光断層画像取得装置
【課題】対象物の光断層画像を高速に取得することが可能な光断層画像取得装置を提供する。
【解決手段】本発明の光断層画像取得装置はFD-OCTを基本とするものであって、干渉光を検出する検出部50Aは、レンズ51、反射型回折格子52A、偏向部53、レンズ54および受光部55を含む。レンズ51によりコリメートされた干渉光は、反射型回折格子52Aにより分光されて、各波長の光が該波長に応じて異なる方向へ出力され、偏向部53によりに偏向され、レンズ54により受光部55の受光面上に集光される。対象物への光照射位置と偏向部53による偏向角度との対応関係と、受光部55により検出された光パワー分布とに基づいて、対象物の光断層画像が取得される。
【解決手段】本発明の光断層画像取得装置はFD-OCTを基本とするものであって、干渉光を検出する検出部50Aは、レンズ51、反射型回折格子52A、偏向部53、レンズ54および受光部55を含む。レンズ51によりコリメートされた干渉光は、反射型回折格子52Aにより分光されて、各波長の光が該波長に応じて異なる方向へ出力され、偏向部53によりに偏向され、レンズ54により受光部55の受光面上に集光される。対象物への光照射位置と偏向部53による偏向角度との対応関係と、受光部55により検出された光パワー分布とに基づいて、対象物の光断層画像が取得される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光断層画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィ(Optical CoherenceTomography: OCT)に拠る光断層画像取得技術は、光の干渉を用いて対象物の深さ方向の反射量分布を測定することができる。この光断層画像取得技術は、高い空間分解能で対象物の内部の構造を画像化することができることから、近年では生体計測に応用されている。
【0003】
OCTに拠る光断層画像取得装置は、光源部から出力される光を2分岐して第1分岐光および第2分岐光とし、第1分岐光を反射体に照射したときに該反射体で生じる反射光と、第2分岐光を対象物に照射したときに該対象物で生じる拡散反射光とを干渉させ、当該干渉光のパワーを検出部により検出し、この検出結果を解析することで対象物の深さ方向の反射情報分布を得る。さらに、対象物への光照射位置を走査することで、対象物の断層画像を取得することができる。
【0004】
OCTのうちTD-OCT(time-domainOCT)は、コヒーレンス長が短い光を出力する光源部を用いたときに、光源部から検出部までの両光の光路長差がある場合には干渉光の振幅が小さく、光源部から検出部までの両光の光路長差がない場合にのみ干渉光の振幅が大きくなることを利用する。このTD-OCTでは、反射体の位置に応じた対象物の深さ方向位置の反射情報を得ることができるので、反射体を移動させながら干渉光振幅を検出することにより、対象物の深さ方向の反射情報分布を得ることができる。ただし、TD-OCTでは、対象物の深さ方向の反射情報分布を得るために、機械的に反射体を移動させることが必要であるので、対象物の断層画像を取得する時間が長い。
【0005】
一方、OCTのうちFD-OCT(Fourier-domainOCT)は、干渉信号の波長依存性を利用するものであって、TD-OCTと比べると対象物の断層画像を取得する時間が短い。光源部から出力される光を第1分岐光と第2分岐光とに等分した場合、光源部から出力される光のパワーをP0、光の波数をk(=2π/λ)、対象物の深さ方向位置をz、対象物での反射率をRs、反射体での反射率をRmで表したとき、波数kの光についての干渉信号の強度P(k)は、以下の式で表される。
P(k)=P0/4{Rs+Rm+2(RsRm)1/2cos(2kz)}
【0006】
この式から判るように、波数kの光についての干渉信号の強度P(k)は、対象物での反射率Rsの2分の1乗に比例する振幅で、対象物の深さ方向位置zに応じた周期で振動する。したがって、検出部により検出される干渉信号のスペクトルを波数軸2kでフーリエ変換すると、その結果は、対象物の深さ方向位置zでの反射率Rs(すなわち、深さ方向の反射率分布)を表すものとなる。FD-OCTは、このことを利用する。
【0007】
すなわち、FD-OCTでは、対象物に対して光を照射したときに、その光が対象物の内部まで浸透し光軸に沿った各位置で拡散反射が生じると、検出部により検出される干渉信号は、対象物の内部の各位置についての信号が重なり合った形で現れる。このような干渉信号をフーリエ変換すると、対象物の深さ方向の反射分布が直接求められる。FD-OCTでは、スペクトルを測定する必要があるので、検出部として分光器を用いる。FD-OCTは、機械的に反射体を移動させる必要がないので、TD-OCTと比べると対象物の断層画像を取得する時間が短い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Maciej Wojtkowski他、OPTICS LETTERS, Vol. 28(2003), p1745
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
OCTに拠る光断層画像取得技術は、生体計測に応用される場合には、拍動等の生体の動きの影響を受けないように、かつ、測定中の生体への負荷を最小限にするように、高い走査速度が必要とされる。対象物の深さ方向の断層画像を取得する際に反射体の機械的な走査が不要であるFD-OCTは、TD-OCTと比べると対象物の断層画像を取得する時間が短いものの、更なる高速化が望まれる。
