光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システム
【課題】安定した検出値を得る光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、光導波部と、面状部と、側部と、センシング材料層と、を含むカートリッジを備えた光導波路センサが提供される。前記光導波部は、光を導く。前記面状部は、前記光導波部と離間して対向する。前記側部は、前記光導波部と前記面状部とに接し、前記光導波部及び前記面状部と共に密閉された空間を形成する。前記センシング材料層は、前記空間の中において、前記光導波部に接しつつ前記面状部と離間し、検体液との接触により光学特性が変化する。
【解決手段】実施形態によれば、光導波部と、面状部と、側部と、センシング材料層と、を含むカートリッジを備えた光導波路センサが提供される。前記光導波部は、光を導く。前記面状部は、前記光導波部と離間して対向する。前記側部は、前記光導波部と前記面状部とに接し、前記光導波部及び前記面状部と共に密閉された空間を形成する。前記センシング材料層は、前記空間の中において、前記光導波部に接しつつ前記面状部と離間し、検体液との接触により光学特性が変化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
小型で高感度なバイオケミカルセンサとして、光導波路型のセンサがある。光導波路型センサにより、例えば、糖尿病治療の際に重要な指標となるグルコースを検出することができる。このような光導波路型のセンサにおいて、低濃度の検体においても安定した検出値を得ることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−96454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、安定した検出値を得る光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、光導波部と、面状部と、側部と、センシング材料層と、を含むカートリッジを備えた光導波路センサが提供される。前記光導波部は、光を導く。前記面状部は、前記光導波部と離間して対向する。前記側部は、前記光導波部と前記面状部とに接し、前記光導波部及び前記面状部と共に密閉された空間を形成する。前記センシング材料層は、前記空間の中において、前記光導波部に接しつつ前記面状部と離間し、検体液との接触により光学特性が変化する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの構成及び動作を例示する模式図である。
【図3】光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図5】光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図7】第1の実施形態に係る光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの使用状態を例示する模式的断面図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成及び使用状態を例示する模式的断面図である。
【図10】第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
【図12】第2の実施形態に係る光導波路センサ計測システムの構成を例示する模式的断面図である。
【図13】第3の実施形態に係る光導波路センサの製造方法を例示するフローチャート図ある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施形態に係る光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。 図1に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ110は、カートリッジ110cを備える。カートリッジ110cは、光導波部20と、面状部50と、側部40と、センシング材料層30と、を含む。
【0009】
光導波部20は、光を導く。光導波部20は、主面20aを有する。光導波部20には、例えば、樹脂層が用いられる。この樹脂層は、光導波部20が導く光に対して透過性である。
【0010】
面状部50は、光導波部20と離間して光導波部20と対向する。
【0011】
側部40は、光導波部20と面状部50とに接する。側部40は、光導波部20及び面状部50と共に密閉された空間30aを形成する。
【0012】
センシング材料層30は、この空間30aの中において、光導波部20に接しつつ面状部50と離間する。センシング材料層30の光学特性は、検体液との接触により変化する。
【0013】
検体液は、光導波路センサ110が検出する検体を含む液である。検体は、例えばグルコースである。センシング材料層30が検体液と接触することにより、センシング材料層30の、光に対する吸収特性、散乱特性、反射特性、偏光特性及び旋光特性の少なくともいずれかを含む光学特性が変化する。例えば、センシング材料層30には、検体としてグルコースを含む検体液との接触により、光の吸収特性が変化する層が用いられる。センシング材料層30における光学特性の変化は、センシング材料層30と検体との接触により発現する、物理的変化、化学的変化及び生物学的変化の少なくともいずれかに基づいている。
【0014】
側部40は、センシング材料層30の側面を取り囲んでいる。側部40の厚さは、センシング材料層30の厚さよりも厚い。側部40は、例えば、光導波部20の主面20aの上において、センシング材料層30の周囲に設けられる。
【0015】
この例では、側部40は、周囲壁部41と、周縁部42と、を含む。周囲壁部41は、光導波部20の主面20aにおいて、センシング材料層30の周囲に設けられる。例えば、光導波部20の主面20a上に、枠状の周囲壁部41が設けられ、周囲壁部41の枠の内部にセンシング材料層30が設けられる。周囲壁部41には、例えば、樹脂が用いられる。周囲壁部41は、センシング材料層30の側面を保護する機能を有しても良い。
【0016】
この例では、周縁部42の一部は、周囲壁部41の上に設けられている。この例では、周縁部42は、光導波部20の側面を覆っている。例えば、周縁部42は、カートリッジ110cのケース部の一部である。この例では、カートリッジ110cのケース部は、蓋部43をさらに含む。この例では、蓋部43は、周縁部42と連続的である。すなわち、ケース部のうちで、センシング材料層30に対向する部分が蓋部43であり、蓋部43の周囲に設けられ、光導波部20と接続される部分が周縁部42に相当する。
【0017】
この例では、ケース部に2つの孔(例えば検体液導入口45及び排出口46)が設けられている。後述するように、例えば、検体液導入口45から、検体液が空間30aに導入され、検体液はセンシング材料層30と接触する。なお、少なくとも周囲壁部41と周縁部42とが、側部40に含まれる。
【0018】
面状部50は、側部40に保持される。面状部50は、センシング材料層30と離間しつつセンシング材料層30が設けられている空間30aを封止している。面状部50には、例えば樹脂シート(樹脂フィルム)などが用いられる。
【0019】
この例では、面状部50は、シート部51と、固定層52と、を有している。シート部51には、例えば、樹脂のシートまたは樹脂のフィルムなどが用いられる。固定層52は、少なくともシート部51と側部40との間に設けられる。固定層52は、シート部51を側部40に固定する。固定層52には、例えば粘着層または接着層などが用いられる。固定層52により、シート部51が、側部40に固定されている。ただし、固定層52は必要に応じて設けられ、固定層52は場合によっては省略できる。例えば、熱圧着により、面状部50(シート部)が側部40に固定される場合などは、固定層52は省略できる。
【0020】
この例では、カートリッジ110cは、基体部10をさらに含む。基体部10は、基体13と、入射光方向変化部11と、導波光方向変化部12と、を含むことができる。光導波部20は、基体13の上に設けられている。入射光方向変化部11及び導波光方向変化部12に関しては後述する。
【0021】
実施形態においては、センシング材料層30が設けられる空間30aは、光導波部20と側部40と面状部50とによって外部から遮断され、密閉されている。
【0022】
例えば、空間30aにおける湿度は、外部における湿度よりも低く保たれている。例えば、空間30aは、一定条件に管理された気体で満たされている。この気体としては、例えば、空気及び不活性ガスの少なくともいずれかを用いることができる。例えば、空間30aは、窒素ガスなどにより満たされている。
【0023】
これにより、空間30aの湿度が、外部の湿度から影響されることが抑制される。例えば、空間30aに外部から水分が侵入することが抑制される。これにより、空間30aの内部は、湿度が低く保たれている。空間30aにおける湿度は、例えば、30%以下に保たれている。例えば、空間30aの湿度の変化は、外部の湿度の変化よりも小さい。これにより、センシング材料層30に水分が過剰に付着することが抑制される。
【0024】
後述するように、湿度が高い条件下にカートリッジ110cが置かれると、検体の検出値が不安定になることを発明者は突き止めた。実施形態においては、カートリッジの中の空間30aを湿度が低い状態に維持できる。これにより、安定した検出値を得る光導波路センサが提供できる。
【0025】
以下、実施形態に係る光導波路センサ110の動作の例について説明する。
