説明

光拡散フィルムおよびその製造方法、光拡散性偏光板、ならびに液晶表示装置

【課題】正面コントラストが高く、かつ広視野角であるとともに、色ムラが生じず、良好な視認性を示す光拡散フィルム、ならびにこれを適用した光拡散性偏光板および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】基材フィルム101と、基材フィルム101上に積層され、透光性樹脂103中に透光性微粒子104が分散された光拡散層102とを有する光拡散フィルムであって、透光性微粒子104は、その重量平均粒径rが5μm以上15μm未満であり、光拡散層102は、その平均膜厚dが10μm以上20μm以下であり、かつその最大膜厚および最小膜厚によって次式:A(%)=100×(最大膜厚−最小膜厚)/最大膜厚
で定義される膜厚ムラが20%以下である光拡散フィルム、ならびにこれを適用した光拡散性偏光板および液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルム上に透光性微粒子が分散された光拡散層を備える光拡散フィルムおよびその製造方法に関する。また本発明は、当該光拡散フィルムを用いた光拡散性偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、携帯電話、パソコン用モニター、テレビ、液晶プロジェクタなどへの用途展開が急速に進んでいる。一般に、液晶表示装置は、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、IPS(In−Plane Switching)モードなどの表示モードで液晶を動作させて、該液晶を通過する光を電気的に制御して明暗の違いを画面上に表し、文字や画像を表示する。
【0003】
従来、液晶表示装置においては、表示画面を斜め方向から見た場合に、高いコントラストが得られない、さらには画像の明暗が逆転する階調反転現象等により良好な表示特性が得られないなどといった問題、すなわち、視野角が狭いという問題が指摘されてきた。
【0004】
上記問題点を解決するための方法として、液晶表示装置の視認側表面に光拡散フィルムを設ける技術が従来知られている。たとえば、特許文献1および2には、良好な正面コントラストを示し得る、支持体上に微粒子を含有する光拡散層が積層された反射防止フィルム(光拡散フィルム)が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の反射防止フィルム(光拡散フィルム)においても正面コントラストには改善の余地があった。また、比較的大きい粒径の粒子を多く含有しているために、液晶表示装置に適用した際に、画面上において部分的に光透過性が他の領域と異なる領域が発生する、いわゆる「色ムラ」が生じる場合があり、良好な視認性が得られない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−293307号公報
【特許文献2】特開2009−258716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、正面コントラストが高く、かつ広視野角であるとともに、色ムラが生じず、良好な視認性を示す光拡散フィルム、ならびにこれを適用した光拡散性偏光板および液晶表示装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、高正面コントラストおよび広視野角特性を含め、良好な視認性を示す光拡散フィルムを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材フィルムと、該基材フィルム上に積層され、透光性樹脂中に透光性微粒子が分散された光拡散層とを有する光拡散フィルムであって、透光性微粒子は、その重量平均粒径rが5μm以上15μm未満であり、光拡散層は、その平均膜厚dが10μm以上20μm以下であり、かつその最大膜厚および最小膜厚によって下記式:
A(%)=100×(最大膜厚−最小膜厚)/最大膜厚
で定義される膜厚ムラが20%以下である光拡散フィルムを提供する。
【0009】
本発明の光拡散フィルムにおいて、透光性微粒子の重量平均粒径rと光拡散層の平均膜厚dとの比r/dは、0.3以上1以下であることが好ましい。また、光拡散層における透光性微粒子の含有量は、透光性樹脂100重量部に対して20重量部以上50重量部以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の光拡散フィルムにおいて、基材フィルム側から、光拡散フィルムの法線方向に入射する波長543.5nmのレーザー光の強度L1に対する、光拡散層側の前記法線方向から40°傾いた方向に透過するレーザー光の強度L2の比L2/L1は、0.0001%以上0.001%以下であることが好ましい。また、全ヘイズは40%以上70%以下であり、光拡散層の表面形状に起因する表面ヘイズは6%以下であることが好ましい。さらに本発明の光拡散フィルムは、0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学くしを通して得られる透過鮮明度の和は70%以上220%以下であることが好ましい。基材フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上300μm以下である。
【0011】
本発明の光拡散フィルムは、光拡散層上に積層された反射防止層をさらに備えていてもよい。
【0012】
また本発明は、上記光拡散フィルムを製造するための方法を提供する。本発明の製造方法は、基材フィルム上に、上記透光性微粒子が分散された樹脂液を塗工する工程と、得られた塗工層を硬化させる工程とを備える。樹脂液の25℃における粘度は、15mPa・s以上100mPa・s以下とされる。樹脂液は有機溶剤をさらに含有していてもよい。この場合、有機溶剤の含有量は、好ましくは樹脂液中35重量%以上70重量%以下である。
【0013】
さらに本発明は、少なくとも偏光フィルムを有する偏光板と、基材フィルム側が該偏光板に対向するように該偏光板上に積層された上記本発明の光拡散フィルムとを備える光拡散性偏光板を提供する。好ましい実施形態に係る光拡散性偏光板において、偏光フィルムと光拡散フィルムとは接着剤層を介して貼り合わされている。
【0014】
さらに本発明は、バックライト装置と、光偏向手段と、バックライト側偏光板と、液晶セルと、上記本発明の光拡散性偏光板とをこの順で備える液晶表示装置を提供する。当該液晶表示装置において、光拡散性偏光板は、その偏光フィルム側が液晶セルに対向するように配置される。
【0015】
光偏向手段は、バックライト側偏光板に対向する表面に線状プリズムを複数有するプリズムフィルムを2枚積層したものであってもよい。この場合、一方のプリズムフィルムは、その線状プリズムの稜線の方向がバックライト側偏光板の透過軸に略平行となるように配置され、他方のプリズムフィルムは、その線状プリズムの稜線の方向が光拡散性偏光板の透過軸に略平行となるように配置されることが好ましい。
【0016】
本発明の液晶表示装置は、バックライト装置と光偏向手段との間に、光拡散手段をさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、正面コントラストが高く、かつ広視野角であるとともに、色ムラが生じず、良好な視認性を示す光拡散フィルムおよび光拡散性偏光板を提供できる。また、本発明の方法によれば、高正面コントラストおよび広視野角特性であり、色ムラが生じることなく良好な視認性を示す光拡散フィルムを製造することができる。このような優れた光学特性を備える光拡散フィルムまたは光拡散性偏光板を適用した液晶表示装置は、高い正面コントラストと広い視野角とを示し、色ムラが生じず、視認性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の光拡散フィルムの好ましい一例を示す概略断面図である。
【図2】基材フィルム側の法線方向からレーザー光を入射し、光拡散層側法線方向から40°傾いた方向に透過するレーザー光の透過散乱光強度を測定するときの、レーザー光の入射方向と透過散乱光強度測定方向とを模式的に示した斜視図である。
【図3】本発明の光拡散性偏光板の好ましい一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の液晶表示装置の好ましい一例を示す概略断面図である。
【図5】プリズムフィルムが有する線状プリズムの稜線方向と、偏光板の透過軸方向との関係を説明するための概略斜視図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の他の好ましい一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<光拡散フィルム>
図1は、本発明の光拡散フィルムの好ましい例を示す概略断面図である。本発明に係る図1に示される光拡散フィルム100は、基材フィルム101と、基材フィルム101上に積層された光拡散層102とを備える。光拡散層102は、透光性樹脂103を基材とする層であって、透光性樹脂103中に透光性微粒子104が分散されてなる。本発明の光拡散フィルムは、図1に示されるように、光拡散層102の表面が平坦面から構成されていてもよく、あるいは後述する膜厚ムラが所定の範囲内である限りにおいて凹凸面から構成することもできる。以下、本発明の光拡散フィルムについて、さらに詳細に説明する。
【0020】
〔基材フィルム〕
基材フィルム101は透光性のものであればよく、たとえばガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していればよい。具体的には、たとえば、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロースアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。基材フィルム101の厚みは、たとえば10〜500μmであり、光拡散フィルムの薄膜化等の観点から、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは20〜300μmである。
