説明

光断層画像表示システム

【課題】光断層画像表示システムにおいて、高精度で断層画像を表示システムの提供。
【解決手段】周波数領域の光断層画像表示システムにおいて、干渉光の周波数分析を行い、光断層画像を得る。このとき干渉信号を解析対象信号として解析対象信号と、周波数f’及び初期位相φ’を用いた位相と振幅A’とによって表される正弦波モデル信号との差の二乗和が最小値になるように周波数f’、振幅A’、初期位相φ’を求め、その解析結果により、断層画像を表示する。これにより高精度の光断層画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理に特徴を有する光断層画像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年内視鏡治療などの医療技術の進歩に伴って、病理組織の診断を非深襲かつリアルタイムに行う診断方法が望まれている。従来例えばCCDを用いた電子内視鏡や、CT、MRI、超音波による画像化が診断方法として用いられている。電子内視鏡は生体の表面の観察に限定され、また後者の画像診断システムはミクロンオーダーの分解能で観察するには技術的な限界があった。このような方法を補完する技術として、光コヒーレンストモグラフィーシステム(OCT)が注目されている。
【0003】
OCTの中には、時間領域OCT(TD−OCT)と周波数領域OCT(FD−OCT)の2種類があり、またFD−OCTの中にもスペクトロメータタイプ(SD−OCT)と波長走査型光源タイプ(SS−OCT)の2つがある。従来の時間領域OCTの場合には、広帯域な光を当て生体内部からの反射光の干渉成分を周波数分析していたが、この方法だと干渉光の中に異なる深さからの反射光も重なりあうために、ある特定の深さからの信号光だけを感度良く検出できなかった。
【0004】
一方スペクトロメータタイプのOCTは、特許文献1に示されているように、白色光源を生体に光を照射し、参照光と生体内の異なる深さから戻ってくる反射光とを干渉計で干渉させる。そして反射光を回折格子等で分光して1次元CCDで受光し、電気信号とする。波長走査型OCTは、特許文献2に記されているように、生体に光を照射し、照射光の波長を連続的に変化させ、参照光と生体内の異なる深さから戻ってくる反射光とを干渉計で干渉させる。これらはいずれも干渉信号の周波数成分を分析することによって、断層画像を得るシステムである。FD−OCTは得られた干渉信号光をフーリエ変換し、断層画像を得るようにしている。この技術は高分解能の断層画像を構築することができるため、高度なシステムとして期待されており、理論的に時間領域OCTの100倍以上の感度が得られる。波長走査型OCTは測定感度も高く、動的ノイズに強いという点で内視鏡などの実使用に好適である。ここで照射する光の波長走査の帯域が広いほど周波数分析の帯域が上がるので、深さ方向の分解能が上がる。
【0005】
しかしながらFD−OCTはフーリエ変換時に窓の影響によりメインローブ以外にもサイドローブが発生するため、分解能に限界があるという欠点があった。以下この問題点について説明する。
【0006】
従来から、フーリエ変換を用いた正弦波モデルによる信号解析方法としては、非特許文献1にも紹介されているように、様々な手法が提案されているが、その多くは、信号の周波数を事前に推定し、その推定した周波数における最適な振幅や初期位相を求めることによって行われている。
【0007】
信号は複数の周波数の正弦波の重ね合わせであり、信号を解析するには、当該信号を構成する様々な周波数の正弦波毎に振幅や初期位相等の周波数パラメータを推定することになる。このような周波数解析手法としては、フーリエ変換が広く知られている。フーリエ変換における周波数パラメータの推定は、周期的な信号の場合には、次式(1)に示すように、有限長の窓によるフーリエ変換式を用いて行うことができ、この次式(1)に基づいて、特定の周波数f(=n/T:nは整数、Tは解析窓長)のパラメータ(振幅A及び初期位相φ)を推定することができる。ただし、振幅Aと初期位相φとX(f)との関係は次式(2)である。
【0008】
【数1】

