説明

光導波路とその製造方法

【課題】光導波路の水平方向の屈折率などをはじめとする諸特性を容易に調整できる光導波路を提供する。
【解決手段】基板2上に下クラッド部31が形成され、下クラッド部31の上面に溝が形成され、溝部の片側に第1調整部41、第1調整部の反対側の溝側面に第2調整部42が形成され、溝の中央部にコア部32が形成され、下クラッド部31とコア部32の上面に上クラッド部33が形成されている。屈折率構造は第1調整部41の屈折率がコア部32より大きく、第2調整部42がコア部32と下クラッド部31の中間にある。光導波路構造1が曲線導波路になると、モード分布35のピーク中心位置は第1調整部側にシフトして、コア部32の中心に合わせることが可能で、モード分布も外周側へのすそ引きを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子やそれらが集積化された光集積回路に用いられる光導波路と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地域内ネットワーク、都市間ネットワーク等に代表される光通信、ならびにサーバ・ルータ等に適用される光インターコネクションなどの分野においては、複数の光信号の分波/合波、送信・受信操作などの光信号処理を行う光集積回路が利用される。利用範囲の拡大に伴い、小型、低電力、低コストの光集積回路の提供が期待されている。
【0003】
光集積回路においては、光信号の伝送路として、通常、平面光導波路が利用されている。平面光導波路では、コア/クラッドで構成される導波路中、通常、コアの断面形状は、実質的に矩形形状とされ、その上面/下面、ならびに、両側面をクラッドで覆う構造が採用されている。信号光に光透過性を有する無機材料をコア材料に利用する際、従来の平面光導波路では、下クラッド層上にコア層の平坦成膜を行い、エッチング加工によって、実質的に矩形の断面形状を有するコアを形成する。このコア形成工程では、例えば、感光性材料による露光現像を利用して、コア層の平面パターンに対応するエッチングマスクを作製する。次いで、作製されたエッチングマスクを利用して、RIE(Reactive Ion Etching)などのエッチングによって、コア層をエッチング加工することで、コアの断面形状を矩形としている。一方、信号光に光透過性を有する有機高分子材料をコア材料に利用する際には、例えば、該有機高分子材料自体が感光性材料である場合、露光現像を利用して、所望の平面パターンを有するコア層の形成がなされている。その後、形成されたコアの両側面、ならびに、上面を覆うように、上クラッド層を形成する。従って、前記の方法で作製されるコア/クラッド構造は、コアの両側面は、同じクラッド材料と接する状態となり、水平方向は対称構造になっている。
【0004】
上記のエッチング加工で形成されるコアをクラッド層で被覆する構造以外に、従来の光導波路構造として、下記のものが報告されている。平面光導波路構造として、基板や下クラッド部に溝を形成し、この溝を埋め込むように、エピタキシャル成長によりコア層を形成している構造、ならびに、その製造方法が開示されている(例えば、特許文献1(図1−6)参照)。また、特許文献2の図4に示されるように、エッチング加工によって、コアを形成した後、上クラッド層と屈折率の異なる中間層を、下クラッド層とコアの上面、両側面を被覆するように、均一で薄い膜厚で形成し、次いで、上クラッド層で全体を覆う構造も報告されている。
【0005】
矩形形状のコアをクラッドで取り囲む構造の平面光導波路の場合、直線導波路と曲線導波路領域とを含むため、下記の要因による損失が生じる。まず、同じ屈折率のコア材料でコアの両側面を被覆する構成を有する曲線導波路では、曲率R0の円弧を描く伝搬経路において、内周側と外周側とでは、光路長に差異が生じることに起因して、実効的な屈折率分布が変形する(非特許文献1(図8.17)参照)。それに伴って、伝搬する光の導波モードがシングルモードである場合、曲線導波路領域を伝搬する光の導波モードにおける、光強度分布の中心(極大)は、外周側にシフトする結果、曲率R0が一定の曲線導波路自体の放射損(一様曲げ損失)が生じる。
【0006】
古典的な光学では、屈折率差を有する界面において、高屈折率媒質から低屈折率媒質へと光が入射する際、入射角θiが臨界角θC以上となると、低屈折率媒質側への透過光が無くなり、全反射される。直線導波路領域では、コア層の屈折率ncoreとクラッド層の屈折率ncladとで決定される臨界角θC以上で、コア/クラッド界面に入射する光が主に伝搬されている。一方、曲率R0が一定の曲線導波路において、コア側からその外周側側面に対して、例えば、入射角θi=θCの条件で入射する光は、その入射点での接線方向に伝搬することになる。従って、入射角θi=θCの条件で入射する光は、円弧を描く外周側側面から、クラッド層へと滲み出す状態となる。このように、曲率R0が一定の曲線導波路において、円弧を描く外周側側面からクラッド層へと滲み出す光成分は、損失となる。一方、内周側側面でも、入射角θi=θCの条件で入射する光は、その入射点での接線方向に伝搬することになる。従って、入射角θi=θCの条件で入射する光は、円弧を描く内周側側面から、コアの中心部へ向かって進むことになる。
【0007】
コア層の幅がWであり、その中心が曲率R0の円弧を描く曲線導波路では、微小な角度δΘを曲がる際、その中心での光路長δL0は、δL0=R0・δΘである。一方、その中心から、内周側にδr隔たる位置(R0−δr)では、その光路長は、(R0−δr)・δΘとなり、外周側にδr隔たる位置(R0+δr)では、その光路長は、(R0+δr)・δΘとなる。従って、微小な角度δΘを曲がる際に生じる、真空中の波長λ0の光の位相変化は、曲線導波路の中心(R0)では、2π・(R0・δΘ)/(λ0/ncore)、位置(R0−δr)では、2π・{(R0−δr)・δΘ}/(λ0/ncore)、位置(R0+δr)では、2π・{(R0+δr)・δΘ}/(λ0/ncore)と近似的に示される。換言すると、実効的な屈折率は、曲線導波路の中心(R0)では、ncore、位置(R0−δr)では、ncore・(R0−δr)/R0、位置(R0+δr)では、ncore・(R0+δr)/R0と近似的に示される。同様に、クラッド層の実効的な屈折率は、コア層の中心(R0)の内周側にΔr隔たる位置(R0−Δr)では、nclad・(R0−Δr)/R0、外周側にΔr隔たる位置(R0+Δr)では、nclad・(R0+Δr)/R0と近似的に示される。伝搬する光の導波モードがシングルモードである場合、前述の実効的な屈折率分布を示す曲線導波路中を伝搬する光の電磁界分布は、その分布の中心(極大位置)は、コア層の中心(R0)から外周側にシフトした状態となる(非特許文献1(図8.18)参照)。従って、伝搬する光の導波モードがシングルモードである場合、曲率R0が一定の曲線導波路を伝搬する光の導波モードにおける、光強度分布は、導波路の幅中央(R0)ではなく、外周側に分布の中心(極大)を示すものとなる。
【0008】
また、伝搬する光の導波モードがシングルモードである場合、曲線導波路領域を伝搬する光の導波モードにおける、光強度分布の中心(極大)は、外周側にシフトすることに伴って、直線導波路と曲線導波路との結合部や、曲率の異なる曲線導波路相互の結合部での放射損(モード変換損)も発生する。
【0009】
古典的な光学では、直線導波路と曲線導波路との結合部において、曲線導波路の外周側側面に続く位置に、入射角θi=θCの条件で入射する光は、直線導波路のコア側面に沿って進む。そのため、曲線導波路側に達すると、円弧を描く外周側側面から、クラッド層へと滲み出す状態となる。結合部に続く、曲線導波路領域に達した際、円弧を描く外周側側面からクラッド層へと滲み出す光成分は、損失となる。同様に、曲率の異なる曲線導波路相互の結合部においても、曲率の大きな曲線導波路の後に、曲率の小さな曲線導波路を連結する場合、あるいは、前後の曲線導波路の曲げ方向(曲率中心の存在する側)が異なり、S字型の曲線導波路が構成されている場合は、後段の曲線導波路領域に達した際、円弧を描く外周側側面からクラッド層へと滲み出す光成分は、損失となる。
【0010】
また、伝搬する光の導波モードがシングルモードである場合、上述の曲線導波路における、実効的な屈折率分布に由来して、その電磁界分布の中心(極大)が、コア層の中心(R0)から外周側へとシフトした状態となっている。その際、曲線導波路において、そのコア層の外周側のクラッド層へと滲みだしている電磁界は相対的に増した状態となる(非特許文献1(図8.18)参照)。その際、直線導波路と曲線導波路との結合部においては、電磁界分布の中心(極大)が一致していないため、軸ずれ損失に類似した損失が生じる。同様に、曲率の異なる曲線導波路相互の結合部においても、曲率の大きな曲線導波路の後に、曲率の小さな曲線導波路を連結する場合、あるいは、前後の曲線導波路の曲げ方向(曲率中心の存在する側)が異なり、S字型の曲線導波路が構成されている場合は、その結合部においては、電磁界分布の中心(極大)が一致していないため、軸ずれ損失に類似した損失が生じる。
【0011】
従来の同じ屈折率のコア材料でコアの両側面を被覆する構成を有する平面光導波路では、曲率R0が一定の曲線導波路における一様曲げ損失を抑制するため、コア層の屈折率ncoreとクラッド層の屈折率ncladの差異を大きくする方法が利用されている。例えば、クラッド層の屈折率ncladを従来と同じとし、コア層の屈折率ncoreを高くする。その際、曲線導波路の内周側の光路長と、外周側の光路長との差異は、相対的に小さくなるため、実効的な屈折率分布の変形は、相対的に抑制される。従って、曲線導波路領域を伝搬する光の導波モードにおける、光強度分布の極大は、外周側にシフトする傾向はあるが、そのシフト量は低減され、同時に、コアの外周側側面からクラッド層側に浸み出す部分も減少する。結果的に、曲線導波路領域を伝搬する過程で、コアの外周側側面からクラッド層側への光の浸み出しに起因する損失は抑制される。
【0012】
また、直線導波路と曲線導波路との結合部での放射損(モード変換損)を低減する手段として、実効的な導波モード分布(光強度分布)に沿うように導波路にオフセットをつける手段が開示されている(例えば、非特許文献1(図8.18)参照)。具体的には、結合部において、曲線導波路領域のコアの内周側側面を、直線導波路の側面よりも、曲率中心側に移動させ、また、曲線導波路領域のコアの外周側側面を、直線導波路の側面よりも、コアの中心部側に移動させた状態とする。従って、曲線導波路領域のコアの中心を、直線導波路のコアの中心よりも、曲率中心側にシフトさせた状態とする。伝搬する光の導波モードがシングルモードである際、導波モード分布(光強度分布)は、単一のピークを示しており、このピークの極大位置を導波モード分布(光強度分布)の中心と見做すことができる。その際、「オフセット」を設けない場合には、曲線導波路領域における、実効的な導波モード分布(光強度分布)の中心は、コアの中心部から外周側へシフトする。一方、「オフセット」によって、コアの中心自体が内周側(曲率中心側)へ移動されているため、直線導波路における、実効的な導波モード分布(光強度分布)の中心と一致した状態とできる。結果的に、直線導波路側から曲線導波路領域へと伝搬される光強度の損失は、相対的に低減される。
【特許文献1】特開2005−300678号公報
【特許文献2】特開2004−264689号公報
【非特許文献1】國分泰雄著「光波工学」共立出版、1999年6月10日、250−253頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
チャンネル型の導波路構造を採用する、従来の光導波路におけるコア形成工程では、下クラッド層上にコア層の平坦成膜を行い、感光性材料による露光現像を利用して、コア層の平面パターンに対応するエッチングマスクを作製する。次いで、作製されたエッチングマスクを利用して、RIEなどのエッチングによって、コア層をエッチング加工することで、コアの断面形状を矩形としている。作製される矩形の断面形状のコアの両側面と上面を被覆するように、上クラッド層が形成される。従って、コア/クラッド構造において、その水平方向の屈折率分布は、コアの中心に対して、対称な構造となる。この屈折率分布を有するコア/クラッド構造によって曲線導波路を形成すると、実効的な屈折率分布が変形し、曲線導波路内を光が伝搬する際、その導波モードは、コアの中心から外周側にシフトする。また、それに伴って、光の導波モードがシングルモードである際、その導波モード分布(光強度分布)の中心に対して、内周側と外周側の光強度分布は非対称となる。特に、外周側の分布の裾が、コアの外周側の側壁から外部へ相当に滲み出した形状となる。この導波モードの非対称性と外周側への滲み出した形状が、曲線導波路自体の放射損(一様曲げ損失)や、直線導波路や曲率の異なる導波路との結合部での放射損(モード変換損)が発生する原因となっている。
【0014】
曲線導波路における一様曲げ損失は、主に、コアの外周側の側壁から外部への光の放散に起因している。例えば、コアの外周側の側壁面における、コアの屈折率ncoreとクラッドの屈折率ncladの比:nclad/ncoreにより決定される臨界角θCを小さくすると、一様曲げ損失の低減がなされる。従って、従来の光導波路では、クラッド層の屈折率ncladが同じ場合、コアの屈折率ncoreとクラッドの屈折率ncladの比屈折率差:Δ=(ncore2−nclad2)/(2・ncore2)を大きくする、すなわち、比:nclad/ncoreを小さくすることで、臨界角θCを小さくし、一様曲げ損失の低減がなされている。この手法では、コアの形成に利用する光透過性材料として、より高い屈折率を有する材料を用いる必要がある。その際、シングルモード条件を満足する、矩形の断面形状のコアの厚さD、幅Wは、コア内を伝搬する光の波長:(λ0/ncore)に基づき選択されるため、コアの屈折率ncoreがより高くなると、コアの厚さD、幅Wはより小さくなる。例えば、コアの屈折率ncoreを大きくすることで、コアの屈折率ncoreとクラッドの屈折率ncladの比:nclad/ncoreを小さくする方法は、本質的な手段ではあるが、利用可能な高屈折率材料は限られ、また、コアのサイズを低下する必要があり、加工精度の面で課題を内在している。
【0015】