【0021】
〔光拡散層〕
本発明の光拡散フィルムは、基材フィルム101上に積層された光拡散層102を備える。光拡散層102は、透光性樹脂103を基材とする層であって、透光性樹脂103中に透光性微粒子104が分散されてなる。なお、基材フィルム101と光拡散層102との間に他の層(接着剤層を含む)を有していてもよい。
【0022】
(1)透光性樹脂
透光性樹脂103としては、透光性を有するものであれば特に限定はなく、たとえば、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの電離放射線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂、金属アルコキシドの硬化物などを用いることができる。この中でも、高い硬度を有し、液晶表示装置表面に設ける光拡散フィルムとして高い耐擦傷性を付与できることから、電離放射線硬化型樹脂が好適である。電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合は、電離放射線の照射または加熱により当該樹脂を硬化させることにより透光性樹脂103が形成される。
【0023】
電離放射線硬化型樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものであることができる。多官能(メタ)アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0024】
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、たとえば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
【0025】
多価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールが挙げられる。
【0026】
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物として、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に複数個のイソシアネート基を有するイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体のウレタン化反応物を挙げることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。
【0028】
ポリエステル(メタ)アクリレート化合物として好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールとしては前述した化合物と同様のものが例示できる。また、多価アルコール以外にも、フェノール類としてビスフェノールA等が挙げられる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0029】
以上のような多官能(メタ)アクリレート化合物の中でも、硬化物(被膜)の強度向上や入手の容易性の点から、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエステル化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;アダクト変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;およびビウレット変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体が好ましい。さらに、電離放射線硬化型樹脂は、厚膜化したときに良好な可撓性(柔軟性を示す性質)を示すことから、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0030】
電離放射線硬化型樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物のほかに、単官能(メタ)アクリレート化合物を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アセチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらの化合物はそれぞれ単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
【0031】
電離放射線硬化型樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、光拡散層の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーは、たとえば、前記多官能(メタ)アクリレート化合物、すなわち、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物またはエポキシ(メタ)アクリレート等の2量体、3量体などのようなオリゴマーであることができる。
【0032】
また、その他の重合性オリゴマーとして、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネートの重合物等が挙げられ、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、多価アルコールとして、たとえば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等であるものが挙げられる。この少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールは、多価アルコールのアルコール性水酸基の一部が(メタ)アクリル酸とエステル化反応しているとともに、アルコール性水酸基が分子中に残存するものである。
【0033】
さらに、その他の重合性オリゴマーの例として、複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物と、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレートで記載したものと同様のものが例示できる。また、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。
【0034】
以上のような重合性オリゴマーに加えて、さらにウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの例として、水酸基含有ポリエステル、水酸基含有ポリエーテルまたは水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基にイソシアネート類を反応させて得られる化合物が挙げられる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールや、複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、それぞれ、多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレート化合物で記載したものと同様のものが例示できる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエーテルは、多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドおよび/またはε−カプロラクトンを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルである。多価アルコールは、前記水酸基含有ポリエステルに使用できるものと同じものであってよい。好ましく用いられる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、重合性オリゴマーのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。イソシアネート類としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0035】
これらの重合性オリゴマー化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0036】
熱硬化型樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂のほか、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0037】
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニルおよびその共重合体、塩化ビニルおよびその共重合体、塩化ビニリデンおよびその共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;アクリル樹脂およびその共重合体、メタクリル樹脂およびその共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0038】
金属アルコキシドとしては、珪素アルコキシド系の材料を原料とする酸化珪素系マトリックス等を使用することができる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等であり、加水分解や脱水縮合により無機系または有機無機複合系マトリックス(透光性樹脂)とすることができる。
【0039】
(2)透光性微粒子
