説明

光導波路及びその製造方法

【課題】 ニオブ酸リチウム光導波路のような、拡散によりコアを形成した光導波路との結合損失が小さい光導波路及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 基板上にクラッドとコアを設けた光導波路であって、前記コア上部クラッド材料の屈折率が、前記コア側面部クラッド材用の屈折率及びコア下部クラッド材料の屈折率より小さいことを特徴とする光導波路により、拡散によりコアを形成した光導波路との結合損失を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路及びその製造方法に関し、特に、拡散によりコアを形成した光導波路と効率よく結合する矩形光導波路とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のパソコンやインターネットの普及に伴い、情報伝送需要が急激に増大している。このため、伝送速度の速い光伝送を、パソコン等の末端の情報処理装置まで普及させることが望まれている。これを実現するには、光インターコネクション用に、高性能な光導波路を、安価かつ大量に製造する必要がある。
【0003】
光導波路の材料としては、ガラスや半導体材料や樹脂に加えて、誘電体結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO3)が知られている。ニオブ酸リチウムは、外部電圧により光の屈折率を制御できる電気光学効果を示すため、光変調器として光通信システムにおいて使用されている。このニオブ酸リチウムを使用した光導波路の製造方法としては、例えば、Tiなどでニオブ酸リチウム基板表面にコアパターンを形成し、これをニオブ酸リチウム基板内に拡散させることで、高屈折率領域を形成する方法が知られているが、このような拡散によりコアを形成した光導波路は、図8に示される様な断面構造であって、矩形とはならない。すなわち、コアの断面形状が基板深さ方向に対して(上下方向において)、対称構造とならない。
【0004】
また、イオン交換法を用いて作製されたガラス光導波路のコア形状は、略半円形となる。イオン交換法の光導波路については、例えば、菅原らが電子情報通信学会半導体・材料部門全国大会で報告した論文(論文番号369)(昭和62年)等に述べられている。すなわち、ガラス基板表面をイオン透過防止マスク膜で被覆し、このマスク膜には所定の導波路パターンで開口を形成しておき、このマスク膜被覆ガラス基板を、ガラスの屈折率を増大させる陽イオンを含む溶融塩と接触させて塩中のイオンをガラス中に拡散させ、塩中のイオンとガラス中のイオンとを交換させ、これにより、屈折率がマスク開口部から内部に向けて次第に減少する分布を持つ、断面が略半円形の高屈折率領域を形成する。このように、コア断面形状は矩形とはならない。
【0005】
また、紫外線などに感度を有する材料を用いた基板に、コアパターン若しくはそのネガパターンを紫外線照射することで、屈折率の変化を誘起し、高屈折率領域を形成する、いわゆるフォトブリーチング法によって形成された光導波路は、紫外線の透過率、紫外線によって誘起される反応率、反応部位の拡散等によって高屈折率領域と低屈折領域とは明確な境界を示さず、また、基板深さ方向に完全な対称構造とはならない。
また、紫外線などに感度を有する複数のモノマ材料を用い、前記複数のモノマ材料の硬化物の屈折率が異なることと、紫外線に対する感度が異なることを利用して、前記塗膜に紫外線照射することでモノマの拡散を利用して高屈折率領域と低屈折率領域とを形成する光導波路が知られている。この方法で形成された光導波路のコア断面構造は、矩形とはならず、基板深さ方向に対して対称構造とはならない。
【0006】
一方、光導波路の材料として、従来より樹脂を用いたものが知られており、例えば、ガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性に優れるポリイミドにより光導波路のコア層及びクラッド層を形成した場合、長期信頼性が期待でき、半田付けにも耐えることができる。
このようなポリマー光導波路は、例えば、シリコン等の基板上に、クラッド層を形成し、このクラッド層をコア形状にエッチングして、これにコア用樹脂膜を塗布、形成し、さらに形成されたコア上部にコア側面部及び下部と同じ材料のクラッド層を設けることにより製造される(図9)。
しかし、このように製造された従来の光導波路と、上述したニオブ酸リチウム光導波路のような拡散によりコアを形成した光導波路とを結合して使用する場合、その結合損失が1dBと大きい点が問題であったが、従来このような拡散によりコアを形成した光導波路と結合して使用することを目的とした光導波路は知られていない。
【0007】
一方、従来、光の偏光方向による伝搬損失を防ぐことを目的として、コア側面クラッドの屈折率をコア上下クラッドの屈折率より大きくした光導波路が報告されている(特許文献1参照)。この例においては、コア断面において基板に対して上下方向と左右方向との屈折率差、すなわち、閉じ込めの強さを異ならせる構成が開示されており、これにより、基板に平行な偏波と垂直な偏波との損失の異方性を低減することが提案されている。一方、本発明では、上下方向に対して非対称な閉じ込め構造を実現し、かつ、拡散光導波路などのように上下方向に対して非対称なモードフィールド形状を有する光導波路との良好な結合を実現することを目的として、対象となる拡散光導波路などのモードフィールド形状(モードの広がり具合、非対称性など)に最適に結合できるモードフィールド形状を矩形断面の光導波路の構成によって実現することを可能としている。上述の従来例は、主に光導波路を伝搬する光波の性質に着目した効果を期待したものであり、結合損失に関しては、シングルモードファイバとの結合を考慮した内容であり、他の光導波路との結合する場合については、言及されておらず、解決策についての示唆もない。
【0008】