例えば、直線導波路と曲線導波路の接続部におけるモード変換損を低減する手法として、従来、導波モードがシングルモードである場合、直線導波路中を光が伝搬する際の、導波モード分布の中心と、曲線導波路中を光が伝搬する際の導波モード分布の中心を一致させるため、接続部に「オフセット」を設ける手段が利用されている。曲線導波路のコア中心の曲率半径:R0、コアの幅:Wに対して、「オフセット」量:δR0は、例えば、{1/8・(W2/R0)}のオーダーとなるため、加工精度の面で課題を内在している。さらには、適切な「オフセット」量:δR0は、曲線導波路のコア中心の曲率半径:R0、コアの幅:W、コアの屈折率ncore、クラッドの屈折率ncladの4種のパラメータに基づき、設計を行う必要があり、相当な量の数値シミュレーション計算が必要となる。
【0016】
本発明は上記の課題を解決するものであり、本発明は、下記の目的に適合する平面光導波路を提供するものである。
【0017】
本発明の第一の目的は、平面光導波路において、コア/クラッドで構成される導波路の水平方向の屈折率分布、ならびに、水平方向の実効的な屈折率分布をはじめとする諸特性を容易に調整できる構造を具えている光導波路を提供することにある。
【0018】
加えて、本発明の更なる目的は、曲線導波路に適用した際、例えば、コアの屈折率ncoreとクラッドの屈折率ncladの比:nclad/ncoreを大きくする手段を利用して、コアの外周側の側壁面から外部への光の放散を低減し、一様曲げ損失を低減するのではなく、コア/クラッドで構成される導波路の水平方向の屈折率分布を調整することによって、一様曲げ損失の低減を実現している光導波路を提供することにある。
【0019】
また、本発明の更なる目的は、導波モードをシングルモードに維持しつつ、直線導波路と曲線導波路の接続部、あるいは、曲率の異なる曲線導波路相互の接続部において、各光導波路内を光が伝搬する際の実効的な導波モード分布における中心を相互に一致させ、モード変換損の低減を図るため、接続部に「オフセット」を設けるのではなく、コア/クラッドで構成される導波路の水平方向の屈折率分布を調整することによって、各光導波路内を光が伝搬する際の実効的な導波モード分布における中心を相互に一致させ、モード変換損の低減を実現している光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述する課題を解決するためには、コア/クラッドで構成される導波路の水平方向の屈折率分布、特には、クラッドとの水平方向の界面近傍のコア領域の実効的な屈折率を調整することが有効であることを見出した。具体的には、基板と、基板上に形成される、下クラッド部と、コア部と、上クラッド部からなる平面光導波路を構成する際、光の伝搬経路を構成する、断面が矩形形状のコア領域と、その両側面に接するクラッド部との界面近傍のコア領域の実効的な屈折率を調整する機能を有する調整部を設けることが有効である。特に、曲線導波路においては、断面が矩形形状のコア領域における実効的屈折率分布は、連続的な実効的な屈折率の変化であり、この連続的な屈折率変化を補償・相殺する目的では、前記調整部を利用する実効的な屈折率の変化も連続的であることが望ましいことを見出した。
【0021】
本発明は、これらの知見に基いて、完成されたものである。
【0022】
すなわち、本発明の第一の形態にかかる光導波路は、
基板と、前記基板上に形成されている、屈折率nclad1の下クラッド部と、屈折率ncoreのコア部と、屈折率nclad2の上クラッド部とを具えてなる光導波路であって、
該光導波路は、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を具える平面光導波路であり、
前記断面が矩形形状の溝領域の下面、左側面、右側面は、下クラッド部と接する界面を構成しており、
該光導波路内を伝搬する真空中の波長λ0の光に対して、下クラッド部の屈折率nclad1、コア部の屈折率ncore、上クラッド部の屈折率nclad2は、ncore>nclad1、かつ、ncore>nclad2の関係を満たすように選択されており、
前記コア部の断面形状は、
コア部の上面は、上クラッド部と接して、平坦な界面を形成し、
コア部の下面は、少なくとも、前記溝領域内において、下クラッド部と接して、平坦な界面を形成しており、
前記溝領域の左側面、右側面の一方は、
下クラッド部と、屈折率n1の第1調整部とが接する界面で構成されており、
前記溝領域の下面内において、前記第1調整部は下クラッド部と接して、幅W1の平坦な界面を形成しており、
前記溝領域内において、前記第1調整部は、コア部と接して界面を形成しており、
該第1調整部とコア部とが接する界面は、前記溝領域の下面に対して、傾斜角θ1で交差しており、該傾斜角θ1は、θ1<90°に選択されており、
前記第1調整部の断面形状は、前記溝領域の一方側面において、下クラッド部と該第1調整部とが接する界面、該第1調整部とコア部とが接する界面、ならびに、前記溝領域の下面内において、該第1調整部と下クラッド部と接する界面により形成されており、
前記溝領域の左側面、右側面の残る一方は、
下クラッド部と、屈折率n2の第2調整部とが接する界面で構成されており、
前記溝領域の下面内において、前記第2調整部は下クラッド部と接して、幅W2の平坦な界面を形成しており、
前記溝領域内において、前記第2調整部は、コア部と接して界面を形成しており、
該第2調整部とコア部とが接する界面は、前記溝領域の下面に対して、傾斜角θ2で交差しており、該傾斜角θ2は、θ2<90°に選択されており、
前記第2調整部の断面形状は、前記溝領域の他方の側面において、下クラッド部または上クラッド部のいずれかと該第2調整部とが接する界面、該第2調整部とコア部とが接する界面、ならびに、前記溝領域の下面内において、該第2調整部と下クラッド部と接する界面により形成されている
ことを特徴とする光導波路である。
【0023】
その際、
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1≠ncoreの関係を満たしており、
第2調整部の屈折率n2は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n2>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n2≠ncoreの関係を満たしている構成を選択することができる。
【0024】
さらには、
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1≠ncoreの関係を満たしており、
第2調整部の屈折率n2は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n2>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n2=ncoreの関係を満たしている構成;
あるいは、
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1=ncoreの関係を満たしており、
第2調整部の屈折率n2は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n2>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n2≠ncoreの関係を満たしている構成を選択することもできる。
【0025】
例えば、曲線導波路のように、光の伝搬経路の左右で異なる状態を形成する必要がある際には、
第1調整部の屈折率n1と、第2調整部の屈折率n2は、
少なくとも、n1≠n2の関係を満たしている構成を選択する。
【0026】
本発明の第一の形態にかかる曲線導波路では、例えば、
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1≠ncoreの関係を満たしており、
第2調整部の屈折率n2は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n2>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n2≠ncoreの関係を満たしている構成を選択した上で、
前記平面光導波路は、曲線導波路であり、
該曲線導波路において、
前記溝領域の外周側の側面に、屈折率n1の第1調整部を、
前記溝領域の内周側の側面に、屈折率n2の第2調整部を配置し、
第1調整部の屈折率n1と、第2調整部の屈折率n2を、
コア部の屈折率ncoreに対して、n2>ncore>n1の関係を満たすように選択している構成を採用することが好ましい。
【0027】
なお、上述する、本発明の第一の形態にかかる光導波路を製造する方法は、
その製造プロセスとして、
基板上に屈折率nclad1の下クラッド部を成膜する工程;
下クラッド部の上面に、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を形成する加工を施す工程;
第1調整部、右側面の一方に、該側面と、該側面から幅W1で前記溝領域の下面を被覆ように、前記溝領域の側面に第1調整材を選択的に成膜し、屈折率n1の第1調整部を形成する工程;
溝領域の左側面、右側面の残る一方に、該側面と、該側面から幅W2で前記溝領域の下面を被覆するように、前記溝領域の側面に第2調整材を選択的に成膜し、屈折率n2の第2調整部を形成する工程;
前記溝領域内において、第1調整部の成膜表面、第2調整部の成膜表面、ならびに、溝領域の下面を被覆し、溝領域内を埋め込むように、屈折率ncoreのコア部を成膜し、コア部と第1調整部とが接する界面、コア部と第2調整部とが接する界面を形成する工程;
コア部の上面、第1調整部の上面、第2調整部の上面、ならびに、下クラッド部の上面を被覆するように、屈折率nclad2の上クラッド部を成膜する工程を具えている
ことを特徴とする光導波路の製造方法である。
【0028】
また、本発明の第二の形態にかかる光導波路は、
基板と、前記基板上に形成されている、屈折率nclad1の下クラッド部と、屈折率ncoreのコア部と、屈折率nclad2の上クラッド部とを具えてなる光導波路であって、
該光導波路は、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を具える平面光導波路であり、
前記断面が矩形形状の溝領域の下面、左側面、右側面は、下クラッド部と接する界面を構成しており、
該光導波路内を伝搬する真空中の波長λ0の光に対して、下クラッド部の屈折率nclad1、コア部の屈折率ncore、上クラッド部の屈折率nclad2は、ncore>nclad1、かつ、ncore>nclad2の関係を満たすように選択されており、
前記コア部の断面形状は、
コア部の上面は、上クラッド部と接して、平坦な界面を形成し、
コア部の下面は、少なくとも、前記断面が矩形形状の領域内において、下クラッド部と接して、平坦な界面を形成しており、
前記溝領域の左側面、右側面の一方は、
下クラッド部と、屈折率n1の第1調整部とが接する界面で構成されており、
前記溝領域の下面内において、前記第1調整部は下クラッド部と接して、幅W1の平坦な界面を形成しており、
前記溝領域内において、前記第1調整部は、コア部と接して界面を形成しており、
該第1調整部とコア部とが接する界面は、前記溝領域の下面に対して、傾斜角θ1で交差しており、該傾斜角θ1は、θ1<90°に選択されており、
前記第1調整部の断面形状は、前記溝領域の一方の側面において、下クラッド部と該第1調整部とが接する界面、該第1調整部とコア部とが接する界面、ならびに、前記溝領域の下面内において、該第1調整部と下クラッド部と接する界面により形成されており、
前記溝領域の左側面、右側面の残る一方は、
下クラッド部と、コア部とが接する界面で構成されている
ことを特徴とする光導波路である。
【0029】
その際、
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1≠ncoreの関係を満たしている構成とすることが望ましい。
【0030】
本発明の第二の形態にかかる曲線導波路では、例えば、
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1≠ncoreの関係を満たしている構成を選択した上で、
前記平面光導波路は、曲線導波路であり、
該曲線導波路において、
前記溝領域の外周側の側面に、屈折率n1の第1調整部を配置し、
第1調整部の屈折率n1を、
コア部の屈折率ncoreに対して、ncore>n1の関係を満たすように選択している構成;
あるいは、
前記平面光導波路は、曲線導波路であり、
該曲線導波路において、
前記溝領域の内周側の側面に、屈折率n1の第1調整部を配置し、
第1調整部の屈折率n1を、
コア部の屈折率ncoreに対して、ncore<n1の関係を満たすように選択している構成を採用することが好ましい。
【0031】
なお、上述する、本発明の第二の形態にかかる光導波路を製造する方法は、
その製造プロセスとして、
基板上に屈折率nclad1の下クラッド部を成膜する工程;
下クラッド部の上面に、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を形成する加工を施す工程;
第1調整部、右側面の一方に、該側面と、該側面から幅W1で前記溝領域の下面を被覆ように、前記溝領域の側面に第1調整材を選択的に成膜し、屈折率n1の第1調整部を形成する工程;
前記溝領域内において、溝領域の左側面、右側面の残る一方、第1調整部の成膜表面、ならびに、溝領域の下面を被覆し、溝領域内を埋め込むように、屈折率ncoreのコア部を成膜し、コア部と第1調整部とが接する界面を形成する工程;
コア部の上面、ならびに、下クラッド部の上面を被覆するように、屈折率nclad2の上クラッド部を成膜する工程を具えている
ことを特徴とする光導波路の製造方法である。
【0032】
さらに、本発明にかかる光導波路は、特に、曲線導波路に適用する際にその有効性が顕著に発揮される。例えば、下記する形態の光導波路において、その曲線導波路部分に利用することが好ましい。
【0033】
例えば、
直線導波路部分と曲線導波路部分とが接続されてなる光導波路であって、
前記直線導波路部分は、
基板と、前記基板上に形成されている、屈折率nclad1の下クラッド部と、屈折率ncoreのコア部と、屈折率nclad2の上クラッド部とを具え、
