説明

光干渉断層内視鏡装置

【課題】観察に必要なフレームレートを維持しつつ、断層像の解像度を上げることが可能な光干渉断層内視鏡装置を提供する。
【解決手段】内視鏡と、干渉光検出部と、断層像生成部とを備えた光干渉断層内視鏡装置が、測定光を先端部で偏向して回転走査するように出射すると共に測定光の反射光を該先端部から干渉光検出部に導光する光プローブと、先端部に測定光を透過させる透明部材と、測定光を反射させる反射部材とを有し、光プローブの先端部が透明部材及び反射部材に対向するように光プローブを挿入部に沿って案内するチャンネルと、測定光の反射光の強度を検出することにより、測定光が透明部材又は反射部材のいずれを走査しているかを検出する走査位置検出部と、走査位置検出部の検出結果に基づいて光プローブから出射される測定光の走査速度を制御する走査速度制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低干渉性の光を利用して体腔内の断層像を得る、光コヒーレンス・トモグラフィ(Optical Coherence Tomography、以下、OCTという)の機能を有する光干渉断層内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体腔内の生体組織を診断する場合、その生体組織内部の形態を観察することができるOCT光学装置を組み込んだ光干渉断層内視鏡装置が提案されている。OCT光学装置は、光の干渉を利用することによって、組織内部の断層像を観察することができる観察装置である。
【0003】
OCT光学装置は、体腔内に挿入するための光プローブを備え、当該光プローブを電子内視鏡の鉗子チャンネルから体腔内に導入してOCTによる観察を行う構成となっている。光プローブは、チューブ状シースと、チューブ状シースの内側に収容された光ファイバ及び光学素子とによって構成される。光プローブ内の光ファイバ及び光学素子は、OCT光学装置に設けられた低干渉性光源からの低干渉光を光プローブの先端部に導光し、一定の速度で回転しながら光プローブの側方(光ファイバと直交する方向)に低干渉光を照射する。そして、光プローブが電子内視鏡の先端部から突出して、被検体としての生体組織に密着するように配置されることにより、生体組織が低干渉光によって走査される。生体組織が低干渉光によって走査されると、生体組織の表面或いは内部で散乱された反射光の一部が光プローブに取り込まれ、逆の光路を経てOCT光学装置に戻される。OCT光学装置は、この戻り光を検出し、映像化して組織内部の断層像を表示する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−87269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光プローブの構成においては、光プローブ内の光ファイバ及び光学素子が一定の回転速度で回転して低干渉光を走査する構成であるため、光プローブで得られる断層像の解像度とフレームレートは、光プローブの回転速度によって決定され、両者はトレードオフの関係にある。すなわち、光プローブの回転速度を遅くして断層像の解像度を上げようとするとフレームレートが落ちることとなり、また逆に光プローブの回転速度を速くして断層像のフレームレートを上げようとすると解像度が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題に鑑み、観察に必要なフレームレートを維持しつつ、断層像の解像度を上げることが可能な光干渉断層内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、本発明の光干渉断層内視鏡装置は、体腔内を観察するために体腔内に挿入される挿入部を有する内視鏡と、光コヒーレンス・トモグラフィにより生体の断層像を得るための測定光および、参照光を生成し、生体に照射された測定光の反射光を参照光と干渉させ、得られた干渉光の強度に応じた検出信号を生成する干渉光検出部と、干渉光検出部が生成した検出信号に基づいて生体の断層像を生成する断層像生成部とを備えた光干渉断層内視鏡装置であって、測定光を干渉光検出部から先端部に導光し、測定光を該先端部で偏向して回転走査するように出射すると共に、測定光の反射光を該先端部から干渉光検出部に導光する光プローブと、先端部に測定光を透過させる透明部材と、測定光を反射させる反射部材とを有し、光プローブの先端部が透明部材及び反射部材に対向するように光プローブを挿入部に沿って案内するチャンネルと、測定光の反射光の強度を検出することにより、測定光が透明部材又は反射部材のいずれを走査しているかを検出する走査位置検出部と、走査位置検出部の検出結果に基づいて光プローブから出射される測定光の走査速度を制御する走査速度制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記の構成により、測定光が、生体に照射される期間と生体に照射されない期間とでは測定光の走査速度を切り換えることが可能となる。そして、これによって、従来よりもフレームレートを下げずに解像度の高い光干渉断層像を取得することが可能となる。
