説明

光干渉測定法により解剖学的構造に関連する情報を評価するためのシステム、方法及びソフトウエア装置

解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する画像を評価するためのソフトウエアシステム、装置及び方法が提供される。例えば、解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第1の情報、及び解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第2の情報を受け取ることができる。第1の情報と第2の情報との間の関係を決定することにより、第3の情報が作成することができる。更に、所定の病理学的評価基準及び第3の情報を用いて、画像を評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年4月28日付で出願された米国特許出願第60/676,362号からの優先権の利益に基づき及びそれを主張する。その全ての開示は、引用文献により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
連邦政府により支援された研究に関する記述
本発明は、国立衛生研究所により与えられた契約No.RO1 CA 103767の下でのアメリカ合衆国政府の支援によりなされた。従って、アメリカ合衆国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
本発明の分野
本発明は、光干渉測定法(optical coherence ranging technique)により情報を評価する光干渉測定により解剖学的構造に関連する情報を評価するための、例えば生体から得られた顕微鏡画像を読み取るためのシステム、方法及びソフトウエア装置に関する。
【背景技術】
【0004】
様々な異なる光学的生検法は、生きたヒト患者中の疾患の非侵襲診断のために説明及び開発されてきた。これらの従来の装置は疾患に関連する情報を提供することができるが、これらの先行技術の方法により得られるデータと診断のためのケアの医学的基準の間に差異が存在している。
【0005】
病理学者は、一般的に、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色スライドの検鏡及びその形態学的解釈に基づいて組織を診断する。病理学者は、スコアリングシステム又は方法を利用することができ、そこでは、診断を提供するために様々な特徴が留意され、形成される。これらのスコアリングシステム又は方法は、診断のための定量的又は半定量的な基礎を標準化し提供することができる。このようなスコアリングシステム及び方法の例としては、前立腺癌のためのグリソン・グレード、バレット食道中の異形成のためのハジット基準、バンフ腎同種移植スコアリングシステム、非アルコール性脂肪肝疾患のためのナッシュ・スコアリングシステムが挙げられる。このような診断のための他のスコアリングシステム及び方法が存在する。
【0006】
好ましくは、光学的生検情報とケアの基準の基礎のための方法及びスコアリングシステムとの間に、特有の関係が確立され得る。次いで、ケアの基準のために診断を提供するのに一般的に用いられる同一の基準は、光学的生検診断情報に関して、変更した形態で利用することができる。次いで、光学的生検画像において同定された特徴に基づいた変更されたスコアリングシステム又は方法は、ケアの組織病理学的基準に一致した方法において組織を診断するために実施することができる。
【0007】
バレット食道に関連し得る上部消化管シナリオの例は、以下に提供される。ここで、光学的生検画像は、診断を提供するのに利用することができる。
【0008】
胃食道接合部における特殊化生の診断
胃食道逆流性疾患(GERD)は、発生率が増大し、食道特殊腸上皮化生(SIM)(一般的にバレット食道(BE)として知られている)の発達に関する周知の危険因子であって、R.J.Loffeld等の「Rising incidence of reflux oesophagitis in patients undergoing upper gastrointestinal endoscopy」(Digestion,2003,Vol.68(2−3)pp.141−4)に記載されている。C.Winters,Jr.等の「Barrett’s esophagus.A prevalent,occult complication of gastroesophageal reflux disease.Gastroenterology」(1987,Vol.92(1),pp.118−24)で論じされているように、慢性GERDを有する患者において、SIMの有病率は10〜15%もの高さであると推定された。J.Lagergren等の「Symptomatic gastroesophageal reflux as a risk factor for esophageal adenocarcinoma」(N Engl J Med,1999,Vol.340(11),pp.825−31)に記載されているように、GERDの再発及び重い症状を有する患者に関して、20年間にわたる腺癌の発達に対する調整オッズ比は、それぞれ7.7及び43.5である。更に、W.J.Blot等の「Rising incidence of adenocarcinoma of the esophagus and gastric cardia」(Jama,1991,Vol.265(10),pp.1287−9);P.Bytzer等の「Adenocarcinoma of the esophagus and Barrett’s esophagus:a population−based study」(Am J Gastroenterol,1999,Vol.94(1),pp.86−91);及び、S.S.Devesa等の「Changing patterns in the incidence of esophageal and gastric carcinoma in the United States」(Cancer,1998,Vol.83(10),pp.2049−53)で論じられているように、食道腺癌及び近位の胃(胃噴門)癌の発生率は、この30年間で急速に増大した。
【0009】
S.J.Spechlerの「Screening and surveillance for complications related to gastroesophageal reflux disease」(Am J Med,2001,Vol.lll Suppl 8A,pp.130S−136S)で議論されているように、進行する食道癌に関する有力な危険因子としてのGERDの認識により、例えばGERDの慢性症状を有する50歳以上の白人、男性患者に対して、5年以上の間、上部内視鏡スクリーニングを推奨することができる。GERDの増大する有病率及び食道癌に対する危険因子としてのSIMの医学会の認識の結果として、SIMに対するスクリーニング・ストラテジーとしての内視鏡の使用は、近い将来顕著に増大するだろう。このような増大は、医療制度及び個々の患者に対して、相当なコストを負担し得る。従来の生検よりも大きな対象領域を提供し得る他のスクリーニング方法は、多くの内視鏡手順の危険性と不便さを減少し得る。更に、内視鏡を利用する特定の方法は、医療制度における包括的なスクリーニングの財政負担を部分的に軽減して、潜在的により低いコストで実施することができる。