透光性微粒子104としては、透光性を有する有機微粒子または無機微粒子を用いることができる。たとえば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体等からなる有機微粒子や、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス等からなる無機微粒子等が挙げられる。また、有機重合体のバルーンやガラス中空ビーズも使用できる。透光性微粒子104は、1種類の微粒子から構成されていてもよいし、2種類以上の微粒子を含んでいてもよい。透光性微粒子104の形状は、球状、扁平状、板状、針状、不定形状等いずれであってもよいが、球状または略球状が好ましい。
【0040】
透光性微粒子104の重量平均粒径rは、5μm以上15μm未満であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。透光性微粒子104の重量平均粒径rが5μm未満であると、波長領域が380nmから800nmの可視光を十分に散乱できず、光拡散フィルムの光拡散性が不十分となり、その結果、広視野角が得られない場合がある。また、重量平均粒径rが15μm以上である場合、後述する透過鮮明度を70%以上220%以下に調整すると、光散乱が弱くなり過ぎるため、同様に広視野角が得られない場合がある。
【0041】
なお、透光性微粒子104として、材質が異なる、または粒径分布が異なるなどの2種以上の透光性微粒子を用いる場合には、透光性微粒子104全体としての重量平均粒径rが上記範囲内にあればよい。
【0042】
透光性微粒子104は、その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比(標準偏差/重量平均粒径)が0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。当該比が0.5を超える場合、透光性微粒子としてその粒径が極端に大きいものが含まれるようになり、光拡散層の表面に突起が多発するようになり、光拡散フィルムの表面ヘイズおよび/または中心線平均粗さRaが後述する好ましい範囲から逸脱する場合がある。なお、透光性微粒子104の重量平均粒径rおよび粒径の標準偏差は、コールター原理(細孔電気抵抗法)を用いたコールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)を用いて測定される。
【0043】
光拡散層102における透光性微粒子104の含有量は、透光性樹脂103の100重量部に対して20重量部以上60重量部以下であることが好ましく、20重量部以上50重量部以下であることがより好ましく、25重量部以上50重量部以下であることがさらに好ましく、30重量部以上50重量部以下であることが特に好ましい。透光性微粒子104の含有量が透光性樹脂100重量部に対して20重量部未満であると、光拡散フィルムの光拡散性が不十分となり、その結果、広視野角が得られにくい傾向にあり、また、透過鮮明度が220%を超える結果、液晶表示装置のバックライト側のプリズムフィルムの表面凹凸構造と液晶セルのカラーフィルターが有する規則的なマトリックス構造との干渉による透過光のモアレを生じる場合がある。また、透光性微粒子104の含有量が透光性樹脂100重量部に対して60重量部を超えると、後述する相対散乱光強度L2/L1が0.001%を超えたり、全ヘイズおよび/または内部ヘイズが70%を超えたり、透過鮮明度が70%を下回ったりする傾向が高くなり、正面コントラストの低下や光拡散フィルムの透明性の低下が生じる場合がある。
【0044】
透光性微粒子104と透光性樹脂103との間の屈折率差は、は0.04〜0.15の範囲が好ましい。屈折率差を上記範囲内とすることによって、当該屈折率差による適度な内部散乱が生じ、光拡散フィルムの全ヘイズおよび内部ヘイズを後述する好ましい範囲内に制御することが容易になるとともに、透過鮮明度を適度に抑制して、後述する好ましい範囲内に制御することが容易になる。
【0045】
(3)光拡散層の膜厚
次に、光拡散層102の膜厚について述べると、光拡散層102の平均膜厚dは10μm以上20μm以下とされ、好ましくは10μm以上15μm以下とされる。光拡散層102の平均膜厚dをこの範囲内に調整することにより、後述する膜厚ムラAや透光性微粒子104の重量平均粒径rと光拡散層102の平均膜厚dとの比r/dを後述する範囲に調整しやすくなる。また、平均膜厚dが20μmを超える場合には、作製した光拡散フィルムに発生するカールの量が大きくなり、他のフィルムや基板への貼合等における取り扱い性が悪くなることがある。光拡散層102の「平均膜厚d」とは、フィルムのMD方向(長尺状で得られるフィルムの搬送方向、すなわち長手方向)において有効塗工幅にて略均等間隔で場所に偏りのないように選択された3点×フィルムのTD方向(MD方向に直交する方向において上記と同様にして選択された3点の計9点における膜厚の平均値である。各膜厚値は接触式膜厚計を用いて測定される。
【0046】
透光性微粒子104の重量平均粒径rと光拡散層102の平均膜厚dとの比r/dは、0.3以上1以下であることが好ましく、0.5以上1以下であることがより好ましい。r/dが0.3未満であると、透光性微粒子104による光散乱が十分でなく、広視野角が得られない場合がある。また、r/dが1を超えると、透光性微粒子104が光拡散層102の表面から突出して突起が生じ、外観不良となる場合があり、また、光拡散フィルムの表面ヘイズおよび/または中心線平均粗さRaが後述する好ましい範囲を逸脱しやすくなる。
【0047】
また、本発明の光拡散フィルムが備える光拡散層102は、下記式:
A(%)=100×(最大膜厚−最小膜厚)/最大膜厚
で定義される膜厚ムラが20%以下であり、好ましくは15%以下である。膜厚ムラAを20%以下、好ましくは15%以下とすることにより、フィルム面内における光透過性が均一化され、液晶表示装置に適用した際の色ムラを効果的に抑制することができるとともに、高正面コントラストと広視野角とが両立された光拡散フィルムを得ることができる。光拡散層102の「最大膜厚」および「最小膜厚」とはそれぞれ、上記平均膜厚dの測定にて得られた9点の膜厚値のうち、最も大きい膜厚および最も小さい膜厚である。
【0048】
〔光拡散フィルムの光学特性〕
(1)相対散乱光強度
本発明の光拡散フィルムは、基材フィルム101側から、光拡散フィルムの法線方向に入射する波長543.5nmのレーザー光の強度L1に対する、光拡散層102側の法線方向から40°傾いた方向に透過するレーザー光の強度L2の比L2/L1(相対散乱光強度)が0.0001%以上0.001%以下の範囲内である。すなわち、図2を参照して、光拡散フィルムの基材フィルム101側から、光拡散フィルムの法線A1方向に波長が543.5nmであり強度がL1であるレーザー光(He−Neレーザーの平行光)を入射し、光拡散層102側の法線A2方向から40°傾いた方向A3に透過するレーザー光の透過散乱光強度L2を測定することにより得られる相対散乱光強度L2/L1が0.0001%以上0.001%以下の範囲内とされる。透過散乱光強度の測定方向である光拡散層102側の法線A2方向から40°傾いた方向A3は、光拡散フィルムの法線(法線A1およびA2)方向を含む平面内における一方向である。
【0049】
相対散乱光強度L2/L1が0.0001%未満の場合、光散乱性が不十分であり、視野角が狭くなる傾向にある。また、0.001%を超える場合は、光散乱が強すぎるため、この光拡散フィルムを液晶表示装置に適用したときに、たとえば黒表示において、液晶表示装置の正面方向に対して斜めに漏れ出してくる光が光拡散層により正面方向へ散乱されてしまう等の原因により正面コントラストが低下し、表示品位が悪くなる。相対散乱光強度L2/L1は、好ましくは0.0003%以上0.0008%以下である。
【0050】
相対散乱光強度L2/L1の測定は、光学的に透明な粘着剤を用いて、光拡散フィルムを、その基材フィルム101側でガラス基板に貼合した測定用サンプルについて行なう。これにより、測定時におけるフィルムの反りを防止し、測定再現性を高めることができる。この測定用サンプルのガラス基板面側から、光拡散フィルムの法線方向にHe−Neレーザーの平行光(波長543.5nm)を入射し、光拡散層102側の法線方向から40°傾いた方向A3に透過するレーザー光の強度を測定する。透過散乱光の強度を光源の光強度で除した値が相対散乱光強度L2/L1となる。相対散乱光強度の測定には、オプティカルパワーメーター(たとえば、横河電機株式会社製の「3292 03 オプティカルパワーセンサー」および同社製の「3292 オプティカルパワーメーター」)を用いる。
【0051】
(2)透過鮮明度
本発明の光拡散フィルムは、0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学くしを通して得られる透過鮮明度の和(以下、単に「透過鮮明度」という)が70%以上220%以下であることが好ましい。「0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学くしを通して得られる透過鮮明度の和」とは、JIS K 7105に準拠し、暗部と明部との幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度(像鮮明度)の和である。したがって、ここでいう「透過鮮明度」の最大値は400%となる。
【0052】
光拡散フィルムの透過鮮明度が70%未満の場合、光散乱が強すぎるため、この光拡散フィルムを液晶表示装置に適用したときに、たとえば白表示において、液晶表示装置の正面方向の光が光拡散層により散乱され過ぎてしまう等の原因により正面コントラストが低下し、表示品位が悪くなる傾向にある。また、透過鮮明度が220%を超える場合は、液晶表示装置のバックライト側のプリズムフィルムの表面凹凸構造と液晶セルのカラーフィルターが有する規則的なマトリックス構造との干渉による透過光のモアレが発生しやすい傾向にある。光拡散フィルムの透過鮮明度は、好ましくは70%以上180%以下であり、より好ましくは90%以上140%以下である。
【0053】