【0009】
また、走査速度制御手段は、走査位置検出部によって測定光が透明部材を走査していることを検出した場合、測定光の走査速度を第1の走査速度に設定し、測定光が反射部材を走査していることを検出した場合、測定光の走査速度を第1の走査速度よりも速い第2の走査速度に設定するように構成するのが好ましい。このような構成とすることにより、測定光が生体に照射される期間は、ゆっくりと走査して解像度を上げ、測定光が生体に照射されない期間は、高速で走査してフレームレートを下げないように構成することが可能となる。
【0010】
また、透明部材は、チャンネルの生体に近位となる側に配置され、反射部材は、チャンネルの生体に遠位となる側に配置されるのが好ましい。この場合、透明部材は、チャンネルの円周の10%以上50%以下の範囲を占めるように設けられていることが好ましい。
【0011】
また、透明部材は、チャンネルの円周の50%以上の範囲を占めるように設けられており、反射部材は、チャンネルの同心円上の少なくとも2ヶ所以上にあって、チャンネルの中心軸に対して平行に延びるマーカーであってもよい。この場合、マーカーは、透明部材に埋設されているか、或いは、チャンネルの内周面に配設されていることが好ましい。
【0012】
また、チャンネルが、内視鏡の鉗子チャンネルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、観察に必要なフレームレートを維持しつつ、断層像の解像度を上げることが可能な光干渉断層内視鏡装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光干渉断層内視鏡装置の構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る光干渉断層内視鏡装置の電子内視鏡先端部を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る光干渉断層内視鏡装置のOCTプローブの回転動作を説明するタイミングチャートである。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態に係る光干渉断層内視鏡装置の電子内視鏡先端部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光干渉断層内視鏡装置の構成図である。光干渉断層内視鏡装置10は、電子内視鏡100と、電子内視鏡用プロセッサ200と、電子内視鏡用モニタ300と、OCTプローブ400と、OCTプロセッサ500と、OCT用モニタ600から構成される。電子内視鏡用モニタ300には、電子内視鏡100から得られる内視鏡観察画像が表示され、OCT用モニタ600には、OCTプローブ400から得られるOCTによる観察画像が表示される。
【0016】
電子内視鏡100が備えるライトガイド110は、電子内視鏡用プロセッサ200の光源210から照射された照明光を電子内視鏡100の先端に導く。電子内視鏡100の先端には、配光レンズ120が設けられており、ライトガイド110によって電子内視鏡100の先端に導かれた照明光は、配光レンズ120を介して、電子内視鏡100の挿入部105の先端部前方の被観察部位Xに照射される。そして、被観察部位Xによって反射された照明光の一部は、電子内視鏡100の先端に設けた集光レンズ130を介して撮像素子140の撮像面に結像する。
【0017】
撮像素子140は、例えば、CCDであり、内視鏡用コントローラ150から入力されるタイミング信号で駆動され、結像面に結像した被観察部位Xの像を画像信号として内視鏡用コントローラ150に出力する。内視鏡用コントローラ150は、撮像素子140から入力される画像信号を増幅してA/D変換し、電子内視鏡用プロセッサ200の画像処理回路220に送信する。
【0018】
画像処理回路220は、システムコントローラ230からの指示に基づいて、内視鏡用コントローラ150から受信した画像信号に輪郭強調等の画像処理を施した上でD/A変換し、アナログのコンポジットビデオ信号(例えば、NTSC信号)を電子内視鏡用モニタ300に出力する。そして、コンポジットビデオ信号が電子内視鏡用モニタ300に出力されることにより、電子内視鏡用モニタ300上に内視鏡観察画像(被観察部位Xの画像)が表示される。
【0019】
システムコントローラ230は、電子内視鏡用プロセッサ200の各構成要素を統括的に制御しており、上述のように画像処理回路220を制御すると共に、電子内視鏡用モニタ300上に表示される内視鏡観察画像が一定の明るさとなるように光源210から照射される照明光の光量を制御する。かくして、一定の明るさの内視鏡観察画像が電子内視鏡用モニタ300上に表示される。