【数2】

【0009】
このようなフーリエ変換によって推定することが可能な周波数パラメータは、解析窓長Tに依存し、1/Tの整数倍の周波数分しか計算することができない。したがって、上式(1)を用いてパラメータを推定している限り、周波数fは、原理的に離散的となり、非周期信号の周波数成分を特定することはできない。また、フーリエ変換を用いて周波数解析を行っている分野では、そのほとんどが、周期を持たない非周期信号を解析対象とするにもかかわらず、無限長の積分区間にわたる積分計算が極めて困難であることから、上式(1)を用いなければならないのが現状である。
【0010】
この問題を解決するために、窓関数の調整や解析区間を複数利用して見かけ上の周波数分解能を向上させる試みがある。
【0011】
例えば、非特許文献2に記載の短時間フーリエ変換(Short-Time Fourier Transform、Short-Term Fourier Transform;STFT)は、音響信号を短時間の解析窓によって複数の信号に分割し、各信号に対して独立にフーリエ変換を行う手法である。
【0012】
また、非特許文献3乃至非特許文献6に記載のABS(Analysis by Synthesis)法やGHA(Generalized Harmonic Analysis)等においては、最適な周波数を定めるための周波数を複数用意して振幅及び初期位相を求め、その中から最適な周波数と振幅と初期位相との組み合わせを選択している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−132996号
【特許文献2】特開2007−024677号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】東山三樹夫、小池恒彦、「高い周波数分析精度の信号分析手法」、日本音響学会論文誌、1988年、第54巻、第8号
【非特許文献2】L. R. Rabiner and R. W. Schafer, "Digital Processing of Speech Signals", Prentice-Hall, Englewood Cliffs, NJ, 1978年
【非特許文献3】T. F. Quatieri and R. J. McAulay, "Speech transformations based on a sinesoidal representation", IEEE Trans. Acoust. Speech Signal Process. ASSP 34, 1986年, p.1449-1464
【非特許文献4】E. B. George and M. J. Smith, "Analysis-by-synthesis/overlap-add sinusoidal representation", J. Audio Eng. Soc. 40, 1992年, p.497-515
【非特許文献5】E. B. George and M. J. Smith, "Speech analysis/synthesis and modification using an analysis-by-synthesis/overlap-add sinusoidal model", IEEE Trans. Speech Audio Process. 5, 1997年, p.389-406
【非特許文献6】T. Terada, H. Nakajima, M. Tohyama and Y. Hirata, "Non-stationary waveform analysis and synthesis using generalized harmonic analysis", IEEE-SP, Int. Symp. TF/TS Analysis, 1994年, p.429-432
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述した非特許文献2に記載の短時間フーリエ変換においては、短時間の解析窓長の逆数の整数倍の周波数でしか、周波数パラメータを推定することができないという問題がなおも存在する。
【0016】
また、上述した非特許文献3乃至非特許文献6に記載のABS法やGHA等においては、元の信号に対して、予め用意された周波数と異なる周波数が存在する場合には、誤った組み合わせが複数検波されてしまい、解析精度が低下するという問題がある。
【0017】
これら窓関数の調整や解析区間を複数利用して見かけ上の周波数分解能を向上させる試みは、
1)周波数分解能を上げるためには解析窓長を長くしなければならないが、時間的な周波数変動をともなう信号では周波数が平均化され、時間的な変動を捉えることが困難となること
2)一方、解析窓長を短くすると、周波数分解能が低下すること
という問題が指摘されている。
【0018】
このように、周波数の変化を細かく捉えることと、周波数分解能を上げることとは、互いに相反する関係にあり、信号解析上の大きな問題となっていた。
【0019】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、光断層画像表示システムにおいて周波数分解能が解析窓長に依存せずに高い周波数分解能を有し、高精度に周波数解析を行うことができ、高分解能、高感度、高速で画像表示することができる光断層画像表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この課題を解決するために、本発明の光断層画像表示システムは、周期的に光の発振波長を走査する波長走査型光源と、前記波長走査型光源からの光を参照光と物体への照射光とに分岐し、物体からの反射光と参照光との干渉光を発生する干渉光学計と、前記干渉光学計より得られる干渉光を受光し、ビート信号を得る受光素子と、前記受光素子から得られる干渉信号に対して周波数解析を行い、物体の断層画像を形成する信号解析部と、を具備し、前記信号解析部は、前記受光素子から得られる干渉信号を解析対象信号として保持する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記解析対象信号を読み出し、前記解析対象信号と、周波数f’及び初期位相φ’を用いた位相と振幅A’とによって表される正弦波モデル信号との差の二乗和が最小値になるような前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’を算出し、求めた前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’に基づき断面画像を出力する演算手段と、前記演算手段より得られる断面画像を表示する表示部と、を具備するものである。
