説明

光拡散板、面光源装置、液晶表示装置および表面形状転写樹脂シートの製造方法

【課題】 良好な透光性を維持しつつ、見る角度に関係なく照明斑が抑制された光拡散板、面光源装置および液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】 直線状に延び、互いに平行に隣接配置された複数の半円凸部16を基材層13側の主面15に有し、微細な凹凸19を背面層14側の主面18に有し、微細な凹凸19を通過して入射された光を半円凸部16により拡散させる、透光性樹脂からなる積層樹脂板9であって、内部ヘイズが0〜10%であり、かつ、微細な凹凸19に基づく外部ヘイズが20〜70%である積層樹脂板9を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散板、光拡散板が備えられた面光源装置および液晶表示装置、ならびに光拡散板を作製可能な表面形状転写樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイの照射方式として、例えば、液晶パネル直下から複数本の冷陰極管により照射する「直下型」が知られている。
直下型液晶ディスプレイでは、光源である冷陰極管が液晶パネルの直下に配置されるため、画面を通して光源のイメージ(ランプムラ)が見えるおそれがある。そこで、ランプムラを解消するために、液晶パネルと光源との間には、光拡散板が設置される。
【0003】
そのような光拡散板として、例えば、アクリル樹脂とシリコーン微粒子との混合樹脂を押出成形することによって製造され、ヘイズが92%の拡散板が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−102066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、ランプムラの濃淡は、液晶ディスプレイを見る角度(見る位置)の変化に伴って変化する。そのため、液晶ディスプレイを正面から見たときにランプムラが見えなくても、液晶ディスプレイを斜めから見たときにランプムラが見える場合がある。
そこで、光拡散板を厚くすることにより、液晶ディスプレイを見る角度に関係なくランプムラを解消することが考えられる。しかし、光拡散板が厚いと、光拡散板の透光性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、良好な透光性を維持しつつ、見る角度に関係なく照明斑が抑制された光拡散板、面光源装置および液晶表示装置を提供することである。
また、本発明の別の目的は、良好な透光性を維持しつつ、見る角度に関係なく照明斑が抑制された光拡散板を作製することができる表面形状転写樹脂シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の光拡散板は、微細な凹凸を一方の主面に有し、直線状に延び、互いに平行に隣接配置された複数の凸部を他方の主面に有し、透光性樹脂からなる光拡散板であって、内部ヘイズが0〜10%であり、かつ、前記微細な凹凸に基づく外部ヘイズが20〜70%であることを特徴としている。
また、本発明の光拡散板では、各前記凸部は、その長手方向に直交する切断面が略半円弧状の輪郭を有する半円凸部であり、前記切断面の輪郭形状は、前記半円弧の弦をX軸とし、前記半円弧の頂点からX軸に下ろした垂線をZ軸としたときに、下記式(1)を満たす関数Z(x)で表されることが好適である。
【0008】
【数1】

【0009】
ただし、上記式(1)において、Z(x)は下記式(2)を満たす。
【0010】
【数2】

【0011】
(式(2)中、Wは前記半円凸部の幅を示し、10〜500μmであり、hは前記半円凸部の高さを示し、2〜400μmであり、kは−1〜0の数を示す。)
本発明の面光源装置は、前面側が開放された箱状に形成された樹脂製のランプボックスと、前記ランプボックスの開放面に対向するように、前記ランプボックス内に互いに離間して配置された複数の光源と、微細な凹凸を有する前記主面が前記光源に対向するように配置され、前記開放面を塞ぐように前記光拡散板とを備える。
【0012】
本発明の液晶表示装置は、前記面光源装置と、前記面光源装置の前面側に配置された液晶パネルとを備える。
本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法は、透光性樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出すことにより、連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、前記連続樹脂シートを、第1ロールと第2ロールとで挟み込む第1押圧工程と、前記連続樹脂シートを、前記第2ロールに密着させたまま搬送する搬送工程と、搬送された前記連続樹脂シートを、前記第2押圧ロールと第3押圧ロールとで挟み込む第2押圧工程とを含み、前記第2押圧ロールは、算術平均粗さRa=6.0〜8.0μmおよび十点平均粗さRz=45.0〜50.0μmの微細な凹凸を有するマット転写型を周面に備え、前記第1押圧工程では、そのマット転写型が前記連続樹脂シートの一方の主面に転写され、前記第3押圧ロールは、前記第2押圧ロールの周方向に延び、互いに平行に隣接配置された複数の凹部を有する凹版転写型を周面に備え、前記第2押圧工程では、その凹版転写型が前記連続樹脂シートの他方の主面に転写されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光拡散板は、内部ヘイズが0〜10%であり、微細な凹凸に基づく外部ヘイズが20〜70%であるため、良好な透光性を維持しつつ、見る角度に関係なくランプムラを抑制することができる。
また、本発明の面光源装置は、ランプボックスの開放面が本発明の光拡散板で塞がれているので、ランプムラが抑制されている。そのため、高品質な光を得ることができる。
【0014】