【0010】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、対象物の光断層画像を高速に取得することが可能な光断層画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光断層画像取得装置は、(1) 光を出力する光源部と、(2) 光源部から出力される光を2分岐して第1分岐光および第2分岐光とし、第1分岐光を反射体に照射するとともに当該照射に伴う反射体からの反射光を入力し、第2分岐光を対象物に照射するとともに当該照射に伴う対象物からの拡散反射光を入力し、これら反射光と拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を出力する干渉部と、(3) 対象物への第2分岐光の照射位置を走査する走査部と、(4) 干渉部から出力される干渉光を検出する検出部と、(5) 検出部による検出の結果を解析して対象物の光断層画像を求める解析部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の光断層画像取得装置において、検出部は、(a) 干渉部から出力される干渉光を分光して各波長の光を所定平面上であって該波長に応じて異なる方向へ出力する分光部と、(b) 分光部から出力される各波長の光を所定平面に対して偏向角度方向に偏向させる偏向部と、(c) 偏向部により偏向された各波長の光を集光する集光部と、(d) 集光部により光が集光される受光面上の各位置に到達する光のパワーを検出する受光部と、を含むことを特徴とする。そして、解析部は、走査部による照射位置と偏向部による偏向角度との対応関係と、受光部により検出された光パワー分布とに基づいて、対象物の光断層画像を求めることを特徴とする。
【0013】
本発明の光断層画像取得装置において、光源部から波長範囲1200nm〜1400nmまたは波長範囲1500nm〜1800nmを含む帯域の光を出力するのが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、対象物の光断層画像を高速に取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の光断層画像取得装置1の概略構成を示す図である。
【図2】FD-OCTの原理を説明する図である。
【図3】FD-OCTの原理を説明する図である。
【図4】本実施形態の光断層画像取得装置1の干渉部20の構成例を示す図である。
【図5】本実施形態の光断層画像取得装置1の干渉部20の構成例を示す図である。
【図6】本実施形態の光断層画像取得装置1の干渉部20の構成例を示す図である。
【図7】本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の構成例を示す図である。
【図8】本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の構成例を示す図である。
【図9】本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の受光部55における受光の様子を説明する図である。
【図10】本実施形態の光断層画像取得装置1の測定部40を説明する図である。
【図11】本実施形態の光断層画像取得装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
【図12】本実施形態の場合と通常のFD-OCTの場合との比較の一例を纏めた図表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態の光断層画像取得装置1の概略構成を示す図である。光断層画像取得装置1は、FD−OCTに拠って対象物2の光断層画像を取得するものであって、光源部10、干渉部20、参照部30、測定部40、検出部50、解析部60および表示部70を備える。
【0018】
光源部10は、帯域を有する光を出力する。OCTでは、対象物2の深さ方向の空間分解能は光の帯域幅に反比例し、スペクトル形状にも依存する。したがって、光源部10として、広帯域かつ平坦度の高いスペクトルを有した光を出力することができるものが好ましい。例えば、希土類元素が添加されたガラスを光増幅媒体として備え広帯域の自然放出(ASE)光を出力することができるASE光源、光導波路における非線形光学現象によって帯域が拡大されたスーパーコンティニウム(SC)光を出力することができるSC光源、スーパールミネッセントダイオード(SLD)を含む光源、等が好適に用いられる。
【0019】
干渉部20は、光源部10からから出力される光を2分岐して第1分岐光および第2分岐光とし、第1分岐光を反射体31に照射するとともに当該照射に伴う反射体31からの反射光を入力し、第2分岐光を対象物2に照射するとともに当該照射に伴う対象物2からの拡散反射光を入力し、これら反射光と拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を検出部50へ出力する。
【0020】
参照部30は、反射体31と干渉部20と反射体31との間の光学系とを含み、干渉部20からの第1分岐光を反射体31へ導き、反射体31からの反射光を干渉部20へ導く。測定部40は、干渉部20と対象物2との間の光学系であり、干渉部20からの第2分岐光を対象物2へ導き、対象物2からの拡散反射光を干渉部20へ導く。また、対象物2への第2分岐光の照射位置を走査する走査部41が設けられている。
【0021】
検出部50は、干渉部40から出力される干渉光を検出する。解析部60は、検出部50による検出の結果を解析して対象物2の光断層画像を求める。表示部70は、解析部60により求められた対象物2の光断層画像を表示する。
【0022】
FD-OCTでは、検出部50により干渉信号のスペクトルを測定し、解析部60により該スペクトルをフーリエ変換することで対象物2の深さ方向の反射情報分布を得ることができる。FD-OCTでは、機械的に反射体31を移動させる必要がないので、TD-OCTと比べると対象物2の断層画像を取得する時間が短い。
【0023】
図2および図3は、FD-OCTの原理を説明する図である。図2に示されるように、対象物2における深さ方向をz軸とし、対象物2中の2つの深さ方向位置にある反射面A,Bを考える。このとき、図3(a)に示されるように、検出部50により検出される干渉信号は、対象物2中の反射面Aからの拡散反射光の成分と、対象物2中の反射面Bからの拡散反射光の成分とを含む。