【0010】
バレット食道を有する患者における異形成の同定
BEが診断された場合、HGDを検出するための定期的な内視鏡サーベイランスが推奨され得る。P.Sharma等の「A critical review of the diagnosis and management of Barrett’s esophagus:the AGA Chicago Workshop」(Gastroenterology,2004,Vol.127(1),pp.310−30)に記載されているように、HGDを有する患者における腺癌の高い発生率(46ヶ月間で25%)を示す観測結果から、これらの推奨は進展し得る。D.S.Levine等の「An endoscopic biopsy protocol can differentiate high−grade dysplasia from early adenocarcinoma in Barrett’s esophagus」(Gastroenterology,1993,Vol.105(1),pp.40−50)で論じられているように、HGDのサーベイランスのための現在のガイドラインは、バレット部分の軸長に沿った2センチメーター毎の四象限生検を含み得る。しかし、G.S.Dulaiの「Surveying the case for surveillance」(Gastroenterology,2002,Vol.122(3),pp.820−823);G.W.Falk等の「Surveillance of patients with Barrett’s esophagus for dysplasia and cancer with balloon cytology」(Gastroenterology,1997,Vol.112(6),pp.1787−1797);及び、J.M.Streitz等の「Endoscopic surveillance of Barrett’s esophagus.Does it help?」(Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery,1993,Vol.105,pp.383−388)で論じられているように、サーベイランス内視鏡の正確性は、サンプリング誤差により限定され得る。J.W.van Sandick等の「Impact of endoscopic biopsy surveillance of Barrett’s oesophagus on pathological stage and clinical outcome of Barrett’s carcinoma」(Gut,1998,Vol.43(2),pp.216−22);J.M.Inadomi等の「Screening and surveillance for Barrett esophagus in high−risk groups:a cost−utility analysis」(Ann Intern Med,2003,VoI.138(3),pp.176−86);D.Provenzale等の「Barrett’s esophagus:a new look at surveillance based on emerging estimates of cancer risk」(Am J Gastroenterol,1999,Vol.94(8),pp.2043−53);及び、A Sonnenberg等の「Medical decision analysis of endoscopic surveillance of Barrett’s oesophagus to prevent oesophageal adenocarcinoma」(Aliment Pharmacol Ther,2002,Vol.16(1),pp.41−50)に記載されているように、BEに対する最適なサーベイランス及びスクリーニング・ストラテジーは議論されているが、多くの費用効果分析は、主な決定要因としての内視鏡の頻度及びコストに焦点を合わせている。
【0011】
GERDの増大する有病率及び食道癌に関する危険因子としてのBEの医学界の認識により、BEのためのスクリーニング及びサーベイランス・ストラテジーとしての内視鏡の使用は、近い将来において顕著に増大するだろう。このような増大は、医療制度及び個々の患者に対して相当なコストを負担し得る。有力な低コストのサーベイランス・ストラテジーは、特定の内視鏡技術、例えばナローバンドイメージング、色素内視鏡検査、又は蛍光内視鏡検査が挙げられる。非内視鏡画像診断法も、BEの管理において役割を果たし得る。異形成組織を含む食道の領域に生検を向けるための方法は、サーベイランス間隔を増大させること、疾患進行の初期の段階における低侵襲手術技術を可能にすること、又は不必要な介入手順を回避することにより、BEを有する患者におけるサーベイランスの有効性及び効率を改善することができる。
【0012】
生きたヒト患者から情報を得るのに利用することができる、1つのこのような光学的生検技術の例を、以下で提供する。
【0013】
光干渉断層法
光干渉断層法(OCT)は、例えば近赤外光を用いて、胃腸粘膜の高分解能(10μmの軸方向分解能)の断面像を作成することのできる光学的画像診断法である。画像は、可視化された物質の特性に関連する光反射性に基づいて、構築することができる。S.Brand等の「Optical coherence tomography in the gastrointestinal tract」(Endoscopy,2000,Vol.32(10),pp.796−803)に記載されているように、OCT技術は、顕微鏡スケールの構造、例えば粘膜層、「窩(pit)及び腺」形態、及び腺状構造を同定するのに用いることができる。例えば、J.M.Poneros等の「Diagnosis of specialized intestinal metaplasia by optical coherence tomography」(Gastroenterology,2001,Vol.120(1),pp.7−12)で議論されているように、OCT法は、SIMを鱗状基底部及び腔粘膜から区別することができるが、胃噴門部をSIMとして誤って同定し得る。
【0014】
例えば信頼できる感度及び費用効果のスクリーニング機器であるOCT法に関して、扁平円柱上皮境界における上皮構造の特性は、前癌状態(SIM)を良性組織から区別し、SCJにおいてSIMを同定するのに十分に正確であるべきである。SCJにおいてSIMを噴門から区別し、胃食道接合部において異形成を非化生組織から区別するためには、アルゴリズム及び方法が必要とされる。
【0015】
食道生検のH&E染色スライドからSIM中の異形成を診断及び等級分けするための病理学的ハジット基準及び方法の例を、以下に記載する。ハジット基準は、定性的診断の提供を助けるのに使用し、或いは半定量的又は定量的診断のためのスコアリングシステムとして定式化することができる。
