説明

光情報記録媒体

【課題】光情報記録媒体の反りの変化を抑制することにより、光情報記録媒体の記録再生が、低温下でも安定に行われるようにする。
【解決手段】光情報記録媒体は、基板と、基板上に形成される3層以上の情報信号層と、3層以上の情報信号層の間に介在される2層以上の中間層と、基板から最も離れた位置にある情報信号層上に形成される光透過層とを備える。−5℃における光透過層の貯蔵弾性率が、1500MPa以下であり、−5℃における2層以上の中間層のそれぞれの貯蔵弾性率が、2860MPa以上2950MPa以下であり、25℃における2層以上の中間層のそれぞれの貯蔵弾性率が、1850MPa以上2440MPa以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光情報記録媒体に関する。詳しくは、3層以上の情報信号層を備える光情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光情報記録媒体の高密度化が進み、例えば従来のCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)に比較して著しい大容量化を実現した高密度光ディスクなどが知られている。
【0003】
高密度光ディスクでは、情報信号を記録および/または再生するための情報信号層がディスク基板の一主面に形成される。情報信号層の上には、例えば、スピンコート法により、光透過層・保護層が形成される。情報信号の記録再生時には、光透過層を介して情報信号層にレーザ光が照射され、該レーザ光により、情報信号の記録または再生が行われる。
【0004】
上述した高密度光ディスクは、レーザ光が入射される情報読出面側にのみ光透過層が形成される。そのため、高密度光ディスクは、ディスクの厚み方向に非対称の構造を有し、DVDなどと比較して反り易い。
【0005】
高密度光ディスクの反りの問題に対応するため、例えば、下記の特許文献1では、25℃における弾性率および−20℃における弾性率を所定の範囲内とし、かつガラス転移点温度が−20℃〜0℃である光透過層を備える光情報記録媒体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−271970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本技術の目的は、反りが抑制された光情報記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術は、基板と、基板上に形成される3層以上の情報信号層と、3層以上の情報信号層の間に介在される2層以上の中間層と、基板から最も離れた位置にある情報信号層上に形成される光透過層とを備え、−5℃における光透過層の貯蔵弾性率が、1500MPa以下であり、−5℃における2層以上の中間層のそれぞれの貯蔵弾性率が、2860MPa以上2950MPa以下であり、25℃における2層以上の中間層のそれぞれの貯蔵弾性率が、1850MPa以上2440MPa以下である光情報記録媒体である。
【0009】
本技術は、3層以上の情報信号層を備える光情報記録媒体に対し、−5℃における光透過層の貯蔵弾性率と、−5℃および25℃における中間層の貯蔵弾性率とをコントロールすることにより、光情報記録媒体の反りの変化が抑制される。光情報記録媒体を使用する環境が極めて低温(−5℃)でも反りの変化が小さいことから、このような低温下でも安定に光情報記録媒体の記録再生が行われる。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、低温下での光情報記録媒体の反りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。図1Bは、図1Aに示した各情報信号層の一構成例を示す模式図である。
【図2】図2は、サンプルRa〜Rcの環境温度に対する貯蔵弾性率を示したグラフである。
【図3】図3Aは、サンプルQ−1〜Q−3の評価用光ディスクの層構成を説明するための模式的断面図である。図3Bは、サンプルT−1〜T−3の評価用光ディスクの層構成を説明するための模式的断面図である。
【図4】図4Aは、サンプルQ−1〜Q−3について、−5℃の環境下の反り角と25℃の環境下の反り角との差△β=βL−βHを示すグラフである。図4Bは、サンプルT−1〜T−3について、−5℃の環境下の反り角と25℃の環境下の反り角との差△β=βL−βHを示すグラフである。
【図5】図5Aは、サンプルQ−1〜Q−3の−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、図4Aに示すサンプルQ−1〜Q−3の△βとの間の関係を示すグラフである。図5Bは、サンプルQ−1〜Q−3の25℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、図4Aに示すサンプルQ−1〜Q−3の△βとの間の関係を示すグラフである。
【図6】図6Aは、サンプルT−1〜T−3の−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、図4Bに示すサンプルT−1〜T−3の△βとの間の関係を示すグラフである。図6Bは、サンプルT−1〜T−3の25℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、図4Bに示すサンプルT−1〜T−3の△βとの間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本技術の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
[光情報記録媒体の構成]
図1Aは、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。この光情報記録媒体10は、例えば、追記型の光情報記録媒体であり、図1Aに示すように、情報信号層L0、中間層S1、情報信号層L1、中間層S2、情報信号層L2、中間層S3、情報信号層L3、保護層(カバー層)である光透過層2がこの順序で基板1の一主面に積層された構成を有する。必要に応じて、光透過層2側の表面にハードコート層3をさらに備えるようにしてもよい。必要に応じて、基板1側の表面にバリア層4をさらに備えるようにしてもよい。
【0013】
この一実施形態に係る光情報記録媒体10では、光透過層2側の表面Cからレーザ光を各情報信号層L0〜L3に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。例えば、400nm以上410nm以下の範囲の波長を有するレーザ光を、0.84以上0.86以下の範囲の開口数を有する対物レンズにより集光し、光透過層2の側から各情報信号層L0〜L3に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。このような光情報記録媒体10としては、例えばBD−R(Blu-ray Disc Recordable Format)が挙げられる。以下では、情報信号層L0〜L3に情報信号を記録するためのレーザ光が照射される表面Cを光照射面Cと称する。また、以下では、情報信号層を、基板1の側からレーザ光が入射される情報読出面側に向かって、順に、情報信号層L0、L1、L2、・・・と称することとする。中間層を、光ディスク基板1の側からレーザ光が入射される情報読出面側に向かって、順に、中間層S1、S2、・・・と称することとする。
【0014】
以下、光情報記録媒体10を構成する基板1、情報信号層L0〜L3、中間層S1〜S3、光透過層2、ハードコート層3、およびバリア層4について順次説明する。
【0015】
(基板)
基板1は、例えば、中央に開口(以下センターホールと称する)が形成された円環形状を有する。この基板1の一主面は、例えば、凹凸面となっており、この凹凸面上に情報信号層L0が成膜される。以下では、凹凸面のうち凹部をイングルーブGin、凸部をオングルーブGonと称する。
【0016】
このイングルーブGinおよびオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、例えば、アドレス情報を付加するためにウォブル(蛇行)されている。