【0021】
この課題を解決するために、本発明の光断層画像表示システムは、所定の範囲で一様な波長の光を発振する光源と、前記光源からの光を参照光と物体への照射光とに分岐し、物体からの反射光と参照光との干渉光を発生する干渉光学計と、前記干渉光学計から得られる干渉光を波長に基づいて分岐する波長分光手段と、前記波長分光手段より分光された範囲の干渉光を受光して電気信号に変換する一次元受光素子と、前記一次元受光素子から得られる干渉信号に対して周波数解析を行い、物体の断層画像を形成する信号解析部と、を具備し、前記信号解析部は、前記受光素子から得られる干渉信号を解析対象信号として保持する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記解析対象信号を読み出し、前記解析対象信号と、周波数f’及び初期位相φ’を用いた位相と振幅A’とによって表される正弦波モデル信号との差の二乗和が最小値になるような前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’を算出し、求めた前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’に基づき断面画像を出力する演算手段と、前記演算手段より得られる断面画像を表示する表示部と、を具備するものである。
【0022】
ここで前記演算手段は、前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’のそれぞれについて適切な初期値を求め、求めた初期値から非線形方程式の最適解に収束させて前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’を求めるようにしてもよい。
【0023】
ここで前記演算手段は、前記正弦波モデル信号の位相を構成する前記周波数f’及び前記初期位相φ’について最急降下法を適用して収束させ、当該周波数f’及び当該初期位相φ’を求め、前記正弦波モデル信号の係数としての前記振幅A’について最急降下法を適用して収束させ、当該振幅A’を求めるようにしてもよい。
【0024】
ここで前記演算手段は、前記最急降下法を適用して前記周波数f’及び前記初期位相φ’を収束させた後、さらに、ニュートン法を適用して前記周波数f’及び前記初期位相φ’を収束させるようにしてもよい。
【0025】
ここで前記波長走査型光源の1走査の期間内に、前記波長走査型光源の光の等周波数間隔でのトリガ信号を発生するkトリガ発生部を更に有し、前記信号解析部の記憶部は、前記kトリガ発生部により発生したkトリガ信号のタイミングで前記干渉信号を保持するものとしてもよい。
【0026】
ここで前記信号解析部の演算手段は、物体の測定位置に反射物を配置したときに、前記受光素子からの出力をデータ番号を付して等時間間隔で取り込み、前記ビート信号のピークとなるデータ番号を算出し、ピーク番号に対するデータ番号を示す近似曲線を算出し、前記ピーク番号変化分を任意の数に分割して、分割したピーク番号に対応するデータ番号を近似曲線により算出しデータ取り込み数列とし、測定位置に測定物体を配置したときの前記受光素子からの等時間間隔の出力から、前記データ取り込み数列の各要素でのタイミングの信号レベルを算出し、得られた等周波数間隔のデータを前記記憶手段に保持するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
このような本発明による光断層画像表示システムによれば、干渉光信号を周波数分析する際に非周期信号を想定した周波数解析を目的として定式化を行い、非周期信号のフーリエ変換式のパラメータを求める問題を非線形方程式の最適解を求める問題に置き換えることにより、周波数分解能が解析窓長に依存しない。従って従来のフーリエ変換による周波数解析手法における精度と比べて10万〜100億倍以上という驚くべき高精度で周波数解析を行うことができ、高分解能で断層画像を表示することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態による光断層画像表示システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態による光断層画像表示システムのkトリガ発生部の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態による光断層画像表示システムの信号解析部の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は走査角度と発振周波数の関係の一例を示すグラフである。
【図5】図5は本周波数解析手法とDFTとの違いを説明するための図である。
【図6】図6は本周波数解析手法とDFTとの違いを説明するための図であり、2次元の解析対象信号に各手法を適用した場合の具体例を示す図である。
【図7】図7は本周波数解析手法とDFTとGHAとの違いを説明するための図であり、各手法の誤差を求めた結果を示す図である。
【図8】図8は本周波数解析手法とDFTとの違いを説明するための図であり、2次元の解析対象信号に各手法を適用して得られるスペクトルの解析精度の具体例を示す図である。
【図9】図9は本発明の第2の実施の形態による光断層画像表示システムの全体構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
10 波長走査型光源
11,14,18 光ファイバ
15,19,22 レンズ
16 参照ミラー
