説明

光拡散型反射偏光フィルム

【課題】液晶表示用装置等において輝度向上に優れた一軸延伸ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】海相の共重合ポリエステル樹脂(A)及び島相のポリエステル樹脂(B)からなる海島構造を有するフィルムであって、島相がフィルムの平面と垂直な方向から見て楕円状もしくは針状の形態であり、楕円もしくは針状の形態の長軸の方向が一方向に揃っていて相対輝度率が130%以上である光拡散型反射偏光フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度向上フィルム等として利用することができる光拡散型偏光反射フィルムに関する。更に詳しくは、特定の偏光光線のみ透過させ、もう一方の偏光光線を反射させる光学異方性を備えた光拡散型偏光反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学ディスプレイは、ラップトップ型コンピューター、ノート型コンピューター、携帯型電話機、薄型カラーテレビ機、携帯型計算機、デジタル式腕時計などに広く用いられている。よくある液晶ディスプレイ(LCD)は、このような光学ディスプレイの代表的な例である。液晶ディスプレイの構成は、背面側からバックライト、導光板、多層反射偏光子、拡散板、偏光板、液晶セル、偏光板等を積層し液晶ディスプレイになっている。
しかし、かかる従来技術は、偏光フィルムが特定の偏光光線(直線偏光)のみを透過させて、その他の偏光光線を吸収する役割を果たすため、偏光フィルムのみでは液晶セルを出た光量、輝度が低いと言う問題点があった。
【0003】
一方、かかるフィルム構成において、多層反射偏光子を用いる液晶ディスプレイ(LCD)が提案されている。この提案においては液晶セルを出た光の光量、輝度を上昇するが、反射偏光子フィルムの作製設備が特殊であり、フィルム価格が高額である(例えば、特許文献1参照)。一方、反射偏光子を輝度向上フィルムとして、海島構造を有する光拡散型偏光子を用いることで、反射偏光子フィルムの作製設備が容易になり、フィルム価格が安価にできるという発明がなされた(例えば、特許文献2参照)。
しかし、特許文献2で開示された発明はポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂などで構成されたフィルムであり、異種系の樹脂で海島構造にしているため延伸時に界面が剥離、ボイドが発生しやすく、輝度向上ができない、ボイドを発生させないためには延伸速度を下げるため生産性が非常に悪いと言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平9−506985号公報
【特許文献2】特表2002−502503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、安価で生産性に優れ、液晶ディスプレイに組み込んだ際に高い輝度向上効果の得られる光拡散型反射偏光に優れたシート・フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1. 海相の共重合ポリエステル樹脂(A)及び島相のポリエステル樹脂(B)からなる海島構造を有するフィルムであって、島相がフィルムの平面と垂直な方向から見て楕円状もしくは針状の形態であり、楕円もしくは針状の形態の長軸の方向が一方向に揃っていることを特徴とする光拡散型反射偏光フィルム。
2. 海相の共重合ポリエステル樹脂(A)がネオペンチルグリコール成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分及びイソフタル酸成分のいずれか少なくとも一種を共重合成分としたエチレンテレフタレートを主成分とし、ことを特徴とする前記1に記載の光拡散型反射偏光フィルム。
3. 島相のポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートであることを特徴とする前記1又は2に記載の光拡散型反射偏光フィルム。
4. 海相と島相の比率は、島相が5〜90質量%であり、海相が10〜95質量%の範囲からなる前記1〜3いずれかに記載の光拡散型反射偏光フィルム。
5. 海島構造を形成するフィルムは、厚さ当りの島相の数が100〜1000であることを特徴とする前記1〜4いずれかに記載の光拡散型反射偏光フィルム。
6. 島相の大きさは、厚み方向に0.01〜1μmの範囲であることを特徴とした前記1〜5いずれかに記載のフィルム。
7. S偏光光線反射率が40〜95%であり、P偏光光線透過率は70〜95%であることを特徴とする前記1〜6いずれかに記載の光拡散型反射偏光フィルム。
