説明

光情報記録媒体用記録層、および光情報記録媒体

【課題】パラジウムの含有量を低減しても、またはパラジウムを含有しなくとも、十分良好な記録特性を得ることができる光情報記録媒体を提供する。
【解決手段】光情報記録媒体は、光の照射により情報信号を記録可能な記録層を備える。記録層は、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光情報記録媒体用記録層、および光情報記録媒体に関する。詳しくは、金属酸化物を含む光情報記録媒体用記録層およびそれを備える光情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などが光情報記録媒体の市場を牽引してきた。しかし、近年では、テレビのハイビジョン化やPC(Personal Computer)で取り扱うデータの急激な増大に伴い、光情報記録媒体の更なる大容量化が求められている。この要求に応えるべく、BD(Blu-ray Disc(登録商標))などの青色レーザに対応した大容量の光情報記録媒体が登場し、新たな大容量の光情報記録媒体の市場が立ち上がりつつある。
【0003】
記録可能な光情報記録媒体としては、CD−RW(Compact Disc-ReWritable)、DVD±RW(Digital Versatile Disc±ReWritable)に代表される書換型の光情報記録媒体と、CD−R(Compact Disc-Recordable)やDVD−R(Digital Versatile Disc-Recordable)に代表される追記型の光情報記録媒体とがあるが、特に、後者は低価格メディアとして市場の拡大に大きく貢献してきた。したがって、青色レーザに対応した大容量の光情報記録媒体においても、市場を拡大させるためには、追記型の光情報記録媒体の低価格化が必要になると考えられる。さらに光情報記録媒体は、ハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリなどと比べて、その記録再生原理から保存信頼性が高いと一般的に言われており、重要情報の保管に使われ始めるなどアーカイバルメディアとしての需要が近年高くなっている。
【0004】
追記型の光情報記録媒体に用いられる記録材料としては、無機材料と有機色素材料とがある。従来の追記型の光情報記録媒体では記録材料として有機色素材料が主に検討されてきたが、近年の大容量の光情報記録媒体では記録材料として無機材料も広く検討されている。
【0005】
広く検討されている無機材料として、パラジウム酸化物を主成分の一つとして含むものがある。例えば特許文献1では、亜鉛(Zn)またはアルミニウム(Al)と、パラジウム(Pd)と、酸素(O)とを主成分として含む無機記録層が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−42070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、パラジウムは産出量がごく少ない貴金属であるため、記録材料がパラジウム酸化物を主成分の一つとして含んでいると、光情報記録媒体の低価格化が困難となる。このため、パラジウムの含有量を低減しても、またはパラジウムを含有しなくとも、十分良好な記録特性を得ることができる記録層の実現が望まれる。
【0008】
したがって、本技術の目的は、パラジウムの含有量を低減しても、またはパラジウムを含有しなくとも、十分良好な記録特性を得ることができる光情報記録媒体用記録層およびそれを備える光情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術者らは、従来技術が有する上述の問題を解決すべく、鋭意検討した結果、パラジウムの含有量を低減しても、またはパラジウムを含有しなくとも、十分良好な記録特性を得ることができる金属Xと金属Yとの組み合わせを見出すに至った。
【0010】
すなわち、第1の技術は、
光の照射により情報信号を記録可能な記録層を
備え、
記録層は、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である光情報記録媒体である。
【0011】
第2の技術は、
光の照射により情報信号を記録可能な複数の記録層を
備え、
複数の記録層のうちの少なくとも一層は、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である光情報記録媒体である。
【0012】
第3の技術は、
金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる光情報記録媒体用記録層である。
【0013】
本技術では、1層または複数層の情報信号層は基板上に設けられ、情報信号層上にカバー層が設けられていることが好ましい。このカバー層の厚さは特に限定されるものではなく、カバー層には、基板、シート、コーティング層などが含まれる。高密度の光情報記録媒体としては、高NAの対物レンズを用いることから、カバー層としてシート、コーティング層などの薄い光透過層を採用し、この光透過層の側から光を照射することにより情報信号の記録および再生が行われる構成を有するものが好ましい。この場合、基板としては、不透明性を有するものを採用することも可能である。情報信号を記録または再生するための光の入射面は、光情報記録媒体のフォーマットに応じてカバー層側および基板側の表面の少なくとも一方に適宜設定される。
【0014】
本技術では、記録層は金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、金属Xはタングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、金属Yは銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これにより、パラジウムの含有量を低減しても、またはパラジウムを含有せずとも、十分良好な記録特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本技術によれば、パラジウムの含有量を低減しても、またはパラジウムを含有しなくとも、十分良好な記録特性を得ることができる光情報記録媒体用記録層を実現できる。このような記録層を光情報記録媒体に備えることで、媒体の低価格化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本技術の第1の実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。
【図2】図2Aは、情報信号層の第1の構成例を示す模式図である。図2Bは、情報信号層の第2の構成例を示す模式図である。
【図3】図3は、本技術の第2の実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。
【図4】図4Aは、各情報信号層の第1の構成例を示す模式図である。図4Bは、各情報信号層の第2の構成例を示す模式図である。
【図5】図5Aは、実施例1−1および比較例1−1の光情報記録媒体の記録パワーPwとi−MLSEとの関係を示すグラフである。図5Bは、実施例1−2および比較例1−2の光情報記録媒体の記録パワーPwとi−MLSEとの関係を示すグラフである。
【図6】図6Aは、実施例1−1および比較例1−1の光情報記録媒体のPw ratioとi−MLSEとの関係を示すグラフである。図6Bは、実施例1−2および比較例1−2の光情報記録媒体のPw ratioとi−MLSEとの関係を示すグラフである。
【図7】図7Aは、実施例1−1および比較例1−1の光情報記録媒体におけるPw ratioとSERとの関係を示すグラフである。図7Bは、実施例1−2および比較例1−2の光情報記録媒体におけるPw ratioとSERとの関係を示すグラフである。
【図8】図8Aは、実施例1−1および比較例1−1の光情報記録媒体のPw ratioと変調度との関係を示すグラフである。図8Bは、実施例1−2および比較例1−2の光情報記録媒体のPw ratioと変調度との関係を示すグラフである。