20 スキャニングミラー
23 フォトダイオード
24 増幅器
25 信号解析部
26 スキャントリガ発生部
27 kトリガ発生部
31 クロック発生回路
32 トリガ生成回路
33 メモリ
34 RW制御部
40 光源
41 回折格子
42 一次元CCD
43 増幅器
50 入力インターフェイス
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 記憶部
55 入力操作制御部
56 表示部
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施の形態)
[光断層画像表示システムの構成]
図1は本発明の第1の実施の形態による光断層画像表示システムの全体構成を示すブロック図である。本実施の形態はSS−OCTによる光断層画像表示システムであり、光源として波長走査型光源を用いる。波長走査型光源10には一定の周波数範囲の光信号を発振する波長可変型のレーザを用いる。このレーザの出力は光ファイバ11を介して分岐部12に与えられる。光ファイバ11の他端には光増幅器13が設けられる。光増幅器13は波長走査型光源10のレーザ光をそのまま増幅するものであり、その出力は光ファイバ14に与えられる。光ファイバ14の他端にはコリメートレンズ15及び参照ミラー16を設ける。又この光ファイバ14の中間部分には、他の光ファイバ18を接近させて干渉させる結合部17が設けられる。光ファイバ18の一端には、波長走査型光源10から結合部17を介して得られた光信号を平行光とするコリメートレンズ19、光をスキャニングするスキャニングミラー20が設けられる。スキャニングミラー20は紙面に垂直な軸を中心にして一定範囲で回動することによって平行光の反射角度を変化させるものである。集束レンズ21はこの反射光を受光する位置に配置し、測定部位へ光を集束すると共に水平方向にスキャニング(走査)する。ここで結合部17から参照ミラー16までの光学距離L1と、結合部17から測定部位の表面までの光学距離L2とを等しくしておく。さて光ファイバ18の他端にはレンズ22を介してフォトダイオード23を接続する。フォトダイオード23は、参照ミラー16からの反射光と測定部位で反射された光の干渉光を受光することによって、そのビート信号を電気信号として得る受光素子である。ここで光ファイバ14,18と結合部17、コリメートレンズ15、参照ミラー16、コリメートレンズ19、スキャニングミラー20、集束レンズ21は干渉光学計を構成している。
【0031】
さてフォトダイオード23の出力は増幅器24を介して信号解析部25に入力される。信号解析部25は後述するように干渉計から得られる受光信号を周波数領域の信号に変換することによって、断層画像信号を得るものである。
【0032】
又波長走査型光源10の出力の一部は分岐部12によって分岐されてスキャントリガ発生部26に与えられる。スキャントリガ発生部26は波長走査型光源10の光の1走査の開始を示すスキャントリガ信号を発生するものである。又kトリガ発生部27はスキャントリガ信号に基づき1走査の範囲内で、等周波数間隔で多数のkトリガ信号を発生させるものである。このkトリガ信号は信号解析部25に入力される。
【0033】
次に図2はkトリガ発生部27の構成を示す図である。kトリガ発生部27は特許文献2に示されているように、クロック発生回路31及びトリガ生成回路32及びメモリ33を有している。クロック発生回路31は一定のタイミングでクロック信号を発生するものである。メモリ33は読み書きを制御するRW制御部34によってデータを任意に書き換えることができるものとする。このメモリ33は、波長走査型光源10の発振周波数f(f1≦f≦f2)を時間の関数として次式
f=f(t)
で表すものとし、周波数の変化範囲δfが等間隔になるタイミングをt1,t2・・・tm・・・tn(m=1〜n)とすると、次式で示される発振周波数
f(tm)=f1+(m−1)δf
となるタイミング
m=f-1{f1+(m−1)δf}
をテーブルとして保持するものである。トリガ生成回路32はトリガ信号が入力される毎にメモリ33のデータを読み出すことによって等周波数間隔のタイミングのkトリガ信号を発生するものである。
【0034】
[信号解析部の構成]
信号解析部25は、非線形方程式を解いてフーリエ係数を推定することにより、周波数分解能が解析窓長に依存しない新たな周波数解析手法を実現するものである。信号解析部25は、例えば図3に示すように、入力インターフェイス(IF)50と、各部を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)51と、各種プログラムを含む各種情報を格納する読み取り専用のROM(Read Only Memory)52と、ワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)53と、各種情報を読み出し及び/又は書き込み可能に記憶する記憶部54と、ユーザインターフェイスとしての図示しない所定の操作デバイスを介した入力操作の処理及び制御を行う入力操作制御部55と、各種情報を表示する表示部56とを備える。
【0035】
入力インターフェイス部50は、解析対象信号をCPU51によって読み出し可能に入力させる機能を有する。なお、入力インターフェイスは、kトリガ信号を入力した場合には、増幅器24の出力のA/D変換を行ってデジタル信号に変換する機能を有する。このとき、入力インターフェイスは、必要に応じてアンチエイリアシングフィルタを含むようにしてもよい。
【0036】
CPU51は、記憶部54等に格納されている各種アプリケーションプログラムをはじめとする各種プログラムを実行し、各部を統括的に制御する。
【0037】
ROM52は、各種プログラムをはじめとする各種情報を格納している。またRAM53は、CPU51が各種プログラムを実行する際のワークエリアとして機能する。CPU51はRAM53に各種情報を一時記憶するとともに、ROM52,RAM53に記憶している各種情報を読み出すものである。
【0038】