図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの構成及び動作を例示する模式図である。
図2(a)は、模式的平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA1−A2線断面図である。これらの図においては、カートリッジ110cのうちの光導波部20、基体部10及びセンシング材料層30を例示しており、側部40及び面状部50は省略されている。
【0026】
図2(a)及び図2(b)に表したように、光導波部20は、主面20aと、主面20aとは反対側の裏面20bと、を有する。主面20aにセンシング材料層30が設けられている。基体部10は、光導波部20の裏面20bに接している。例えば、基体部10の基体13には、ガラス基板が用いられる。
【0027】
例えば、基体13の上に、入射光方向変化部11と導波光方向変化部12とが設けられている。入射光方向変化部11は、導波光方向変化部12と離間している。この例では、入射光方向変化部11及び導波光方向変化部12には、回折格子が用いられている。すなわち、基体13の2つの領域のそれぞれにおいて、例えば、1マイクロメートル(μm)程度の幅のパターンを有する複数の帯状のTiO2膜が設けられている。2つの領域におけるTiO2膜のそれぞれが、入射光方向変化部11及び導波光方向変化部12のそれぞれとなる。
【0028】
このような基体13の上に、例えば、透光性の樹脂層が設けられ、この樹脂層が光導波部20となる。光導波部20は、入射光方向変化部11及び導波光方向変化部12を覆っている。
【0029】
光導波部20の主面20aにおいて、主面20aに対して垂直な方向からみたときに、入射光方向変化部11と導波光方向変化部12との間の領域にセンシング材料層30が設けられている。
【0030】
図2(b)に表したように、基体部10の裏面の側に、入射部61と検出部62とが配置される。入射部61から光(入射光14)が出射される。入射光14は、基体13を通過して、入射光方向変化部11に入射する。入射光方向変化部11は、例えば、入射光14を回折させ、入射光14を光導波部20に導入する。光導波部20に導入された光は、導波光15となる。導波光15は、光導波部20内を伝搬する。そして、導波光15は、導波光方向変化部12に入射する。導波光方向変化部12は、例えば導波光15を回折させ、導波光15の方向を変化させ、出射光17として、光導波部20から外に出射させる。この出射光17の強度が検出部62により検出される。
【0031】
このように、入射光方向変化部11は、基体13に入射する入射光14の進行方向を変化させて、入射光14を光導波部20に導入する。光導波部20に導光された入射光14が導波光15となる。導波光方向変化部12は、光導波部20内を導かれた光(導波光15)の進行方向を変化させて、この光(導波光15)を光導波部20から取り出す。
【0032】
導波光15は、光導波部20の主面20aと裏面20bとで、例えば全反射し、これにより、導波光15は、光導波部20内を導かれる。このとき、光導波部20に接して設けられるセンシング材料層30の光学的特性が変化すると、導波光15のエバネッセント光が変化するため、導波光15(出射光17)の強度が変化する。
【0033】
実施形態においては、センシング材料層30が検体液と接することでセンシング材料層30の光学特性が変化し、この変化に応じてエバネッセント光の特性が変化する。その結果、出射光17の強度が変化する。センシング材料層30における光学特性の変化は、検体液中における検体の量(例えば濃度)と連動している。このため、出射光17の強度のを検出することで、検体の量(例えば濃度)が測定できる。
【0034】
図3は、光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
この図は、図2に例示した構成において、センシング材料層30の代わりに、着色層を用いたときの吸光度特性を例示している。すなわち、光導波部20の主面20aの上に、各種の色素濃度の着色層を形成し、入射部61から入射光14を入射し、そのときに、出射光17の強度を検出部62により検出した結果を例示している。図3の横軸は、着色層の色素濃度C2(任意目盛)である。縦軸は、吸光度Absである。
【0035】
図3に表したように、着色層の色素濃度C2の変化に対応して吸光度Absが変化している。このように、着色層の色素濃度が異なると導波光15のエバネッセント光が変化し、これにより、出射光17の強度が変化する。実施形態に係る光導波路センサ110においては、この特性が利用される。
【0036】
図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
図4(a)は、本実施形態に係る光導波路センサ110において、グルコースを含む検体液を用い、この検体液をセンシング材料層30に接触させたときの出射光17の光強度LIの変化を例示している。そして、この図には、検体液中のグルコースの濃度C1を0.01mg/dL(ミリグラム/デシリットル)〜3mg/dLまで変化させたときの特性が例示されている。横軸は、検体液をセンシング材料層30に接触させてからの時間t(秒:s)に対応し、縦軸は、光強度LIに対応する。
【0037】
図4(a)に表したように、時間tの経過と共に、光強度LIが低下する。グルコースの濃度C1が高いと、光強度LIの低下の程度は大きい。
図4(a)から分かるように、時間tが10s程度の短い時間で、グルコースの濃度C1による光強度LIの変化が明確に現れる。ここで、1つの基準として、時間tが10sのときの光強度LIの値を、グルコースの濃度C1の検出パラメータ値として採用することができる。
【0038】
図4(b)は、時間tが10sのときの光強度LIの値を、検出パラメータ値として採用したときの特性を例示している。横軸は、グルコースの濃度C1である。縦軸は、時間tが10sのときの光強度LIから算出した吸光度Abs1(相対値)である。
図4(b)から分かるように、グルコースの濃度C1と吸光度Abs1との間には非常に高い相関性がある。実施形態に係る光導波路センサ110においては、この特性を利用して、検体(この場合はグルコース)の濃度を測定する。
【0039】
そして、本実施形態に係る光導波路センサ110は、非常に短い測定時間(例えば10s)で、グルコースの濃度C1を検出することができる。そして、検体の濃度が非常に低い場合でも高い精度でその濃度を測定できる。すなわち、光導波路センサ110は、高感度で短時間に検体の濃度を測定できる。
【0040】
しかしながら、発明者の検討によると、光導波路センサにおいて検出値が不安定になることがあった。すなわち、図1に例示した面状部50(及び固定層52)が設けられていない光動作路センサを用いた場合において、検出値が不安定になることがあった。そして、その特性を解析したところ、光導波路センサが保管されている環境の湿度によって検出値が変動する傾向が見られた。
【0041】
図5は、光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
図5に例示した光導波路センサ119においては、図1に例示した面状部50(及び固定層52)が設けられていない。この他は、光導波路センサ110の構成と同様である。すなわち、この光導波路センサ119においては、空間30aが密閉されていない。このため、センシング材料層30は外界の雰囲気にさらされている。
【0042】
図5は、このような光導波路センサ119を、湿度が異なる環境に一定期間保存し、その後、グルコースの濃度を測定した結果を例示している。図5の横軸は、環境の湿度HM(%)である。縦軸は、吸光度の正規化値Abs1である。吸光度は、グルコースの検体液をセンシング材料層30に接触させてからの時間tが10sの時の値である。この例では、グルコースの濃度C1は、0.1mg/dL〜3.0mg/dLで変化させた。そして、吸光度の正規化値Abs1は、それぞれのグルコースの濃度C1において、湿度HMが25%の時の値を1としてそれぞれの測定値を正規化した値である。
【0043】
図5から分かるように、測定された吸光度(吸光度の正規化値Abs1)は、グルコースの濃度C1だけでなく、環境の湿度HMによっても大きく変化することが判明した。吸光度(吸光度の正規化値Abs1)が湿度HMによって変化するのは、センシング材料層30に水分が付着し、センシング材料層30の検体との反応性が変化するためであると考えられる。光導波路センサが使用される例えば医療現場の湿度HMは、30%〜80%の間で変動すると考えられる。このため、このように変動する湿度においても安定した検出値を得ることが新たな課題として見出された。
【0044】
従来のセンサとして、例えば、センシング用の液体に検体液を滴下して、この混合液の特性を測定する方法がある。このような方法においては、検出の感度が低く、かつ混合液が反応するまでの十分な時間が経過してから測定しているために上記のような問題が顕在化しなかったと考えられる。これに対し、実施形態に係る光導波路センサ110の構成においては、検出感度が高く、低濃度で検体の検出が行われる。また、測定時間を短縮することができる。さらに、図4(a)に例示したように、時間tの経過と共に変化する光強度LIを用いる。このため、上記のように、湿度の影響が顕在化する。
【0045】
図6(a)及び図6(b)は、光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