【0016】
例えば、食道SIM中の異形成の組織学的診断のための、様々な程度及び組み合わせの細胞異型及び構造上の乱れにより、異形成を組織学的に特徴づけする(R.C.Haggitの「Barrett’s esophagus,dysplasia,and adenocarcinoma」(Human Pathology,1994,Vol.25,pp.982−93)、及びE.Montgomery等の「Reproducibility of the diagnosis of dysplasia in Barrett esophagus:a reaffirmation」(Human Pathology.2001,Vol.32,pp.368−378)に記載されているように)。病理学者により注目され、異形成の悪性度の診断を提供するのに用いることのできる典型的な一組の基準は、ハジット基準として知られている。これらの基準は、スコアリングシステムの一部として用いることができ、或いは異形成の悪性度のより一貫した診断のための定性的アルゴリズムにおいて用いることができる。Montgomery等の「Reproducibility of the diagnosis of dysplasia in Barrett esophagus:a reaffirmation」(Human Pathology.2001,Vol.32,pp.368−378)に記載されているように、各4つのハジットの特徴を以下に挙げる。
【0017】
A)腺構造
異形成SIMの腺は、出芽、分岐、及び内腔陥入を有し、輪郭が込み合い、変形し、不規則であり得る。篩状腺、嚢状拡張、及び壊死片は、重度の異形成において同定される可能性が高い。
【0018】
B)下層の腺と比較した表面成熟
非異形成SIMは、最も大きな程度の表面成熟を有し、一方HGDは、最小の表面成熟を有し得る。高度の表面成熟は、表面の低い核対細胞質比率を暗示し、一方、低度の表面成熟は、高い表面の核対細胞質比率を示唆する。
【0019】
3)核異型
異形成上皮を有する細胞は、一般的に、不規則な核膜、小嚢(異種)クロマチン、及び核極性の損失と共に、拡大した過色素性の核を含む。
【0020】
4)炎症
炎症は、独立して変形した腺構造及び核異型を生じ得るので、炎症は、異形成の診断における交絡因子である。構造的及び核異型が炎症の結果であり得る場合は、異形成に関して不明確(IND)であると呼ばれる。組織学によるこの診断に対する観測者間同意は、アーチファクトが確定診断を提供するのに必要とされる特徴を不明瞭にする場合、又は疾患スペクトラムの異なる目的からの多くの基準が同時に存在する場合にしばしば留保されるので、低い(κ=0.14)(Montgomery等の「Reproducibility of the diagnosis of dysplasia in Barrett esophagus:a reaffirmation」(Human Pathology.2001,Vol.32,pp.368−378)に記載されている)。
【発明の開示】
【0021】
本発明の目的及び概要
本発明の1つの典型的な目的は、先行技術のシステム(例えば、上記に記載したもの)の特定の欠陥及び欠点を克服し、ケア組織病理の標準に相当する診断法を提供するための光学的生検画像を読み取るための典型的なシステム、方法及びソフトウエア装置を提供することである。本発明の別の典型的な目的は、光学的生検画像のための典型的なスコアリングシステム及び方法を提供することである。本発明の更に別の目的は、光学的生検画像から組織病理学的診断を得るための典型的なシステム、方法及びソフトウエア装置を提供することである。
【0022】
これらの及び他の目的は、光学的生検画像から組織病理学的診断を得るための本発明のシステム、方法及びソフトウエア装置の典型的な実施態様を提供することにより達成することができる。例えば、光学的生検画像の特性と、診断を提供するために医療及び病理学の実務において用いられる画像/データの間の関係を決定することができる。これらの特性としては、分解能、コントラストのモード、空間的及び構造的特徴などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、OCT画像の分解能は、低倍率の顕微鏡の視界により得られる分解能と類似であり得る。従って、OCTシステム及び方法により可視化された典型的な構造上の特徴は、従来の組織病理学により見られる構造上の特徴と比較することができる。OCT画像中のコントラストは、その高度な散乱において、従来の組織病理学的H&E染色と類似又は同様であり得る。散乱は、ヘマトキシリンの好塩基性染色に似た又は類似であり得る高い核含有量の領域において生じ得る。更に、コラーゲンは、OCTシステム及び方法により観察される高度な散乱を有し、これは、組織病理学において見られる固有層及び粘膜下層の線状のエオシン好性染色に関連し得る。OCT法、システム及び方法のこれらの典型的な特徴、は、この光学的生検法により、及び病理学者により典型的に観察される微視的組織の低倍率の観察により見られる構造物の間の類似性の決定を助ける。
【0023】
本発明の1つの典型的な実施態様によると、光学的生検画像と組織病理学的画像との間に関係が確立される場合、H&E染色スライドを読み取るために病理学者により用いられる基準及び方法は、画像の特徴と特性との間の比較に基づいて変更することができる。その後、これらの基準及び方法に基づいたスコアリングシステム及び方法は、変更することができ、光学的生検画像自体に適用することができる。この方法において、従来の組織病理学的診断に関連する光学的生検画像から、診断を得ることができる。システム、方法、ソフトウエア装置及び方法のこの典型的な実施態様の利点は、形態と結果との間の組織病理学的関係から得られる先の情報を利用する能力を含み得る。更に、組織病理学的関係が数十年の間に形成されてきたので、光学的生検基準は、患者予後を予測するのに同様に信頼できる。これは、これらの非侵襲又は侵襲の少ない方法から組織診断法をもたらし得る。
【0024】
本発明の典型的な実施態様において、解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する画像を評価するためのソフトウエアシステム、装置及び方法が提供される。例えば、解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第1の情報、解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第2の情報を受け取ることができる。第1の情報と第2の情報との間の関係を決定することにより、第3の情報が作成され得る。更に、所定の病理学的評価基準及び第3の情報を用いて、画像を評価することができる。
【0025】