光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を具える平面光導波路であり、
前記断面が矩形形状の溝領域の下面、左側面、右側面は、下クラッド部と接する界面を構成しており、
該光導波路内を伝搬する真空中の波長λ0の光に対して、下クラッド部の屈折率nclad1、コア部の屈折率ncore、上クラッド部の屈折率nclad2は、ncore>nclad1、かつ、ncore>nclad2の関係を満たすように選択されており、
前記コア部の断面形状は、
コア部の上面は、上クラッド部と接して、平坦な界面を形成し、
コア部の下面は、少なくとも、前記溝領域内において、下クラッド部と接して、平坦な界面を形成しており、
前記溝領域の左側面、右側面は、ともに、
下クラッド部と、コア部とが接する界面で構成されており;
前記曲線導波路部分は、上述の本発明の第一の形態にかかる曲線導波路、あるいは、本発明の第二の形態にかかる曲線導波路であり;
前記直線導波路部分と曲線導波路部分との接続は、
該直線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域と、該曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域とを、両者の下面、左側面、右側面を一致する形態で接続している
ことを特徴とする光導波路とすることができる。
【0034】
例えば、
曲率が互いに相違する二つの曲線導波路部分が接続されてなる光導波路であって、
前記曲率が互いに相違する二つの曲線導波路部分は、それぞれ、上述の本発明の第一の形態にかかる曲線導波路、あるいは、本発明の第二の形態にかかる曲線導波路であり;
二つの曲線導波路部分相互の接続は、
一方の曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域と、他方の曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域とを、両者の下面、左側面、右側面を一致する形態で接続している
ことを特徴とする光導波路とすることができる。
【0035】
例えば、
曲りの方向が互いに相違する二つの曲線導波路部分が接続されてなる光導波路であって、
前記曲りの方向が互いに相違する二つの曲線導波路部分は、それぞれ、上述の本発明の第一の形態にかかる曲線導波路、あるいは、本発明の第二の形態にかかる曲線導波路であり;
二つの曲線導波路部分相互の接続は、
一方の曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域と、他方の曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域とを、両者の下面、左側面、右側面を一致する形態で接続している
ことを特徴とする光導波路とすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明にかかる光導波路では、平面光導波路を構成するコア/クラッド構造において、コア領域とクラッドとの水平方向の境界に、コア部を形成する光透過性材料と光学・電磁気学的な特性の異なる光透過性材料を配置することによって、例えば、導波路の水平方向の屈折率分布、特には、クラッドとの水平方向の界面近傍のコア領域の実効的な屈折率を容易に調整することできる。特には、導波路の水平方向の実効的な屈折率分布において、クラッドとの水平方向の境界からコア領域の中心部に向って、実効的な屈折率が連続的に変化する分布を容易に形成することができる。
【0037】
例えば、導波モードがシングルモードである場合、従来の曲線導波路においては、コア領域の中心部と比較して、内周側では実効的屈折率が減少し、外周側では実効的屈折率が増加することに由来して、光が導波路内を伝搬する際、モード分布の中心が、コア領域の中心部から外周側へシフトする。一方、本発明に従って、コア領域の外周側の境界に、コアの屈折率ncore、クラッドの屈折率ncladの中間の屈折率を有する調整部を設けることで、相対的に、内周側における実効的な屈折率が、外周側における実効的な屈折率よりも高い状態とすることができる。また、例えば、本発明に従って、コア領域の内周側の境界に、コアの屈折率ncoreよりも高い屈折率を有する調整部を設けることで、相対的に、内周側における実効的な屈折率が、外周側における実効的な屈折率よりも高くなる状態とすることができる。前記のような屈折率分布を達成することで、光が導波路内を伝搬する際、モード分布の中心が、コア領域の中心部から外周側へシフトする現象を抑制し、モード分布の中心をコア領域の中心に一致させることが可能となる。その際、コア領域の実効的な屈折率分布が、相対的に、内周側における実効的な屈折率が、外周側における実効的な屈折率よりも高い状態とし、モード分布の中心をコア領域の中心に一致させると、結果的に、コア領域の外周側からクラッド側への光の滲み出しも抑制された状態となる。
【0038】
まず、導波モードがシングルモードである場合、本発明にかかる光導波路を曲線導波路に適用し、光が導波路内を伝搬する際、モード分布の中心が、コア領域の中心部から外周側へシフトする現象を抑制すると、直線導波路と曲線導波路を接続する際、「オフセット」補正を施さなくとも、直線導波路におけるモード分布の中心と、曲線導波路におけるモード分布の中心を一致させることが可能となる。その結果、直線導波路と曲線導波路の接続部において生じるモード変換損を抑えることができる。また、光が曲線導波路内を伝搬する際に生じる一様曲げ損失を相対的に抑制することも可能である。本発明は、コアの屈折率ncoreとクラッドの屈折率ncladの比:nclad/ncoreを小さくする手段を用いなくとも、曲線導波路における一様曲げ損失を抑制することを可能とするので、本発明にかかる光導波路を適用して、一様曲げ損失の増大を抑え、曲率の小さな曲線導波路を作製することが可能となる。すなわち、本発明にかかる光導波路を適用することで、モード変換損、一様曲げ損失の増大を抑えて、直線導波路と曲線導波路領域を含む平面光導波路の小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明の光導波路に関して、代表的な実施形態を例に採り、図面を参照して詳細に説明する。以下に例示する、各実施形態は、本発明の最良の実施形態の一例であるが、本発明は、これら例示される形態に限定されるものではない。
【0040】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施の形態にかかる平面光導波路について、図1を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる平面光導波路の構造の一例である、光導波路構造1の構造を模式的に示す断面図である。図1に例示すように、第1の実施形態で利用される光導波路構造1は、基板2上に形成される下クラッド部31、下クラッド部31の上面に形成される溝、溝部の一方の側壁部に形成される第1調整部41、溝部の他の側壁部に形成される第2調整部42、溝の中央部に形成されるコア部32、下クラッド部31とコア部32の上面を覆うように形成される上クラッド部33からなる。
【0041】
下クラッド部31の上面に形成される溝部自体の断面形状は、深さ:D、幅:Wの矩形状である。第1調整部41は、溝部の一方の側壁面と、溝部の底面の一部と接している。第1調整部41とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ1は、一定の角度に設定されている。第2調整部42は、溝部の他方の側壁面と、溝部の底面の一部と接している。第1調整部42とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ2は、一定の角度に設定されている。
【0042】
図1に例示する光導波路構造1においては、溝部の内部を占める第1調整部41、コア部32、第2調整部42と、その周囲を取り囲む、下クラッド部31と上クラッド部33との間に設ける比屈折率差を利用して、屈折率導波構造が構成されている。下クラッド部31は、厚さ:Tclad1で作製されるが、その上面から深さ:Dの溝部が形成されるため、コア部32の下に残される厚さは(Tclad1−D)となる。
【0043】
例えば、下クラッド部31が形成されている基板2として、半導体基板を利用すると、一般に、基板2の屈折率:nsubは、コア部32を形成する光透過性材料の屈折率:ncoreより高くなる。その際、残される厚さ:(Tclad1−D)が薄い場合、基板2への光の放散が顕著な影響を示す。この基板2への光の放散に起因する影響を排除するため、残される厚さ:(Tclad1−D)が十分に厚くなるように、溝部の深さ:Dに応じて、下クラッド部31の厚さ:Tclad1を選択する。
【0044】
コア部32、下クラッド部31と上クラッド部33の形成に利用される材料は、導波される光の真空中における波長:λ0に対して、光透過性を示す材料である。また、第1調整部41、第2調整部42の形成に利用される材料も、導波される光の真空中における波長:λ0に対して、光透過性を示す材料とする。その際、第1調整部41、第2調整部42には、溝部の側壁面を覆うように形成するため、垂直側面に選択的に良好な被覆・堆積が可能な成膜方法を採用して、堆積を行うことが可能な光透過性材料を選択することが望ましい。垂直側面に選択的に良好な被覆・堆積が可能な成膜方法として、例えば、イオンビームスパッタやエアロゾルデポジションなどが利用でき、これらの堆積方法に適する光透過性材料から、第1調整部41、第2調整部42の形成に利用される材料を選択することが望ましい。
【0045】
特に、コア部32、第1調整部41、第2調整部42には、通常、真空中の波長:λ0の光が伝搬する際、吸収(あるいは非弾性光散乱・弾性光散乱)に起因する透過光強度の減衰を実質的に示さない光透過性材料を利用する。また、下クラッド部31と上クラッド部33にも、通常、真空中の波長:λ0の光が伝搬する際、吸収(あるいは非弾性光散乱・弾性光散乱)に起因する透過光強度の減衰を実質的に示さない光透過性材料を利用する。
【0046】
以降、コア部32、第1調整部41、第2調整部42、下クラッド部31と上クラッド部33は、何れも、導波される光の真空中における波長:λ0に対して、吸収(あるいは非弾性光散乱・弾性光散乱)に起因する透過光強度の減衰を示さない光透過性材料を利用する態様を例にとって、説明を行う。また、真空中の屈折率:n0に対する比率:n/n0として定義される、比屈折率nrの値を、以後、各材料の屈折率と表記する。
【0047】
導波される光の真空中の波長:λ0における、コア部32の屈折率:ncore、上クラッド部33の屈折率nclad2、下クラッド部31の屈折率nclad1は、ncore>nclad1、ncore>nclad2の関係を満足するように、コア部32、下クラッド部31と上クラッド部33の形成に利用される光透過性材料を選択する。
【0048】
上下方向は、溝部の底面を構成する下クラッド部31と、上面を覆う上クラッド部33と、コア部32との比屈折率差によって、光の閉じ込めがなされている。通常、上クラッド部33の屈折率nclad2と下クラッド部31の屈折率nclad1は、等しくなるように、下クラッド部31と上クラッド部33の形成に利用される光透過性材料を選択する。その際、下クラッド部31とコア部32の界面、上クラッド部33とコア部32の界面における臨界角:θCdown、θCupは、それぞれ、sinθCdown=(nclad1/ncore)、sinθCup=(nclad2/ncore)を満たす。通常、nclad2=nclad1の条件を選択するので、θCdown=θCupとなる。
【0049】
なお、溝部全体をコア部32が占めている従来の平面光導波路では、溝部の両側壁面ともに、下クラッド部31とコア部32の界面が形成され、その界面における臨界角:θCsideは、sinθCside=(nclad1/ncore)を満たす。すなわち、θCside=θCdownとなっている。古典的な光学では、下クラッド部31とコア部32の界面に対して、入射角:θi<θCsideで、コア部32側から入射する光は、この界面で屈折され、下クラッド部31側へと進む。入射角:θi≧θCsideで、コア部32側から入射する光は、この界面を透過して、下クラッド部31側へと進むことができない。例外的に、入射角:θi=θCsideで、コア部32側から入射する光では、屈折率の低い下クラッド部31側に滲み出し、実効的に入射点における界面の接線方向に進行する光成分(エバネッセント波)が生じる。
【0050】
この溝部を利用して作製される平面光導波路中を真空中の波長:λ0の光を伝搬させる際、伝搬する光の光強度分布が、シングルモード条件を満足するようにする。特には、矩形状の溝部の断面サイズ;深さ:D、幅:Wは、それぞれ縦方向の光強度分布、横方向の光強度分布がシングルモードとなる範囲に選択することが好ましい。
【0051】
シングルモード条件を達成する際、矩形状の溝部の断面サイズ;深さ:D、幅:Wは、W>Dとすることも、あるいは、W≦Dとすることもできる。なお、第1の実施形態〜第5の実施形態では、W>Dの範囲に選択した構成を例に採り、本発明の動作原理と、その効果を説明している。
【0052】
第1の実施形態にかかる平面光導波路の一例では、少なくとも、第1調整部41の形成に利用する光透過性材料の屈折率:n1、第2調整部42の形成に利用する光透過性材料の屈折率:n2を、ともに、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも高く選択する。すなわち、n1>nclad1ならびにn2>nclad1の関係を満たすように、選択する。また、第1調整部41の形成に利用する光透過性材料の屈折率:n1、第2調整部42の形成に利用する光透過性材料の屈折率:n2の少なくとも一方は、コア部32の屈折率:ncoreと相違する値に選択する。通常、n1≠ncoreならびにn2≠ncoreの関係を満たすように選択する。従って、一般に、第1調整部41の形成に利用する光透過性材料、第2調整部42の形成に利用する光透過性材料には、コア部32の形成に利用する光透過性材料とは、異なる電気・光学的特性を有する光透過性材料を使用する。
【0053】