また、本発明の液晶表示装置によれば、ランプボックスの開放面が本発明の光拡散板で塞がれているので、ランプムラが生じない。そのため、高品質な光を得ることができる。 さらに、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法は、転写型の表面形状を精度よく、速やかに転写することができる。そのため、表面状態の不良を抑制しつつ、生産性よく、目的の表面形状転写樹脂シートを製造することができる。その結果、光拡散板の作製効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る液晶ディスプレイの模式的な側面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る液晶ディスプレイの模式的な斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る積層樹脂板の模式的な斜視図である。
【図4】図4は、図3の積層樹脂板の要部拡大断面図(切断線IV−IVでの断面)である。
【図5】図5は、ランプボックスに対する積層樹脂板の取り付け状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る積層樹脂シートの製造方法に使用される製造装置の概略構成図である。
【図7】図7は、中間ロールに取り付けられたマット転写型の要部拡大断面図である。
【図8】図8は、下ロールに取り付けられた凹版転写型の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<液晶ディスプレイの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶ディスプレイの模式的な側面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る液晶ディスプレイの模式的な斜視図である。
液晶表示装置としての液晶ディスプレイ1は、いわゆる直下型液晶ディスプレイであって、面光源装置としてのバックライト2と、バックライト2の前面に配置された液晶パネル3とを備えている。なお、図1では、液晶ディスプレイ1を便宜的に、その前側を紙面上側に向けた姿勢で表している。
【0017】
バックライト2は、四角板状の後壁4および後壁4の周縁から前方へ一体的に立設された四角枠状の側壁5を有し、前面側が開放された薄型箱状の樹脂製ランプボックス6と、ランプボックス6内に設けられた複数の線状光源7と、ランプボックス6の開放面8(前面)を塞ぐ光拡散板としての積層樹脂板9とを備えている。
すなわち、箱状のランプボックス6は、その開放面8の輪郭が四角枠状の側壁5により形成され、側壁5および後壁4により囲まれる空間内に、線状光源7が設けられている。ランプボックス6の後壁4内面には、例えば、線状光源7から後壁4側へ入射する光を、ボックスの開放面8側へ反射させるための反射板(図示せず)が全体に取り付けられている。
【0018】
線状光源7は、例えば、直径が2〜4mmの円筒状ランプである。複数の線状光源7は、積層樹脂板9の背面(後述する主面18)に対して一定間隔を空けた状態で、互いに平行に等しい間隔を空けて配置されている。
隣り合う線状光源7の中心同士の間隔Lは、省電力化の観点から、10mm以上であることが好ましい。また、積層樹脂板9の背面(後述する主面18)と線状光源7の中心との距離dは、薄型化の観点から、50mm以下であることが好ましい。また、距離dに対する間隔Lの比率(L/d)は、1.0〜6.0であることが好ましい。とりわけ、隣り合う線状光源7同士の間隔Lは、10〜100mmであることが好ましく、積層樹脂板9の背面(後述する主面18)と線状光源7の中心との距離dは、3〜50mmであることが好ましい。また、線状光源7の中心とランプボックス6の後壁4内面(反射板)との距離fは、例えば、2.0〜10.0mmである。
【0019】
なお、線状光源7としては、例えば、蛍光管(冷陰極管)、ハロゲンランプ、タングステンランプなど、公知の筒形ランプを用いることができる。また、バックライト2の光源としては、線状光源7に代えて、発光ダイオードなどの点状光源などを用いることもできる。
液晶パネル3は、液晶セル10と、液晶セル10の前後両側に配置された1対の偏光板11,12とを備えており、液晶セル10が2枚の偏光板11,12の間に挟まれている。このような液晶パネル3は、一方の偏光板11と積層樹脂板9とが対向するように、バックライト2の前面に配置される。
【0020】
液晶セル10としては、例えば、TFT型液晶セル、STN型液晶セルなど、公知の液晶セルを用いることができる。
<積層樹脂板の構成>
図3は、本発明の一実施形態に係る積層樹脂板の模式的な斜視図である。図4は、図3の積層樹脂板の要部拡大断面図(切断線IV−IVでの断面)である。図5は、ランプボックスに対する積層樹脂板の取り付け状態を示す要部拡大断面図である。
【0021】
図3に示すように、積層樹脂板9は、ランプボックス6の側壁5の枠形状とほぼ同じ四角の板状に形成されている。積層樹脂板9は、厚さ方向に2枚の樹脂層が積層された光透過性の2層光拡散板であり、相対的に厚い基材層13と、相対的に薄い背面層14とを備えている。
積層樹脂板9は、基材層13側の主面15に、積層樹脂板9の1組の対向周縁間に延びるシリンドリカルレンズ形状の半円凸部16が、多数筋状に形成された光拡散部17を有している。
【0022】
シリンドリカルレンズ形状の半円凸部16は、その長手方向に直交する切断面が略半円弧状の輪郭を有している。その半円凸部16の輪郭形状の一例を、図4を参照して具体的に説明する。
半円凸部16の輪郭形状は、半円凸部16の切断面の輪郭を形成する半円弧の弦をX軸とし、この半円弧の頂点からX軸に下ろした垂線をZ軸としたときに、下記式(1)を満たす関数Z(x)で表される。
【0023】
【数3】

【0024】
ただし、上記式(1)において、Z(x)は下記式(2)を満たす。