【0020】
また、電子内視鏡100は、その基端部から先端部にわたって、処置具等を挿通可能な円筒状の鉗子チャンネル160を有しており、本実施形態においては、鉗子チャンネル160の鉗子口160aから円柱状のOCTプローブ400が挿入され、鉗子チャンネル160の先端は、電子内視鏡100の先端部に位置している。OCTプローブ400は、後述するように光ファイバF3及び光偏向部410を有し、OCTプローブ400の先端からは、鉗子チャンネル160の延びる方向に対して略直角となる方向に光が出射される。鉗子チャンネル160の先端開口部160bは、透明部材170と反射部材180で構成され、OCTプローブ400の先端から出射される光が鉗子チャンネル160から外側(図1中下側)に出射されるように透明部材170が配置され、OCTプローブ400の先端から出射される光が正反射してOCTプローブ400の先端に戻るように反射部材180が配置される(後述)。
【0021】
OCTプロセッサ500は、コントローラ501、低コヒーレント光源502、光カプラ503、ロータリジョイント504、第1アクチュエータ505、光検出器506、信号処理回路507、レンズ508、ダハミラー509、第2アクチュエータ510、光ファイバF1〜F5を有する。OCTプロセッサ500には、OCTプローブ400が接続されており、光ファイバF3が、OCTプローブ400内に挿通されている。なお、本実施形態の光ファイバはいずれもシングルモード光ファイバを想定する。
【0022】
コントローラ501は、OCTプロセッサ500全体を統括して制御する。低コヒーレント光源502は、例えば、赤外の低コヒーレント光を出力することができる光源であって、本実施形態ではSLD(Super Luminescent Diode)を想定する。
【0023】
また、OCTプローブ400は、ロータリジョイント504に結合される光ファイバF3および光偏向部410を有する。なお、本実施形態のOCTプローブ400の内部においては、少なくとも光偏向部410の周囲に、屈折率差による無用な光量損失を抑えるためのシリコンオイルが充填されている。
【0024】
OCTプローブ400、OCTプロセッサ500及びOCT用モニタ600によって、以下のようにして断層像が取得される。
【0025】
まず、低コヒーレント光源502から低コヒーレント光が出力される。その低コヒーレント光は、光ファイバF1内を通り、光カプラ503に入射する。光カプラ503は、2対2の双方向4チャンネルタイプのもので構成され、光カプラ503は、入射された低コヒーレント光を、光ファイバF2を通る光と、光ファイバF4を通る光とに分割する。
【0026】
光カプラ503で分割されて光ファイバF2を光路上先端側へ進む低コヒーレント光(以降、本明細書中では物体光と称するものとする)は、次いでロータリジョイント504に導かれる。そして、ロータリジョイント504において結合される光ファイバF3に入射する。ロータリジョイント504は、コントローラ501の制御下、第1アクチュエータ505によって回転駆動され、光ファイバF3をその中心軸回りに回転させる。
【0027】
光ファイバF3内を進む物体光は、光ファイバF3に軸合わせされた状態で接合している光偏向部410に入射する。光偏向部410の構成は後に詳述するが、入射する物体光を略直角に偏向する機能を有し、偏向された物体光は、OCTプローブ400の側面から射出される。そして、OCTプローブ400の側面から射出される物体光は、透明部材170が存在する領域では透明部材170を透過してプローブ外部に存在する体腔内の生体組織Sに照射され、反射部材180が存在する領域では反射部材180に照射されプローブ外部には出射されないように構成されている。
【0028】
光偏向部410は、光ファイバF3と共に、OCTプローブ400内部で回転する。従って、光偏向部410で偏向された物体光は、光偏向部410の回転軸に直交する面内において回転走査される。当該面内の生体組織Sからの反射光(以降、本明細書中では、物体反射光と称するものとする)及び反射部材180からの反射光(以降、本明細書中では、チャンネル反射光と称するものとする)は、入射時の光路と同一の光路を戻り、光カプラ503に導かれる。
【0029】
光カプラ503で分割されて光ファイバF4を進む低コヒーレント光(以降、本明細書中では、参照光と称するものとする)は、レンズ508を介して、平行光束に変換された後、ダハミラー509で反射される。ダハミラー509からの反射光(以降、本明細書中では、参照反射光と称するものとする)は、光ファイバF4を通って戻り、光カプラ503に導かれる。
【0030】
ダハミラー509は、コントローラ501の制御下、第2アクチュエータ510によって、レンズ508の光軸に沿って平行移動自在に構成されている。この構成により、光ファイバF4の先端側端面F4aからダハミラー509までの光路長は可変となっている。換言すれば、光カプラ503からダハミラー509までの光路長が可変となっている。