また、ニオブ酸リチウム基板上に、チタン拡散光導波路及びプロトン交換光導波路の異なる光導波路部分を設け、これらの光導波路をモノリシックに接続する技術が開示されている(特許文献2参照)。この従来技術においては、伝搬損失の低減に主眼が注がれており、モードフィールド形状のマッチング(モード結合またはモード変換損失の低減)については、記載されておらず、解決策についての示唆もない。
【0009】
さらに、石英光導波路とニオブ酸リチウム光導波路との接続にあたって、屈折率調整領域(ARコート&接着剤)を設ける技術が開示されている(特許文献3参照)。この発明は、石英光導波路とニオブ酸リチウム光導波路の屈折率が異なることにより接続部分での反射が起きるため、これに基づく損失(フレネル損失)の低減を目的としたものであり、本発明のような、モードフィールド形状のマッチングに基づく結合損失低減については、言及されておらず、また、解決策についての示唆もない。
本発明は、矩形導波路と拡散導波路との結合損失の支配的要因がモードフィールド形状が異なることにあるとの観点で、矩形導波路の構成について検討を重ねた結果得られたものである。
【0010】
【特許文献1】特開平11−133254号公報
【特許文献2】特開平05-072430号公報
【特許文献3】特開平07-020413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ニオブ酸リチウム光導波路のようにコアの断面形状が基板深さ方向に対して対称ではない構造の光導波路と、低結合損失で接続することが可能な光導波路との結合用光導波路及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、基板上にクラッドとコアを設けた光導波路であって、前記コア上部クラッド材料の屈折率が、前記コア側面部及び下部クラッド材料の屈折率より小さいことを特徴とする光導波路により解決される。
すなわち本発明は、基板上にクラッドとコアを設けた光導波路であって、前記コア上部クラッド材料の屈折率n1が、前記コア側面部クラッド材料の屈折率n2及びコア下部クラッド材料の屈折率n3より小さいことを特徴とする光導波路、である。
上記課題はまた、基板上に下部クラッドを形成し、さらにその上にコア層を形成する第1の工程、前記コア層を光導波路形状にパターニングしてコアを形成する第2の工程、前記下部クラッド上部表面及び前記コア側面部に、コア上部表面が完全に覆われるように側面部クラッドを形成する第3の工程、及び前記コア上部を覆うクラッド材料をコア上部表面が露出するまで除去する第4の工程を含む、コア上部が露出した光導波路の製造方法、または
基板上に下部クラッドを形成し、さらにその上にコア層を形成する第1の工程、前記コア層を光導波路形状にパターニングしてコアを形成する第2の工程、前記下部クラッド上部表面及び前記コア側面部に、コア上部表面が完全に覆われるように側面部クラッドを形成する第3の工程、前記コア上部を覆うクラッド材料をコア上部表面が露出するまで除去する第4の工程、及び前記露出したコア上部表面上に、前記側面部クラッド材料の屈折率n2及び前記コア下部クラッド材料の屈折率n3より低い屈折率n1を有する材料を用いてコア上部クラッドを形成する第5の工程を含む、光導波路の製造方法、により解決される。
上記第4の工程は、例えば、エッチングにより実現できる。この場合、コア上部表面を精度よく露出されることができる利点を有する。また、第4の工程は、研磨等の機械的方法によって、コア上部を覆うクラッド材料を除去することにより実現できる。この場合、コア上部及び側面部クラッド上部の表面を平坦にできる利点がある。
【0013】
上記課題はまた、基板上に、コア側面部クラッド及び下部クラッドとなるクラッド層を形成する第1の工程、前記クラッド層にコア用凹部を形成する第2の工程、及び前記コア用凹部内にコア材料溶液を充填、乾燥してコアを形成する第3の工程を含む、コア上部が露出した光導波路の製造方法、または
基板上に、コア側面部クラッド及び下部クラッドとなるクラッド層を形成する第1の工程、前記クラッド層にコア用凹部を形成する第2の工程、前記コア用凹部内にコア材料溶液を充填、乾燥してコアを形成する第3の工程、及び前記コア上部表面上に、前記コア側面部クラッド材料の屈折率n2及び前記コア下部クラッド材料の屈折率n3より低い屈折率n1を有する材料を用いてコア上部クラッドを形成する第4の工程を含む、光導波路の製造方法、により解決される。
上記第2の工程は、例えば、エッチングにより実現できる。この場合、コア形状を高精度に作製することができ、V溝や電極、位置合わせ用マークなど導波路基板に形成された他の構造体とコアパターンの相対的な位置合わせ精度を向上させることができる利点がある。
また、第2の工程は、エンボス法により実現できる。この場合、大量生産時には製造コストを低減できる利点がある。また、エンボス法では、基板として下部及び側面クラッドとなりうる材料を用いれば、第1の工程を省略することができる。
【0014】
上記課題はまた、ガラス板上にコア層を形成する第1の工程、前記コア層を光導波路形状にパターニングしてコアを形成する第2の工程、前記コア上部表面が完全に覆われるまでクラッド層を形成する第3の工程を含む、光導波路の製造方法により解決される。
この場合、基板が上部クラッドとなり、第3の工程で形成したクラッド層が、側面部クラッド及び下部クラッドを構成する。すなわち、上下を反転して製造するものである。ガラス板の代わりに上部クラッドとなりうる材料が表面に形成された基板を用いることができる。例えば、シリコン基板上にSiO2層が形成されたものを用いることができる。この場合、コア上部及び側面クラッド上部は、ガラス板上に形成されるため、簡易に平坦な境界を形成することができる。また、製造工程を低減することができるため、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光導波路及びその製造方法により、ニオブ酸リチウム光導波路等の拡散によりコアを形成した光導波路との結合において結合損失を低減することができ、効率よい結合を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の光導波路は、ニオブ酸リチウム光導波路のような、拡散によりコアを形成した光導波路との結合損失を小さくすることを目的とするものである。