8. 共重合ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を溶融混練した後、フィルム状に溶融押出して固化し、共重合ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)のガラス転移点温度のいずれか高い方のガラス転移温度+5〜+40℃の温度でフィルムの長手方向又は幅方向のいずれか一方向に倍率3.0〜7.0倍に延伸することを特徴とする前記1〜7いずれかに記載の光拡散型反射偏光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光拡散型反射偏向フィルムは、輝度向上フィルムとして液晶ディスプレイ等に組み込んだ場合、輝度向上率をより高めることができ、画像の精彩性や鮮明性をより良好にすることができる。また、本発明の光拡散型反射偏向フィルムは設備改造費用がかからず安価にフィルムを生産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<光拡散型偏光反射フィルム>
本発明における光拡散型偏光反射フィルムとは、特定偏光は通過し、それと直交する偏光は拡散反射するフィルムである。
本発明の光拡散型偏光反射フィルムは、海島構造を有し、島相がフィルムの平面と垂直な方向から見て楕円状もしくは針状の形態であり、楕円状もしくは針状の形態の長軸の方向が一方向に揃っている。
島相の楕円状もしくは針状の形態において、楕円の長軸(針状であれば長さ)/短軸(針状であれば幅)比は、3以上であることが好ましく、さらには4以上、特には5以上であることが好ましい。上限は特に規定するものではないが、現実の製造法の制限から10程度である。
本発明の光拡散型偏光反射フィルムにおいて、島相の楕円状もしくは針状の形態の長軸の方向(方位角)は一方向に揃っているので、その方位角の差(無作為に50個の島相を選び出した最大の方位角の違い)は10度以内の範囲にある。好ましくは、6度以内の範囲、特に好ましくは3度以内の範囲にある。
本発明の光拡散型偏光反射フィルムは、海相、島相ともポリエステル系樹脂で構成されており、例えば、種類の異なる2種以上のポリエステルを溶融混練してシート状に押し出し、少なくとも1方向に延伸することで得られる。
【0009】
海島構造を構成するポリエステル系樹脂についてを詳述する。
<海相の共重合ポリエステル樹脂(A)>
本発明において用いられる海相(連続相)となる共重合ポリエステル系樹脂(A)は以下のモノマー成分を重合して得られる。モノマー成分としては、例えば、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、水添化無水フタル酸、トリメリット酸等が使用できる。また、多価アルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、ダイマージオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチデングリコールやプロピレングリコール付加物等が使用できる。また、ラクトン、乳酸、グリコール酸なども使用できる。
【0010】
これらの中でもエチレンテレフタレートを基本骨格とし、その他の成分を共重合させた共重合ポリエステル系樹脂が好ましい。この場合の共重合成分は、多価カルボン酸成分、多価アルコール成分等の構成成分のすべてを200モル%とした場合、10〜60モル%(但し、多価カルボン酸成分、多価アルコール成分それぞれを100モル%とした場合に50モル%を越えない)の範囲であることが好ましい。さらには20〜50モル%の範囲であることが好ましい。特には25〜40モル%の範囲であることが好ましい。10モル%未満の場合は高い輝度向上効果が得られないことがある。60モル%を越えると非晶性が高くなり過ぎ、延伸フィルムとした場合に強度が得られないことがある。
【0011】
エチレンテレフタレート成分に共重合させる成分としては、ポリエチレンテレフタレートの耐熱性、強度を大きく低下させない点で、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1.4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸から選ばれることが好ましく、特には、ネオペンチルグリコール、1.4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸から選ばれることが好ましい。
海相に結晶性の低い共重合ポリエステル樹脂を採用することで延伸しても延伸配向による海相成分の屈折率の上昇を小さくすることができるため、空気−フィルム界面での反射率を低くすることができ、輝度向上の効果を高めることができる。
【0012】
<島相のポリエステル樹脂(B)>
本発明において用いられる分散相を構成するポリエステル系樹脂(B)としては、共重合ポリエステル樹脂(A)であげた多価カルボン酸、多価グリコール成分等を用いて得られるポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリエステル系樹脂(B)としては、延伸により配向結晶が進み複屈折を大きくしやすいので、多価カルボン酸成分、多価アルコール成分1種ずつからなるいわゆるホモポリマーが好ましい。特にはポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0013】