【0024】
反射面Aの深さ方向位置と反射面Bの深さ方向位置とが互いに異なるので、干渉信号に含まれる反射面A,Bそれぞれからの拡散反射光の成分は、対象物2の深さ方向位置zに応じて互いに異なる周期で振動する。したがって、検出部50により検出される干渉信号のスペクトルを波数軸2kでフーリエ変換すると、その結果は、図3(b)に示されるように、対象物2の深さ方向位置zでの反射率(すなわち、深さ方向の反射率分布)を表すものとなる。
【0025】
本実施形態の光断層画像取得装置1は、FD-OCTを基本とするものであるが、従来のFD-OCTより高速に断層画像を取得することを可能とする。
【0026】
図4〜図6それぞれは、本実施形態の光断層画像取得装置1の干渉部20の構成例を示す図である。
【0027】
図4に示される第1構成例の干渉部20Aは、ハーフミラーを含み、マイケルソン干渉計を構成している。干渉部20Aのハーフミラーは、光源部10から到達した光のうち、一部を反射させて第1分岐光として参照部30へ出力し、残部を透過させて第2分岐光として測定部40へ出力する。また、干渉部20Aのハーフミラーは、参照部30から到達した反射光を透過させるとともに、測定部40から到達した拡散反射光を反射させて、これら反射光と拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を検出部50へ出力する。
【0028】
図5に示される第2構成例の干渉部20Bは、光カプラを含み、マイケルソン干渉計を構成している。干渉部20Bの光カプラは、光源部10から到達した光を2分岐して、一方の第1分岐光を参照部30へ出力し、他方の第2分岐光を測定部40へ出力する。また、干渉部20Bの光カプラは、参照部30から到達した反射光と測定部40から到達した拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を検出部50へ出力する。
【0029】
図6に示される第3構成例の干渉部20Cは、光カプラ21,22および光サーキュレータ23,24を含み、マッハツェンダ干渉計を構成している。光カプラ21は、光源部10から到達した光を2分岐して、一方の第1分岐光を光サーキュレータ23へ出力し、他方の第2分岐光を光サーキュレータ24へ出力する。光サーキュレータ23は、光カプラ21から到達した第1分岐光を参照部30へ出力し、参照部30から到達した反射光を光カプラ22へ出力する。光サーキュレータ24は、光カプラ21から到達した第2分岐光を測定部40へ出力し、測定部40から到達した拡散反射光を光カプラ22へ出力する。光カプラ22は、光サーキュレータ23から到達した反射光と光サーキュレータ24から到達した拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を検出部50へ出力する。
【0030】
なお、参照部30における反射板31への光照射および測定部40における対象物2への光照射それぞれに際しては、集光して照射してもよいし、コリメートして照射してもよい。また、光路上に、光減衰器、強度変調器、偏波変調器、位相変調器または光アイソレータ(一方向に光が伝播する部分のみ)が挿入されていてもよい。
【0031】
図7および図8それぞれは、本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の構成例を示す図である。
【0032】
図7に示される第1構成例の検出部50Aは、レンズ51、反射型回折格子52A、偏向部53、レンズ54および受光部55を含む。レンズ51は、干渉部20から光ファイバを経由して出力されて到達した干渉光をコリメートし、そのコリメートした干渉光を反射型回折格子52Aへ入射させる。図7では、レンズ51から反射型回折格子52Aへの干渉光の進行方向は紙面内でこれをX方向、紙面と垂直な方向をY方向、X方向およびY方向と垂直な方向をZ方向と規定する。分光部としての反射型回折格子52Aは、XZ平面(紙面)に垂直な格子面上にY方向に延在する多数の格子が一定周期で配列されたものであり、レンズ51によりコリメータされて到達した干渉光を分光して、各波長の光をXZ平面上であって該波長に応じて異なる方向へ出力する。
【0033】
偏向部53は、XZ平面に平行な軸を中心にして回転自在であり、反射型回折格子52Aから出力される各波長の光をXZ平面に対して偏向角度方向に偏向させる。偏向部53として、ガルバノミラーまたはポリゴンミラーが好適に用いられる。集光部としてのレンズ54は、XZ平面に平行な光軸を有し、偏向部53により偏向された各波長の光を受光部55の受光面上に集光する。レンズ54はfθレンズであるのが好適であり、この場合には、受光部55の受光面上の位置と波長λおよび偏向角度との関係が単純比例関係になる。また、レンズ54はテレセントリック光学系であるのが好適であり、この場合には、受光部55の受光面上の各位置での集光能力のばらつきがなくなる。受光部55は、XZ平面に垂直な受光面を有し、レンズ54により光が集光される受光面上の各位置に到達する光のパワーを検出する。
【0034】
図8に示される第2構成例の検出部50Bは、図7に示された第1構成例の検出部50Aと比較すると、反射型回折格子52Aに替えて透過型回折格子52Bを含む点で相違し、その他の構成については同様である。反射型回折格子52Aおよび透過型回折格子52Bの何れの場合にも、回折格子面の法線に対する光の入射角θinと回折角θoutとの間には、以下の式で表される関係がある。Nは回折格子の単位長さあたりの溝本数、mは回折次数であり、λは波長である。
sinθin + sinθout = Nmλ
【0035】
検出部50では、干渉部20から出力された干渉光は、レンズ51によりコリメートされた後、反射型回折格子52Aまたは透過型回折格子52Bにより分光されて、各波長の光がXZ平面上であって該波長に応じて異なる方向へ出力される。反射型回折格子52A、反射型回折格子52Bから出力された各波長の光は、偏向部53によりXZ平面に対して偏向角度方向に偏向され、レンズ54により受光部55の受光面上に集光される。受光部55では、レンズ54により光が集光される受光面上の各位置に到達する光のパワーが検出される。