【0025】
【数4】

【0026】
(式(2)中、Wは半円凸部16の幅を示し、10〜500μmであり、hは半円凸部16の高さを示し、2〜400μmであり、kは−1〜0の数を示す。)
式(2)において、半円凸部16の幅Wは、好ましくは、50〜400μmであり、また、半円凸部16の高さhは、好ましくは、20〜300μmである。また、半円凸部16の幅Wおよび高さhは、具体的には、W=350μm、h=210μmが例示できる。ただし、幅Wおよび高さhの値は、これに限定されるものではない。
【0027】
光拡散部17において、多数の半円凸部16は、互いに平行に等しい間隔E(例えば、1〜15μm)を空けて配置されている。隣り合う半円凸部16の中心(図4のZ軸)同士の距離(ピッチP)は、例えば、10〜500μmである。また、半円凸部16のピッチPに対する高さhの比率(h/P)は、例えば、0.2〜0.8である。
一方、積層樹脂板9は、背面層14側の主面18に、微細な凹凸19が多数形成された光入射部20を有している。微細な凹凸19は背面層14側の主面18全体にわたってほぼ均一に分布しており、背面層14側の主面18は、微細な凹凸19が全体に形成されたマット面とされている。
【0028】
微細な凹凸19の形状は、例えば、表面の粗さで表すことができる。一例として、微細な凹凸19の算術平均粗さRaは、例えば、JIS B0601−2001に準拠して測定された値で、0.8〜5.0μmであり、好ましくは、1.0〜4.0μmである。また、微細な凹凸19の十点平均粗さRzは、例えば、JIS B0601−2001に準拠して測定された値で、8.0〜30.0μmであり、好ましくは、8.0〜20.0μmである。また、微細な凹凸19の平均間隔Rsmは、例えば、JIS B0601−2001に準拠して測定された値で、100〜400μmであり、好ましくは、200〜400μmである。
【0029】
また、図5に示すように、基材層13の厚さtと背面層14の厚さtとを足した積層樹脂板9の総厚さTは、例えば、0.1〜10mmであり、好ましくは、1.0〜4.0mmである。また、基材層13の厚さtは、例えば、0.05〜9mmであり、好ましくは、0.9〜3mmである。また、背面層14の厚さtは、例えば、0.03〜1mmであり、好ましくは、0.05〜0.1mmである。
【0030】
積層樹脂板9の原料としては、特に制限されず、例えば、公知の透光性樹脂を用いることができる。
透光性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、環状オレフィン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)などが挙げられる。
【0031】
上記透光性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、スチレン系樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、スチレン系樹脂の単独使用が挙げられる。
また、基材層13の原料として用いられる樹脂(A)と、背面層14の原料として用いられる樹脂(B)とは、同じであっても異なっていてもよい。樹脂(A)と樹脂(B)との組み合わせとして、好ましくは、同種の透光性樹脂の組み合わせが挙げられ、さらに好ましくは、樹脂(A)(B)のいずれにもスチレン系樹脂が含有される組み合わせが挙げられ、とりわけ好ましくは、樹脂(A)(B)のいずれにもスチレン系樹脂が単独で使用される組み合わせが挙げられる。
【0032】
また、積層樹脂板9には、必要により光拡散剤(光拡散粒子)を含有することができる。
光拡散剤としては、積層樹脂板9を構成する透光性樹脂と屈折率が異なり、透過光を拡散できる粒子であれば特に制限されず、例えば、無機系の光拡散剤として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などが挙げられる。これらは、脂肪酸などで表面処理が施されたものであってもよい。
【0033】
また、例えば、有機系の光拡散剤として、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などが挙げられ、好ましくは、重量平均分子量が50万〜500万の高分子量重合体粒子や、アセトンに溶解させたときのゲル分率が10質量%以上である架橋重合体粒子が挙げられる。
上記光拡散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0034】
積層樹脂板9が光拡散剤を含有する場合、光拡散剤の配合割合は、透光性樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部、好ましくは、0.001〜0.01質量部である。また、光拡散剤は、上記透光性樹脂とのマスターバッチとして用いることができる。また、透光性樹脂の屈折率と光拡散剤の屈折率との差の絶対値は、光拡散性の観点から、通常、0.01〜0.20であり、好ましくは、0.02〜0.15である。
【0035】
なお、本実施形態では、積層樹脂板9の原料は、光拡散剤の不含有の透光性樹脂を用いることがとりわけ好ましい。
また、積層樹脂板9には、必要により、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤などの各種添加剤を添加することもできる。紫外線吸収剤を添加する場合には、透光性樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.1〜3質量部添加することが好ましい。上記した範囲であれば、紫外線吸収剤の表面へのブリードを抑制でき、積層樹脂板9の外観を良好に維持することができる。また、熱安定剤をさらに添加する場合には、透光性樹脂中の紫外線吸収剤1質量部に対して、熱安定剤を2質量部以下の割合で添加することが好ましく、透光性樹脂中の紫外線吸収剤1質量部に対して、熱安定剤を0.01〜1質量部添加することがさらに好ましい。