次に、第1の実施形態にかかる平面光導波路を曲線導波路として利用する一態様について、光導波路構造1の屈折率構造ならびにその動作原理に関して、図2を参照して説明する。図2に例示する、光導波路構造1の屈折率構造は、曲線導波路の曲率中心が、第1調整部41を設ける側壁側に位置する態様である。その際、曲線導波路を構成する際、溝部の中心が描く軌跡は、曲率半径:R0の円弧の形状とする。従って、溝部の内周側の側壁面は、曲率半径:R0−(1/2・W)の円弧の形状となり、外周側の側壁面は、曲率半径:R0+(1/2・W)の円弧の形状となる。
【0054】
図2(a)は、図1に模式的に示す光導波路構造1において、A−A’の横断面における、屈折率構造を示したものである。すなわち、溝部の内周側の側壁部に形成される第1調整部41の屈折率:n1は、コア部32の屈折率:ncoreよりも高く、溝部の外周側の側壁部に形成される第2調整部42の屈折率:n2は、コア部32の屈折率:ncoreよりも低く選択されている。従って、n1>ncore>n2>nclad1の関係となっている。溝部は下クラッド部31の上面に形成されているので、溝部の内周側の側壁面は、下クラッド部31を形成する光透過性材料と第1調整部41との界面、外周側の側壁面は、下クラッド部31を形成する光透過性材料と第1調整部41との界面となっている。従って、溝部の内周側の側壁面における臨界角:θCinは、sinθCin=(nclad1/n1)を満たす。また、溝部の内周側の側壁面における臨界角:θCoutは、sinθCout=(nclad1/n2)を満たす。従って、θCin>θCside>θCoutとなっている。
【0055】
溝部全体をコア部32が占めている従来の平面光導波路により、同様に、曲率半径:R0の円弧形状の曲線導波路を構成した場合、光が曲線導波路中を伝搬した際、水平方向の光強度分布が、溝部の中心よりも外周側に極大を示す分布となる。曲率半径:R0に対して、溝部の幅:Wが十分に小さい条件、W/R0≪1が満たされる範囲では、この溝部を含む微小な領域の実効的な屈折率分布は、非特許文献1にあるように、曲率中心からの距離rに比例して傾斜する形状となる。具体的には、曲線導波路に沿って、微小な角度δθの円弧を光が進む際、内周側では、曲率中心からの距離r=R0−δrとすると、光路長は、δθ・(R0−δr)となり、外周側では、曲率中心からの距離r=R0+δrとすると、光路長は、δθ・(R0+δr)となる。その際、真空中の波長:λ0の光が、屈折率nの媒体中において、前記の光路長を進む際に示す位相変化Δψは、
内周側では、Δψin=2π・δθ・(R0−δr)/(λ0/n)、
溝部の中心では、Δψcenter=2π・δθ・R0/(λ0/n)、
外周側では、Δψout=2π・δθ・(R0+δr)/(λ0/n)となる。
【0056】
従って、実効的な屈折率neffは、
内周側では、Δψin=2π・δθ・R0/(λ0/nin)=2π・δθ・(R0−δr)/(λ0/n)、
溝部の中心では、Δψcenter=2π・δθ・R0/(λ0/ncenter)=2π・δθ・R0/(λ0/n)、
外周側では、Δψout=2π・δθ・R0/(λ0/nout)=2π・δθ・(R0+δr)/(λ0/n)
を満たすように、近似的に算定される。すなわち、実効的な屈折率neffは、
内周側では、nin=n・(R0−δr)/R0
溝部の中心では、ncenter=n、
外周側では、nout=n・(R0+δr)/R0
と近似的に表される。
【0057】
この実効的な屈折率分布においては、クラッド部、ならびに溝の内部では、内周側よりも外周側の実効的屈折率が高くなっており、伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の極大は、溝部の中心から外周側にシフトした形状となる。
【0058】
図1に模式的に示す光導波路構造1では、内周側の側壁部に形成する第1調整部41とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ1は、一定の角度に設定されている。第1調整部41が、溝部の底面と接する幅をW1とすると、前記傾斜角:θ1は、tanθ1=D/W1を満たしている。外周側の側壁部に形成する第2調整部42とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ2は、一定の角度に設定されている。第2調整部42が、溝部の底面と接する幅をW2とすると、前記傾斜角:θ2は、tanθ2=D/W2を満たしている。勿論、W1+W2≦Wとなっており、通常、W1≦(1/2)・W、W2≦(1/2)・Wとする。
【0059】
光導波路構造1では、実効的な屈折率分布は、下記のようになっている。
内周側の側壁面:r=R0−(1/2・W)において、
下クラッド部31では、nclad1-eff=nclad1・{R0−(1/2・W)}/R0
第1調整部41では、n1-eff=n1・{R0−(1/2・W)}/R0
内周側の側壁面からW1の位置:r=R0−(1/2・W)+W1において、
コア部32では、ncore-eff=ncore・{R0−(1/2・W)+W1}/R0
外周側の側壁面からW2の位置:r=R0+(1/2・W)−W2において、
コア部32では、ncore-eff=ncore・{R0+(1/2・W)−W2}/R0
外周側の側壁面:r=R0+(1/2・W)において、
下クラッド部31では、nclad1-eff=nclad1・{R0+(1/2・W)}/R0
第2調整部42では、n2-eff=n2・{R0+(1/2・W)}/R0
溝部において、その深さ方向に屈折率分布が存在している、内周側の領域:R0−(1/2・W)<r<R0−(1/2・W)+W1では、各位置rにおいて、実効的な屈折率neff(r)は、n1・{R0−(1/2・W)}/R0>neff(r)>ncore・{R0−(1/2・W)+W1}/R0という連続的な変化を示す。一方、外周側の領域:R0+(1/2・W)−W2<r<R0+(1/2・W)では、各位置rにおいて、実効的な屈折率neff(r)は、ncore・{R0+(1/2・W)−W2}/R0>neff(r)>n2・{R0+(1/2・W)}/R0という連続的な変化を示す。
【0060】
従って、光導波路構造1において、前記の実効的な屈折率分布を採用すると、下クラッド部31では、内周側よりも外周側の実効的屈折率が高くなっているが、溝部の内部では、相対的に外周側よりも内周側の実効的屈折率が高くなる状況が達成されている。そのため、導波モードがシングルモードである場合、伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の中心(極大)は、溝部の中心から外周側にシフトする形状ではなく、溝部の中心に位置する状態とすることができる。
【0061】
図2(b)に、従来の構造の曲線導波路における光強度分布;従来のモード分布34と、上記の光導波路構造1を利用する曲線導波路における光強度分布;本発明におけるモード分布35とを模式的に対比して示す。従来のモード分布34では、伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の中心(極大)は、溝部の中心から外周側にシフトした形状となることに付随して、溝部の外周側の側壁から、外周側のクラッドへの滲み出しが相当な比率を示している。一方、本発明におけるモード分布35では、伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の中心(極大)は、溝部の中心(R0)に位置する状態となることに伴い、溝部の外周側の側壁から、外周側のクラッドへの滲み出しが相対的に抑制される。
【0062】
なお、図2(a)には、内周側の側壁部に形成する第1調整部41が形成されている幅W1と、外周側の側壁部に形成する第2調整部42が形成されている幅W2を等しくする態様が例示されている。換言するならば、W1=W2の条件を満足する際、曲線導波路内を伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の極大は、溝部の中心に位置する状態となるように、コア部32の屈折率:ncoreに対して、第1調整部41の屈折率:n1と第2調整部42の屈折率:n2を適正に選択した一態様を例示している。
【0063】
勿論、W1≠W2とする条件、例えば、W1>W2とする際にも、曲線導波路内を伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の極大は、溝部の中心に位置する状態となるように、コア部32の屈折率:ncoreに対して、第1調整部41の屈折率:n1と第2調整部42の屈折率:n2を適正に選択することが可能である。具体的には、外周側の側壁部に形成する第2調整部42に関して、(n2、W2)を図2(a)と同じに選択する場合、第1調整部41の形成される幅W1を、(W1+ΔW1)と広くする際には、第1調整部41の屈折率:n1は、(n1−Δn1)と低くすることで、曲線導波路内を伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の極大は、溝部の中心に位置する状態を達成することができる。その際、(n1−ncore)・W1と(n1−Δn1−ncore)・(W1+ΔW1)は、ほぼ等しくなる。
【0064】
また、内周側の側壁部に形成する第1調整部41は、溝部の中心より内周側で生じるコア部の実効的な屈折率の低下を補償し、一方、外周側の側壁部に形成する第2調整部42は、溝部の中心より外周側で生じるコア部の実効的な屈折率の増大を相殺する機能を果たしている。従って、(n1−ncore)・W1ならびに(ncore−n2)・W2は、{n・(W/2)/R0}・(W/2)と同程度となる。
【0065】
上述するように、光導波路構造1の平面光導波路を利用して、曲率半径:R0の円弧形状の曲線導波路を構成する際には、その曲率中心に対して、第1調整部41と第2調整部42の内、溝部の内周側に設けるものは、コア部32の屈折率:ncoreよりも高く、溝部の外周側に設けるものは、コア部32の屈折率:ncoreよりも低くなるようにする。従って、図2に示す例では、第1調整部41側に曲率中心がある場合について説明したが、第2調整部42側に曲率中心がある場合については、左右反対にすればよいことはいうまでもない。
【0066】
次に、光導波路構造1を有する平面光導波路を製造方法について、図3を参照して説明する。図3は、図1に示す光導波路構造1を製造する工程を説明する断面図である。
【0067】
まず、図3(a)に示すように、Si等からなる基板2上に、下クラッド部31を形成する。下クラッド部31を構成する光透過性材料を成膜後、幅W、深さDの矩形断面の溝部をRIE等のエッチングにより形成する。
【0068】
続いて、図3(b)に示すように、第1調整部41を、溝部の一方の側壁部に形成する。第1調整部41の成膜にあたっては、エアロゾルでポジション法や、イオンビームスパッタなど、溝部の垂直側面に選択的に良好な被覆・成膜が可能な方法を利用することが最適である。
【0069】
続いて、図3(c)に示すように、第1調整部41の反対側の溝部の側壁部に第2調整部42を形成する。第2調整部42の成膜に利用する成膜方法は、第1調整部41の成膜を行う方法と同様である。
【0070】
続いて、図3(d)に示すように、溝部を埋め込むように、コア部32を形成する。コア部32の形成には、第1調整部41および第2調整部42の成膜に利用する成膜方法と同様の成膜方法が利用できる。また、コア部32のみが選択的に埋め込まれるようなリフトオフの手法、あるいは、下クラッド部31の上面全体を覆うように成膜した後、研磨して、コア部32の上面が下クラッド部31の上面と同じ水準面となるように平坦化するなど、コア部32の上面が下クラッド部31の上面の平坦性に調整する工程を適宜追加してもよい。
【0071】
そして、図3(e)に示すように、コア部32と下クラッド部31の上面を被覆するように、上クラッド部33を形成する。
【0072】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態にかかる平面光導波路では、図1に示す光導波路構造1に例示するように、溝部にコア部32を形成する際、溝部の側壁部に第1調整部41と第2調整部42を設けることで、クラッド部の水平境界に、特性の異なる材料を配置することができる。従って、クラッド部の水平境界における、溝部側の屈折率などの特性を容易に調整できる光導波路を実現することができる。
【0073】
例えば、導波モードがシングルモードである場合、曲線導波路を作製する際、外周側のコア部とクラッド部の水平境界付近に、コア部とクラッド部との中間の屈折率を持つ、屈折率調整部を設けることで、曲線導波路を伝搬する光の導波モードの中心(極大位置)を、曲率中心方向にシフトさせることができる。この機能(特徴)を利用すると、曲線導波路において、コア部が形成される溝部の中心と、導波モードの中心(極大位置)を揃えることが可能である。
【0074】
また、上記の第1の実施形態にかかる平面光導波路では、溝部に形成されるコア部の上下、左右をクラッドで取り囲むチャンネル型の導波路構造を示している。チャンネル型の導波路構造に代えて、コア部32が溝部だけでなく、上クラッド部33の下面全体に形成されている、逆リッジ構造の平面光導波路の形態に適用してもよい。すなわち、逆リッジ構造においても、その溝部の側壁部に第1調整部41と第2調整部42を設けることで、コア部とクラッド部とが水平境界を構成する、溝部の側壁面に、例えば、実効的な屈折率を調整する調整部が存在する構成となる。
【0075】
また、上記の事例では、曲線導波路における光の導波モード分布の調整に、本発明の第1の実施形態を適用する態様に関して、説明している。一方、溝部の側壁部に形成する、第1調整部41と第2調整部42の特性、例えば、光学的・電磁気学的な特性が同じ場合は、スポットサイズ変換などのモード分布の調整を図る機能性の光導波路の構築に応用が可能である。
【0076】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施の形態にかかる平面光導波路について、図4を参照して説明する。図4は、第2の実施の形態にかかる平面光導波路の構造の一例である、光導波路構造1Aの構造を模式的に示す断面図である。図4に例示すように、第2の実施形態で利用される光導波路構造1Aは、基板2上に形成される下クラッド部31、下クラッド部31の上面に形成される溝、溝部の片側に形成される第1調整部41、溝の中央部に形成されるコア部32、下クラッド部31とコア部32の上面を覆うように形成される上クラッド部33からなる。