拡散によりコアを形成した光導波路については上述したようにニオブ酸リチウムにTi等を拡散したもの、イオン交換法を用いたガラス光導波路、樹脂等を用いたものがある。
一つの例として誘電体結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO3)について説明する。ニオブ酸リチウムは、外部電圧により光の屈折率を制御できる電気光学効果を示すため、光変調器として光通信システムにおいて使用されている。このニオブ酸リチウムを使用した光導波路の製造方法としては、エッチング、チタン拡散、プロトン交換等の方法が知られているが、特に熱拡散によりコアが製造された光導波路の断面構造は、図8に示すように、コアがクラッドに埋め込まれたような形状をしている。また、コア及びクラッドの上部には通常約1〜2μm程度のSiO2層を有する(例えば特開平05-002195号公報参照)。このような構造のニオブ酸リチウム光導波路から出力される光は、偏心した特異な特性を示すため、従来の光導波路と結合させると、その結合損失は約1dB以上と非常に大きいものであった。
【0017】
[光導波路]
次に、本発明の光導波路について説明する。
本発明の光導波路は、基板上にクラッドとコアを設けた光導波路であって、前記コア上部クラッド材料の屈折率n1が、前記コア側面部クラッド材料の屈折率n2及びコア下部クラッド材料の屈折率n3より小さいことを特徴とする光導波路である。このようにコア上部クラッド材料の屈折率n1がコア側面部及び下部クラッド材料の屈折率n2及びn3より小さいことにより、上述したニオブ酸リチウム光導波路のような、拡散によりコアを形成した光導波路と結合させた場合に、光の損失を低下させることが可能である。本明細書において、“コア上部クラッド”または“上部クラッド”という場合には、少なくともコア上面のコアに接する部分のクラッドをいうが、コア上部から側面部クラッド上部に連続する上部のクラッド全体をいう場合もある。
なお、当然のことであるが、本発明においてコアの屈折率は各クラッドの屈折率より大きい。従って、コア材料及びクラッド材料を選択する場合には、コア材料の屈折率がクラッド材料の屈折率より大きいように選択される。
【0018】
コア下部のクラッドの厚みは通常5〜30μmであり、結合するニオブ酸リチウム光導波路に合わせて結合損失が小さくなる様な厚みを選択することが好ましい。側面部クラッドの厚みはコア層の厚みと同じか若しくはコア層上面より2〜10μm程度高くてもよい。コア層の厚みは通常3〜15μmであり、ニオブ酸リチウム光導波路のコアに合わせて結合損失が小さくなる様な厚みを選択することが好ましい。
【0019】
本発明の好ましい実施態様において、前記コア材料及びコア側面部及び下部クラッド材料は樹脂である。樹脂の例として、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選択される樹脂が挙げられる。これらの樹脂については、後述するコア上部クラッド材料として挙げられた樹脂の説明が参照される。コア材料、コア側面部及び下部クラッド材料としてはポリイミド樹脂、特にフッ素化ポリイミド樹脂が好ましい。
コア側面部クラッド材料の屈折率n2及びコア下部クラッド材料の屈折率n3は、目的に応じて適宜設計することができるが、例えばフッ素化ポリイミド樹脂を用いた場合には、通常1.50〜1.57である。
【0020】
本発明において、コア上部クラッド材料の屈折率n1、コア側面部クラッド材料の屈折率n2及びコア下部クラッド材料の屈折率n3が以下の式:n1≦nx×0.974(ただし、nxはn2及びn3のうちいずれか小さい値を示す)、を満たすことが好ましい。すなわち、n1と、n2及びn3の屈折率の差異:(n1−n2)/n1×100及び(n1−n3)/n1×100がそれぞれ2.6%以上であることが好ましい。
またより好ましくは、n1≦nx×0.970(ただし、nxはn2及びn3のうちいずれか小さい値を示す)である。また、nx×0.600≦n1(ただし、nxはn2及びn3のうちいずれか小さい値を示す)であることが好ましい。
【0021】
コア上部クラッド材料の例としては、空気、SiO2、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選択される材料が挙げられる。
なお、コア上部クラッド材料が空気であるとは、コア上部が露出していることを意味する。
コア上部クラッド材料として、空気を用いる場合に、コアとの屈折率差が大きくなりすぎる場合などには、コア上部に透明薄膜を配置して透明薄膜と空気との両方がクラッドとして機能するように構成することができる。この場合、透明薄膜は、コアよりも屈折率が高い材料を選択することができる。ただし、コアよりも屈折率が高い材料を用いた場合には、コアパターンへの光波の束縛が小さくなるおそれがあるので、厚くなりすぎないように設計する必要がある。このように、2種以上の材料を用いて、コア上部のクラッド機能を実現することで、ニオブ酸リチウム導波路や他の核酸導波路の基板深さ方向の屈折率分布に対応したモード分布形状との整合を図り、結合損失を低減することが可能である。
【0022】
珪素樹脂には、シラン鎖を持つものと、シロキサン鎖を持つものとがあり、用いる材料によって鎖状構造を持つ高分子と網状構造を持つ高分子がある。シロキサン鎖を持つものとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。シラン鎖を持つものとしては、ポリジメチルシランポリメチルフェニルシラン等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、フッ素化ポリイミド、フッ素化アクリル、フッ素化エポキシ、脂環式フッ化物樹脂、全フッ素脂環構造樹脂、ポリテトラフッ化エチレン、ポリトリフッ化塩化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。伝搬損失の観点からは、結晶性の樹脂より、非晶性の樹脂の方が適している。