【0036】
そして、積層樹脂板9は、図5に示すように、ランプボックス6内の線状光源7に対して半円凸部16が平行となる位置において、ランプボックス6の側壁5に対して積層樹脂板9の背面(主面18)を当接させて、ランプボックス6に固定されている。これにより、ランプボックス6の開放面8が積層樹脂板9により塞がれている。
<積層樹脂板(積層樹脂シート)の製造方法>
上記した積層樹脂板9は、下記の方法により製造された積層樹脂シートを切断することにより作製することができる。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態に係る積層樹脂シートの製造方法に使用される製造装置の概略構成図である。図7は、中間ロールに取り付けられたマット転写型の要部拡大断面図である。図8は、下ロールに取り付けられた凹版転写型の要部拡大断面図である。
シート製造装置21は、基材層13の原料樹脂(A)を加熱溶融するための第1押出機22と、背面層14の原料樹脂(B)を加熱溶融するための第2押出機23と、第1および第2押出機22,23で溶融された樹脂が供給されるフィードブロック24と、フィードブロック24内の樹脂をシート状態で押し出すためのダイ25と、ダイ25から押し出されたシート状樹脂を成形するための3つの押圧ロール26〜28とを備えている。
【0038】
第1および第2押出機22,23としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機など、公知の押出成形機を用いることができる。第1および第2押出機22,23には、押出機のシリンダ内に樹脂を投入するためのホッパ29,30が取り付けられている。
フィードブロック24としては、2種以上の樹脂をダイ25に供給し、積層した状態で共押出しできる型式であれば特に制限されず、例えば、2種2層分配型など、公知のフィードブロックを用いることができる。
【0039】
ダイ25としては、共押出し用のダイであれば特に制限されず、例えば、マルチマニホールドダイなど、公知のダイを用いることができる。
3つの押圧ロール26〜28は、それぞれ円柱状の金属製(例えば、ステンレス鋼製、鉄鋼製など)ロールからなり、全ての回転軸が平行な状態で上下方向に連続して配置されており、上から順に第1ロールとしての上ロール26、第2ロールとしての中間ロール27および第3ロールとしての下ロール28とされている。隣り合うロールの間には、樹脂を所定の厚さで通過させるための微小な隙間が形成されている。また、各ロールの直径は、例えば、100mm〜500mmである。また、押圧ロール26〜28として金属製ロールが用いられる場合、その表面に、例えば、クロームメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、Ni−Pメッキなどのメッキ処理が施されていてもよい。
【0040】
上ロール26の周面31は、例えば、鏡面加工が施されることにより平滑面とされている。
中間ロール27の周面32には、積層樹脂シート33に微細な凹凸19を形成するためのマット転写型34が取り付けられている。
マット転写型34には、図7に示すように、積層樹脂板9の背面層14側の主面18の微細な凹凸19とは反対型の微細な凹凸35が、中間ロール27の周面32に多数形成されている。すなわち、マット転写型34の表面は、微細な凹凸35が表面全体にわたってほぼ均一に分布しているマット面とされており、その算術平均粗さRaが、例えば、6.0〜8.0μmであり、その十点平均粗さRzが、例えば、45.0〜50.0μmである。また、その平均間隔Rsmは、例えば、120〜150μmである。
【0041】
下ロール28の周面36には、積層樹脂シート33に半円凸部16を形成するための凹版転写型37が取り付けられている。
凹版転写型37には、図8に示すように、シリンドリカルレンズ形状の半円凸部16とは反対型の凹溝38が、下ロール28の周方向に沿って多数筋状に形成されている。すなわち、凹溝38は、その長手方向(周方向)に直交する切断面が略半円弧状の輪郭を有しており、その深さDは、半円凸部16の高さhよりもやや大きい(例えば、3〜450μm)。また、隣り合う凹溝38の中心同士の距離(ピッチP)は、半円凸部16の形状に応じて適宜定められる。半円凸部16の高さhと凹溝38の深さDとの差は、凹版転写型37が積層樹脂シート33に転写されて半円凸部16が形成される際の転写率(%)に起因するものである。
【0042】
なお、マット転写型34が下ロール28に取り付けられてもよく、凹版転写型37が中間ロール27に取り付けられてもよい。
上記マット転写型34および凹版転写型37の原料としては、例えば、有機材料を用いることができる。
有機材料としては、加熱溶融状態でダイ25から押し出された直後の積層樹脂シート33に繰り返し押し当てても、転写型の形状を維持できる耐熱性を有していればよく、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0043】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂(PI樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、アルリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、熱可塑性ポリイミド樹脂(PI樹脂)などが挙げられる。
【0044】
これらのうち、好ましくは、ビカット軟化点(JIS K7206−1999 A50)が、ダイ25から押し出される積層樹脂シート33のビカット軟化点よりも40℃以上高い熱可塑性樹脂、架橋された熱可塑性樹脂が挙げられる。
有機材料の具体的な一例として、上記した反対型の転写型が形成された有機材料製フィルムを、マット転写型34および凹版転写型37として用いることができる。