【0031】
OCTプローブ400の側面から射出される物体光が透明部材170から出射される場合、物体反射光および参照反射光は共に光カプラ503と光ファイバF5を経て光検出器506に入射する。ここで、ダハミラー509を平行移動させ、光カプラ503からダハミラー509までの光路長と光カプラ503から生体組織Sの表面又は所望の深さまでの光路長に一致させる。これにより、生体組織Sからの物体反射光があれば、二種類の反射光は干渉し、光検出器506において検出される。
【0032】
OCTプローブ400の側面から射出される物体光が反射部材180を照射する場合、チャンネル反射光および参照反射光が共に光カプラ503と光ファイバF5を経て光検出器506に入射する。ここで、反射部材180は、物体光を正反射するように構成されているため、チャンネル反射光の強度は、物体反射光の強度に比較して大きいものとなる。従って、反射部材180からのチャンネル反射光があれば、所定の振幅の信号として、光検出器506において検出される。
【0033】
光検出器506は、三種類の反射光(物体反射光、チャンネル反射光、参照反射光)を受光することにより検出した干渉パターン及びチャンネル反射光の信号を信号処理回路507に送信する。信号処理回路507は、干渉パターンの信号を受信した場合、この信号に所定の処理を施して、生体組織Sに関する画像信号を生成し、チャンネル反射光の信号を受信した場合、この信号をコントローラ501に出力する。干渉パターンの信号から生成された画像信号は、OCT用モニタ600に出力される。OCT用モニタ600は、入力される画像信号に対応する画像を表示する。なお、上述したように、光偏向部410により偏向された物体光は、その回転軸に直交する面内において走査され、生体組織Sに照射される。また、ダハミラー509の平行移動により、生体組織Sの深さ方向(物体光の回転走査の半径方向)の各位置における物体反射光の干渉を検出することができる。よって、生成される画像信号に対応してOCT用モニタ600上に表示される画像は、生体組織Sの断層像として表れる。
【0034】
信号処理回路507からコントローラ501にチャンネル反射光の信号が入力された場合、コントローラ501は、第1アクチュエータ505を制御し、光ファイバF3の回転速度を速め、チャンネル反射光の信号がなくなるまでその回転速度を維持するように構成される。すなわち、本実施形態においては、物体反射光が得られる時とチャンネル反射光が得られる時とで光ファイバF3の回転速度を変更している。以降、本明細書中では、物体反射光が得られる時(すなわち、生体組織Sを走査する時)の光ファイバF3の回転速度を第1の回転速度と称し、チャンネル反射光が得られる時の光ファイバF3の回転速度を第2の回転速度と称するものとする。なお、上述のように第2の回転速度は、第1の回転速度よりも速く、例えば、従来の回転速度の2倍となるように構成される。
【0035】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る光干渉断層内視鏡装置10の電子内視鏡100の先端部を示す図である。図2(a)は、電子内視鏡100の先端部の正面図であり、図2(b)は、電子内視鏡100の先端部の断面図である。なお、図2において、図1と共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0036】
図2(a)に示されるように、本実施形態においては、鉗子チャンネル160の先端開口部160bは、正面から見たときに、下側半分が物体光を透過可能な透明部材170によって構成され、上側半分が物体光を正反射可能な反射部材180で構成される。
【0037】
図2(b)に示すように、OCTプローブ400は、シース401内に、光ファイバF3、光偏向部410を有する。光偏向部410は、基端側から順に、コアレスガラス411、GRINレンズ412、直角プリズム413をそれぞれ接合した部材である。シース401は、先端が閉塞された、可撓性を有するチューブ管状の部材である。また、シース401は、光透過性を有している。なお、説明の便宜上、光ファイバF3の中心軸に沿う方向をZ軸方向とした直交座標系を定義する。
【0038】
光ファイバF3から射出された物体光は、コアレスガラス411を透過する間に幾分拡散した後、GRINレンズ412に入射する。GRINレンズ412は、光を集光させるパワー(正のパワー)を有するレンズであり、物体光を収束させつつ射出する。その後、物体光は直角プリズム413に入射する。直角プリズム413の偏向面413aは、低コヒーレント光の波長域の光(赤外光)は反射させるようにコーティングが施されており、物体光は偏向面413aにおいて略直角に偏向される。物体光は、光ファイバF3と共に回転する直角プリズム413(Z軸まわりに回転)により、XY面内で回転走査される。直角プリズム413から射出された物体光は、シース401の側壁を透過後、透明部材170が存在する領域では透明部材170を透過してプローブ外部に存在する体腔内の生体組織Sに照射され光路上の所定の位置で焦点を結ぶ。また、物体光は反射部材180が存在する領域では正反射される。