【0023】
本発明の他の好ましい実施態様では、本発明の光導波路における、コア、コア上部クラッド、コア側面部クラッド、及びコア下部クラッドのうち少なくとも2部分の材料が、空気、SiO2、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される異なる2種類である。これは以下の理由による。
上述したように、本発明では、コア上部クラッド材料の屈折率n1と、コア側面部または下部クラッド材料の屈折率n2またはn3のいずれか小さい屈折率との比が0.974以下となる構成を選択することが好ましいが、屈折率の比が0.974以下となる材料を同種の樹脂材料から選択するのには、困難を生じる場合がある。
【0024】
SiO2については、例えば、GeやFなどの元素をドープすることで屈折率を変化させることができる。しかしながら、例えば、SiO2にGeO2をドープする場合、20%のドープで約1.02倍(逆数で記載すると0.98)に屈折率が変化するに過ぎない。
【0025】
空気を選択する場合には、屈折率が約1であるのに対し、他の誘電体材料の屈折率が1.3(屈折率比は約0.77)から1.8(屈折率比は約0.56)程度であるため、空気と他の材料を組み合わせることにより、0.974以下の屈折率差を生じさせることは容易である。但し、この場合、コア表面が露出する形となるため、パッケージ構造を工夫するなどして、表面を保護したり、モジュール組立工程において表面を汚染もしくは損傷から守るための方策をとることが好ましい。あるいは、表面に保護層を形成するなどして上記問題を解決することが好ましい。表面保護層は、その機能を満足する範囲で薄膜とすることができるので、損失低下への影響が少なければ、必ずしも透明材料を使用する必要はない。また、保護層が薄膜である場合には、本発明の主目的である拡散導波路等との接続のためのモードフィールド形状の実現に大きな影響を与えることなく配置することができる。より好ましくは、この種の保護層等を配置する場合には、その屈折率も加味した上で、モードフィールド形状の最適化をするとよい。
【0026】
例示した、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ケイ素樹脂及びフッ素樹脂などの樹脂材料では、原料もしくはモノマの分子容または/及び分極率が大きく異なるように選択することで、硬化物の屈折率を異ならせることができる。樹脂硬化物はモノマの重合によって生成するが、屈折率を所望の比率だけ異ならせるためには、上記の観点で選択した異種のモノマを共重合させる方法が有効である。
【0027】
例えば、ポリイミド樹脂の場合には、含フッ素モノマを共重合してフッ素化ポリイミドとすることで、屈折率を小さくすることができる。例えば、フッ素を含まないポリイミド樹脂の屈折率が1.7程度であるものがフッ素化ポリイミドでは、1.5程度とすることができる。この場合の屈折率比は、約0.88である。これは、含フッ素モノマの分子容が大きくなったことが主要因である。
【0028】
一方で、本発明の光導波路の構成材料を選択するにあたっては、使用する波長領域での透明性(伝搬損失)が小さいことが好ましい。伝搬損失の小さい度合いは、トータルの損失が低減するという効果で判断することができる。すなわち、トータルの損失は、結合損失と伝搬損失とに分類することができ、伝搬損失は、単位長さあたりの伝搬損失(dB単位で表示した場合)x距離で表すことができる。後述するように、本発明により、結合損失は、1箇所当たり従来の光導波路構造に比べて0.5から0.7dBの低減効果がある。従って、結合箇所が1箇所の場合で本発明の光導波路の長さが5mmの場合には、0.1dB/mm程度の伝搬損失以下の光導波路を構成することが好ましい。この目的に整合するように材料の選択に注意することが好ましい。
【0029】
例えば、光通信で用いられる1310nm帯、1550nm帯などの近赤外線領域の波長を用いる場合には、伝搬損失の小さい材料を選択する観点から、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化アクリル樹脂等を含むフッ素含有樹脂やケイ素樹脂を選択することが好ましい。
【0030】
フッ素化ポリイミド樹脂の場合には、透明性を保ちつつ、モノマの共重合組成を変化させることで、3%程度の屈折率差を生じさせることができるので、組成のことなる同種の樹脂をもって、0.974以下の要件を満たす選択を見出すことができるので好ましい。
また、フッ素化ポリイミド樹脂は、耐熱性が高いため、光モジュール組み立てに至るまでの電極蒸着や半田工程などを考慮すると、好ましい選択である。
一方、含Sモノマを共重合することで、硬化物の屈折率を大きくすることができるので、この手法で、所望の屈折率比を実現することも可能である。
【0031】
また、樹脂の種類によっては、硬化温度・時間などの硬化プロセスによって、硬化物の屈折率を異ならせることができるので、各クラッド層、コア層を形成する際の、各層への硬化プロセス履歴を異ならせることで屈折率の差を生じさせることができる。
また、別の種類の樹脂では、可視光、紫外線、電子線などの放射線照射によって、屈折率を大きくしたり、小さくしたりすることができる。そこで、これらの手法を適用することで、本発明の光導波路を実現することも可能である。
【0032】
本発明の光導波路に使用される基板はいずれのものでもよいが、例としては、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化タンタル、ガリウムヒ素等の無機材料基板、及びポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂フッ素樹脂等の樹脂基板が挙げられる。なお、これらの樹脂についてはコア及びクラッド材料における樹脂の説明が参照される。
【0033】
