説明

光拡散性接着剤

【課題】後方散乱の低い、光拡散性の良好な光拡散性接着剤を提供する。
【解決手段】母材と微粒子間の屈折率差の絶対値、すなわち|n1−n2|が0より大きく通常は0.01から0.2の範囲にある屈折率n2を持つ有機重合体微粒子を充填した屈折率n1を持つ感圧接着剤母材の混合物を含有する光拡散性接着剤。固形分に基づく母材の微粒子に対する重量比は約1:1から約50:1、好ましくは約4:1から約25:1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は光拡散性材料に関し、特に後方散乱の低い、光拡散性の良好な光拡散性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや背面映写スクリーンのような情報ディスプレイにおいてはその効率的なオペレーションと強化された判読率は、しばしば光拡散光学構造に依存している。このような光拡散構造は前方散乱光の強度を大きく損失させずに光源から前方へ光を散乱することにより、これらのディスプレイにおいて重要な役割を果たしている。この高い透過率を持つ散乱光により、光源に向かって散乱、あるいは反射された入射光量が減少するので、これらのディスプレイは望ましいバックグラウンド輝度を持つ。このような「後方散乱」光の除去あるいは制限が、これらの光拡散構造を設計する上でのキーファクターである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光拡散構造の設計における1つのアプローチは、硬い透明、あるいは半透明のプラスチックフィルムに粒子を充填するか、あるいは埋め込むことである。適正な大きさを持って調製され、プラスチックフィルムと共にフォーミュレートされる時、これらの粒子は入射光を散乱し拡散することができる。しかしながら、粒子によっては、使用すると入射光の全体的な輝度あるいは透過率を減じるような、ある種の望ましくない、有害な光学的効果をもたらすものもある。例えば、酸化チタン粉末のようなある種の無機粒子、あるいはあまりにも小さい粒子(すなわち、入射光の波長オーダー)が光拡散構造で使用されると、高レベルの後方散乱のために輝度における大きな損失が生じることがある。逆に、入射光の波長に比して大直径を持つ粒子、および/または粒子の屈折率が連続プラスチックフィルムと同一であるか、あるいは極めて類似している場合は光拡散が殆ど起こらない。
【0004】
さらに、粒子充填プラスチックフィルムの中には、光拡散層としては効率的であるけれども、フィルムを通る光の極性を変えるものもある。いくつかの構造、例えば液晶ディスプレイでは、光拡散フィルムあるいは要素により、大きな光の偏光解消があればそれは画像品質の損失をもたらすことになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単に述べれば、本発明の1つの局面において、屈折率n2を持つ有機重合体微粒子を充填した屈折率n1を持つ感圧接着剤母材の混合物を含有する光拡散性接着剤を提供するが、ここで母材と微粒子の屈折率差の絶対値、すなわち、|n1−n2|はゼロより大きく、通常0.01から0.2の範囲である。母材の微粒子に対する重量比は、固形分基準で、約1:1から約50:1、好ましくは約4:1から約25:1である。
【0006】
好都合なことに、この接着剤母材は水性でも溶媒性でもよいので、光学的性能をコントロールする上で接着剤をより柔軟に選択できる。さらに、接着剤母材はフィルム形成性でも微小球ベースのものであってもよい。本発明で使われる光拡散性微粒子はいろいろな重合方法を使って製造することができ、ユーザーには、微粒子の大きさ、組成、モフォロジーおよび全体的な特性をコントロールするための多くの機会が与えられている。
【0007】
さらに、粒子サイズ、粒子組成、屈折率、粒子充填量と他の特性との適切なバランスおよびパラメーターを調整することによって、意図する最終用途に従って光拡散性特性を調節できる。本発明はまた、他の偏光フィルム、反射基板あるいは他の光学部品へのかかる光拡散性接着剤の添付あるいは接着も提供する。これらの光拡散性材料は接着性であるので、光マネージメントデバイスの光学性能に害となりうる、基板への表面アタッチメントのためのラミネート用あるいはボンディング用にさらに接着剤層を使用する必要はない。また本発明はただ光を拡散するだけではなく、さらに柔軟である材料を供給する。
【0008】
都合のよいことに、本発明の光拡散性接着剤は、入射光を大きく後方散乱したり、あるいは透過光を偏光解消したりすることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の光拡散性接着剤は屈折率n2を持つ有機ポリマー微粒子を充填した屈折率がn1の感圧接着剤母材混合物を含有するものであり、ここで母材と微粒子の屈折率差の絶対値、|n1−n2|はゼロより大きく、通常0.01から0.2の範囲である。