これらの図は、面状部50(及び固定層52)を設けない光導波路センサ119を高い湿度に放置したときの検出値(吸光度Abs2)を例示している。このとき、光導波路センサ119の製作及び実験までの保管は、湿度が40%で、温度が25℃の環境下で行われた。そして、このような光導波路センサ119を、80%の湿度に保管し、その保管時間(高湿度保管時間t(80%))を変えて、グルコースを検出した。このときグルコースの濃度C1は、0.25mg/dLで一定である。図8(a)は、高湿度保管時間t(80%)が短時間(0s〜30s)の特性を示し、図8(b)は、長時間(0s〜600s)の特性を示している。これらの図の横軸は、高湿度保管時間t(80%)である。縦軸は、吸光度Abs2である。吸光度Abs2は、検体液をセンシング材料層30に接触させてからの時間tが60s後の光強度LIから求めた吸光度である。
【0046】
図6(a)に表したように、高湿度保管時間t(80%)が30s程度以下の短い場合は、吸光度Abs2はあまり変化しない。
【0047】
図6(b)に表したように、高湿度保管時間t(80%)が100sを超えると、吸光度Abs2の変化が大きい。そして、高湿度保管時間t(80%)が長くなると吸光度Abs2が上昇する。
【0048】
以上から、高湿度に置かれる時間が30s程度以下に管理されれば、安定した測定値が得られることが分かった。このことから、光導波路センサが高湿度の環境に置かれた場合においても、センシング材料層30を低い湿度に維持できる構成が得られれば、実用的な使用環境において湿度に影響され難い高い精度の検出が可能になると考えられる。
【0049】
そこで、発明者は、図1に例示したように、センシング材料層30を、光導波部20と面状部50と側部40とで密閉した空間30aの内部に設け、センシング材料層30が外部の湿度の影響を受けることが抑制される構成を採用した。
【0050】
図7は、第1の実施形態に係る光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
この図は、本実施形態に係る光導波路センサ110を、80%の湿度に保管し、その保管時間(高湿度保管時間t(80%))を変えて、グルコースを検出したときの吸光度Abs2を示している。
【0051】
図7に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ110においては、高湿度保管時間t(80%)が600sにおいても、初期と実質的に同じ値が得られている。
【0052】
このように、実施形態に係る光導波路センサ110によれば、湿度の影響を抑制し、安定した検出値を得ることができる。
【0053】
光導波路センサ110によれば、ユーザの使用環境の制約が緩和され、幅広い使用環境で使用することができる。
【0054】
本実施形態に係る光導波路センサ110においては、使用時よりも前の状態では、センシング材料層30は、密閉されている。このため、使用時には適切な方法で、センシング材料層30に検体液を接触させる操作が行われる。
【0055】
図8(a)及び図8(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの使用状態を例示する模式的断面図である。
図8(a)に表したように、送液器具81(例えばピペット)により、光導波路センサ110の内部の空間30aに検体液80が導入される。このとき、送液器具81の先端で面状部50に孔を開けて、空間30aに検体液80を送ることができる。例えば、検体液導入口45及び排出口46に連通する孔を開ける。このように、光導波路センサ110においては、空間30aに検体液80を導入するための送液器具81の先端で、面状部50を貫通する貫通孔を面状部50に形成可能である。これにより、使用時よりも前の状態では空間30aを低湿度に保ち、使用時には簡単に空間30aに検体液80を送ることができる。
【0056】
図8(b)に表したように、使用時に、面状部50を側部40から分離しても良い。例えば、面状部50が、光導波部20と対向するシート部51と、シート部51と側部40との間に設けられシート部51を側部40に固定する固定層52と、を含む場合は、シート部51を剥がしても良い。例えば、固定層52は、側部40及びシート部51の少なくともいずれかから剥離可能である。これにより、シート部51を側部40から離すことができる。これにより、使用時よりも前の状態では空間30aを低湿度に保ち、使用時には簡単に空間30aに検体液80を送ることができる。
【0057】
図9(a)及び図9(b)は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成及び使用状態を例示する模式的断面図である。
図9(a)に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ111においては、蓋部43が設けられていない。この場合も、光導波部20、面状部50及び側部40により形成される空間30a内にセンシング材料層30が密閉されている。これにより、湿度の影響を抑制し、安定した検出値を得ることができる。
【0058】
図9(b)に表したように、面状部50を全て剥離して、光導波路センサ111を使用することができる。また、面状部50の一部を剥離しても良い。さらに、送液器具81の先端で、面状部50に貫通孔を形成しても良い。
【0059】
図10は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
図10に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ120は、カートリッジ110cの他に、袋体70をさらに備える。袋体70は、袋体70の内部にカートリッジ110cを封入する。袋体70の内部は、袋体70により袋体70の外界から遮断されている。
【0060】
袋体70には、例えば、樹脂シートに金属膜を形成したフィルムを含む積層フィルムなどを用いることができる。これにより、袋体70の内部に外部から水分が侵入することを抑制できる。
【0061】
例えば、袋体70の内部における湿度は、袋体70の外部における湿度よりも低く保たれている。例えば、袋体70の内部は、一定条件に管理された気体で満たされている。この気体としては、例えば、空気及び不活性ガスの少なくともいずれかを用いることができる。例えば、袋体70の内部は、窒素ガスなどにより満たされている。
【0062】
このような袋体70の内部にカートリッジ110cを封入することで、高湿度の環境に長時間保管した場合においても、袋体70の内部を低湿度に維持できる。これにより、カートリッジ110cの空間30aを低湿度に維持できる。
【0063】
図11(a)及び図11(b)は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
図11(a)及び図11(b)に表したように、本実施形態に係る別の光導波路センサ112及び113においては、基体部10が設けられていない。
【0064】
図11(a)に表したように、光導波路センサ112においては、光導波部20の裏面20bに、入射光方向変化部21及び導波光方向変化部22が設けられる。
【0065】
図11(b)に表したように、光導波路センサ113においては、光導波部20の主面20aに、入射光方向変化部21及び導波光方向変化部22が設けられる。
【0066】
このように、基体部10は必要に応じて設けられる。また、入射光方向変化部及び導波光方向変化部は、基体部10に設けても良く、光導波部20に設けても良い。
【0067】
なお、光導波路センサ111、112及び113において、袋体70をさらに設けても良い。
【0068】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る光導波路センサ計測システムの構成を例示する模式的断面図である。
図12に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ計測システム210は、第1の実施形態に係るカートリッジのいずれかを備える。この例では、図1に例示した光導波路センサ110のカートリッジ110cが使用されている。図12においては、固定層52は省略されている。ただし、本実施形態において、第1の実施形態に係るカートリッジ及びその変形の任意のカートリッジを用いることができる。
【0069】
光導波路センサ計測システム210は、さらに、入射部61と、検出部62と、筐体92と、をさらに備える。入射部61は、光導波部20に光を入射させる。検出部62は、光導波部20を導かれた光を検出する。筐体92は、カートリッジ110c、入射部61及び検出部62を収容する。
【0070】
この例では、入射部61及び検出部62は、カートリッジステージ91に設けられている。カートリッジステージ91は、例えばカートリッジ110cの形状に適合する形状を有しており、カートリッジ110cを適切な位置に固定させる。
【0071】
光導波路センサ計測システム210は、さらに、算出部95を備えても良い。算出部95は、検出部62により検出された光の強度に基づいて、検体液に含まれる検体の濃度を算出する。算出部95は必要に応じて設けられる。算出部95は、光導波路センサ計測システム210とは、別に設けても良い。
【0072】
筐体92の内部の湿度の変化は、筐体92の外部の湿度の変化よりも小さい。すなわち、筐体92の内部の湿度は、筐体92の外部の湿度よりも低く維持されることができる。
【0073】
光導波路センサ計測システム210においては、カートリッジ110cが配置される筐体92の内部の湿度を低く維持できるため、安定した検出値を得る光導波路センサ計測システムが提供できる。
【0074】
図12に例示したように、光導波路センサ計測システム210は、湿度制御部93をさらに備えることができる、湿度制御部93は、筐体92に接続される。湿度制御部93は、筐体92の内部の湿度を制御する。具体的には、湿度制御部93は、筐体92の内部の湿度を、所望の値以下に維持するように制御する。湿度制御部93には、例えば、除湿機能を有する種々の構成を適用できる。これにより、さらに安定した検出値を得る光導波路センサ計測システムが提供できる。