次に、本発明の光導波路の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、シリコンウエハ基板1の上に形成された光導波路積層体10を示す。図2は、図1の光導波路を光進行方向からみた断面図である。図2において、光導波路積層体10は、シリコンウエハ基板1の上に形成された下部クラッド3aと、その上に搭載されたコア4、コア4の側面部に形成された側面部クラッド3bとを備えている。下部クラッド3aと側面部クラッド3bは、積層体10の製造方法により、同じ材料から一体に形成される場合もあり、またそれぞれ分離して形成される場合もある。下部クラッド3aと側面部クラッド3bをあわせてクラッド3と呼ぶ場合もある。
【0034】
下部クラッド3a及び側面部クラッド3bは、いずれも、クラッド用ポリイミド樹脂膜(例えば、屈折率1.514)で形成され、下部クラッド3aの膜厚は、約10μm、側面部クラッド3bの膜厚は、下部クラッド3aの表面から約3.5μmである。コア4は、コア用ポリイミド樹脂膜で形成され、その膜厚は約3.5μmであり、幅は約6.5μmである。コア4の上部には空気(屈折率1.00)が存在する。この場合には、空気がコア上部のクラッドとして機能する。
【0035】
図3は、本発明の光導波路の他の実施形態を示すものである。
下部クラッド3a及び側面部クラッド3bは、クラッド用ポリイミド樹脂膜(例えば、屈折率1.514)で形成され、下部クラッド3aの膜厚は、約10μm、側面部クラッド3bの膜厚は、下部クラッド3aの表面から約3.5μmである。コア4は、コア用ポリイミド樹脂膜で形成され、その膜厚は約3.5μmであり、幅は約6.5μmである。コア4の上部には、SiO2からなるクラッド5が存在し、その膜厚は約2μmである。SiO2の屈折率は、約1.46であり、下部クラッド3a及び側面部クラッド3bのクラッド用材料の屈折率より低い。
【0036】
図4は、本発明の他の実施形態を示すものである。
下部クラッド3a及び側面部クラッド3bは、クラッド用ポリイミド樹脂膜(例えば、屈折率1.514)で形成され、下部クラッド3aの膜厚は、約10μm、側面部クラッド3bの膜厚は、下部クラッド3aの表面から約5.5μmである。コア4は、コア用ポリイミド樹脂膜で形成され、その膜厚は約3.5μmであり、幅は約6.5μmである。このようにコア4の上面のみに空気層(屈折率1.00)を有する態様もニオブ酸リチウム光導波路との結合損失を低下させることが可能である。
【0037】
[製造方法]
以下、上述した本発明の光導波路の製造方法の第1の実施態様について、図5(1)〜(8)を用いてさらに詳細に説明する。
まず、シリコン基板1の上面(図5(1))全体に、下部クラッド用ポリイミド前駆体溶液を塗布して材料溶液膜を形成し、これを加熱乾燥して溶媒を蒸発させ、続いてさらに高温で加熱して樹脂を硬化させ、ポリイミド樹脂膜からなる下部クラッド3aを形成する(図5(2))。
下部クラッド用ポリイミド前駆体溶液の塗布方法としては、スピンコート、キャスト、ロールコーティング、ディップコーティング等の方法がある。好ましい方法としては、スピンコート法が挙げられる。
【0038】
この下部クラッド3aの上に、コア用ポリイミド前駆体溶液を塗布して材料溶液膜を形成し、これを加熱乾燥して溶媒を蒸発させ、続いてさらに高温で加熱して樹脂を硬化させ、コア用ポリイミド樹脂膜4を形成する(図5(3))。塗布方法としては、下部クラッド用ポリイミド前駆体溶液の塗布方法と同様の方法が挙げられる。
【0039】
このコア用ポリイミド樹脂膜4の上にレジストをスピンコーターにより塗布し、乾燥後、露光、現像することにより、レジストパターン層6を形成する。このレジストパターン層6は、コア用ポリイミド樹脂膜4をコアの形状に加工するためのマスクとして用いられる(図5(4))。
このレジストパターン層6をマスクとして、コア用ポリイミド樹脂膜4を酸素でリアクティブイオンエッチング(O2−RIE)することにより、コア4を得ることができる(図5(5))。
その後、レジストパターン層6を剥離する(図5(6))。
【0040】
次に、コア4及び下部クラッド3aを覆うように、クラッド用ポリイミド前駆体溶液を塗布する。塗布方法は上述した方法が挙げられる。
次いで、クラッド用ポリイミド前駆体溶液の膜を加熱乾燥して溶媒を蒸発させ、続いてさらに高温で加熱して樹脂を硬化させ、クラッド用ポリイミド樹脂膜からなるクラッド層3bを形成する(図5(7))。
【0041】
さらに、クラッド用ポリイミド樹脂膜3bを、コア4の上部表面が露出するまでエッチングを行って除去し、クラッド用ポリイミド樹脂膜からなる側面部クラッド3bを形成する(図5(8))。
以上の様にして、コア上部が露出、すなわち、コア上部のクラッドとして空気層を有する光導波路を作成する。
【0042】
コア用ポリイミド樹脂膜3bをコア4の上部表面が露出するまで除去する手段の例としては、ドライエッチング、ウェットエッチング、及び研磨剤による研磨が挙げられる。
ドライエッチングの例としては、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、反応性スパッタエッチング、イオンビームエッチング等が挙げられ、異方性エッチングが可能なことから反応性イオンエッチングが好ましい。これらは、ガス組成、圧力、温度、周波数、出力などが制御因子であり、目的に適した条件を適宜選択すればよい。
【0043】
ウェットエッチングは、液相を用い、化学反応を利用したエッチングである。例えば、フッ化水素のような酸、水酸化アルカリ、エチレンジアミンのようなアルカリ、過マンガン酸カリウムのような酸化剤が用いられる。反応方式としては、浸漬、流水、スプレー、ジェット、電解などの方法が挙げられ、液組成、pH、粘度、温度、攪拌条件、処理時間、処理済み面積等が制御因子であり、目的に適した条件を適宜選択すればよい。
本発明では、ポリイミド樹脂を用いているので、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムの水溶液、ヒドラジンとイソプロピルアルコールの混合液、エチレンジアミンとピロカテコールの混合水溶液などを加温して用いることができる。