【0039】
そして、上述したように、コントローラ501は、物体光が透明部材170を透過してプローブ外部に存在する体腔内の生体組織Sに照射される間は、光ファイバF3を第1の回転速度で回転させ、物体光が反射部材180で反射される間は、光ファイバF3を第1の回転速度よりも速い第2の回転速度で回転させる。
【0040】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る光干渉断層内視鏡装置10のOCTプローブ400の回転動作を説明するタイミングチャートである。図3の横軸は時間であり、縦軸は、図2(a)の方向からOCTプローブ400を見たときにOCTプローブ400の直角プリズム413の偏向面413aによって偏向されて出射される物体光の位置を示しており、図2の矢印Oの方向に偏向される時を0°とした時の位相角度で示している。なお、本実施形態においては、OCTプローブ400の光ファイバF3と直角プリズム413は、図2(a)の方向からOCTプローブ400を見たときに時計回りに回転する。すなわち、物体光は、位相角が0°から270°、180°、90°、0°と変化する。また、図3の実線は、本実施形態のOCTプローブ400の物体光の位置を示しており、点線は、従来のOCTプローブのように一定速度で物体光を回転走査させた場合の物体光の位置を示している。また、図3の矢印O、P、Q、Rで示されるタイミングは、図2(a)の矢印O、P、Q、Rで示される位置に相当している。
【0041】
OCTプローブ400から出射される物体光が、第1の回転速度で矢印Oの位置(すなわち、位相角0°の時)から時計回りに回転すると、矢印Oから矢印Qまでの期間(すなわち、図3の期間α)、物体光が透明部材170を透過してプローブ外部に存在する体腔内の生体組織Sに照射される。そして、上述したように、期間αの間、光検出器506は、物体反射光と参照反射光を受光することにより干渉パターンを検出し、OCT用モニタ600上には生体組織Sの断層像が表示される。
【0042】
OCTプローブ400から出射される物体光が、矢印Qの位置(すなわち、位相角180°の時)にくると、物体光が反射部材180によって反射されるため、光検出器506は、チャンネル反射光を検出する。上述したように、光検出器506がチャンネル反射光を検出すると、コントローラ501は、第1アクチュエータ505を制御し、光ファイバF3の回転速度を第2の回転速度に切り換える。そして、チャンネル反射光が検出されなくなるまで第2の回転速度を維持する。従って、矢印Qから矢印Oまでの期間、光ファイバF3の回転速度は、第1の回転速度より速い第2の回転速度となる。本実施形態においては、第2の回転速度は、従来のOCTプローブの回転速度の2倍の速度に設定される。そして、矢印Oから矢印Qまでの期間は、従来(期間β)の1.5倍の時間を掛けてゆっくり回転走査するように構成している。従って、従来よりもフレームレートを下げずに1.5倍解像度の高い断層像を取得することができるようになっている。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、OCTプローブ400から出射される物体光が、生体組織Sに照射される期間は光の走査速度を下げ、生体組織Sに照射されない期間は光の走査速度を上げることが可能となる。そして、これによって、従来よりもフレームレートを下げずに解像度の高い断層像を取得することが可能となる。
【0044】
以上が本実施形態の光干渉断層内視鏡装置10の説明であるが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、発明の技術的思想の範囲内において、様々な変形が可能である。例えば、本実施形態においては、反射部材180は位相角0°〜180°の範囲に配設されているが、この構成に限定されるものではない。光ファイバF3の回転速度を切り替えるためのタイミングを得られれば良く、例えば、反射部材180は位相角315°〜225°の範囲に配設されてもよい。また、透明部材170が、鉗子チャンネル160の円周の10%以上50%以下の範囲を占めるように設けられるのが好ましい。
【0045】
また、本実施形態においては、物体光を反射部材180で反射させてチャンネル反射光を生成させる構成としたが、反射部材180に代えて遮光部材を用いる構成とすることも可能である。この場合、チャンネル反射光が殆ど発生しない場合にコントローラ501が、光ファイバF3の回転速度を第2の回転速度に切り換える。
【0046】