【0075】
(第3の実施形態)
本実施形態は、光導波路センサの製造方法である。この光導波路センサは、光を導く光導波部20と、光導波部20と離間して対向する面状部50と、光導波部20と面状部50とに接し、光導波部20及び面状部50と共に密閉された空間30aを形成する側部40と、空間30aの中において、光導波部20に接しつつ面状部50と離間し、検体液80との接触により光学特性が変化するセンシング材料層30と、を含むカートリッジ110cを含む。
【0076】
図13は、第3の実施形態に係る光導波路センサの製造方法を例示するフローチャート図ある。
図13に表したように、本製造方法においては、湿度が予め定められた値以下に管理された環境下で、光導波部20とセンシング材料層30と側部40とを含む構造体の側部40に面状部50を取り付けて、光導波部20と面状部50と側部40とによって形成された密閉された空間30a内にセンシング材料層30を封入する(ステップS110)。
【0077】
これにより、密閉された空間30a内の低湿度の雰囲気にセンシング材料層30を維持できるカートリッジ110cを形成できる。これにより、安定した検出値を得る光導波路センサが効率良く製造できる。
【0078】
図13に表したように、本製造方法においては、さらに、カートリッジ110cを袋体70の内部に封入する(ステップS120)ことができる。この封入する工程は、湿度が予め定められた値以下に管理された気体を袋体70の内部に含む状態でカートリッジ110cを袋体70の内部に封入すること含む。袋体70の内部に低湿度の気体を満たした状態で、袋体70の内部にカートリッジ110cを封入することで、カートリッジ110cの内部の空間30aを低湿度により安定して維持できる。
【0079】
上記の実施形態において、光導波路センサは、例えば、板状のチップ上で測定サンプルを反応させ、その反応量を光で計測する。この光導波路センサは、生物、化学、医学、環境の各分野に応用することできる。この光導波路センサは、例えば、血液検査、感染症の検査、ガンマーカ等に応用できる。
【0080】
この光導波路センサにおいては、光導波路内に光を全反射させた状態を作り、光導波路の表面で発色反応を起こすと、全反射界面における導波光の染み出し成分(エバネッセント波)が吸収され、導波光強度が減衰する。この光の減衰量から、光導波路表面での微妙な発色反応量を定量化することが可能である。また、光導波路表面に物質が吸着すると、全反射界面における導波光の染み出し成分(エバネッセント波)が散乱を受け、導波光強度が減衰する。この減衰量から、物質の吸着量を定量化することが可能である。
【0081】
実施形態に係る光導波路センサにおいては、発色反応量や物質の吸着量が同じ条件で、繰り返し測定を行った際の誤差である測定再現性が良い。また、反応量と吸光度との対応関係である定量性に優れている。このため、光導波路センサは、医療分野、特にその中でも臨床検査装置での適用が好適である。
【0082】
実施形態に係る光導波路センサおいては、製造段階で、センサ反応面(検出面)を密閉する。センサに測定サンプルを送液する直前まで密閉状態を維持し、外部環境からの水分浸入を抑制する。測定のときにサンプルをセンサ反応面に供給する際には、密閉機構内部に外部からの送液流路を開通する。流路の開通からサンプル送液までの時間を短くして、外部環境からの水分吸着を抑える。このために、例えば、機械的に送液流路を開通させる。また、センサ周囲を空間的に囲む袋体70を設け、その内部を乾燥エア(気体)で満たすことで、外部測定環境中の水分影響がさらに抑制できる。
【0083】
実施形態においては、例えば、光導波路センサのカートリッジ110cを袋体70から取り出してから、測定器に取り付けている間は、センサ検出部(センシング材料層30)への水分吸着を抑制できる。これにより、幅広い湿度環境で精度の高い測定が可能になる。
【0084】
実施形態によれば、安定した検出値を得る光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムが提供される。
【0085】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0086】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、光導波路センサに含まれるカートリッジ、光導波路、面状部、側部、センシング材料層及び袋体、並びに、光導波路センサ計測システムに含まれる入射部、検出部、算出部及び筐体光源などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0087】
その他、本発明の実施の形態として上述した光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0088】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10…基体部、 11…入射光方向変化部、 12…導波光方向変化部、 13…基体、 14…入射光、 15…導波光、 17…出射光、 20…光導波部、 20a…主面、 20b…裏面、 21…入射光方向変化部、 22…導波光方向変化部、 30…センシング材料層、 30a…空間、 40…側部、 41…周囲壁部、 42…周縁部、 43…蓋部、 45…検体液導入口、 46…排出口、 50…面状部、 51…シート部、 52…固定層、 61…入射部、 62…検出部、 70…袋体、 80…検体液、 81…送液器具、 91…カートリッジステージ、 92…筐体、 93…湿度制御部、 95…算出部、 110、111、112、113、119、120…光導波路センサ、 110c…カートリッジ、 210…光導波路センサ計測システム、 Abs、Abs1、Abs2…吸光度、 C1…濃度、 C2…濃度、 HM……湿度、 LI…光強度、 t…時間、 t(80%)…高湿度保管時間
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
小型で高感度なバイオケミカルセンサとして、光導波路型のセンサがある。光導波路型センサにより、例えば、糖尿病治療の際に重要な指標となるグルコースを検出することができる。このような光導波路型のセンサにおいて、低濃度の検体においても安定した検出値を得ることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−96454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、安定した検出値を得る光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、光導波部と、面状部と、側部と、センシング材料層と、を含むカートリッジを備えた光導波路センサが提供される。前記光導波部は、光を導く。前記面状部は、前記光導波部と離間して対向する。前記側部は、前記光導波部と前記面状部とに接し、前記光導波部及び前記面状部と共に密閉された空間を形成する。前記センシング材料層は、前記空間の中において、前記光導波部に接しつつ前記面状部と離間し、検体液との接触により光学特性が変化する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの構成及び動作を例示する模式図である。
【図3】光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図5】光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図7】第1の実施形態に係る光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの使用状態を例示する模式的断面図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成及び使用状態を例示する模式的断面図である。
【図10】第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
【図12】第2の実施形態に係る光導波路センサ計測システムの構成を例示する模式的断面図である。
【図13】第3の実施形態に係る光導波路センサの製造方法を例示するフローチャート図ある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施形態に係る光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。 図1に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ110は、カートリッジ110cを備える。カートリッジ110cは、光導波部20と、面状部50と、側部40と、センシング材料層30と、を含む。
【0009】
光導波部20は、光を導く。光導波部20は、主面20aを有する。光導波部20には、例えば、樹脂層が用いられる。この樹脂層は、光導波部20が導く光に対して透過性である。
【0010】
面状部50は、光導波部20と離間して光導波部20と対向する。
【0011】
側部40は、光導波部20と面状部50とに接する。側部40は、光導波部20及び面状部50と共に密閉された空間30aを形成する。
【0012】
センシング材料層30は、この空間30aの中において、光導波部20に接しつつ面状部50と離間する。センシング材料層30の光学特性は、検体液との接触により変化する。
【0013】