【0017】
基板1の直径は、例えば120mmに選ばれる。基板1の厚さは、剛性を考慮して選ばれ、好ましくは0.3mm以上1.3mm以下から選ばれ、より好ましくは0.6mm以上1.3mm以下から選ばれ、例えば1.1mmに選ばれる。また、センタホールの径(直径)は、例えば15mmに選ばれる。
【0018】
基板1の径(直径)は、例えば120mmに選ばれる。基板1の厚さは、剛性を考慮して選ばれ、好ましくは0.3mm以上1.3mm以下、より好ましくは0.6mm以上1.3mm以下、例えば1.1mmに選ばれる。また、センタホールの径(直径)は、例えば15mmに選ばれる。
【0019】
基板1の材料としては、例えば、プラスチック材料またはガラスを用いることができ、コストの観点から、プラスチック材料を用いることが好ましい。プラスチック材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができる。
【0020】
(情報信号層)
図1Bは、図1Aに示した各情報信号層の一構成例を示す模式図である。図1Bに示すように、情報信号層L0〜L3は、例えば、無機記録層11と、無機記録層11の一主面に隣接して設けられた第1保護層12と、無機記録層11の他主面に隣接して設けられた第2保護層13とを備える。このような構成とすることで、無機記録層11の耐久性を向上することができる。
【0021】
光照射面Cから最も奥側となる情報信号層L0以外の情報信号層L1〜L3のうちの少なくとも1層の無機記録層11が、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物の3元系酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。これにより、光情報記録媒体の情報信号層として求められる特性を満たしつつ、優れた透過特性を実現できるからである。なお、情報信号層を5層以上とした場合についても、同様である。
【0022】
光照射面Cから最も奥側となる情報信号層L0以外の情報信号層L1〜L3のうちの少なくとも1層の無機記録層11が、上述の3元系酸化物にさらにZn酸化物を加えた4元系酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。Zn酸化物を加えることにより、光情報記録媒体の情報信号層として求められる特性を満たしつつ、優れた透過特性を維持しながら、Zn酸化物以外の総量を低くすることが出来る。つまり、Zn酸化物を加えることで高価なPd酸化物の割合を小さくでき、コスト低減を実現できる。なお、情報信号層を5層以上とした場合についても、同様である。
【0023】
第1保護層12および第2保護層13としては、誘電体層または透明導電層を用いることが好ましく、第1保護層および第2誘電体層13のうちの一方として誘電体層を用い、他方として透明導電層を用いることも可能である。誘電体層または透明導電層が酸素バリア層として機能することで、無機記録層11の耐久性を向上することができる。また、無機記録層11の酸素の逃避を抑制することで、記録膜の膜質の変化(主に反射率の低下として検出)を抑制することができ、無機記録層11として必要な膜質を確保することができる。さらに、誘電体層または透明導電層を設けることで、記録特性を向上させることができる。これは、誘電体層または透明導電層に入射したレーザ光の熱拡散が最適に制御されて、記録部分における泡が大きくなりすぎたり、Pd酸化物の分解が進みすぎて泡がつぶれるといったことが抑制され、記録時の泡の形状を最適化することができるためと考えられる。
【0024】
第1保護層12および第2保護層13の材料としては、例えば、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物、フッ化物またはその混合物が挙げられる。第1保護層12および第2保護層13の材料としては、互いに同一または異なる材料を用いることができる。酸化物としては、例えば、In、Zn、Sn、Al、Si、Ge、Ti、Ga、Ta、Nb、Hf、Zr、Cr、BiおよびMgからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物が挙げられる。窒化物としては、例えば、In、Sn、Ge、Cr、Si、Al、Nb、Mo、Ti、Nb、Mo、Ti、W、TaおよびZnからなる群から選ばれる1種以上の元素の窒化物、好ましくはSi、GeおよびTiからなる群から選ばれる1種以上の元素の窒化物が挙げられる。硫化物としては、例えば、Zn硫化物が挙げられる。炭化物としては、例えば、In、Sn、Ge、Cr、Si、Al、Ti、Zr、TaおよびWからなる群より選ばれる1種以上の元素の炭化物、好ましくはSi、Ti,およびWからなる群より選ばれる1種以上の元素の炭化物が挙げられる。フッ化物としては、例えば、Si、Al、Mg、CaおよびLaからなる群より選ばれる1種以上の元素のフッ化物が挙げられる。これらの混合物としては、例えば、ZnS−SiO2、SiO2−In23−ZrO2(SIZ)、SiO2−Cr23−ZrO2(SCZ)、In23−SnO2(ITO)、In23−CeO2(ICO)、In23−Ga23(IGO)、In23−Ga23−ZnO(IGZO)、Sn23−Ta25(TTO)、TiO2−SiO2などが挙げられる。
【0025】
(中間層)
中間層S1〜S3は、情報信号層L0〜L3をそれぞれ隔てる層である。中間層S1〜S3の光透過層2側となる面は、基板1と同様に、イングルーブGinおよびオングルーブGonからなる凹凸面となっている。
【0026】
中間層S1〜S3のそれぞれの貯蔵弾性率は、好ましくは、−5℃の温度環境下において2860MPa以上2950MPa以下であり、かつ、25℃の温度環境下において1850MPa以上2440MPa以下である。中間層のそれぞれの貯蔵弾性率を上記の範囲内とすることで、環境温度が室温から−5℃にゆっくり変化した場合でも、反りの変化を0.2[deg]程度以下に抑えることができる。中間層のそれぞれの貯蔵弾性率は、より好ましくは、−5℃の温度環境下において2880MPa以上2920MPa以下であり、かつ、25℃の温度環境下において2000MPa以上2280MPa以下である。中間層のそれぞれの貯蔵弾性率を上記の範囲内とすることで、環境温度が室温から−5℃にゆっくり変化した場合でも、反りの変化を0.1[deg]程度以下に抑えることができる。
【0027】
3層以上の情報信号層を形成する観点から、中間層の厚さの総和が、40μm以上49.5μm以下であることが好ましい。情報信号層を3層以上とするとともに、中間層の厚さの総和を所定の範囲内とすることにより、例えば、0.85程度の高NA(numerical aperture)化された対物レンズを用いて、高密度記録を実現することができる。
【0028】
中間層S1〜S3の材料としては、例えば、透明性を有する樹脂材料を用いることができる。このような樹脂材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂組成物を挙げることができ、例えば、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させることにより、中間層S1〜S3を形成することができる。紫外線硬化樹脂組成物としては、例えば、アクリル系樹脂などのプラスチック材料を用いることができる。
【0029】
「紫外線硬化樹脂組成物」
紫外線硬化樹脂組成物は、少なくとも、オリゴマー成分および光重合開始剤成分を含む。また、2官能以上モノマー成分および単官能モノマー成分の少なくとも何れかを含んでいてもよい。
【0030】
例えば、紫外線硬化樹脂組成物は、硬化反応前の液状状態での25℃における粘度が300mPa・s〜3000mPa・sで、かつ単体硬化物のガラス転移温度が−50℃〜15℃以下であるオリゴマー成分と、光重合開始剤成分とを含む。また、この紫外線硬化樹脂組成物は、単体硬化物のガラス転移点温度が−40℃〜90℃以下である2官能以上のモノマー成分および単官能モノマー成分の少なくとも何れかを含んでいてもよい。
【0031】