【図9】図9A、図9Bは、実施例2−1〜6−4の光情報記録媒体の比率(a/b)と最適記録パワーPwoとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本技術の実施形態について以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(単一の情報信号層を備えた光情報記録媒体の例)
2.第2の実施形態(複数の情報信号層を備えた光情報記録媒体の例)
【0018】
<1.第1の実施形態>
[光情報記録媒体の構成]
図1は、本技術の第1の実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。この光情報記録媒体10は、いわゆる単層の追記型光情報記録媒体であり、図1に示すように、情報信号層L、カバー層である光透過層2がこの順序で基板1の一主面に積層された構成を有する。
【0019】
この第1の実施形態に係る光情報記録媒体10では、光透過層2側の表面Cからレーザ光を情報信号層Lに照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。例えば、400nm以上410nm以下の範囲の波長を有するレーザ光を、0.84以上0.86以下の範囲の開口数を有する対物レンズにより集光し、光透過層2の側から情報信号層Lに照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。このような光情報記録媒体10としては、例えば単層のBD−Rが挙げられる。以下では、情報信号層Lに情報信号を記録または再生するためのレーザ光が照射される表面Cを光照射面Cと称する。
【0020】
以下、光情報記録媒体10を構成する基板1、情報信号層L、および光透過層2について順次説明する。
【0021】
(基板)
基板1は、例えば、中央に開口(以下センターホールと称する)が形成された円環形状を有する。この基板1の一主面は、例えば、凹凸面となっており、この凹凸面上に情報信号層L0が成膜される。以下では、凹凸面のうち凹部をイングルーブGin、凸部をオングルーブGonと称する。
【0022】
このイングルーブGinおよびオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、例えば、線速度の安定化やアドレス情報付加などのためにウォブル(蛇行)されている。
【0023】
基板1の径(直径)は、例えば120mmに選ばれる。基板1の厚さは、剛性を考慮して選ばれ、好ましくは0.3mm以上1.3mm以下、より好ましくは0.6mm以上1.3mm以下、例えば1.1mmに選ばれる。また、センタホールの径(直径)は、例えば15mmに選ばれる。
【0024】
基板1の材料としては、例えば、プラスチック材料またはガラスを用いることができ、コストの観点から、プラスチック材料を用いることが好ましい。プラスチック材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができる。
【0025】
(情報信号層)
情報信号層Lは、レーザ光の照射により情報信号を記録可能な無機記録層を少なくとも備える。情報信号層Lは、保存信頼性向上の観点からすると、無機記録層の少なくとも一方の表面に隣接して設けられた保護層をさらに備えることが好ましく、無機記録層の両方の表面に隣接して設けられた保護層をさらに備えることがより好ましい。以下に、情報信号層の具体例として、第1および第2の構成例について説明する。
【0026】
(第1の構成例)
図2Aは、情報信号層の第1の構成例を示す模式図である。図2Aに示すように、情報信号層Lは、無機記録層11からなる。このような単純な構成とすることで、光情報記録媒体10を低廉化し、かつ、その生産性を向上することができる。
【0027】
(無機記録層)
無機記録層11は、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを主成分として含んでいることが好ましい。金属Xとしては、酸化物となった場合にほぼ透明であり、その酸化物の消衰係数kが0または0に近い材料を用いることが好ましい。さらに上述した特性を有する金属Xのうちでも、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。このような材料を用いて、金属Yの酸化物の記録時の熱膨張を大きすぎないようにすることで、十分に広い記録パワーマージンを確保したり、記録前後の透過率変動を抑制することができる。
【0028】
金属Yとしては、酸化物となった場合にある程度の吸収係数を有し、かつ、酸化物の標準生成自由エネルギーの絶対値が金属Xのそれよりも小さい材料を用いることが好ましい。このような材料を用いることで、無機記録層11がレーザ光を吸収して熱に変換し、酸素が放出されて膨らむことができる。したがって、レーザ光の照射により情報信号の記録が可能となる。上述した特性を有する金属Yのうちでも、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)および銀(Ag)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。金属Yとして上記以外の金属材料を用いた場合に比して、情報信号を記録するためのレーザ光の記録パワーを低減することができるからである。金属Yは、パワーマージン向上の観点からすると、Cuを少なくとも含む金属であることが好ましく、より好ましくはCuである。具体的には、Cuを少なくとも含む金属は、Mn、NiおよびAgからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属と、Cuとの組合せである。貴金属の含有量が低減された無機記録層11、または貴金属を含まない無機記録層(貴金属レス記録層)11を実現する観点からすると、金属Yは、Cu、Mn、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
金属Xおよび金属Yの合計に対する金属Xの原子比率をa、金属Xおよび金属Yの合計に対する金属Yの原子比率をbとしたとき、比率(a/b)は、好ましくは0.1≦a/b≦2.7、より好ましくは0.25≦a/b≦2.7の関係を満たす。比率(a/b)が0.1以上であると、良好なパワーマージンを得ることができる。一方、比率(a/b)が2.7以下であると、将来の民生用ドライブで情報信号を記録することができる。
もしくは、金属Xおよび金属Yの合計に対する金属Xの原子比率をa、金属Xおよび金属Yの合計に対する金属Yの原子比率をbとしたとき、比率(a/b)は、好ましくは0.1≦a/b≦1.3、より好ましくは0.25≦a/b≦1.3の関係を満たす。比率(a/b)が0.1以上であると、良好なパワーマージンを得ることができる。一方、比率(a/b)が1.3以下であると、現在の民生用ドライブでも情報信号を記録することができる。
【0030】
無機記録層11は、金属Zの酸化物として亜鉛(Zn)の酸化物をさらに含み、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物と金属Zの酸化物とを主成分としていることが好ましい。これにより、金属Yの酸化物の含有量を低減し、光情報記録媒体10を低廉化することができるからである。特に、金属YがAgを含んでいる場合には、無機記録層11は金属Zの酸化物を含んでいることが好ましい。これにより、貴金属であるAgの含有量を低減し、光情報記録媒体10を低廉化することができるからである。金属X、金属Yおよび金属Zの合計に対する金属Zの原子比率をcとしたとき、原子比率cは50原子%以下であることが好ましい。原子比率cを50原子%以下とすることで、保存信頼性の低下を抑制することができる。
【0031】
無機記録層11が副成分として、PdやPtなどの高価な貴金属を副成分として微量に含んでいてもよいが、光情報記録媒体10の低廉化の観点からすると、無機記録層11がPdやPtなどの高価な貴金属を含まないことが好ましい。なお、第1の実施形態に係る光情報記録媒体10では、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを主成分として含んでさえいればよく、PdやPtなどの高価な貴金属の添加は、光情報記録媒体10の記録特性にほとんど影響を及ぼさない。なお、Agは、ここで言う高価な貴金属からは除かれるものとする。