記憶部54は、本発明にかかる信号解析プログラム等のアプリケーションプログラムの他、周波数解析の対象となる解析対象信号のデータをはじめとする各種情報を記憶する。この記憶部54としては、例えば、ハードディスクや不揮発性メモリ等を用いることができる。また、記憶部54には、本体に対して着脱可能とされるフレキシブルディスクやメモリカード等の記憶媒体に対して、各種情報の読み出し及び/又は書き込みを行うドライブ装置も含まれる。この記憶部54に記憶されている各種情報は、CPU51の制御のもとに読み出される。
【0039】
入力操作制御部55は、例えば、キーボード、マウス、キーパッド、赤外線リモートコントローラ、スティックキー、又はプッシュボタンなどのユーザインターフェイスとなる所定の操作デバイスを介した入力操作を受け付け、操作内容を示す制御信号をCPU51に供給するものである。
【0040】
表示部56は、例えば、液晶ディスプレイなどの各種表示デバイスであり、CPU51の制御のもとに各種情報を表示する。例えば、表示部56は、CPU51によって信号解析プログラムが起動されると、その画面を表示し、入力された解析対象信号や周波数解析結果等を表示する。
【0041】
[光コヒーレントトモグラフィの原理]
次に、波長走査型光源を用いた光コヒーレントトモグラフィの原理について説明する。光源から光周波数が連続的にかつ周期的に変化するコヒーレント光を対象物体に照射させ、マイケルソン、あるいはマッハツェンダなどの干渉光学計を用いて物体内部、あるいは生体表皮下層で反射した後方散乱光と参照光とを干渉させる。この干渉光の強度分布を計測し、光周波数の変化に対応した強度分布の変化を測定することによって、深さ方向に沿った断層画像を構築できる。さらに物体上で1次元、2次元に空間ビームを走査することによって、夫々2次元、3次元の断層画像を構築することができる。
【0042】
干渉計において結合部17から2つの腕の光路、すなわち参照ミラー16までの光路L1と、物体中の反射面までの光路L2とが等しいときには、干渉光のビート周波数はゼロとなる。次に、反射光が物体内部のある深さzから反射するとき、光周波数が時間的に変化していると、その光路差の分、物体からの反射光と参照ミラー16からの反射光の周波数に差が生じ、干渉光にビートが生じる。ここで、例えば光源の光周波数が時間的に線形に走査されているとする。干渉計の腕の長さが等しい位置に物体の表面があり、物体の反射面は表面から深さzの位置にのみあるとする。結合部17での参照光の周波数と物体からの反射光(物体光)の周波数の時間的変化は、夫々図4の直線A,Bのようになる。ここで光周波数は走査レートα[Hz/s]で、時間T[s]内で周波数幅Δf=αT[Hz]にわたって走査される。参照光に対する物体光の遅れ時間τは、物体の屈折率をnとすると、
τ=2nz/c
となる。従ってフォトダイオード23で受光される干渉光は、ビート周波数
fb=ατ=(Δf/T)(2nz/c)
で変動することになる。
【0043】
実際は反射光は物体内部の深さに沿って連続的に異なった位置から発生するので、反射光はそれぞれの深さに対応した異なったビート周波数成分をもつ。従って干渉光の強度変化を周波数分析することによって、ビート周波数に対応するある特定の深さからの反射光強度を検出することができる。この反射強度の空間分布をとることで、断層画像を構築できる。
【0044】
dct=(ηq/hν){Pr+Po∫r(z)dz+2(PrPo)1/2
∫r(z)cos(2k(t)z+φ)dz}
干渉光信号Idctの第1,2項はそれぞれ参照ミラーと、物体からの反射光の直流成分であり、第3項が干渉信号光成分であり、式(2)においてPrは参照光強度、Poはプローブ光強度r(z)は深さ方向の反射率分布を示す。Idctの干渉光信号を周波数分析することによって、物体中の任意の深さに対応する散乱光強度の関係を得ることができる。本発明の信号解析部25は、この式で示される干渉光信号Idctを解析対象信号X(n)とし、ノンハーモニック分析によって周波数解析するようにしたものである。
【0045】
[光断層画像表示システムの動作]
次に本実施の形態の動作について説明する。波長走査型光源10を駆動する。これによって前述したように光ファイバ14,18を介して信号光が参照ミラー及び物体にまで照射され、その反射光が結合部17を介して得られる。そのビート周波数を持つ信号がフォトダイオード23に得られる。これを増幅した受光信号が信号解析部25に入力される。又前述したようにkトリガ発生部27から等周波数間隔のkトリガ信号が得られ、このkトリガ信号に応じてA/D変換を行い、信号解析部25で受光信号を周波数分析することにより深さ方向に1次元の断層画像が得られる。そしてスキャニングミラー20を回動させることによって光の入射位置を変化させ、これによって2次元の断面画像を得ることができる。又、この干渉計自体又は測定対象をスキャニングミラー20による光の走査方向と垂直に移動させることにより、3次元断面画像を得ることができる。
【0046】
次に信号解析部25の処理について更に詳細に説明する。CPU51の制御のもとに、信号解析プログラムを実行して入力された信号の周波数解析を行う。なお、周波数解析の対象となる解析対象信号X(n)は、信号入力インターフェイス50を介して入力され、CPU51によって読み出し可能に記憶部54に記憶される。信号解析部25は、CPU51の制御のもとに、このようにして入力された解析対象信号の周波数解析を行い、その解析結果等を表示部56に表示出力する。
【0047】
[周波数解析アルゴリズム]
以下、このような信号解析部25における周波数解析アルゴリズムについて詳述する。本発明の信号解析部25にて新たに提案する周波数解析手法(以下、本周波数解析手法という。)は、「周波数の変化を細かく捉えることと、周波数分解能を上げることとは、互いに相反する関係にある」という従来の周波数解析手法の問題を本質的に解決するために、非線形方程式の解を求める問題に着目した。すなわち、本周波数解析手法においては、次式(3)に示す非周期信号のフーリエ変換式の周波数パラメータを求める問題を非線形方程式の最適解を求める問題に置き換えたものである。
【0048】
【数3】