本実施形態においては、鉗子チャンネル160の先端開口部160bは、正面から見たときに、下側半分が物体光を透過可能な透明部材170によって構成され、上側半分が物体光を正反射可能な反射部材180で構成されるとしたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、反射部材180を無くし、鉗子チャンネル160の先端開口部160bの周辺全体を、物体光を透過可能な透明部材によって構成してもよい。
【0047】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る電子内視鏡100Mの先端部を示す図である。図4(a)は、電子内視鏡100Mの先端部の正面図であり、図4(b)は、電子内視鏡100Mの先端部の断面図である。なお、図4において、図1及び図2と共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0048】
図4(a)に示されるように、本実施形態の構成は、第1の実施形態に係る電子内視鏡装置100の構成から反射部材180を無くし、鉗子チャンネル160の先端開口部160bの周辺全体を、物体光を透過可能な透明部材170Mによって構成している。そして、鉗子チャンネル160の同心円上の位置であって、矢印Oの位置(位相角0°の位置)及び矢印Qの位置(位相角180°の位置)にそれぞれ右側マーカー190a及び左側マーカー190bが配置されている。右側マーカー190a及び左側マーカー190bは、位相角0°の位置及び位相角180°の位置を示す細長い円筒状のマーカーであり、物体光を反射するアルミ等で形成され、鉗子チャンネル160の中心軸と略平行となるように透明部材170M中をZ軸方向に延びるように埋設される。
【0049】
本実施形態においては、OCTプローブ400から出射される物体光が、矢印Oの位置(すなわち、位相角0°の時)及び矢印Qの位置(すなわち、位相角180°の時)にくると、物体光が右側マーカー190a及び左側マーカー190bによって反射されるため、光検出器506は、チャンネル反射光を検出する。そして、コントローラ501は、第1アクチュエータ505を制御し、右側マーカー190aを検出した時に光ファイバF3の回転速度を第2の回転速度から第1の回転速度に切り換え、左側マーカー190bを検出した時に第1の回転速度から第2の回転速度に切り換える。
【0050】
従って、本実施形態によっても第1の実施形態と同様、OCTプローブ400から出射される物体光が、生体組織Sに照射される期間は光の走査速度を下げ、生体組織Sに照射されない期間は光の走査速度を上げることが可能となる。そして、これによって、従来よりもフレームレートを下げずに解像度の高い断層像を取得することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態においては、右側マーカー190a及び左側マーカー190bを同一のマーカーとして構成しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、一方のマーカーの反射率を他方と変えたり、一方の大きさ又は形状を他方と変えたりすることも可能である。このような構成とすることにより、コントローラ501において、右側マーカー190a及び左側マーカー190bの区別が容易になる。
【0052】
また、本実施形態においては、右側マーカー190aと左側マーカー190bの2つのマーカーで構成しているが、位相角180°以下の範囲においてさらにマーカーを追加してもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、鉗子チャンネル160の先端開口部160bの周辺全体を、物体光を透過可能な透明部材170Mによって構成しているが、この構成に限定されるものではなく、鉗子チャンネル160の円周の50%以上の範囲を占めるように設けられていればよい。
【0054】
また、本実施形態においては、右側マーカー190a及び左側マーカー190bは、それぞれ位相角0°の位置及び位相角180°の位置に配設されているが、光ファイバF3の回転速度を切り替えるタイミングを得られれば良く、この構成に限定されるものではない。右側マーカー190a及び左側マーカー190bは、他の位置(例えば、位相角225°及び位相角315°の位置)にあってもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、右側マーカー190a及び左側マーカー190bは、鉗子チャンネル160の中心軸と略平行となるように透明部材170M中をZ軸方向に延びるように埋設されて構成されているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、鉗子チャンネル160の内周面に配設されてもよい。
【0056】