【0032】
(第2の構成例)
図2Bは、情報信号層の第2の構成例を示す模式図である。図2Bに示すように、情報信号層Lは、例えば、上側面(第2の主面)および下側面(第1の主面)を有する無機記録層11と、無機記録層11の下側面に隣接して設けられた第1保護層12と、無機記録層11の上側面に隣接して設けられた第2保護層13とを備える。このような構成とすることで、無機記録層11の耐久性を向上することができる。ここで、上側面とは、無機記録層11の両主面のうち、情報信号を記録または再生するためのレーザ光が照射される側の主面をいい、下側面とは、上述のレーザ光が照射される側とは反対側の主面、すなわち基板側の主面をいう。
【0033】
(無機記録層)
無機記録層11としては、上述の第1の構成例と同様のものを用いることができる。
【0034】
(保護層)
第1保護層12および第2保護層13としては、誘電体層または透明導電層を用いることが好ましく、第1保護層12および第2保護層13のうちの一方として誘電体層を用い、他方として透明導電層を用いることも可能である。誘電体層または透明導電層が酸素バリア層として機能することで、無機記録層11の耐久性を向上することができる。また、無機記録層11の酸素の逃避を抑制することで、記録膜の膜質の変化(主に反射率の低下として検出)を抑制することができ、無機記録層11として必要な膜質を確保することができる。
【0035】
第1保護層12および第2保護層13の材料としては、例えば、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物、フッ化物またはその混合物が挙げられる。第1保護層12および第2保護層13の材料としては、互いに同一または異なる材料を用いることができる。酸化物としては、例えば、In、Zn、Sn、Al、Si、Ge、Ti、Ga、Ta、Nb、Hf、Zr、Cr、BiおよびMgからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物が挙げられる。窒化物としては、例えば、In、Sn、Ge、Cr、Si、Al、Nb、Mo、Ti、Nb、Mo、Ti、W、TaおよびZnからなる群から選ばれる1種以上の元素の窒化物、好ましくはSi、GeおよびTiからなる群から選ばれる1種以上の元素の窒化物が挙げられる。硫化物としては、例えば、Zn硫化物が挙げられる。炭化物としては、例えば、In、Sn、Ge、Cr、Si、Al、Ti、Zr、TaおよびWからなる群より選ばれる1種以上の元素の炭化物、好ましくはSi、Ti、およびWからなる群より選ばれる1種以上の元素の炭化物が挙げられる。フッ化物としては、例えば、Si、Al、Mg、CaおよびLaからなる群より選ばれる1種以上の元素のフッ化物が挙げられる。これらの混合物としては、例えば、ZnS−SiO2、SiO2−In23−ZrO2(SIZ)、SiO2−Cr23−ZrO2(SCZ)、In23−SnO2(ITO)、In23−CeO2(ICO)、In23−Ga23(IGO)、In23−Ga23−ZnO(IGZO)、Sn23−Ta25(TTO)、TiO2−SiO2などが挙げられる。
【0036】
(光透過層)
光透過層2は、例えば、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂を硬化してなる樹脂層である。この樹脂層の材料としては、例えば、紫外線硬化型のアクリル系樹脂が挙げられる。また、円環形状を有する光透過性シートと、この光透過性シートを基板1に対して貼り合わせるための接着層とから光透過層2を構成するようにしてもよい。光透過性シートは、記録および再生に用いられるレーザ光に対して、吸収能が低い材料からなることが好ましく、具体的には透過率90パーセント以上の材料からなることが好ましい。光透過性シートの材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂材料、ポリオレフィン系樹脂(例えばゼオネックス(登録商標))などを用いることができる。接着層の材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂、感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)などを用いることができる。
【0037】
光透過層2の厚さは、好ましくは10μm以上177μm以下の範囲内から選ばれ、例えば100μmに選ばれる。このような薄い光透過層2と、例えば0.85程度の高NA(numerical aperture)化された対物レンズとを組み合わせることによって、高密度記録を実現することができる。
【0038】
[光情報記録媒体の製造方法]
次に、本技術の第1の実施形態に係る光情報記録媒体の製造方法の一例について説明する。
【0039】
(基板の成形工程)
まず、一主面に凹凸面が形成された基板1を成形する。基板1の成形の方法としては、例えば、射出成形(インジェクション)法、フォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などを用いることができる。
【0040】
(情報信号層の形成工程)
次に、例えばスパッタ法により、基板1上に情報信号層Lを形成する。情報信号層Lの具体的な形成工程は、情報信号層Lの構成により異なる。例えば、情報信号層Lとして上述の第1の構成例に示したものを採用する場合には、基板1上に無機記録層11を形成することにより、情報信号層Lが形成される。また、情報信号層Lとして上述の第2の構成例に示したものを採用する場合には、基板1上に第1保護層12、無機記録層11、第2保護層13を順次積層することにより、情報信号層Lが形成される。
以下に、第1保護層12、無機記録層11、および第2保護層13の形成工程について具体的に説明する。
【0041】
(第1保護層の成膜工程)
まず、基板1を、第1保護層形成用のターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2ガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタして、基板1上に第1保護層12を成膜する。スパッタ法としては、例えば高周波(RF)スパッタ法、直流(DC)スパッタ法を用いることができるが、特に直流スパッタ法が好ましい。直流スパッタ法は高周波スパッタ法に比して成膜レートが高いため、生産性を向上することができるからである。
【0042】
(無機記録層の成膜工程)
次に、基板1を、無機記録層成膜用のターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2ガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタして、第1保護層12上に無機記録層11を成膜する。
【0043】
(無機記録層成膜用のターゲット)
無機記録層成膜用のターゲットとしては、金属Xおよび金属Yを主成分とする金属ターゲット、金属Xの酸化物および金属Yの酸化物を主成分とする金属酸化物ターゲットを用いることができ、直流スパッタ法により成膜可能である、金属Xおよび金属Yを主成分とした金属ターゲットを用いることが好ましい。直流スパッタ法は高周波スパッタ法に比して成膜レートが高いため、生産性を向上することができるからである。これらのターゲットにおいて、金属Yの原子比率bに対する金属Xの原子比率aの比率(a/b)は、上述の無機記録層11の比率(a/b)と同様にすることが好ましい。
【0044】
無機記録層成膜用のターゲットとして、金属Zとして亜鉛(Zn)をさらに含む金属ターゲット、金属Zの酸化物として亜鉛(Zn)の酸化物をさらに含む金属酸化物ターゲットを用いるようにしてもよい。すなわち、無機記録層成膜用のターゲットとして、金属X、金属Yおよび金属Zを主成分とする金属ターゲット、金属Xの酸化物、金属Yの酸化物および金属Zの酸化物を主成分とする金属酸化物ターゲットを用いるようにしてもよい。これらのターゲットのうちでも、生産性を考慮すると、直流スパッタ法により成膜可能である、金属X、金属Yおよび金属Zを主成分とする金属ターゲットを用いることが好ましい。
【0045】