【0049】
具体的には、本周波数解析手法においては、次式(4)に示すように、解析対象信号x(n)と正弦波モデル信号との差の二乗和で表される非線形方程式の最適解として、この非線形方程式の右辺が最小値になるような周波数f’、振幅A’、及び初期位相φ’を求める。なお、次式(4)において、Lはフレーム長(解析窓長)であり、fsはサンプリング周波数[Hz]である。このように、非線形方程式に周波数f’をパラメータとして盛り込んだことは、いまだ事例がなく斬新である。換言すれば、本周波数解析手法においては、振幅A’及び初期位相φ’のみならず、周波数f’をも正確に求めることを目的とし、上式(3)に対して非線形方程式の解法を用いるものである。本周波数解析手法においては、このような最小二乗法によって非線形方程式の最適解を求める問題に帰着させることにより、解析窓の影響やエイリアシングの影響がなくなり、解析窓長が、1周期未満であってもよく、周期の整数倍でなくてもよく、さらには、不等間隔であってもよい等、柔軟な周波数解析処理を実現することが可能となる。
【0050】
【数4】

【0051】
なお、上式(4)は、解析対象信号x(n)が、受光信号、時系列信号等の1次元信号である場合を想定しているが、本周波数解析手法自体は、2次元の画像データ等の2次元信号や動画像データ等の3次元信号、ホログラムのような立体動画像データ等の4次元信号、さらにはそれ以上の次元の信号に対しても適用可能である。すなわち、本周波数解析手法は、1次元の解析対象信号をs(xn)、2次元の解析対象信号をs(xm,yn)、3次元の解析対象信号をs(xl,ym,zn)、4次元の解析対象信号をs(xk,yl,zm,wn)として一般化すると、解析対象信号が1次元、2次元、3次元、又は4次元の場合のそれぞれについて、次式(5)乃至次式(8)に示す非線形方程式の最適解を求めることになる。
【0052】
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【0053】
換言すれば、本周波数解析手法は、任意のn次元(nは1以上の整数)の解析対象信号をs(x1n1,x2n2,x3n3,・・・,xnnn)として一般化すると、次式(9)に示す非線形方程式の最適解を求めることになる。
【数9】