【0077】
溝部自体の断面形状は、矩形状であり、第1調整部41は、溝部の片側の側壁面と、溝部の底面の一部と接している。第1調整部41とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ1は、一定の角度に設定されている。第1調整部41が、溝部の底面と接する幅をW1とすると、前記傾斜角:θ1は、tanθ1=D/W1を満たしている。
【0078】
この光導波路構造1Aを曲線導波路領域に採用する際、直線導波路領域との接合部では、溝部は「オフセット」を設けず形成されている。従って、曲線導波路領域においても、下クラッド部31の上面に形成される溝の深さ:D、溝の幅:Wは、直線導波路領域と同じである。また、曲線導波路領域における、溝部の内周側の側壁、ならびに、溝部の外周側の側壁は、直線導波路領域の溝部の二つの側壁とそれぞれ段差を設けずに連結されている。その際、下クラッド部31、上クラッド部33、ならびに、コア部32は、直線導波路領域と曲線導波路領域とでは、それぞれ同じ材料を利用して、一体に形成されている。すなわち、曲線導波路領域における、コア部32の屈折率:ncore、上クラッド部33の屈折率nclad2、下クラッド部31の屈折率nclad1は、直線導波路を構成するコア部、上クラッド部、下クラッド部の屈折率と同じ値となっている。通常、上クラッド部33の屈折率nclad2と下クラッド部31の屈折率nclad1は、等しくなるように選択されている。
【0079】
第1調整部41は、コア部32とは特性の異なる材料で形成されている。例えば、第1調整部41の屈折率:n1は、コア部32の屈折率:ncoreと異なるものとされている。例えば、曲線導波路領域において、溝部の曲率中心側(内周側)に第1調整部41を形成する際には、コア部32の屈折率:ncoreよりも、第1調整部41の屈折率:n1が高くなるように材料を選択する。従って、下クラッド部31の屈折率nclad1、コア部32の屈折率:ncore、第1調整部41の屈折率:n1は、n1>ncore>nclad1の関係を満たす。
【0080】
逆に、曲線導波路領域において、溝部の曲率中心と異なる側(外周側)に第1調整部41を形成する際には、コア部32の屈折率:ncoreよりも、第1調整部41の屈折率:n1が低くなるように材料を選択する。その際、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも、第1調整部41の屈折率:n1が高くなるように材料を選択する。従って、下クラッド部31の屈折率nclad1、コア部32の屈折率:ncore、第1調整部41の屈折率:n1は、ncore>n1>nclad1の関係を満たす。
【0081】
次に、第2の実施形態にかかる平面光導波路を曲線導波路として利用する一態様について、光導波路構造1Aの屈折率構造ならびにその動作原理に関して、図4を参照して説明する。図4に例示する、光導波路構造1Aの屈折率構造は、曲線導波路の曲率中心が、第1調整部41を設ける側壁側に位置し、n1>ncore>nclad1の関係を満たす態様である。その際、曲線導波路を構成する際、溝部の中心が描く軌跡は、曲率半径:R0の円弧の形状とする。従って、溝部の内周側の側壁面は、曲率半径:R0−(1/2・W)の円弧の形状となり、外周側の側壁面は、曲率半径:R0+(1/2・W)の円弧の形状となる。
【0082】
曲率半径:R0に対して、溝部の幅:Wが十分に小さい条件、W/R0≪1が満たされる範囲では、この溝部を含む微小な領域の実効的な屈折率分布は、下記のように近似的表記される。
【0083】
例えば、溝部の曲率中心側(内周側)に第1調整部41を形成する態様では、
内周側の側壁面:r=R0−(1/2・W)において、
下クラッド部31では、nclad1-eff=nclad1・{R0−(1/2・W)}/R0
第1調整部41では、n1-eff=n1・{R0−(1/2・W)}/R0
内周側の側壁面からW1の位置:r=R0−(1/2・W)+W1において、
コア部32では、ncore-eff=ncore・{R0−(1/2・W)+W1}/R0
外周側の側壁面:r=R0+(1/2・W)において、
下クラッド部31では、nclad1-eff=nclad1・{R0+(1/2・W)}/R0
コア部32では、ncore-eff=ncore・{R0+(1/2・W)}/R0
溝部において、その深さ方向に屈折率分布が存在している、内周側の領域:R0−(1/2・W)<r<R0−(1/2・W)+W1では、各位置rにおいて、その実効的な屈折率neff(r)は、ncore・{R0−(1/2・W)+W1}/R0<neff(r)<n1・{R0−(1/2・W)}/R0という連続的な変化を示す。
【0084】
従って、光導波路構造1Aにおいて、前記の実効的な屈折率分布を採用すると、下クラッド部31では、内周側よりも外周側の実効的屈折率が高くなっているが、溝部の内部では、相対的に外周側よりも内周側の実効的屈折率が高くなる状況を達成することが可能である。その際には、導波モードがシングルモードである場合、伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の中心(極大)は、溝部の中心から外周側にシフトする形状ではなく、溝部の中心(R0)に位置する状態とすることができる。
【0085】
また、内周側の側壁部に形成する第1調整部41は、溝部の中心より内周側で生じるコア部の実効的な屈折率の低下と、溝部の中心より外周側で生じるコア部の実効的な屈折率の増大に起因して、相対的に、溝部の中心より外周側と比較し、溝部の中心より内周側では実効的な屈折率が低くなる状態を補償する機能を果たしている。従って、(n1−ncore)・W1は、2・{n・(W/2)/R0}・(W/2)と同程度となる。
【0086】
また、光導波路構造1Aの作製は、光導波路構造1を作製する製造工程において、第1調整部41のみを溝部の一方の側壁に成膜した後、第2調整部42を成膜する工程を省き、溝部を埋め込むようにコア部32を形成する工程を行うように変更することで達成できる。あるいは、光導波路構造1を作製する製造工程において、第2調整部42を成膜する工程の際、第2調整部42を形成する材料をコア部32を形成する材料と同じ材料とすることでも、光導波路構造1Aの作製が達成できる。
【0087】
また、通常の上面への成膜を行うと溝側面への成膜レートが異なる材料では第1および第2の調整部とコア部の材料を同じ構造として、作製方法においては、光導波路構造1あるいは1Aの作製方法としてもよい。
【0088】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施の形態にかかる平面光導波路について、図5を参照して説明する。図5は、第3の実施の形態にかかる平面光導波路の構造の一例である、光導波路構造1Bの構造を模式的に示す横断面図である。
【0089】
図5の横断面図に例示すように、第3の実施形態で利用される光導波路構造1Bは、リング形状をした平面光導波路である。その光導波路構造1Bは、図3に例示される断面構造を有している。すなわち、基板2上に形成される下クラッド部31、下クラッド部31の上面に形成される溝、溝部の片側に形成される第1調整部41、溝の中央部に形成されるコア部32、下クラッド部31とコア部32の上面を覆うように形成される上クラッド部33からなる。その際、溝部の片側に形成される第1調整部41は、リング形状をした溝部の外周側に形成されている。
【0090】
コア部32の屈折率:ncoreは、上クラッド部33の屈折率nclad2、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも高く選択されている。第1調整部41は、コア部32とは特性の異なる材料で形成されている。コア部32の屈折率:ncoreよりも、溝部の外周側に形成されている第1調整部41の屈折率:n1が低くなるように材料を選択する。その際、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも、第1調整部41の屈折率:n1が高くなるように材料を選択する。従って、下クラッド部31の屈折率nclad1、コア部32の屈折率:ncore、第1調整部41の屈折率:n1は、ncore>n1>nclad1の関係を満たす。
【0091】
このリング形状の平面光導波路において、リング状の溝部の中心が通る軌跡は、曲率(半径):R0の真円形状である。その際、下クラッド部31の上面に形成される溝の断面は、溝の深さ:D、溝の幅:Wの矩形である。その外周側に形成される第1調整部41は、溝部の外周側の側壁面と、溝部の底面の一部と接している。第1調整部41とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ1は、一定の角度に設定されている。第1調整部41が、溝部の底面と接する幅をW1とすると、前記傾斜角:θ1は、tanθ1=D/W1を満たしている。
【0092】
溝の内周側の側壁面では、屈折率:ncoreのコア部32と屈折率nclad1の下クラッド部31が接しており、この内周側の側壁面における臨界角θCinは、sinθCin=(nclad1/ncore)を満たす。溝の外周側の側壁面では、屈折率:n1の第1調整部41が屈折率nclad1の下クラッド部31が接しており、この外周側の側壁面における臨界角θCoutは、sinθCout=(nclad1/n1)を満たす。また、屈折率:ncoreのコア部32と屈折率:n1の第1調整部41との界面における臨界角θC1は、sinθC1=(n1/ncore)を満たす。従って、θCout>θC1>θCinとなっている。
【0093】
第1調整部41を設けていないリング形状の平面光導波路における、外周側の側壁面から、外周側の下クラッド部31への滲み出しに起因する放射損(一様曲げ損失)は、外周側の側壁面に対して、入射角θi≦θCinでコア部31側から入射する光成分の放射損に相当する。一方、屈折率:n1の第1調整部41を設けているリング形状の平面光導波路において、外周側の側壁面から、外周側の下クラッド部31への滲み出しに起因する放射損(一様曲げ損失)は、コア部31側から第1調整部41側へと滲み出す光成分のうち、外周側の側壁面に対して、入射角θi≦θCoutで第1調整部41側から入射する光成分の放射損に相当する。
【0094】
次に、第3の実施形態にかかる平面光導波路をリング形状の導波路として利用する一態様について、光導波路構造1Bの屈折率構造ならびにその動作原理に関して、図5を参照して説明する。図5に例示する、光導波路構造1Bの屈折率構造は、曲線導波路の曲率中心が、第1調整部41を設ける側壁と反対側に位置し、ncore>n1>nclad1の関係を満たす態様である。その際、曲線導波路を構成する際、溝部の中心が描く軌跡は、曲率半径:R0の円弧の形状とする。従って、溝部の内周側の側壁面は、曲率半径:R0−(1/2・W)の円弧の形状となり、外周側の側壁面は、曲率半径:R0+(1/2・W)の円弧の形状となる。
【0095】
曲率半径:R0に対して、溝部の幅:Wが十分に小さい条件、W/R0≪1が満たされる範囲では、この溝部を含む微小な領域の実効的な屈折率分布は、下記のように近似的に表記される。
内周側の側壁面:r=R0−(1/2・W)において、
下クラッド部31では、nclad1-eff=nclad1・{R0−(1/2・W)}/R0
コア部32では、ncore-eff=ncore・{R0−(1/2・W)}/R0
外周側の側壁面からW1の位置:r=R0+(1/2・W)−W1において、
コア部32では、ncore-eff=ncore・{R0+(1/2・W)−W1}/R0
外周側の側壁面:r=R0+(1/2・W)において、
下クラッド部31では、nclad1-eff=nclad1・{R0+(1/2・W)}/R0
第1調整部41では、n1-eff=n1・{R0+(1/2・W)}/R0
溝部において、その深さ方向に屈折率分布が存在している、外周側の領域:R0+(1/2・W)−W1<r<R0+(1/2・W)では、各位置rにおいて、実効的な屈折率neff(r)は、ncore・{R0+(1/2・W)−W1}/R0>neff(r)>n1・{R0+(1/2・W)}/R0という連続的な変化を示す。
【0096】
従って、光導波路構造1Bにおいて、前記の実効的な屈折率分布を採用すると、下クラッド部31では、内周側よりも外周側の実効的屈折率が高くなっているが、溝部の内部では、相対的に外周側よりも内周側の実効的屈折率が高くなる状況を達成することが可能である。その際には、導波モードがシングルモードである場合、伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の中心(極大)は、溝部の中心から外周側にシフトする形状ではなく、溝部の中心(R0)に位置する状態とすることができる。
【0097】
仮に、リング形状の平面光導波路に対して、その溝部の中心に光強度の極大を示す対称的な光強度分布の光を入射した際、このリング形状の平面光導波路を伝搬する光の光強度分布を考察する。第1調整部41を設けていないリング形状の平面光導波路中を伝搬する光の光強度分布は、図2の(b)に示す、従来のモード分布34に相当するように、コア部32の中心より外周側に光強度分布の極大を有するものとなっている。一方、外周側に屈折率:n1の第1調整部41を傾斜角:θ1で設けているリング形状の平面光導波路では、コア部31側から第1調整部41側へと滲み出す光成分は抑制されている。従って、このリング形状の平面光導波路を伝搬する光の光強度分布の極大の位置は、図2の(b)に示す、従来のモード分布34と比較して、相対的に内側へのシフトしたものとなる。結果的に、外周側に屈折率:n1の第1調整部41を設けているリング形状の平面光導波路中を伝搬する光の光強度分布において、溝部の外周側の側壁面より外部に分布する光強度の総和は、従来のモード分布34において、溝部の外周側の側壁面より外部に分布する光強度の総和より低減される。換言すると、外周側に屈折率:n1の第1調整部41を傾斜角:θ1で設けることによって、リング形状の平面光導波路における、外周側の側壁面から、外周側の下クラッド部31への滲み出しに起因する放射損を抑制することが可能となる。