検体液は、光導波路センサ110が検出する検体を含む液である。検体は、例えばグルコースである。センシング材料層30が検体液と接触することにより、センシング材料層30の、光に対する吸収特性、散乱特性、反射特性、偏光特性及び旋光特性の少なくともいずれかを含む光学特性が変化する。例えば、センシング材料層30には、検体としてグルコースを含む検体液との接触により、光の吸収特性が変化する層が用いられる。センシング材料層30における光学特性の変化は、センシング材料層30と検体との接触により発現する、物理的変化、化学的変化及び生物学的変化の少なくともいずれかに基づいている。
【0014】
側部40は、センシング材料層30の側面を取り囲んでいる。側部40の厚さは、センシング材料層30の厚さよりも厚い。側部40は、例えば、光導波部20の主面20aの上において、センシング材料層30の周囲に設けられる。
【0015】
この例では、側部40は、周囲壁部41と、周縁部42と、を含む。周囲壁部41は、光導波部20の主面20aにおいて、センシング材料層30の周囲に設けられる。例えば、光導波部20の主面20a上に、枠状の周囲壁部41が設けられ、周囲壁部41の枠の内部にセンシング材料層30が設けられる。周囲壁部41には、例えば、樹脂が用いられる。周囲壁部41は、センシング材料層30の側面を保護する機能を有しても良い。
【0016】
この例では、周縁部42の一部は、周囲壁部41の上に設けられている。この例では、周縁部42は、光導波部20の側面を覆っている。例えば、周縁部42は、カートリッジ110cのケース部の一部である。この例では、カートリッジ110cのケース部は、蓋部43をさらに含む。この例では、蓋部43は、周縁部42と連続的である。すなわち、ケース部のうちで、センシング材料層30に対向する部分が蓋部43であり、蓋部43の周囲に設けられ、光導波部20と接続される部分が周縁部42に相当する。
【0017】
この例では、ケース部に2つの孔(例えば検体液導入口45及び排出口46)が設けられている。後述するように、例えば、検体液導入口45から、検体液が空間30aに導入され、検体液はセンシング材料層30と接触する。なお、少なくとも周囲壁部41と周縁部42とが、側部40に含まれる。
【0018】
面状部50は、側部40に保持される。面状部50は、センシング材料層30と離間しつつセンシング材料層30が設けられている空間30aを封止している。面状部50には、例えば樹脂シート(樹脂フィルム)などが用いられる。
【0019】
この例では、面状部50は、シート部51と、固定層52と、を有している。シート部51には、例えば、樹脂のシートまたは樹脂のフィルムなどが用いられる。固定層52は、少なくともシート部51と側部40との間に設けられる。固定層52は、シート部51を側部40に固定する。固定層52には、例えば粘着層または接着層などが用いられる。固定層52により、シート部51が、側部40に固定されている。ただし、固定層52は必要に応じて設けられ、固定層52は場合によっては省略できる。例えば、熱圧着により、面状部50(シート部)が側部40に固定される場合などは、固定層52は省略できる。
【0020】
この例では、カートリッジ110cは、基体部10をさらに含む。基体部10は、基体13と、入射光方向変化部11と、導波光方向変化部12と、を含むことができる。光導波部20は、基体13の上に設けられている。入射光方向変化部11及び導波光方向変化部12に関しては後述する。
【0021】
実施形態においては、センシング材料層30が設けられる空間30aは、光導波部20と側部40と面状部50とによって外部から遮断され、密閉されている。
【0022】
例えば、空間30aにおける湿度は、外部における湿度よりも低く保たれている。例えば、空間30aは、一定条件に管理された気体で満たされている。この気体としては、例えば、空気及び不活性ガスの少なくともいずれかを用いることができる。例えば、空間30aは、窒素ガスなどにより満たされている。
【0023】
これにより、空間30aの湿度が、外部の湿度から影響されることが抑制される。例えば、空間30aに外部から水分が侵入することが抑制される。これにより、空間30aの内部は、湿度が低く保たれている。空間30aにおける湿度は、例えば、30%以下に保たれている。例えば、空間30aの湿度の変化は、外部の湿度の変化よりも小さい。これにより、センシング材料層30に水分が過剰に付着することが抑制される。
【0024】
後述するように、湿度が高い条件下にカートリッジ110cが置かれると、検体の検出値が不安定になることを発明者は突き止めた。実施形態においては、カートリッジの中の空間30aを湿度が低い状態に維持できる。これにより、安定した検出値を得る光導波路センサが提供できる。
【0025】
以下、実施形態に係る光導波路センサ110の動作の例について説明する。
図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの構成及び動作を例示する模式図である。
図2(a)は、模式的平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA1−A2線断面図である。これらの図においては、カートリッジ110cのうちの光導波部20、基体部10及びセンシング材料層30を例示しており、側部40及び面状部50は省略されている。
【0026】
図2(a)及び図2(b)に表したように、光導波部20は、主面20aと、主面20aとは反対側の裏面20bと、を有する。主面20aにセンシング材料層30が設けられている。基体部10は、光導波部20の裏面20bに接している。例えば、基体部10の基体13には、ガラス基板が用いられる。
【0027】
例えば、基体13の上に、入射光方向変化部11と導波光方向変化部12とが設けられている。入射光方向変化部11は、導波光方向変化部12と離間している。この例では、入射光方向変化部11及び導波光方向変化部12には、回折格子が用いられている。すなわち、基体13の2つの領域のそれぞれにおいて、例えば、1マイクロメートル(μm)程度の幅のパターンを有する複数の帯状のTiO2膜が設けられている。2つの領域におけるTiO2膜のそれぞれが、入射光方向変化部11及び導波光方向変化部12のそれぞれとなる。
【0028】
このような基体13の上に、例えば、透光性の樹脂層が設けられ、この樹脂層が光導波部20となる。光導波部20は、入射光方向変化部11及び導波光方向変化部12を覆っている。
【0029】
光導波部20の主面20aにおいて、主面20aに対して垂直な方向からみたときに、入射光方向変化部11と導波光方向変化部12との間の領域にセンシング材料層30が設けられている。
【0030】
図2(b)に表したように、基体部10の裏面の側に、入射部61と検出部62とが配置される。入射部61から光(入射光14)が出射される。入射光14は、基体13を通過して、入射光方向変化部11に入射する。入射光方向変化部11は、例えば、入射光14を回折させ、入射光14を光導波部20に導入する。光導波部20に導入された光は、導波光15となる。導波光15は、光導波部20内を伝搬する。そして、導波光15は、導波光方向変化部12に入射する。導波光方向変化部12は、例えば導波光15を回折させ、導波光15の方向を変化させ、出射光17として、光導波部20から外に出射させる。この出射光17の強度が検出部62により検出される。
【0031】
このように、入射光方向変化部11は、基体13に入射する入射光14の進行方向を変化させて、入射光14を光導波部20に導入する。光導波部20に導光された入射光14が導波光15となる。導波光方向変化部12は、光導波部20内を導かれた光(導波光15)の進行方向を変化させて、この光(導波光15)を光導波部20から取り出す。
【0032】
導波光15は、光導波部20の主面20aと裏面20bとで、例えば全反射し、これにより、導波光15は、光導波部20内を導かれる。このとき、光導波部20に接して設けられるセンシング材料層30の光学的特性が変化すると、導波光15のエバネッセント光が変化するため、導波光15(出射光17)の強度が変化する。
【0033】
実施形態においては、センシング材料層30が検体液と接することでセンシング材料層30の光学特性が変化し、この変化に応じてエバネッセント光の特性が変化する。その結果、出射光17の強度が変化する。センシング材料層30における光学特性の変化は、検体液中における検体の量(例えば濃度)と連動している。このため、出射光17の強度のを検出することで、検体の量(例えば濃度)が測定できる。
【0034】
図3は、光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
この図は、図2に例示した構成において、センシング材料層30の代わりに、着色層を用いたときの吸光度特性を例示している。すなわち、光導波部20の主面20aの上に、各種の色素濃度の着色層を形成し、入射部61から入射光14を入射し、そのときに、出射光17の強度を検出部62により検出した結果を例示している。図3の横軸は、着色層の色素濃度C2(任意目盛)である。縦軸は、吸光度Absである。
【0035】
図3に表したように、着色層の色素濃度C2の変化に対応して吸光度Absが変化している。このように、着色層の色素濃度が異なると導波光15のエバネッセント光が変化し、これにより、出射光17の強度が変化する。実施形態に係る光導波路センサ110においては、この特性が利用される。
【0036】
図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