本発明の別の典型的な実施態様によると、第1の情報及び/又は第2の情報は、解剖学的構造の部分からの放射光と関連させることができる。光はそのような部分から反射されることができ、光は蛍光であることができる。この部分は、生体中で提供されることができ、及び/又は顕微鏡用スライドの上に置くことができる。スライドは、ヘマトキシリン及びエオシン、マッソントリクロー、パパニコロー染色、ディフ・クイック、又は過ヨウ素酸シッフのうちの少なくとも1つにより染色することができる。
【0026】
本発明の更に別の典型的な実施態様においては、第1の情報及び第2の情報は、解剖学的構造のそのような部分のほぼ同じ部分に関して提供することができる。第3の情報は、第1の情報と第2の情報に関連した物理的及び化学的構造に基づいて得ることができる。例えば、所定の病理学的評価基準は、ハジット基準であることができる。画像は、解剖学的構造の部分からの放射光と関連させることができる。光はそのような部分から反射されることができ、光は蛍光であることができる。
【0027】
本発明の更に典型的な実施態様によると、第1の情報及び/又は第2の情報は、光干渉断層法システム、スペクトルコード化共焦点顕微鏡システム、共焦点顕微鏡システム、反射共焦点顕微鏡システム及び/又は光周波数ドメインイメージングシステムにより得ることができる。例えば、解剖学的構造は、皮膚の下に存在し得る。更に、スライドは、抗体を用いて染色することができる。
【0028】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴及び利点は、添付した特許請求の範囲と併せた場合に、本発明の実施態様の以下の詳細な説明を読むことで明らかとなるだろう。
【0029】
図面を通して、例示した実施態様の特徴、要素、成分又は部分を示すために、別段断りのない限り、同一の参照数字及び文字が用いられる。更に、本発明は、図面に関して詳細に説明されるが、それは例示的な実施態様に関連してなされる。
【0030】
典型的な実施態様の詳細な説明
図1は、本発明の光学的生検画像から診断を提供するための光学的生検スコアリングシステム/手順を生み出すための方法の典型的な実施態様を示す。図1に示されるこの典型的な方法は、段階100で一連の光学的生検画像を撮ること、及び段階110で切除生検染色組織病理スライド又はその画像を得ること、及び双方に対して共通する特徴を決定すること(段階120)を含む。特徴は、2つの画像セットの相互関係を比較することにより決定した形態学的特徴であることができる。特徴は、光学的生検画像及び組織病理の双方で同定することのできる個々の構造、パターン、強度、又は対応する病理組織構造に基づいた光学的生検画像構造の読み取りを含んで成ることができる。この特徴の例としては、上皮構造、上皮層、縁、腺の形状、不規則な腺の特徴、上皮成熟、核密度などが挙げられる。
【0031】
その後、光学的生検の特徴と組織病理的特徴の間の関係は、段階130において決定及び/又は同定される。いったん関係が決定/同定されると、その後(段階135において)、組織病理学的基準、アルゴリズム、手順、又はスコアリングシステムの少なくとも1つを得ることができ、段階140において、段階130で得られた所定の関係に基づいて新規の光学的生検画像に適用する。この方法において、組織病理学的スコアリングシステムを用いて、新規の光学的生検画像に基づいて段階150において組織診断を提供することができる。
【0032】
図2は、本発明の光学的生検スコアリングシステムを得るための、光学的生検画像と従来の医学/病理学的診断の間の関係を決定するための方法の典型的な実施態様の流れ図を示す。この実施態様において、組織病理学的画像と光学的生検画像との間の関係は、コントラスト法、分解能、及び/又は画像を作成する特徴の所定の物理的理解に基づいて決定することができる(段階200)。この知識は、当業界で知られた物理的原理に基づいているか、又はモデリング及び/又は実験により決定されることができる。例えば、核が、OCT及び共焦点顕微鏡画像の双方で高いシグナルを有することが知られている。従って、所定の関係は、高いOCT及び共焦点シグナル及び核密度の間に存在し得る。従って、例えば異形成の指標である、高い核対細胞質比を示す組織病理学的画像は、高いOCT及び/又は共焦点シグナル強度を有するはずである。当業界で知られた他の関係は、a)コラーゲン、組織マクロファージ、b)メラニン、c)増大した細胞密度の領域からの高い散乱シグナル、及びl)細胞外マトリクス、d)細胞質、e)腺の内部からの低い散乱シグナルなどを含む。
【0033】
段階200における組織病理と光学的生検シグナル含量の間のこれらの所定の関係の決定と共に、その後、光学的生検特徴と組織病理特徴の間の関係を段階210において決定することができる。いったん関係が決定されたら、段階220において組織病理学的基準、アルゴリズム、及び/又はスコアリングシステムを提供し、段階220で得られた関係を用いて、段階230において所定に関係に基づいて新規の光学的生検画像に適用することができる。この方法において、組織病理スコアリングシステムを、段階240において、新規の光学的生検画像に基づいて組織診断を提供するのに用いることができる。
【0034】
図3は、本発明のスコアリングシステムを作成するための方法の別の典型的な実施態様の流れ図を示す。この典型的な実施態様において、一連の光学的生検画像は、例えば同一の場所で得ることのできるスライドからの対応する組織病理学的画像と共に得ることができる(段階300)。段階310において、この関係は、光学的生検画像と組織病理学的画像との間で同定することができる。画像データセットは比較することができ、2つのデータセットの間の関係、例えば構造、パターン、強度に基づいて、段階320において基準を作り上げることができる。段階330において、その後、光学的生検スコアリングシステムを作り上げるためのこれらの基準との関連で、組織病理スコアリングシステムを利用することができる。或いは、組織病理スコアリングシステムから独立した新規の光学的生検スコアリングシステムのパラメータを作成することができる。その後、光学的生検スコアリングシステムは、段階350において、新規の光学的生検画像に適用して、組織診断を提供することができる。
【0035】
上記のこれらの典型的な実施態様において、スコアリングシステムの典型的な作成を説明した。図4は、本発明のスコアに基づいた組織診断を生み出すための方法の典型的な実施態様の流れ図を示す。このスコアリングシステムに関して、全体又は最終的なスコアは、個々の特徴及び/又は基準に対して、段階400における個々のスコアを加えることにより、段階420において作成することができる。スコアは、一次的に加えることができ、及び/又は段階410において得られる加重スコアの一次結合であることができる。基準は、段階430におけるスコアに置くか又は適用し、段階440において、特定の組織診断を線引きすることができる。或いは、数値スコアに加えて、これらの典型的な手順は、定性的診断の提供において、定性的診断に関する流れ図の作成、又は光学的生検画像のレビューアーを助けるのに用いることもできる。
【実施例】
【0036】
実施例1:OCT画像からのSCJにおけるSMの決定
i.典型的な設計