【0036】
図9は、本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の受光部55における受光の様子を説明する図である。偏向部53における偏向角度が一定である場合、同図に示されるように、受光部55の受光面においてXZ平面に平行な干渉光のスペクトルが得られる。また、偏向部53における偏向角度が異なると、受光部55の受光面に干渉光が到達するY方向位置が異なる。
【0037】
そこで、本実施形態では、走査部41による照射位置と偏向部53による偏向角度とを互いに対応付ける。そして、解析部60は、走査部41による照射位置と偏向部53による偏向角度との対応関係と、受光部55により検出された光パワー分布とに基づいて、対象物2の光断層画像を求めることができる。以下では、対象部2が血管であるとして、本実施形態の動作および光断層画像取得装置1を使用した光断層画像取得方法について説明する。
【0038】
図10は、本実施形態の光断層画像取得装置1の測定部40を説明する図である。ここでは、一例として血管内の断層画像取得を想定している。測定部40は、第2分岐光および拡散反射光を導光する光ファイバを含み、その光ファイバの先端部分が対象物(血管)2内に挿入される。光ファイバの先端部分から血管内壁へ向けて第2分岐光が出射され、その第2分岐光が照射された血管からの拡散反射光が光ファイバの先端部分に入射される。また、光ファイバの先端部分から第2分岐光が照射される位置は、走査部41により血管の周方向および軸方向に走査される。なお、対象物2が生体である場合、光源部10は、波長範囲1200nm〜1400nmまたは波長範囲1500nm〜1800nmを含む帯域の光を出力するのが好ましい。
【0039】
図11は、本実施形態の光断層画像取得装置1の動作を説明するタイミングチャートである。同図には、上から順に、(A) 走査部41による対象物(血管)2における周方向の光照射位置、(B) 偏向部53による偏向角度、(C) 受光部55の受光面におけるY方向の光入射位置、および、(D) 受光部55による受光のオン/オフ、それぞれのタイミングが示されている。
【0040】
受光部55は、所定の周期で繰り返し測定を行い、1周期内で所定時間だけ受光し、その間に検出された光量を検出する。この所定時間内に偏向部54が一方向に回転される。このとき、受光部55の受光面に到達する光はY方向にふれるが、露光時間中におけるその範囲が受光面のY方向サイズになるようにあわせる。そして、受光部55の光到達位置が受光面全体にふれる間に対象物(血管)2における周方向の光照射位置が測定範囲をカバーしていれば、対象物(血管)2の各走査位置の深さ方向の情報が一括測定できることになり、1回の測定で対象物(血管)2の深さ方向および周方向走査方向を軸とする2次元の断層画像を取得することができる。これによりOCT測定の高速化を図ることができる。
【0041】
なお、同図では、対象物(血管)2に対してビームを回転走査した場合を想定しているが、往復運動でも構わず、また、非露光時に変速・停止しても構わない。また、受光部55の受光面におけるY方向の光入射位置は、露光時間内では等速運動しているのが望ましい。
【0042】
図12は、本実施形態の場合と通常のFD-OCTの場合との比較の一例を纏めた図表である。ここでは、通常のFD-OCTの場合、受光部が512ピクセルの1次元センサであるとし、本実施形態の場合、受光部55が640×512ピクセルの2次元センサであるとした。通常のFD-OCTでは、1ポイントの測定が9kHzで行われるが、全周にわたって測定する速さは14Hzであり、軸方向5mmの長さを測定するのに18秒必要である。一方、本実施形態の場合には、一周分の情報を一括して取り込め、この速さが90Hzであり、軸方向5mmの長さを測定するのに必要な時間は2.8秒である。このように、通常のFD-OCTと比較して、本実施形態では、対象物2の光断層画像を高速に取得することができる。
【0043】
対象物2としての血管の断層画像を取得する場合には、視野を確保するため、生食等の透明液をフラッシュして血液を置換する。通常のOCTでは測定時間がかかるので、血液の流れを一時的に止める(閉塞する)ことが必要があった。しかし、本実施形態では、測定を短時間に行うことができるので、非閉塞状態で測定できるようになり、患者の負担軽減に有効となる。
【符号の説明】
【0044】
1…光断層画像取得装置、2…対象物、10…光源部、20,20A,20B,20C…干渉部、30…参照部、31…反射体、40…測定部、41…走査部、50,50A,50B…検出部、51…レンズ、52A…反射型回折格子、52B…透過型回折格子、53…偏向部、54…レンズ、55…受光部、60…解析部、70…表示部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光断層画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィ(Optical CoherenceTomography: OCT)に拠る光断層画像取得技術は、光の干渉を用いて対象物の深さ方向の反射量分布を測定することができる。この光断層画像取得技術は、高い空間分解能で対象物の内部の構造を画像化することができることから、近年では生体計測に応用されている。
【0003】
OCTに拠る光断層画像取得装置は、光源部から出力される光を2分岐して第1分岐光および第2分岐光とし、第1分岐光を反射体に照射したときに該反射体で生じる反射光と、第2分岐光を対象物に照射したときに該対象物で生じる拡散反射光とを干渉させ、当該干渉光のパワーを検出部により検出し、この検出結果を解析することで対象物の深さ方向の反射情報分布を得る。さらに、対象物への光照射位置を走査することで、対象物の断層画像を取得することができる。
【0004】