分散相を構成するポリエステル系樹脂(B)としてポリエチレンナフタレートを使用する場合は、他の共重合成分は5モル%以下が好ましく、更には3モル%以下、特に他の成分を共重合しないホモポリマーのポリエチレンナフタレートが好ましい。なお、この場合、重合副生物であるジエチレングリコールが成分として含有することは許容されるが、この場合も5モル%以下が好ましく、さらには3モル%以下であることが好ましい。また、ホモポリエチレンナフタレートの分子量を上げるため、1モル%以下で、トリメリット酸、トリメチロールプロパン等3価以上の成分を入れることも許容される。
【0014】
海相の共重合ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレートを主成分とする共重合ポリエステル、島相のポリエステル樹脂(B)としてポリエチレンナフタレートの組み合わせが特に好ましく、この組み合わせにすることにより、工業的に入手し易いだけでなく、ポリエステル同士を溶融混合した場合にエステル交換が比較的起こりにくいため製造条件の選択範囲が広く、輝度向上効果の高い光拡散型偏光反射フィルムを安定的に得ることができるられる。
【0015】
海相となる共重合ポリエステル樹脂(A)と島相となるポリエステル樹脂(B)の混合割合は10〜95質量%:5〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%:80〜20質量%、より好ましくは25〜70質量%:85〜30質量%、特に好ましくは30〜70質量%:70〜30質量%であって光拡散型反射偏光フィルムの輝度をさらに向上することができる。なお、島相成分が海相成分よりも多い場合であっても、島相成分の溶融粘度を下げるなどの方法により、設計通りに海島構造を配置することができる。
【0016】
<フィルムの製造方法>
共重合ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)は、ドライブレンド、または混練機に別々に投入され、溶融混練される。また、一旦両方の樹脂を溶融混練してチップ化しても構わない。混練温度としては250〜300℃が好ましい。混練時間は60〜300秒が好ましい。
混練機としては通常フィルムの成形で用いられる1軸押出機又は2軸押出機が好ましく用いられる。
共重合ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)は押出機で混練する際、加熱温度が高く、時間が長すぎるとエステル交換が過度に起こり、分散状態が変化したり、海相と島相の界面が不明瞭となることがある。また、温度が不足したり、時間が短い場合には、海島構造の分散不良が起こり、充分な輝度向上効果が得られない場合がある。
また、温度、時間だけでなく、スクリュー構成、およびスクリュー回転速度を調整することで、エステル交換の進行を抑制しながら充分な分散状態にすることができる。
ポリマーメルト配管の温度は270℃から290℃が好ましく、口金の温度は280℃から300℃が好ましい。
【0017】
溶融された樹脂は金口から冷却ロール上に押し出される。冷却ロール温度は20℃から40℃が好ましく、引取り速度は口金出口からポリマー吐出速度と冷却ロール速度の速度比率(ドラフト比)が1.1〜5が好ましく、更に好ましくは1.5〜2.5である。なお、冷却ロールで引取られたフィルムをキャストフィルムと称することがある。
【0018】
冷却されたフィルムは縦方向又は横方向に延伸される。
縦延伸は、予熱・延伸ロールでガラス転移点温度+5〜+40℃に加熱し、ロールの速度差を利用して延伸するのが好ましい。加熱温度はガラス転移温度+10℃以上が好ましい。
縦延伸の倍率は、3倍以上に延伸するのが好ましく、より好ましくは4倍以上、更に好ましくは5倍以上に延伸する。上限はフィルムが破断しない倍率であるが、現実的には7倍程度である。キャストフィルム延伸時の変形速度は600%/分以上が好ましく、より好ましくは2000%/分以上、特に好ましくは5000%/分以上である。また、変形速度の上限は現実的な面から30000%/分であることが好ましい。
本発明においては、海相及び島相いずれにもポリエステル系樹脂を用いているため、延伸時の海島界面での剥離が生じにくく、高い変形倍率で延伸することが可能であり、高い生産性を確保することが出来る。
【0019】
横方向に延伸する場合には、テンターを用いて上記とほぼ同様な条件で延伸することが出来る。
また、上記の延伸方向(主延伸方向)とは直交する方向に2倍以下、さらには1.5倍以下で厚み斑の低減や屈折率の調整、延伸方向の調整、さらには生産性の向上などを目的とした延伸をすることもできる。
このように、実質的に1軸に延伸することで、フィルム平面と垂直な方向から見て楕円もしくは針状形態となり、その長軸方向を主延伸軸と揃えることが出来る。
【0020】
<光拡散型偏光反射フィルムの各種特性>
本発明では、キャストしたポリエステルフィルムを実質的に一軸延伸する際に、海相である共重合ポリエステル(A)では主延伸方向の屈折率の上昇を抑え、一方、島相であるポリエステル樹脂(B)では主延伸方向の屈折率が上昇するように製造する。そのために、本発明のフィルムは主延伸方向に平行な偏光は反射されやすく、主延伸方向に直交する偏光は透過し易いフィルムとなる。