図4(a)は、本実施形態に係る光導波路センサ110において、グルコースを含む検体液を用い、この検体液をセンシング材料層30に接触させたときの出射光17の光強度LIの変化を例示している。そして、この図には、検体液中のグルコースの濃度C1を0.01mg/dL(ミリグラム/デシリットル)〜3mg/dLまで変化させたときの特性が例示されている。横軸は、検体液をセンシング材料層30に接触させてからの時間t(秒:s)に対応し、縦軸は、光強度LIに対応する。
【0037】
図4(a)に表したように、時間tの経過と共に、光強度LIが低下する。グルコースの濃度C1が高いと、光強度LIの低下の程度は大きい。
図4(a)から分かるように、時間tが10s程度の短い時間で、グルコースの濃度C1による光強度LIの変化が明確に現れる。ここで、1つの基準として、時間tが10sのときの光強度LIの値を、グルコースの濃度C1の検出パラメータ値として採用することができる。
【0038】
図4(b)は、時間tが10sのときの光強度LIの値を、検出パラメータ値として採用したときの特性を例示している。横軸は、グルコースの濃度C1である。縦軸は、時間tが10sのときの光強度LIから算出した吸光度Abs1(相対値)である。
図4(b)から分かるように、グルコースの濃度C1と吸光度Abs1との間には非常に高い相関性がある。実施形態に係る光導波路センサ110においては、この特性を利用して、検体(この場合はグルコース)の濃度を測定する。
【0039】
そして、本実施形態に係る光導波路センサ110は、非常に短い測定時間(例えば10s)で、グルコースの濃度C1を検出することができる。そして、検体の濃度が非常に低い場合でも高い精度でその濃度を測定できる。すなわち、光導波路センサ110は、高感度で短時間に検体の濃度を測定できる。
【0040】
しかしながら、発明者の検討によると、光導波路センサにおいて検出値が不安定になることがあった。すなわち、図1に例示した面状部50(及び固定層52)が設けられていない光動作路センサを用いた場合において、検出値が不安定になることがあった。そして、その特性を解析したところ、光導波路センサが保管されている環境の湿度によって検出値が変動する傾向が見られた。
【0041】
図5は、光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
図5に例示した光導波路センサ119においては、図1に例示した面状部50(及び固定層52)が設けられていない。この他は、光導波路センサ110の構成と同様である。すなわち、この光導波路センサ119においては、空間30aが密閉されていない。このため、センシング材料層30は外界の雰囲気にさらされている。
【0042】
図5は、このような光導波路センサ119を、湿度が異なる環境に一定期間保存し、その後、グルコースの濃度を測定した結果を例示している。図5の横軸は、環境の湿度HM(%)である。縦軸は、吸光度の正規化値Abs1である。吸光度は、グルコースの検体液をセンシング材料層30に接触させてからの時間tが10sの時の値である。この例では、グルコースの濃度C1は、0.1mg/dL〜3.0mg/dLで変化させた。そして、吸光度の正規化値Abs1は、それぞれのグルコースの濃度C1において、湿度HMが25%の時の値を1としてそれぞれの測定値を正規化した値である。
【0043】
図5から分かるように、測定された吸光度(吸光度の正規化値Abs1)は、グルコースの濃度C1だけでなく、環境の湿度HMによっても大きく変化することが判明した。吸光度(吸光度の正規化値Abs1)が湿度HMによって変化するのは、センシング材料層30に水分が付着し、センシング材料層30の検体との反応性が変化するためであると考えられる。光導波路センサが使用される例えば医療現場の湿度HMは、30%〜80%の間で変動すると考えられる。このため、このように変動する湿度においても安定した検出値を得ることが新たな課題として見出された。
【0044】
従来のセンサとして、例えば、センシング用の液体に検体液を滴下して、この混合液の特性を測定する方法がある。このような方法においては、検出の感度が低く、かつ混合液が反応するまでの十分な時間が経過してから測定しているために上記のような問題が顕在化しなかったと考えられる。これに対し、実施形態に係る光導波路センサ110の構成においては、検出感度が高く、低濃度で検体の検出が行われる。また、測定時間を短縮することができる。さらに、図4(a)に例示したように、時間tの経過と共に変化する光強度LIを用いる。このため、上記のように、湿度の影響が顕在化する。
【0045】
図6(a)及び図6(b)は、光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
これらの図は、面状部50(及び固定層52)を設けない光導波路センサ119を高い湿度に放置したときの検出値(吸光度Abs2)を例示している。このとき、光導波路センサ119の製作及び実験までの保管は、湿度が40%で、温度が25℃の環境下で行われた。そして、このような光導波路センサ119を、80%の湿度に保管し、その保管時間(高湿度保管時間t(80%))を変えて、グルコースを検出した。このときグルコースの濃度C1は、0.25mg/dLで一定である。図8(a)は、高湿度保管時間t(80%)が短時間(0s〜30s)の特性を示し、図8(b)は、長時間(0s〜600s)の特性を示している。これらの図の横軸は、高湿度保管時間t(80%)である。縦軸は、吸光度Abs2である。吸光度Abs2は、検体液をセンシング材料層30に接触させてからの時間tが60s後の光強度LIから求めた吸光度である。
【0046】
図6(a)に表したように、高湿度保管時間t(80%)が30s程度以下の短い場合は、吸光度Abs2はあまり変化しない。
【0047】
図6(b)に表したように、高湿度保管時間t(80%)が100sを超えると、吸光度Abs2の変化が大きい。そして、高湿度保管時間t(80%)が長くなると吸光度Abs2が上昇する。
【0048】
以上から、高湿度に置かれる時間が30s程度以下に管理されれば、安定した測定値が得られることが分かった。このことから、光導波路センサが高湿度の環境に置かれた場合においても、センシング材料層30を低い湿度に維持できる構成が得られれば、実用的な使用環境において湿度に影響され難い高い精度の検出が可能になると考えられる。
【0049】
そこで、発明者は、図1に例示したように、センシング材料層30を、光導波部20と面状部50と側部40とで密閉した空間30aの内部に設け、センシング材料層30が外部の湿度の影響を受けることが抑制される構成を採用した。
【0050】
図7は、第1の実施形態に係る光導波路センサの特性を例示するグラフ図である。
この図は、本実施形態に係る光導波路センサ110を、80%の湿度に保管し、その保管時間(高湿度保管時間t(80%))を変えて、グルコースを検出したときの吸光度Abs2を示している。
【0051】
図7に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ110においては、高湿度保管時間t(80%)が600sにおいても、初期と実質的に同じ値が得られている。
【0052】
このように、実施形態に係る光導波路センサ110によれば、湿度の影響を抑制し、安定した検出値を得ることができる。
【0053】
光導波路センサ110によれば、ユーザの使用環境の制約が緩和され、幅広い使用環境で使用することができる。
【0054】
本実施形態に係る光導波路センサ110においては、使用時よりも前の状態では、センシング材料層30は、密閉されている。このため、使用時には適切な方法で、センシング材料層30に検体液を接触させる操作が行われる。
【0055】
図8(a)及び図8(b)は、第1の実施形態に係る光導波路センサの使用状態を例示する模式的断面図である。
図8(a)に表したように、送液器具81(例えばピペット)により、光導波路センサ110の内部の空間30aに検体液80が導入される。このとき、送液器具81の先端で面状部50に孔を開けて、空間30aに検体液80を送ることができる。例えば、検体液導入口45及び排出口46に連通する孔を開ける。このように、光導波路センサ110においては、空間30aに検体液80を導入するための送液器具81の先端で、面状部50を貫通する貫通孔を面状部50に形成可能である。これにより、使用時よりも前の状態では空間30aを低湿度に保ち、使用時には簡単に空間30aに検体液80を送ることができる。
【0056】
図8(b)に表したように、使用時に、面状部50を側部40から分離しても良い。例えば、面状部50が、光導波部20と対向するシート部51と、シート部51と側部40との間に設けられシート部51を側部40に固定する固定層52と、を含む場合は、シート部51を剥がしても良い。例えば、固定層52は、側部40及びシート部51の少なくともいずれかから剥離可能である。これにより、シート部51を側部40から離すことができる。これにより、使用時よりも前の状態では空間30aを低湿度に保ち、使用時には簡単に空間30aに検体液80を送ることができる。
【0057】
図9(a)及び図9(b)は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成及び使用状態を例示する模式的断面図である。
図9(a)に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ111においては、蓋部43が設けられていない。この場合も、光導波部20、面状部50及び側部40により形成される空間30a内にセンシング材料層30が密閉されている。これにより、湿度の影響を抑制し、安定した検出値を得ることができる。
【0058】
図9(b)に表したように、面状部50を全て剥離して、光導波路センサ111を使用することができる。また、面状部50の一部を剥離しても良い。さらに、送液器具81の先端で、面状部50に貫通孔を形成しても良い。