また、この紫外線硬化樹脂組成物は、硬化反応後において、好ましくは、−5℃における貯蔵弾性率が2860MPa以上2950MPa以下であり、かつ、25℃における貯蔵弾性率が1850MPa以上2440MPa以下の範囲内に設定されたものである。また、この紫外線硬化樹脂組成物は、より好ましくは、−5℃における貯蔵弾性率が2880MPa以上2920MPa以下であり、かつ、25℃における貯蔵弾性率が2000MPa以上2280MPa以下の範囲内に設定されたものである。また、この紫外線硬化樹脂組成物は、硬化反応後において、ガラス転移点温度が−20℃以上20℃以下となるものである。
【0032】
「オリゴマー成分」
オリゴマー成分としては、例えば、(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることができる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタアクリレートの何れかを意味するものである。(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、単体硬化物のガラス転移点温度が−50℃〜15℃であるウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートの市販品の一例としてはUV−6100B(日本合成化学(株)製)、EB230、EB8405(ダイセル・サイテック(株)製)、CN9004(サートマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレート市販品の一例としてはEB3500(ダイセル・サイテック(株)製)が挙げられる。(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば分子(繰り返し単位)中に2〜4個の(メタ)アクリロイル基を有する。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基の何れかを意味する。(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量は、500〜10000であることが好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種類で用いてもよく、また、2種類以上併用してもよい。
【0033】
「光重合開始剤成分」
光重合開始剤成分としては、0.01%アセトニトリル溶液の紫外−可視吸収スペクトルの長波長側吸収端がλ=405nm未満になる光重合開始剤を好適に用いることができる。この光重合開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−メチルチオ]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどが挙げられる。1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの市販品の一例としてはイルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの市販品の一例としてはダロキュア1173(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの市販品の一例としてはダロキュア1173(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。2−メチル−1[4−メチルチオ]フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オンの市販品の一例としてはイルガキュア907(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0034】
「2官能以上モノマー成分」
2官能以上モノマー成分としては、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。この2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーは、単体硬化物のガラス転移点温度が−40℃〜90℃であり、主鎖構造もしくは、および側鎖構造に脂肪族残基、脂環式残基、芳香族残基を有するものである。
【0035】
2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、エトキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。上記2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーは2種類以上併用することもできる。
【0036】
カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの市販品の一例としてはHX−620(日本化薬(株)製)が挙げられる。エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートの市販品の一例としてはCD561、SR9035(いずれもサートーマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートの市販品の一例としてはSR492(サートーマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの市販品の一例としてはDPCA−120(日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0037】
「単官能モノマー成分」
単官能モノマー成分としては、単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。この単官能(メタ)アクリレートモノマーは、単体硬化物のガラス転移点温度が−50℃〜50℃であり、主鎖構造もしくは、および側鎖構造に脂肪族残基、脂環式残基、芳香族残基を有するものである。単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては2−フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなどが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートモノマーは1種類で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
2−フェノキシエチルアクリレートの市販品の一例としては、ライトアクリレートPO−A(共栄化学(株)製)が挙げられる。テトラヒドロフルフリルアクリレートの市販品の一例としては、SR285(サートマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0039】
オリゴマー成分の配合量は、例えば、紫外線硬化樹脂組成物の全量を100質量部とすると、例えば10重量部〜80重量部とされる。光重合開始剤成分の配合量は、例えば0.5質量部〜10質量部とされる。2官能以上のモノマー成分および単官能モノマー成分を配合する場合は、以下の配合量とされる。2官能以上のモノマー成分の配合量は、20質量部〜60質量部とされる。単官能モノマー成分の配合量は、5質量部〜30質量部とされる。
【0040】
(光透過層)
光透過層2は、例えば、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂を硬化してなる樹脂層である。または、円環形状を有する光透過性シートと、この光透過性シートを基板1に対して貼り合わせるための接着層とから光透過層2を構成するようにしてもよい。光透過性シートは、記録および再生に用いられるレーザ光に対して、吸収能が低い材料からなることが好ましく、具体的には透過率90パーセント以上の材料からなることが好ましい。光透過性シートの材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂材料、ポリオレフィン系樹脂(例えばゼオネックス(登録商標))などを用いることができる。接着層の材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂、感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)などを用いることができる。この光透過層2の−5℃における貯蔵弾性率は、1500MPa以下の範囲内に設定され、より好ましくは、20MPa以上1500MPa以下の範囲内に設定される。これにより、−5℃程度の低温における光情報記録媒体10の反りを低減することができる。