(第2保護層の成膜工程)
次に、基板1を、第2保護層形成用のターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2ガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタして、無機記録層11上に第2保護層13を成膜する。スパッタ法としては、例えば高周波(RF)スパッタ法、直流(DC)スパッタ法を用いることができるが、特に直流スパッタ法が好ましい。直流スパッタ法は高周波スパッタ法に比して成膜レートが高いため、生産性を向上することができるからである。
以上により、基板1上に情報信号層Lが形成される。
【0046】
(光透過層の形成工程)
次に、例えばスピンコート法により、紫外線硬化樹脂(UVレジン)などの感光性樹脂を情報信号層L3上にスピンコートした後、紫外線などの光を感光性樹脂に照射し、硬化する。これにより、情報信号層L上に光透過層2が形成される。
以上の工程により、目的とする光情報記録媒体が得られる。
【0047】
(効果)
第1の実施形態によれば、無機記録層11は金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを主成分として含んでいる(但し、金属Xはタングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、金属Yは銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である。)。したがって、Pdの含有量を低減してPdの酸化物を副成分としても、またはPdを含有しなくとも、Pdの酸化物を主成分の一つとして含む場合とほぼ同様の記録特性を維持できる。よって、Pdの酸化物を主成分の一つとして含む場合とほぼ同様の記録特性を維持しつつ、媒体を低廉化することができる。
【0048】
<2.第2の実施形態>
[光情報記録媒体の構成]
図3は、本技術の第2の実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。第2の実施形態において第1の実施形態と同様の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。この光情報記録媒体20は、いわゆる多層の追記型光情報記録媒体であり、図3に示すように、情報信号層L0、中間層S1、情報信号層L1、・・・、中間層Sn、情報信号層Ln、カバー層である光透過層2がこの順序で基板1の一主面に積層された構成を有する。
【0049】
この第2の実施形態に係る光情報記録媒体20では、光透過層2側の光照射面Cからレーザ光を各情報信号層L0〜Lnに照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。例えば、400nm以上410nm以下の範囲の波長を有するレーザ光を、0.84以上0.86以下の範囲の開口数を有する対物レンズにより集光し、光透過層2の側から各情報信号層L0〜Lnに照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。このような光情報記録媒体20としては、例えば多層のBD−Rが挙げられる。
【0050】
(情報信号層)
情報信号層L0〜Lnは、レーザ光の照射により情報信号を記録可能な無機記録層を少なくとも備える。情報信号層L0〜Lnは、保存信頼性向上の観点からすると、無機記録層の少なくとも一方の表面に保護層をさらに備えることが好ましく、無機記録層の両方の表面に保護層を備えることがより好ましい。情報信号層L0〜Lnの層構成は、全ての層で同一の構成としてもよく、情報信号層L0〜Lnごとに求められる特性(例えば光学特性や耐久性など)に応じて層構成を変えるようにしてもよいが、生産性の観点からすると、全ての層で同一の層構成とすることが好ましい。
以下に、情報信号層L0〜Lnの具体例として、第1および第2の構成例について説明する。
【0051】
(第1の構成例)
図4Aは、各情報信号層の第1の構成例を示す模式図である。図4Aに示すように、情報信号層L0〜Lnは、無機記録層21からなる。このような単純な構成とすることで、光情報記録媒体10を低廉化し、かつ、その生産性を向上することができる。このような効果は、情報信号層L0〜Lnの層数が多い媒体ほど、顕著となる。
【0052】
(無機記録層)
無機記録層21としては、上述の第1の実施形態における無機記録層11と同様のものを用いることができる。情報信号層L0〜Lnに含まれる無機記録層11のすべてが、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを主成分としていることが好ましい。これにより、情報信号層L0〜Lnに含まれるPdの含有量を低減できる、またはPdを含まない情報信号層L0〜Lnを提供できる、という利点が得られる。また、金属Xのターゲットと金属Yのターゲットとをコスパッタすることにより、情報信号L0〜Lnをすべて成膜することができるので、製造設備を簡略化できる、という利点も得られる。各情報信号層L0〜Lnの無機記録層11の比率(a/b)を、各情報信号層L0〜Lnに求められる記録特性や光学特性(例えば記録感度および透過特性)に応じて調整することが好ましい。この場合に、比率(a/b)が大きいほど透過率が高く、また記録感度が低下する傾向がある。
【0053】
(第2の構成例)
図4Bは、各情報信号層の第2の構成例を示す模式図である。図4Bに示すように、情報信号層L0〜Lnは、例えば、上側面(第2の主面)および下側面(第1の主面)を有する無機記録層21と、無機記録層21の下側面に隣接して設けられた第1保護層22と、無機記録層21の上側面に隣接して設けられた第2保護層23とを備える。このような構成とすることで、無機記録層21の耐久性を向上することができる。
【0054】
(無機記録層)
無機記録層21としては、上述の第1の構成例と同様のものを用いることができる。
【0055】
(保護層)
第1保護層22および第2保護層23としてはそれぞれ、上述の第1の実施形態における第1保護層12および第2保護層13と同様のものを用いることができる。各情報信号層L0〜Lnごとに求められる特性(例えば光学特性や耐久性など)に応じて、第1保護層22および第3保護層23の材料およびその組成比を適宜設定することが好ましい。
【0056】
(中間層)
中間層S1〜Snは、情報信号層L0〜Lnを物理的および光学的に十分な距離をもって離間させる役割を果たし、その表面には凹凸面が設けられている。その凹凸面は、例えば、同心円状または螺旋状のグルーブ(イングルーブGinおよびオングルーブGon)を形成している。中間層S1〜Snの厚みは、9μm〜50μmに設定することが好ましい。中間層S1〜Snの材料は特に限定されるものではないが、紫外線硬化性アクリル樹脂を用いることが好ましい。また、中間層S1〜Snは、奥側の層への情報信号の記録または再生のためのレーザ光の光路となることから、十分に高い光透過性を有していることが好ましい。
【0057】
[光情報記録媒体の製造方法]
次に、本技術の第2の実施形態に係る光情報記録媒体20の製造方法の一例について説明する。
【0058】
まず、第1の実施形態と同様にして、基板を成形した後、その基板1上に情報信号層L0を形成する。次に、例えばスピンコート法により紫外線硬化樹脂を情報信号層L0上に均一に塗布する。その後、情報信号層L0上に均一に塗布された紫外線硬化樹脂に対してスタンパの凹凸パターンを押し当て、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射して硬化させた後、スタンパを剥離する。これにより、スタンパの凹凸パターンが紫外線硬化樹脂に転写され、例えばイングルーブGinおよびオングルーブGonが設けられた中間層S1が情報信号層L0上に形成される。
【0059】
次に、上述の情報信号層L0および中間層S1の形成工程と同様にして、中間層S1上に、情報信号層L1、中間層S2、情報信号層L2、・・・、中間層Sn、情報信号層Lnをこの順序で中間層S1上に積層する。次に、例えばスピンコート法により、紫外線硬化樹脂(UVレジン)などの感光性樹脂を情報信号層Ln上にスピンコートした後、紫外線などの光を感光性樹脂に照射し、硬化する。これにより、情報信号層Ln上に光透過層2が形成される。