【0044】
研磨剤による研磨には、コロイダルシリカ、炭酸バリウム、酸化鉄、炭酸カルシウム、シリカ、酸化セリウム、ダイヤモンド等の研磨剤が用いられ、機械的研磨やメカノケミカル研磨方式が利用される。この方法は表面が均一に研磨されるので好ましいが、研磨傷が付かないように注意する必要がある。
【0045】
次に、本発明の光導波路の製造方法の第2の実施態様について、図5(1)〜(9)を用いて説明する。
図5(1)〜(8)までは、上記第1の実施態様と全く同様に行い、コア上部を露出させる。
次に側面部クラッド3b及びコア4の上面に、上部クラッド用材料を塗布し、上面がほぼ平坦な厚さ2μmの上部クラッド5を得る(図5(9))。上部クラッド用材料がSiO2の場合には、CVD法、蒸着法などの公知の成膜方法により形成することができる。また、SOGのように溶液塗布法によっても形成することができる。また、上部クラッド用材料がアクリル樹脂の場合には、スピンコート法、蒸着重合法などの公知の製膜方法により形成することができ、平坦な膜が得られる。
【0046】
次に製造方法の第3の実施態様について説明する。
まず、シリコン基板1の上面(図6(1))全体に、クラッド用ポリイミド前駆体溶液を塗布して材料溶液膜を形成し、これを加熱乾燥して溶媒を蒸発させ、続いてさらに高温で加熱して樹脂を硬化させ、ポリイミド樹脂膜からなるクラッド3を形成する(図6(2))。
このクラッドの上に、レジストをスピンコーターにより塗布し、乾燥後、露光、現像することにより、レジストパターン層7を形成する。このレジストパターン層7は、クラッド用ポリイミド樹脂膜3をコア4の形状に加工するためのマスクとして用いられる(図6(3))。
このレジストパターン層7をマスクとして、クラッド用ポリイミド樹脂膜3を酸素でリアクティブイオンエッチング(O2−RIE)することにより、コア形状の凹部8を得ることができる(図6(4))。
コア用ポリイミド前駆体溶液をこの凹部8に充填し、これを加熱乾燥して溶媒を蒸発させ、続いてさらに高温で加熱して樹脂を硬化させ、コア4を形成する(図6(5))。このようにして得られたコア上部が露出した光導波路をそのまま使用してもよい。また、レジスト7上のコア用ポリイミド樹脂9と、レジスト7を除去してもよい(図6(6))。
以上の様にして、コア上部が露出、すなわち、コア上部のクラッドとして空気層を有する光導波路を作成する。また、図6(5)のコア材料上にさらにクラッド材料を載せたものを作成してもよい。
【0047】
次に製造方法の第4の実施態様について、図6(1)〜(7)を用いて説明する。
図6(1)〜(6)までは、上記第3の実施態様と全く同様に行い、コア上部が露出した光導波路を作成する。
次に側面部クラッド3b及びコア4の上面に、上部クラッド用材料を塗布し、上面がほぼ平坦なクラッド5を得る(図6(7))。上部クラッドはスピンコート法、蒸着重合法などの公知の製膜方法により形成することができ、平坦な膜が得られる。膜厚は約2μmである。
【0048】
次に製造方法の第5の実施態様について、図7(1)〜(4)を用いて説明する。
まずガラス板11を用意し、ガラス板11上にコア用ポリイミド前駆体溶液を塗布して、コア層12を形成する(図7(1)(2))。
前記コア層12に、レジストを塗布し、乾燥後光導波路形状のマスクパターンを介してにパターニングしてコア12を形成し、レジスト層は剥離する(図7(3))。
前記コア12上部表面が完全に覆われるまでクラッド用ポリイミド前駆体溶液を塗布して、乾燥し、コアの側面部及びコアの上部にクラッド層13を形成する(図7(3))。
以上の様にして作製した本願発明の光導波路は、上下を反転させて使用する。すなわち、ガラス板がコア上部クラッドである光導波路となる。ガラス板の代わりに上部クラッドとなりうる材料を用いることにより、本願発明の他の光導波路を製造できることは当然である。例えば、シリコン基板上にSiO2層が形成されたものを用いることができる。この場合、コア上部及び側面クラッド上部は、ガラス板上に形成されるため、簡易に平坦な境界を形成することができる。また、製造工程を低減することができるため、製造コストを低減することができる。
【実施例】
【0049】
実施例1
製造方法の第1の実施態様に従って、以下の材料及び条件を用いて、光導波路を製造した。
[材料]
下部及び側面部クラッド3(3a及び3b):クラッド用ポリイミド前駆体(日立化成工業株式会社製OPI−N3105(商品名))を用いて形成したポリイミド膜(100℃で30分、次いで、200℃で30分加熱して溶媒を蒸発させ、370℃で60分加熱して硬化させたもの)(下部クラッド3aの膜厚は約10μm、側面部クラッド3bの膜厚は約3.5μm、屈折率1.514)
コア4:コア用ポリイミド前駆体(日立化成工業株式会社製OPI−N3305(商品名))を用いて形成したポリイミド膜(100℃で30分、次いで、200℃で30分加熱して溶媒を蒸発させ、さらに350℃で60分加熱して硬化させたもの)(膜厚は約3.5μm、幅は約6.5μm、屈折率1.522)
コア上部のクラッド材料:表1参照
フォトレジスト6:RU−1600P、日立化成工業株式会社製商品名
【0050】
[製造条件]
コア用ポリイミド前駆体溶液、及びコア側面部及び下部クラッド用ポリイミド前駆体溶液の塗布方法としてはスピンコーターを使用した。
【0051】
実施例2〜4
さらに製造方法を第2または第3の実施態様に変えて、表1に記載される光導波路を製造した(実施例2〜4)。材料及び製造条件は以下のとおりである。
(実施例2)
[材料]
下部及び側面部クラッド3(3a及び3b):クラッド用ポリイミド前駆体(日立化成工業株式会社製OPI−N3105(商品名))を用いて形成したポリイミド膜(100℃で30分、次いで、200℃で30分加熱して溶媒を蒸発させ、370℃で60分加熱して硬化させたもの)(下部クラッド3aの膜厚は約10μm、側面部クラッド3bの膜厚は約3.5μm、屈折率1.514)