本発明の光拡散型反射偏光フィルムの海相と島相の主延伸方向の屈折率差は0.12以上であることが好ましく、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.18以上、特に好ましくは0.20以上である。主延伸方向と直交する屈折率差は0.11以下であることが好ましく、さらには0.08以下、特には0.06以下であることが好ましい。
【0021】
本発明においては、上記の屈折率差になるように、海相成分の共重合ポリエステル(A)、島相成分のポリエステル樹脂(B)を選択し、更に延伸条件を決定する。
決定に際しては、海相成分の共重合ポリエステル(A)、島相成分のポリエステル樹脂(B)を各々単独で光拡散型反射偏光フィルムの製造で想定される条件と同様の条件で延伸フィルムを作製し、その測定値を使用することが出来る。単独では破断する様な高倍率の場合は、破断しない延伸倍率でデータを取り、外挿することで値を求めることができる。
【0022】
海相である共重合ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレートを主成分にした樹脂を使用する場合を例にすると、キャストフィルムの屈折率が1.56〜1.57であることが好ましい。この場合の屈折率は、キャストフィルムの長さ方向とそれと直交する方向の平均値である。また、複屈折(キャストフィルムの長さ方向とそれと直交する方向の屈折率差)が0.03以下であることが好ましく、より好ましい屈折率差は0.02以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。共重合ポリエステル(A)は、主延伸方向の屈折率が1.65以下が好ましく、より好ましくは1.63以下であり、さらに好ましくは1.61以下、特に好ましくは1.60以下である。下限は低い方が好ましいが現実的には1.57以上、さらには1.58以上である。主延伸方向と直交する方向の屈折率は1.55〜1.57が好ましい。
【0023】
ポリエステル樹脂(B)としてポリエチレンナフタレートを使用する場合を例にすると、キャストフィルムの屈折率は1.63〜1.65であることが好ましい。この場合の屈折率も、キャストフィルムの長さ方向とそれと直交する方向の平均値である。複屈折(キャストフィルムの長さ方向とそれと直交する方向の屈折率差)が0.03以下が好ましく、より好ましい屈折率差は0.02以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。
ポリエステル樹脂(B)は、主延伸方向の屈折率1.74以上が好ましく、より好ましくは1.77以上である。上限は高い方が好ましいが、現実的には1.88以下であり、さらには1.85以下であり、特には1.83以下である。主延伸方向と直交する方向の屈折率は1.60〜1.64が好ましく、さらには1.61〜1.63が好ましい。
【0024】
延伸後に得られたフィルムの偏光光線透過率は、P偏光光線透過率70%以上が好ましく、より好ましい透過率は80%以上であり、さらに好ましくは透過率90%以上である。上限は高い方がよいが、現実的には98%程度、特には95%程度である。
偏光光線反射率は、S偏光光線反射率40%以上が好ましく、より好ましくは、50%以上であり、さらに好ましくは、60%以上特に好ましくは70%以上である。上限は高い方がよいが、現実的には98%程度、特には95%程度である。P偏光光線透過率とS偏光光線反射率が向上することにより輝度も向上する。
【0025】
輝度は、偏光板のみの輝度を100%としている。一軸延伸で得られたフィルムを偏光板の下に挟みいれることで輝度向上する。輝度向上効果としては相対輝度で120%以上であることが好ましく、さらには130%以上、特には140%以上である。相対輝度の上限は理論上200%であるが、現実的には180%以下であり、さらには170%以下、特には160%以下である。
【0026】
フィルムの厚さは50〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは50〜500μmであり、さらに好ましくは75〜250μmである。
島相の大きさは、フィルムの厚み方向で0.01〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜1μmであり、さらに好ましくは0.1〜0.5μmである。
【0027】
該フィルム内の海島構造において島相の数は250以上が好ましく、よりに好ましくは、400以上であり、さらに好ましくは、625以上である。
該フィルムは界面数に対応して相対輝度も向上する。界面数は、溶融混練条件、海相と島相の比率と島相の大きさ、フィルムの厚さを調整することで達成可能である。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、それぞれの実施例、比較例でのサンプルの特性は、下記の方法により測定し、表1にまとめた。
【0029】
<ガラス転移温度>