OCTのうちTD-OCT(time-domainOCT)は、コヒーレンス長が短い光を出力する光源部を用いたときに、光源部から検出部までの両光の光路長差がある場合には干渉光の振幅が小さく、光源部から検出部までの両光の光路長差がない場合にのみ干渉光の振幅が大きくなることを利用する。このTD-OCTでは、反射体の位置に応じた対象物の深さ方向位置の反射情報を得ることができるので、反射体を移動させながら干渉光振幅を検出することにより、対象物の深さ方向の反射情報分布を得ることができる。ただし、TD-OCTでは、対象物の深さ方向の反射情報分布を得るために、機械的に反射体を移動させることが必要であるので、対象物の断層画像を取得する時間が長い。
【0005】
一方、OCTのうちFD-OCT(Fourier-domainOCT)は、干渉信号の波長依存性を利用するものであって、TD-OCTと比べると対象物の断層画像を取得する時間が短い。光源部から出力される光を第1分岐光と第2分岐光とに等分した場合、光源部から出力される光のパワーをP0、光の波数をk(=2π/λ)、対象物の深さ方向位置をz、対象物での反射率をRs、反射体での反射率をRmで表したとき、波数kの光についての干渉信号の強度P(k)は、以下の式で表される。
P(k)=P0/4{Rs+Rm+2(RsRm)1/2cos(2kz)}
【0006】
この式から判るように、波数kの光についての干渉信号の強度P(k)は、対象物での反射率Rsの2分の1乗に比例する振幅で、対象物の深さ方向位置zに応じた周期で振動する。したがって、検出部により検出される干渉信号のスペクトルを波数軸2kでフーリエ変換すると、その結果は、対象物の深さ方向位置zでの反射率Rs(すなわち、深さ方向の反射率分布)を表すものとなる。FD-OCTは、このことを利用する。
【0007】
すなわち、FD-OCTでは、対象物に対して光を照射したときに、その光が対象物の内部まで浸透し光軸に沿った各位置で拡散反射が生じると、検出部により検出される干渉信号は、対象物の内部の各位置についての信号が重なり合った形で現れる。このような干渉信号をフーリエ変換すると、対象物の深さ方向の反射分布が直接求められる。FD-OCTでは、スペクトルを測定する必要があるので、検出部として分光器を用いる。FD-OCTは、機械的に反射体を移動させる必要がないので、TD-OCTと比べると対象物の断層画像を取得する時間が短い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Maciej Wojtkowski他、OPTICS LETTERS, Vol. 28(2003), p1745
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
OCTに拠る光断層画像取得技術は、生体計測に応用される場合には、拍動等の生体の動きの影響を受けないように、かつ、測定中の生体への負荷を最小限にするように、高い走査速度が必要とされる。対象物の深さ方向の断層画像を取得する際に反射体の機械的な走査が不要であるFD-OCTは、TD-OCTと比べると対象物の断層画像を取得する時間が短いものの、更なる高速化が望まれる。
【0010】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、対象物の光断層画像を高速に取得することが可能な光断層画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光断層画像取得装置は、(1) 光を出力する光源部と、(2) 光源部から出力される光を2分岐して第1分岐光および第2分岐光とし、第1分岐光を反射体に照射するとともに当該照射に伴う反射体からの反射光を入力し、第2分岐光を対象物に照射するとともに当該照射に伴う対象物からの拡散反射光を入力し、これら反射光と拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を出力する干渉部と、(3) 対象物への第2分岐光の照射位置を走査する走査部と、(4) 干渉部から出力される干渉光を検出する検出部と、(5) 検出部による検出の結果を解析して対象物の光断層画像を求める解析部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の光断層画像取得装置において、検出部は、(a) 干渉部から出力される干渉光を分光して各波長の光を所定平面上であって該波長に応じて異なる方向へ出力する分光部と、(b) 分光部から出力される各波長の光を所定平面に対して偏向角度方向に偏向させる偏向部と、(c) 偏向部により偏向された各波長の光を集光する集光部と、(d) 集光部により光が集光される受光面上の各位置に到達する光のパワーを検出する受光部と、を含むことを特徴とする。そして、解析部は、走査部による照射位置と偏向部による偏向角度との対応関係と、受光部により検出された光パワー分布とに基づいて、対象物の光断層画像を求めることを特徴とする。
【0013】
本発明の光断層画像取得装置において、光源部から波長範囲1200nm〜1400nmまたは波長範囲1500nm〜1800nmを含む帯域の光を出力するのが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、対象物の光断層画像を高速に取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の光断層画像取得装置1の概略構成を示す図である。
【図2】FD-OCTの原理を説明する図である。
【図3】FD-OCTの原理を説明する図である。
【図4】本実施形態の光断層画像取得装置1の干渉部20の構成例を示す図である。
【図5】本実施形態の光断層画像取得装置1の干渉部20の構成例を示す図である。
【図6】本実施形態の光断層画像取得装置1の干渉部20の構成例を示す図である。
【図7】本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の構成例を示す図である。
【図8】本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の構成例を示す図である。