【0059】
図10は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
図10に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ120は、カートリッジ110cの他に、袋体70をさらに備える。袋体70は、袋体70の内部にカートリッジ110cを封入する。袋体70の内部は、袋体70により袋体70の外界から遮断されている。
【0060】
袋体70には、例えば、樹脂シートに金属膜を形成したフィルムを含む積層フィルムなどを用いることができる。これにより、袋体70の内部に外部から水分が侵入することを抑制できる。
【0061】
例えば、袋体70の内部における湿度は、袋体70の外部における湿度よりも低く保たれている。例えば、袋体70の内部は、一定条件に管理された気体で満たされている。この気体としては、例えば、空気及び不活性ガスの少なくともいずれかを用いることができる。例えば、袋体70の内部は、窒素ガスなどにより満たされている。
【0062】
このような袋体70の内部にカートリッジ110cを封入することで、高湿度の環境に長時間保管した場合においても、袋体70の内部を低湿度に維持できる。これにより、カートリッジ110cの空間30aを低湿度に維持できる。
【0063】
図11(a)及び図11(b)は、第1の実施形態に係る別の光導波路センサの構成を例示する模式的断面図である。
図11(a)及び図11(b)に表したように、本実施形態に係る別の光導波路センサ112及び113においては、基体部10が設けられていない。
【0064】
図11(a)に表したように、光導波路センサ112においては、光導波部20の裏面20bに、入射光方向変化部21及び導波光方向変化部22が設けられる。
【0065】
図11(b)に表したように、光導波路センサ113においては、光導波部20の主面20aに、入射光方向変化部21及び導波光方向変化部22が設けられる。
【0066】
このように、基体部10は必要に応じて設けられる。また、入射光方向変化部及び導波光方向変化部は、基体部10に設けても良く、光導波部20に設けても良い。
【0067】
なお、光導波路センサ111、112及び113において、袋体70をさらに設けても良い。
【0068】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る光導波路センサ計測システムの構成を例示する模式的断面図である。
図12に表したように、本実施形態に係る光導波路センサ計測システム210は、第1の実施形態に係るカートリッジのいずれかを備える。この例では、図1に例示した光導波路センサ110のカートリッジ110cが使用されている。図12においては、固定層52は省略されている。ただし、本実施形態において、第1の実施形態に係るカートリッジ及びその変形の任意のカートリッジを用いることができる。
【0069】
光導波路センサ計測システム210は、さらに、入射部61と、検出部62と、筐体92と、をさらに備える。入射部61は、光導波部20に光を入射させる。検出部62は、光導波部20を導かれた光を検出する。筐体92は、カートリッジ110c、入射部61及び検出部62を収容する。
【0070】
この例では、入射部61及び検出部62は、カートリッジステージ91に設けられている。カートリッジステージ91は、例えばカートリッジ110cの形状に適合する形状を有しており、カートリッジ110cを適切な位置に固定させる。
【0071】
光導波路センサ計測システム210は、さらに、算出部95を備えても良い。算出部95は、検出部62により検出された光の強度に基づいて、検体液に含まれる検体の濃度を算出する。算出部95は必要に応じて設けられる。算出部95は、光導波路センサ計測システム210とは、別に設けても良い。
【0072】
筐体92の内部の湿度の変化は、筐体92の外部の湿度の変化よりも小さい。すなわち、筐体92の内部の湿度は、筐体92の外部の湿度よりも低く維持されることができる。
【0073】
光導波路センサ計測システム210においては、カートリッジ110cが配置される筐体92の内部の湿度を低く維持できるため、安定した検出値を得る光導波路センサ計測システムが提供できる。
【0074】
図12に例示したように、光導波路センサ計測システム210は、湿度制御部93をさらに備えることができる、湿度制御部93は、筐体92に接続される。湿度制御部93は、筐体92の内部の湿度を制御する。具体的には、湿度制御部93は、筐体92の内部の湿度を、所望の値以下に維持するように制御する。湿度制御部93には、例えば、除湿機能を有する種々の構成を適用できる。これにより、さらに安定した検出値を得る光導波路センサ計測システムが提供できる。
【0075】
(第3の実施形態)
本実施形態は、光導波路センサの製造方法である。この光導波路センサは、光を導く光導波部20と、光導波部20と離間して対向する面状部50と、光導波部20と面状部50とに接し、光導波部20及び面状部50と共に密閉された空間30aを形成する側部40と、空間30aの中において、光導波部20に接しつつ面状部50と離間し、検体液80との接触により光学特性が変化するセンシング材料層30と、を含むカートリッジ110cを含む。
【0076】
図13は、第3の実施形態に係る光導波路センサの製造方法を例示するフローチャート図ある。
図13に表したように、本製造方法においては、湿度が予め定められた値以下に管理された環境下で、光導波部20とセンシング材料層30と側部40とを含む構造体の側部40に面状部50を取り付けて、光導波部20と面状部50と側部40とによって形成された密閉された空間30a内にセンシング材料層30を封入する(ステップS110)。
【0077】
これにより、密閉された空間30a内の低湿度の雰囲気にセンシング材料層30を維持できるカートリッジ110cを形成できる。これにより、安定した検出値を得る光導波路センサが効率良く製造できる。
【0078】
図13に表したように、本製造方法においては、さらに、カートリッジ110cを袋体70の内部に封入する(ステップS120)ことができる。この封入する工程は、湿度が予め定められた値以下に管理された気体を袋体70の内部に含む状態でカートリッジ110cを袋体70の内部に封入すること含む。袋体70の内部に低湿度の気体を満たした状態で、袋体70の内部にカートリッジ110cを封入することで、カートリッジ110cの内部の空間30aを低湿度により安定して維持できる。
【0079】
上記の実施形態において、光導波路センサは、例えば、板状のチップ上で測定サンプルを反応させ、その反応量を光で計測する。この光導波路センサは、生物、化学、医学、環境の各分野に応用することできる。この光導波路センサは、例えば、血液検査、感染症の検査、ガンマーカ等に応用できる。
【0080】
この光導波路センサにおいては、光導波路内に光を全反射させた状態を作り、光導波路の表面で発色反応を起こすと、全反射界面における導波光の染み出し成分(エバネッセント波)が吸収され、導波光強度が減衰する。この光の減衰量から、光導波路表面での微妙な発色反応量を定量化することが可能である。また、光導波路表面に物質が吸着すると、全反射界面における導波光の染み出し成分(エバネッセント波)が散乱を受け、導波光強度が減衰する。この減衰量から、物質の吸着量を定量化することが可能である。
【0081】
実施形態に係る光導波路センサにおいては、発色反応量や物質の吸着量が同じ条件で、繰り返し測定を行った際の誤差である測定再現性が良い。また、反応量と吸光度との対応関係である定量性に優れている。このため、光導波路センサは、医療分野、特にその中でも臨床検査装置での適用が好適である。
【0082】
実施形態に係る光導波路センサおいては、製造段階で、センサ反応面(検出面)を密閉する。センサに測定サンプルを送液する直前まで密閉状態を維持し、外部環境からの水分浸入を抑制する。測定のときにサンプルをセンサ反応面に供給する際には、密閉機構内部に外部からの送液流路を開通する。流路の開通からサンプル送液までの時間を短くして、外部環境からの水分吸着を抑える。このために、例えば、機械的に送液流路を開通させる。また、センサ周囲を空間的に囲む袋体70を設け、その内部を乾燥エア(気体)で満たすことで、外部測定環境中の水分影響がさらに抑制できる。
【0083】
実施形態においては、例えば、光導波路センサのカートリッジ110cを袋体70から取り出してから、測定器に取り付けている間は、センサ検出部(センシング材料層30)への水分吸着を抑制できる。これにより、幅広い湿度環境で精度の高い測定が可能になる。
【0084】
実施形態によれば、安定した検出値を得る光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムが提供される。
【0085】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0086】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、光導波路センサに含まれるカートリッジ、光導波路、面状部、側部、センシング材料層及び袋体、並びに、光導波路センサ計測システムに含まれる入射部、検出部、算出部及び筐体光源などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0087】