本発明の典型的な実施態様に関する典型的な試験は、盲式前向き試験であった。その主な目的は、SCJにおける腸上皮化生の分化に関するOCT画像特徴を同定することであった。ルーチンの外来上部消化管内視鏡検査を受ける患者は、試験に参加するように要求された。SCJのOCT画像は、内視鏡検査手順の間に得られた。2人の病理学者は、各生検標本を調査し、以下の組織タイプの存在に留意した:胃又は酸分泌噴門、鱗状粘膜、膵臓化生。腸上皮化生の存在は、杯細胞の存在により留意された。腸上皮化生の画像特徴は、既知の組織タイプの生検相関画像を含む、OCTアトラス「トレーニング・セット」を作り出し及び調査することにより決定した。その後、これらの特徴を、未知の組織タイプの「検証セット」に前向きに適用した。腸上皮化生の診断のための画像基準の感度、特異性、及び再現性を決定した。
【0037】
ii.典型的なOCTシステム
本発明の典型的な実施態様に利用し、試験において用いることのできる典型的なOCT装置は、J.M.Poneros等の「Diagnosis of specialized intestinal metaplasia by optical coherence tomography」(Gastroenterology,2001,Vol.120(1),pp.7−12)、及びJ.M.Poneros等の「Optical coherence tomography of the biliary tree during ERCP」(Gastrointest Endosc,2002,Vol.55(1),pp.84−8)に記載されている。例えば、光源中心波長は1300nmで提供され、組織に投射する光強度は5.0mWであった。光源のスペクトルバンド幅は70nmであり、10μmの距離分解能を提供した。カテーテル径は、2.5mmであった。画像は、5.5mm(1000ピクセル)の長さ及び2.5mm(500ピクセル)の深さの縦方向の大きさを有する線形面において獲得された。画像獲得の間、フレームを1秒あたり2つの速度で記録し、参照のために連続的に番号を付ける。イメージングビームと同時の可視照準レーザーは、内視鏡医が、画像獲得を受ける粘膜の部位を特定するのを可能にし、画像化部位の生検相関を容易にした。
【0038】
内視鏡検査及び被験者採用
採用された被験者は、ルーチンの上部消化管内視鏡検査を受ける患者、及び胃食道接合部において既知の短い(<1cm)部分の腸上皮化生を有する患者を含む。3.8mmの器具チャネルを有する標準的な胃鏡(Pentax,Model EG 3470K、日本、東京)を用いた。
【0039】
典型的なOCTイメージング
手順の前に、書面によるインフォームド・コンセントを得た。十分な鎮静及び口腔咽頭麻酔が達成された後に、上部消化管内視鏡検査を実施した。内視鏡医は、胃食道接合部又はバレット部分におけるSCJを同定した。OCTカテーテルプローブを、内視鏡の器具チャネルを通して導入し、SCJまで進めた。SCJのすぐ遠位で、OCT画像を獲得し、可視照準ビームによりマークした粘膜部位において記録し、そこでは、1つの大きな生検が得られた。画像化部位に対応するOCTフレームを記録した。患者毎に、2つの生検相関画像を得た。
【0040】
組織病理
生検標本を、10%のホルマリン中に置き、パラフィン中に埋め込み、ルーチンに処理し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
【0041】
病理検査の説明
2人の病理学者は各生検標本を検査し、以下の上皮タイプの存在を決定した:胃噴門、鱗状粘膜、漿液膵臓化生、及び特殊腸上皮化生。この典型的な試験のために、鱗状粘膜及び酸分泌噴門(oxyntocardia)粘膜を、胃噴門として一緒に分類した。
【0042】
典型的なOCT画像分析
20個の無作為に選んだSIMの生検相関画像及び20個の無作為に選んだ他の組織タイプの生検相関画像から成る画像アトラス「トレーニング・セット」を作成した。トレーニング・セットの画像のアトラスを検査し、SIMのための診断画像基準を決定した。その後、これらの基準を、残りのデータセットを含んで成る「検証セット」に前向きに適用した。検証セット中の全てのOCT画像を剥ぎ取って、情報を同定し無作為に混ぜた。
【0043】
結果
i.トレーニング・セット
扁平上皮を、腺を有しない層状上皮により区別した。図5Aは、水平層状構造を実証する扁平上皮の典型的なOCT画像を示す。図5Bは、胃噴門の典型的なOCT画像を示し、これは、通常の垂直な「窩及び腺」構造、高度に散乱した上皮表面、及び相対的に悪い画像透過性を示す。スケールバー、500μm。胃噴門(図5B中で示される)は、「窩及び腺」形態の存在、通常の表面構造、高度に反射する上皮表面の存在、又は悪い画像透過性により特徴づけられた。
【0044】
図6A及び図6Bは、本発明の典型的なOCTシステム及び方法により作成される更なる典型的な画像を示す。例えば、図6Aは、水平層状構造を有する特殊腸上皮化生(SIM)のOCT画像を示す。腺は、この組織を鱗状上皮から区別する表層(矢印600により示される)中に存在する。図6Bは、層状構造を有するこのような典型的なOCT画像を示し、対応する組織像を提供する(H&E、100×)。スケールバー、500μm。
【0045】
具体的には、層状構造中の上皮腺の存在により、SIMは区別された。層状構造又は「窩及び腺」形態を有しない場合、不規則な表面構造、高度に反射する上皮表面の欠如、又は優れた光透過性は、胃噴門及び異所性膵の円柱上皮からSIMを更に区別した。図7Aは、扁平円柱上皮境界(SCJ)におけるSIMの特徴である層状もしくは通常の「窩及び腺」構造、低い表面上皮費反射率、及び相対的に優れた画像透過性を有しないSIMのOCT画像を示す。図7Bは、層状構造を有しないSIMのOCT画像を示し、対応する組織像(H&E、40×)を提供する。スケールバー、500μm。
【0046】
SCJにおけるSIMを同定するための診断手順の典型的な実施態様は、上記の画像基準を用いて提供することができ、流れ図を図8に示す。例えば、段階810において、層状構造が提供されるかどうかを決定する。もしそうであれば、腺が上皮に存在するかどうかを決定する(段階820において)。その場合、その後、決定は、それがSIMであることである(段階840);そうでなければ、決定は鱗状である(段階830)。段階810において、層状構造が提供されるかを決定する場合、その後、窩及び腺窩が表面に提供されるかを確かめる(段階850)。その場合、決定は、それがSIMであることである(段階840)。段階850において、窩及び腺窩が表面に提供されないことを決定する場合、その後、広く規則的な構造及び暗く鮮明な腺が上皮に存在するかどうかを確かめる(段階860)。その場合、決定は、それがSIMであることである(段階840);そうでなければ、決定は鱗状である(段階830)。段階850において、窩及び腺窩が表面に提供されることができるかを決定する場合、その後、決定は、それがSIMであることである(段階840);そうでなければ、決定は鱗状である(段階830)。
【0047】
図8に関する上記の典型的な実施態様を、トレーニング・セットに遡及的に適用する場合、SCJにおける非化生組織からSIMを区別することに関して、それは85%の感度(95%のCI、75%〜95%)及び95%の特異性(95%のCI、88%〜100%)であった。