【0045】
有機材料製フィルム(マット転写型34および凹版転写型37)の厚さは、例えば、0.05mm〜5mmである。厚さが上記した範囲であれば、積層樹脂シート33に対して良好に転写することができる。
次いで、上記した製造装置を用いた積層樹脂シート33の製造方法を説明する。
(1) シート製造工程
まず、第1押出機22のホッパ29に基材層13の原料樹脂(A)が投入され、溶融混練された後、フィードブロック24に供給される。一方、第2押出機23のホッパ30に背面層14の原料樹脂(B)が投入され、溶融混練された後、フィードブロック24に供給される。第1押出機22および第2押出機23のシリンダ温度は、例えば、190〜250℃に設定される。
【0046】
次いで、フィードブロック24内の樹脂が、ダイ25から共押出しされることにより、連続的に下側の基材層13および上側の背面層14からなる、連続樹脂シートとしての2層の積層樹脂シート33として押し出される。
(2) 押圧工程
ダイ25から押し出された積層樹脂シート33は、図6に示すように、押圧ロール26〜28で押圧・冷却されることによって成形される。
【0047】
具体的には、ダイ25から共押出しされた樹脂は、上ロール26と中間ロール27とで挟み込まれて押圧された(第1押圧工程)後、中間ロール27の周面32に密着して搬送され(搬送工程)、その際に冷却される。上ロール26および中間ロール27の表面温度としては、積層樹脂シート33の押出温度よりも低いことが好ましく、例えば、50℃〜120℃である。そして、上ロール26と中間ロール27との押圧の際、積層樹脂シート33の下側の主面39(背面層14側の主面18)には、中間ロール27のマット転写型34が転写されることにより微細な凹凸19が多数形成される。
【0048】
その後、中間ロール27と下ロール28とで挟み込まれて押圧される(第2押圧工程)。下ロール28の表面温度としては、例えば、50℃〜120℃である。そして、中間ロール27と下ロール28との押圧の際、積層樹脂シート33の上側の主面40(基材層13側の主面15)には、凹版転写型37が転写されることによりシートの流れ方向に平行な筋状の半円凸部16が多数本形成される。
【0049】
以上の工程を経て表面形状転写樹脂シートとしての積層樹脂シート33が製造される。この後、積層樹脂シート33がさらに冷却された後、適当な大きさで切断されることにより、上記積層樹脂板9を得ることができる。
<積層樹脂板の物性>
上記のようにして得られる積層樹脂板9は、例えば、JIS K7361−1(1997年)に準拠して測定される全光線透過率が、80〜93%であり、好ましくは、84〜90%である。また、JIS K7361−1(1997年)に準拠して測定されるヘイズ(Haze)が、90〜99%であり、好ましくは、97〜99%である。
【0050】
また、積層樹脂板9は、内部ヘイズ(Haze)が、0〜10%であり、好ましくは、0〜5%である。
内部ヘイズとは、積層樹脂板9の内部に含まれている内部散乱粒子によって発生する散乱に起因する曇りの度合である。内部ヘイズは、例えば、積層樹脂板9の基材層13および背面層14側の主面18の両方に、これらを構成する各樹脂(A)(B)と同一の屈折率を有する補正部材を取り付けることにより、半円凸部16および微細な凹凸19の形状によって発生する散乱に起因する影響(曇り度合)を消去した後、JIS K7361−1(1997年)に準拠して測定することができる。また、積層樹脂板9における内部ヘイズ測定時の全光線透過率は、例えば、85〜93%であり、好ましくは、88〜90%である。
【0051】
また、積層樹脂板9は、JIS K7361−1(1997年)に準拠して測定される背面層14の微細な凹凸19に基づく外部ヘイズ(Haze)が、20〜70%であり、好ましくは、40〜65%である。
外部ヘイズとは、背面層14の微細な凹凸19の高さなどの表面形状によって発生する散乱に起因する曇りの度合である。外部ヘイズは、例えば、積層樹脂板9の基材層13側の主面15に、基材層13を構成する樹脂(A)と同一の屈折率を有する補正部材を取り付けることにより、半円凸部16の形状によって発生する散乱に起因する影響(曇り度合)を消去した後、JIS K7361−1(1997年)に準拠して測定することができる。また、積層樹脂板9における外部ヘイズ測定時の全光線透過率は、例えば、85〜93%であり、好ましくは、88〜90%である。
【0052】
以上のように、上記積層樹脂板9によれば、内部ヘイズが0〜10%であり、背面層14の微細な凹凸19に基づく外部ヘイズが20〜70%であるため、良好な透光性を維持しつつ、最前面の偏光板12を見る角度(視野角)に関係なくランプムラを抑制することができる。
そして、上記積層樹脂板9が備えられたバックライト2および液晶ディスプレイ1によれば、ランプボックス6の開放面8が積層樹脂板9で塞がれているので、ランプムラが抑制される。そのため、高品質な光を得ることができる。
【0053】
さらに、上記積層樹脂シート33の製造方法によれば、マット転写型34および凹版転写型37の表面形状を精度よく、速やかに転写することができる。そのため、表面状態の不良を抑制しつつ、生産性よく、目的の積層樹脂シート33を製造することができる。その結果、積層樹脂板9の作製効率を向上させることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はさらに他の実施形態で実施することもできる。
【0054】
例えば、光拡散板としての樹脂板は、積層樹脂板9のような2層樹脂板に限定されるものではなく、例えば、単層樹脂板、3層以上の層からなる樹脂板であってもよい。
また、例えば、前述の実施形態では、多数の半円凸部16は、基材層13側の主面15に平行な一方向に沿って延びるシリンドリカルレンズ形状で形成されている(1次元タイプ)(図2参照)が、例えば、基材層13側の主面15に平行な異なる二方向(例えば、互いに直交する二方向)に沿って延びるシリンドリカルレンズ形状で形成されていてもよい(すなわち、2次元タイプであってもよい)。