透過鮮明度の測定は、相対散乱光強度の測定と同様、光学的に透明な粘着剤を用いて、光拡散フィルムを、その基材フィルム101側でガラス基板に貼合した測定用サンプルについて行なう。これにより、測定時におけるフィルムの反りを防止し、測定再現性を高めることができる。測定装置としては、JIS K 7105に準拠した写像性測定器(たとえば、スガ試験機株式会社製の「ICM−1DP」)を用いることができる。
【0054】
(3)ヘイズ
本発明の光拡散フィルムは、全ヘイズが40%以上70%以下であることが好ましく、内部ヘイズもまた40%以上70%以下であることが好ましい。また、光拡散層102の表面形状に起因する表面ヘイズは6%以下であることが好ましい。ここで、「全ヘイズ」とは、光拡散フィルムに光を照射して透過した光線の全量を表す全光線透過率(Tt)と、光拡散フィルムにより拡散されて透過した拡散光線透過率(Td)との比から下記式(1):
全ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100 (1)
により求められる。
【0055】
全光線透過率(Tt)は、入射光と同軸のまま透過した平行光線透過率(Tp)と拡散光線透過率(Td)の和である。全光線透過率(Tt)および拡散光線透過率(Td)は、JIS K 7361に準拠して測定される値である。
【0056】
また、光拡散フィルムの「内部ヘイズ」とは、全ヘイズのうち、光拡散層102の表面形状に起因するヘイズ(表面ヘイズ)以外のヘイズである。
【0057】
全ヘイズおよび/または内部ヘイズが40%未満の場合、光散乱性が不十分であり、視野角が狭くなる傾向にある。また、全ヘイズおよび/または内部ヘイズが70%を超える場合は、光散乱が強すぎるため、この光拡散フィルムを液晶表示装置に適用したときに、たとえば黒表示において、液晶表示装置の正面方向に対して斜めに漏れ出してくる光が光拡散層により正面方向へ散乱されてしまう等の原因により正面コントラストが低下し、表示品位が悪くなる傾向にある。また、全ヘイズおよび/または内部ヘイズが70%を超える場合は、光拡散フィルムの透明性が損なわれる傾向にある。全ヘイズおよび内部ヘイズはそれぞれ、50%以上65%以下であることが好ましい。
【0058】
また、光拡散層102の表面形状に起因する表面ヘイズが6%を超える場合、光拡散層の表面乱反射により画面全体が白っぽく感じられる、いわゆる白ちゃけが発生しやすくなる。白ちゃけをより効果的に防止するためには、表面ヘイズは3%以下であることが好ましい。
【0059】
光拡散フィルムの全ヘイズ、内部ヘイズおよび表面ヘイズは、具体的には次のようにして測定される。すなわち、まず、フィルムの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて光拡散フィルムを、光拡散層102が表面となるように、基材フィルム101側をガラス基板に貼合して測定用サンプルを作製し、当該測定用サンプルについて全ヘイズ値を測定する。全ヘイズ値は、JIS K 7136に準拠したヘイズ透過率計(たとえば、株式会社村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」)を用いて、全光線透過率(Tt)および拡散光線透過率(Td)を測定し、上記式(1)によって算出される。
【0060】
ついで、光拡散層102の表面に、ヘイズがほぼ0%であるトリアセチルセルロースフィルムを、グリセリンを用いて貼合し、上述の全ヘイズの測定と同様にしてヘイズを測定する。当該ヘイズは、光拡散層102の表面形状に起因する表面ヘイズが貼合されたトリアセチルセルロースフィルムによってほぼ打ち消されていることから、光拡散フィルムの「内部ヘイズ」とみなすことができる。したがって、光拡散フィルムの「表面ヘイズ」は、下記式(2):
表面ヘイズ(%)=全ヘイズ(%)−内部ヘイズ(%) (2)
より求められる。
【0061】
〔光拡散フィルムの表面形状〕
本発明の光拡散フィルムにおいて、光拡散層102表面(基材フィルム101とは反対側の表面)のJIS B 0601に従う中心線平均粗さRaは0.2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。光拡散層102表面の中心線平均粗さRaが0.2μmを超える場合、白ちゃけが顕著となりやすい。JIS B 0601に従う中心線平均粗さRaとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さl(エル)だけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にx軸を、縦倍率の方向にy軸をとり、粗さ曲線をY=f(x)で表したときに、下記式(3):
【0062】
【数1】

【0063】
によって求められる値をマイクロメートル(μm)単位で表したものをいう。中心線平均粗さRaは、JIS B 0601に準拠した共焦点干渉顕微鏡(たとえば、株式会社オプティカルソリューション社製の「PLμ2300」)を用いて上記計算式(3)に基づいてRaを計算できるプログラムソフトにより算出することができる。
【0064】
〔光拡散フィルムの製造方法〕
次に、本発明の光拡散フィルムを製造するための方法について説明する。本発明の光拡散フィルムは、好ましくは、次の工程(A)および(B)を含む方法によって製造される。
(A)基材フィルム101上に、透光性微粒子104が分散された樹脂液を塗工する工程、および、
(B)上記樹脂液からなる層(塗工層)を必要に応じて乾燥させた後、硬化させる工程。
【0065】
上記工程(A)で用いる樹脂液は、透光性微粒子104、光拡散層102を構成する透光性樹脂103またはこれを形成する樹脂(たとえば、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシド)、および必要に応じて有機溶媒、レベリング剤(フッ素系またはシリコーン系レベリング剤等)、帯電防止剤、防汚剤等のその他の成分を含む。また、透光性樹脂103を形成する樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合、上記樹脂液は、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含む。
【0066】
光重合開始剤としては、たとえば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキサジアゾール系光重合開始剤などが用いられる。また、光重合開始剤として、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等も用いることができる。光重合開始剤の使用量は、通常、樹脂液に含有される樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部であり、好ましくは、1〜5重量部である。
【0067】
有機溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類などから、粘度等を考慮して選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。塗工後は、上記有機溶剤を蒸発させる必要がある。そのため、沸点は60℃〜160℃の範囲であることが望ましい。また、20℃における飽和蒸気圧は0.1kPa〜20kPaの範囲であることが好ましい。
【0068】
なお、光拡散フィルムの光学特性および表面形状を均質なものとするために、樹脂液中の透光性微粒子104の分散は等方分散であることが好ましい。
【0069】
上記樹脂液の基材フィルム上への塗工は、たとえば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ダイコート法、バーコート法などによって行なうことができる。樹脂液の塗工にあたっては、上述のように、光拡散層102の平均膜厚dが上記範囲内となり、さらに好ましくは透光性微粒子104の重量平均粒径rと平均膜厚dとの比r/dが上記好ましい範囲となるように塗工膜厚を調整する。
【0070】
樹脂液の塗工性の改良または光拡散層102との接着性の改良を目的として、基材フィルム101の表面(光拡散層側表面)には、各種表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、酸表面処理、アルカリ表面処理、紫外線照射処理などが挙げられる。また、基材フィルム上に、たとえばプライマー層等の他の層を形成し、この他の層の上に、樹脂液を塗工するようにしてもよい。
【0071】
また、本発明の光拡散フィルムを、後述する偏光フィルムの保護フィルムとして使用する場合には、基材フィルム101と偏光フィルムとの接着性を向上させるために、基材フィルム101の表面(光拡散層とは反対側の表面)を各種表面処理によって親水化しておくことが好ましい。
【0072】
上記工程(B)は、透光性樹脂103を形成する樹脂として電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合において、必要により乾燥(溶媒の除去)を行なった後、電離放射線の照射(電離放射線硬化型樹脂を用いる場合)または加熱(熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合)により塗工層を硬化させる工程である。電離放射線としては、樹脂液に含まれる樹脂の種類に応じて紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、これらの中でも紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが得られることから紫外線が好ましい。
【0073】
紫外線の光源としては、たとえば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。これらの中でも、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンアーク、メタルハライドランプが好ましく用いられる。
【0074】
また、電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0075】