JIS K 7121に記載の「プラスチックの転移温度測定方法」により、DSC測定を行った。樹脂10mgを、アルミパンに密封して300℃で3分間溶融し、液体窒素でクエンチしたものを用いた。測定器には示差走査熱量計(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6200DSC)を用い、乾燥窒素雰囲気下で実施した。室温より10℃/分の速さで加熱して中間点ガラス転移温度を求めた。
<極限粘度>
JIS K 7367−5に記載の「プラスチック−毛細管型粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方−」により、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(60/40;質量部)の混合溶媒を用いて、30℃で測定した。
<フィルムの厚み>
電子マイクロメーター(マール社製、ミリトロン1240)を用い、測定すべきフィルムの任意の4箇所より5cm角サンプル4枚を切り取り、一枚あたり各5点(計20点)測定して平均値を厚みとした。
【0030】
<海島構造の形態観察:島相の大きさ、数、長軸/短軸比、方位角の差>
得られたキャストフィルムから延伸方向と平行のフィルム断面のサンプル薄片を切り出し、オスミウムで染色した後、透過型電子顕微鏡で観察した。
フィルム薄片の中央部付近から無作為に50個の島相を選び出し、長軸方向で最大となる箇所の長さ(長軸)および長軸方向と直交する方向で最大となる箇所の長さ(短軸)の値を測定した。島相の厚み方向の大きさは短軸の長さの平均値を求めた。長軸/短軸比も50個の平均値とした。また、長軸とフィルムの流れ方向の角度を方位角として測定し、方位角の最大と最小の差を方位角の差とした。
厚み方向の島相の数は、フィルムの厚み方向に20〜50個の島相に渡る直線を引き、(島相の数/直線の長さ×フィルム厚み)の関係から算出した。10箇所の平均をとった。
【0031】
<屈折率>
アッベ屈折計を用い25℃で測定した。なお、海相となる共重合ポリエステル系樹脂(A)および島相となるポリエステル系樹脂(B)の屈折率データは、それぞれの樹脂単独で実施例1と同様の条件にて延伸フィルムを作製し、そのフィルムのデータである。
【0032】
<偏光光線透過率と偏光光線反射率>
測定は分光光度計(株式会社島津製作所製UV−3150)を用いた。積分球のサンプル光源、リファレンス光源の両方に市販の偏光板を設置し、作製したフィルムから切り出したサンプル片を偏光板と平行及び直角に設置し測定した。測定の波長範囲は、可視光線範囲の380〜800nmで実施した。フィルム上の5点の箇所からサンプル片を切り出して測定し、平均値を求めた。
【0033】
<輝度測定>
輝度計(株式会社トプコン製SR−3A)を用いて実施した。光源は、市販の液晶ディスプレイの冷陰管、反射板、導光板を使用した。導光板の上面に市販の偏光板を設置し、偏光板と導光板の間に作製したフィルムから切り出したサンプル片を挟み、光源全体を遮光板で覆い、遮光板中央部に1〜2mm径の穴を開けて、そこから出る光を輝度計の測定スポットが全て覆う様にして測定を実施した。フィルム上の5点の箇所からサンプル片を切り出して測定し、平均値を求めた。
【0034】
〔実施例1〕
海相となる共重合ポリエステル系樹脂(A)としてテレフタル酸100モル%、エチレングリコール70モル%、ネオペンチルグリコール(NPG)30モル%を共重合成分とした共重合ポリエステル(極限粘度0.67、ガラス転移温度68℃)を使用し、島相となるポリエステル系樹脂(B)としてポリエチレンナフタレート(PEN、極限粘度0.57、ガラス転移温度115℃)を使用した。組成比率は、該共重合ポリエステル(A):ポリエステル(B)=50:50の質量%とした。押出機PCM30(株式会社 池貝製二軸押出機)を用いて、フィード部温度250℃、コンプレッション部温度280℃、メータリング部温度280℃、ポリマーメルト配管温度280℃、口金温度は290℃とし、乾燥状態である該組成物を別々に押出機に定量供給装置にて供給し、スクリュー回転数20rpmで混練及び溶融押出した。冷却ロール温度は30℃で口金から出たポリマーが冷却ロールへ粘着すること無く、平滑性の良好なキャストフィルムができた。ドラフト比は1.5とした。フィルム断面観察から海島構造を形成しており、海相は該共重合ポリエステルであり、島相はPENであった。
得られたキャストフィルムを多段ロール延伸機を使用して縦延伸した。ロール表面温度は、予熱ロール100℃、延伸ロール135℃とした。縦延伸は6倍とした。フィルムの変形速度は15000%/分であった。
【0035】
〔実施例2〕
実施例1と同様の原料を用いたが、両樹脂を予め溶融混練し再度ペレット化したポリマーを使用した。他は実施例1と同様に行った。
【0036】
〔実施例3〕
実施例1と同様の原料を用いレジンブレンドし、単軸押出機を用いて、実施例1と同様の条件で実施した。但し、ダイの手前にフィードブロックを設置して8分割し、同じ樹脂組成の多層フィルムとした。
【0037】
〔実施例4〕
次に実施例2で使用した再度ペレット化したポリマーを用いて、実施例3記載のフィードブロックを用いた押出条件で実施した。