【0055】
また、シリンドリカルレンズ形状の半円凸部16は、例えば、長手方向において、連続しない多数個の半円凸部が互いに離間した状態で配列されていてもよい。
また、前述の実施形態では、半円凸部16の切断面の輪郭形状は、半円弧状であるとして説明したが、半円弧状に限定されるものではなく、例えば、円柱体をその軸線を含まない平面で切ったうちのいずれか一方の部材に相当する形状であってもよい。また、半楕円弧状、扁平湾曲線状などであってもよい。すなわち、「半円凸部」の語は、このような形状の凸部をも含む意味で用いている。
【0056】
また、例えば、搬送または積層樹脂シート33と押圧ロール26〜28との密着を補助する転写技術上無関係なロールであれば、積層樹脂シート33および各転写型(マット転写型34および凹版転写型37)に接するロール(タッチロール)が設けられていてもよい。
また、上記積層樹脂板9は、バックライト用の光拡散板として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【0057】
また、上記バックライト2は、液晶ディスプレイ用の面光源装置として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<積層樹脂シートの原料>
積層樹脂シートの原料として、以下の(1)〜(8)の材料を準備した。
(1) 透光性樹脂A
スチレン樹脂(東洋スチレン株式会社製「HRM40」 屈折率1.59)
(2) 透光性樹脂B
MS樹脂(新日鐵化学株式会社製「MS200NT(スチレン/メタクリル酸メチル=80質量部/20質量部)」 屈折率1.57)
(3) 光拡散剤A
(屈折率1.49 重量平均粒子径35μm)
(4) 光拡散剤B
MMA−スチレン共重合体粒子(屈折率1.57 重量平均粒子径51μm)
(5) 光拡散剤C
PMMA(屈折率1.49 重量平均粒子径0.8μm)
(6) 光拡散剤マスターバッチA(ペレット)
透光性樹脂Bを92質量部と、光拡散剤Aを8質量部とをドライブレンドした後、ブレンド物をスクリュー径30mm押出機のホッパに投入し、シリンダ内で溶融混合した。そして、ブレンド物を溶融混合した状態でストランド状(ひも状)に押出し、ペレット化することにより調製した。
(7) 光拡散剤マスターバッチB
透光性樹脂Aを99.6質量部と、光拡散剤Cを0.4質量部とをドライブレンドした後、ブレンド物をスクリュー径30mm押出機のホッパに投入し、シリンダ内で溶融混合した。そして、ブレンド物を溶融混合した状態でストランド状(ひも状)に押出し、ペレット化することにより調製した。
(8) 光拡散剤マスターバッチC
透光性樹脂Bを92質量部と、光拡散剤Bを8質量部とをドライブレンドした後、ブレンド物をスクリュー径30mm押出機のホッパに投入し、シリンダ内で溶融混合した。そして、ブレンド物を溶融混合した状態でストランド状(ひも状)に押出し、ペレット化することにより調製した。
<積層樹脂シートの製造装置の構成>
図6に示す樹脂シート製造装置21と同様の構成を有する装置を用いた。なお、装置に装着されるポリシングロールとして、以下の(1)〜(3)のロールを準備した。
(1) ポリシングロールA
周面に凹版転写型が設けられた金属製ロール(直径:450mm)。すなわち、ポリシングロールAの周面には、周方向に一周する断面半円弧状の凹溝が、互いに平行に多数本筋状に形成されている。なお、隣り合う凹溝のピッチPを400μmとし、凹溝の深さDを225μmとした。
(2) ポリシングロールB
周面にマット転写型が設けられた金属製ロール(直径:450mm)。すなわち、ポリシングロールBの周面は、微細な凹凸が多数形成されてなるマット面とされている。なお、微細な凹凸の算術平均粗さRaを6.9μmとし、十点平均粗さRzを46.6μmとし、平均間隔Rsmを92.7μmとした。
(3) ポリシングロールC
周面が鏡面加工された金属製ロール(直径:450mm)。
<実施例および比較例>
(実施例1)
シート製造装置の上ロールとしてポリシングロールCを装着し、中間ロールとしてポリシングロールBを装着し、下ロールとしてポリシングロールAを装着した。
【0059】
次いで、透光性樹脂A 100質量部を、シリンダ内の温度が190〜250℃の第1押出機で溶融混練した後、2層分配型フィードブロックに供給した。また、透光性樹脂A 100質量部を、シリンダ内の温度が190〜250℃の第2押出機で溶融混練した後、上記2層分配型フィードブロックに供給した。
次いで、第1押出機からフィードブロックに供給された樹脂が基材層(樹脂(A)層)となり、第2押出機からフィードブロックに供給された樹脂が背面層(樹脂(B)層)となるように、フィードブロック内の樹脂を、押出樹脂温度250℃でマルチマニホールドダイ(幅:1500mm)により共押出しした後、上、中間および下ロールで押圧・冷却することによって、幅1300mm、総厚さ2.0mm(基材層1.95mm、背面層0.05mm)の2層の積層樹脂シートを作製した。
【0060】
積層樹脂シートの作製過程では、ダイから共押出しされた樹脂は、上ロールと中間ロールとで挟み込まれて押圧された(第1押圧工程)後、中間ロールの周面に密着して搬送され(搬送工程)、その際に冷却された。中間ロールの周面にマット転写型が設けられているので、上ロールと中間ロールとの押圧の際、樹脂シートの背面層(樹脂(B)層)側の主面には、マット転写型が転写されることにより微細な凹凸が多数形成された。
【0061】
その後、中間ロールと下ロールとで挟み込まれて押圧された(第2押圧工程)。下ロールの周面に凹版転写型が備えられているので、中間ロールと下ロールとの押圧の際、樹脂シートの基材層(樹脂(A)層)側の主面には、凹版転写型が転写されることによりシートの流れ方向に平行な筋状の半円凸部が多数本形成された。形成された半円凸部の形状は、前記式(2)におけるh=0.483W、k=−0.4、W=400μmである関数Z(x)で表される。