【0054】
なお、以下では、説明の便宜上、解析対象信号が1次元であり、上式(4)に示す非線形方程式の最適解を求めるものとする。
【0055】
さて、上式(4)に示す非線形方程式の最適解を実際に求めるにあたっては、以下のような方法をとることができる。
【0056】
本周波数解析手法においては、振幅A’、周波数f’、及び初期位相φ’のそれぞれについて適切な初期値を求め、これら初期値から非線形方程式の解法を用いて最適解に収束させる。この非線形問題では、上式(4)をコスト関数とする最小化問題とする。なお、適切な初期値は、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform;以下、DFTという。)やウェーブレット変換等の任意の周波数変換を行ったり、フィルタリングを行うことによっておおよその見当をつけたりする等、既存の任意の方法を適用して求めることができる。
【0057】
まず、本周波数解析手法においては、上式(4)における正弦波モデル信号の位相を構成する周波数パラメータf’,φ’について、いわゆる最急降下法を適用し、周波数パラメータfm’,φm’を次式(10)及び次式(11)によって求める。
【0058】
【数10】

【数11】

【0059】
なお、上式(10)及び上式(11)においては、次式(12)と略している。また、μmは、いわゆる減速法に基づく重み係数であり、各漸化式によって求められるコスト関数を単調減少数列にするために、適時0〜1の値をとる。
【0060】
【数12】

【0061】
周波数パラメータfm’,φm’を求めることができれば、上式(4)における正弦波モデル信号の係数としての周波数パラメータA’を一意に求めることができるため、本周波数解析手法においては、次式(13)によって周波数パラメータAm’を収束させる。
【0062】
【数13】

【0063】
本周波数解析手法においては、これら一連の計算を反復して行うことにより、振幅A’、周波数f’、及び初期位相φ’を高精度に収束させることができる。特に、本周波数解析手法においては、上式(4)における正弦波モデル信号の位相を構成する周波数パラメータf’,φ’と、係数としての周波数パラメータA’とを別個に求めることにより、計算を簡便に行うことができる。
【0064】
しかしながら、最急降下法は、比較的広い範囲から収束するものの、1回の反復では精度が低く、収束するまでに時間を要する。
【0065】
そこで、本周波数解析手法においては、最急降下法を適用して周波数パラメータfm’,φm’をある程度まで収束させた後、さらに、いわゆるニュートン法を適用して高精度に収束させるのが望ましい。具体的には、本周波数解析手法においては、ニュートン法として、次式(14)及び次式(15)に示す漸化式によって周波数パラメータfm’,φm’を求める。
【0066】
【数14】

【数15】

【0067】
ただし、上式(14)及び上式(15)において、Jは次式(16)とし、次式(17)と略している。また、νmもμmと同様に減速法に基づく重み係数であり、適時0〜1の値をとる。
【0068】
【数16】

【数17】

【0069】
本周波数解析手法においては、上式(14)及び上式(15)によって周波数パラメータfm’,φm’を求めた後、最急降下法と同様に、上式(13)によって周波数パラメータAm’を収束させ、この一連の計算をさらに反復して行う。
【0070】
このように、本周波数解析手法においては、最急降下法とニュートン法とを組み合わせたハイブリッド型の解法を用いることにより、高速に且つ高精度に周波数パラメータA’,f’,φ’を推定することができる。
【0071】
また、本周波数解析手法においては、解析対象信号x(n)が複合正弦波の場合であっても、逐次減算処理することにより、近似的にスペクトルパラメータを導出することができる。ここで、解析対象信号x(n)が複数の正弦波の和であり、次式(18)のように表されているとする。
【0072】
【数18】

【0073】
パーセヴァル(Parseval)の定理より、解析対象信号x(n)の周波数fkと正弦波モデル信号の周波数パラメータf’とが全く一致しない場合、すなわち、次式(19)である場合には、上式(4)に示す非線形方程式は次式(20)となる。また、周波数パラメータf’,φ’の組が、周波数fk及び初期位相φkの組のいずれかに一致する場合には、上式(4)に示す非線形方程式は次式(21)となる。さらに、振幅Ajが周波数パラメータA’とも一致した場合には、解析対象信号から推定スペクトルに関する周波数成分を完全に消去することができる。そのため、最適解を求める問題は、周波数に対して独立であり、解析対象信号から順次個別に推定すれば、複数の正弦波で表される信号にも応用することができる。
【0074】
【数19】