その他、本発明の実施の形態として上述した光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての光導波路センサ、光導波路センサの製造方法及び光導波路センサ計測システムも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0088】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10…基体部、 11…入射光方向変化部、 12…導波光方向変化部、 13…基体、 14…入射光、 15…導波光、 17…出射光、 20…光導波部、 20a…主面、 20b…裏面、 21…入射光方向変化部、 22…導波光方向変化部、 30…センシング材料層、 30a…空間、 40…側部、 41…周囲壁部、 42…周縁部、 43…蓋部、 45…検体液導入口、 46…排出口、 50…面状部、 51…シート部、 52…固定層、 61…入射部、 62…検出部、 70…袋体、 80…検体液、 81…送液器具、 91…カートリッジステージ、 92…筐体、 93…湿度制御部、 95…算出部、 110、111、112、113、119、120…光導波路センサ、 110c…カートリッジ、 210…光導波路センサ計測システム、 Abs、Abs1、Abs2…吸光度、 C1…濃度、 C2…濃度、 HM……湿度、 LI…光強度、 t…時間、 t(80%)…高湿度保管時間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を導く光導波部と、
前記光導波部と離間して対向する面状部と、
前記光導波部と前記面状部とに接し、前記光導波部及び前記面状部と共に密閉された空間を形成する側部と、
前記空間の中において、前記光導波部に接しつつ前記面状部と離間し、検体液との接触により光学特性が変化するセンシング材料層と、
を含むカートリッジを備えたことを特徴とする光導波路センサ。
【請求項2】
前記空間の湿度の変化は、前記外部の湿度の変化よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の光導波路センサ。
【請求項3】
前記カートリッジを内部に封入する袋体をさらに備え、
前記袋体の前記内部は、前記袋体により前記袋体の外界から遮断されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路センサ。
【請求項4】
前記面状部は、前記光導波部と対向するシート部と、前記シート部と前記側部との間に設けられ前記シート部を前記側部に固定する固定層と、を含み、
前記固定層は、前記側部及び前記シート部の少なくともいずれかから剥離可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光導波路センサ。
【請求項5】
前記空間に前記検体液を導入するための送液器具の先端で、前記面状部を貫通する貫通孔を前記面状部に形成可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光導波路センサ。
【請求項6】
前記カートリッジは、基体をさらに含み、
前記光導波部は、前記基体の上に設けられ、
前記基体は、
前記基体に入射する入射光の進行方向を変化させて、前記入射光を前記光導波部に導入する入射光方向変化部と、
前記光導波部内を導かれた前記光の進行方向を変化させて、前記光を前記光導波部から取り出す導波光方向変化部と、
を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光導波路センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の前記カートリッジと、
前記光導波部に前記光を入射させる入射部と、
前記光導波部を導かれた前記光を検出する検出部と、
前記カートリッジ、前記入射部及び前記検出部を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体の内部の湿度の変化は、前記筐体の外部の湿度の変化よりも小さいことを特徴とする光導波路センサ計測システム。
【請求項8】
前記筐体に接続され、前記筐体の前記内部の湿度を制御する湿度制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項7記載の光導波路センサ計測システム。
【請求項9】
光を導く光導波部と、前記光導波部と離間して対向する面状部と、前記光導波部と前記面状部とに接し、前記光導波部及び前記面状部と共に密閉された空間を形成する側部と、前記空間の中において、前記光導波部に接しつつ前記面状部と離間し、検体液との接触により光学特性が変化するセンシング材料層と、を含むカートリッジを含む光導波路センサの製造方法であって、
湿度が予め定められた値以下に管理された環境下で、前記光導波部と前記センシング材料層と前記側部とを含む構造体の前記側部に前記面状部を取り付けて、前記光導波部と前記面状部と前記側部とによって形成された密閉された空間内に前記センシング材料層を封入する工程を備えたことを特徴とする光導波路センサの製造方法。
【請求項10】
前記カートリッジを袋体の内部に封入する工程をさらに備え、
前記封入する工程は、湿度が予め定められた値以下に管理された気体を前記袋体の前記内部に含む状態で前記カートリッジを前記袋体の前記内部に封入すること含むことを特徴とする請求項9記載の光導波路センサの製造方法。
【請求項1】
光を導く光導波部と、
前記光導波部と離間して対向する面状部と、
前記光導波部と前記面状部とに接し、前記光導波部及び前記面状部と共に密閉された空間を形成する側部と、
前記空間の中において、前記光導波部に接しつつ前記面状部と離間し、検体液との接触により光学特性が変化するセンシング材料層と、
を含むカートリッジを備えたことを特徴とする光導波路センサ。
【請求項2】
前記空間の湿度の変化は、前記外部の湿度の変化よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の光導波路センサ。
【請求項3】
前記カートリッジを内部に封入する袋体をさらに備え、
前記袋体の前記内部は、前記袋体により前記袋体の外界から遮断されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路センサ。
【請求項4】
前記面状部は、前記光導波部と対向するシート部と、前記シート部と前記側部との間に設けられ前記シート部を前記側部に固定する固定層と、を含み、
前記固定層は、前記側部及び前記シート部の少なくともいずれかから剥離可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光導波路センサ。
【請求項5】
前記空間に前記検体液を導入するための送液器具の先端で、前記面状部を貫通する貫通孔を前記面状部に形成可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光導波路センサ。
【請求項6】
前記カートリッジは、基体をさらに含み、
前記光導波部は、前記基体の上に設けられ、
前記基体は、
前記基体に入射する入射光の進行方向を変化させて、前記入射光を前記光導波部に導入する入射光方向変化部と、
前記光導波部内を導かれた前記光の進行方向を変化させて、前記光を前記光導波部から取り出す導波光方向変化部と、
を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光導波路センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の前記カートリッジと、
前記光導波部に前記光を入射させる入射部と、
前記光導波部を導かれた前記光を検出する検出部と、
前記カートリッジ、前記入射部及び前記検出部を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体の内部の湿度の変化は、前記筐体の外部の湿度の変化よりも小さいことを特徴とする光導波路センサ計測システム。
【請求項8】
前記筐体に接続され、前記筐体の前記内部の湿度を制御する湿度制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項7記載の光導波路センサ計測システム。
【請求項9】
光を導く光導波部と、前記光導波部と離間して対向する面状部と、前記光導波部と前記面状部とに接し、前記光導波部及び前記面状部と共に密閉された空間を形成する側部と、前記空間の中において、前記光導波部に接しつつ前記面状部と離間し、検体液との接触により光学特性が変化するセンシング材料層と、を含むカートリッジを含む光導波路センサの製造方法であって、
湿度が予め定められた値以下に管理された環境下で、前記光導波部と前記センシング材料層と前記側部とを含む構造体の前記側部に前記面状部を取り付けて、前記光導波部と前記面状部と前記側部とによって形成された密閉された空間内に前記センシング材料層を封入する工程を備えたことを特徴とする光導波路センサの製造方法。
【請求項10】
前記カートリッジを袋体の内部に封入する工程をさらに備え、
前記封入する工程は、湿度が予め定められた値以下に管理された気体を前記袋体の前記内部に含む状態で前記カートリッジを前記袋体の前記内部に封入すること含むことを特徴とする請求項9記載の光導波路センサの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−202752(P2012−202752A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66020(P2011−66020)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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