以上の工程により、目的とする光情報記録媒体20が得られる。
【0060】
(効果)
第2の実施形態によれば、多層の光情報記録媒体20の情報信号層L0〜Lnを、高価なPdの含有量が低減された無機記録層21、または高価なPdを含有しない無機記録層(Pdレス記録層)21により形成するので、光情報記録媒体20を低廉化することができる。
【0061】
情報信号層L0〜Lnそれぞれの膜構成を単層または3層以下の膜構成とした場合には、多層の光情報記録媒体20の層構成を簡略化することができる。したがって、多層の光情報記録媒体20を低廉化し、かつ、その生産効率を向上することができる。特に、情報信号層L0〜Lnを全て無機記録層21からなる単層構成とした場合には、上述の低廉化および生産効率向上の効果が顕著である。
【0062】
金属Yとして、Cu、Mn、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる場合には、PdやAgなどの貴金属の使用を低減、またはそれらの貴金属を無含有とすることができる。したがって、多層の光情報記録媒体20をさらに低廉化することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
以下の説明において、多層の光情報記録媒体の情報信号層を、基板側からレーザ光照射面側に向かって順にL0層(第1層)、L1層(第2層)、L2層(第3層)、・・・・と称する。
【0065】
本技術の実施例について以下の順序で説明する。
1.Pd含有記録層とPdレス記録層との特性比較
2.Pdレス記録層の組成
【0066】
<1.Pd含有記録層とPdレス記録層との特性比較>
(実施例1−1)
まず、射出成形により、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を成形した。なお、このポリカーボネート基板上には、イングルーブおよびオングルーブを有する凹凸面を形成した。次に、スパッタ法によりポリカーボネート基板の凹凸面上に第1保護層、無機記録層、第2保護層を順次積層した。具体的な各層の構成および成膜条件は以下のようにした。
【0067】
第1保護層(基板側)
材料:SiO2、In23およびZrO2の混合体(以下SIZという。)
厚さ:10nm
成膜条件:SIZターゲットをRFスパッタリングして成膜した。
【0068】
無機記録層
材料:W−Cu−Zn−O
厚さ:40nm
成膜条件:ArガスとO2ガスとの混合ガス雰囲気下にて、Wターゲット、CuターゲットおよびZnターゲットをコスパッタすることにより成膜した。但し、無機記録層中のW、Cu、Znそれぞれの原子比率a、b、cが、表1に示すように、a:b:c=19.0原子%:62.1原子%:18.9原子%となるように、W、CuおよびZnターゲットそれぞれの投入電力を調整した。ここで、無機記録層の組成を、4層の光情報記録媒体のL1層(第2層)の透過率が得られるように調製した。以下では、このように組成が調製された無機記録層を、「L1相当」の無機記録層という。
【0069】
第2保護層(光透過層側)
材料:SIZ
厚さ:24nm
成膜条件:SIZターゲットをRFスパッタリングして成膜した。
【0070】
次に、スピンコート法により、紫外線硬化樹脂(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製、商品名:SK8300)を第2保護層上に均一塗布し、これに紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ100μmを有する光透過層を形成した。
以上により、目的とする光情報記録媒体を得た。
【0071】
(実施例1−2)
無機記録層中のW、Cu、Znそれぞれの原子比率a、b、cが、表1に示すように、a:b:c=26.5原子%:47.3原子%:26.2原子%となるように、W、CuおよびZnターゲットそれぞれの投入電力を調整したこと以外は、実施例1−1と同様にして光情報記録媒体を得た。ここで、無機記録層の組成を、4層の光情報記録媒体のL3層(第4層)の透過率が得られるように調製した。以下では、このように組成が調製された無機記録層を、「L3相当」の無機記録層という。
【0072】
(比較例1−1)
まず、射出成形により、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を成形した。なお、このポリカーボネート基板上には、イングルーブおよびオングルーブを有する凹凸面を形成した。次に、スパッタ法によりポリカーボネート基板の凹凸面上に第1保護層、無機記録層、第2保護層を順次積層した。具体的な各層の構成および成膜条件は以下のようにした。
【0073】
第1保護層(基板側)
材料:SIZ
厚さ:10nm
成膜条件:SIZターゲットをRFスパッタリングして成膜した。
【0074】
無機記録層
材料:W−Cu−Zn−Pd−O
厚さ:40nm
成膜条件:ArガスとO2ガスとの混合ガス雰囲気下にて、Wターゲット、Cuターゲット、ZnターゲットおよびPdターゲットをコスパッタすることにより成膜した。
但し、無機記録層中のW、Cu、Zn、Pdそれぞれの原子比率a、b、c、dが、表1に示すように、a:b:c:d=31.3原子%:40.7原子%:12.4原子%:15.6原子%となるように、W、Cu、ZnおよびPdターゲットそれぞれの投入電力を調整した。ここで、無機記録層の組成を、4層の光情報記録媒体のL1層(第2層)の透過率が得られるように調製した。すなわち、無機記録層を、L1相当としての無機記録層とした。
【0075】
第2保護層(光透過層側)
材料:SIZ、厚さ:24nm
成膜条件:SIZターゲットをRFスパッタリングして成膜した。
【0076】
次に、スピンコート法により、紫外線硬化樹脂(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製、商品名:SK8300)を第2保護層上に均一塗布し、これに紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ100μmを有する光透過層を形成した。
以上により、目的とする光情報記録媒体を得た。
【0077】
(比較例1−2)
無機記録層中のW、Cu、Zn、Pdそれぞれの原子比率a、b、c、dが、表1に示すように、a:b:c:d=35.4原子%:17.1原子%:35.1原子%:12.4原子%となるように、W、Cu、ZnおよびPdターゲットそれぞれの投入電力を調整したこと以外は、比較例1−1と同様にして光情報記録媒体を得た。ここで、無機記録層の組成を、4層の光情報記録媒体のL3層(第4層)の透過率が得られるように調製した。すなわち、無機記録層を、L3相当としての無機記録層とした。
【0078】
(透過率評価)
上述のようにして得られた実施例1−1、1−2、比較例1−1、1−2の光情報記媒体の透過率を、分光高度計(日本分光(株)製、商品名:V−530)を用いて、記録波長405nmに対する透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
(反射率評価)
上述のようにして得られた実施例1−1、1−2、比較例1−1、1−2の光情報記録媒体の反射率をディスクテスタ(パルステック社製、商品名:ODU−1000)を用いて、NA=0.85、記録波長405nmで測定した。その結果を表1に示す。
【0080】
(i−MLSE特性(1))
上述のようにして得られた実施例1−1、1−2、比較例1−1、1−2の光情報記録媒体のi−MLSEを以下のようにして求めた。ディスクテスタ(パルステック社製、商品名:ODU−1000)を用いて、NA=0.85、記録波長405nm、記録線速7.69m/sで1層あたり32GB密度の1−7変調データを記録再生して、i−MLSE値を求めた。記録パワーPwに対するi−MLSE値の結果を図5Aおよび図5Bに示す。
【0081】
(i−MLSE特性(2))
上述のようにして得られた実施例1−1、1−2、比較例1−1、1−2の光情報記録媒体のi−MLSE値を横軸に記録パワーPwをPwoで規格化したPw Ratioとした結果を図6Aおよび図6Bに示す。ここで、i−MLSEを記録パワーに対し求め、14%を超える記録パワーの低い側をPwl、高い側をPwhとし、PwlとPwhとの中間値を最適記録パワーPwoとした。
