図12は、図11に示す第2実施形態の別の構成例を示す図である。
【図13】図13は、光導波路のクラッド部から出射した光の強度を測定する方法を説明するための図である。
【図14】図14は、クロストークを評価する方法を説明するための図である。
【図15】図15は、クラッド部を伝搬してきた光の強度を表すグラフである。
【図16】図16は、クロストークの光の強度を表すグラフである。
【図17】図17は、従来の光導波路のコア層のみを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0029】
<第1実施形態>
まず、本発明の光導波路の第1実施形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2は、図1に示す光導波路のコア層のみを示す平面図、図3は、図2に示すコア層を伝搬する光の伝搬経路の一例を示す図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」といい、図2、3中の右側を「右」または「出射側」、左側を「左」または「入射側」という。また、図1は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
【0031】
図1に示す光導波路10は、図1中下側からクラッド層(クラッド部)11、コア層13およびクラッド層(クラッド部)12をこの順に積層してなるものであり、コア層13には、所定パターンのコア部14と、このコア部(導波路チャンネル)14に隣接する側面クラッド部15(クラッド部)とが形成されている。図1には、2つのコア部14と3つの側面クラッド部15とが交互に設けられている。
【0032】
図1に示す光導波路10は、入射側端面10aのコア部14に入射された光を、コア部14とクラッド部(各クラッド層11、12および各側面クラッド部15)との界面で全反射させ、出射側に伝搬させることにより、出射側端面10bのコア部14から取り出すことができる。
【0033】
また、後に詳述するが、各側面クラッド部15は、それぞれ側面クラッド部15中の他の領域(低屈折率領域152)よりも屈折率が高い高屈折率領域151を複数個含んでいる。すなわち、側面クラッド部15は、複数の高屈折率領域151と、この高屈折率領域151より屈折率が低い低屈折率領域152とに分かれている。そして、図1に示す複数の高屈折率領域151は、各側面クラッド部15中に整列している。
【0034】
コア部14と側面クラッド部15中の低屈折率領域152との屈折率の差は、特に限定されないが、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0035】
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、低屈折率領域152の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
【0036】
また、図1に示す構成では、コア部14は、平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等してもよく、その形状は任意である。なお、後述するような光導波路10の製造方法を用いれば、複雑かつ任意の形状のコア部14を容易にかつ寸法精度よく形成することができる。
【0037】
また、コア部14は、その横断面形状が正方形または矩形(長方形)のような四角形をなしている。
【0038】
コア部14の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。
【0039】
このコア部14は、側面クラッド部15中の低屈折率領域152に比べて屈折率が高い材料で構成され、また、クラッド層11、12に対しても屈折率が高い材料で構成されている。
【0040】
コア部14、側面クラッド部15およびクラッド層11、12の各構成材料は、それぞれ上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、本実施形態では、コア部14と側面クラッド部15とは同一の材料(コア層13)で構成されており、コア部14と低屈折率領域152との屈折率差、および、高屈折率領域151と低屈折率領域152との屈折率差は、それぞれ材料の化学構造の差異により発現している。
【0041】
コア層13の構成材料には、コア部14を伝搬する光に対して実質的に透明な材料であればいかなる材料をも用いることができるが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。
【0042】
このうち、本実施形態のように化学構造の差異により屈折率差を発現させるためには、紫外線、電子線のような活性エネルギー線の照射により(あるいはさらに加熱することにより)屈折率が変化する材料であるのが好ましい。
【0043】
このような材料としては、例えば、活性エネルギー線の照射や加熱により、少なくとも一部の結合が切断したり、少なくとも一部の官能基が脱離する等して、化学構造が変化し得る材料が挙げられる。
【0044】
具体的には、ポリシラン(例:ポリメチルフェニルシラン)、ポリシラザン(例:ペルヒドロポリシラザン)等のシラン系樹脂や、前述したような構造変化を伴う材料のベースとなる樹脂としては、分子の側鎖または末端に官能基を有する以下の(1)〜(6)のような樹脂が挙げられる。(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂等のノルボルネン系樹脂、その他、光硬化反応性モノマーを重合することにより得られるアクリル系樹脂、エポキシ樹脂。
【0045】
なお、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0046】
一方、クラッド層11および12は、それぞれ、コア部14の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような構成により、コア部14は、その外周をクラッド部に囲まれた導光路として機能する。
【0047】
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さの0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.3〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路10が不要に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
【0048】
また、クラッド層11および12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
【0049】
なお、本実施形態では、コア層13の構成材料と、クラッド層11、12の構成材料との間で、両者の間の屈折率差を考慮して適宜異なる材料を選択して使用することが可能である。したがって、コア層13とクラッド層11、12との境界において光を確実に全反射させるため、十分な屈折率差が生じるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路10の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。その結果、コア部14を伝搬する光の減衰を抑制することができる。
【0050】
また、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13とクラッド層11、12との間の密着性が高いことが好ましい。したがって、クラッド層11、12の構成材料は、コア層13の構成材料よりも屈折率が低く、かつコア層13の構成材料と密着性が高いという条件を満たすものであれば、いかなる材料であってもよい。
【0051】
例えば、比較的低い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーとしては、末端にエポキシ構造を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系ポリマーは、特に低い屈折率を有するとともに、密着性が良好である。
【0052】
また、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高いため、かかるノルボルネン系ポリマーを用いることにより、光導波路10に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
【0053】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアルキル基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられるが、ヘキシル基が特に好ましい。なお、これらのアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0054】
ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマー全体の屈折率が上昇するのを防止することができる。また、ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることから好ましい。
【0055】
なお、クラッド層11、側面クラッド部15およびクラッド層12の構成材料は、それぞれ、同一(同種)のものでも異なるものでもよいが、これらは、屈折率が近似しているものであるのが好ましい。
【0056】
このような本発明の光導波路10は、コア部14の材料の光学特性等によっても若干異なり、特に限定されないが、例えば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において好適に使用される。
【0057】
ここで、前述したように、側面クラッド部15は、複数の高屈折率領域151と、この高屈折率領域151より屈折率が低い低屈折率領域152とに分かれている。
【0058】
本発明の光導波路は、クラッド部中の一部にこのような高屈折率領域を含むことを特徴とするものである。
【0059】
以下、高屈折率領域151および低屈折率領域152について詳述する。
低屈折率領域152は、各側面クラッド部15のうち、図2に示すように、各コア部14に接するように設けられている。一方、高屈折率領域151は、図2に示すように、各コア部14に直接接触しないように設けられている。すなわち、高屈折率領域151と各コア部14との間に、低屈折率領域152が介挿された状態になっている。
【0060】
また、複数の高屈折率領域151は、それぞれが平面視で短冊状をなしており、軸線が互いに平行になるように整列して設けられている。なお、図2に示す各高屈折率領域151は、それぞれ平面視で平行四辺形をなしている。また、これらの複数の高屈折率領域151は、各側面クラッド部15中において、各コア部14を挟んで両側に整列している。また、図2に示す各高屈折率領域151は、細長い平行四辺形をなしており、長辺の長さは短辺の2〜50倍程度であるのが好ましく、5〜30倍程度であるのがより好ましい。
【0061】
また、これらの短冊状の高屈折率領域151は、図2に示すように、各側面クラッド部15を幅方向に横切るように設けられている。その結果、各側面クラッド部15を通過する光は、必然的に各高屈折率領域151に通過することになり、後述する各高屈折率領域151の機能を確実に発揮させることができる。
【0062】
このような短冊状をなす各高屈折率領域151は、それぞれその軸線が、コア部14の軸線の垂線に対して、コア部14を通過する光の進行方向の後方に傾斜するように設けられている。このように傾斜して設けられていることにより、各高屈折率領域151を通過する光は、低屈折率領域152から高屈折率領域151に入射する際、および、高屈折率領域151から低屈折率領域152に出射する際、両者の屈折率差に基づいて、必然的にコア部14から遠ざかるように屈折する。その結果、側面クラッド部15を通過する光を、コア部14から遠ざけることができ、光導波路10の出射側端面10bでは、コア部14を伝搬してきた光の出射位置と、側面クラッド部15を伝搬してきた光の出射位置との離間距離が十分に確保されることとなる。
【0063】
なお、この場合、図2に示す、コア部14の軸線の垂線と、短冊状をなす各高屈折率領域151の軸線とがなす角度(高屈折率領域151の傾斜角)θは、高屈折率領域151と低屈折率領域152との屈折率差や側面クラッド部15の幅等に応じて、側面クラッド部15を通過する光が必要かつ十分に屈折するように適宜設定される。
【0064】
具体的には、高屈折率領域151の傾斜角θは、10〜85°程度であるのが好ましく、20〜70°程度であるのがより好ましい。傾斜角θを前記範囲内に設定することにより、コア部14から漏れ出た光がコア部14から確実に離れるよう屈折し、光導波路10の出射側端面10bにおいて、信号光とノイズ光とを分離することができる。その結果、搬送波としてのS/N比をより確実に高めることができる。
【0065】
また、各高屈折率領域151同士の離間距離も、高屈折率領域151と低屈折率領域152との屈折率差や側面クラッド部15の幅等に応じて適宜設定される。
【0066】
さらに、各高屈折率領域151の幅も、同様に適宜設定されるが、一例としては、1〜30μm程度であるのが好ましく、3〜20μm程度であるのがより好ましい。
【0067】
なお、各高屈折率領域151の形状は、短冊状(細長い形状)をなしていれば特に限定されず、台形、長方形、菱形のような四角形の他、五角形、六角形のような多角形、楕円形、長円形のような円形等であってもよい。
【0068】
ここで、従来の光導波路について説明する。
図17は、従来の光導波路90のコア層のみを示す平面図である。
【0069】
図17に示すコア層93は、平行に設けられた2つのコア部94と3つの側面クラッド部95とを交互に配置して構成されている。また、このようなコア層93に通信用の光を照射するため、各コア部94に対応して、それぞれ光導波路90の入射側に発光素子97が設けられ、出射側には、信号光を受光するための受光素子98が設けられる。
【0070】
このようなコア層93では、側面クラッド部95の屈折率よりも空気の屈折率が小さいため、側面クラッド部95とその外部空間(空気)との界面において、光の全反射が生じる。このため、何らかの理由で側面クラッド部95に入射された光は、側面クラッド部95と空気との界面で全反射を繰り返しながら伝搬し、出射側端面90bから出射する。これにより、側面クラッド部95を伝搬してきた光は、その一部がコア部94を伝搬してきた信号光とともに受光素子98に到達する。その結果、側面クラッド部95を伝搬してきた光は、信号光にとってのノイズとなり、搬送波としてのS/N比の低下を招いていた。このため従来の光導波路90では、搬送波としてのS/N比を向上させ、光通信の品質を向上させることが課題となっていた。
【0071】
ところで、側面クラッド部95に光が入射する原因の1つとしては、光導波路90の光軸と発光素子97の光軸とのずれ、および光導波路90と発光素子97の相互の開口数の不適合が挙げられる。本来、コア部94の光軸と発光素子97の光軸とが一致しており、かつ発光素子97から発生した光の全てがコア部94に入射するよう相互の開口数をマッチングさせることが好ましいが、これらが不十分である場合、一部の光が光導波路90の入射側端面90aの側面クラッド部95に入射されてしまう。しかも、コア部94の横断面は極めて微小であるため、発光素子97を配置する際、光軸を一致させたり開口数のマッチングを図ることは極めて困難であった。
【0072】
さらには、光導波路90の光軸と受光素子98の光軸とがずれている場合、および光導波路90と受光素子98の相互の開口数が不適合である場合にも、側面クラッド部95を伝搬してきた光が受光素子98に到達してしまい、搬送波としてのS/N比の低下を招く。
【0073】
また、側面クラッド部95に光が入射する別の原因としては、光導波路90の途中でコア部94から側面クラッド部95に光が漏れ出ることが挙げられる。コア部94から漏れ出た光は、側面クラッド部95を伝搬し、前述したように搬送波としてのS/N比の低下を招く。
【0074】
そこで、本発明では、前述したように、側面クラッド部15の一部に、他の領域(低屈折率領域152)よりも屈折率が高く、かつ前述したような複数の高屈折率領域151を整列させて設けることにより、光導波路10の側面クラッド部15を伝搬する光が高屈折率領域151を通過する際にコア部14から遠ざけるように光を屈折させることを可能にした。そして、光導波路10の出射側端面10bでは、コア部14を伝搬してきた光の出射位置と側面クラッド部15を伝搬してきた光の出射位置との離間距離を十分に確保すること可能にした。これにより、仮に側面クラッド部15に光が入射したとしても、この光を高屈折率領域151によりコア部14から遠ざかるように屈折させることができる。
【0075】
ここで、図3には、図2に示す光導波路を通過する光の経路を示す。本発明によれば、図3に示すように、発光素子17から出射してコア部14を通過する光(実線矢印で示す。)に影響を及ぼすことなく、側面クラッド部15を通過する光(破線矢印で示す。)がコア部14から遠ざかるように誘導される。その結果、出射側端面10bでは、コア部14を伝搬してきた信号光の出射位置14Lと、高屈折率領域151を伝搬してきたノイズ光の出射位置151Lとを十分に離すことができる。そして、このノイズ光が受光素子18に受光されるのを抑制して、搬送波としてのS/N比が低下するのを防止することができる。