1つの好ましい実施形態において本発明の光拡散フィルムは、ロール状に巻き付けられた基材フィルム101を連続的に巻き出す工程、透光性微粒子104が分散された樹脂液を塗工し、必要に応じて乾燥機を通過させるなどにより乾燥させる工程、紫外線照射などにより樹脂液からなる層(塗工層)を硬化させる工程、および、得られた光拡散フィルムを巻き取り装置へ巻き取る工程を含む連続的製造方法によって作製することができる。紫外線照射装置は、1機、もしくは複数機を使用することができる。光拡散フィルムを巻き取る際には、光拡散層102を保護する目的で、再剥離性を有した粘着剤層を介して、光拡散層102表面にポリエチレンテレフタレートやポリエチレン等からなる保護フィルムを貼着しながら巻き取ってもよい。
【0076】
本発明の光拡散フィルムを製造するにあたり、光拡散フィルムにおける諸物性を上記所定の範囲または好ましい範囲にするには、たとえば下記の方法を用いることができる。
【0077】
まず、基材フィルム、透光性微粒子、透光性樹脂またはこれを形成する樹脂および樹脂液を構成するその他の成分を任意に選択し、上記した方法により光拡散フィルムを製造し、得られた光拡散フィルムの諸物性(膜厚ムラA、相対散乱光強度L2/L1、透過鮮明度、全ヘイズ、内部ヘイズ、表面ヘイズ、中心線平均粗さRa等)を測定する。そして、その値を目標とする値あるいは値の範囲と比較し、外れる場合には各物性に応じて、たとえば、樹脂液の粘度、透光性微粒子と透光性樹脂との屈折率差、透光性微粒子の含有量、光拡散層の平均膜厚、透光性微粒子の重量平均粒径rなどのいずれかあるいはその2つ以上の条件を下記の基準(a)〜(f)に従って調整し、再度光拡散フィルムを製造し、その諸物性を測定する。この操作を、得られる光拡散フィルムが目標とする諸物性を示すまで繰り返すことにより、目的とする諸物性を満たす光拡散フィルムとすることができる。
【0078】
(a)たとえば、樹脂液の粘度を適切な範囲に制御することにより、膜厚ムラAを上記範囲内に調整することが可能である。具体的には、樹脂液の粘度は15mPa・s以上であることが好ましい。樹脂液の粘度が15mPa・s未満であると、樹脂液中の透光性微粒子が沈降しやすくなり、膜厚ムラAが大きくなりやすい。一方、膜厚ムラAの観点からいえば、樹脂液の粘度は大きくてもよいが、あまり大きすぎると流動性が低下して塗工性が低下し、また、塗工装置に起因するスジムラ等が光拡散層表面に生じる場合がある。さらに樹脂液をダイ塗工する場合には、ノズル等を通過させるために大きな圧力が必要となり、製造上不利となる。したがって、樹脂液の粘度は100mPa・s以下であることが好ましい。ここでいう樹脂液の粘度は、粘弾性測定装置を用いて測定される、せん断速度1000s-1および測定温度25℃の条件下における粘度である。
【0079】
樹脂液中の有機溶剤量を減らす、または透光性樹脂あるいはこれを形成する樹脂や透光性微粒子等の固形分を増やすと、樹脂液の粘度は大きくなる。逆に、樹脂液中の有機溶剤量を増やす、または固形分を減らすと、樹脂液の粘度は小さくなる。樹脂液の粘度を上記範囲内とするためには、有機溶剤の含有量は、樹脂液中35〜70重量%とすることが好ましい。
【0080】
また、膜厚ムラAを低くするためには、透光性微粒子の比重と透光性樹脂(またはこれを形成する樹脂)を含有する溶剤との比重差ができるだけ小さくなるように、これらの種類を選択することも有効である。この点から、透光性微粒子は有機微粒子であることが好ましい。
【0081】
(b)透光性微粒子と透光性樹脂との屈折率差を大きくすると、相対散乱光強度L2/L1の値は大きくなる方向となり、全ヘイズの値は大きくなる方向となる。逆に、透光性微粒子と透光性樹脂との屈折率差を小さくすると、L2/L1の値は小さくなる方向となり、全ヘイズの値は小さくなる方向となる。なお、透光性微粒子と透光性樹脂との屈折率差の調整は、使用する透光性微粒子種および/または透光性樹脂種を変更することにより行なうことができる。
【0082】
(c)透光性微粒子の含有量を増やすと、相対散乱光強度L2/L1の値は大きくなる方向となり、透過鮮明度の値は小さくなる方向となり、全ヘイズの値は大きくなる方向となり、中心線平均粗さRaの値は大きくなる方向となる。逆に、透光性微粒子の含有量を減らすと、L2/L1の値は小さくなる方向となり、透過鮮明度の値は大きくなる方向となり、全ヘイズの値は小さくなる方向となり、中心線平均粗さRaの値は小さくなる方向となる。
【0083】
(d)光拡散層の平均膜厚dを大きくすると、相対散乱光強度L2/L1の値は大きくなる方向となり、透過鮮明度の値は小さくなる方向となり、全ヘイズの値は大きくなる方向となり、内部ヘイズの値は大きくなる方向となり、中心線平均粗さRaの値は小さくなる方向となる。逆に、光拡散層の平均膜厚dを小さくすると、L2/L1の値は小さくなる方向となり、透過鮮明度の値は大きくなる方向となり、全ヘイズの値は小さくなる方向となり、内部ヘイズの値は小さくなる方向となり、中心線平均粗さRaの値は大きくなる方向となる。
【0084】
(e)透光性微粒子の重量平均粒径rを大きくすると、内部ヘイズの値は小さくなる方向となり、中心線平均粗さRaの値は大きくなる方向となる。逆に、透光性微粒子の重量平均粒径rを小さくすると、内部ヘイズの値は大きくなる方向となり、中心線平均粗さRaの値は小さくなる方向となる。
【0085】
(f)全ヘイズの値と内部ヘイズの値との差を小さくすると、表面ヘイズの値は小さくなり、逆に、全ヘイズの値と内部ヘイズの値との差を大きくすると、表面ヘイズの値は大きくなる。
【0086】
〔光拡散フィルムの他の実施形態〕
本発明の光拡散フィルムは、光拡散層102上(基材フィルム101とは反対側の面)に積層された透光性樹脂からなる樹脂層を有するものであってもよい。
【0087】
また、本発明の光拡散フィルムは、光拡散層102上(基材フィルム101とは反対側の面)に積層された反射防止層をさらに備えていてもよい。反射防止層は光拡散層102上に直接形成してもよく、透明フィルム上に反射防止層を形成した反射防止フィルムを別途用意し、これを粘着剤または接着剤を用いて光拡散層102に積層してもよい。反射防止層は、反射率を限りなく低くするために設けられるものであり、反射防止層の形成により、表示画面への映り込みを防止することができる。反射防止層としては、光拡散層102の屈折率よりも低い材料から構成された低屈折率層;光拡散層102の屈折率より高い材料から構成された高屈折率層と、この高屈折率層の屈折率より低い材料から構成された低屈折率層との積層構造などを挙げることができる。反射防止フィルムを粘着剤または接着剤を用いて光拡散層102に積層する場合、市販の反射防止フィルムを使用できる。
【0088】
さらに、本発明の光拡散フィルムは、光拡散層102上(基材フィルム101とは反対側の面)に積層された表面凹凸を有する層をさらに備えていてもよい。表面凹凸を有する層は、光拡散層102上に直接形成してもよく、透明フィルム上に表面凹凸を有する層を形成した表面凹凸を有するフィルムを別途用意し、これを粘着剤または接着剤を用いて光拡散層102に積層してもよい。
【0089】
表面凹凸を有する層としては、たとえば、防眩層を挙げることができる。防眩層は、表面での乱反射を利用して表示画面への映り込みを低減するために設けられる。光拡散層102上に防眩層を設ける場合、公知の方法が用いられるが、たとえば、光拡散層102上に、透光性微粒子を含有する紫外線硬化型樹脂組成物を薄膜状に塗工し、硬化することで得ることができる。防眩フィルムを粘着剤または接着剤を用いて光拡散層102に積層する場合、市販の防眩フィルムを使用してもよいし、前記の方法に準拠して、透明フィルム上に防眩層を形成したものを作製して用いてもよい。
【0090】
<光拡散性偏光板>
上述した本発明の光拡散フィルムは、偏光板と組み合わせることにより光拡散性偏光板とすることができる。光拡散性偏光板は、偏光機能と防眩(光拡散)機能とを有する多機能フィルムである。本発明の光拡散性偏光板は、少なくとも偏光フィルムを有する偏光板と、基材フィルム側が該偏光板に対向するように該偏光板上に粘着剤層または接着剤層を介して積層された上記本発明の光拡散フィルムとを備えるものである。偏光板は従来公知の構成であってよく、たとえば、偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムを有するものが一般的である。また、偏光板は、偏光フィルムそれ自体であってもよい。
【0091】
図3は、本発明の光拡散性偏光板の好ましい一例を示す概略断面図である。図3に示される光拡散性偏光板300は、偏光フィルム301と、偏光フィルム301の一方の面に貼着された保護フィルム302と、他方の面に貼着された光拡散フィルム100とを備える。光拡散フィルム100は、その基材フィルム101側が偏光板の偏光フィルム301に対向するように貼着されている。光拡散フィルム100および保護フィルム302は、図示しない接着剤層を介して偏光フィルム301に貼着される。このような、偏光フィルムと光拡散フィルムとが接着剤層を介して貼着される構成、すなわち、光拡散フィルムを偏光フィルムの保護フィルムとして使用する構成は、光拡散性偏光板の薄膜化に有利である。
【0092】
偏光フィルム301としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂等からなるフィルムに、二色性染料またはヨウ素を吸着配向させたもの、分子的に配向したポリビニルアルコールフィルム中に、ポリビニルアルコールの二色性脱水生成物(ポリビニレン)の配向した分子鎖を含有するポリビニルアルコール/ポリビニレンコポリマー等が挙げられる。特に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料またはヨウ素を吸着配向させたものが偏光フィルムとして好適に使用される。偏光フィルムの厚さに特に限定はないが、一般には偏光板の薄型化等の観点から、100μm以下が好ましく、より好ましくは10〜50μmの範囲、さらに好ましくは25〜35μmの範囲である。