【0082】
(SER特性)
上述のようにして得られた実施例1−1、1−2、比較例1−1、1−2の光情報記録媒体のランダムシンボルエラーレート(SER)を以下のようにして求めた。ディスクテスタ(パルステック社製、商品名:ODU−1000)を用いて、記録波長405nm、記録線速7.69m/sで1層あたり32GB密度の1−7変調データを記録再生して、SERを求めた。そのPw Ratioに対するSER値の結果を図7Aおよび図7Bに示す。
【0083】
(変調度)
上述のようにして得られた実施例1−1、1−2、比較例1−1、1−2の光情報記録媒体の変調度を以下のようにして求めた。ディスクテスタ(パルステック社製、商品名:ODU−1000)を用いて、記録波長405nm、記録線速7.69m/sで1層あたり32GB密度の1−7変調データを記録再生して、変調度(信号振幅比)を求めた。そのPw Ratioに対する変調度の結果を図8Aおよび図8Bに示す。
【0084】
表1は、実施例1−1、1−2、比較例1−1、1−2の光情報記録媒体の構成および評価結果を示す。
【表1】

【0085】
表1、図3A〜図8Bから以下のことがわかる。
Pdレス記録層を用いた実施例1−1、1−2でも、Pd含有記録層を用いた比較例1−1、1−2と同程度のi−MLSE特性、SER特性および変調度が得られることがわかる。したがって、W−Cu−Zn−Oを記録材料として用いることで、Pdを含有しなくとも、W−Cu−Zn−Pd−Oを記録材料として用いた場合とほぼ同等の特性を維持できる。
【0086】
記録層の透過率を70%台とした実施例1−2(L3相当の無機記録層)でも、記録層の透過率を60%台とした実施例1−1(L1相当の無機記録層)とほぼ同等な特性が得られる。したがって、W−Cu−Zn−Oを主成分とする無機記録層では、組成の調整により透過率を変化させても、良好な特性を維持することができる。すなわち、W−Cu−Zn−Oを主成分とする無機記録層は、多層の光情報記録媒体に用いて好適なものであると考えられる。
【0087】
<2.Pdレス記録層の組成>
(実施例2−1〜2−5)
W−Cu−Zn−Oに代えてW−Cu−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のW、Cuそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=4〜50原子%:50〜96原子%の範囲となるように、WおよびCuターゲットそれぞれの投入電力を調製したこと以外は、実施例1−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0088】
(実施例3−1〜3−4)
金属XとしてWに代えてMoを用いたMo−Cu−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のMo、Cuそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=4〜31原子%:69〜96原子%の範囲となるように、MoおよびCuターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0089】
(実施例4−1〜4−4)
金属YとしてCuに代えてMnを用いたW−Mn−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のW、Mnそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=6〜55原子%:45〜94原子%の範囲となるように、WおよびMnターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0090】
(実施例5−1〜5−4)
金属YとしてCuに代えてNiを用いたW−Ni−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のW、Niそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=5〜36原子%:64〜95原子%の範囲となるように、WおよびNiターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0091】
(実施例6−1〜6−4)
金属YとしてCuに代えてAgを用いたW−Ag−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のW、Agそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=6〜40原子%:60〜94原子%の範囲となるように、WおよびAgターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0092】
(実施例7−1、7−2)
金属酸化物としてZn酸化物をさらに含むW−Cu−Zn−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のW、Cuそれぞれの原子比率a、b、cが、表2に示すように、a:b=23〜36原子%:64〜77原子%の範囲となり、(a+b):c=73.8原子%〜81.1原子%:18.9原子%〜26.2原子%の範囲となるように、W、CuおよびZnターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0093】
(比較例2)
金属XとしてWに代えてSiを用いたSi−Cu−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のSi、Cuそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=10原子%:90原子%となるように、SiおよびCuターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0094】
(比較例3)
金属XとしてWに代えてTeを用いたTe−Cu−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のTe、Cuそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=15原子%:85原子%となるように、TeおよびCuターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0095】
(比較例4)
金属YとしてCuに代えてSbを用いたW−Sb−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のW、Sbそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=20原子%:80原子%となるように、WおよびSbターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0096】
(比較例5)
金属YとしてCuに代えてGeを用いたW−Ge−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のW、Geそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=20原子%:80原子%となるように、WおよびGeターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0097】
(比較例6)
金属XとしてWに代えてMoを用い、金属YとしてCuに代えてSnを用いたMo−Sn−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のMo、Snそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=15原子%:85原子%となるように、MoおよびSnターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0098】