【0076】
また、高屈折率領域151は、図2に示すように、コア部14と離間している。仮に高屈折率領域151とコア部14とが接していると、この部分からコア部14を伝搬する光が高屈折率領域151側に分岐してしまうおそれがあるが、高屈折率領域151とコア部14とが離間していることにより、コア部14を伝搬する光が高屈折率領域151側に分岐してしまうのを防止することができる。
【0077】
このような高屈折率領域151は、その屈折率が側面クラッド部15の他の領域、すなわち低屈折率領域152よりも高ければよいが、好ましくはその差が0.5%以上とされ、より好ましくはその差が0.8%以上とされる。また、上限値は特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%とされる。高屈折率領域151と低屈折率領域152との間にこのような十分な屈折率差を設けることにより、高屈折率領域151と低屈折率領域152との界面で確実に全反射を生じさせることができる。その結果、高屈折率領域151を伝搬する光が不本意にも低屈折率領域152に漏れ出るのをより確実に防止することができる。
【0078】
また、高屈折率領域151は、入射側端面10aに露出していないのが好ましい。これにより、高屈折率領域151に直接光が入射されないので、高屈折率領域151中を光が伝搬するのを抑制することができる。その結果、前述したような高屈折率領域151の機能を確実に発揮させることができる。
【0079】
一方、高屈折率領域151は、光導波路10の出射側端面10bにおいても露出していないのが好ましい。出射側端面10bに高屈折率領域151が露出していると、この部分から相対的に高強度の光が出射するおそれがあるが、露出していなければ、高屈折率領域151が本来の機能を確実に発揮することができ、S/N比を確実に高めることができる。
【0080】
また、複数の高屈折率領域151は、図2に示すように、光導波路10の入射側端面10aから出射側端面10bまでの間で、長手方向の全体に分布するように設けられるのが好ましい。このようにすれば、入射側端面10aから側面クラッド部15に入射した光はもちろん、光導波路10の途中でコア部14から側面クラッド部15に漏れ出た光をも、確実にコア部14から遠ざけることができる。
【0081】
また、図2に示すように、複数のコア部14、14がある(マルチチャンネルである)場合、前述したような高屈折率領域151が設けられていると、各コア部14、14にそれぞれ対応する受光素子以外の受光素子にノイズ光が受光されてしまうこと、すなわち、別チャンネルからの信号光の漏れ込み(クロストーク)を効果的に抑制することができる。
【0082】
なお、この場合、隣接するコア部14、14間の側面クラッド部15中に設けられる高屈折率領域151は、最も近くに位置するコア部14を基準にして傾斜方向を決めればよい。したがって、図2に示すような平行するコア部14、14間に配置される各高屈折率領域151は、必然的にV字状の配列になる。
【0083】
ここで、図9に、図2に示す第1実施形態の別の構成例を示す。
図9に示す光導波路10は、短冊状をなす高屈折率領域の平面視の形状が異なること以外は、図2と同様である。すなわち、図9に示す側面クラッド部15は、平面視で短冊状をなす複数の高屈折率領域151’を有するものであるが、この複数の高屈折率領域151’は、平面視で細長い三角形をなしている。
【0084】
また、このような高屈折率領域151’は、図2に示す高屈折率領域151と同様、その軸線が、コア部14の軸線の垂線に対して、コア部14を通過する光の進行方向の後方に傾斜するように設けられている。
【0085】
さらに、各高屈折率領域151’は、コア部14側から遠ざかるにつれて、横断面積が徐々に増大するような形状をなしている。かかる形状の各高屈折率領域151’は、側面クラッド部15を通過する光をより効果的に減衰させることができる。その結果、搬送波としてのS/N比をより高めることができる。
【0086】
なお、図9では、平面視で細長い三角形をなす複数の高屈折率領域151’において、コア部14側に位置する内角は、鋭角であり、他の内角に比べてその角度が小さい。具体的には、この内角は、3〜30°程度であるのが好ましく、5〜20°程度であるのがより好ましい。
【0087】
また、この場合、コア部14側に位置する内角に対向する辺の長さは、他の2辺の長さよりも短くなる。具体的には、コア部14側に位置する内角に対向する辺の長さは、他の2辺のうちの短い方の辺に対して、0.02〜0.5倍程度であるのが好ましく、0.03〜0.2倍程度であるのがより好ましい。
【0088】
また、図10には、図2に示す第1実施形態のさらに別の構成例を示す。
図10に示す光導波路10は、短冊状をなす高屈折率領域の平面視の形状が異なること以外は、図2と同様である。すなわち、図10に示す側面クラッド部15は、平面視で短冊状をなす複数の高屈折率領域151”を有するものであるが、この複数の高屈折率領域151”は、平面視で細長い長方形をなしており、かつ、その軸線の延長線がコア部14の軸線に対してほぼ直交するよう配置されている。
【0089】
なお、図10に示す各高屈折率領域151”は、細長い長方形をなしているが、長辺の長さは短辺の2〜50倍程度であるのが好ましく、5〜30倍程度であるのがより好ましい。
【0090】
このような複数の高屈折率領域151”は、側面クラッド部15を伝搬する光をコア部14から遠ざけるように効率的に屈折または散乱させるため、側面クラッド部15を通過する光をさらに効果的に減衰させることができる。その結果、搬送波としてのS/N比のさらなる向上を図ることができる。
【0091】
これらの各高屈折率領域151’および各高屈折率領域151”は、前述した各高屈折率領域151と同様の機能を有する。
【0092】
次に、光導波路10の製造方法の一例について説明する。
光導波路10は、クラッド層11(第1の層)と、コア層13(第2の層)と、クラッド層12(第3の層)とをそれぞれ作製し、これらを積層することにより製造される。
【0093】
このような製造方法では、互いに屈折率の異なる部位が物理的かつ光学的に接するように作製する必要がある。具体的には、コア部14に対して、低屈折率領域152や各クラッド層11、12が隙間を介することなく、確実に密着するように形成する必要がある。また、高屈折率領域151と低屈折率領域152や各クラッド層11、12との間も確実に密着している必要がある。
【0094】
その具体的な製造方法としては、同一層(第2の層)内に、コア部14、高屈折率領域151、低屈折率領域152等を形成し得る方法であれば特に限定されず、例えば、フォトブリーチング法、フォトリソグラフィ法、直接露光法、ナノインプリンティング法、モノマーディフュージョン法等が挙げられる。
【0095】
ここでは、代表として、モノマーディフュージョン法による光導波路10の製造方法について説明する。
【0096】
図4〜図8は、それぞれ、図1に示す光導波路10の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。なお、図5、6、8は、図2のA−A線における断面図である。
【0097】
[1] まず、支持基板161上に、層110を形成する(図4参照)。
層110は、コア層形成用材料(ワニス)100を塗布し硬化(固化)させる方法により形成される。
【0098】
具体的には、層110は、支持基板161上にコア層形成用材料100を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板161を換気されたレベルテーブルに置いて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより形成する。
【0099】
層110を塗布法で形成する場合、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0100】
支持基板161には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
【0101】
コア層形成用材料100は、ポリマー115と、添加剤120(少なくともモノマーおよび触媒を含む)とで構成される現像性材料を含有し、活性放射線の照射および加熱により、ポリマー115中において、モノマーの反応が生じる材料である。
【0102】
そして、得られた層110中では、ポリマー(マトリックス)115は、いずれも、実質的に一様かつランダムに分配され、添加剤120は、ポリマー115内に実質的に一様かつランダムに分散されている。これにより、層110中には、添加剤120が実質的に一様かつ任意に分散されている。
【0103】
このような層110の平均厚さは、形成すべきコア層13の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましく、15〜65μm程度であるのがさらに好ましい。
【0104】
ポリマー115には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中で後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても、十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
【0105】
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、コア層形成用材料100中や層110中においてポリマー115と相分離を起こさないことを言う。
【0106】
このようなポリマー115としては、前述したコア層13の構成材料が挙げられる。
なお、ポリマー115としてノルボルネン系ポリマーを用いた場合、このポリマーが高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層13を得ることができる。
【0107】
また、ノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
【0108】
このうち、コポリマーの一例としては、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有する化合物が好適に用いられる。
【0109】
【化1】
[式中、mは、1〜4の整数を表し、nは、1〜9の整数を表す。]
【0110】
なお、コポリマーの種類としては、上記式(1)の2つの単位が任意の順序(ランダム)に並んだもの、交互に並んだもの、各単位がそれぞれ固まって(ブロック状に)並んだもの等のいずれの形態をとるものであってもよい。
【0111】
ここで、ポリマー115として上記ノルボルネン系ポリマーを用いた場合、添加剤120の一例として、ノルボルネン系モノマー、助触媒(第1の物質)および触媒前駆体(第2の物質)を含むものが好ましく選択される。
【0112】
ノルボルネン系モノマーは、後述する活性放射線に照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、この反応物の存在により、層110において照射領域と、活性放射線の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
【0113】
ここで、この反応物としては、ノルボルネン系モノマーがポリマー(マトリックス)115中で重合して形成されたポリマー(重合体)、ポリマー115同士を架橋する架橋構造、および、ポリマー115に重合してポリマー115から分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖(ペンダントグループ))のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0114】
ここで、層110において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して高い屈折率を有するノルボルネン系モノマーとが組み合わせて使用され、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して低い屈折率を有するノルボルネン系モノマーとが組み合わせて使用される。
【0115】
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味する。
【0116】
そして、ノルボルネン系モノマーの反応(反応物の生成)により、層110において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が側面クラッド部15となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分がコア部14となる。
【0117】
触媒前駆体(第2の物質)は、前記のモノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、後述する活性放射線の照射により活性化した助触媒(第1の物質)の作用により、活性化温度が変化する物質である。
【0118】
この触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層13(光導波路10)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路10の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
【0119】
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0120】
(E(R)3)2Pd(Q)2 ・・・(Ia)
[(E(R)3)aPd(Q)(LB)b]p[WCA]r ・・・(Ib)
[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)3は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
【0121】
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CCMe3)2(P(Cy)3)2、Pd(OAc)2(P(Cp)3)2、Pd(O2CCF3)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CC6H5)3(P(Cy)3)2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
【0122】
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
【0123】
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
【0124】
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
【0125】
助触媒(第1の物質)は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
【0126】
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の脱離基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0127】
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6−)等が挙げられる。
【0128】
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
【0129】
また、コア層形成用材料(ワニス)100中には、必要に応じて、増感剤を添加するようにしてもよい。
【0130】
さらに、コア層形成用材料100中には、酸化防止剤を添加することができる。これにより、望ましくないフリーラジカルの発生や、ポリマー115の自然酸化を防止することができる。その結果、得られたコア層13(光導波路10)の特性の向上を図ることができる。
【0131】
以上のようなコア層形成用材料100を用いて層110が形成される。
このとき、層110は、第1の屈折率を有している。この第1の屈折率は、層110中に一様に分散(分布)するポリマー115およびモノマーの作用による。
【0132】
また、以上の添加剤120の説明では、モノマーがノルボルネン系モノマーの場合を例に説明したが、これ以外のモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0133】
なお、添加剤120中の触媒は、モノマーの種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、アクリル酸系モノマーやエポキシ系モノマーの場合には、触媒前駆体(第2の物質)の添加を省略することができる。
【0134】
[2] 次に、開口(窓)1351が形成されたマスク(マスキング)135を用意し、このマスク135を介して、層110に対して活性放射線(活性エネルギー光線)130を照射する(図5参照)。
【0135】