【0041】
光透過層2の厚さは、好ましくは10μm以上177μm以下の範囲内から選ばれ、例えば、情報信号層を3層または4層とする場合、およそ50μm〜60μmの範囲内に選ばれる。このような薄い光透過層2と、例えば、0.85程度の高NA化された対物レンズとを組み合わせることによって、高密度記録を実現することができる。
【0042】
光透過層2の材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂組成物を挙げることができ、例えば、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させることにより、光透過層2を形成することができる。紫外線硬化樹脂組成物としては、例えば、アクリル系樹脂などのプラスチック材料を用いることができる。
【0043】
「紫外線硬化樹脂組成物」
紫外線硬化樹脂組成物は、少なくとも、オリゴマー成分および光重合開始剤成分を含む。また、2官能以上モノマー成分および単官能モノマー成分の少なくとも何れかを含んでいてもよい。
【0044】
例えば、紫外線硬化樹脂組成物は、硬化反応前の液状状態での25℃における粘度が300mPa・s〜3000mPa・sで、かつ単体硬化物のガラス転移温度が−50℃〜15℃以下であるオリゴマー成分と、光重合開始剤成分とを含む。また、この紫外線硬化樹脂組成物は、単体硬化物のガラス転移点温度が−40℃〜90℃以下である2官能以上のモノマー成分および単官能モノマー成分の少なくとも何れかを含んでいてもよい。
【0045】
また、この紫外線硬化樹脂組成物は、硬化反応後において、−5℃における貯蔵弾性率が、1500MPa以下の範囲内に設定されたものである。また、この紫外線硬化樹脂組成物は、より好ましくは、20MPa以上1500MPa以下の範囲内に設定されたものである。また、この紫外線硬化樹脂組成物は、硬化反応後において、ガラス転移点温度が−20℃以上20℃以下となるものである。
【0046】
「オリゴマー成分」
オリゴマー成分としては、例えば、(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることができる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタアクリレートの何れかを意味するものである。(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、単体硬化物のガラス転移点温度が−50℃〜15℃であるウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートの市販品の一例としてはUV−6100B(日本合成化学(株)製)、EB230、EB8405(ダイセル・サイテック(株)製)、CN9004(サートマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレート市販品の一例としてはEB3500(ダイセル・サイテック(株)製)が挙げられる。(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば分子(繰り返し単位)中に2〜4個の(メタ)アクリロイル基を有する。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基の何れかを意味する。(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量は、500〜10000であることが好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種類で用いてもよく、また、2種類以上併用してもよい。
【0047】
「光重合開始剤成分」
光重合開始剤成分としては、0.01%アセトニトリル溶液の紫外−可視吸収スペクトルの長波長側吸収端がλ=405nm未満になる光重合開始剤を好適に用いることができる。この光重合開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−メチルチオ]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどが挙げられる。1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの市販品の一例としてはイルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの市販品の一例としてはダロキュア1173(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの市販品の一例としてはダロキュア1173(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。2−メチル−1[4−メチルチオ]フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オンの市販品の一例としてはイルガキュア907(チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0048】
「2官能以上モノマー成分」
2官能以上モノマー成分としては、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。この2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーは、単体硬化物のガラス転移点温度が−40℃〜90℃であり、主鎖構造もしくは、および側鎖構造に脂肪族残基、脂環式残基、芳香族残基を有するものである。
【0049】
2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、エトキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。上記2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーは2種類以上併用することもできる。
【0050】
カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの市販品の一例としてはHX−620(日本化薬(株)製)が挙げられる。エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートの市販品の一例としてはCD561、SR9035(いずれもサートーマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートの市販品の一例としてはSR492(サートーマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの市販品の一例としてはDPCA−120(日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0051】
「単官能モノマー成分」
単官能モノマー成分としては、単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。この単官能(メタ)アクリレートモノマーは、単体硬化物のガラス転移点温度が−50℃〜50℃であり、主鎖構造もしくは、および側鎖構造に脂肪族残基、脂環式残基、芳香族残基を有するものである。単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては2−フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなどが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートモノマーは1種類で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