【0098】
また、外周側の側壁部に形成する第1調整部41は、溝部の中心より内周側で生じるコア部の実効的な屈折率の低下と、溝部の中心より外周側で生じるコア部の実効的な屈折率の増大に起因して、相対的に、溝部の中心より内周側と比較し、溝部の中心より外周側では実効的な屈折率が高くなる状態を相殺する機能を果たしている。従って、(ncore−n1)・W1は、2・{n・(W/2)/R0}・(W/2)と同程度となる。
【0099】
図5には、外周側に屈折率:n1の第1調整部41を傾斜角:θ1で設けているリング形状の平面光導波路中を伝搬する光の光強度分布の一例として、導波モードがシングルモードである場合、水平方向の光強度分布(モード分布)の中心(極大位置)が、溝部の中心位置と一致している態様を例示している。
【0100】
前記の構成に代えて、内周側に、コア部32の屈折率:ncoreより高い屈折率:n1の第2調整部42を傾斜角:θ2で設けているリング形状の平面光導波路の形態においても、水平方向の光強度分布(モード分布)の中心(極大位置)が、溝部の中心位置と一致している態様とすることが可能である。さらには、内周側に、コア部32の屈折率:ncoreより高い屈折率:n1の第2調整部42を、外周側に、コア部32の屈折率:ncoreより低い屈折率:n1の第1調整部41を設けているリング形状の平面光導波路の形態とすることも可能である。
【0101】
以上のように、導波モードがシングルモードである場合、光導波路構造1Bでは、リング形状の導波路中を伝搬する際、光の導波モードの中心(極大位置)を、従来のリング形状の導波路における導波モードの中心(極大位置)よりも、曲率中心側にシフトさせることができる。この利点を利用すると、リング形状の導波路中を伝搬する際、光の導波モードの外周側の裾中、溝部の外周側の側壁より外周部に染み出す部分の比率を相対的に抑えることが可能である。その際には、従来のリング形状の導波路のように、コア部32と下クラッド部31の比屈折率差を高くしないでも、一様曲げ損失を小さくすることができる。また、コア部32と下クラッド部31の比屈折率差:(ncore2−nclad12)/(2・ncore2)が同じ場合、従来のリング形状の導波路と同程度の一様曲げ損失の範囲で、リング形状の曲率半径(R0)をより小さくすることも可能である。
【0102】
図5に示すリング形状の平面光導波路は、導波路自体は閉じた光伝搬経路を構成している。この閉じた光伝搬経路の内部は、光を発生する機構は具わっていないため、伝搬させるべき光は、外部から供給する必要がある。閉じた光伝搬経路に対して、伝搬させるべき光を外部から注入する手段として、例えば、方向性結合器やマルチモード干渉計結合器を利用することができる。逆に、この閉じた光伝搬経路を伝搬している光を外部へ取り出す手段にも、同じく、方向性結合器やマルチモード干渉計結合器を利用することができる。
【0103】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施の形態にかかる平面光導波路について、図6を参照して説明する。図6は、第4の実施の形態にかかる平面光導波路の構造の一例である、光導波路構造1Cの構造を模式的に示す横断面図である。図6の横断面図に例示すように、第4の実施形態で利用される光導波路構造1Cは、直線導波路302と曲線導波路301が接続された導波路構造を有している。
【0104】
直線導波路302は、基板2上に形成される下クラッド部31、下クラッド部31の上面に形成される溝、溝部に形成されるコア部32、下クラッド部31とコア部32の上面を覆うように形成される上クラッド部33からなる。下クラッド部31の上面に形成される溝の断面は、溝の深さ:D、溝の幅:Wの矩形である。その際、この溝部の内部の構造は、図1に示すように、溝部の側壁にそれぞれ接するように形成される、第1調整部41と第2調整部42、ならびに、溝の中央部を埋め込むように形成されるコア部32とで構成され、第1調整部41の屈折率:n1S、第2調整部42の屈折率:n2Sならびにコア部32の屈折率:ncoreは、等しい値(n1S=ncore=n2S)とされている。勿論、直線導波路302では、コア部32の屈折率:ncoreは、上クラッド部33の屈折率nclad2、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも高く選択されている。
【0105】
一方、曲線導波路301は、図3に例示される断面構造を有している。すなわち、基板2上に形成される下クラッド部31、下クラッド部31の上面に形成される溝、溝部の片側に形成される第1調整部41、溝の中央部に形成されるコア部32、下クラッド部31とコア部32の上面を覆うように形成される上クラッド部33からなる。その際、溝部の片側に形成される第1調整部41は、曲線導波路301に利用される溝部の外周側に形成されている。
【0106】
曲線導波路301の下クラッド部31、下クラッド部31は、直線導波路302の下クラッド部31、下クラッド部31と、それぞれ一体に形成されている。また、曲線導波路301のコア部32は、直線導波路302のコア部32と一体に形成されている。従って、曲線導波路301でも、コア部32の屈折率:ncoreは、上クラッド部33の屈折率nclad2、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも高く選択されている。
【0107】
曲線導波路301において、溝部の外周側に形成される、第1調整部41は、コア部32とは特性の異なる材料で形成されている。具体的には、コア部32の屈折率:ncoreよりも、溝部の外周側に形成されている第1調整部41の屈折率:n1が低くなるように材料を選択する。その際、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも、第1調整部41の屈折率:n1が高くなるように材料を選択する。従って、下クラッド部31の屈折率nclad1、コア部32の屈折率:ncore、第1調整部41の屈折率:n1は、ncore>n1>nclad1の関係を満たす。
【0108】
曲線導波路301において、溝部の中心が通る軌跡は、曲率(半径):R0の円弧形状である。その際、円弧形状の溝の断面は、溝の深さ:D、溝の幅:Wの矩形である。「オフセット」を設けることなく連結される、曲線導波路301と直線導波路302との接続部では、円弧形状の溝部の側壁面と、直線状の溝部の側壁面と段差なく繋がっている。
【0109】
その外周側に形成される第1調整部41は、溝部の外周側の側壁面と、溝部の底面の一部と接している。第1調整部41とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ1は、一定の角度に設定されている。第1調整部41が、溝部の底面と接する幅をW1とすると、前記傾斜角:θ1は、tanθ1=D/W1を満たしている。
【0110】
直線導波路302の領域では、矩形の溝部内は、全て、コア部32の屈折率:ncoreとなっており、その両側壁面で、屈折率nclad1の下クラッド部31と接する構造となっている。従って、直線導波路302の領域では、水平方向の屈折率分布は、矩形の溝部の中心に対して、左右対称となっている。そのため、導波モードがシングルモードである場合、図6中に例示するように、光が直線導波路302を伝搬していく過程で、その水平方向の光強度分布(モード分布)は、矩形の溝部の中心に光強度の極大を示す、左右対称の分布を示す。
【0111】
一方、円弧形状の平面光導波路で構成される、曲線導波路301の領域に対して、直線導波路302から、その溝部の中心に光強度の極大を示す対称的な光強度分布の光を入射した際、この円弧形状の平面光導波路を伝搬する光の光強度分布を考察する。
【0112】
円弧形状の溝の内周側の側壁面では、屈折率:ncoreのコア部32と屈折率nclad1の下クラッド部31が接しており、この内周側の側壁面における臨界角θCinは、sinθCin=(nclad1/ncore)を満たす。溝の外周側の側壁面では、屈折率:n1の第1調整部41が屈折率nclad1の下クラッド部31が接しており、この外周側の側壁面における臨界角θCoutは、sinθCout=(nclad1/n1)を満たす。また、屈折率:ncoreのコア部32と屈折率:n1の第1調整部41との界面における臨界角θC1は、sinθC1=(n1/ncore)を満たす。従って、θCout>θC1>θCinとなっている。
【0113】
第1調整部41を設けていない円弧形状の平面光導波路における、外周側の側壁面から、外周側の下クラッド部31への滲み出す成分は、外周側の側壁面に対して、入射角θi≦θCinでコア部31側から入射する光成分に相当する。一方、屈折率:n1の第1調整部41を設けている円弧形状の平面光導波路における、外周側の側壁面から、外周側の下クラッド部31への滲み出す成分は、コア部31側から第1調整部41側へと滲み出す光成分のうち、外周側の側壁面に対して、入射角θi≦θCoutで第1調整部41側から入射する光成分に相当する。コア部31側から第1調整部41側へと滲み出す光成分は、コア部31と第1調整部41の界面に対して、入射角θi≦θC1でコア部31側から入射する光成分に相当する。
【0114】
次に、第4の実施形態にかかる平面光導波路を曲線導波路として利用する一態様について、光導波路構造1Cの屈折率構造ならびにその動作原理に関して、図6を参照して説明する。図6に例示する、光導波路構造1Bの屈折率構造は、曲線導波路の曲率中心が、第1調整部41を設ける側壁と反対側に位置し、ncore>n1>nclad1の関係を満たす態様である。その際、曲線導波路を構成する際、溝部の中心が描く軌跡は、曲率半径:R0の円弧の形状とする。従って、溝部の内周側の側壁面は、曲率半径:R0−(1/2・W)の円弧の形状となり、外周側の側壁面は、曲率半径:R0+(1/2・W)の円弧の形状となる。
【0115】
曲率半径:R0に対して、溝部の幅:Wが十分に小さい条件、W/R0≪1が満たされる範囲では、この溝部を含む微小な領域の実効的な屈折率分布は、下記のように近似的に表記される。
内周側の側壁面:r=R0−(1/2・W)において、
下クラッド部31では、nclad1-eff=nclad1・{R0−(1/2・W)}/R0
コア部32では、ncore-eff=ncore・{R0−(1/2・W)}/R0
外周側の側壁面からW1の位置:r=R0+(1/2・W)−W1において、
コア部32では、ncore-eff=ncore・{R0+(1/2・W)−W1}/R0
外周側の側壁面:r=R0+(1/2・W)において、
下クラッド部31では、nclad1-eff=nclad1・{R0+(1/2・W)}/R0
第1調整部41では、n1-eff=n1・{R0+(1/2・W)}/R0
溝部において、その深さ方向に屈折率分布が存在している、外周側の領域:R0+(1/2・W)−W1<r<R0+(1/2・W)では、各位置rにおいて、実効的な屈折率neff(r)は、ncore・{R0+(1/2・W)−W1}/R0>neff(r)>n1・{R0+(1/2・W)}/R0という連続的な変化を示す。
【0116】
従って、光導波路構造1Cにおいて、前記の実効的な屈折率分布を採用すると、曲線導波路301では、下クラッド部31では、内周側よりも外周側の実効的屈折率が高くなっているが、溝部の内部では、相対的に外周側よりも内周側の実効的屈折率が高くなる状況を達成することが可能である。その際には、導波モードがシングルモードである場合、伝搬する光の電磁界強度分布(光強度分布)の中心(極大)は、溝部の中心から外周側にシフトする形状ではなく、溝部の中心(R0)に位置する状態とすることができる。
【0117】
仮に、第1調整部41を設けていない平面光導波路構造を採用すると、導波モードがシングルモードである場合、この円弧形状の平面光導波路中を伝搬する光の光強度分布は、図2の(b)に示す、従来のモード分布34に相当するように、コア部32の中心より外周側に光強度分布の中心(極大)を有するものとなっている。一方、外周側に屈折率:n1の第1調整部41を傾斜角:θ1で設けているリング形状の平面光導波路では、コア部31側から第1調整部41側へと滲み出す光成分は抑制されている。従って、導波モードがシングルモードである場合、この円弧形状の平面光導波路を伝搬する光の光強度分布の中心(極大)の位置は、図2の(b)に示す、従来のモード分布34と比較して、相対的に内周側へシフトしたものとなる。
【0118】
また、外周側の側壁部に形成する第1調整部41は、溝部の中心より内周側で生じるコア部の実効的な屈折率の低下と、溝部の中心より外周側で生じるコア部の実効的な屈折率の増大に起因して、相対的に、溝部の中心より内周側と比較し、溝部の中心より外周側では実効的な屈折率が高くなる状態を相殺する機能を果たしている。従って、(ncore−n1)・W1は、2・{n・(W/2)/R0}・(W/2)と同程度となる。
【0119】
図6には、導波モードがシングルモードである場合、外周側に屈折率:n1の第1調整部41を設けている円弧形状の平面光導波路で構成される曲線導波路301中を伝搬する光の光強度分布の一例として、水平方向の光強度分布(モード分布)の中心(極大位置)が、溝部の中心位置と一致している態様を例示している。この態様では、直線導波路302を伝搬してきた光の水平方向の光強度分布と、曲線導波路301中を伝搬する光の水平方向の光強度分布は、共に、その中心(極大位置)は、溝部の中心位置と一致する。すなわち、直線導波路と曲線導波路との結合部に「オフセット」を設け、直線導波路を伝搬してきた光の水平方向の光強度分布の中心(極大位置)と、曲線導波路中を伝搬する光の水平方向の光強度分布の中心(極大位置)を一致させる場合と同様に、図6に示す態様でも、直線導波路と曲線導波路との結合部での放射損(モード変換損)を低減することができる。
【0120】
図6に例示する態様では、曲線導波路301の断面構造は、溝部の外周側に、コア部32の屈折率ncoreよりも低い屈折率:n1の第1調整部41を設ける構成を利用している。それに代えて、曲線導波路301の断面構造として、溝部の外周側に、コア部32の屈折率ncoreよりも低い屈折率:n1の第1調整部41を、溝部の内周側に、コア部32の屈折率ncoreよりも高い屈折率:n2の第2調整部42を設ける構成を採用することもできる。あるいは、曲線導波路301の断面構造として、溝部の内周側に、コア部32の屈折率ncoreよりも高い屈折率:n1の第1調整部41を設ける構成を採用することもできる。