以下では、モノマーとして、ポリマー115より低い屈折率を有するものを用い、コア層形成用材料100は、活性放射線130の照射に伴って照射領域125の屈折率が低下する場合を一例に説明する。
【0136】
すなわち、ここで示す例では、活性放射線130の照射領域125が側面クラッド部15中の低屈折率領域152となる。
【0137】
したがって、ここで示す例では、マスク135には、形成すべき低屈折率領域152のパターンと等価な開口(窓)1351が形成される。この開口1351は、照射する活性放射線130が透過する透過部を形成するものである。
【0138】
マスク135は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層110上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
【0139】
用いる活性放射線130は、助触媒に対して、光化学的な反応(変化)を生じさせ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
【0140】
マスク135を介して、活性放射線130を層110に照射すると、活性放射線130が照射された照射領域125内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線130の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
【0141】
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域125内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
【0142】
なお、活性放射線130として、レーザ光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク135の使用を省略してもよい。
【0143】
[3] 次に、層110に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域125内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
【0144】
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域125内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域125と未照射領域140との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域140からモノマーが拡散(モノマーディフュージョン)して照射領域125に集まってくる。
【0145】
その結果、照射領域125では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。なお、モノマーの重合体としては、主に付加(共)重合体が生成する。
【0146】
一方、未照射領域140では、当該領域から照射領域125にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー115の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
【0147】
このようにして、照射領域125と未照射領域140との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、コア部14および高屈折率領域151(未照射領域140)と低屈折率領域152(照射領域125)とが形成される(図6参照)。
【0148】
[4] 次に、層110に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域140および/または照射領域125に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域125、140に残存するモノマーを反応させる。
【0149】
このように、各領域125、140に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部14、高屈折率領域151および低屈折率領域152の安定化を図ることができる。
【0150】
[5] 次に、層110に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層13に生じる内部応力の低減や、コア部14、高屈折率領域151および低屈折率領域152の更なる安定化を図ることができる。
【0151】
以上の工程を経て、コア層13(第2の層)が得られる。
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部14および高屈折率領域151と低屈折率領域152との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、本工程[5]や前記工程[4]を省略してもよい。
【0152】
[6] 次に、支持基板162上に、クラッド層11(12)を形成する(図7参照)。
【0153】
クラッド層11(12)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用材料)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
【0154】
クラッド層11(12)を塗布法で形成する場合、例えば、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0155】
支持基板162には、支持基板161と同様のものを用いることができる。
以上のようにして、支持基板162上に、クラッド層11(12)が形成される。
【0156】
[7] 次に、支持基板161からコア層13を剥離し、このコア層13を、クラッド層11(第1の層)が形成された支持基板162と、クラッド層12(第3の層)が形成された支持基板162とで挟持する(図8参照)。
【0157】
そして、図8中の矢印で示すように、クラッド層12が形成された支持基板162の上面側から加圧し、クラッド層11、12とコア層13とを圧着する。
【0158】
これにより、クラッド層11、12(第1の層および第3の層)とコア層13(第2の層)とが接合、一体化される。
【0159】
また、この圧着作業は、加熱下で行われるのが好ましい。加熱温度は、クラッド層11、12やコア層13の構成材料等により適宜決定されるが、通常は、80〜200℃程度が好ましく、120〜180℃程度がより好ましい。
【0160】
次いで、クラッド層11、12から、それぞれ、支持基板162を剥離、除去する。これにより、光導波路10(本発明の光導波路)が得られる。
【0161】
以上のような方法によれば、コア部14と高屈折率領域151とを同一の製造工程において同時に形成することができる。このため、従来の製造方法から工程数を増やすことなく、側面クラッド部15内に高屈折率領域151と低屈折率領域152とを効率よく作り込むことができる。
【0162】
また、このようにして形成されたコア部14と高屈折率領域151とは、同種の材料で構成されたものとなる。このため、両者は熱膨張率が等しくなり、互いに異なる材料で構成された場合に比べ、温度変化に伴う光導波路10の変形や層間剥離等の不具合を低減することができる。
【0163】
以上、モノマーディフュージョン法による光導波路10の製造方法について説明したが、前述したように、光導波路10の製造方法には、前述したようなその他の方法を用いることもできる。
【0164】
このうち、フォトブリーチング法では、例えば、活性放射線の照射により活性化する離脱剤(物質)と、主鎖と該主鎖から分岐し、活性化した離脱剤の作用により、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)とを有するポリマーを含有するコア層形成用材料を用いる。このコア層形成用材料は、層状に成膜された後、この層の一部に紫外線等の活性放射線を照射することにより、離脱性基が離脱(切断)され、その領域の屈折率が変化(上昇または低下)する。例えば、離脱性基の離脱に伴って屈折率が低下するものとすると、活性放射線の照射領域が低屈折率領域152となり、それ以外の領域がコア部14または高屈折率領域151となる。このようにしてコア層13を形成した後、前述したようにして、コア層13の両面にクラッド層11、12を接合する。
【0165】
一方、フォトリソグラフィ法は、例えば、高屈折率のコア部形成用材料の層をクラッド層11上に成膜し、さらにこの層上にコア部14および高屈折率領域151に対応する形状のレジスト膜をフォトリソグラフィ技術により形成する。そして、このレジスト膜をマスクとして、コア部形成用材料の層をエッチングする。これによりコア部14および高屈折率領域151が得られる。その後、コア部14および高屈折率領域151を覆うようにして、相対的に低屈折率のクラッド部形成用材料を成膜することにより、コア部14と高屈折率領域151との隙間をクラッド部形成用材料が充填し、低屈折率領域152が得られる。また、さらに、これら(コア部14、高屈折率領域151および低屈折率領域152)を覆うようにクラッド部形成用材料が供給されることにより、クラッド層12が得られる。
【0166】
<第2実施形態>
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
【0167】
図11は、本発明の光導波路の第2実施形態のコア層のみを示す平面図である。
以下、本実施形態にかかる光導波路について説明するが、前記第1実施形態にかかる光導波路との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0168】
本実施形態にかかる光導波路は、高屈折率領域および低屈折率領域の平面視のパターンが異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0169】
図11に示す側面クラッド部15は、平面視で粒状をなす複数の高屈折率領域153を有するものである。
【0170】
この複数の高屈折率領域153は、前記第1実施形態で説明した高屈折率領域151と同様、低屈折率領域152よりも屈折率が高い領域であり、コア部14を挟んで両側に整列している。
【0171】
また、各高屈折率領域153は、互いに独立しており、また、各コア部14に直接接触しないように設けられている。すなわち、高屈折率領域153と各コア部14との間に、それぞれ低屈折率領域152が介挿された状態になっている。
【0172】
このような高屈折率領域153は、その屈折率が側面クラッド部15の他の領域、すなわち低屈折率領域152よりも高ければよいが、好ましくはその差が0.5%以上とされ、より好ましくはその差が0.8%以上とされる。また、上限値は特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%とされる。高屈折率領域153と低屈折率領域152との間にこのような十分な屈折率差を設けることにより、高屈折率領域153と低屈折率領域152との界面で確実に全反射を生じさせることができる。その結果、高屈折率領域153を伝搬する光が不本意にも低屈折率領域152に漏れ出るのをより確実に防止することができる。
【0173】
また、高屈折率領域153は、入射側端面10aに露出していないのが好ましい。これにより、高屈折率領域153に直接光が入射されないので、高屈折率領域153中を光が伝搬するのを抑制することができる。その結果、前述したような高屈折率領域153の機能を確実に発揮させることができる。
【0174】
一方、高屈折率領域153は、光導波路10の出射側端面10bにおいても露出していないのが好ましい。出射側端面10bに高屈折率領域153が露出していると、この部分から相対的に高強度の光が出射するおそれがあるが、露出していなければ、高屈折率領域153が本来の機能を確実に発揮することができ、S/N比を確実に高めることができる。
【0175】
また、複数の高屈折率領域153は、図11に示すように、光導波路10の入射側端面10aから出射側端面10bまでの間で、長手方向の全体に分布するように設けられるのが好ましい。このようにすれば、入射側端面10aから側面クラッド部15に入射した光はもちろん、光導波路10の途中でコア部14から側面クラッド部15に漏れ出た光をも、確実にコア部14から遠ざけることができる。
【0176】
また、図11に示すように、複数のコア部14、14がある(マルチチャンネルである)場合、前述したような高屈折率領域153が設けられていると、各コア部14、14にそれぞれ対応する受光素子以外の受光素子にノイズ光が受光されてしまうこと、すなわち、別チャンネルからの信号光の漏れ込み(クロストーク)を効果的に抑制することができる。
【0177】
このような本実施形態にかかる光導波路10では、入射側端面10aから入射した光が出射側端面10bに伝搬する途中で、コア部14から側面クラッド部15(低屈折率領域152)に漏れ出た光が、高屈折率領域153に達すると、そこで不規則に散乱される。これにより、コア部14から側面クラッド部15に漏れ出た光は、出射側端面10bに達する前に広範囲に広がり減衰することとなる。その結果、出射側端面10bでは、側面クラッド部15から出射するノイズ光の光強度が低減されることとなり、搬送波としてのS/N比を高めることができる。
【0178】
粒状をなす高屈折率領域153の平面視における形状は、特に限定されず、例えば、真円、楕円、長円のような円形、三角形、四角形、六角形、八角形、星型のような多角形、半円、扇型等とされる。
【0179】
また、高屈折率領域153の輪郭は、図11に示すように凹凸を有しているのが好ましい。これにより、高屈折率領域153の輪郭は、コア部14から漏れ出た光を受ける面が不規則性を有することとなり、光を確実に乱反射することができる。
【0180】
また、各高屈折率領域153の平均粒径は、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜300μm程度であるのがより好ましい。各高屈折率領域153の平均粒径を前記範囲内とすることにより、各高屈折率領域153が光を散乱する確率を十分に高めることができる。
【0181】
なお、各高屈折率領域153と低屈折率領域152との屈折率差は、好ましくはその差が0.5%以上とされ、より好ましくはその差が0.8%以上とされる。また、上限値は特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%とされる。
【0182】
ここで、図12に、図11に示す第2実施形態の別の構成例を示す。
図12に示す光導波路10は、複数の高屈折率領域153の配置パターンが異なること以外は、図11と同様である。すなわち、図11に示す複数の高屈折率領域153は、整列して配置されているが、図12に示す複数の高屈折率領域153は、不規則(ランダム)に配置されている。これにより、側面クラッド部15を通過する光が高屈折率領域153で散乱されるとき、複数の高屈折率領域153で散乱された光が干渉してしまうのを抑制することができる。その結果、干渉に伴って、側面クラッド部15から出射されたノイズ光の光強度が増幅されるのを防止することができる。
【0183】
以上、本発明の光導波路を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができ、また、任意の構成が付加されていてもよい。
【0184】
また、本発明の光導波路は、前記各実施形態の構成のうち、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせたものであってもよい。
【0185】
さらに、前記各実施形態では、コア層13中に2つのコア部14が設けられているが、コア部14の数は、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0186】
また、前記各実施形態では、側面クラッド部15中に高屈折率領域151、153が設けられているが、これらの高屈折率領域は、クラッド層11、12中に設けられていてもよい。
【0187】
なお、このような本発明の光導波路は、例えば光通信用の光配線に用いることができる。
【0188】
また、本発明の光導波路を備えた光配線(本発明の光配線)は、既存の電気配線とともに基板上に混載されることにより、いわゆる「光・電気混載基板」を構成することができる。かかる光・電気混載基板(本発明の光電気混載基板)では、例えば、光配線(光導波路のコア部)で伝送された光信号を、光デバイスにおいて電気信号に変換し、電気配線に伝達する。これにより、光配線の部分で、従来の電気配線よりも高速かつ大容量の情報伝送を可能にする。したがって、例えばCPUやLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間をつなぐバス等に、この光・電気混載基板を適用することにより、システム全体の性能を高めるとともに、電磁ノイズの発生を抑制することができる。
【0189】
なお、かかる光・電気混載基板は、例えば、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等、大容量のデータを高速に伝送する電子機器類に搭載することが考えられる。このように光・電気混載基板を備えた電子機器(本発明の電子機器)は、内部の情報処理速度に優れた高い性能を発揮し得るものとなる。