2−フェノキシエチルアクリレートの市販品の一例としては、ライトアクリレートPO−A(共栄化学(株)製)が挙げられる。テトラヒドロフルフリルアクリレートの市販品の一例としては、SR285(サートマー・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0053】
オリゴマー成分の配合量は、例えば、紫外線硬化樹脂組成物の全量を100質量部とすると、例えば10重量部〜80重量部とされる。光重合開始剤成分の配合量は、例えば0.5質量部〜10質量部とされる。2官能以上のモノマー成分および単官能モノマー成分を配合する場合は、以下の配合量とされる。2官能以上のモノマー成分の配合量は、20質量部〜60質量部とされる。単官能モノマー成分の配合量は、5質量部〜30質量部とされる。
【0054】
(ハードコート層)
ハードコート層3は、光照射面Cに耐擦傷性などを付与するためのものである。ハードコート層3の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、有機無機ハイブリッド系樹脂などを用いることができる。
【0055】
(バリア層)
バリア層4は、成膜工程において基板1の裏面からの脱ガス(水分放出)を抑制するものである。また、バリア層4は、基板1の裏面における水分の吸収を抑制する防湿層としても機能する。バリア層4を構成する材料としては、基板1の裏面からの脱ガス(水分放出)を抑制することができるものであればよく特に限定されるものではないが、例示するならば、ガス透過性が低い誘電体を用いることができる。このような誘電体としては、例えば、SiN、SiO2、TiN、AlN、ZnS−SiO2などを用いることができる。バリア層4の厚さは、5nm以上40nm以下に設定することが好ましい。5nm未満であると、基板裏面からの脱ガスを抑制するバリア機能が低下する傾向がる。一方、40nmを超えると、脱ガスを抑制するバリア機能がそれ以下の膜厚の場合と殆ど変わらず、また、生産性の低下を招く傾向があるからである。バリア層4の水分透過率は、5×10-5g/cm2・day以下であることが好ましい。
【0056】
[光情報記録媒体の製造方法]
次に、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の製造方法の一例について説明する。なお、以下では、情報信号層を、情報信号層L0〜L3の4層とした場合を例にとり、製造方法の一例の説明を行う。
【0057】
(基板の成形工程)
まず、一主面に凹凸面が形成された基板1を成形する。基板1の成形の方法としては、例えば、射出成形(インジェクション)法、フォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などを用いることができる。
【0058】
(情報信号層の形成工程)
次に、例えばスパッタリング法により、基板1上に、第1保護層12、無機記録層11、第2保護層13を順次積層することにより、情報信号層L0を形成する。
以下に、第1保護層12、無機記録層11、および第2保護層13の形成工程について具体的に説明する。
【0059】
(第1保護層の成膜工程)
まず、基板1を、誘電体材料または透明導電材料を主成分として含むターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2ガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、基板1上に第1保護層12を成膜する。スパッタリング法として、例えば高周波(RF)スパッタリング法、直流(DC)スパッタリング法を用いることができるが、特に直流スパッタリング法が好ましい。直流スパッタ法は高周波スパッタ法に比して成膜レートが高いため、生産性を向上することができるからである。
【0060】
(無機記録層の成膜工程)
次に、基板1を、無機記録層成膜用のターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。ここで、無機記録層成膜用のターゲットは、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物の3元系酸化物、またはW酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物およびZn酸化物の4元系酸化物を主成分として含んでいる。その後、真空チャンバー内にArガスやO2ガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、第1保護層11上に無機記録層12を成膜する。
【0061】
(第2保護層の成膜工程)
次に、基板1を、誘電体材料または透明導電材料を主成分として含むターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2ガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、無機記録層12上に第2保護層13を成膜する。スパッタリング法として、例えば高周波(RF)スパッタリング法、直流(DC)スパッタリング法を用いることができるが、特に直流スパッタリング法が好ましい。直流スパッタ法は高周波スパッタ法に比して成膜レートが高いため、生産性を向上することができるからである。
以上により、基板1上に情報信号層L0が形成される。
【0062】
(中間層の形成工程)
次に、中間層の材料として上記した成分の配合量を適宜調整し、中間層形成用の紫外線硬化樹脂組成物を調製する。このとき、中間層S1〜S3のそれぞれの貯蔵弾性率が、−5℃の温度環境下において2860MPa以上2950MPa以下であり、かつ、25℃の温度環境下において1850MPa以上2440MPa以下となるように調製を行う。より好ましくは、−5℃の温度環境下において2880MPa以上2920MPa以下であり、かつ、25℃の温度環境下において2000MPa以上2280MPa以下となるように調製を行う。次に、例えばスピンコート法により、調製された紫外線硬化樹脂を情報信号層L0上に均一に塗布する。その後、情報信号層L0上に均一に塗布された紫外線硬化樹脂に対してスタンパの凹凸パターンを押し当て、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射して硬化させた後、スタンパを剥離する。これらにより、スタンパの凹凸パターンが紫外線硬化樹脂に転写され、例えばイングルーブGinおよびオングルーブGonが設けられた中間層S1が情報信号層L0上に形成される。
【0063】
(情報信号層および中間層の形成工程)
次に、上述の情報信号層L0および中間層S1を形成工程と同様にして、中間層S1上に、情報信号層L1、中間層S1、情報信号層L2、中間層S3、情報信号層L3をこの順序で中間層S1上に積層する。この際、成膜条件やターゲット組成などを適宜調整することにより、情報信号層L0〜L3を構成する第1保護層12、無機記録層11、および第2保護層13の膜厚や組成などを適宜調整するようにしてもよい。また、スピンコート法の条件を適宜調整することにより、中間層S2〜S3の厚さを適宜調整するようにしてもよい。
【0064】
(光透過層の形成工程)
次に、光透過層の材料として上記した成分の配合量を適宜調整し、光透過層形成用の紫外線硬化樹脂組成物を調製する。このとき、光透過層2の−5℃における貯蔵弾性率が、1500MPa以下となるように調製を行う。次に、例えばスピンコート法により、調製された紫外線硬化樹脂(UVレジン)などの感光性樹脂を情報信号層L3上にスピンコートした後、紫外線などの光を感光性樹脂に照射し、硬化する。これにより、情報信号層L3上に光透過層2が形成される。
以上の工程により、目的とする光情報記録媒体が得られる。
【実施例】
【0065】