コア4:コア用ポリイミド前駆体(日立化成工業株式会社製OPI−N3305(商品名))を用いて形成したポリイミド膜(100℃で30分、次いで、200℃で30分加熱して溶媒を蒸発させ、さらに350℃で60分加熱して硬化させたもの)(膜厚は約3.5μm、幅は約6.5μm、屈折率1.522)
コア上部のクラッド材料:表1参照
フォトレジスト6:RU−1600P、日立化成工業株式会社製商品名
[製造条件]
HSG−R7をスピンコートした後、加熱して約2μmのSiO2膜を形成した。
【0052】
(実施例3)
[材料]
下部及び側面部クラッド3(3a及び3b):クラッド用ポリイミド前駆体(日立化成工業株式会社製OPI−N3105(商品名))を用いて形成したポリイミド膜(100℃で30分、次いで、200℃で30分加熱して溶媒を蒸発させ、370℃で60分加熱して硬化させたもの)(下部クラッド3aの膜厚は約10μm、側面部クラッド3bの膜厚は約3.5μm、屈折率1.514)
コア4:コア用ポリイミド前駆体(日立化成工業株式会社製OPI−N3305(商品名))を用いて形成したポリイミド膜(100℃で30分、次いで、200℃で30分加熱して溶媒を蒸発させ、さらに350℃で60分加熱して硬化させたもの)(膜厚は約3.5μm、幅は約6.5μm、屈折率1.522)
コア上部のクラッド材料:表1参照
フォトレジスト6:RU−1600P、日立化成工業株式会社製商品名
上部クラッド5:アクリル樹脂(PMMA、約2μm)
[製造条件]
溶媒(エチルセロソルブ)に溶解し、スピンコート後、加熱(150℃)により溶媒を除去した。
【0053】
(実施例4)
[材料]
下部及び側面部クラッド3(3a及び3b):クラッド用ポリイミド前駆体(日立化成工業株式会社製OPI−N3105(商品名))を用いて形成したポリイミド膜(100℃で30分、次いで、200℃で30分加熱して溶媒を蒸発させ、370℃で60分加熱して硬化させたもの)(下部クラッド3aの膜厚は約10μm、側面部クラッド3bの膜厚は約3.5μm、屈折率1.514)
コア4:コア用ポリイミド前駆体(日立化成工業株式会社製OPI−N3305(商品名))を用いて形成したポリイミド膜(100℃で30分、次いで、200℃で30分加熱して溶媒を蒸発させ、さらに350℃で60分加熱して硬化させたもの)(膜厚は約3.5μm、幅は約6.5μm、屈折率1.522)
コア上部のクラッド材料:表1参照
フォトレジスト7:RU−1600P、日立化成工業株式会社製商品名
【0054】
(比較例1)
[製造条件]
第2の実施態様の方法において、上部クラッド材料をアクリル樹脂から表1に記載のポリイミド樹脂に変えて製造した。
【0055】
【表1】

*1n2:コア側面部クラッド材料の屈折率
*2n3:コア下部クラッド材料の屈折率
*3(n1−n2)/n1×100、(n1−n3)/n1×100
【0056】
上述したように製造した光導波路の各光特性を測定し、さらにニオブ酸リチウム光導波路との結合損失(表1)を以下のように測定した。
まず、LD、光ファイバを2本及びPDをこの順に接続してPDにおいて光強度を測定する。次にこの2本の光ファイバ間にニオブ酸リチウム光導波路を挟み光強度を測定する。ニオブ酸リチウム光導波路の長さを変えてそれぞれ光強度を測定して、長さを横軸、光強度を縦軸にとり両者の関係をグラフ化する。このときグラフの傾きが伝搬損失を表し、Y切片が結合損失を表すことになる。次に本発明の光導波路について同様の方法により伝搬損失と結合損失を測定する。次に2本の光ファイバ間に先のニオブ酸リチウム光導波路と本発明の光導波路を挟んで光強度を測定し、得られた結合損失から先に得たニオブ酸リチウム光導波路と本発明の光導波路の結合損失を差し引くことにより、ニオブ酸リチウム光導波路と本発明の光導波路との結合損失を計算する。
表1から明らかなように、本発明の光導波路を用いることにより、ニオブ酸リチウム光導波路との結合損失を低下させることができた(実施例1〜4)。特に、コア層上面を露出、すなわち上部のクラッドとして空気層を用いた実施例1の光導波路は、製造工程も少なく、かつ結合損失も非常に小さいので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の光導波路を模式的に示す側面方向の断面図である。
【図2】本発明の光導波路の一つの実施態様を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の光導波路の一つの実施態様を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の光導波路の一つの実施態様を模式的に示す断面図である。
【図5】(1)〜(9)は、本発明の光導波路の製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】(1)〜(7)は、本発明の光導波路の製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
【図7】(1)〜(4)は、本発明の光導波路の製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
【図8】ニオブ酸リチウム光導波路を模式的に示す断面図である。
【図9】従来の光導波路の断面を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・シリコン基板
3a・・・下部クラッド
3b・・・側面部クラッド
4・・・コア
5・・・上部クラッド
6・・・マスク
7・・・マスク
8・・・凹部
9・・・コア形成材料
10・・・光導波路積層体
11・・・ガラス板
12・・・コア
13・・・クラッド
20・・・SiO2
21・・・LiNbO3
22・・・Ti拡散コア
30・・・クラッド
31・・・コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にクラッドとコアを設けた光導波路であって、前記コア上部クラッド材料の屈折率n1が、前記コア側面部クラッド材料の屈折率n2及びコア下部クラッド材料の屈折率n3より小さいことを特徴とする光導波路。