【0010】
母材対微粒子の重量比は、固形分基準で、約1:1から約50:1、好ましくは約4:1から約25:1である。多くのファクターが本発明の接着剤の光拡散特性に影響を与えるが、微粒子に対する母材の比率は重要なファクターである。一般に、微粒子に対する母材の比率が大きすぎると、十分に入射光を拡散するためには粒子の濃度が不十分となり、より厚いフィルムが必要となる。一方、微粒子濃度が母材の50%を越えると、輝度と透過率が悪化する。
【0011】
接着剤の光拡散特性に影響を与える他のファクターには、例えば、微粒子の大きさ、母材と微粒子間の屈折率差、母材と微粒子間の屈折率のこう配、基板上に塗布し、乾燥した時の光拡散性接着剤の厚さ、そして結晶化度、有機物としての、あるいは無機物としての特徴、吸着特性などの微粒子成分の本質的な特性がある。
【0012】
この光拡散性接着剤層で光学的性質を得るためには、感圧接着剤母材の屈折率(n1)と微粒子充填剤の屈折率(n2)間の差の絶対値はゼロより大きく、通常0.01から0.2の範囲である。これらの成分の屈折率の値は、標準屈折率測定法(例えばASTMテスト法D542に従ってAbbe屈折計を使うなど)により直接得ることができるが、より都合よくは、種々の表にまとめられた重合体材料の屈折率データ(例えば重合体ハンドブック第三版、New York,John Wiley & Sons、1989年、pp.VI/451−VI/461)を参照することにより得られる。
【0013】
この屈折率差の絶対値がゼロに近づくと、拡散性の悪いまたは非拡散の透明なあるいは殆ど透明な複合体が結果として生じる。この不十分な屈折率の差は、添加する粒子を増加することおよび/または接着層の厚さを増加することによって解決できることもある。しかしながら、これらの調整処置は接着層の輝度の減少という結果をもたらすこともある。
【0014】
接着層は本来光拡散性である。すなわち、接着層は入射光線を曲げ、それでもなおまだ接着層透過後に高レベルの透過率(一般に入射強度の約80%を超え、好ましくは約85%から約95%、最も好ましくは約90%から約95%)を保つことができる。さらに、これら接着剤の後方散乱は、典型的には約20%未満、好ましくは約1%から約10%の範囲である。
【0015】
一般に、光拡散性材料は光源から前方へ一様に光を散乱する能力をもっている。散乱光の均質性はそのベンドアングルによって測定されるが、ここで「ベンドアングル」とは利得が軸上の値の1/3に低下する視角のことである。ベンドアングルが大きいほど、散乱光の均一性が増す。しかしながら、通常ベンドアングルの高さは輝度(視感透過率)を犠牲にする。逆に、視感透過率における損失は極端な後方散乱光のせいであるともいえる。したがって、光拡散性材料の最適化は粒子濃度、屈折率差、拡散剤の厚さと粒子サイズ間のバランスに依存する。
【0016】
感圧接着剤母材は室温、例えば、20℃から22℃、で乾燥粘着性を持つ接着剤材料と定義され、指あるいは手で押す以上の圧力を加えることなく接触するだけで様々な異なる表面にしっかりと接着し、十分に密着性および弾性を持つため、その乾燥粘着性にもかかわらず、指で取り扱うことができ、そして残留物を残さずに滑らかな表面から取り除くことができる(感圧テープ評議会テスト方法、1985、5ページ)。かかる接着剤は本質的に粘着性のものであっても、また相溶性の粘着性付与樹脂を配合した弾性材料であってもよい。さらに、これらの接着剤母材はフィルム形成性の組成物であってもまた粘着性微小球であってよい。感圧接着剤母材は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合およびバルク重合を含むさまざまな重合方法によって形成できる。有用な感圧接着剤母材組成物としては、(メタ)アクリレート類、粘着性付与シリコーン類、粘着性付与スチレン−イソプレンあるいは粘着性付与スチレン−ブタジエンブロック共重合体をあげることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0017】
一つの好ましい種類の感圧接着剤は、フィルム形成性(メタ)アクリレート組成物であり、これは入手が楽であること、製造およびフォーミュレーションが簡単であること、より優れた光学的性質と安定性を持つことなどによる。母材の選択において考慮することは、この母材と微粒子との相溶性である。例えば、水を媒体とする(メタ)アクリルエマルジョンあるいはラテックスを含有する母材は、懸濁あるいはエマルジョン法によって製造した水ベースの微粒子に対して特に相溶性がある。同様に、溶媒を媒体とする母材は非水性の媒体から製造した微粒子と、より高い相溶性をもつ傾向がある。