【実施例】
【0190】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
まず、下記式(2)で表わされる繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーを含むコア層形成用材料を調製した。
【0191】
【化2】
【0192】
次いで、このコア層形成用材料を基板上に塗布し、液状被膜を形成した。次いで、この液状被膜を乾燥し、コア層形成用材料の層を得た。
【0193】
次に、この層に、形成すべき低屈折率領域に対応する開口(窓)を有するマスクを介して、紫外線を照射した。次いで、オーブン中で層を加熱した。これにより、紫外線を照射した領域が低屈折率領域(屈折率:1.54)となり、また紫外線を照射しなかった領域がコア部(屈折率:1.55)および高屈折率領域(屈折率:1.55)となり、その結果、コア層を得た。なお、コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の形状は、それぞれ図2に示す形状とした。ただし、図2に示す高屈折率領域の傾斜角は、45°とした。
【0194】
次に、コア層形成用材料に用いたポリマーよりも屈折率の低いノルボルネン系ポリマーを用意し、これを含むクラッド層形成用材料を調製した。
【0195】
次いで、このクラッド層形成用材料を2つの基板上にそれぞれ塗布し、液状被膜を形成した。次いで、これらの液状被膜を乾燥し、それぞれクラッド層を得た。
【0196】
そして、得られたコア層の両面にクラッド層を貼り合わせた。これにより、光導波路を得た。
【0197】
(実施例2)
コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の各形状を、それぞれ図9に示す形状とした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0198】
なお、図9中の高屈折率領域151’の傾斜角は、45°とした。また、高屈折率領域151’のコア部14側に位置する内角は、10°とした。
【0199】
(実施例3)
コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の各形状を、それぞれ図10に示す形状とした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
なお、図10中の高屈折率領域151”のアスペクト比は、1:20とした。
【0200】
(実施例4)
コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の各形状を、それぞれ図11に示す形状とした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
なお、図11中の高屈折率領域153の平均粒径は、1μmとした。
【0201】
(実施例5)
コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の各形状を、それぞれ図12に示す形状とした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
なお、図12中の高屈折率領域153の平均粒径は、1μmとした。
【0202】
(比較例)
高屈折率領域および低屈折率領域の形成を省略し、図17に示すように、コア層中にコア部とその両側のクラッド部とを形成するようにした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0203】
2.光導波路の評価結果
各実施例で得られた光導波路および比較例で得られた光導波路について、それぞれ以下に示す方法で出射側端面における光強度を測定した。
【0204】
2.1 クラッド部から出射した光の強度評価
図13は、光導波路のクラッド部から出射した光の強度を測定する方法を説明するための図である。
【0205】
この方法では、まず、測定対象の光導波路10の光入射側に、直径50μmの入射側光ファイバ21を配置した。この入射側光ファイバ21は、光導波路10に光を入射するための発光素子(図示せず)に接続されており、その光軸と、光導波路10のコア部14の光軸と同じ面内に配置されている。また、入射側光ファイバ21は、光導波路10の入射側端面10aに沿ってコア層13と同じ面内を走査し得るようになっている。なお、この走査幅は、光導波路10のコア部14の光軸を中心に、両側250μmずつに設定されている。
【0206】
一方、光導波路10の光出射側には、直径200μmの出射側光ファイバ22を配置した。この出射側光ファイバ22は、光導波路10から出射した光を受光するための受光素子(図示せず)に接続されており、その光軸が、光導波路10のコア部14の光軸から側面クラッド部15側に125μmずれた個所に位置するよう配置されている。
【0207】
光強度を測定する際には、光を放射しつつ入射側光ファイバ21を走査させると、光導波路10内を通過した光の一部が出射側光ファイバ22に到達する。そして、このとき出射側光ファイバ22に入射した光強度を測定することにより、入射側光ファイバ21の位置と、出射側光ファイバ22に入射する光の強度との関係を評価した。
【0208】
この評価結果のうち、代表として実施例1〜3と比較例のものを図15に示す。なお、図15のグラフの横軸は、光導波路のコア部の光軸を基準とした入射側光ファイバの位置を表し、縦軸は、光導波路のコア部を伝搬してきた光の強度(入射側光ファイバの光軸と出射側光ファイバの光軸とを光導波路のコア部に一致させたときの光強度)を基準とした光強度比(損失)を表す。
【0209】
図15から明らかなように、比較例で得られた光導波路では、入射側光ファイバが光導波路のコア部の光軸を基準として80〜200mm付近の位置にあるとき、光強度比が特に大きかった。このことから、比較例の光導波路では、側面クラッド部に入射された光が、コア部とほとんど変わらない程度に伝搬してしまうことが認められた。
【0210】
一方、各実施例1〜3で得られた光導波路では、いずれも全体的に光強度比が小さかった。すなわち、各実施例1〜3の光導波路では、側面クラッド部に入射した光が大きく減衰するため、十分なS/N比が得られることが認められた。
【0211】
また、図示しないが、実施例4と実施例5とを比較したところ、実施例5の結果の方が良好であった。これは、実施例5では、粒状の高屈折率領域がランダムに配置されていることに起因するものと推察される。
【0212】
2.2 クロストークの評価
図14は、クロストークを評価する方法を説明するための図である。
【0213】
この方法では、まず、測定対象の光導波路10の光入射側に、直径50μmの入射側光ファイバ21を配置した。この入射側光ファイバ21は、光導波路10に光を入射するための発光素子(図示せず)に接続されており、その光軸と、光導波路10のコア部14の光軸と一致するように配置されている。
【0214】
一方、光導波路10の光出射側には、直径62.5μmの出射側光ファイバ22を配置した。この出射側光ファイバ22は、光導波路10から出射した光を受光するための受光素子(図示せず)に接続されており、その光軸が、光導波路10のコア部14の光軸と同じ面内に配置されている。また、出射側光ファイバ22は、光導波路10の出射側端面10bに沿ってコア層13と同じ面内を走査し得るようになっている。なお、この走査幅は、光導波路10のコア部14の光軸を中心に、両側250μmずつに設定されている。
【0215】
光強度を測定する際には、入射側光ファイバ21から光を放射しつつ、出射側光ファイバ22を走査されると、コア部14を通過した光が出射側光ファイバ22に到達する。このとき、コア部14の外径よりも出射側光ファイバ22の外径を大きく設定しておくことにより、コア部14から漏れ出た光の強度を測定することができる。したがって、出射側光ファイバ22の位置と、出射側光ファイバ22に入射する光の強度との関係を評価することにより、クロストークの程度を評価した。
【0216】
この評価結果のうち、代表として実施例2〜4と比較例のものを図16に示す。なお、図16のグラフの横軸は、光導波路のコア部の光軸を基準とした出射側光ファイバの位置を表し、縦軸は、光導波路のコア部を伝搬してきた光の強度(出射側光ファイバの光軸がコア部の光軸に一致したときの光強度)を基準とした光強度比(損失)を表す。
【0217】
図16から明らかなように、各実施例2〜4で得られた光導波路では、いずれも、比較例で得られた光導波路に比べて、スペクトルのピークのすそにおける光強度が小さくなっている。このスペクトルのピークは、コア部を伝搬してきた光の強度に相当している。したがって、換言すれば、各実施例2〜4では、比較例に比べて、コア部を伝搬してきた光の強度に対して、クラッド部を伝搬してきた光の強度が小さくなっており、クロストークが相対的に低減していることが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の光導波路は、コア部と、該コア部に隣接して設けられたクラッド部とを備える光導波路であって、前記クラッド部中に、前記コア部よりも屈折率が低く、前記コア部に接した低屈折率領域と、該低屈折率領域よりも屈折率が高く、該低屈折率領域を介して前記コア部から離間した複数の高屈折率領域とを有しており、該複数の高屈折率領域は、前記クラッド部中に点在または整列している。そのため、クラッド部に入射された光がそのまま出射端まで伝搬することが抑制され、この光が受光素子に受光される際の光強度を低減する。これにより、光導波路を伝搬する光のS/N比を向上させ、クロストーク等を抑制することにより、高品質の光通信が可能な光導波路を提供することができる。また、このような高品質の光通信が可能な光導波路を備えることにより、高性能の光配線、光電気混載基板および電子機器を提供することができる。従って、本発明の光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器は、産業上の利用可能性を有する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光周波搬送波を使用してデータを移送する光通信がますます重要になっている。このような光通信において、光周波搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路がある。
【0003】
この光導波路は、例えば、一対のクラッド層と、一対のクラッド層の間に設けられたコア層を有して構成される。コア層は、線状のコア部とそれを挟み込むようにコア部の両側に設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光周波搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド層およびクラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0004】
特許文献1には、2層のクラッド層(上方クラッド層および下方クラッド層)と、その間に設けられ、ポリシランと有機過酸化物を含むポリシラン組成物を用いて形成されたポリシラン層とを有するポリマー光導波路が開示されている。また、ポリシラン層中には、コア層(コア部)とその両側に設けられた側面クラッド層(クラッド部)とが形成されている。
【0005】
このような光導波路では、コア部が、コア部よりも屈折率が低いクラッド層およびクラッド部によって囲まれた構成となっている。したがって、コア部の端部から導入された光は、クラッド層およびクラッド部との境界で反射しながら、コア部の軸に沿って搬送される。
【0006】
また、光導波路の入射側には、半導体レーザ等の発光素子が配置され、この発光素子から発生した光を光導波路のコア部に入射する。一方、光導波路の出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置され、コア部を伝搬してきた光を受光素子により受光する。そして、受光素子により受光した光の明滅パターンに基づいて光通信を可能にする。
【0007】
ところで、光導波路が低屈折率の媒体に隣接している場合、具体的には、光導波路が空気中に存在している場合、コア部とクラッド部との境界のみでなく、クラッド部と空気との境界においても光が反射される。
【0008】
ここで、光導波路の入射側では、発光素子が発生する光の全てをコア部に入射させることが好ましいが、一般には、光導波路と発光素子との間で光軸のずれや開口数のマッチング不良等の原因により、一部の光がクラッド部に入射することがある。
【0009】
このようにしてクラッド部に入射された光は、空気との境界で反射を繰り返し、終端まで伝搬する。そして、最終的には、クラッド部の終端から出射し、コア部から出射した光とともに受光素子によって受光される。その結果、クラッド部を伝搬してきた光がノイズとなってS/N比を低下させ、クロストーク等による光通信の品質低下を招くことが問題となっている。
【0010】
また、コア部とクラッド部との屈折率差が著しく小さい部分が含まれていると、この部分からコア部を伝搬する光がクラッド部側に漏れ出ることがある。この漏れ出た光も、クラッド部を伝搬し、ノイズとなってしまう。その結果、光通信の品質のさらなる低下を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−333883号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、クラッド部を伝搬する光をコア部から遠ざける手段を有することにより、信号光のS/N比を向上させ、高品質の光通信が可能な光導波路、およびかかる光導波路を備えた高性能の光配線、光電気混載基板および電子機器を提供することにある。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、
コア部と、該コア部に隣接して設けられたクラッド部と、を備える光導波路であって、
前記クラッド部中に設けられ、前記コア部よりも屈折率が低く、前記コア部に接した低屈折率領域と、該低屈折率領域よりも屈折率が高く、該低屈折率領域を介して前記コア部から離間した平面視で粒状をなす複数の高屈折率領域と、を有しており、
該複数の高屈折率領域は、前記クラッド部中において、前記コア部に沿って点在または整列していることを特徴とする光導波路である。
【0014】
また、本発明の光導波路では、前記各高屈折率領域は、それぞれ前記コア部と同種の材料で構成されているのが好ましい。
【0015】
また、本発明の光導波路では、前記各高屈折率領域の屈折率と前記低屈折率領域の屈折率との差は、0.5%以上であるのが好ましい。
【0016】
また、本発明の光導波路では、前記複数の高屈折率領域は、前記クラッド部を通過する光を散乱させるものであるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の光導波路では、前記各高屈折率領域は、それぞれ、その輪郭に凹凸を有しているのが好ましい。
【0018】
また、本発明の光導波路では、前記各高屈折率領域は、前記クラッド部中に不規則に点在しているのが好ましい。
【0019】
また、本発明の光導波路では、前記複数の高屈折率領域は、当該光導波路の光入射側の端面および光出射側の端面に露出しないよう配置されているのが好ましい。
【0020】
また、本発明の光導波路では、前記複数の高屈折率領域は、前記コア部と同一の製造工程で形成されたものであるのが好ましい。
【0021】
また、本発明の光導波路では、当該光導波路は、第1の層、第2の層および第3の層をこの順で積層してなる積層体を有し、
前記第2の層の一部が、前記コア部をなしており、
前記第2の層の残部、前記第1の層および前記第3の層が、前記クラッド部を構成しているのが好ましい。
【0022】
また、本発明の光導波路では、前記複数の高屈折率領域は、前記第2の層中に設けられているのが好ましい。
【0023】
また、本発明の光導波路では、当該光導波路の前記コア部と、前記クラッド部の少なくとも一部とは、それぞれノルボルネン系ポリマーを主材料として構成されているのが好ましい。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、
上記光導波路を備えたことを特徴とする光配線である。
【0025】
上記目的を達成するために、本発明は、
電気配線と、上記光配線とを、基板上に混載してなることを特徴とする光電気混載基板である。
【0026】
上記目的を達成するために、本発明は、
上記光電気混載基板を備えたことを特徴とする電子機器である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す光導波路のコア層のみを示す平面図である。
【図3】図3は、図2に示すコア層を伝搬する光の伝搬経路の一例を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図7】図7は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図8】図8は、図1に示す光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は、図2に示す第1実施形態の別の構成例を示す図である。