【0093】
偏光フィルム301の保護フィルム302としては、低複屈折性で、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性などに優れるポリマーからなるフィルムが好ましい。このようなフィルムとしては、たとえば、TAC(トリアセチルセルロース)などのセルロースアセテート系樹脂;アクリル系樹脂;四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂もしくはポリアミド系樹脂等の樹脂をフィルム状に成形加工したものが挙げられる。これらの中でも、偏光特性や耐久性などの点から、表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムや、ノルボルネン系熱可塑性樹脂フィルムが好ましく使用できる。ノルボルネン系熱可塑性樹脂フィルムは、耐湿熱性が高いため、偏光板の耐久性を大幅に向上させることができるとともに、吸湿性が少ないため、寸法安定性が高く、特に好適である。フィルムへの成形加工は、キャスティング法、カレンダー法、押出法の従来公知の方法を用いることができる。保護フィルムの厚さに限定はないが、偏光板の薄膜化等の観点から500μm以下が好ましく、より好ましくは5〜300μmの範囲、さらに好ましくは5〜150μmの範囲である。
【0094】
以上のような構成の光拡散性偏光板は、典型的には、液晶表示装置に適用される場合、光拡散フィルムが光出射側(視認側)となるように、粘着剤層等を介して液晶セルのガラス基板に貼着される。
【0095】
なお、光拡散性偏光板は、光拡散層上に積層された反射防止層をさらに備えていてもよい。反射防止層を備える光拡散性偏光板としては、たとえば、光拡散層102の表面に直接、反射防止層を積層した光拡散性偏光板;光拡散層102の表面に、透明フィルムと反射防止層との積層体からなる反射防止フィルムを、接着剤層または粘着剤層を介して積層した光拡散性偏光板;光拡散層102の表面に積層された透光性樹脂からなる樹脂層の表面に直接、反射防止層を積層した光拡散性偏光板;光拡散層102の表面に積層された透光性樹脂からなる樹脂層の表面に、透明フィルムと反射防止層との積層体からなる反射防止フィルムを、接着剤層または粘着剤層を介して積層した光拡散性偏光板などが挙げられる。
【0096】
また、光拡散性偏光板は、光拡散層上に積層された、防眩層等の表面凹凸を有する層をさらに備えていてもよい。表面凹凸を有する層を備える光拡散性偏光板としては、たとえば、光拡散層102の表面に直接、表面凹凸を有する層を積層した光拡散性偏光板;光拡散層102の表面に、透明フィルムと表面凹凸を有する層との積層体からなるフィルムを、接着剤層または粘着剤層を介して積層した光拡散性偏光板;光拡散層102の表面に積層された透光性樹脂からなる樹脂層の表面に直接、表面凹凸を有する層を積層した光拡散性偏光板;光拡散層102の表面に積層された透光性樹脂からなる樹脂層の表面に、透明フィルムと表面凹凸を有する層との積層体からなるフィルムを、接着剤層または粘着剤層を介して積層した光拡散性偏光板などが挙げられる。
【0097】
<液晶表示装置>
次に、本発明に係る液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置は、上記本発明の光拡散フィルムまたは光拡散性偏光板を備えるものである。1つの好ましい実施形態において本発明の液晶表示装置は、バックライト装置と、光偏向手段と、バックライト側偏光板と、液晶セルと、上記本発明の光拡散性偏光板とをこの順で備える。図4は、本発明の液晶表示装置の好ましい一例を示す概略断面図である。図4に示される液晶表示装置は、ノーマリーホワイトモードのTN方式の液晶表示装置であって、バックライト装置402、光拡散板403、光偏向手段としての2枚のプリズムフィルム404a、404b、バックライト側偏光板405、一対の透明基板411a、411bの間に液晶層412が設けられてなる液晶セル401、および、視認側偏光板406と本発明に係る光拡散フィルム407とからなる光拡散性偏光板がこの順で配置されてなる。視認側偏光板406と光拡散フィルム407とによって光拡散性偏光板が構成されており、光拡散性偏光板は、その偏光フィルム側が液晶セル401に対向するように配置されている。
【0098】
図5に示すように、バックライト側偏光板405と視認側偏光板406は、それらの透過軸が直交ニコルの関係となるように配置されている。また、2枚のプリズムフィルム404a、404bはそれぞれ、光入射側(バックライト装置側)の面が平坦面であり、光出射側(視認側)の面(バックライト側偏光板405に対向する表面)に線状プリズム441a,441bが平行に複数形成されている。そして、プリズムフィルム404aは、その線状プリズム441aの稜線442aの方向がバックライト側偏光板405の透過軸方向と実質的に平行となるよう配置され、プリズムフィルム404bは、その線状プリズム441bの稜線442bの方向が光拡散性偏光板を構成する視認側偏光板406の透過軸方向と実質的に平行となるように配置されている。ただし、プリズムフィルム404bの線状プリズム441bの稜線442bの方向がバックライト側偏光板405の透過軸方向と実質的に平行となるよう配置し、プリズムフィルム404aの線状プリズム441aの稜線442aの方向が光拡散性偏光板を構成する視認側偏光板406の透過軸方向と実質的に平行となるように配置することも可能である。以下、本発明の液晶表示装置を構成する構成部材についてより詳細に説明する。
【0099】
〔液晶セル〕
液晶セル401は、スペーサーにより所定距離を隔てて対向配置された一対の透明基板411a、411bと、この一対の透明基板411a、411bの間に液晶を封入してなる液晶層412を備える。一対の透明基板411a、411bには、それぞれ透明電極や配向膜が積層形成されており、透明電極間に表示データに基づいた電圧が印加されることによって液晶が配向する。液晶セル401の表示方式は、上記の例ではTN方式であるが、IPS方式、VA方式などの表示方式も用いられる。
【0100】
〔バックライト装置〕
バックライト装置402は、上面開口の直方体形状のケース421と、ケース421内に複数本並列配置された、線状光源としての冷陰極管422とを備える。ケース421は、樹脂材料や金属材料から成形されてなり、冷陰極管722から放射された光をケース内周面で反射させる観点から、少なくともケース内周面は白色または銀色であることが望ましい。光源としては、冷陰極管の他、線状形状等の各種形状のLED等も使用できる。線状光源を用いる場合、配置する線状光源の本数に特に限定はないが、発光面の輝度ムラの抑制等の観点から、隣接する線状光源の中心間距離が15mmから150mmの範囲であることが好ましい。なお、本発明で使用するバックライト装置402は、図4に示す直下型のものに限定されるものではなく、導光板の側面に線状光源または点状光源を配置したサイドライト型、あるいは平面状光源型などの各種のものが使用できる。
【0101】
〔光拡散手段〕
本発明の液晶表示装置は、バックライト装置402と光偏向手段との間に配置される光拡散手段としての光拡散板403を備えることができる。光拡散板403は、基材に拡散剤が分散混合されてなるフィルムまたはシートである。その基材としては、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチルとスチレンの共重合体樹脂、アクリロニトリルとスチレンの共重合体樹脂、メタクリル酸とスチレンの共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド系樹脂等が使用できる。なお、光拡散手段は、光拡散板と光拡散フィルムとを併用したものであってもよい。
【0102】
また、基材に混合分散させる拡散剤としては、基材の材料とは異なる種類のアクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、有機シリコーン樹脂、アクリルとスチレンの共重合体などからなる有機微粒子、および炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラスなどからなる無機微粒子等が挙げられる。使用する拡散剤の種類は、1種類または2種類以上であってよい。また、有機重合体のバルーンやガラス中空ビーズも拡散剤として使用できる。拡散剤の重量平均粒径は0.5〜30μmの範囲が好ましい。また、拡散剤の形状は球形、偏平、板状、針状等であってもよいが、好ましくは球形である。
【0103】
〔プリズムフィルム(光偏向手段)〕
プリズムフィルム404a,404bは、光入射面側(バックライト装置側)が平坦面で、光出射側の面(バックライト側偏光板405に対向する表面)に、断面が先細の多角形状、好ましくは三角形状の線状プリズム441a,441bが平行に複数形成されている。プリズムフィルム404a、404bの材料としては、たとえば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチルとスチレンの共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルとスチレンの共重合体樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、あるいは、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの電離放射線硬化型樹脂等が挙げられる。プリズムフィルムは、異形押出法、プレス成形法、射出成形法、ロール転写法、レーザブレーション法、機械切削法、機械研削法、フォトポリマープロセス法などの公知の方法で製造することができる。これらの方法は、それぞれ単独で使用されてもよいし、あるいは2種以上の方法を組み合わせてもよい。プリズムフィルム404a、404bの厚みは、通常、0.1〜15mmであり、好ましくは0.5〜10mmである。
【0104】