【0121】
以上のように、光導波路構造1Cでは、曲線導波路と直線導波路のモード分布の中心軸を一致させることができるので、「オフセット」補正をせずに直線導波路と曲線導波路を接続する形態とする際、モード変換損を抑えることができる。
【0122】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施の形態にかかる平面光導波路について、図7を参照して説明する。図7は、第5の実施の形態にかかる平面光導波路の構造の一例である、光導波路構造1Dの構造を模式的に示す横断面図である。図7の横断面図に例示すように、第5の実施形態で利用される光導波路構造1Dは、直線導波路302、直線導波路303、直線導波路304が接続された導波路構造を有している。
【0123】
直線導波路302は、基板2上に形成される下クラッド部31、下クラッド部31の上面に形成される溝、溝部に形成されるコア部32、下クラッド部31とコア部32の上面を覆うように形成される上クラッド部33からなる。下クラッド部31の上面に形成される溝の断面は、溝の深さ:D、溝の幅:Wの矩形である。この矩形の溝部は、コア部32で占められている。その際、直線導波路302では、コア部32の屈折率:ncoreは、上クラッド部33の屈折率nclad2、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも高く選択されている。
【0124】
従って、直線導波路302の領域では、水平方向の屈折率分布は、矩形の溝部の中心に対して、左右対称となっている。そのため、図7中に例示するように、光が直線導波路302を伝搬していく過程で、その水平方向の光強度分布(モード分布)は、矩形の溝部の中心に光強度の極大を示す、左右対称の分布を示す。
【0125】
直線導波路302領域では、溝部の側壁面では、屈折率:ncoreのコア部32と屈折率nclad1の下クラッド部31が接しており、この側壁面における臨界角θCS1は、sinθCS1=(nclad1/ncore)を満たす。従って、側壁面に対して、コア部32側から入射角θi<θCS1で入射する光は、溝部の側壁面を通過し、下クラッド部31へと散逸していく。結果的に、光が直線導波路302を伝搬していく過程で、側壁面に対して、コア部32側から入射角θi≧θCS1で入射する光の成分が、コア部32に閉じ込められる。
【0126】
次の直線導波路303でも、下クラッド部31の上面に形成される溝の断面は、溝の深さ:D、溝の幅:Wの矩形である。この溝部の内部の構造は、図1に示すように、溝部の側壁にそれぞれ接するように形成される、第1調整部41と第2調整部42、ならびに、溝の中央部を埋め込むように形成されるコア部32とで構成されている。
【0127】
直線導波路303において、溝部の側壁側に形成される、第1調整部41と第2調整部42は、共に、コア部32とは特性の異なる材料で形成されている。具体的には、コア部32の屈折率:ncoreよりも、溝部の片側に形成されている第1調整部41の屈折率:n1A、第2調整部42の屈折率:n2Aが、共に低くなるように材料を選択する。その際、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも、第1調整部41の屈折率:n1A、第2調整部42の屈折率:n2Aが、共に高くなるように材料を選択する。従って、下クラッド部31の屈折率nclad1、コア部32の屈折率:ncore、第1調整部41の屈折率:n1Aならびに第2調整部42の屈折率:n2Aは、それぞれ、ncore>n1A>nclad1、ncore>n2A>nclad1の関係を満たす。
【0128】
その溝部の片側に形成される第1調整部41は、溝部の側壁面と、溝部の底面の一部と接している。第1調整部41とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ1Aは、一定の角度に設定されている。第1調整部41が、溝部の底面と接する幅をW1Aとすると、前記傾斜角:θ1Aは、tanθ1A=D/W1Aを満たしている。また、溝部の他の片側に形成される第2調整部42は、溝部の側壁面と、溝部の底面の一部と接している。第2調整部42とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ2Aは、一定の角度に設定されている。第2調整部42が、溝部の底面と接する幅をW2Aとすると、前記傾斜角:θ2Aは、tanθ2A=D/W2Aを満たしている。
【0129】
直線導波路303の領域においても、水平方向の屈折率分布は、矩形の溝部の中心に対して、左右対称としている。具体的には、第1調整部41の屈折率:n1Aと第2調整部42の屈折率:n2Aを等しくし、その傾斜角:θ1Aとθ2Aを等しくしている。そのため、導波モードがシングルモードである場合、図7中に例示するように、光が直線導波路303を伝搬していく過程で、その水平方向の光強度分布(モード分布)は、矩形の溝部の中心に光強度の極大を示す、左右対称の分布を示す。
【0130】
直線導波路303領域では、溝部の側壁面では、屈折率:n1Aの第1調整部41、あるいは、屈折率:n2Aの第2調整部42と屈折率nclad1の下クラッド部31が接しており、この側壁面における臨界角:θCSA1、θCSA2は、sinθCSA1=(nclad1/n1A)、sinθCSA2=(nclad1/n2A)を満たす。n1A=n2Aであるので、側壁面における臨界角は、θCSA1=θCSA2となっている。従って、側壁面に対して、第1調整部41(または第2調整部42)から入射角θi<θCSA1(またはθi<θCSA2)で入射する光は、溝部の側壁面を通過し、下クラッド部31へと散逸していく。
【0131】
さらに、直線導波路304でも、下クラッド部31の上面に形成される溝の断面は、溝の深さ:D、溝の幅:Wの矩形である。この溝部の内部の構造は、図1に示すように、溝部の側壁にそれぞれ接するように形成される、第1調整部41と第2調整部42、ならびに、溝の中央部を埋め込むように形成されるコア部32とで構成されている。
【0132】
直線導波路304でも、溝部の側壁側に形成される、第1調整部41と第2調整部42は、共に、コア部32とは特性の異なる材料で形成されている。具体的には、コア部32の屈折率:ncoreよりも、溝部の片側に形成されている第1調整部41の屈折率:n1BA、第2調整部42の屈折率:n2Bが、共に低くなるように材料を選択する。その際、下クラッド部31の屈折率nclad1よりも、第1調整部41の屈折率:n1B、第2調整部42の屈折率:n2Bが、共に高くなるように材料を選択する。従って、下クラッド部31の屈折率nclad1、コア部32の屈折率:ncore、第1調整部41の屈折率:n1Bならびに第2調整部42の屈折率:n2Bは、それぞれ、ncore>n1B>nclad1、ncore>n2B>nclad1の関係を満たす。
【0133】
その溝部の片側に形成される第1調整部41は、溝部の側壁面と、溝部の底面の一部と接している。第1調整部41とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ1Bは、一定の角度に設定されている。第1調整部41が、溝部の底面と接する幅をW1Bとすると、前記傾斜角:θ1Bは、tanθ1B=D/W1Bを満たしている。また、溝部の他の片側に形成される第2調整部42は、溝部の側壁面と、溝部の底面の一部と接している。第2調整部42とコア部32とが接する界面は、溝部の底面に対して傾斜しており、その傾斜角:θ2Bは、一定の角度に設定されている。第2調整部42が、溝部の底面と接する幅をW2Bとすると、前記傾斜角:θ2Bは、tanθ2B=D/W2Bを満たしている。
【0134】
直線導波路304の領域においても、水平方向の屈折率分布は、矩形の溝部の中心に対して、左右対称としている。具体的には、第1調整部41の屈折率:n1Bと第2調整部42の屈折率:n2Bを等しくし、その傾斜角:θ1Bとθ2Bを等しくしている。そのため、導波モードがシングルモードである場合、図7中に例示するように、光が直線導波路304を伝搬していく過程で、その水平方向の光強度分布(モード分布)は、矩形の溝部の中心に光強度の極大を示す、左右対称の分布を示す。
【0135】
その際、直線導波路304の領域における、第1調整部41の屈折率:n1Bと第2調整部42の屈折率:n2Bは、直線導波路303の領域における、第1調整部41の屈折率:n1Aと第2調整部42の屈折率:n2Aと等しくしている。一方、直線導波路304の領域における、傾斜角:θ1Bとθ2Bは、直線導波路303の領域における、傾斜角:θ1Aとθ2Aよりも小さくしている。
【0136】
直線導波路304の領域では、溝部の側壁面では、屈折率:n1Bの第1調整部41、あるいは、屈折率:n2Bの第2調整部42と屈折率nclad1の下クラッド部31が接しており、この側壁面における臨界角:θCSB1、θCSB2は、sinθCSB1=(nclad1/n1B)、sinθCSB2=(nclad1/n2B)を満たす。n1B=n2B=n1A=n2Aであるので、側壁面における臨界角は、θCSB1=θCSB2=θCSA1=θCSA2となっている。従って、側壁面に対して、第1調整部41(または第2調整部42)から入射角θi<θCSB1(またはθi<θCSB2)で入射する光は、溝部の側壁面を通過し、下クラッド部31へと散逸していく。
【0137】
導波モードがシングルモードである場合、図7中に例示するように、光が直線導波路302を伝搬していく過程では、その水平方向の光強度分布(モード分布)は、矩形の溝部の中心に光強度の極大を示し、両側の側壁面の外部に存在する光成分は少ない、相対的に鋭いピーク形状を示す。次段の直線導波路303を伝搬していく過程でも、水平方向の光強度分布(モード分布)は、左右対称の分布を示すが、両側の側壁面の外部に存在する光成分の比率が増し、相対的にピーク形状の拡がりを示す。さらに、直線導波路304を伝搬していく過程でも、水平方向の光強度分布(モード分布)は、左右対称の分布ではあるが、両側の側壁面の外部に存在する光成分の比率が一層増し、光強度の極大値の低下も顕著に進む。結果的に、相対的なピーク形状は、大幅に拡がった状態となる。光強度の極大値に対して、その1/2の強度となる幅(半値全幅)をスポットサイズの指標とすると、光が、直線導波路302、直線導波路303、直線導波路304と順次伝搬していく過程において、スポットサイズは、徐々に拡大している。
【0138】
図7に例示する態様では、直線導波路302、直線導波路303、直線導波路304における、溝部における実効的な屈折率の分布は、下記のようになる。まず、直線導波路302の領域では、溝部における屈折率は、溝部の両側壁の間で、コア部32の屈折率:ncoreで一定である。
【0139】
直線導波路303の領域では、第1調整部41が形成されている側壁面からW1Aの幅では、側壁面の第1調整部41の屈折率:n1Aから、W1Aの幅で直線的にコア部32の屈折率:ncoreまで実効的屈折率は増加する。同様に、第2調整部42が形成されている側壁面からW2Aの幅では、側壁面の第2調整部42の屈折率:n2Aから、W2Aの幅で直線的にコア部32の屈折率:ncoreまで実効的屈折率は増加する。溝の中央部、(W−W1A−W2A)の幅の部分は、コア部32の屈折率:ncoreとなっている。
【0140】
直線導波路304の領域では、第1調整部41が形成されている側壁面からW1Bの幅では、側壁面の第1調整部41の屈折率:n1Bから、W1Bの幅で直線的にコア部32の屈折率:ncoreまで実効的屈折率は増加する。同様に、第2調整部42が形成されている側壁面からW2Bの幅では、側壁面の第2調整部42の屈折率:n2Bから、W2Bの幅で直線的にコア部32の屈折率:ncoreまで実効的屈折率は増加する。溝の中央部、(W−W1B−W2B)の幅の部分は、コア部32の屈折率:ncoreとなっている。
【0141】
前記の態様に代えて、直線導波路304での、第1調整部41の幅W1Bと第2調整部42の幅W2Bを、直線導波路303での、第1調整部41の幅W1Aと第2調整部42の幅W2Aと等しくし、直線導波路304における第1調整部41、第2調整部42の屈折率:n1B、n2Bを、直線導波路303における第1調整部41、第2調整部42の屈折率:n1A、n2Aよりも低くする構成とすることも可能である。この態様でも、光強度の極大値に対して、その1/2の強度となる幅(半値全幅)をスポットサイズの指標とすると、光が、直線導波路302、直線導波路303、直線導波路304と順次伝搬していく過程において、スポットサイズは、徐々に拡大していく。
【0142】
さらには、第1調整部41の幅と第2調整部42の幅、ならびに、第1調整部41、第2調整部42の屈折率を、前記の指針に沿って、同時に変化させる態様としても、光が、直線導波路302、直線導波路303、直線導波路304と順次伝搬していく過程において、スポットサイズは、徐々に拡大していく。
【0143】
以上のように、溝部自体の幅Wは変化させずに、その溝部の両側壁に同じ屈折率の第1調整部と第2調整部とを同じ幅;W1=W2で設ける直線導波路を接続することによって、スポットサイズ変換器を形成することができる。その際、変換されるスポットサイズの調整は、溝部の両側壁に設ける第1調整部と第2調整部の幅:W1、W2の調節により行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明にかかる光導波路は、地域内ネットワーク、都市間ネットワーク等に代表される光通信、ならびにサーバ・ルータ等に適用される光インターコネクションに使用される光集積回路を作製する際、例えば、複数の光信号の分波/合波、送信・受信操作などの光信号処理の過程における、光伝搬経路として機能する、曲線導波路領域を含む平面光導波路として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる光導波路の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる光導波路の屈折率構造と、曲線導波路における光強度分布を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる光導波路の製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかる光導波路の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態にかかる光導波路の構造の一例を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態にかかる光導波路の構造の一例を模式的に示す図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態による光導波路の構造の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0146】