【0018】
もう1つの好ましい種類の感圧接着剤母材は、直径が約0.5μmから約150μm、好ましくは約1μmから約70μm、最も好ましくは約2μmから約30μmである感圧接着剤微小球である。このような微小球母材は懸濁、分散、直接エマルジョンおよび修正エマルジョン法によって製造できる。好ましくは、感圧接着剤微小球母材は例えば、米国特許第3,691,140号(Silver);第4,166,152号(Baker et al.); 第4,495,318号(Howard);第4,786,696号(Bohnel);第4,988,467号(Delgado);第5,045,569号(Delgado);およびPCT出願No.WO94/13751(Delgado et al.)に記載の懸濁重合法にしたがって製造される。
【0019】
好ましい懸濁重合法では、有機重合体微小球は、まず例えば、メタクリレートモノマーなどの疎水性モノマーと油溶性開始剤を含有する油相が、少なくとも一つの当業者に知られている表面活性剤のような表面活性剤や懸濁材安定剤を含有する水性媒体中に含まれている水中油型エマルジョンを形成することによって製造される。これらの懸濁重合プロセスは他の遊離基反応的な開始材料を含んでもよく、通常はいろいろな乳化剤、安定剤、界面活性剤の存在下で、および/または微小球の形成を誘発しその凝固を防ぐ特定のプロセス条件のもとで行われる。都合のよいことに、微小球の母材を微粒子と組み合わせると位置変更の可能な光拡散性接着剤を形成できる。
【0020】
好ましい感圧接着剤母材フォーミュレーションは通常アルキル(メタ)アクリレートモノマー類から供給される。特に好ましいモノマーは非第三アルキルアルコール類の単官能性不飽和(メタ)アクリレートエステル類である。これらのアルコール類のアルキル基は通常4から14個の、好ましくは4から10個の炭素原子を含んでいる。これらの(メタ)アクリレートエステル類のホモポリマーは一般に約10℃未満のガラス遷移温度を持っている。
【0021】
有用なモノマーの例としては、s−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、およびその混合物があげられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0022】
その結果生じる重合体が、約10℃未満のガラス転移温度と、適切な感圧接着性と光学的性質を持つかぎりにおいて、得られるホモポリマーが約−20から0℃を上回るガラス遷移温度を持つt−(メタ)アクリレートあるいは他のビニルモノマー、例えばエチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ブチルメタアクリレート、ビニルアセテート、アクリロニトリルなどを(メタ)アクリレートモノマー類の1つあるいはそれ以上と共に使用してもよい。
【0023】
遊離基重合可能な極性モノマーもまた本発明の母材において有用である。これらの極性モノマーはやや油溶性であり、かつ水溶性である。適した極性モノマーの代表的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、スルホエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリジノン、t−ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、およびメタクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム、トリメチルアミンp−ビニルベンズイミド、4,4,9−トリメチル−4−アゾニア−7−オキソ−8−オキサ−デス−9−エン−1−スルホネート、N,N−ジメチル−N−(ベータ−メタクリロキシ−エチル)アンモニウムプロピオネートベタイン、トリメチルアミンメタクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミンメタクリルイミド、その混合物などのイオン性モノマーからなる群から選択されるものがあげられるが、これらに制限されるわけではない。好ましい極性モノマーとしては、モノオレフィン性モノカルボン酸、モノオレフィン性ジカルボン酸、アクリルアミド、N−置換アクリルアミド類、その塩およびその混合からなる群から選択される物が含まれる。かかる好ましい極性モノマーの例としては、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、N−ビニルピロリドンとその混合物からなる群から選択されるものをあげることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