(比較例7)
金属YとしてCuに代えてNbを用いたW−Nb−Oにより、無機記録層を形成した。また、その無機記録層中のW、Nbそれぞれの原子比率a、bが、表2に示すように、a:b=15原子%:85原子%となるように、WおよびNbターゲットそれぞれの投入電力を調製した。これ以外のことは、実施例2−1と同様にして光情報記録媒体を得た。
【0099】
(最適記録パワーPwo)
上述のようにして得られた実施例2−1〜7−2、比較例2〜7の光情報記録媒体の初期状態の最適記録パワーPwoを以下のようにして求めた。ディスクテスタ(パルステック社製、商品名:ODU−1000)を用いて、記録波長405nm、記録線速7.69m/sで1層あたり32GB密度の1−7変調データを記録再生して、i−MLSEを求めた。このi−MLSEを記録パワーに対し求め、14%を超える記録パワーの低い側をPwl、高い側をPwhとし、PwlとPwhとの中間値を最適記録パワーPwoとした。その結果を表2、図9Aおよび図9Bに示す。ここで、i−MLSE14%はエラー補正が破綻しないi−MLSEの上限値であり、これを超えると再生データに欠陥が発生して信号品質が著しく悪いと言われている。また、記録パワーは、半導体レーザの記録パワーではなく、光情報記録媒体の光照射面に入射するレーザ光の記録パワーを意味する。
なお、図9Aおよび図9Bに示した近似直線は、最小二乗法による線形近似から求めた。
【0100】
(パワーマージンPM´)
上述のようにして得られた実施例2−1〜7−2、比較例2〜7の光情報記録媒体のSERに対するパワーマージンPM´を以下のようにして求めた。まず、SERを記録パワーに対し求め、4×10-3を超える記録パワーの低い側をPwl´、高い側をPwh´とした。次に、求めた記録パワーPwl´、Pwh´、最適記録パワーPwoを下記の式(1)に代入してSERに対するパワーマージンPM´を求めた。その結果を表2に示す。
PM´=(Pwh´−Pwl´)/Pwo ・・・(1)
【0101】
(i−MLSE)
上述のようにして得られた実施例2−1〜7−2、比較例2〜7の光情報記録媒体のi−MLSEを以下のようにして求めた。ディスクテスタ(パルステック社製、商品名:ODU−1000)を用いて、NA=0.85、記録波長405nm、記録線速7.69m/sで1層あたり32GB密度の1−7変調データを記録再生して、i−MLSE値を求めた。その結果を表2に示す。
【0102】
(特性評価)
上述のようにして得られた実施例2−1〜7−2、比較例2〜7の光情報記録媒体の特性を以下のようにして評価した。その結果を表2に示す。
○:i−MLSEが12%以下であり、パワーマージンが10%以上である。
△:i−MLSEが12%以下であり、パワーマージンが10%未満である。
×:i−MLSEが12%未満であり、パワーマージンが10%未満である。
なお、i−MLSEが12%以下であると、十分に良好な記録状態であり、再生系のばらつきがあっても良好な再生特性を得ることができる。パワーマージンが10%以上であると、記録時にレーザーパワーが変動したときにも、安定した記録特性を維持することができる。
【0103】
表2は、実施例2−1〜7−2、比較例2〜7の光情報記録媒体の構成および評価結果を示す。
【表2】

【0104】
表2から以下のことがわかる。
実施例2−1〜実施例6−4、比較例2〜7の評価結果から、金属XとしてWまたはMoを用い、金属YとしてCu、Mn、NiまたはAgを用いることで、i−MLSEを12%以下にできることがわかる。なお、金属XとしてWとMoとを組み合わせて用いた材料系でも、金属YとしてCu、Mn、NiおよびAgを2種以上組み合わせて用いた材料系でも、上記と同様の効果が得られると推測される。
実施例7−1、7−2の評価結果から、無機記録層が金属Xの酸化物および金属Yの酸化物に加えて金属Zの酸化物(Znの酸化物)をさらに含んでいる場合にも、i−MLSEを12%以下にできることがわかる。
実施例2−1〜2−5、4−1〜6−4の評価結果から、金属YとしてCuを用いることで、金属YとしてMn、NiまたはAgを用いた場合に比してパワーマージンを向上できることがわかる。なお、Cuをそれ以外の金属Y(Mn、Ni、Ag)と組み合わせて用いた場合にも、金属YとしてMn、NiまたはAgを単体で用いた場合に比してパワーマージンを向上できると推測される。
【0105】
表2、図9Aおよび図9Bから以下のことがわかる。
表2に示した実施例2−1〜実施例6−4の評価結果から、比率(a/b)を0.1以上とすることで、i−MLSEが12%以下とし、かつ、パワーマージンを10%以上にできることがわかる。無機記録層が金属Zの酸化物(Znの酸化物)をさらに含んでいる場合にも、比率(a/b)を0.1以上とすることで、上記と同様の効果を得ることができると推測される。
表2に示した実施例2−1〜実施例6−4の評価結果から、比率(a/b)を0.25以上とすることで、パワーマージンをさらに向上できることがわかる。
図9Aおよび図9Bから、比率(a/b)が増加するに従って、最適記録パワーPwoが増加する傾向があることがわかる。
図9Aから、比率(a/b)を1.3以下にすることで、各金属X(=Cu、Mn)と金属Y(=Cu、Mn、Ni、Ag)との組み合わせにおいて、最適記録パワーPwoを約25mW以下とすることができる。ここで、最適記録パワー25mWは、現在の民生用ドライブに搭載された半導体レーザにおいて、出射可能と考えられるレーザ光の記録パワーの最大値である。
図9Bから、比率(a/b)を2.7以下にすることで、各金属X(=Cu、Mn)と金属Y(=Cu、Mn、Ni、Ag)との組み合わせにおいて、最適記録パワーPwoを約50mW以下とすることができる。ここで、最適記録パワー50mWは、将来の民生用ドライブに搭載される半導体レーザにおいて、出射可能になると考えられるレーザ光の記録パワーの最大値である。
以上の点を総合すると、比率(a/b)を0.1以上2.7以下とすることが好ましく、0.25以上2.7以下とすることがより好ましい。もしくは、比率(a/b)を0.1以上1.3以下とすることが好ましく、0.25以上1.3以下とすることがより好ましい。
【0106】
以上、本技術の実施形態について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0107】
例えば、上述の第1および第2の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0108】
また、上述の第1および第2の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0109】
また、上述の第1および第2の実施形態では、基板上に1層または複数層の情報信号層、光透過層がこの順序で積層された構成を有し、この光透過層側からレーザ光を1層または複数層の情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光情報記録媒体に対して本技術を適用した場合を例として説明したが、本技術はこの例に限定されるものではない。例えば、基板上に1層または複数層の情報信号層、保護層がこの順序で積層された構成を有し、基板側からレーザ光を1層または複数層の情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光情報記録媒体、または2枚の基板の間に1層または複数層の情報信号層が設けられた構成を有し、一方の基板の側からレーザ光を1層または複数層の情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光情報記録媒体に対しても本技術は適用可能である。
【0110】
また、上述の第2の実施形態では、複数の情報信号層に含まれる無機記録層がすべて同一の構成(すなわち、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを主成分として含んでいる構成)を有している場合を例として説明したが、多層の光情報記録媒体の構成はこの例に限定されるものではない。例えば、複数の記録層のうちの少なくとも一層が、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを主成分として含む構成を採用することも可能である。