【0048】
検証セット
検証セットを含んで成る156個の生検相関画像のうち、悪い画質により36個が除かれ、全部で120個の部位を前向き分析した。表1は、検証セットに関する組織病理を詳述する。
【0049】
【表1】

【0050】
2人の盲検OCT読取者が、検証セットに診断流れ図(図8)を適用する場合、SCJにおけるSIMの診断に関して、アルゴリズムは、81%(95%のCI 58%〜95%)及び86%(95%のCI 65%〜97%)の感度、並びに60%(95%のCI 49%〜71%)及び58%(95%のCI 48%〜68%)の特異性であることが見出された。2つの読取者の間の一致は優れていた(k=0.63)。表2は、診断アルゴリズムの検証セットへの適用後の、読取者の診断の変動及び性能を実証する。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例2:SIMのOCT画像中の高度異形成及び粘膜内癌の同定
i 典型的な試験設計
実施した典型的な試験は、盲式前向き試験であった。採用した被験者は、ルーチンの内視鏡サーベイランス、又はIMC若しくはHGDに関する確認生検を受ける、BEを有する患者であった。バレット上皮のOCT画像は、内視鏡検査の間に得られた。食道の生検相関OCT画像は観察され、組織診断に対して盲式の読取者により評価された。各画像に関して、表面成熟及び腺構造に関するスコアをまとめ、「異形成指数」を確立した。各生検標本は独立に観察され、合意診断が提供された。
【0053】
ii 典型的なOCTシステム
本発明の典型的な実施態様のために利用し、試験中で用いることのできる典型的なOCT装置は、J.M.Poneros等の「Diagnosis of specialized intestinal metaplasia by optical coherence tomography」(Gastroenterology,2001,Vol.120(1),pp.7−12)、及びJ.M.Poneros等の「Optical coherence tomography of the biliary tree during ERCP」(Gastrointest Endosc,2002,Vol.55(1),pp.84−8)に記載されている。例えば、光源中心波長は1300nmであり、組織に投射する光強度は5.0mWであった。光源のスペクトルバンド幅は70nmであり、10μmの距離分解能を提供した。カテーテル径は、2.5mmであった。画像は、5.5mm(1000ピクセル)の長さ及び2.5mm(500ピクセル)の深さの縦方向の大きさを有する線形面において獲得された。画像獲得の間、フレームを1秒あたり4つの速度で記録し、参照のために連続的に番号を付けた。イメージングビームと同時の可視照準レーザーは、内視鏡医が、画像獲得を受ける粘膜の部位を特定するのを可能にし、画像化部位の生検相関を容易にした。
【0054】
iii 内視鏡検査及び被験者の採用
被験者の手順の前に、インフォームド・コンセントを得た。サーベイランス内視鏡検査を受けるBEを有する患者、及び光線力学療法に関して評価されるHGC及びIMCの既知の診断を有する被験者を採用した。被験者は、ルーチンの意識下鎮静及び口腔咽頭麻酔を受けた。3.8mmの器具チャネルを有する標準的な内視鏡(Pentax,Model EG 3470K、日本、東京)を用いた。
【0055】
iv 典型的なOCTイメージング
十分な鎮静及び口腔咽頭麻酔の後に、上部消化管内視鏡検査を実施した。いったん内視鏡医は、胃食道接合部及びバレット部分を同定したら、OCTカテーテルプローブを、内視鏡の器具チャネルを通して導入し、バレット粘膜まで進めた。OCT画像を獲得し、集束ビームによりマークした粘膜部位において記録した。画像化部位に対応するOCTフレームを記録した。各画像化部位において、1つの大きな生検を実施した。
【0056】
v 組織病理
生検標本を、10%のホルマリン中に置き、パラフィン中に埋め込み、ルーチンに処理し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
【0057】
画像スコアリングシステムの説明
vi 表面成熟の定義
OCTは、試料から返る光の強度を測定する。より高度に不均一な光学的屈折率を有する試料は、より強い光散乱、従ってより強いOCTシグナルを示す。ヒト組織の光学的特性を測定するために実施された以前の研究は、クロマチンの屈折率が細胞質[23]のものとは顕著に異なることを示した。このデータは、OCTシグナルが、核の大きさ及び密度の増大により増大するだろうことを示す。組織学的に、表面成熟は、表面における上皮の核対細胞質比の減少により部分的に特徴づけられる。従って、図9A〜Fに示すように、異形成の指標である不完全な表面成熟は、表面下シグナルと比較して高い表面OCTシグナルとして見られ得る。
【0058】
例えば、図9Aは、相対的に低い反射率を有する腺構造を実証する、異形成を有しないSIMのOCT画像を示す。図9Bは、相対的に低い反射率を有する腺構造を実証する、異形成を有しないSIMのOCT画像を示し、これは図9Aの画像に関して対応する組織像を提供し、差し込み図は、表層上皮中の低い核対細胞質比を実証する。図9Cは、大きく不規則な拡張した腺910の可視化を可能にするIMC/HGDのOCT画像を示す。図9Dは、不規則な拡張した腺920のOCT画像を示し、これは、図9C中の対応する組織像においても示される。図9Eは、まとまりのない構造及び増大した表面反射率930を示すIMC/HGDのOCT画像を示す。図9Fは、SIMのOCT画像を示し、図9Eの画像に対して対応する組織像を提供し、これは、異常な腺構造及び増大した表面の核対細胞質比を実証する。
【0059】
vii 腺構造の定義
OCT画像中の腺は、図9A〜9Fで示されるように、交互の低いOCTシグナル(細胞質)及び高いシグナル(核及び固有層)を有する線状構造として同定される。拡張した腺は、これらの図において、粘膜内の乏しい散乱空間として見られる。OCTによる腺の不規則性は、本明細書中で示されるように、これらの構造の不規則な大きさ、形状及び分布により特徴付けることができる。
【0060】
viii スコアリングシステム
例えば、OCT画像を剥ぎ取り、情報を同定し、無作為に混ぜて、画像のデータ・プールを作成する。この目的のために、IMCに一致する生検からの画像は、HGDの場合として含まれた。組織病理学的診断の調査をせずに、各OCT画像を調査し、以下のカテゴリーにおいて評価した:
A)表面成熟:0=表面下のOCTシグナルより弱い表面のOCTシグナル、1=表面下のOCTシグナルに等しい表面のOCTシグナル、2=表面下のOCTシグナルより強い表面のOCTシグナル
B)腺構造(0=不規則無し、正常な外見の腺構造;最小数の平らな拡張した腺;1=軽度の不規則性、腺は、より小さく密集し、又は大きく不規則な形状であった;拡張した腺は、より頻出し、密集していた;2=中程度/重度の不規則性、腺は分岐し、出芽していた;拡張した腺は、高度に非対称であり、又は腺の内腔中に残がいを含んでいた。