これらの接着剤母材は架橋されていても、されていなくてもよい。好ましい(メタ)アクリレート母材は多官能性架橋剤を使って架橋することができる。有用な多官能性架橋剤にはブタンジオールジアクリレートのようなジオール類のアクリル酸あるいはメタクリル酸エステル類、グリセリンのようなトリオール類およびペンタエリトリトールのようなテトロール類からなる群から選択される物をあげることができるが、これらに限定されるわけではない。その他の有用な架橋剤には、置換あるいは未置換のジビニルベンゼンなどのポリビニル架橋剤およびEbecryl270(商標)とEbecryl230(商標)(それぞれ重量平均分子量1500と、重量平均分子量5000のアクリル化ウレタンであり、共にRadcure Specialties製)およびその混合物などの二官能性ウレタンアクリレートからなる群から選択される物をあげることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0025】
架橋剤は使用に際し、既知の用途および感圧接着性の保持に応じたレベルで添加される。考慮されるファクターには、架橋剤の分子量、多官能度、架橋剤濃度などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。また別法としては、架橋は、ガンマ線あるいは電子線放射のような、適切なエネルギー源へさらすことによって生じる。
【0026】
本発明の光拡散性接着剤の微粒子は重合体であって懸濁重合、分散重合、直接乳化重合および修正乳化重合などの、多数の既知の技法によって製造することができる。微粒子は通常約0.5μmから約30μm、好ましくは約1μmから約15μm、最も好ましくは約2μmから約10μmの直径を持っている。
【0027】
典型的に約1.46から約1.48の屈折率を持つ好ましいアクリレート感圧接着剤母材との屈折率差を満たすためには、これより幾分低い、あるいは高い屈折率を持つ有機重合体の微粒子が必要不可欠である。これらの好ましいアクリレート感圧接着剤母材より十分に低い屈折率を持っている微粒子はフッ化アクリレートあるいはメタアクリレートモノマーから製造することができる。このようなフッ化(メタ)アクリレートモノマーは、これらのモノマーのフルオロアルキル置換基の鎖の長さおよび/または枝分れ度に応じて、約1.34から約1.44の範囲の屈折率を持つポリマーを形成する。有用なフッ化アクリレートあるいはメタクリレートモノマーの例としては、ペンタデカフルオロオクチルアクリレート、ウナデカフルオロヘキシルアクリレート、ノナフルオロペンチルアクリレート、ヘプタフルオロブチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ペンタフルオロプロピルアクリレート、トリフルオロアクリレート、トリイソフルオロイソプロピルメタクリレートおよびトリフルオロエチルメタクリレートをあげることができる。逆に、これらの好ましいアクリレート感圧接着剤母材より十分高い屈折率を持っている微粒子は、好ましくは脂環式、置換脂環式、芳香族、あるいは置換芳香族置換基を持つ遊離基重合可能なモノマーから製造することができる。かかる遊離基重合可能なモノマーのホモポリマーは一般に約1.49から約1.63の範囲の屈折率を持つ。有用な遊離基重合可能なモノマーの例を上げると、3−メチルシクロヘキシルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、1−メチルシクロヘキシルメタクリレート、2−クロロシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシメタクリレート、ポリフェニルメタクリレート、α−メチルスチレン、スチレン、ビニルネオノネート、ハロゲン化メタクリレート類、2−クロロシクロヘキシルメタクリレート、2−ブロモエチルメタクリレートなどがある。
【0028】