線状プリズム441a,441bの稜線442a,442bに直交する垂直断面での断面形状は、たとえば三角形である。この場合、その三角形の頂点のうち稜線を形成する頂点の頂角θ(図5参照)は、90〜110°の範囲であることが好ましい。また、この三角形は、各辺が等辺、不等辺の何れであってもよいが、正面方向(液晶表示装置の表示面の法線方向)に集光しようとする場合は、光出射側の二辺が等しい二等辺三角形であることが好ましい。線状プリズムの断面形状は、面光源からの出射光の特性に合わせて設定することもでき、曲線を持たせるなど、三角形以外の形状としてもよい。
【0105】
上記プリズムフィルム404a,404bは、たとえば三角形状の断面を有する複数の線状プリズム441a,441bが、三角形の頂角θに相対した底辺が互いに隣接するように順次配置され、複数の線状プリズム441a,441bの稜線442a,442bが互いにほぼ平行になるように配列された構造を有することが好ましい。この場合、集光能力が著しく減退しない限り、線状プリズム441a,441bの断面形状の三角形は、その各頂点が曲線形状となっていてもよい。各稜線間の距離は、通常、10〜500μmの範囲であり、好ましくは30〜200μmの範囲である。
【0106】
〔偏光板〕
光拡散性偏光板を構成するバックライト側偏光板405は上述したものを用いることができる。また、視認側偏光板406としては、従来公知のものを用いることができる。
【0107】
〔位相差フィルム〕
本発明の液晶表示装置は、図6に示されるように、位相差板408を備えることができる。図6において位相差板408は、バックライト側偏光板405と液晶セル401との間に配置されている。この位相差板408は、液晶セル401の表面に対して垂直な方向に位相差がほぼゼロのものであり、真正面からは何ら光学的な作用を及ぼさず、斜めから見たときに位相差が発現し、液晶セル401で生じる位相差を補償するものである。これによって、より広い視野角が得られ、より優れた表示品位および色再現性が得られるようになる。位相差板408は、バックライト側偏光板405と液晶セル401の間、および、視認側偏光板406と液晶セル401の間の一方、または、両方に配置することができる。
【0108】
位相差板408としては、たとえば、ポリカーボネート樹脂や環状オレフィン系重合体樹脂をフィルムにし、このフィルムをさらに二軸延伸したものや、液晶性モノマーをフィルムに塗布し、光重合反応によってその分子配列を固定化したもの等が挙げられる。位相差板408は、液晶の配列を光学的に補償するものであるから、液晶配列と逆の屈折率特性のものを用いる。具体的にはTNモードの液晶セルには、たとえば、「WVフィルム」(富士フイルム株式会社製)、STNモードの液晶表示セルには、たとえば、「LCフィルム」(新日本石油株式会社製)、IPSモードの液晶表示セルには、たとえば、二軸性位相差フィルム、VAモードの液晶表示セルには、たとえば、AプレートおよびCプレートを組み合わせた位相差板や二軸性位相差フィルム、πセルモードの液晶表示セルには、たとえば、「OCB用WVフィルム」(富士フイルム株式会社製)等が好適に使用できる。
【0109】
以上のような構成の液晶表示装置において、図4を参照して、バックライト装置402から放射された光は、光拡散板403によって拡散された後、プリズムフィルム404aへ入射する。バックライト側偏光板405の透過軸方向に直交する垂直断面において、プリズムフィルム404aの下面に対して斜めに入射した光は、正面方向に進路が変えられて出射される。次に、プリズムフィルム404bにおいて、視認側偏光板406の透過軸方向に直交する断面において、プリズムフィルム404bの下面に対して斜めに入射した光は、上記と同様に、正面方向に進路が変えられて出射される。したがって、2枚のプリズムフィルム404a,404bを通過した光は、いずれの垂直断面においても正面方向に集光されたものとなり、正面方向の輝度が向上する。
【0110】
ついで、正面方向に指向性が付与された光は、バックライト側偏光板405によって偏光とされて液晶セル401に入射する。液晶セル401に入射した光は、電場によって制御された液晶層412の配向によって画素ごとに偏光面が制御されて液晶セル401から出射する。そして、液晶セル401から出射した光は、視認側偏光板406を通過して、さらに光拡散フィルム407を通って表示面側に出射する。
【0111】
このように、光偏向手段として2枚のプリズムフィルム404a,404bを用いると、液晶セル401に入射する光の正面方向への指向性をより高めることができ、これにより、正面方向の輝度をより向上させることができる。また、本発明の光拡散フィルムを使用しているので、高い正面コントラストと広い視野角とを示し、また、色ムラが生じることなく視認性に優れている。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各種物性の測定方法は次のとおりである。
【0113】
(a)透光性微粒子の重量平均粒径rおよび標準偏差
コールター原理(細孔電気抵抗法)に基づくコールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)を用いて測定した。
【0114】
(b)樹脂液の粘度
熱弾性測定装置(Anton Peer社製 physica MCR301)を用い、せん断速度1000s-1および温度25℃の条件で粘度を測定した。
【0115】
(c)光拡散層の平均膜厚d
光拡散フィルムについて、接触式膜厚計〔NIKON社製 DIGIMICRO MH−15(本体)およびZC−101(カウンター)〕を用い、フィルムのMD方向(長尺状で得られるフィルムの搬送方向、すなわち長手方向)において有効塗工幅にて略均等間隔で場所に偏りのないように選択された3点×フィルムのTD方向(MD方向に直交する方向において上記と同様にして選択された3点の計9点における膜厚の平均値を測定し、この値から、基材フィルムの厚み80μmを差し引くことにより光拡散層の平均膜厚dとした。
【0116】
(d)光拡散層の最大膜厚および最小膜厚、ならびに膜厚ムラA
上記平均膜厚dの測定にて得られた9点の膜厚値のうち、最も大きい膜厚および最も小さい膜厚を、それぞれ光拡散層の最大膜厚および最小膜厚とした。これらの値から、上記式に基づいて、膜厚ムラA(%)を算出した。
【0117】
(e)相対散乱光強度
光学的に透明な粘着剤を用いて、光拡散フィルムを、その基材フィルム側でガラス基板に貼合した測定用サンプルを用いて測定を行なった。測定用サンプルのガラス基板面側から、光拡散フィルムの法線方向にHe−Neレーザーの平行光(波長543.5nm)を入射し、光拡散層側の法線方向から40°傾いた方向A3に透過するレーザー光の強度L2を測定し、透過散乱光の強度L2を光源の光強度L1で除した値として相対散乱光強度L2/L1を算出した。測定には、横河電機株式会社製の「3292 03 オプティカルパワーセンサー」および同社製の「3292 オプティカルパワーメーター」を用いた。
【0118】
この測定を行なうに当たり、He−Neレーザーを照射する光源は、前記ガラス基板から430mmの位置に配置した。受光器である前記パワーメーターは、光拡散層上のレーザー光の出射点から280mmの位置に配置し、このパワーメーターを前記所定角度になるように動かして、出射されるレーザー光の強度L2を測定した。
【0119】
また、光拡散フィルムに照射されたレーザー光の強度、すなわち、前記光源から照射されたレーザー光の強度L1は、測定用サンプルを設置せずに、前記光源から直接前記パワーメーターに入射した光の強度を測定することで求めた。なお、当該強度の測定は、前記光源から710mm(=430mm+280mm)の位置に前記パワーメーターを配置して行なった。
【0120】
(f)透過鮮明度
光学的に透明な粘着剤を用いて、光拡散フィルムを、その基材フィルム側でガラス基板に貼合した測定用サンプルを用いて測定を行なった。測定には、JIS K 7105に準拠した写像性測定器(スガ試験機株式会社製の「ICM−1DP」)を用いた。ここでいう透過鮮明度は、上述の定義のとおり、JIS K 7105に準拠し、暗部と明部との幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度(像鮮明度)の和である。
【0121】
(g)ヘイズ
光学的に透明な粘着剤を用いて、光拡散フィルムを、その基材フィルム側でガラス基板に貼合した測定用サンプルを用いて測定を行なった。上述した測定方法に従う全ヘイズ値および内部ヘイズの測定には、JIS K 7136に準拠したヘイズ透過率計(株式会社村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」)を用いた。その結果に基づき、上記式(2)より表面ヘイズを算出した。
【0122】
(h)中心線平均粗さRa
JIS B 0601に準拠した共焦点干渉顕微鏡(たとえば、株式会社オプティカルソリューション社製の「PLμ2300」)を用いて上記式(3)に基づき測定した。
【0123】
〔光拡散フィルムの作製〕
<実施例1>
ペンタエリスリトールトリアクリレート60重量部と、多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物)40重量部とを混合して紫外線硬化性樹脂組成物を得た。なお、該組成物を紫外線硬化して得られる硬化物の屈折率は1.53であった。
【0124】
次に、上記紫外線硬化性樹脂組成物の固形分100重量部に対して、透光性微粒子として重量平均粒径7.2μm、標準偏差0.52μmのポリスチレン系粒子(屈折率1.59、比重1.01)を25重量部、および光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を5重量部添加し、固形分率が60重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で希釈して塗工用樹脂液を調製した。
【0125】