以下、図2〜図6を参照しながら、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。情報信号層L0〜L3は、情報信号を記録可能および/または再生可能に構成される。その構成は、例えば、所望とする光情報記録媒体が再生専用型、追記型および書換可能型のうちいずれであるかに応じて適宜選択される。以下では、追記型の光情報記録媒体を例にとって具体的に説明を行う。なお、以下では、タングステン酸化物、パラジウム酸化物、銅酸化物、および亜鉛酸化物の4元系酸化物を「WZCPO」と称する。
【0066】
まず、サンプルRa〜Rcの紫外線硬化樹脂組成物を調製し、サンプルRa〜Rcの紫外線硬化樹脂組成物を中間層の材料として用いたサンプルQ−1〜Q−3およびサンプルT−1〜T−3の評価用光ディスクを作製した。
【0067】
<サンプルRa>
以下の成分の配合量を適宜調整し、サンプルRaの紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
オリゴマー成分
ウレタン(メタ)アクリレート(日本合成化学(株)製 商品名:UV6100B)
光重合開始剤成分
(チバ・ジャパン(株)製 商品名:イルガキュア184)
2官能以上モノマー成分
プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(サートーマー・ジャパン(株)製 商品名:SR9035)
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:DPCA−120)
【0068】
<サンプルRc>
サンプルRaにおける、オリゴマー成分、光重合開始剤成分、2官能以上モノマー成分に用いる材料種、各成分の配合量を適宜変え、また、必要に応じて、上述の単官能モノマー成分を配合することにより、サンプルRcの紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0069】
<サンプルRb>
サンプルRaおよびサンプルRcの紫外線硬化樹脂組成物を構成する各成分が、重量比で1:1となるようにしてサンプルRbの紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
【0070】
図2は、サンプルRa〜Rcの環境温度に対する貯蔵弾性率を示したグラフである。図2において、サンプルRa、RbおよびRcの各温度下における貯蔵弾性率を、それぞれ点Pa、PbおよびPcにより示す。
【0071】
図2に示す貯蔵弾性率は、以下のように測定した。まず、紫外線硬化樹脂組成物を、PETフィルムに挟み込み、硬化後膜厚が100μmになるよう塗布した後、メタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製 UVL−4000M3−N1、ランプ出力120W/cm)を用いて500mJ/cm2で硬化させた。この硬化膜の−20℃〜100℃の温度環境下の貯蔵弾性率を、粘弾性スペクトロメータ(セイコーインスツルメンツ社製DMS6100)で測定した。粘弾性スペクトロメータは、試料に対して1Hzの周期的な歪み(張力)を与え、この歪みに対応して試料から発生する応力の時間的な遅れにより粘弾性を測定する。
【0072】
サンプルRa〜Rcの紫外線樹脂組成物を中間層の材料として用い、サンプルQ−1〜Q−3およびサンプルT−1〜T−3の評価用光ディスクを作製した。
【0073】
<サンプルQ−1>
まず、射出成形法により、ポリカーボネート樹脂の原料ペレットから、直径120mm(φ120)、厚さ1.1mmの透明な基板1(ポリカーボネートディスク)を成形した。
【0074】
次に、スパッタリング法により、以下の層構成で基板1の一主面上に情報信号層L0を形成した。
(基板/)透明導電層/無機記録層/透明導電層
材料:(ポリカーボネート/)ITO/WZCPO/ITO
層厚:(1.1mm/)8nm/32nm/8nm
【0075】
次に、スピンコート法により、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を情報信号層L0が形成された基板上に塗布した。その後、紫外線を照射することによって、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を硬化させ、厚さ15.5μmの中間層S1を形成した。なお、記録再生等の信号量安定化の観点から、中間層S1の厚さとしては、14.5um以上16.5um以下の範囲内にあることが好ましい。
【0076】
次に、スパッタリング法により、以下の層構成で中間層S1の一主面上に情報信号層L1を形成した。
透明導電層/無機記録層/透明導電層
材料:ITO/WZCPO/ITO
層厚:7nm/40nm/8nm
【0077】
次に、スピンコート法により、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を情報信号層L1の一主面上に塗布した。その後、紫外線を照射することによって、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を硬化させ、厚さ19.5μmの中間層S2を形成した。なお、記録再生等の信号量安定化の観点から、中間層S2の厚さとしては、18.5um以上20.5um以下の範囲内にあることが好ましい。
【0078】
次に、スパッタリング法により、以下の層構成で中間層S2の一主面上に情報信号層L2を形成した。
透明導電層/無機記録層/誘電体層
材料:ITO/WZCPO/SIZ
層厚:10nm/35nm/24nm
【0079】
次に、スピンコート法により、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を情報信号層L2の一主面上に塗布した。その後、紫外線を照射することによって、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を硬化させ、厚さ11.5μmの中間層S3を形成した。なお、記録再生等の信号量安定化の観点から、中間層S3の厚さとしては、10.5um以上12.5um以下の範囲内にあることが好ましい。
【0080】
次に、スパッタリング法により、以下の層構成で中間層S3の一主面上に情報信号層L3を形成した。
誘電体層/無機記録層/誘電体層
材料:SIZ/WZCPO/SIZ
層厚:10nm/35nm/31nm
【0081】
次に、以下の成分の配合量を適宜調整し、光透過層形成用の紫外線硬化樹脂組成物を調製した。
オリゴマー成分
ウレタン(メタ)アクリレート(日本合成化学(株)製 商品名:UV6100B)
光重合開始剤成分
(チバ・ジャパン(株)製 商品名:イルガキュア184)
2官能以上モノマー成分
プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(サートーマー・ジャパン(株)製 商品名:SR9035)
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:DPCA−120)
【0082】
なお、サンプルRa〜Rcの紫外線樹脂組成物のときと同様にして、粘弾性スペクトロメータにより、−5℃における光透過層形成用の紫外線硬化樹脂組成物の貯蔵弾性率を測定したところ、1200MPaであった。
【0083】
次に、スピンコート法により、上記の光透過層形成用の紫外線硬化樹脂組成物を情報信号層L3の一主面上に塗布した。その後、紫外線を照射することによって、光透過層形成用の紫外線硬化樹脂組成物を硬化させ、厚さ53.5μmの光透過層2を形成することにより、サンプルQ−1の評価用光ディスクを得た。
【0084】
<サンプルQ−2>
中間層S1、S2およびS3の材料として、サンプルRbの紫外線硬化樹脂組成物を用いたこと以外はサンプルQ−1と同様にして、サンプルQ−2の評価用光ディスクを得た。
【0085】
<サンプルQ−3>
中間層S1、S2およびS3の材料として、サンプルRcの紫外線硬化樹脂組成物を用いたこと以外はサンプルQ−1と同様にして、サンプルQ−3の評価用光ディスクを得た。
【0086】
<サンプルT−1>
まず、射出成形法により、ポリカーボネート樹脂の原料ペレットから、直径120mm(φ120)、厚さ1.1mmの透明な基板1(ポリカーボネートディスク)を成形した。
【0087】
次に、スパッタリング法により、以下の層構成で基板1の一主面上に情報信号層L0を形成した。