1、1A、1B、1C、1D 光導波路構造
2 基板
3 光導波路
301 曲線導波路
302、303、304 直線導波路
31、51 下クラッド部
32、52 コア部
33、53 上クラッド部
34 従来構造の光導波路における曲線導波路のモード分布
35 本発明にかかる光導波路における曲線導波路のモード分布
41 第1調整部
42 第2調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されている、屈折率nclad1の下クラッド部と、屈折率ncoreのコア部と、屈折率nclad2の上クラッド部とを具えてなる光導波路であって、
該光導波路は、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を具える平面光導波路であり、
前記断面が矩形形状の溝領域の下面、左側面、右側面は、下クラッド部と接する界面を構成しており、
該光導波路内を伝搬する真空中の波長λ0の光に対して、下クラッド部の屈折率nclad1、コア部の屈折率ncore、上クラッド部の屈折率nclad2は、ncore>nclad1、かつ、ncore>nclad2の関係を満たすように選択されており、
前記コア部の断面形状は、
コア部の上面は、上クラッド部と接して、平坦な界面を形成し、
コア部の下面は、少なくとも、前記溝領域内において、下クラッド部と接して、平坦な界面を形成しており、
前記溝領域の左側面、右側面の一方は、
下クラッド部と、屈折率n1の第1調整部とが接する界面で構成されており、
前記溝領域の下面内において、前記第1調整部は下クラッド部と接して、幅W1の平坦な界面を形成しており、
前記溝領域内において、前記第1調整部は、コア部と接して界面を形成しており、
該第1調整部とコア部とが接する界面は、前記溝領域の下面に対して、傾斜角θ1で交差しており、該傾斜角θ1は、θ1<90°に選択されており、
前記第1調整部の断面形状は、前記溝領域の一方側面において、下クラッド部と該第1調整部とが接する界面、該第1調整部とコア部とが接する界面、ならびに、前記溝領域の下面内において、該第1調整部と下クラッド部と接する界面により形成されており、
前記溝領域の左側面、右側面の残る一方は、
下クラッド部と、屈折率n2の第2調整部とが接する界面で構成されており、
前記溝領域の下面内において、前記第2調整部は下クラッド部と接して、幅W2の平坦な界面を形成しており、
前記溝領域内において、前記第2調整部は、コア部と接して界面を形成しており、
該第2調整部とコア部とが接する界面は、前記溝領域の下面に対して、傾斜角θ2で交差しており、該傾斜角θ2は、θ2<90°に選択されており、
前記第2調整部の断面形状は、前記溝領域の他方の側面において、下クラッド部または上クラッド部のいずれかと該第2調整部とが接する界面、該第2調整部とコア部とが接する界面、ならびに、前記溝領域の下面内において、該第2調整部と下クラッド部と接する界面により形成されている
ことを特徴とする光導波路。
【請求項2】
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1≠ncoreの関係を満たしており、
第2調整部の屈折率n2は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n2>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n2≠ncoreの関係を満たしている
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1≠ncoreの関係を満たしており、
第2調整部の屈折率n2は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n2>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n2=ncoreの関係を満たしている
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
【請求項4】
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1=ncoreの関係を満たしており、
第2調整部の屈折率n2は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n2>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n2≠ncoreの関係を満たしている
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
【請求項5】
第1調整部の屈折率n1と、第2調整部の屈折率n2は、
少なくとも、n1≠n2の関係を満たしている
ことを特徴とする請求項2に記載の光導波路。
【請求項6】
前記平面光導波路は、曲線導波路であり、
該曲線導波路において、
前記溝領域の外周側の側面に、屈折率n1の第1調整部を、
前記溝領域の内周側の側面に、屈折率n2の第2調整部を配置し、
第1調整部の屈折率n1と、第2調整部の屈折率n2を、
コア部の屈折率ncoreに対して、n2>ncore>n1の関係を満たすように選択している
ことを特徴とする請求項5に記載の光導波路。
【請求項7】
基板と、前記基板上に形成されている、屈折率nclad1の下クラッド部と、屈折率ncoreのコア部と、屈折率nclad2の上クラッド部とを具えてなる光導波路であって、
該光導波路は、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を具える平面光導波路であり、
前記断面が矩形形状の溝領域の下面、左側面、右側面は、下クラッド部と接する界面を構成しており、
該光導波路内を伝搬する真空中の波長λ0の光に対して、下クラッド部の屈折率nclad1、コア部の屈折率ncore、上クラッド部の屈折率nclad2は、ncore>nclad1、かつ、ncore>nclad2の関係を満たすように選択されており、
前記コア部の断面形状は、
コア部の上面は、上クラッド部と接して、平坦な界面を形成し、
コア部の下面は、少なくとも、前記断面が矩形形状の領域内において、下クラッド部と接して、平坦な界面を形成しており、
前記溝領域の左側面、右側面の一方は、
下クラッド部と、屈折率n1の第1調整部とが接する界面で構成されており、
前記溝領域の下面内において、前記第1調整部は下クラッド部と接して、幅W1の平坦な界面を形成しており、
前記溝領域内において、前記第1調整部は、コア部と接して界面を形成しており、
該第1調整部とコア部とが接する界面は、前記溝領域の下面に対して、傾斜角θ1で交差しており、該傾斜角θ1は、θ1<90°に選択されており、
前記第1調整部の断面形状は、前記溝領域の一方の側面において、下クラッド部と該第1調整部とが接する界面、該第1調整部とコア部とが接する界面、ならびに、前記溝領域の下面内において、該第1調整部と下クラッド部と接する界面により形成されており、
前記溝領域の左側面、右側面の残る一方は、
下クラッド部と、コア部とが接する界面で構成されている
ことを特徴とする光導波路。
【請求項8】
第1調整部の屈折率n1は、
少なくとも、下クラッド部の屈折率nclad1に対して、n1>nclad1の関係を満たし、
コア部の屈折率ncoreに対して、n1≠ncoreの関係を満たしている
ことを特徴とする請求項7に記載の光導波路。
【請求項9】
前記平面光導波路は、曲線導波路であり、
該曲線導波路において、
前記溝領域の外周側の側面に、屈折率n1の第1調整部を配置し、
第1調整部の屈折率n1を、
コア部の屈折率ncoreに対して、ncore>n1の関係を満たすように選択している
ことを特徴とする請求項8に記載の光導波路。
【請求項10】
前記平面光導波路は、曲線導波路であり、
該曲線導波路において、
前記溝領域の内周側の側面に、屈折率n1の第1調整部を配置し、
第1調整部の屈折率n1を、
コア部の屈折率ncoreに対して、ncore<n1の関係を満たすように選択している
ことを特徴とする請求項8に記載の光導波路。
【請求項11】
請求項1に記載する光導波路を製造する方法であって、
基板上に屈折率nclad1の下クラッド部を成膜する工程;
下クラッド部の上面に、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を形成する加工を施す工程;
第1調整部、右側面の一方に、該側面と、該側面から幅W1で前記溝領域の下面を被覆ように、前記溝領域の側面に第1調整材を選択的に成膜し、屈折率n1の第1調整部を形成する工程;
溝領域の左側面、右側面の残る一方に、該側面と、該側面から幅W2で前記溝領域の下面を被覆ように、前記溝領域の側面に第2調整材を選択的に成膜し、屈折率n2の第2調整部を形成する工程;
前記溝領域内において、第1調整部の成膜表面、第2調整部の成膜表面、ならびに、溝領域の下面を被覆し、溝領域内を埋め込むように、屈折率ncoreのコア部を成膜し、コア部と第1調整部とが接する界面、コア部と第2調整部とが接する界面を形成する工程;
コア部の上面、ならびに、下クラッド部の上面を被覆するように、屈折率nclad2の上クラッド部を成膜する工程を具えている
ことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項12】
請求項7に記載する光導波路を製造する方法であって、
基板上に屈折率nclad1の下クラッド部を成膜する工程;
下クラッド部の上面に、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を形成する加工を施す工程;
第1調整部、右側面の一方に、該側面と、該側面から幅W1で前記溝領域の下面を被覆ように、前記溝領域の側面に第1調整材を選択的に成膜し、屈折率n1の第1調整部を形成する工程;
前記溝領域内において、溝領域の左側面、右側面の残る一方、第1調整部の成膜表面、ならびに、溝領域の下面を被覆し、溝領域内を埋め込むように、屈折率ncoreのコア部を成膜し、コア部と第1調整部とが接する界面を形成する工程;
コア部の上面、ならびに、下クラッド部の上面を被覆するように、屈折率nclad2の上クラッド部を成膜する工程を具えている
ことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項13】
直線導波路部分と曲線導波路部分とが接続されてなる光導波路であって、
前記直線導波路部分は、
基板と、前記基板上に形成されている、屈折率nclad1の下クラッド部と、屈折率ncoreのコア部と、屈折率nclad2の上クラッド部とを具え、
光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域を具える平面光導波路であり、
前記断面が矩形形状の溝領域の下面、左側面、右側面は、下クラッド部と接する界面を構成しており、
該光導波路内を伝搬する真空中の波長λ0の光に対して、下クラッド部の屈折率nclad1、コア部の屈折率ncore、上クラッド部の屈折率nclad2は、ncore>nclad1、かつ、ncore>nclad2の関係を満たすように選択されており、
前記コア部の断面形状は、
コア部の上面は、上クラッド部と接して、平坦な界面を形成し、
コア部の下面は、少なくとも、前記溝領域内において、下クラッド部と接して、平坦な界面を形成しており、
前記溝領域の左側面、右側面は、ともに、
下クラッド部と、コア部とが接する界面で構成されており;
前記曲線導波路部分は、請求項6、9、10のいずれか一項に記載の光導波路であり;
前記直線導波路部分と曲線導波路部分との接続は、
該直線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域と、該曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域とを、両者の下面、左側面、右側面を一致する形態で接続している
ことを特徴とする光導波路。
【請求項14】
曲率が互いに相違する二つの曲線導波路部分が接続されてなる光導波路であって、
前記曲率が互いに相違する二つの曲線導波路部分は、それぞれ、請求項6、9、10のいずれか一項に記載の光導波路であり;
二つの曲線導波路部分相互の接続は、
一方の曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域と、他方の曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域とを、両者の下面、左側面、右側面を一致する形態で接続している
ことを特徴とする光導波路。
【請求項15】
曲りの方向が互いに相違する二つの曲線導波路部分が接続されてなる光導波路であって、
前記曲りの方向が互いに相違する二つの曲線導波路部分は、それぞれ、請求項6、9、10のいずれか一項に記載の光導波路であり;
二つの曲線導波路部分相互の接続は、
一方の曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域と、他方の曲線導波路部分において、光の伝搬経路を構成する、断面が幅W、深さDの矩形形状の溝領域とを、両者の下面、左側面、右側面を一致する形態で接続している
ことを特徴とする光導波路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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