これらの微粒子は架橋されていてもされてなくてもよい。好ましい(メタ)アクリレート微粒子は多官能性の架橋剤を使って架橋できる。有用な多官能性架橋剤には、ブタンジオールジアクリレートのようなジオール類のアクリルあるいはメタクリルエステル、グリセリンのようなトリオール類とペンタエリトリトールのようなテトロール類から成る群から選択されるものをあげることができるが、これらに限定されるわけではない。他の有用な架橋剤には置換、および未置換のジビニルベンゼンのようなポリビニル架橋剤、Ebecryl270(商標)やEbecryl230(商標)(それぞれ重量平均分子量1500と重量平均分子量5000のアクリル化ウレタンであり、共にRadcure Specialties製)およびその混合物などの二官能製ウレタンアクリレートからなる群から選択されるものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。架橋剤は使用に際し、既知の用途および感圧接着性の保持に応じたレベルで添加される。考慮されるファクターには、架橋剤の分子量、多官能度、架橋剤濃度などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。また別法としては、架橋は、ガンマ線あるいは電子線放射のような、適切なエネルギー源へさらすことによって生じる。
【0029】
感圧接着剤母材はナイフコーティングあるいはメイヤーバーコーティングあるいは押し出しダイを使用するなど従来の塗布技法を用いて、適当な可撓性のあるいは非可撓性のバッキング材料の上に塗布できる。
【0030】
水性、あるいは溶媒ベースのコーティングのために適したバッキング材料としては、紙、プラスチックフィルム、酢酸セルロース、エチルセルロース、合成、あるいは天然材料から作られた織布あるいは不織布、金属、メタライズされたポリマーフィルム、セラミックシート材などからなる群から選択される物があるが、これらに限定されるわけではない。プライマーあるいはバインダーをその上に使用してもよい。
【0031】
光拡散性接着剤の感圧接着性は粘着性付与樹脂および/または可塑剤の添加によって変えることができる。また着色剤、水酸化ナトリウムなどの中和剤や充填剤、安定剤、および種々の重合体添加剤などの種々の他の成分を含有することも本発明の範囲に含まれる。これらの追加成分はこれらの成分の周知の使用と一致した量で感圧接着剤母材に加えられる。
【0032】
本発明の光拡散性接着剤を適当なバッキング材および基板と共に使用することにより、いろいろな光学素子を得ることができる。このような素子にはサインボード、照明カバー、パーティション、装飾用フィルム、背面映写スクリーン用フィルム、コンフォーマブルフィルム、天窓などがあるが、これらに限定されるわけではない。前述の物品リストは決して網羅的なものではなく、本発明の範疇を制限すると解釈されるべきではない。
【0033】
本発明の目的および利点がさらに下記の実施例によって示されるが、これらの例で述べた特定の材料とその量は、他の条件や細部と同様に不当に本発明を制限すると解釈されるべきではない。そうでない旨が述べられているか、明らかである場合を除き、すべての材料は市販されているか、または当業者に知られたものである。
【実施例】
【0034】
テスト方法
ベンドアングル
光拡散性接着剤によって起こされる軸上の利得の減衰と角伝搬をHeNe レーザーを透過型配置で使用して測定した。25ミリの口径を持つBeamscanスキャニングシステムを検出器として用い、垂直面内で散乱する光線を走査した。ベンドアングルは利得が軸上の値の1/3に低下する視角であると定義される。
【0035】
視感透過率
光拡散性接着剤層の視感透過率をPerkin-Elmer Lambda-19分光光度計を透過モードで使用して測定した。
【0036】
偏光解消
光拡散性接着剤の偏光解消能力を一つの二色性偏光子を光線入射スリットに置き、他のシートを光線が集められる積分球の直前においたPerkin-Elmer Lambda-19分光光度計を使用して測定した。光拡散性接着剤は直交させた偏光子の間に置いた。もし光拡散性接着剤が光の偏光状態に影響を与えるなら、透過度の増加が観察されるはずである。可視範囲(400−700nm)にわたる全吸光率からの平均偏差を報告する。
【0037】
後方散乱
光拡散接着剤における後方散乱特性をPerkin-Elmer Lambda-19分光光度計で調べた。サンプルは反射モードに設置し、黒色のバッキングを後ろに置いて透過光を吸収させた。積分球を使用して鏡面反射と拡散反射の両方を測定した。表面反射は報告値から差し引いてある。後方散乱光は可視範囲(400−700nm)にわたり、波長の関数として測定した。その平均偏差を報告する。
【0038】
屈折率
Metriconプリズムカプラーを使用し、632.8nmの波長においてこれらの接着剤の屈折率を決定した。屈折率はx,yおよびz方向で測定されたが、すべての方向で同一であることがわかった。
【0039】
有機重合体微粒子の製造
実施例1