(基板/)透明導電層/無機記録層/透明導電層
材料:(ポリカーボネート/)ITO/WZCPO/ITO
層厚:(1.1mm/)8nm/32nm/8nm
【0088】
次に、スピンコート法により、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を情報信号層L0が形成された基板上に塗布した。その後、紫外線を照射することによって、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を硬化させ、厚さ25μmの中間層S1を形成した。なお、記録再生等の信号量安定化の観点から、中間層S1の厚さとしては、24um以上26um以下の範囲内にあることが好ましい。
【0089】
次に、スパッタリング法により、以下の層構成で中間層S1の一主面上に情報信号層L1を形成した。
透明導電層/無機記録層/透明導電層
材料:ITO/WZCPO/ITO
層厚:7nm/40nm/8nm
【0090】
次に、スピンコート法により、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を情報信号層L1の一主面上に塗布した。その後、紫外線を照射することによって、サンプルRaの紫外線樹脂組成物を硬化させ、厚さ18μmの中間層S2を形成した。なお、記録再生等の信号量安定化の観点から、中間層S2の厚さとしては、17um以上19um以下の範囲内にあることが好ましい。
【0091】
次に、スパッタリング法により、以下の層構成で中間層S2の一主面上に情報信号層L2を形成した。
透明導電層/無機記録層/誘電体層
材料:ITO/WZCPO/SIZ
層厚:10nm/35nm/24nm
【0092】
次に、サンプルQ−1の場合と同様にして、スピンコート法により、上記の光透過層形成用の紫外線硬化樹脂組成物を情報信号層L2の一主面上に塗布した。その後、紫外線を照射することによって、光透過層形成用の紫外線硬化樹脂組成物を硬化させ、厚さ57μmの光透過層2を形成することにより、サンプルT−1の評価用光ディスクを得た。
【0093】
<サンプルT−2>
中間層S1およびS2の材料として、サンプルRbの紫外線硬化樹脂組成物を用いたこと以外はサンプルT−1と同様にして、サンプルT−2の評価用光ディスクを得た。
【0094】
<サンプルT−3>
中間層S1およびS2の材料として、サンプルRcの紫外線硬化樹脂組成物を用いたこと以外はサンプルT−1と同様にして、サンプルT−3の評価用光ディスクを得た。
【0095】
図3Aに、サンプルQ−1〜Q−3の評価用光ディスクの層構成を模式的に示す。図3Bに、サンプルT−1〜T−3の評価用光ディスクの層構成を模式的に示す。
【0096】
サンプルQ−1〜Q−3およびサンプルT−1〜T−3の評価用光ディスクを用い、中間層S1〜S3の材料として用いる紫外線樹脂組成物の貯蔵弾性率と、環境温度の変化に対する評価用光ディスクの反り角(β角)の変化量との間の関係を以下の手順で調べた。
【0097】
まず、25℃の環境下における各サンプルの反り角βHを測定した。次に、各サンプルを−5℃の環境下に24時間以上放置した後、各サンプルの反り角βLを測定した。ここで、反り角βHまたはβLは、ディスクの中心から径方向に沿って58mmの点における反り角R−skew[deg]であり、Dr.Schwab製 Argus bluを用いて測定した。
【0098】
次に、各サンプルについて、−5℃の環境下の反り角と25℃の環境下の反り角との差△β=βL−βHをそれぞれ求めた。サンプルQ−1〜Q−3の△βを図4Aに、サンプルT−1〜T−3の△βを図4Bにそれぞれ示す。
【0099】
次に、各サンプルについて、図2に示す測定結果から、ある温度環境下における中間層の貯蔵弾性率を読み取り、ある温度環境下における中間層の貯蔵弾性率と、Δβとの間の関係をそれぞれ求めた。
【0100】
図5Aは、サンプルQ−1〜Q−3の−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、図4Aに示すサンプルQ−1〜Q−3の△βとの間の関係を示すグラフである。なお、図5Aに示すグラフは、−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率を横軸、Δβを縦軸としたグラフである。例えば、サンプルQ−1については、図2から読み取った−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率が2840[MPa]であり、−5℃の温度環境下の反り角と25℃の温度環境下の反り角との差△βが−0.32[deg]である。したがって、サンプルQ−1については、点(2980,−0.32)をプロットすることになる。サンプルQ−2およびサンプルQ−3についても同様の手順にしたがう。
【0101】
次に、サンプルQ−1〜Q−3についてプロットされた貯蔵弾性率および△βの組から、近似直線を最小二乗法により求めた。該近似直線を図5Aに直線A1として示す。
【0102】
次に、△β=(定数)[deg]の直線と直線A1との交点から、ある△βに対応する、−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率を求めた。例えば、△β=0.2[deg]を表す直線(図5Aに破線B1として示す。)と直線A1との交点を求め、そのときの横軸の値を読み取ると、2853[MPa]という値が得られる。同様にして、△β=−0.3、−0.2、−0.1、0、0.1および0.3[deg]に対応する、−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率を求めた。
【0103】
次に、−5℃の温度環境下の場合と同様にして、25℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、Δβとの間の関係を求めた。
【0104】
図5Bは、サンプルQ−1〜Q−3の25℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、図4Aに示すサンプルQ−1〜Q−3の△βとの間の関係を示すグラフである。なお、図5Bに示すグラフは、25℃の温度環境下における貯蔵弾性率を横軸、Δβを縦軸としたグラフである。
【0105】
−5℃の温度環境下の場合と同様にして、サンプルQ−1〜Q−3についてプロットされた貯蔵弾性率および△βの組から、近似直線を最小二乗法により求めた。該近似直線を図5Aに直線A2として示す。さらに、△β=−0.3、−0.2、−0.1、0、0.1、0.2および0.3[deg]に対応する、25℃の温度環境下における貯蔵弾性率を求めた。
【0106】
下記の表1に、各△βに対応する、−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率および25℃の温度環境下における貯蔵弾性率を示す。
【0107】
【表1】

【0108】
さらに、サンプルQ−1〜Q−3の場合と同様の手順により、サンプルT−1〜T−3について、ある温度環境下における中間層の貯蔵弾性率と、Δβとの間の関係をそれぞれ求めた。
【0109】
図6Aは、サンプルT−1〜T−3の−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、図4Bに示すサンプルT−1〜T−3の△βとの間の関係を示すグラフである。なお、図6Aに示すグラフは、−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率を横軸、Δβを縦軸としたグラフである。例えば、サンプルT−1については、図2から読み取った−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率は、サンプルQ−1と同じく2980[MPa]である。一方、−5℃の温度環境下の反り角と25℃の温度環境下の反り角との差△βは、−0.3[deg]である。したがって、サンプルT−1については、点(2980,−0.3)をプロットすることになる。サンプルT−2およびサンプルT−3についても同様の手順にしたがう。
【0110】