【図10】図10は、図2に示す第1実施形態のさらに別の構成例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の光導波路の第2実施形態のコア層のみを示す平面図である。
【図12】図12は、図11に示す第2実施形態の別の構成例を示す図である。
【図13】図13は、光導波路のクラッド部から出射した光の強度を測定する方法を説明するための図である。
【図14】図14は、クロストークを評価する方法を説明するための図である。
【図15】図15は、クラッド部を伝搬してきた光の強度を表すグラフである。
【図16】図16は、クロストークの光の強度を表すグラフである。
【図17】図17は、従来の光導波路のコア層のみを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0029】
<第1実施形態>
まず、本発明の光導波路の第1実施形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2は、図1に示す光導波路のコア層のみを示す平面図、図3は、図2に示すコア層を伝搬する光の伝搬経路の一例を示す図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」といい、図2、3中の右側を「右」または「出射側」、左側を「左」または「入射側」という。また、図1は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
【0031】
図1に示す光導波路10は、図1中下側からクラッド層(クラッド部)11、コア層13およびクラッド層(クラッド部)12をこの順に積層してなるものであり、コア層13には、所定パターンのコア部14と、このコア部(導波路チャンネル)14に隣接する側面クラッド部15(クラッド部)とが形成されている。図1には、2つのコア部14と3つの側面クラッド部15とが交互に設けられている。
【0032】
図1に示す光導波路10は、入射側端面10aのコア部14に入射された光を、コア部14とクラッド部(各クラッド層11、12および各側面クラッド部15)との界面で全反射させ、出射側に伝搬させることにより、出射側端面10bのコア部14から取り出すことができる。
【0033】
また、後に詳述するが、各側面クラッド部15は、それぞれ側面クラッド部15中の他の領域(低屈折率領域152)よりも屈折率が高い高屈折率領域151を複数個含んでいる。すなわち、側面クラッド部15は、複数の高屈折率領域151と、この高屈折率領域151より屈折率が低い低屈折率領域152とに分かれている。そして、図1に示す複数の高屈折率領域151は、各側面クラッド部15中に整列している。
【0034】
コア部14と側面クラッド部15中の低屈折率領域152との屈折率の差は、特に限定されないが、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0035】
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、低屈折率領域152の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
【0036】
また、図1に示す構成では、コア部14は、平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等してもよく、その形状は任意である。なお、後述するような光導波路10の製造方法を用いれば、複雑かつ任意の形状のコア部14を容易にかつ寸法精度よく形成することができる。
【0037】
また、コア部14は、その横断面形状が正方形または矩形(長方形)のような四角形をなしている。
【0038】
コア部14の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。
【0039】
このコア部14は、側面クラッド部15中の低屈折率領域152に比べて屈折率が高い材料で構成され、また、クラッド層11、12に対しても屈折率が高い材料で構成されている。
【0040】
コア部14、側面クラッド部15およびクラッド層11、12の各構成材料は、それぞれ上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、本実施形態では、コア部14と側面クラッド部15とは同一の材料(コア層13)で構成されており、コア部14と低屈折率領域152との屈折率差、および、高屈折率領域151と低屈折率領域152との屈折率差は、それぞれ材料の化学構造の差異により発現している。
【0041】
コア層13の構成材料には、コア部14を伝搬する光に対して実質的に透明な材料であればいかなる材料をも用いることができるが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。
【0042】
このうち、本実施形態のように化学構造の差異により屈折率差を発現させるためには、紫外線、電子線のような活性エネルギー線の照射により(あるいはさらに加熱することにより)屈折率が変化する材料であるのが好ましい。
【0043】
このような材料としては、例えば、活性エネルギー線の照射や加熱により、少なくとも一部の結合が切断したり、少なくとも一部の官能基が脱離する等して、化学構造が変化し得る材料が挙げられる。
【0044】
具体的には、ポリシラン(例:ポリメチルフェニルシラン)、ポリシラザン(例:ペルヒドロポリシラザン)等のシラン系樹脂や、前述したような構造変化を伴う材料のベースとなる樹脂としては、分子の側鎖または末端に官能基を有する以下の(1)〜(6)のような樹脂が挙げられる。(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂等のノルボルネン系樹脂、その他、光硬化反応性モノマーを重合することにより得られるアクリル系樹脂、エポキシ樹脂。
【0045】
なお、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0046】
一方、クラッド層11および12は、それぞれ、コア部14の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような構成により、コア部14は、その外周をクラッド部に囲まれた導光路として機能する。
【0047】
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さの0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.3〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路10が不要に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
【0048】
また、クラッド層11および12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
【0049】
なお、本実施形態では、コア層13の構成材料と、クラッド層11、12の構成材料との間で、両者の間の屈折率差を考慮して適宜異なる材料を選択して使用することが可能である。したがって、コア層13とクラッド層11、12との境界において光を確実に全反射させるため、十分な屈折率差が生じるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路10の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。その結果、コア部14を伝搬する光の減衰を抑制することができる。
【0050】
また、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13とクラッド層11、12との間の密着性が高いことが好ましい。したがって、クラッド層11、12の構成材料は、コア層13の構成材料よりも屈折率が低く、かつコア層13の構成材料と密着性が高いという条件を満たすものであれば、いかなる材料であってもよい。
【0051】
例えば、比較的低い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーとしては、末端にエポキシ構造を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系ポリマーは、特に低い屈折率を有するとともに、密着性が良好である。
【0052】
また、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高いため、かかるノルボルネン系ポリマーを用いることにより、光導波路10に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
【0053】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアルキル基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられるが、ヘキシル基が特に好ましい。なお、これらのアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0054】
ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマー全体の屈折率が上昇するのを防止することができる。また、ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることから好ましい。
【0055】
なお、クラッド層11、側面クラッド部15およびクラッド層12の構成材料は、それぞれ、同一(同種)のものでも異なるものでもよいが、これらは、屈折率が近似しているものであるのが好ましい。
【0056】
このような本発明の光導波路10は、コア部14の材料の光学特性等によっても若干異なり、特に限定されないが、例えば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において好適に使用される。
【0057】
ここで、前述したように、側面クラッド部15は、複数の高屈折率領域151と、この高屈折率領域151より屈折率が低い低屈折率領域152とに分かれている。
【0058】
本発明の光導波路は、クラッド部中の一部にこのような高屈折率領域を含むことを特徴とするものである。
【0059】
以下、高屈折率領域151および低屈折率領域152について詳述する。
低屈折率領域152は、各側面クラッド部15のうち、図2に示すように、各コア部14に接するように設けられている。一方、高屈折率領域151は、図2に示すように、各コア部14に直接接触しないように設けられている。すなわち、高屈折率領域151と各コア部14との間に、低屈折率領域152が介挿された状態になっている。
【0060】
また、複数の高屈折率領域151は、それぞれが平面視で短冊状をなしており、軸線が互いに平行になるように整列して設けられている。なお、図2に示す各高屈折率領域151は、それぞれ平面視で平行四辺形をなしている。また、これらの複数の高屈折率領域151は、各側面クラッド部15中において、各コア部14を挟んで両側に整列している。また、図2に示す各高屈折率領域151は、細長い平行四辺形をなしており、長辺の長さは短辺の2〜50倍程度であるのが好ましく、5〜30倍程度であるのがより好ましい。
【0061】
また、これらの短冊状の高屈折率領域151は、図2に示すように、各側面クラッド部15を幅方向に横切るように設けられている。その結果、各側面クラッド部15を通過する光は、必然的に各高屈折率領域151に通過することになり、後述する各高屈折率領域151の機能を確実に発揮させることができる。
【0062】
このような短冊状をなす各高屈折率領域151は、それぞれその軸線が、コア部14の軸線の垂線に対して、コア部14を通過する光の進行方向の後方に傾斜するように設けられている。このように傾斜して設けられていることにより、各高屈折率領域151を通過する光は、低屈折率領域152から高屈折率領域151に入射する際、および、高屈折率領域151から低屈折率領域152に出射する際、両者の屈折率差に基づいて、必然的にコア部14から遠ざかるように屈折する。その結果、側面クラッド部15を通過する光を、コア部14から遠ざけることができ、光導波路10の出射側端面10bでは、コア部14を伝搬してきた光の出射位置と、側面クラッド部15を伝搬してきた光の出射位置との離間距離が十分に確保されることとなる。
【0063】
なお、この場合、図2に示す、コア部14の軸線の垂線と、短冊状をなす各高屈折率領域151の軸線とがなす角度(高屈折率領域151の傾斜角)θは、高屈折率領域151と低屈折率領域152との屈折率差や側面クラッド部15の幅等に応じて、側面クラッド部15を通過する光が必要かつ十分に屈折するように適宜設定される。
【0064】
具体的には、高屈折率領域151の傾斜角θは、10〜85°程度であるのが好ましく、20〜70°程度であるのがより好ましい。傾斜角θを前記範囲内に設定することにより、コア部14から漏れ出た光がコア部14から確実に離れるよう屈折し、光導波路10の出射側端面10bにおいて、信号光とノイズ光とを分離することができる。その結果、搬送波としてのS/N比をより確実に高めることができる。
【0065】
また、各高屈折率領域151同士の離間距離も、高屈折率領域151と低屈折率領域152との屈折率差や側面クラッド部15の幅等に応じて適宜設定される。
【0066】
さらに、各高屈折率領域151の幅も、同様に適宜設定されるが、一例としては、1〜30μm程度であるのが好ましく、3〜20μm程度であるのがより好ましい。
【0067】
なお、各高屈折率領域151の形状は、短冊状(細長い形状)をなしていれば特に限定されず、台形、長方形、菱形のような四角形の他、五角形、六角形のような多角形、楕円形、長円形のような円形等であってもよい。
【0068】
ここで、従来の光導波路について説明する。
図17は、従来の光導波路90のコア層のみを示す平面図である。
【0069】
図17に示すコア層93は、平行に設けられた2つのコア部94と3つの側面クラッド部95とを交互に配置して構成されている。また、このようなコア層93に通信用の光を照射するため、各コア部94に対応して、それぞれ光導波路90の入射側に発光素子97が設けられ、出射側には、信号光を受光するための受光素子98が設けられる。
【0070】
このようなコア層93では、側面クラッド部95の屈折率よりも空気の屈折率が小さいため、側面クラッド部95とその外部空間(空気)との界面において、光の全反射が生じる。このため、何らかの理由で側面クラッド部95に入射された光は、側面クラッド部95と空気との界面で全反射を繰り返しながら伝搬し、出射側端面90bから出射する。これにより、側面クラッド部95を伝搬してきた光は、その一部がコア部94を伝搬してきた信号光とともに受光素子98に到達する。その結果、側面クラッド部95を伝搬してきた光は、信号光にとってのノイズとなり、搬送波としてのS/N比の低下を招いていた。このため従来の光導波路90では、搬送波としてのS/N比を向上させ、光通信の品質を向上させることが課題となっていた。
【0071】
ところで、側面クラッド部95に光が入射する原因の1つとしては、光導波路90の光軸と発光素子97の光軸とのずれ、および光導波路90と発光素子97の相互の開口数の不適合が挙げられる。本来、コア部94の光軸と発光素子97の光軸とが一致しており、かつ発光素子97から発生した光の全てがコア部94に入射するよう相互の開口数をマッチングさせることが好ましいが、これらが不十分である場合、一部の光が光導波路90の入射側端面90aの側面クラッド部95に入射されてしまう。しかも、コア部94の横断面は極めて微小であるため、発光素子97を配置する際、光軸を一致させたり開口数のマッチングを図ることは極めて困難であった。
【0072】
さらには、光導波路90の光軸と受光素子98の光軸とがずれている場合、および光導波路90と受光素子98の相互の開口数が不適合である場合にも、側面クラッド部95を伝搬してきた光が受光素子98に到達してしまい、搬送波としてのS/N比の低下を招く。
【0073】
また、側面クラッド部95に光が入射する別の原因としては、光導波路90の途中でコア部94から側面クラッド部95に光が漏れ出ることが挙げられる。コア部94から漏れ出た光は、側面クラッド部95を伝搬し、前述したように搬送波としてのS/N比の低下を招く。
【0074】
そこで、本発明では、前述したように、側面クラッド部15の一部に、他の領域(低屈折率領域152)よりも屈折率が高く、かつ前述したような複数の高屈折率領域151を整列させて設けることにより、光導波路10の側面クラッド部15を伝搬する光が高屈折率領域151を通過する際にコア部14から遠ざけるように光を屈折させることを可能にした。そして、光導波路10の出射側端面10bでは、コア部14を伝搬してきた光の出射位置と側面クラッド部15を伝搬してきた光の出射位置との離間距離を十分に確保すること可能にした。これにより、仮に側面クラッド部15に光が入射したとしても、この光を高屈折率領域151によりコア部14から遠ざかるように屈折させることができる。
【0075】