【0062】
また、上ロールの表面温度が65℃、中間ロールの表面温度が77℃、下ロールの表面温度が98℃となるように、各ロールの表面温度を調整した。また、積層樹脂シートの生産速度は4.7m/分であった。
(実施例2)
積層樹脂シートの総厚さが1.5mm(基材層1.45mm、背面層0.05mm)となるように、フィードブロック内の樹脂をマルチマニホールドダイにより共押出ししたこと以外は、実施例1と同様の方法・条件により、2層の積層樹脂シートを作製した。
【0063】
形成された半円凸部の形状は、前記式(2)におけるh=0.509W、k=−0.4、W=400μmである関数Z(x)で表される。
(比較例1)
実施例1で作製された樹脂シートの背面層(樹脂(B)層)側の主面を、曲率半径10mmのダイヤモンドバイトを用いて研磨した。これにより微細な凹凸がほぼ除去されて、背面層側の主面が平滑化されたシートを、比較例1の積層樹脂シートとした。
(比較例2)
実施例2で作製された樹脂シートの背面層(樹脂(B)層)側の主面を、曲率半径10mmのダイヤモンドバイトを用いて研磨した。これにより微細な凹凸がほぼ除去されて、背面層側の主面が平滑化されたシートを、比較例2の積層樹脂シートとした。
(比較例3)
(1)樹脂(B)として、光拡散剤マスターバッチC 100質量部を、第2押出機で溶融混練した後、フィードブロックに供給したこと、(2)下ロールとしてポリシングロールCを装着したこと以外は、実施例1と同様の方法・条件により、2層の積層樹脂シートを作製した。
(比較例4)
(1)樹脂(A)として、透光性樹脂A 97質量部と光拡散剤マスターバッチB 3質量部とを、第1押出機で溶融混練した後、フィードブロックに供給したこと、(2)樹脂(B)として、光拡散剤マスターバッチA 100質量部を、第2押出機で溶融混練した後、フィードブロックに供給したこと、(3)下ロールとしてポリシングロールCを装着したこと以外は、実施例1と同様の方法・条件により、2層の積層樹脂シートを作製した。
(比較例5)
(1)樹脂(A)として、透光性樹脂A 80質量部と光拡散剤マスターバッチB 20質量部とを、第1押出機で溶融混練した後、フィードブロックに供給したこと、(2)樹脂(B)として、光拡散剤マスターバッチA 100質量部を、第2押出機で溶融混練した後、フィードブロックに供給したこと、(3)下ロールとしてポリシングロールCを装着したこと以外は、実施例1と同様の方法・条件により、2層の積層樹脂シートを作製した。
(比較例6)
(1)樹脂(A)として、透光性樹脂A 88質量部と光拡散剤マスターバッチB 12質量部とを、第1押出機で溶融混練した後、フィードブロックに供給したこと以外は、実施例1と同様の方法・条件により、2層の積層樹脂シートを作製した。
【0064】
形成された半円凸部の形状は、前記式(2)におけるh=0.483W、k=−0.4、W=400μmである関数Z(x)で表される。
<評価>
1 積層樹脂板(光拡散板)の作製
上記実施例および比較例で作製された各積層樹脂シートを適当な長さで切断することにより、積層樹脂板を作製した。作製された積層樹脂板について、以下の2〜5の物性測定および評価を実施した。
2 転写率
各積層樹脂板の基材層(樹脂(A)層)側の主面に形成された半円凸部の断面形状を、超深度形状測定顕微鏡(KEYENCE社製「VK−8500」)で観察して、半円凸部の高さHを測定した。そして、下ロールの周面に形成された凹溝の深さDに対する半円凸部の高さHの割合を求めることにより、半円凸部の転写率(=H/D×100(%))を算出した。算出結果を、下記表1に示す。
3 背面層の表面粗さ
(1) 算術平均粗さRa
各積層樹脂板の背面層側の主面の算術平均粗さRaを、JIS B0601−2001に準拠して測定した。具体的には、表面粗さ計(Mitutoyo社製「SJ−201P」)を用いて積層樹脂板のマット面の算術平均粗さRaを測定した。なお、表面粗さ計の測定条件は、カットオフ値:0.8×1、測定レンジ:オートに設定した。
(2) 十点平均粗さRz
各積層樹脂板の背面層側の主面の十点平均粗さRzを、JIS B0601−2001に準拠して測定した。具体的には、表面粗さ計(Mitutoyo社製「SJ−201P」)を用いて積層樹脂板のマット面の十点平均粗さRzを測定した。なお、表面粗さ計の測定条件は、カットオフ値:0.8×1、測定レンジ:オートに設定した。
(3) 凹凸の平均間隔Rsm
各積層樹脂板の背面層側の主面の凹凸の平均間隔Rsmを、JIS B0601−2001に準拠して測定した。具体的には、表面粗さ計(Mitutoyo社製「SJ−201P」)を用いて積層樹脂板のマット面の凹凸の平均間隔Rsmを測定した。なお、表面粗さ計の測定条件は、カットオフ値:0.8×1、測定レンジ:オートに設定した。
【0065】
(1)〜(3)の測定結果を、下記表1に示す。
4 全光線透過率Ttおよびヘイズ(Haze)
(1) 板全体(補正なし)
各積層樹脂板の全光線透過率Ttおよびヘイズ(Haze)を、透過率計(村上色彩技術研究所製「HR−100」)を用いて、JIS K7361−1(1997年)に準拠して測定した。なお、測定時、樹脂板の半円凸部が形成された基材層側を積分球側に向けるとともに、ピッチ間隔方向を左右側に向けて測定を行った。
(2) 液浸1による補正
各積層樹脂板の基材層側の主面に、基材層を構成する樹脂(A)と同一の屈折率を有する屈折液を塗布した後、樹脂(A)からなる補正フィルムを貼り付けることにより、半円凸部の形状によって発生する散乱に起因する影響を消去した。一方、各積層樹脂板の背面層側の主面に、背面層を構成する樹脂(B)と同一の屈折率を有する屈折液を塗布した後、樹脂(B)からなる補正フィルムを貼り付けることにより、微細な凹凸の形状によって発生する散乱に起因する影響を消去した。
【0066】