【図9】本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の受光部55における受光の様子を説明する図である。
【図10】本実施形態の光断層画像取得装置1の測定部40を説明する図である。
【図11】本実施形態の光断層画像取得装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
【図12】本実施形態の場合と通常のFD-OCTの場合との比較の一例を纏めた図表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態の光断層画像取得装置1の概略構成を示す図である。光断層画像取得装置1は、FD−OCTに拠って対象物2の光断層画像を取得するものであって、光源部10、干渉部20、参照部30、測定部40、検出部50、解析部60および表示部70を備える。
【0018】
光源部10は、帯域を有する光を出力する。OCTでは、対象物2の深さ方向の空間分解能は光の帯域幅に反比例し、スペクトル形状にも依存する。したがって、光源部10として、広帯域かつ平坦度の高いスペクトルを有した光を出力することができるものが好ましい。例えば、希土類元素が添加されたガラスを光増幅媒体として備え広帯域の自然放出(ASE)光を出力することができるASE光源、光導波路における非線形光学現象によって帯域が拡大されたスーパーコンティニウム(SC)光を出力することができるSC光源、スーパールミネッセントダイオード(SLD)を含む光源、等が好適に用いられる。
【0019】
干渉部20は、光源部10からから出力される光を2分岐して第1分岐光および第2分岐光とし、第1分岐光を反射体31に照射するとともに当該照射に伴う反射体31からの反射光を入力し、第2分岐光を対象物2に照射するとともに当該照射に伴う対象物2からの拡散反射光を入力し、これら反射光と拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を検出部50へ出力する。
【0020】
参照部30は、反射体31と干渉部20と反射体31との間の光学系とを含み、干渉部20からの第1分岐光を反射体31へ導き、反射体31からの反射光を干渉部20へ導く。測定部40は、干渉部20と対象物2との間の光学系であり、干渉部20からの第2分岐光を対象物2へ導き、対象物2からの拡散反射光を干渉部20へ導く。また、対象物2への第2分岐光の照射位置を走査する走査部41が設けられている。
【0021】
検出部50は、干渉部40から出力される干渉光を検出する。解析部60は、検出部50による検出の結果を解析して対象物2の光断層画像を求める。表示部70は、解析部60により求められた対象物2の光断層画像を表示する。
【0022】
FD-OCTでは、検出部50により干渉信号のスペクトルを測定し、解析部60により該スペクトルをフーリエ変換することで対象物2の深さ方向の反射情報分布を得ることができる。FD-OCTでは、機械的に反射体31を移動させる必要がないので、TD-OCTと比べると対象物2の断層画像を取得する時間が短い。
【0023】
図2および図3は、FD-OCTの原理を説明する図である。図2に示されるように、対象物2における深さ方向をz軸とし、対象物2中の2つの深さ方向位置にある反射面A,Bを考える。このとき、図3(a)に示されるように、検出部50により検出される干渉信号は、対象物2中の反射面Aからの拡散反射光の成分と、対象物2中の反射面Bからの拡散反射光の成分とを含む。
【0024】
反射面Aの深さ方向位置と反射面Bの深さ方向位置とが互いに異なるので、干渉信号に含まれる反射面A,Bそれぞれからの拡散反射光の成分は、対象物2の深さ方向位置zに応じて互いに異なる周期で振動する。したがって、検出部50により検出される干渉信号のスペクトルを波数軸2kでフーリエ変換すると、その結果は、図3(b)に示されるように、対象物2の深さ方向位置zでの反射率(すなわち、深さ方向の反射率分布)を表すものとなる。
【0025】
本実施形態の光断層画像取得装置1は、FD-OCTを基本とするものであるが、従来のFD-OCTより高速に断層画像を取得することを可能とする。
【0026】
図4〜図6それぞれは、本実施形態の光断層画像取得装置1の干渉部20の構成例を示す図である。
【0027】
図4に示される第1構成例の干渉部20Aは、ハーフミラーを含み、マイケルソン干渉計を構成している。干渉部20Aのハーフミラーは、光源部10から到達した光のうち、一部を反射させて第1分岐光として参照部30へ出力し、残部を透過させて第2分岐光として測定部40へ出力する。また、干渉部20Aのハーフミラーは、参照部30から到達した反射光を透過させるとともに、測定部40から到達した拡散反射光を反射させて、これら反射光と拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を検出部50へ出力する。
【0028】
図5に示される第2構成例の干渉部20Bは、光カプラを含み、マイケルソン干渉計を構成している。干渉部20Bの光カプラは、光源部10から到達した光を2分岐して、一方の第1分岐光を参照部30へ出力し、他方の第2分岐光を測定部40へ出力する。また、干渉部20Bの光カプラは、参照部30から到達した反射光と測定部40から到達した拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を検出部50へ出力する。
【0029】
図6に示される第3構成例の干渉部20Cは、光カプラ21,22および光サーキュレータ23,24を含み、マッハツェンダ干渉計を構成している。光カプラ21は、光源部10から到達した光を2分岐して、一方の第1分岐光を光サーキュレータ23へ出力し、他方の第2分岐光を光サーキュレータ24へ出力する。光サーキュレータ23は、光カプラ21から到達した第1分岐光を参照部30へ出力し、参照部30から到達した反射光を光カプラ22へ出力する。光サーキュレータ24は、光カプラ21から到達した第2分岐光を測定部40へ出力し、測定部40から到達した拡散反射光を光カプラ22へ出力する。光カプラ22は、光サーキュレータ23から到達した反射光と光サーキュレータ24から到達した拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を検出部50へ出力する。