また、第1及び第2の実施形態においては、OCTプローブ400を鉗子チャンネル160に挿入する構成としたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、電子内視鏡100、100Mが、OCTプローブ400が挿通される専用のチャンネルを有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 光干渉断層内視鏡装置
100、100M 電子内視鏡
105 挿入部
110 ライトガイド
120 配光レンズ
130 集光レンズ
140 撮像素子
150 内視鏡用コントローラ
160 鉗子チャンネル
160a 鉗子口
170、170M 透明部材
180 反射部材
190a 右側マーカー
190b 左側マーカー
200 電子内視鏡用プロセッサ
210 光源
220 画像処理回路
230 システムコントローラ
300 電子内視鏡用モニタ
400 OCTプローブ
401 シース
410 光偏向部
411 コアレスガラス
412 GRINレンズ
413 直角プリズム
500 OCTプロセッサ
501 コントローラ
502 低コヒーレント光源
503 光カプラ
504 ロータリジョイント
505 第1アクチュエータ
506 光検出器
507 信号処理回路
508 レンズ
509 ダハミラー
510 第2アクチュエータ
600 OCT用モニタ
F1、F2、F3、F4、F5 光ファイバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内を観察するために前記体腔内に挿入される挿入部を有する内視鏡と、
光コヒーレンス・トモグラフィにより生体の断層像を得るための測定光および、参照光を生成し、前記生体に照射された前記測定光の反射光を前記参照光と干渉させ、得られた干渉光の強度に応じた検出信号を生成する干渉光検出部と、
前記干渉光検出部が生成した検出信号に基づいて前記生体の断層像を生成する断層像生成部と、
を備えた光干渉断層内視鏡装置であって、
前記測定光を前記干渉光検出部から先端部に導光し、前記測定光を該先端部で偏向して回転走査するように出射すると共に、前記測定光の反射光を該先端部から前記干渉光検出部に導光する光プローブと、
先端部に前記測定光を透過させる透明部材と、前記測定光を反射させる反射部材とを有し、前記光プローブの先端部が前記透明部材及び前記反射部材に対向するように前記光プローブを前記挿入部に沿って案内するチャンネルと、
前記測定光の反射光の強度を検出することにより、前記測定光が前記透明部材又は前記反射部材のいずれを走査しているかを検出する走査位置検出部と、
前記走査位置検出部の検出結果に基づいて前記光プローブから出射される前記測定光の走査速度を制御する走査速度制御手段と、
を備えることを特徴とする光干渉断層内視鏡装置。
【請求項2】
前記走査速度制御手段は、前記走査位置検出部によって前記測定光が前記透明部材を走査していることを検出した場合、前記測定光の走査速度を第1の走査速度に設定し、前記測定光が前記反射部材を走査していることを検出した場合、前記測定光の走査速度を前記第1の走査速度よりも速い第2の走査速度に設定することを特徴とする請求項1に記載の光干渉断層内視鏡装置。
【請求項3】
前記透明部材は、前記チャンネルの前記生体に近位となる側に配置され、前記反射部材は、前記チャンネルの前記生体に遠位となる側に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光干渉断層内視鏡装置。
【請求項4】
前記透明部材は、前記チャンネルの円周の10%以上50%以下の範囲を占めるように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光干渉断層内視鏡装置。
【請求項5】
前記透明部材は、前記チャンネルの円周の50%以上の範囲を占めるように設けられており、前記反射部材は、前記チャンネルの同心円上の少なくとも2ヶ所以上にあって、前記チャンネルの中心軸に対して平行に延びるマーカーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光干渉断層内視鏡装置。
【請求項6】
前記マーカーは、前記透明部材に埋設されていることを特徴とする請求項5に記載の光干渉断層内視鏡装置。
【請求項7】
前記マーカーは、前記チャンネルの内周面に配設されていることを特徴とする請求項5に記載の光干渉断層内視鏡装置。
【請求項8】
前記チャンネルが、前記内視鏡の鉗子チャンネルであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光干渉断層内視鏡装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−110632(P2012−110632A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264524(P2010−264524)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】