ここで、図3には、図2に示す光導波路を通過する光の経路を示す。本発明によれば、図3に示すように、発光素子17から出射してコア部14を通過する光(実線矢印で示す。)に影響を及ぼすことなく、側面クラッド部15を通過する光(破線矢印で示す。)がコア部14から遠ざかるように誘導される。その結果、出射側端面10bでは、コア部14を伝搬してきた信号光の出射位置14Lと、高屈折率領域151を伝搬してきたノイズ光の出射位置151Lとを十分に離すことができる。そして、このノイズ光が受光素子18に受光されるのを抑制して、搬送波としてのS/N比が低下するのを防止することができる。
【0076】
また、高屈折率領域151は、図2に示すように、コア部14と離間している。仮に高屈折率領域151とコア部14とが接していると、この部分からコア部14を伝搬する光が高屈折率領域151側に分岐してしまうおそれがあるが、高屈折率領域151とコア部14とが離間していることにより、コア部14を伝搬する光が高屈折率領域151側に分岐してしまうのを防止することができる。
【0077】
このような高屈折率領域151は、その屈折率が側面クラッド部15の他の領域、すなわち低屈折率領域152よりも高ければよいが、好ましくはその差が0.5%以上とされ、より好ましくはその差が0.8%以上とされる。また、上限値は特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%とされる。高屈折率領域151と低屈折率領域152との間にこのような十分な屈折率差を設けることにより、高屈折率領域151と低屈折率領域152との界面で確実に全反射を生じさせることができる。その結果、高屈折率領域151を伝搬する光が不本意にも低屈折率領域152に漏れ出るのをより確実に防止することができる。
【0078】
また、高屈折率領域151は、入射側端面10aに露出していないのが好ましい。これにより、高屈折率領域151に直接光が入射されないので、高屈折率領域151中を光が伝搬するのを抑制することができる。その結果、前述したような高屈折率領域151の機能を確実に発揮させることができる。
【0079】
一方、高屈折率領域151は、光導波路10の出射側端面10bにおいても露出していないのが好ましい。出射側端面10bに高屈折率領域151が露出していると、この部分から相対的に高強度の光が出射するおそれがあるが、露出していなければ、高屈折率領域151が本来の機能を確実に発揮することができ、S/N比を確実に高めることができる。
【0080】
また、複数の高屈折率領域151は、図2に示すように、光導波路10の入射側端面10aから出射側端面10bまでの間で、長手方向の全体に分布するように設けられるのが好ましい。このようにすれば、入射側端面10aから側面クラッド部15に入射した光はもちろん、光導波路10の途中でコア部14から側面クラッド部15に漏れ出た光をも、確実にコア部14から遠ざけることができる。
【0081】
また、図2に示すように、複数のコア部14、14がある(マルチチャンネルである)場合、前述したような高屈折率領域151が設けられていると、各コア部14、14にそれぞれ対応する受光素子以外の受光素子にノイズ光が受光されてしまうこと、すなわち、別チャンネルからの信号光の漏れ込み(クロストーク)を効果的に抑制することができる。
【0082】
なお、この場合、隣接するコア部14、14間の側面クラッド部15中に設けられる高屈折率領域151は、最も近くに位置するコア部14を基準にして傾斜方向を決めればよい。したがって、図2に示すような平行するコア部14、14間に配置される各高屈折率領域151は、必然的にV字状の配列になる。
【0083】
ここで、図9に、図2に示す第1実施形態の別の構成例を示す。
図9に示す光導波路10は、短冊状をなす高屈折率領域の平面視の形状が異なること以外は、図2と同様である。すなわち、図9に示す側面クラッド部15は、平面視で短冊状をなす複数の高屈折率領域151’を有するものであるが、この複数の高屈折率領域151’は、平面視で細長い三角形をなしている。
【0084】
また、このような高屈折率領域151’は、図2に示す高屈折率領域151と同様、その軸線が、コア部14の軸線の垂線に対して、コア部14を通過する光の進行方向の後方に傾斜するように設けられている。
【0085】
さらに、各高屈折率領域151’は、コア部14側から遠ざかるにつれて、横断面積が徐々に増大するような形状をなしている。かかる形状の各高屈折率領域151’は、側面クラッド部15を通過する光をより効果的に減衰させることができる。その結果、搬送波としてのS/N比をより高めることができる。
【0086】
なお、図9では、平面視で細長い三角形をなす複数の高屈折率領域151’において、コア部14側に位置する内角は、鋭角であり、他の内角に比べてその角度が小さい。具体的には、この内角は、3〜30°程度であるのが好ましく、5〜20°程度であるのがより好ましい。
【0087】
また、この場合、コア部14側に位置する内角に対向する辺の長さは、他の2辺の長さよりも短くなる。具体的には、コア部14側に位置する内角に対向する辺の長さは、他の2辺のうちの短い方の辺に対して、0.02〜0.5倍程度であるのが好ましく、0.03〜0.2倍程度であるのがより好ましい。
【0088】
また、図10には、図2に示す第1実施形態のさらに別の構成例を示す。
図10に示す光導波路10は、短冊状をなす高屈折率領域の平面視の形状が異なること以外は、図2と同様である。すなわち、図10に示す側面クラッド部15は、平面視で短冊状をなす複数の高屈折率領域151”を有するものであるが、この複数の高屈折率領域151”は、平面視で細長い長方形をなしており、かつ、その軸線の延長線がコア部14の軸線に対してほぼ直交するよう配置されている。
【0089】
なお、図10に示す各高屈折率領域151”は、細長い長方形をなしているが、長辺の長さは短辺の2〜50倍程度であるのが好ましく、5〜30倍程度であるのがより好ましい。
【0090】
このような複数の高屈折率領域151”は、側面クラッド部15を伝搬する光をコア部14から遠ざけるように効率的に屈折または散乱させるため、側面クラッド部15を通過する光をさらに効果的に減衰させることができる。その結果、搬送波としてのS/N比のさらなる向上を図ることができる。
【0091】
これらの各高屈折率領域151’および各高屈折率領域151”は、前述した各高屈折率領域151と同様の機能を有する。
【0092】
次に、光導波路10の製造方法の一例について説明する。
光導波路10は、クラッド層11(第1の層)と、コア層13(第2の層)と、クラッド層12(第3の層)とをそれぞれ作製し、これらを積層することにより製造される。
【0093】
このような製造方法では、互いに屈折率の異なる部位が物理的かつ光学的に接するように作製する必要がある。具体的には、コア部14に対して、低屈折率領域152や各クラッド層11、12が隙間を介することなく、確実に密着するように形成する必要がある。また、高屈折率領域151と低屈折率領域152や各クラッド層11、12との間も確実に密着している必要がある。
【0094】
その具体的な製造方法としては、同一層(第2の層)内に、コア部14、高屈折率領域151、低屈折率領域152等を形成し得る方法であれば特に限定されず、例えば、フォトブリーチング法、フォトリソグラフィ法、直接露光法、ナノインプリンティング法、モノマーディフュージョン法等が挙げられる。
【0095】
ここでは、代表として、モノマーディフュージョン法による光導波路10の製造方法について説明する。
【0096】
図4〜図8は、それぞれ、図1に示す光導波路10の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。なお、図5、6、8は、図2のA−A線における断面図である。
【0097】
[1] まず、支持基板161上に、層110を形成する(図4参照)。
層110は、コア層形成用材料(ワニス)100を塗布し硬化(固化)させる方法により形成される。
【0098】
具体的には、層110は、支持基板161上にコア層形成用材料100を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板161を換気されたレベルテーブルに置いて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより形成する。
【0099】
層110を塗布法で形成する場合、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0100】
支持基板161には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
【0101】
コア層形成用材料100は、ポリマー115と、添加剤120(少なくともモノマーおよび触媒を含む)とで構成される現像性材料を含有し、活性放射線の照射および加熱により、ポリマー115中において、モノマーの反応が生じる材料である。
【0102】
そして、得られた層110中では、ポリマー(マトリックス)115は、いずれも、実質的に一様かつランダムに分配され、添加剤120は、ポリマー115内に実質的に一様かつランダムに分散されている。これにより、層110中には、添加剤120が実質的に一様かつ任意に分散されている。
【0103】
このような層110の平均厚さは、形成すべきコア層13の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましく、15〜65μm程度であるのがさらに好ましい。
【0104】
ポリマー115には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中で後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても、十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
【0105】
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、コア層形成用材料100中や層110中においてポリマー115と相分離を起こさないことを言う。
【0106】
このようなポリマー115としては、前述したコア層13の構成材料が挙げられる。
なお、ポリマー115としてノルボルネン系ポリマーを用いた場合、このポリマーが高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層13を得ることができる。
【0107】
また、ノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
【0108】
このうち、コポリマーの一例としては、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有する化合物が好適に用いられる。
【0109】
【化1】
[式中、mは、1〜4の整数を表し、nは、1〜9の整数を表す。]
【0110】
なお、コポリマーの種類としては、上記式(1)の2つの単位が任意の順序(ランダム)に並んだもの、交互に並んだもの、各単位がそれぞれ固まって(ブロック状に)並んだもの等のいずれの形態をとるものであってもよい。
【0111】
ここで、ポリマー115として上記ノルボルネン系ポリマーを用いた場合、添加剤120の一例として、ノルボルネン系モノマー、助触媒(第1の物質)および触媒前駆体(第2の物質)を含むものが好ましく選択される。
【0112】
ノルボルネン系モノマーは、後述する活性放射線に照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、この反応物の存在により、層110において照射領域と、活性放射線の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
【0113】
ここで、この反応物としては、ノルボルネン系モノマーがポリマー(マトリックス)115中で重合して形成されたポリマー(重合体)、ポリマー115同士を架橋する架橋構造、および、ポリマー115に重合してポリマー115から分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖(ペンダントグループ))のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0114】
ここで、層110において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して高い屈折率を有するノルボルネン系モノマーとが組み合わせて使用され、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して低い屈折率を有するノルボルネン系モノマーとが組み合わせて使用される。
【0115】
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味する。
【0116】
そして、ノルボルネン系モノマーの反応(反応物の生成)により、層110において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が側面クラッド部15となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分がコア部14となる。
【0117】
触媒前駆体(第2の物質)は、前記のモノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、後述する活性放射線の照射により活性化した助触媒(第1の物質)の作用により、活性化温度が変化する物質である。
【0118】
この触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層13(光導波路10)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路10の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
【0119】
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0120】
(E(R)3)2Pd(Q)2 ・・・(Ia)
[(E(R)3)aPd(Q)(LB)b]p[WCA]r ・・・(Ib)
[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)3は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
【0121】
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CCMe3)2(P(Cy)3)2、Pd(OAc)2(P(Cp)3)2、Pd(O2CCF3)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CC6H5)3(P(Cy)3)2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
【0122】
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
【0123】
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
【0124】
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
【0125】
助触媒(第1の物質)は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
【0126】
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の脱離基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0127】
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6−)等が挙げられる。
【0128】
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
【0129】
また、コア層形成用材料(ワニス)100中には、必要に応じて、増感剤を添加するようにしてもよい。
【0130】
さらに、コア層形成用材料100中には、酸化防止剤を添加することができる。これにより、望ましくないフリーラジカルの発生や、ポリマー115の自然酸化を防止することができる。その結果、得られたコア層13(光導波路10)の特性の向上を図ることができる。
【0131】
以上のようなコア層形成用材料100を用いて層110が形成される。
このとき、層110は、第1の屈折率を有している。この第1の屈折率は、層110中に一様に分散(分布)するポリマー115およびモノマーの作用による。
【0132】
また、以上の添加剤120の説明では、モノマーがノルボルネン系モノマーの場合を例に説明したが、これ以外のモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0133】
なお、添加剤120中の触媒は、モノマーの種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、アクリル酸系モノマーやエポキシ系モノマーの場合には、触媒前駆体(第2の物質)の添加を省略することができる。
【0134】