次に、サンプルT−1〜T−3についてプロットされた貯蔵弾性率および△βの組から、近似直線を最小二乗法により求めた。該近似直線を図6Aに直線A3として示す。
【0111】
次に、△β=(定数)[deg]の直線と直線A3との交点から、△β=−0.3、−0.2、−0.1、0、0.1、0.2および0.3[deg]に対応する、−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率を求めた。
【0112】
次に、−5℃の温度環境下の場合と同様にして、25℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、Δβとの間の関係を求めた。
【0113】
図6Bは、サンプルT−1〜T−3の25℃の温度環境下における貯蔵弾性率と、図4Bに示すサンプルT−1〜T−3の△βとの間の関係を示すグラフである。なお、図6Bに示すグラフは、25℃の温度環境下における貯蔵弾性率を横軸、Δβを縦軸としたグラフである。
【0114】
−5℃の温度環境下の場合と同様にして、サンプルT−1〜T−3についてプロットされた貯蔵弾性率および△βの組から、近似直線を最小二乗法により求めた。該近似直線を図6Bに直線A4として示す。さらに、△β=−0.3、−0.2、−0.1、0、0.1、0.2および0.3[deg]に対応する、25℃の温度環境下における貯蔵弾性率を求めた。
【0115】
下記の表2に、各△βに対応する、−5℃の温度環境下における貯蔵弾性率および25℃の温度環境下における貯蔵弾性率を示す。
【表2】

【0116】
表1および表2より以下のことがわかった。中間層の材料の−5℃における貯蔵弾性率を2860MPa以上2950MPa以下とし、25℃における貯蔵弾性率を1850MPa以上2440MPa以下とすることにより、Δβの絶対値を、0.2[deg]程度以下に抑制できることが確認できた。さらに、中間層の材料の−5℃における貯蔵弾性率を2880MPa以上2920MPa以下とし、25℃における貯蔵弾性率を2000MPa以上2280MPa以下とすることにより、Δβの絶対値を、0.1[deg]程度以下に抑制できることが確認できた。すなわち、中間層の材料の−5℃における貯蔵弾性率および25℃における貯蔵弾性率が上述した範囲内では、低温における光ディスクの反りを低減できることが確認できた。
【0117】
なお、|Δβ|=0.2[deg]を判定基準とした理由は、BD(Blu-ray Disc)の信号特性、信頼性等を考慮すると、R−skewが−0.35〜+0.35[deg]であることが求められることに基づくものである。すなわち、−0.35〜+0.35[deg]の0.7[deg]の範囲内に、skew経時変化、Sudden change(急な温度環境変化によるskew変化)、環境変化におけるskewマージン、製造でのskewマージンを含める必要がある。これらのskew経時変化、Sudden change、環境変化におけるskewマージン、製造でのskewマージンの配分を考慮すると、環境変化におけるskewマージン(すなわち、−5℃の温度環境下でのskew変化)は、最低でも0.2[deg]以下にする必要がある。
【0118】
なお、図2に示すように、一般的に、紫外線硬化樹脂組成物は、室温よりも低温の温度環境下において、貯蔵弾性率が大きくなる。そのため、室温(25℃)でのディスクの反りが大きくても、|Δβ|が小さければ、ディスクの良好な再生を行うことが可能である。言い換えると、|Δβ|がより小さければ、室温におけるR−skewの許容値をより大きくとることができる。すなわち、R−skewの製造可能範囲が増えることになり、製造される光情報記録媒体の歩留が向上することになる。上記観点から、光情報記録媒体の製造をより容易とする点で、|Δβ|=0.1[deg]以下とすることがより好ましい。
【0119】
なお、情報信号層を5層以上とした場合についても、上記と同様の議論をそのまま類推適用できると考えられる。上述したように、情報信号層が4層である場合(サンプルQ−1〜Q−3)の中間層S1〜S3の厚さの総和と、3層である場合(サンプルT−1〜T−3)の中間層S1およびS2の厚さの総和との差は、3.5μm程度しかない。したがって、中間層の厚さの総和が略等しければ|Δβ|も同様の範囲内となることが予想されるからである。
【0120】
[評価]
光透過層2の材料の−5℃における貯蔵弾性率を1500MPa以下とし、中間層の材料の−5℃における貯蔵弾性率を2860MPa以上2950MPa以下とし、25℃における貯蔵弾性率を1850MPa以上2440MPa以下とすることにより、|Δβ|を、0.2[deg]程度以下に抑制できることが確認できた。
【0121】
光情報記録媒体は、5℃以下の環境下での使用も想定し、反りをコントロールしなければならないが、低温になればなるほど、光情報記録媒体に使用されているプラスチック材料の貯蔵弾性率が大きくなり、室温に比べ、反りが大きく変化してしまう。基板1として用いられるポリカーボネート基板は、低温になると、貯蔵弾性率が大きくなることに加え、温度膨張により収縮し、ディスクの反りをプラスに変化させよう働く。一方で、中間層S1〜S3などに用いられる紫外線硬化樹脂組成物の硬化物は、低温になると、同じく貯蔵弾性率が大きくなるために、硬化収縮が大きく効いてくるようになり、反りをマイナスに変化させようと働く。このために、基板と中間層のレジン硬化物の収縮のバランスを取らないと、プラス側もしくは、マイナス側に反りが変化してしまう。
【0122】
中間層S1〜S3の硬化収縮は大きくは変えられないことから、本技術では、貯蔵弾性率にて、このバランスを取り、中間層S1〜S3の貯蔵弾性率をある一定の範囲内とし、低温時の中間層S1〜S3の収縮と基板1の収縮のバランスを取り、反りの変化を抑える。本技術によれば、室温でR−skewが−0.35〜+0.35[deg]の範囲内となるように製造された光情報記録媒体を−5℃の環境下においても、プラス側、またはマイナス側に大きく反りが変化することを抑制できる。
【0123】
本技術は、上述した実施の形態に限定されるものでは無く、本技術の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 基板
2 光透過層
3 ハードコート層
4 バリア層
L0〜L3 情報信号層
S1〜S3 中間層
10 光情報記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に形成される3層以上の情報信号層と、
上記3層以上の情報信号層の間に介在される2層以上の中間層と、
上記基板から最も離れた位置にある情報信号層上に形成される光透過層と
を備え、
−5℃における上記光透過層の貯蔵弾性率が、1500MPa以下であり、
−5℃における上記2層以上の中間層のそれぞれの貯蔵弾性率が、2860MPa以上2950MPa以下であり、
25℃における上記2層以上の中間層のそれぞれの貯蔵弾性率が、1850MPa以上2440MPa以下である光情報記録媒体。
【請求項2】
−5℃における上記2層以上の中間層のそれぞれの貯蔵弾性率が、2880MPa以上2920MPa以下であり、
25℃における上記2層以上の中間層のそれぞれの貯蔵弾性率が、2000MPa以上2280MPa以下である請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記光透過層が、紫外線硬化樹脂組成物を主成分とする請求項1または2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
上記2層以上の中間層の厚さの総和が、40μm以上49.5μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
上記基板が、ポリカーボネート系樹脂を主成分とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−164375(P2012−164375A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22184(P2011−22184)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】