【0038】
〔実施例5〕
共重合ポリエステル(A):ポリエステル(B)=40:60の質量%とした以外は実施例3と同様にして実施した。
【0039】
〔実施例6〕
共重合ポリエステル(A):ポリエステル(B)=30:70の質量%とした以外は実施例4と同様にして実施した。
【0040】
〔実施例7〕
延伸倍率を4倍とした以外は実施例1と同様にして実施した。但し、キャスト膜の膜厚を調整し、延伸フィルムの膜厚が80μmとなるよう、吐出量を調整してキャスト膜の厚みを調整した。フィルムの変形速度は10000%/分であった。
【0041】
〔比較例1〕
海相となる成分としてホモのエチレンテレフタレート(PET)を用いた以外は実施例1と同様にして実施した。
〔比較例2〕
島相となるポリエステル樹脂としてPETを用いた以外は実施例1と同様にして実施した。エステル交換が起こったためか、界面は不明瞭で観察されなかった。
〔実施例8〕
海相となる共重合ポリエステル系樹脂(A)としてテレフタル酸100モル%、エチレングリコール70モル%、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)30モル%を共重合成分とした共重合ポリエステル(極限粘度0.65)を準備した。実施例1と同様の条件でCHDM30モル共重合ポリエステル単独のキャストフィルム、および延伸フィルムを作製し、屈折率を測定したところ、キャストフィルム屈折率1.557,複屈折0.001、延伸フィルムの主延伸方向屈折率1.590、延伸フィルムの直交方向屈折率1.555であった。
この結果から、CHDM30モル共重合ポリエステルを海相成分とし、PENを島相成分として実施例1と同様に延伸フィルムを作製した場合、実施例1と同様に高い輝度向上効果の得られるフィルムが作製できる。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、2種以上のポリエステル系樹脂を使用して、より安価で生産性良く輝度向上が可能なフィルムを製造できる。したがって本発明の光拡散型反射偏光フィルムは、液晶表示パネルや照明器具に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海相の共重合ポリエステル樹脂(A)及び島相のポリエステル樹脂(B)からなる海島構造を有するフィルムであって、島相がフィルムの平面と垂直な方向から見て楕円状もしくは針状の形態であり、楕円もしくは針状の形態の長軸の方向が一方向に揃っていることを特徴とする光拡散型反射偏光フィルム。
【請求項2】
海相の共重合ポリエステル樹脂(A)がネオペンチルグリコール成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分及びイソフタル酸成分のいずれか少なくとも一種を共重合成分としたエチレンテレフタレートを主成分とし、ことを特徴とする請求項1に記載の光拡散型反射偏光フィルム。
【請求項3】
島相のポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光拡散型反射偏光フィルム。
【請求項4】
海相と島相の比率は、島相が5〜90質量%であり、海相が10〜95質量%の範囲からなる請求項1〜3いずれかに記載の光拡散型反射偏光フィルム。
【請求項5】
海島構造を形成するフィルムは、厚さ当りの島相の数が100〜1000であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の光拡散型反射偏光フィルム。
【請求項6】
島相の大きさは、厚み方向に0.01〜1μmの範囲であることを特徴とした請求項1〜5いずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
S偏光光線反射率が40〜95%であり、P偏光光線透過率は70〜95%であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の光拡散型反射偏光フィルム。
【請求項8】
共重合ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を溶融混練した後、フィルム状に溶融押出して固化し、共重合ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)のガラス転移点温度のいずれか高い方のガラス転移温度+5〜+40℃の温度でフィルムの長手方向又は幅方向のいずれか一方向に倍率3.0〜7.0倍に延伸することを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の光拡散型反射偏光フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−243826(P2010−243826A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92874(P2009−92874)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】