そして、補正フィルムが両主面に貼り付けられた状態の積層樹脂板の全光線透過率Ttおよびヘイズ(Haze)を、上記(1)と同様の装置および条件により測定した。測定されたヘイズは、半円凸部および微細な凹凸のそれぞれの形状によって発生する散乱に起因する影響が消去されているので、樹脂板内部に含まれる物質のみに起因する内部ヘイズを示している。
(3) 液浸2による補正
各積層樹脂板の基材層側の主面に、基材層を構成する樹脂(A)と同一の屈折率を有する屈折液を塗布した後、樹脂(A)からなる補正フィルムを貼り付けることにより、半円凸部の形状によって発生する散乱に起因する影響を消去した。
【0067】
そして、補正フィルムが基材層側の主面に貼り付けられた状態の積層樹脂板の全光線透過率Ttおよびヘイズ(Haze)を、上記(1)と同様の装置および条件により測定した。測定されたヘイズは、半円凸部の形状によって発生する散乱に起因する影響が消去されているので、樹脂板の背面層側の微細な凹凸の形状に起因する外部ヘイズを示している。
5 ランプムラ
前面側が開放されたランプボックス(画面サイズ32型 4:3ノーマル)を準備し、ランプボックス内に、8本の冷陰極管(直径:3.0mm)を互いに平行に配置した。なお、冷陰極管の配置条件は、隣り合う管の中心同士の間隔Lを45.0mmとし、管の中心と反射板(ランプボックスの底面)との距離fを6.0mmとした。
【0068】
次いで、ランプボックス内の冷陰極管を点灯させた状態で、冷陰極管と積層樹脂板の背面層とが対向するように、ランプボックスの前面枠に積層樹脂板を固定することにより、ランプボックスの開放面を塞いだ。なお、積層樹脂板をセットした状態において、積層樹脂板の背面側主面と冷陰極管の中心との距離dは15.1mmであった。
積層樹脂板の固定後、積層樹脂板の前面に、2枚の偏光板およびこれらの間に挟まれた液晶セルからなる液晶パネルを取り付けた。
【0069】
この後、最前面の偏光板を通して冷陰極管のイメージ(ランプムラ)が見えるか否かを目視評価した。評価結果を、下記表1に示す。
なお、表1において、「○」は、偏光板を見る角度に関係なく冷陰極管のイメージが全く見えなかったことを示し、「△」は、偏光板を見る角度によっては冷陰極管のイメージが見えたことを示し、「×」は、偏光板をどこから見ても冷陰極管のイメージが見えたことを示している。
【0070】
【表1】

【符号の説明】
【0071】
1 液晶ディスプレイ
2 バックライト
3 液晶パネル
5 側壁
6 ランプボックス
7 線状光源
8 開放面
9 積層樹脂板
15 (基材層側の)主面
16 半円凸部
18 (背面層側の)主面
19 微細な凹凸
25 ダイ
26 上ロール
27 中間ロール
28 下ロール
32 (中間ロールの)周面
33 積層樹脂シート
34 マット転写型
35 微細な凹凸
36 (下ロールの)周面
37 凹版転写型
38 凹溝
39 (下側の)主面
40 (上側の)主面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な凹凸を一方の主面に有し、直線状に延び、互いに平行に隣接配置された複数の凸部を他方の主面に有し、透光性樹脂からなる光拡散板であって、
内部ヘイズが0〜10%であり、かつ、前記微細な凹凸に基づく外部ヘイズが20〜70%であることを特徴とする、光拡散板。
【請求項2】
各前記凸部は、その長手方向に直交する切断面が略半円弧状の輪郭を有する半円凸部であり、
前記切断面の輪郭形状は、前記半円弧の弦をX軸とし、前記半円弧の頂点からX軸に下ろした垂線をZ軸としたときに、下記式(1)を満たす関数Z(x)で表される請求項1に記載の光拡散板。
【数1】

ただし、上記式(1)において、Z(x)は下記式(2)を満たす。
【数2】

(式(2)中、Wは前記半円凸部の幅を示し、10〜500μmであり、hは前記半円凸部の高さを示し、2〜400μmであり、kは−1〜0の数を示す。)
【請求項3】
前面側が開放された箱状に形成された樹脂製のランプボックスと、
前記ランプボックスの開放面に対向するように、前記ランプボックス内に互いに離間して配置された複数の光源と、
前記一方の主面が前記光源に対向するように配置され、前記開放面を塞ぐように請求項1または2に記載の光拡散板とを備える面光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の面光源装置と、
前記面光源装置の前面側に配置された液晶パネルとを備える液晶表示装置。
【請求項5】
透光性樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出すことにより、連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、
前記連続樹脂シートを、第1ロールと第2ロールとで挟み込む第1押圧工程と、
前記連続樹脂シートを、前記第2ロールに密着させたまま搬送する搬送工程と、
搬送された前記連続樹脂シートを、前記第2押圧ロールと第3押圧ロールとで挟み込む第2押圧工程とを含み、
前記第2押圧ロールは、算術平均粗さRa=6.0〜8.0μmおよび十点平均粗さRz=45.0〜50.0μmの微細な凹凸を有するマット転写型を周面に備え、
前記第1押圧工程では、そのマット転写型が前記連続樹脂シートの一方の主面に転写され、
前記第3押圧ロールは、前記第2押圧ロールの周方向に延び、互いに平行に隣接配置された複数の凹部を有する凹版転写型を周面に備え、
前記第2押圧工程では、その凹版転写型が前記連続樹脂シートの他方の主面に転写される表面形状転写樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−107689(P2011−107689A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231221(P2010−231221)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】