懸濁重合法による水性ポリ(スチレン)粒子の製造 6gのStandapol A(商標、Hercules社から市販されているラウリル硫酸アンモニウム)および3グラムのポリ(ビニルアルコール)を240gの脱イオン水に溶解した。2グラムのLucidol75(商標、Elf Atochem製75%の過酸化ベンゾイル)を150gのスチレンに溶かし上記の水性混合物に加えた。上記の混合物を、スチレンモノマーの小滴の大きさが1ミクロン以下になるようにGaulinホモジナイザーで乳化した。このエマルジョンをついで1リットルの反応器に入れ、300rpmで撹拌し、そして70℃で16時間加熱した。得られた粒子の大きさは、光学顕微鏡で見ると、およそ2μmであって、屈折率は1.59であった。
【0040】
実施例1A 懸濁重合法による水性ポリ(NEO−9)粒子の製造
7gのStandapol A(商標、Hercules社から市販されているラウリル硫酸アンモニウム)および1gのポリ(ビニルアルコール)を390gの脱イオン水に溶解した。1gのラウリルペルオキシド、2.1gのアクリル酸および2.1gの1,6ヘキサンジオールジアクリレートを205.8gのビニルネオノネート(ユニオンカーバイド社から「NEO−9」の商品名で市販されている)に溶解し、ついで上記の水性混合物に加えた。上記の混合物を、スチレンモノマーの小滴の大きさが1μm以下になるようにGaulinホモジナイザーで乳化した。このエマルジョンをついで0.5リットルの反応器に入れ、300rpmで撹拌し、60℃で8時間加熱した。得られた粒子の大きさは、光学顕微鏡で見ると、およそ2μmであって、屈折率は1.49であった。
【0041】
実施例1B
懸濁重合法による水性ポリ(ベンジルメタクリレート)粒子の製造
5gのStandapol A(商標、Hercules社から市販されているラウリル硫酸アンモニウム)および1.5gのPVP−K90(GAFより市販されているポリ(ビニルピロリドン))を480gの脱イオン水に溶解した。0.47gのラウリルペルオキシドを128gのベンジルメタクリレートに溶解し、ついで上記の水性混合物に加えた。上記の混合物を、スチレンモノマーの小滴の大きさが1ミクロン以下になるようにGaulinホモジナイザーで乳化した。このエマルジョンをついで1リットルの反応器に入れ、300rpmで撹拌し、そして65℃で5時間加熱した。得られた粒子の大きさは、光学顕微鏡で見ると、およそ2μmであって、屈折率は1.57であった。
【0042】
実施例2 分散重合法による溶媒性ポリ(スチレン)粒子の製造
9gのPVP−K15(GAF社より市販されているポリ(ビニルピロリドン)安定剤)および1.5gのAersolOT100(商標、Aerican Cyanamidより市販されているジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)を195gのエタノールに溶解した。2.1gのVazo64(商標デュポン製2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))および1.05gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを105gのスチレンに溶解した。この二つの混合物を合わせ、0.5リットルの反応器に加えて、250rpmで撹拌し、そして70℃で16時間加熱した。得られた粒子の大きさは、光学顕微鏡で見ると、およそ9μmであって、屈折率は1.59であった。
【0043】
下記の表1に光拡散性粒子の屈折率をまとめる。
【0044】
【表1】

【0045】
感圧接着剤母材微小球の製造
実施例3 懸濁重合法による感圧接着剤母材微小球の製造
1gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムと2.4gのスチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)を360gの脱イオン水に溶解した。7.2gのポリ(エチレンオキサイド)16アクリレート(PEO)と1.05gのLucidol75(商標、Elf Atochem製75%の過酸化ベンゾイル)を230.4gのイソオクチルアクリレート(IOA)に溶解した。上記混合物を、小滴の大きさが1μm以下になるようにGaulinホモジナイザーで乳化した。このエマルジョンをついで1リットルの反応器に入れ、400rpmで撹拌し、65℃で4時間加熱した。この96/3/1 IOA/PEO/NaSSから生じる粒子は、光学顕微鏡で観察したところ、およそ2μmの大きさで、屈折率は1.47であった。
【0046】
実施例4 懸濁重合法による感圧接着剤母材微小球の製造
実施例3に従い、重量比97/2/2 IOA/PEO/AAのアクリル酸(AA)含有微小球を製造した。得られた微小球は、光学顕微鏡で観察したところ、およそ2μmの大きさで、屈折率は1.47であった。
【0047】