[2] 次に、開口(窓)1351が形成されたマスク(マスキング)135を用意し、このマスク135を介して、層110に対して活性放射線(活性エネルギー光線)130を照射する(図5参照)。
【0135】
以下では、モノマーとして、ポリマー115より低い屈折率を有するものを用い、コア層形成用材料100は、活性放射線130の照射に伴って照射領域125の屈折率が低下する場合を一例に説明する。
【0136】
すなわち、ここで示す例では、活性放射線130の照射領域125が側面クラッド部15中の低屈折率領域152となる。
【0137】
したがって、ここで示す例では、マスク135には、形成すべき低屈折率領域152のパターンと等価な開口(窓)1351が形成される。この開口1351は、照射する活性放射線130が透過する透過部を形成するものである。
【0138】
マスク135は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層110上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
【0139】
用いる活性放射線130は、助触媒に対して、光化学的な反応(変化)を生じさせ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
【0140】
マスク135を介して、活性放射線130を層110に照射すると、活性放射線130が照射された照射領域125内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線130の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
【0141】
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域125内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
【0142】
なお、活性放射線130として、レーザ光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク135の使用を省略してもよい。
【0143】
[3] 次に、層110に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域125内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
【0144】
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域125内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域125と未照射領域140との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域140からモノマーが拡散(モノマーディフュージョン)して照射領域125に集まってくる。
【0145】
その結果、照射領域125では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。なお、モノマーの重合体としては、主に付加(共)重合体が生成する。
【0146】
一方、未照射領域140では、当該領域から照射領域125にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー115の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
【0147】
このようにして、照射領域125と未照射領域140との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、コア部14および高屈折率領域151(未照射領域140)と低屈折率領域152(照射領域125)とが形成される(図6参照)。
【0148】
[4] 次に、層110に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域140および/または照射領域125に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域125、140に残存するモノマーを反応させる。
【0149】
このように、各領域125、140に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部14、高屈折率領域151および低屈折率領域152の安定化を図ることができる。
【0150】
[5] 次に、層110に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層13に生じる内部応力の低減や、コア部14、高屈折率領域151および低屈折率領域152の更なる安定化を図ることができる。
【0151】
以上の工程を経て、コア層13(第2の層)が得られる。
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部14および高屈折率領域151と低屈折率領域152との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、本工程[5]や前記工程[4]を省略してもよい。
【0152】
[6] 次に、支持基板162上に、クラッド層11(12)を形成する(図7参照)。
【0153】
クラッド層11(12)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用材料)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
【0154】
クラッド層11(12)を塗布法で形成する場合、例えば、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0155】
支持基板162には、支持基板161と同様のものを用いることができる。
以上のようにして、支持基板162上に、クラッド層11(12)が形成される。
【0156】
[7] 次に、支持基板161からコア層13を剥離し、このコア層13を、クラッド層11(第1の層)が形成された支持基板162と、クラッド層12(第3の層)が形成された支持基板162とで挟持する(図8参照)。
【0157】
そして、図8中の矢印で示すように、クラッド層12が形成された支持基板162の上面側から加圧し、クラッド層11、12とコア層13とを圧着する。
【0158】
これにより、クラッド層11、12(第1の層および第3の層)とコア層13(第2の層)とが接合、一体化される。
【0159】
また、この圧着作業は、加熱下で行われるのが好ましい。加熱温度は、クラッド層11、12やコア層13の構成材料等により適宜決定されるが、通常は、80〜200℃程度が好ましく、120〜180℃程度がより好ましい。
【0160】
次いで、クラッド層11、12から、それぞれ、支持基板162を剥離、除去する。これにより、光導波路10(本発明の光導波路)が得られる。
【0161】
以上のような方法によれば、コア部14と高屈折率領域151とを同一の製造工程において同時に形成することができる。このため、従来の製造方法から工程数を増やすことなく、側面クラッド部15内に高屈折率領域151と低屈折率領域152とを効率よく作り込むことができる。
【0162】
また、このようにして形成されたコア部14と高屈折率領域151とは、同種の材料で構成されたものとなる。このため、両者は熱膨張率が等しくなり、互いに異なる材料で構成された場合に比べ、温度変化に伴う光導波路10の変形や層間剥離等の不具合を低減することができる。
【0163】
以上、モノマーディフュージョン法による光導波路10の製造方法について説明したが、前述したように、光導波路10の製造方法には、前述したようなその他の方法を用いることもできる。
【0164】
このうち、フォトブリーチング法では、例えば、活性放射線の照射により活性化する離脱剤(物質)と、主鎖と該主鎖から分岐し、活性化した離脱剤の作用により、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)とを有するポリマーを含有するコア層形成用材料を用いる。このコア層形成用材料は、層状に成膜された後、この層の一部に紫外線等の活性放射線を照射することにより、離脱性基が離脱(切断)され、その領域の屈折率が変化(上昇または低下)する。例えば、離脱性基の離脱に伴って屈折率が低下するものとすると、活性放射線の照射領域が低屈折率領域152となり、それ以外の領域がコア部14または高屈折率領域151となる。このようにしてコア層13を形成した後、前述したようにして、コア層13の両面にクラッド層11、12を接合する。
【0165】
一方、フォトリソグラフィ法は、例えば、高屈折率のコア部形成用材料の層をクラッド層11上に成膜し、さらにこの層上にコア部14および高屈折率領域151に対応する形状のレジスト膜をフォトリソグラフィ技術により形成する。そして、このレジスト膜をマスクとして、コア部形成用材料の層をエッチングする。これによりコア部14および高屈折率領域151が得られる。その後、コア部14および高屈折率領域151を覆うようにして、相対的に低屈折率のクラッド部形成用材料を成膜することにより、コア部14と高屈折率領域151との隙間をクラッド部形成用材料が充填し、低屈折率領域152が得られる。また、さらに、これら(コア部14、高屈折率領域151および低屈折率領域152)を覆うようにクラッド部形成用材料が供給されることにより、クラッド層12が得られる。
【0166】
<第2実施形態>
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
【0167】
図11は、本発明の光導波路の第2実施形態のコア層のみを示す平面図である。
以下、本実施形態にかかる光導波路について説明するが、前記第1実施形態にかかる光導波路との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0168】
本実施形態にかかる光導波路は、高屈折率領域および低屈折率領域の平面視のパターンが異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0169】
図11に示す側面クラッド部15は、平面視で粒状をなす複数の高屈折率領域153を有するものである。
【0170】
この複数の高屈折率領域153は、前記第1実施形態で説明した高屈折率領域151と同様、低屈折率領域152よりも屈折率が高い領域であり、コア部14を挟んで両側に整列している。
【0171】
また、各高屈折率領域153は、互いに独立しており、また、各コア部14に直接接触しないように設けられている。すなわち、高屈折率領域153と各コア部14との間に、それぞれ低屈折率領域152が介挿された状態になっている。
【0172】
このような高屈折率領域153は、その屈折率が側面クラッド部15の他の領域、すなわち低屈折率領域152よりも高ければよいが、好ましくはその差が0.5%以上とされ、より好ましくはその差が0.8%以上とされる。また、上限値は特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%とされる。高屈折率領域153と低屈折率領域152との間にこのような十分な屈折率差を設けることにより、高屈折率領域153と低屈折率領域152との界面で確実に全反射を生じさせることができる。その結果、高屈折率領域153を伝搬する光が不本意にも低屈折率領域152に漏れ出るのをより確実に防止することができる。
【0173】
また、高屈折率領域153は、入射側端面10aに露出していないのが好ましい。これにより、高屈折率領域153に直接光が入射されないので、高屈折率領域153中を光が伝搬するのを抑制することができる。その結果、前述したような高屈折率領域153の機能を確実に発揮させることができる。
【0174】
一方、高屈折率領域153は、光導波路10の出射側端面10bにおいても露出していないのが好ましい。出射側端面10bに高屈折率領域153が露出していると、この部分から相対的に高強度の光が出射するおそれがあるが、露出していなければ、高屈折率領域153が本来の機能を確実に発揮することができ、S/N比を確実に高めることができる。
【0175】
また、複数の高屈折率領域153は、図11に示すように、光導波路10の入射側端面10aから出射側端面10bまでの間で、長手方向の全体に分布するように設けられるのが好ましい。このようにすれば、入射側端面10aから側面クラッド部15に入射した光はもちろん、光導波路10の途中でコア部14から側面クラッド部15に漏れ出た光をも、確実にコア部14から遠ざけることができる。
【0176】
また、図11に示すように、複数のコア部14、14がある(マルチチャンネルである)場合、前述したような高屈折率領域153が設けられていると、各コア部14、14にそれぞれ対応する受光素子以外の受光素子にノイズ光が受光されてしまうこと、すなわち、別チャンネルからの信号光の漏れ込み(クロストーク)を効果的に抑制することができる。
【0177】
このような本実施形態にかかる光導波路10では、入射側端面10aから入射した光が出射側端面10bに伝搬する途中で、コア部14から側面クラッド部15(低屈折率領域152)に漏れ出た光が、高屈折率領域153に達すると、そこで不規則に散乱される。これにより、コア部14から側面クラッド部15に漏れ出た光は、出射側端面10bに達する前に広範囲に広がり減衰することとなる。その結果、出射側端面10bでは、側面クラッド部15から出射するノイズ光の光強度が低減されることとなり、搬送波としてのS/N比を高めることができる。
【0178】
粒状をなす高屈折率領域153の平面視における形状は、特に限定されず、例えば、真円、楕円、長円のような円形、三角形、四角形、六角形、八角形、星型のような多角形、半円、扇型等とされる。
【0179】
また、高屈折率領域153の輪郭は、図11に示すように凹凸を有しているのが好ましい。これにより、高屈折率領域153の輪郭は、コア部14から漏れ出た光を受ける面が不規則性を有することとなり、光を確実に乱反射することができる。
【0180】
また、各高屈折率領域153の平均粒径は、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜300μm程度であるのがより好ましい。各高屈折率領域153の平均粒径を前記範囲内とすることにより、各高屈折率領域153が光を散乱する確率を十分に高めることができる。
【0181】
なお、各高屈折率領域153と低屈折率領域152との屈折率差は、好ましくはその差が0.5%以上とされ、より好ましくはその差が0.8%以上とされる。また、上限値は特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%とされる。
【0182】
ここで、図12に、図11に示す第2実施形態の別の構成例を示す。
図12に示す光導波路10は、複数の高屈折率領域153の配置パターンが異なること以外は、図11と同様である。すなわち、図11に示す複数の高屈折率領域153は、整列して配置されているが、図12に示す複数の高屈折率領域153は、不規則(ランダム)に配置されている。これにより、側面クラッド部15を通過する光が高屈折率領域153で散乱されるとき、複数の高屈折率領域153で散乱された光が干渉してしまうのを抑制することができる。その結果、干渉に伴って、側面クラッド部15から出射されたノイズ光の光強度が増幅されるのを防止することができる。
【0183】
以上、本発明の光導波路を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができ、また、任意の構成が付加されていてもよい。
【0184】
また、本発明の光導波路は、前記各実施形態の構成のうち、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせたものであってもよい。
【0185】
さらに、前記各実施形態では、コア層13中に2つのコア部14が設けられているが、コア部14の数は、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0186】
また、前記各実施形態では、側面クラッド部15中に高屈折率領域151、153が設けられているが、これらの高屈折率領域は、クラッド層11、12中に設けられていてもよい。
【0187】
なお、このような本発明の光導波路は、例えば光通信用の光配線に用いることができる。
【0188】
また、本発明の光導波路を備えた光配線(本発明の光配線)は、既存の電気配線とともに基板上に混載されることにより、いわゆる「光・電気混載基板」を構成することができる。かかる光・電気混載基板(本発明の光電気混載基板)では、例えば、光配線(光導波路のコア部)で伝送された光信号を、光デバイスにおいて電気信号に変換し、電気配線に伝達する。これにより、光配線の部分で、従来の電気配線よりも高速かつ大容量の情報伝送を可能にする。したがって、例えばCPUやLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間をつなぐバス等に、この光・電気混載基板を適用することにより、システム全体の性能を高めるとともに、電磁ノイズの発生を抑制することができる。
【0189】