【請求項2】
コア上部クラッド材料の屈折率n1、コア側面部クラッド材料の屈折率n2及びコア下部クラッド材料の屈折率n3が以下の式:n1≦nx×0.974(ただし、nxはn2及びn3のうちいずれか小さい値を示す)、を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
コア材料並びにコア側面部及び下部クラッド材料が、それぞれ、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選択される、請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
コア、コア上部クラッド、コア側面部クラッド、及びコア下部クラッドのうち少なくとも2部分の材料が、空気、SiO2、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される異なる2種類の材料である、請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項5】
コア上部クラッド材料が、空気、SiO2、及びアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項6】
コア上部クラッド材料が空気、SiO2及びアクリル樹脂からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項7】
ポリイミド樹脂がフッ素化ポリイミド樹脂である、請求項3〜6のいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項8】
基板上に下部クラッドを形成し、さらにその上にコア層を形成する第1の工程、
前記コア層を光導波路形状にパターニングしてコアを形成する第2の工程、
前記下部クラッド上部表面及び前記コア側面部に、コア上部表面が完全に覆われるように側面部クラッドを形成する第3の工程、及び
前記コア上部を覆うクラッド材料をコア上部表面が露出するまで除去する第4の工程を含む、コア上部が露出した光導波路の製造方法。
【請求項9】
基板上に下部クラッドを形成し、さらにその上にコア層を形成する第1の工程、
前記コア層を光導波路形状にパターニングしてコアを形成する第2の工程、
前記下部クラッド上部表面及び前記コア側面部に、コア上部表面が完全に覆われるように側面部クラッドを形成する第3の工程、
前記コア上部を覆うクラッド材料をコア上部表面が露出するまで除去する第4の工程、及び
前記露出したコア上部表面上に、前記側面部クラッド材料の屈折率n2及び前記コア下部クラッド材料の屈折率n3より低い屈折率n1を有する材料を用いてコア上部クラッドを形成する第5の工程を含む、光導波路の製造方法。
【請求項10】
基板上に、コア側面部クラッド及び下部クラッドとなるクラッド層を形成する第1の工程、
前記クラッド層にコア用凹部を形成する第2の工程、及び
前記コア用凹部内にコア材料溶液を充填、乾燥してコアを形成する第3の工程を含む、コア上部が露出した光導波路の製造方法。
【請求項11】
基板上に、コア側面部クラッド及び下部クラッドとなるクラッド層を形成する第1の工程、
前記クラッド層にコア用凹部を形成する第2の工程、
前記コア用凹部内にコア材料溶液を充填、乾燥してコアを形成する第3の工程、及び
前記コア上部表面上に、前記コア側面部クラッド材料の屈折率n2及び前記コア下部クラッド材料の屈折率n3より低い屈折率n1を有する材料を用いてコア上部クラッドを形成する第4の工程を含む、光導波路の製造方法。
【請求項12】
コア上部クラッド材料の屈折率n1、コア側面部クラッド材料の屈折率n2及びコア下部クラッド材料の屈折率n3が以下の式:n1≦nx×0.974(ただし、nxはn2及びn3のうちいずれか小さい値を示す)、を満たすことを特徴とする、請求項9または11に記載の方法。
【請求項13】
コア材料並びにコア側面部及び下部クラッド材料が、それぞれ、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選択される、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コア上部クラッド材料が、SiO2、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂、及び全フッ素樹脂からなる群より選択される、請求項9及び11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ガラス板上にコア層を形成する第1の工程、前記コア層を光導波路形状にパターニングしてコアを形成する第2の工程、前記コア上部表面が完全に覆われるまでクラッド層を形成する第3の工程を含む、光導波路の製造方法。
【請求項16】
クラッド材料の屈折率n5、及びガラス板の屈折率n4が以下の式:n4≦n5×0.974を満たすことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コア材料及びクラッド材料が、それぞれ、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、珪素樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選択される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
ポリイミド樹脂がフッ素化ポリイミド樹脂である、請求項13、14及び17のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−10692(P2007−10692A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−376024(P2003−376024)
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】