【0061】
各画像に関して、表面成熟及び腺構造スコアをまとめ、異形成指数を確立した。
【0062】
ix 典型的な統計分析
スピアマン相関係数(r)を計算して、各OCTで決定された組織病理学的特徴(表面成熟、腺構造、及び異形成指数)のスコアを、IMC/HGDの診断及び異形成(IMC/HGD、LGD、IGD)と比較した。IMC/HGD及び異形成(IMC/HGD、LGD、IGD)の診断のための異形成指数の感度及び特異性を計算した。統計は、SASソフトウエア(Statistical Analysis System,SAS Institute Inc.)バージョン8.0を用いた。p<0.05の値は、両側検定に関して統計的に有意であるとみなされた。
【0063】
結果
データセットは、58人の患者からの242個の生検相関画像から構成された。統計分析の前に、不十分な画質のため65個の画像を取り除いた。177個の残りの画像のうち、49個がIMC/HGD、15個がLGD、8個がIGD、100個がSIM、及び5個が胃粘膜の診断に対応した。65個の廃棄された画像のうち、20個がIMC/HGD、13個がLGD、2個がIGD、29個がSIM、及び1個が胃粘膜の診断に対応した。表3は、そのデータセットを含んで成る組織学的診断の分布を要約し、表面成熟、腺構造、及び異形成指数の平均OCTスコアを表示する。
【0064】
i 全ての他のものからのIMC/HGDの区別(LGD、IGD、及びSIM)
表4は、各OCT画像特徴とIMC/HGDの診断との間のスピアマン相関係数を示す。それぞれの特徴とIMC/HGDの診断の間に正相関が存在した:[表面成熟(r=0.49、p<0.0001)、腺構造(r=.41、p<0.0001)、及び異形成指数(r=0.50、p<0.0001)]。3つの特徴のうち、異形成指数が最も高くIMC/HGDと相関した。
【0065】
表5は、異形成指数のスコア>2が、IMC/HGDの診断に関して、83.3%(95%のCI、70%〜93%)の感度及び75.0%(95%のCI、68%〜84%)の特異性であることを実証する。図1(最後のページ)は、IMC/HGDの例を実証する。
【0066】
ii 異形成(IMC/HGD、IGD、LGD)のSIMからの区別
表4は、それぞれのOCTで決定された画像特徴と異形成の診断との間のスピアマン相関係数を示す。それぞれの特徴と異形成の診断との間に正相関が存在した[表面成熟(r=0.47、p<0.0001)、腺構造(r=0.44、p<0.0001)、及び異形成指数(r=0.50、p<0.0001)]。異形成と最も高い相関を有する画像特徴は、異形成指数であった。表6は、異形成指数のスコア>2が、異形成の診断に関して、72.0%(95%のCI、58%〜80%)の感度及び81.0%(95%のCI、72%〜88%)の特異性であることを実証する。
【0067】
【表3】

【0068】
49の「HGD」診断のうち、17が合意の読取により実際にIMCであった。14/17のIMCの場合、スコア>/=2平均(我々の最適のカットオフ)及び平均の異形成指数スコア2.53を有していた。26/32の真のHGDの場合、スコア>/=2及び平均の異形成指数スコア2.40を有していた。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
前述のものは、本発明の原理を単に例示するものである。記載した実施態様に対する様々な変更及び修正は、本明細書中の教示の観点から、当業者に明らかであるだろう。実際に、本発明の典型的な実施態様の装置、システム及び方法は、任意のOCTシステム、OFDIシステム、SD−OCTシステム又は他のイメージングシステムと共に、例えば国際特許出願PCT/US2004/029148(2004年9月8日付けで出願された)、米国特許出願第11/266,779(2005年11月2日付けで出願された)、及び米国特許出願第10/501,276(2004年7月9日付けで出願された)に記載されたものと共に用いることができ、これらの開示は、その全てにおいて、本明細書中に引用文献により組み込まれる。従って、当業者は、本明細書中で明確に示され又は記載されていないが、本発明の原理を具体化し、本発明の精神及び範囲の中に存在する多くのシステム、装置及び方法を考案することができるであろうことが理解されるだろう。更に、先行技術の知識が上記の本明細書中で引用文献により明確に組み込まれなかった範囲で、それは、その全てにおいて本明細書中に明確に組み込まれる。上記の本明細書中で引用された全ての刊行物は、それらの全てにおいて、引用文献により本明細書中に組み込まれる。
【0073】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、本発明の例示的な実施態様を示す付随の図面と併せた場合に、以下の詳細な説明から明らかとなるだろう:
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明の組織病理と光学的生検データとの間の関係を決定することによる光学的生検画像のためのスコアリングシステムを作成するための方法の典型的な実施態様の流れ図である。
【図2】図2は、本発明の組織病理と光学的生検データとの間の所定の関係に基づいた光学的生検画像のためのスコアリングシステムを作成するための方法の別の典型的な実施態様の流れ図である。
【図3】図3は、対応する光学的生検と組織病理学的画像のトレーニング・セットを用いた、組織病理と光学的生検データとの間の関係を決定することによる、光学的生検画像のためのスコアリングシステムを作成するための方法の更に別の典型的な実施態様の流れ図である。
【図4】図4は、個々の基準からのスコアに基づく組織診断を作成し、個々のスコアの一次結合を作成し、及び本発明の基準を適用するための方法の典型的な実施態様の流れ図である。
【図5】図5Aは、非化生上皮の水平な層状構造を示す非化生扁平上皮のOCT画像である。図5Aは、通常の垂直の「窩及び腺」構造、高度に散乱した上皮表面、及び相対的に悪い画像透過性を示す胃噴門のOCT画像である。スケールバー、500μm。
【図6】図6Aは、水平な層状構造を有する特殊腸上皮化生(SIM)のOCT画像である。A.水平な層状構造は、SIMのこのOCT画像において可視化することができる。図6Bは、層状構造を有する特殊腸上皮化生(SIM)のOCT画像であり、対応する組織像を提供する。
【図7】図7Aは、層状又は通常の「窩及び腺」構造を有さないSIM、低い表層上皮反射率、及び扁平円柱上皮境界(SCJ)におけるSIMの特徴である相対的に優れた画像透過性のOCT画像である。図7Bは、層状構造を有さないSIMのOCT画像であり、対応する組織像を提供する。
【図8】図8は、本発明のSCJにおける分化SIMのための方法の典型的な実施態様の流れ図である。