実施例5 懸濁重合法による感圧接着剤母材微小球の製造
実施例3に従い、重量比96/2/2 IOA/PEO/HBAのヒドロキシブチルアクリレート(HBA)含有微小球を製造した。得られた微小球は、光学顕微鏡で観察したところ、およそ2μmの大きさで、屈折率は1.469であった。
【0048】
市販されている感圧接着剤母材
表2に以下の実施例で使用したアクリルエマルジョン感圧接着剤母材の商品名、供給元および屈折率をまとめる。
【0049】
【表2】

【0050】
実施例6−9
ポリ(スチレン)微粒子と組み合わせたアクリル性エマルジョン感圧接着剤母材を使用する光拡散性接着剤組成物 実施例1の有機重合体微粒子10重量%に数種類のアクリル性エマルジョン感圧接着剤母材を混合し、一連の光拡散性接着剤組成物を製造した。混合した後、光拡散性接着剤組成物を4mil(ウエット)の厚みでPET上に塗布し、60℃で10分間乾燥した。乾燥後、光拡散性接着剤組成物の視感透過率、ベンドアングル、後方散乱および偏光解消を上記のように測定し、これらの測定の結果を表3aと表3bに報告する。
【0051】
【表3】

【0052】
実施例10−13および比較例C−1
微小球感圧接着剤母材とポリ(スチレン)微粒子を組み合わせて使用した光拡散性接着剤組成物 実施例10−13は実施例1の有機重合体微粒子を実施例3の感圧接着剤微小球を含有する母材中にさまざまな重量比で混合して使用する例を示す。微粒子/母材混合物は、実施例6-9で記載したように混合、塗布および乾燥され、光拡散性接着剤組成物の視感透過率、ベンドアングル、後方散乱および偏光解消を上記に記載のように測定した。これらの測定の結果と実施例3の微小球母材のみを含有する被覆に対して同様に行った測定結果(比較例C1)を表4aと表4bに報告する。
【0053】
【表4】

【0054】
実施例14−16および比較例C−2−C−4 種々の有機重合体微粒子と組み合わせて微小球感圧接着剤母材を使用した光拡散性接着剤組成物
実施例14−16は実施例1、1A、および1Bの有機重合体微粒子を実施例3−5の感圧接着剤微小球を含有する母材中にさまざまな重量比で混合して使用した例を示す。微粒子/母材混合物は実施例6−9で記載したように混合、塗布および乾燥され、光拡散接着剤組成物の視感透過、ベンドアングル、後方散乱および偏光解消を上記に記載のように測定した。これらの測定の結果と実施例3−5の微小球母材のみを含有する被覆に対して同様に測定を行った結果(比較例C2−C4)を表5aと表5bに報告する。
【0055】
【表5】

【0056】
実施例17−19と比較例C5−C7 有機重合体微粒子および無機重合体微粒子と組み合わせた溶媒性アクリル感圧接着剤母材を使用する光拡散性接着剤組成物
この一連の実施例は、無機粒子(二酸化チタン)の使用により、有機重合体微粒子を使用した場合に比べ、得られた光拡散性接着剤組成物において全吸光率(偏光解消)と後方散乱においてより高い偏差が生じたことを示すものである。光拡散性接着剤を実施例2の分散重合ポリ(スチレン)粒子とAshland Chemicalsから市販されている、屈折率1.468の溶媒ベースのアクリル性感圧接着剤であるAroset1085(商標、感圧接着剤母材)に3つの異なる粒子濃度で加えた二酸化チタン粒子とから製造した。微粒子/母材混合物は混合物をリリースライナー上に塗布したことを除き実施例6−9で記載したように混合、塗布および乾燥した。乾燥後、光拡散性接着剤組成物の後方散乱および偏光解消を上に記載したように測定した。これらの測定結果を表6に報告する。
【0057】
【表6】

【0058】
本発明の範囲と原則から外れることなく、本発明の種々の修正および変更が可能であることが当業者には明白であろう。本発明は、上記に明らかにされた例示的実施例に不当に限定されるものではないことを理解されたい。すべての出版物と特許は、あたかも各出版物あるいは特許がそれぞれとりたてて、また個別に、参照として含められていると明記されている場合と同程度に、ここに参照として含められている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
|n1-n2|がゼロより大きくなるように屈折率n2を持つ有機重合体微粒子を充填した屈折率n1を持つ感圧接着剤母材を含有する光拡散性接着剤。
【請求項2】
|n1-n2|が0.01から0.2の範囲にある請求項1記載の光拡散性接着剤。
【請求項3】
固形分基準で有機重合体微粒子に対する感圧接着剤母材の重量比が1:1から50:1である混合物から前記接着剤が構成されている請求項1記載の光拡散性接着剤。
【請求項4】
固形分基準で有機重合体微粒子に対する感圧接着剤母材の重量比が4:1から25:1である混合物から前記接着剤が構成されている請求項3記載の光拡散性接着剤。