【0111】
また、本技術は以下の構成を採用することもできる。
(1)
光の照射により情報信号を記録可能な記録層を
備え、
上記記録層は、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
上記金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
上記金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である光情報記録媒体。
(2)
光の照射により情報信号を記録可能な記録層を
備え、
上記記録層は、実質的には金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とからなり、
上記金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
上記金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である光情報記録媒体。
(3)
光の照射により情報信号を記録可能な複数の記録層を
備え、
上記複数の記録層のうちの少なくとも一層は、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
上記金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
上記金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である光情報記録媒体。
(4)
光の照射により情報信号を記録可能な複数の記録層を
備え、
上記複数の記録層のうちの少なくとも一層は、実質的には金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とからなり、
上記金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
上記金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である光情報記録媒体。
(5)上記複数の記録層のすべてが、上記金属Xの酸化物と上記金属Yの酸化物とを含んでいる(3)または(4)記載の光情報記録媒体。
(6)
上記金属Xおよび上記金属Yの合計に対する上記金属Xの原子比率をa、上記金属Xおよび上記金属Yの合計に対する上記金属Yの原子比率をbとしたとき、
比率(a/b)は、0.1≦a/b≦2.7の関係を満たす(1)〜(5)のいずれかに記載の光情報記録媒体。
(7)
上記金属Xおよび上記金属Yの合計に対する上記金属Xの原子比率をa、上記金属Xおよび上記金属Yの合計に対する上記金属Yの原子比率をbとしたとき、
比率(a/b)は、約0.1以上約2.7以下である(1)〜(5)のいずれかに記載の光情報記録媒体。
(8)
上記記録層が、亜鉛の酸化物をさらに含んでいる(1)〜(7)のいずれかに記載の光情報記録媒体。
(9)
上記金属Yは、銅、マンガン、およびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種である(1)〜(8)のいずれかに記載の光情報記録媒体。
(10)
上記金属Yは、銅である(1)〜(8)のいずれかに記載の光情報記録媒体。
(11)
上記記録層の少なくとも一方の面に設けられた保護層をさらに備える(1)〜(10)のいずれかに記載の光情報記録媒体。
(12)
上記保護層は、誘電体層または透明導電層である(11)記載の光情報記録媒体。
(13)
金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる光情報記録媒体用記録層。
(14)
実質的には金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とからなり、
金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる光情報記録媒体用記録層。
(15)
金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる光情報記録媒体用ターゲット。
(16)
実質的には金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とからなり、
金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる光情報記録媒体用ターゲット。
【符号の説明】
【0112】
1 基板
2 光透過層
10、20 光情報記録媒体
11、21 無機記録層
12、22 第1保護層
13、23 第2保護層
L、L0〜Ln 情報信号層
S1〜Sn 中間層
Gin イングルーブ
Gon オングルーブ
C 光照射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射により情報信号を記録可能な記録層を
備え、
上記記録層は、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
上記金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
上記金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である光情報記録媒体。
【請求項2】
上記金属Xおよび上記金属Yの合計に対する上記金属Xの原子比率をa、上記金属Xおよび上記金属Yの合計に対する上記金属Yの原子比率をbとしたとき、
比率(a/b)は、0.1≦a/b≦2.7の関係を満たす請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記記録層が、亜鉛の酸化物をさらに含んでいる請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
上記金属Yは、銅、マンガン、およびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
上記金属Yは、銅である請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
上記記録層の少なくとも一方の面に設けられた保護層をさらに備える請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
上記保護層は、誘電体層または透明導電層である請求項6記載の光情報記録媒体。
【請求項8】
光の照射により情報信号を記録可能な複数の記録層を
備え、
上記複数の記録層のうちの少なくとも一層は、金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
上記金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
上記金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種である光情報記録媒体。
【請求項9】
上記複数の記録層のすべてが、上記金属Xの酸化物と上記金属Yの酸化物とを含んでいる請求項8記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
金属Xの酸化物と金属Yの酸化物とを含み、
金属Xは、タングステンおよびモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
金属Yは、銅、マンガン、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる光情報記録媒体用記録層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86336(P2013−86336A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228278(P2011−228278)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】