【図9】図9Aは、相対的に低い反射率を有する腺構造を実証する、異形成を有しないSIMのOCT画像である。図9Bは、相対的に低い反射率を有する腺構造を実証する、異形成を有しないSIMのOCT画像であり、これは図9Aの画像に関して対応する組織像を提供し、差し込み図は、表層上皮中の低い核対細胞質比を実証する。図9Cは、大きく不規則な拡張した腺の可視化を可能にするIMC/HGDのOCT画像である。図9Dは、不規則な拡張した腺のOCT画像であり、これは、図9C中の対応する組織像においても示される。図9Eは、まとまりのない構造及び増大した表面反射率を示すIMC/HGDのOCT画像である。図9Fは、SIMのOCT画像であって、図9Eの画像に対して対応する組織像を提供し、これは、異常な腺構造及び増大した表面の核対細胞質比を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第1の情報を受け取ること、
解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第2の情報を受け取ること、
第1の情報と第2の情報との間の関係を決定することにより、第3の情報を作成すること、及び
所定の病理学的評価基準及び第3の情報を用いて、少なくとも1つの画像を評価すること、
を含んで成る、解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する少なくとも1つの画像を評価するための方法。
【請求項2】
第1の情報又は第2の情報の少なくとも1つが、少なくとも1つの部分からの放射光と関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光が、少なくとも1つの部分から反射される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
光が蛍光である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの部分が、生体中で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
解剖学的構造の少なくとも1つの部分が、顕微鏡用スライドの上に置かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
スライドが、ヘマトキシリン及びエオシン、マッソントリクロー、パパニコロー染色、ディフ・クイック、又は過ヨウ素酸シッフのうちの少なくとも1つにより染色される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1の情報及び第2の情報が、解剖学的構造の少なくとも1つの部分のほぼ同一の場所に関して提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第3の情報が、第1の情報及び第2の情報に関連した物理的及び化学的構造に基づいて得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
所定の病理学的評価基準がハジット基準である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
画像が、少なくとも1つの部分からの放射光と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
光が、少なくとも1つの部分のから反射される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
光が蛍光である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの部分が、生体中で提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
第1の情報又は第2の情報の少なくとも1つが、光干渉断層法システムにより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第1の情報又は第2の情報の少なくとも1つが、スペクトルコード化共焦点顕微鏡システムにより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
解剖学的構造が、皮膚の下に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第1の情報又は第2の情報の少なくとも1つが、共焦点顕微鏡システムにより得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1の情報又は第2の情報の少なくとも1つが、反射共焦点顕微鏡システムにより得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
第1の情報又は第2の情報の少なくとも1つが、光周波数ドメインイメージングシステムにより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
スライドを抗体により染色する、請求項6に記載の方法。
【請求項22】
所定の方法を実行する場合に、
a)解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第1の情報、及び 解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第2の情報を受け取り、
b)第1の情報と第2の情報との間の関係を決定することにより、第3の情報を作成し、及び
c)所定の病理学的評価基準及び第3の情報を用いて、少なくとも1つの画像を評価する
ために設定された処理装置を含んで成る、解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する少なくとも1つの画像を評価するための装置。
【請求項23】
処理装置により実行される場合、解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第1の情報、及び 解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する第2の情報を受け取るために処理装置を設定する第1の一連の指示、
処理装置により実行される場合、第1の情報と第2の情報との間の関係を決定することにより第3の情報を作成するために処理装置を設定する第2の一連の指示、及び
処理装置により実行される場合、所定の病理学的評価基準及び第3の情報を用いて、少なくとも1つの画像を評価するために処理装置を設定する第3の一連の指示、
を含んで成る、解剖学的構造の少なくとも1つの部分に関連する少なくとも1つの画像を評価するためのソフトウエアシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−541018(P2008−541018A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509233(P2008−509233)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016677
【国際公開番号】WO2006/116769
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】