【請求項5】
前記感圧接着剤母材がフィルム形成性あるいは感圧微小球ベースの組成物である請求項1記載の光拡散性接着剤。
【請求項6】
前記フィルム形成性感圧接着剤母材が(メタ)アクリレート組成物、粘着性付与シリコーン、粘着性付与スチレン−イソプレンあるいは粘着性付与スチレン−ブタジエンブロック共重合体である請求項5記載の光拡散性接着剤。
【請求項7】
前記感圧接着剤母材が0.5μmから150μmの直径を持つ感圧接着剤微小球である請求項5記載の光拡散性接着剤。
【請求項8】
前記感圧接着剤母材が非第三アルキルアルコール類のアルキル(メタ)アクリレートエステル類から供給されるポリマーであり、ここでアルコール類のアルキル基が4から14個の炭素原子を含んでいる請求項6記載の光拡散性接着剤。
【請求項9】
前記非第三アルキルアルコール類のアルキル(メタ)アクリレートエステル類がイソオクチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートあるいはその混合物である請求項8記載の光拡散性接着剤。
【請求項10】
前記感圧接着剤母材が非第三アルキルアルコール類のアルキル(メタ)アクリレートエステル類から供給されるポリマーであり、ここでアルコール類のアルキル基が4から14個の炭素原子を含んでいる請求項7記載の光拡散性接着剤。
【請求項11】
前記非第三アルキルアルコール類のアルキル(メタ)アクリレートエステル類がイソオクチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートあるいはその混合物である請求項10記載の光拡散性接着剤。
【請求項12】
前記有機重合体微粒子が0.5μmから30μmの直径を持つ請求項1記載の光拡散性接着剤。
【請求項13】
前記有機重合体微粒子が、モノマーのフルオロアルキル置換基の鎖の長さおよび/または置換基の枝分れ度に応じて1.34から1.44の範囲の屈折率を持つフッ化アクリレートまたはメタクリレートモノマーから製造される請求項1記載の光拡散性接着剤。
【請求項14】
前記フッ化アクリレートまたはメタクリレートモノマーがペンタデカフルオロオクチルアクリレート、ウンデカフルオロヘキシルアクリレート、ノナフルオロペンチルアクリレート、ヘプタフルオロブチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ペンタフルオロプロピルアクリレート、トリフルオロアクリレート、トリイソフルオロイソプロピルメタクリレート、あるいはトリフルオロエチルメタクリレートである請求項13記載の光拡散性接着剤。
【請求項15】
前記有機重合体微粒子が脂環式、置換脂環式、芳香族、あるいは置換芳香族置換基を持つ、遊離基重合可能なモノマーから製造され、1.49から1.63の範囲の屈折率を持つ請求項1記載の光拡散性接着剤。
【請求項16】
前記遊離基重合可能なモノマーが3−メチルシクロヘキシルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、1−メチルシクロヘキシルメタクリレート、2−クロロシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシメタクリレート、ポリフェニルメタクリレート、α−メチルスチレン、スチレン、ビニルネオノネート、ハロゲン化メタクリレート類、2−クロロシクロヘキシルメタクリレート、2−ブロモエチルメタクリレートあるいはその混合物である請求項15記載の光拡散性接着剤。
【請求項17】
請求項1記載の光拡散性接着剤を含有する光学デバイス。
【請求項18】
バッキング材料が請求項1の光拡散性接着剤の連続あるいは不連続層により少なくとも一つの主要な表面に被覆されている、バッキング材料を含有する光学デバイス。
【請求項19】
前記のバッキング材が適合性のある、あるいは柔軟なフィルムである請求項18記載の光学デバイス。
【請求項20】
前記の光拡散性接着剤が背面映写スクリーン用のフィルムの片面あるいは両面に適用されている光学デバイス。

【公開番号】特開2008−208378(P2008−208378A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121550(P2008−121550)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【分割の表示】特願平9−504450の分割
【原出願日】平成8年6月3日(1996.6.3)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】