なお、かかる光・電気混載基板は、例えば、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等、大容量のデータを高速に伝送する電子機器類に搭載することが考えられる。このように光・電気混載基板を備えた電子機器(本発明の電子機器)は、内部の情報処理速度に優れた高い性能を発揮し得るものとなる。
【実施例】
【0190】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
まず、下記式(2)で表わされる繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーを含むコア層形成用材料を調製した。
【0191】
【化2】
【0192】
次いで、このコア層形成用材料を基板上に塗布し、液状被膜を形成した。次いで、この液状被膜を乾燥し、コア層形成用材料の層を得た。
【0193】
次に、この層に、形成すべき低屈折率領域に対応する開口(窓)を有するマスクを介して、紫外線を照射した。次いで、オーブン中で層を加熱した。これにより、紫外線を照射した領域が低屈折率領域(屈折率:1.54)となり、また紫外線を照射しなかった領域がコア部(屈折率:1.55)および高屈折率領域(屈折率:1.55)となり、その結果、コア層を得た。なお、コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の形状は、それぞれ図2に示す形状とした。ただし、図2に示す高屈折率領域の傾斜角は、45°とした。
【0194】
次に、コア層形成用材料に用いたポリマーよりも屈折率の低いノルボルネン系ポリマーを用意し、これを含むクラッド層形成用材料を調製した。
【0195】
次いで、このクラッド層形成用材料を2つの基板上にそれぞれ塗布し、液状被膜を形成した。次いで、これらの液状被膜を乾燥し、それぞれクラッド層を得た。
【0196】
そして、得られたコア層の両面にクラッド層を貼り合わせた。これにより、光導波路を得た。
【0197】
(実施例2)
コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の各形状を、それぞれ図9に示す形状とした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0198】
なお、図9中の高屈折率領域151’の傾斜角は、45°とした。また、高屈折率領域151’のコア部14側に位置する内角は、10°とした。
【0199】
(実施例3)
コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の各形状を、それぞれ図10に示す形状とした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
なお、図10中の高屈折率領域151”のアスペクト比は、1:20とした。
【0200】
(実施例4)
コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の各形状を、それぞれ図11に示す形状とした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
なお、図11中の高屈折率領域153の平均粒径は、1μmとした。
【0201】
(実施例5)
コア部、高屈折率領域および低屈折率領域の各形状を、それぞれ図12に示す形状とした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
なお、図12中の高屈折率領域153の平均粒径は、1μmとした。
【0202】
(比較例)
高屈折率領域および低屈折率領域の形成を省略し、図17に示すように、コア層中にコア部とその両側のクラッド部とを形成するようにした以外は、前記実施例1と同様にして光導波路を得た。
【0203】
2.光導波路の評価結果
各実施例で得られた光導波路および比較例で得られた光導波路について、それぞれ以下に示す方法で出射側端面における光強度を測定した。
【0204】
2.1 クラッド部から出射した光の強度評価
図13は、光導波路のクラッド部から出射した光の強度を測定する方法を説明するための図である。
【0205】
この方法では、まず、測定対象の光導波路10の光入射側に、直径50μmの入射側光ファイバ21を配置した。この入射側光ファイバ21は、光導波路10に光を入射するための発光素子(図示せず)に接続されており、その光軸と、光導波路10のコア部14の光軸と同じ面内に配置されている。また、入射側光ファイバ21は、光導波路10の入射側端面10aに沿ってコア層13と同じ面内を走査し得るようになっている。なお、この走査幅は、光導波路10のコア部14の光軸を中心に、両側250μmずつに設定されている。
【0206】
一方、光導波路10の光出射側には、直径200μmの出射側光ファイバ22を配置した。この出射側光ファイバ22は、光導波路10から出射した光を受光するための受光素子(図示せず)に接続されており、その光軸が、光導波路10のコア部14の光軸から側面クラッド部15側に125μmずれた個所に位置するよう配置されている。
【0207】
光強度を測定する際には、光を放射しつつ入射側光ファイバ21を走査させると、光導波路10内を通過した光の一部が出射側光ファイバ22に到達する。そして、このとき出射側光ファイバ22に入射した光強度を測定することにより、入射側光ファイバ21の位置と、出射側光ファイバ22に入射する光の強度との関係を評価した。
【0208】
この評価結果のうち、代表として実施例1〜3と比較例のものを図15に示す。なお、図15のグラフの横軸は、光導波路のコア部の光軸を基準とした入射側光ファイバの位置を表し、縦軸は、光導波路のコア部を伝搬してきた光の強度(入射側光ファイバの光軸と出射側光ファイバの光軸とを光導波路のコア部に一致させたときの光強度)を基準とした光強度比(損失)を表す。
【0209】
図15から明らかなように、比較例で得られた光導波路では、入射側光ファイバが光導波路のコア部の光軸を基準として80〜200mm付近の位置にあるとき、光強度比が特に大きかった。このことから、比較例の光導波路では、側面クラッド部に入射された光が、コア部とほとんど変わらない程度に伝搬してしまうことが認められた。
【0210】
一方、各実施例1〜3で得られた光導波路では、いずれも全体的に光強度比が小さかった。すなわち、各実施例1〜3の光導波路では、側面クラッド部に入射した光が大きく減衰するため、十分なS/N比が得られることが認められた。
【0211】
また、図示しないが、実施例4と実施例5とを比較したところ、実施例5の結果の方が良好であった。これは、実施例5では、粒状の高屈折率領域がランダムに配置されていることに起因するものと推察される。
【0212】
2.2 クロストークの評価
図14は、クロストークを評価する方法を説明するための図である。
【0213】
この方法では、まず、測定対象の光導波路10の光入射側に、直径50μmの入射側光ファイバ21を配置した。この入射側光ファイバ21は、光導波路10に光を入射するための発光素子(図示せず)に接続されており、その光軸と、光導波路10のコア部14の光軸と一致するように配置されている。
【0214】
一方、光導波路10の光出射側には、直径62.5μmの出射側光ファイバ22を配置した。この出射側光ファイバ22は、光導波路10から出射した光を受光するための受光素子(図示せず)に接続されており、その光軸が、光導波路10のコア部14の光軸と同じ面内に配置されている。また、出射側光ファイバ22は、光導波路10の出射側端面10bに沿ってコア層13と同じ面内を走査し得るようになっている。なお、この走査幅は、光導波路10のコア部14の光軸を中心に、両側250μmずつに設定されている。
【0215】
光強度を測定する際には、入射側光ファイバ21から光を放射しつつ、出射側光ファイバ22を走査されると、コア部14を通過した光が出射側光ファイバ22に到達する。このとき、コア部14の外径よりも出射側光ファイバ22の外径を大きく設定しておくことにより、コア部14から漏れ出た光の強度を測定することができる。したがって、出射側光ファイバ22の位置と、出射側光ファイバ22に入射する光の強度との関係を評価することにより、クロストークの程度を評価した。
【0216】
この評価結果のうち、代表として実施例2〜4と比較例のものを図16に示す。なお、図16のグラフの横軸は、光導波路のコア部の光軸を基準とした出射側光ファイバの位置を表し、縦軸は、光導波路のコア部を伝搬してきた光の強度(出射側光ファイバの光軸がコア部の光軸に一致したときの光強度)を基準とした光強度比(損失)を表す。
【0217】
図16から明らかなように、各実施例2〜4で得られた光導波路では、いずれも、比較例で得られた光導波路に比べて、スペクトルのピークのすそにおける光強度が小さくなっている。このスペクトルのピークは、コア部を伝搬してきた光の強度に相当している。したがって、換言すれば、各実施例2〜4では、比較例に比べて、コア部を伝搬してきた光の強度に対して、クラッド部を伝搬してきた光の強度が小さくなっており、クロストークが相対的に低減していることが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の光導波路は、コア部と、該コア部に隣接して設けられたクラッド部とを備える光導波路であって、前記クラッド部中に、前記コア部よりも屈折率が低く、前記コア部に接した低屈折率領域と、該低屈折率領域よりも屈折率が高く、該低屈折率領域を介して前記コア部から離間した複数の高屈折率領域とを有しており、該複数の高屈折率領域は、前記クラッド部中に点在または整列している。そのため、クラッド部に入射された光がそのまま出射端まで伝搬することが抑制され、この光が受光素子に受光される際の光強度を低減する。これにより、光導波路を伝搬する光のS/N比を向上させ、クロストーク等を抑制することにより、高品質の光通信が可能な光導波路を提供することができる。また、このような高品質の光通信が可能な光導波路を備えることにより、高性能の光配線、光電気混載基板および電子機器を提供することができる。従って、本発明の光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器は、産業上の利用可能性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、該コア部に隣接して設けられたクラッド部と、を備える光導波路であって、
前記クラッド部中に設けられ、前記コア部よりも屈折率が低く、前記コア部に接した低屈折率領域と、該低屈折率領域よりも屈折率が高く、該低屈折率領域を介して前記コア部から離間した平面視で粒状をなす複数の高屈折率領域と、を有しており、
該複数の高屈折率領域は、前記クラッド部中において、前記コア部に沿って点在または整列していることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記各高屈折率領域は、それぞれ前記コア部と同種の材料で構成されている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記各高屈折率領域の屈折率と前記低屈折率領域の屈折率との差は、0.5%以上である請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記複数の高屈折率領域は、前記クラッド部を通過する光を散乱させるものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項5】
前記各高屈折率領域は、それぞれ、その輪郭に凹凸を有している請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項6】
前記各高屈折率領域は、前記クラッド部中に不規則に点在している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項7】
前記複数の高屈折率領域は、当該光導波路の光入射側の端面および光出射側の端面に露出しないよう配置されている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項8】
前記複数の高屈折率領域は、前記コア部と同一の製造工程で形成されたものである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項9】
当該光導波路は、第1の層、第2の層および第3の層をこの順で積層してなる積層体を有し、
前記第2の層の一部が、前記コア部をなしており、
前記第2の層の残部、前記第1の層および前記第3の層が、前記クラッド部を構成している請求項1ないし8のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項10】
前記複数の高屈折率領域は、前記第2の層中に設けられている請求項9に記載の光導波路。
【請求項11】
当該光導波路の前記コア部と、前記クラッド部の少なくとも一部とは、それぞれノルボルネン系ポリマーを主材料として構成されている請求項1ないし10のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
【請求項13】
電気配線と、請求項12に記載の光配線とを、基板上に混載してなることを特徴とする光電気混載基板。
【請求項14】
請求項13に記載の光電気混載基板を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
コア部と、該コア部に隣接して設けられたクラッド部と、を備える光導波路であって、
前記クラッド部中に設けられ、前記コア部よりも屈折率が低く、前記コア部に接した低屈折率領域と、該低屈折率領域よりも屈折率が高く、該低屈折率領域を介して前記コア部から離間した平面視で粒状をなす複数の高屈折率領域と、を有しており、
該複数の高屈折率領域は、前記クラッド部中において、前記コア部に沿って点在または整列していることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記各高屈折率領域は、それぞれ前記コア部と同種の材料で構成されている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記各高屈折率領域の屈折率と前記低屈折率領域の屈折率との差は、0.5%以上である請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記複数の高屈折率領域は、前記クラッド部を通過する光を散乱させるものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項5】
前記各高屈折率領域は、それぞれ、その輪郭に凹凸を有している請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項6】
前記各高屈折率領域は、前記クラッド部中に不規則に点在している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項7】
前記複数の高屈折率領域は、当該光導波路の光入射側の端面および光出射側の端面に露出しないよう配置されている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項8】
前記複数の高屈折率領域は、前記コア部と同一の製造工程で形成されたものである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項9】
当該光導波路は、第1の層、第2の層および第3の層をこの順で積層してなる積層体を有し、
前記第2の層の一部が、前記コア部をなしており、
前記第2の層の残部、前記第1の層および前記第3の層が、前記クラッド部を構成している請求項1ないし8のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項10】
前記複数の高屈折率領域は、前記第2の層中に設けられている請求項9に記載の光導波路。
【請求項11】
当該光導波路の前記コア部と、前記クラッド部の少なくとも一部とは、それぞれノルボルネン系ポリマーを主材料として構成されている請求項1ないし10のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
【請求項13】
電気配線と、請求項12に記載の光配線とを、基板上に混載してなることを特徴とする光電気混載基板。
【請求項14】
請求項13に記載の光電気混載基板を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−80265(P2013−80265A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−22678(P2013−22678)
【出願日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【分割の表示】特願2010−527773(P2010−527773)の分割
【原出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【分割の表示】特願2010−527773(P2010−527773)の分割
【原出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
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