この塗工用樹脂液を、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(基材フィルム)上に、バーコーターを用いて塗工し、80℃に設定した乾燥機中で1分間乾燥させた。ついで、塗工層側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で300mJ/cm2となるように照射して塗工層を硬化させ、光拡散層と基材フィルムとからなる光拡散フィルムを得た。
【0126】
<比較例1>
希釈用のPGMEの量を調整して、塗工用樹脂液の固形分率を30重量%としたこと以外は実施例1と同様にして光拡散フィルムを作製した。
【0127】
<比較例2>
希釈用のPGMEの量を調整して、塗工用樹脂液の固形分率を80重量%としたこと以外は実施例1と同様にして光拡散フィルムを作製した。
【0128】
<比較例3>
透光性微粒子として重量平均粒径3.8μm、標準偏差0.40μmのポリスチレン系粒子(屈折率1.59、比重1.01)を25重量部使用し、かつ希釈用のPGMEの量を調整して、塗工用樹脂液の固形分率を30重量%としたこと以外は実施例1と同様にして光拡散フィルムを作製した。
【0129】
<比較例4>
透光性微粒子として重量平均粒径3.8μm、標準偏差0.40μmのポリスチレン系粒子(屈折率1.59、比重1.01)を25重量部使用し、かつ希釈用のPGMEの量を調整して、塗工用樹脂液の固形分率を80重量%としたこと以外は実施例1と同様にして光拡散フィルムを作製した。
【0130】
上記(a)〜(h)を含む各種物性の測定結果を表1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
〔光拡散フィルムの評価〕
得られた光拡散フィルムを用いて液晶表示装置を作製した。まず、IPSモードのPanasonic製32型液晶テレビ「VIERA TH−32LZ85」のバックライト装置上に、法線方向に対して70°方向の輝度値が法線方向の輝度値の10%である光拡散板を配置するとともに、頂角が95°である複数の線状プリズムが平行に配列されたプリズムフィルムを2枚使用し、これらを光拡散板とバックライト側偏光板との間に配置した。この際、一方のプリズムフィルム(バックライト装置寄りのプリズムフィルム)は、その線状プリズムの稜線の方向がバックライト側偏光板の透過軸に略平行となるように配置し、他方のプリズムフィルム(バックライト側偏光板寄りのプリズムフィルム)は、その線状プリズムの稜線の方向が後述する視認側偏光板の透過軸に略平行となるように配置した。また、視認側偏光板を剥がして、ヨウ素系偏光板(住友化学社製の「TRW842AP7」)を、バックライト側偏光板に対してクロスニコルとなるように貼合し、その上に、実施例1または比較例1〜4の光拡散フィルムを、粘着剤層を介して貼合し、液晶表示装置を得た。
【0133】
得られた液晶表示装置について色ムラの程度を目視評価した。結果を表2に示す。色ムラの程度は、液晶表示装置の画面上において、他の領域と比べて光透過性が大きく異なる領域が存在するかどうかを目視で観察することにより評価した。評価基準は次のとおりである。
○:色ムラが認められない。
△:色ムラがわずかに認められる。
×:色ムラが顕著に認められる。
【0134】
また、表2には、光拡散フィルム作製の際の塗工用樹脂液塗工時におけるスジムラの程度の目視評価結果をあわせて示している。「スジムラ」とは、光拡散層表面に生じ得るスジ状の模様であり、塗工用樹脂液がバーコーターの傷などを拾うことにより生じるムラである。評価基準は次のとおりである。
○:スジムラが認められない。
△:スジムラがわずかに認められる。
×:スジムラが顕著に認められる。
【0135】
【表2】

【0136】
表2に示されるとおり、実施例1の光拡散フィルムは、膜厚ムラAが十分に小さいため、色ムラの発生が防止されている。また、適度な相対散乱光強度、透過鮮明度およびヘイズを示していることから、高い正面コントラストと広視野角特性との両立が達成されていることがわかる。さらに、適度な粘度の塗工用樹脂液を用いたため、スジムラも生じなかった。
【0137】
これに対し、比較例1および3の光拡散フィルムは、塗工用樹脂液の粘度が低すぎるために、膜厚ムラAが大きくなり、その結果、顕著な色ムラが認められた。一方、粘度が高過ぎて流動性の低い塗工用樹脂液を用いた比較例2および4においては、光拡散層表面にスジムラが多数生じ、これに起因して色ムラがわずかに生じた。また、比較例1および3の光拡散フィルムは、透過鮮明度が極端に低いため、正面コントラストが低いものとなる。比較例4の光拡散フィルムは、透過鮮明度が高すぎるために、正面コントラストは良好であるものの、透光性微粒子による後方散乱により白ちゃけが生じるとともに、広視野角が得られない。このように、重量平均粒径rが3.8μmの透光性微粒子を用いた場合には、正面コントラストと広視野角特性との両立が困難であることがわかる。
【符号の説明】
【0138】
100,407 光拡散フィルム、101 基材フィルム、102 光拡散層、103 透光性樹脂、104 透光性微粒子、300 光拡散性偏光板、301 偏光フィルム、302 保護フィルム、401 液晶セル、402 バックライト装置、403 光拡散板、404a,404b プリズムフィルム、405 バックライト側偏光板、406 視認側偏光板、408 位相差板、411a,411b 透明基板、412 液晶層、421 ケース、422 冷陰極管、441a,441b 線状プリズム、442a,442b 線状プリズムの稜線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルム上に積層され、透光性樹脂中に透光性微粒子が分散された光拡散層とを有する光拡散フィルムであって、
前記透光性微粒子は、その重量平均粒径rが5μm以上15μm未満であり、
前記光拡散層は、その平均膜厚dが10μm以上20μm以下であり、かつその最大膜厚および最小膜厚によって下記式:
A(%)=100×(最大膜厚−最小膜厚)/最大膜厚
で定義される膜厚ムラが20%以下である光拡散フィルム。
【請求項2】
前記透光性微粒子の重量平均粒径rと前記光拡散層の平均膜厚dとの比r/dが0.3以上1以下である請求項1に記載の光拡散フィルム。
【請求項3】
前記光拡散層における前記透光性微粒子の含有量が前記透光性樹脂100重量部に対して20重量部以上50重量部以下である請求項1または2に記載の光拡散フィルム。
【請求項4】
前記基材フィルム側から、光拡散フィルムの法線方向に入射する波長543.5nmのレーザー光の強度L1に対する、前記光拡散層側の前記法線方向から40°傾いた方向に透過するレーザー光の強度L2の比L2/L1が0.0001%以上0.001%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項5】
全ヘイズが40%以上70%以下であり、前記光拡散層の表面形状に起因する表面ヘイズが6%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項6】
前記基材フィルムの厚みが10μm以上300μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項7】
0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学くしを通して得られる透過鮮明度の和が70%以上220%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項8】
前記光拡散層上に積層された反射防止層をさらに備える請求項1〜7のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項9】
請求項1に記載の光拡散フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルム上に、前記透光性微粒子が分散された樹脂液を塗工する工程と、
得られた塗工層を硬化させる工程と、
を備え、
前記樹脂液の25℃における粘度が15mPa・s以上100mPa・s以下である光拡散フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂液は有機溶剤をさらに含有し、その含有量が前記樹脂液中35重量%以上70重量%以下である請求項9に記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項11】
少なくとも偏光フィルムを有する偏光板と、
前記基材フィルム側が前記偏光板に対向するように、前記偏光板上に積層された請求項1〜8のいずれかに記載の光拡散フィルムと、
を備える光拡散性偏光板。
【請求項12】
前記偏光フィルムと前記光拡散フィルムとが接着剤層を介して貼り合わされてなる請求項11に記載の光拡散性偏光板。
【請求項13】
バックライト装置と、光偏向手段と、バックライト側偏光板と、液晶セルと、請求項11または12に記載の光拡散性偏光板とをこの順で備え、
前記光拡散性偏光板は、その偏光フィルム側が前記液晶セルに対向するように配置される液晶表示装置。
【請求項14】
前記光偏向手段は、前記バックライト側偏光板に対向する表面に線状プリズムを複数有するプリズムフィルムを2枚有し、
一方のプリズムフィルムは、その線状プリズムの稜線の方向が前記バックライト側偏光板の透過軸に略平行となるように配置され、他方のプリズムフィルムは、その線状プリズムの稜線の方向が前記光拡散性偏光板の透過軸に略平行となるように配置される請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記バックライト装置と前記光偏向手段との間に、光拡散手段をさらに備える請求項13または14に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−98526(P2012−98526A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246265(P2010−246265)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】