【0030】
なお、参照部30における反射板31への光照射および測定部40における対象物2への光照射それぞれに際しては、集光して照射してもよいし、コリメートして照射してもよい。また、光路上に、光減衰器、強度変調器、偏波変調器、位相変調器または光アイソレータ(一方向に光が伝播する部分のみ)が挿入されていてもよい。
【0031】
図7および図8それぞれは、本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の構成例を示す図である。
【0032】
図7に示される第1構成例の検出部50Aは、レンズ51、反射型回折格子52A、偏向部53、レンズ54および受光部55を含む。レンズ51は、干渉部20から光ファイバを経由して出力されて到達した干渉光をコリメートし、そのコリメートした干渉光を反射型回折格子52Aへ入射させる。図7では、レンズ51から反射型回折格子52Aへの干渉光の進行方向は紙面内でこれをX方向、紙面と垂直な方向をY方向、X方向およびY方向と垂直な方向をZ方向と規定する。分光部としての反射型回折格子52Aは、XZ平面(紙面)に垂直な格子面上にY方向に延在する多数の格子が一定周期で配列されたものであり、レンズ51によりコリメータされて到達した干渉光を分光して、各波長の光をXZ平面上であって該波長に応じて異なる方向へ出力する。
【0033】
偏向部53は、XZ平面に平行な軸を中心にして回転自在であり、反射型回折格子52Aから出力される各波長の光をXZ平面に対して偏向角度方向に偏向させる。偏向部53として、ガルバノミラーまたはポリゴンミラーが好適に用いられる。集光部としてのレンズ54は、XZ平面に平行な光軸を有し、偏向部53により偏向された各波長の光を受光部55の受光面上に集光する。レンズ54はfθレンズであるのが好適であり、この場合には、受光部55の受光面上の位置と波長λおよび偏向角度との関係が単純比例関係になる。また、レンズ54はテレセントリック光学系であるのが好適であり、この場合には、受光部55の受光面上の各位置での集光能力のばらつきがなくなる。受光部55は、XZ平面に垂直な受光面を有し、レンズ54により光が集光される受光面上の各位置に到達する光のパワーを検出する。
【0034】
図8に示される第2構成例の検出部50Bは、図7に示された第1構成例の検出部50Aと比較すると、反射型回折格子52Aに替えて透過型回折格子52Bを含む点で相違し、その他の構成については同様である。反射型回折格子52Aおよび透過型回折格子52Bの何れの場合にも、回折格子面の法線に対する光の入射角θinと回折角θoutとの間には、以下の式で表される関係がある。Nは回折格子の単位長さあたりの溝本数、mは回折次数であり、λは波長である。
sinθin + sinθout = Nmλ
【0035】
検出部50では、干渉部20から出力された干渉光は、レンズ51によりコリメートされた後、反射型回折格子52Aまたは透過型回折格子52Bにより分光されて、各波長の光がXZ平面上であって該波長に応じて異なる方向へ出力される。反射型回折格子52A、反射型回折格子52Bから出力された各波長の光は、偏向部53によりXZ平面に対して偏向角度方向に偏向され、レンズ54により受光部55の受光面上に集光される。受光部55では、レンズ54により光が集光される受光面上の各位置に到達する光のパワーが検出される。
【0036】
図9は、本実施形態の光断層画像取得装置1の検出部50の受光部55における受光の様子を説明する図である。偏向部53における偏向角度が一定である場合、同図に示されるように、受光部55の受光面においてXZ平面に平行な干渉光のスペクトルが得られる。また、偏向部53における偏向角度が異なると、受光部55の受光面に干渉光が到達するY方向位置が異なる。
【0037】
そこで、本実施形態では、走査部41による照射位置と偏向部53による偏向角度とを互いに対応付ける。そして、解析部60は、走査部41による照射位置と偏向部53による偏向角度との対応関係と、受光部55により検出された光パワー分布とに基づいて、対象物2の光断層画像を求めることができる。以下では、対象部2が血管であるとして、本実施形態の動作および光断層画像取得装置1を使用した光断層画像取得方法について説明する。
【0038】
図10は、本実施形態の光断層画像取得装置1の測定部40を説明する図である。ここでは、一例として血管内の断層画像取得を想定している。測定部40は、第2分岐光および拡散反射光を導光する光ファイバを含み、その光ファイバの先端部分が対象物(血管)2内に挿入される。光ファイバの先端部分から血管内壁へ向けて第2分岐光が出射され、その第2分岐光が照射された血管からの拡散反射光が光ファイバの先端部分に入射される。また、光ファイバの先端部分から第2分岐光が照射される位置は、走査部41により血管の周方向および軸方向に走査される。なお、対象物2が生体である場合、光源部10は、波長範囲1200nm〜1400nmまたは波長範囲1500nm〜1800nmを含む帯域の光を出力するのが好ましい。
【0039】
図11は、本実施形態の光断層画像取得装置1の動作を説明するタイミングチャートである。同図には、上から順に、(A) 走査部41による対象物(血管)2における周方向の光照射位置、(B) 偏向部53による偏向角度、(C) 受光部55の受光面におけるY方向の光入射位置、および、(D) 受光部55による受光のオン/オフ、それぞれのタイミングが示されている。
【0040】
受光部55は、所定の周期で繰り返し測定を行い、1周期内で所定時間だけ受光し、その間に検出された光量を検出する。この所定時間内に偏向部54が一方向に回転される。このとき、受光部55の受光面に到達する光はY方向にふれるが、露光時間中におけるその範囲が受光面のY方向サイズになるようにあわせる。そして、受光部55の光到達位置が受光面全体にふれる間に対象物(血管)2における周方向の光照射位置が測定範囲をカバーしていれば、対象物(血管)2の各走査位置の深さ方向の情報が一括測定できることになり、1回の測定で対象物(血管)2の深さ方向および周方向走査方向を軸とする2次元の断層画像を取得することができる。これによりOCT測定の高速化を図ることができる。
【0041】
なお、同図では、対象物(血管)2に対してビームを回転走査した場合を想定しているが、往復運動でも構わず、また、非露光時に変速・停止しても構わない。また、受光部55の受光面におけるY方向の光入射位置は、露光時間内では等速運動しているのが望ましい。
【0042】
図12は、本実施形態の場合と通常のFD-OCTの場合との比較の一例を纏めた図表である。ここでは、通常のFD-OCTの場合、受光部が512ピクセルの1次元センサであるとし、本実施形態の場合、受光部55が640×512ピクセルの2次元センサであるとした。通常のFD-OCTでは、1ポイントの測定が9kHzで行われるが、全周にわたって測定する速さは14Hzであり、軸方向5mmの長さを測定するのに18秒必要である。一方、本実施形態の場合には、一周分の情報を一括して取り込め、この速さが90Hzであり、軸方向5mmの長さを測定するのに必要な時間は2.8秒である。このように、通常のFD-OCTと比較して、本実施形態では、対象物2の光断層画像を高速に取得することができる。
【0043】
対象物2としての血管の断層画像を取得する場合には、視野を確保するため、生食等の透明液をフラッシュして血液を置換する。通常のOCTでは測定時間がかかるので、血液の流れを一時的に止める(閉塞する)ことが必要があった。しかし、本実施形態では、測定を短時間に行うことができるので、非閉塞状態で測定できるようになり、患者の負担軽減に有効となる。
【符号の説明】
【0044】
1…光断層画像取得装置、2…対象物、10…光源部、20,20A,20B,20C…干渉部、30…参照部、31…反射体、40…測定部、41…走査部、50,50A,50B…検出部、51…レンズ、52A…反射型回折格子、52B…透過型回折格子、53…偏向部、54…レンズ、55…受光部、60…解析部、70…表示部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力する光源部と、
前記光源部から出力される光を2分岐して第1分岐光および第2分岐光とし、前記第1分岐光を反射体に照射するとともに当該照射に伴う前記反射体からの反射光を入力し、前記第2分岐光を対象物に照射するとともに当該照射に伴う前記対象物からの拡散反射光を入力し、これら反射光と拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を出力する干渉部と、
前記対象物への前記第2分岐光の照射位置を走査する走査部と、
前記干渉部から出力される干渉光を検出する検出部と、
前記検出部による検出の結果を解析して前記対象物の光断層画像を求める解析部と、
を備え、
前記検出部が、
前記干渉部から出力される干渉光を分光して各波長の光を所定平面上であって該波長に応じて異なる方向へ出力する分光部と、
前記分光部から出力される各波長の光を前記所定平面に対して偏向角度方向に偏向させる偏向部と、
前記偏向部により偏向された各波長の光を集光する集光部と、
前記集光部により光が集光される受光面上の各位置に到達する光のパワーを検出する受光部と、
を含み、
前記解析部が、前記走査部による照射位置と前記偏向部による偏向角度との対応関係と、前記受光部により検出された光パワー分布とに基づいて、前記対象物の光断層画像を求める、
ことを特徴とする光断層画像取得装置。
【請求項2】
前記光源部が、波長範囲1200nm〜1400nmまたは波長範囲1500nm〜1800nmを含む帯域の光を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光断層画像取得装置。
【請求項1】
光を出力する光源部と、
前記光源部から出力される光を2分岐して第1分岐光および第2分岐光とし、前記第1分岐光を反射体に照射するとともに当該照射に伴う前記反射体からの反射光を入力し、前記第2分岐光を対象物に照射するとともに当該照射に伴う前記対象物からの拡散反射光を入力し、これら反射光と拡散反射光とを互いに干渉させて当該干渉光を出力する干渉部と、
前記対象物への前記第2分岐光の照射位置を走査する走査部と、
前記干渉部から出力される干渉光を検出する検出部と、
前記検出部による検出の結果を解析して前記対象物の光断層画像を求める解析部と、
を備え、
前記検出部が、
前記干渉部から出力される干渉光を分光して各波長の光を所定平面上であって該波長に応じて異なる方向へ出力する分光部と、
前記分光部から出力される各波長の光を前記所定平面に対して偏向角度方向に偏向させる偏向部と、
前記偏向部により偏向された各波長の光を集光する集光部と、
前記集光部により光が集光される受光面上の各位置に到達する光のパワーを検出する受光部と、
を含み、
前記解析部が、前記走査部による照射位置と前記偏向部による偏向角度との対応関係と、前記受光部により検出された光パワー分布とに基づいて、前記対象物の光断層画像を求める、
ことを特徴とする光断層画像取得装置。
【請求項2】
前記光源部が、波長範囲1200nm〜1400nmまたは波長範囲1500nm〜1800nmを含む帯域の光を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光断層画像取得装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−242213(P2012−242213A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111476(P2011−111476)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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