【数20】

【数21】

【0075】
すなわち、本周波数解析手法においては、解析対象信号x(n)が複合正弦波の場合であっても、逐次残差信号に対して同様に処理を行い、複数の正弦波を抽出することができる。
【0076】
ただし、複数のスペクトルの場合には、上式(3)からもわかるように、無限長を仮定しているため、複数のスペクトルの周波数同士が近い場合には、合成スペクトルの周期が解析窓長よりも数段長くなり、上式(17)が満たされなくなるため、誤差が発生する場合もある。
【0077】
従来のOCTでは、受光信号を複合正弦波によって表現するために多くのスペクトル数(正弦波の数)が必要であったが、本周波数解析手法においては、そのような信号であっても僅かなスペクトル数で誤差なく表現することができる。すなわち、信号をより少ないスペクトル数で表現可能であることは、情報圧縮の用途に有効であることは勿論のこと、それ以外にも、物理現象に関して波数表現をするようなアプローチに用いることにより、信号の本質的な特性も見抜くことができることを示している。
【0078】
[本周波数解析手法の有効性]
以下、本周波数解析手法の有効性について具体的に説明する。
【0079】
従来、センサによって計測された信号を、計算機を用いて解析するためには、一般に、例えば図5に示すように、その信号の一部を切り出し、DFTといった代表的な調和型の周波数解析手法によって解析していた。
【0080】
しかしながら、解析対象信号を切り出して(窓掛けして)調和型の解析を行うことは、当該解析対象信号が、切り出した一部の信号が完全周期で繰り返される信号であると擬制して解析することに他ならず、当然ながらその周波数特性も、元のスペクトル特性とは完全に一致しないものとなる。また、この信号切り出しの影響を回避するために、窓関数によって影響を軽減することも試みられているが、切り出した一部の信号を完全周期として解析することには変わりなく、本質的な問題解決には至っていないのが現状である。
【0081】
これに対して、本周波数解析手法は、非周期信号を想定した周波数解析を目的として定式化を行っていることから、解析窓長と周波数分解能の制約を受けることなく、正確に周波数とそのパラメータとを推定することができる。
【0082】
また、本周波数解析手法は、周波数の推定についても、従来の離散的な探索から、動的且つ連続的な探索となるため、格段に精度を向上させることができ、革新的な手法である。
【0083】
さらに、多次元化に関しても、従来の周波数解析手法においては、解析対象信号が1次元である場合と同様に窓関数の影響を受ける。具体的には、例えば図6に示すように、2次元の解析対象信号(原画像データ)のうち図6左図中の破線部を切り出してDFTを施して解析したとしても、その切り出した区間を完全周期とした画像が延々と繰り返されるものを解析したことと等価であることから、右上図に示すように、復元した画像データが窓関数の影響を受けたものとなり、本質的な特性を見出すことは困難である。
【0084】
これに対して、上式(6)を適用した本周波数解析手法においては、図6右下図に示すように、窓関数の影響が軽減されている。そのため本質的な周波数特性を見出すことができ、切り出した区間の周囲の画像も完全に再現することができる。
【0085】
以上のように、本周波数解析手法は、非線形方程式の最適解を求めることにより、正弦波モデル信号の周波数f’、振幅A’、及び初期位相φ’を高速に且つ高精度に求めることができる。具体的な精度を立証するために、本願発明者は、DFTと、DFTの発展型のうち最も解析精度が高いといわれているGHA(Generalized Harmonic Analysis)とを比較対象として精度の検証を行った。
【0086】
なお、DFTやGHAは、1つの解析窓長に見かけ上複数の窓長を持たせていることから、周波数分解能が解析窓長に依存するが、その分解周波数が有限長であり、解析対象信号の周波数が分解周波数以外の周波数となった場合には解析することができず、解析対象信号が正確に解析できる周波数と異なる場合には、最も近い分解周波数の他に、その周辺に小さなスペクトルの周波数(側帯波成分)が現れ、複数の周波数が出現してしまう。
【0087】
このような現象が本周波数解析手法においても生じるか否かについて、すなわち、本周波数解析手法の周波数分解能を検証するために、解析窓長を1秒(1024サンプル)とした1次元の非常に短い単一正弦波を解析し、各手法によって正弦波を1本抽出して元の信号との二乗誤差を調べた。その結果を図7に示す。
【0088】
図7に示すように、DFTにおいては、基本周波数の整数倍以外の周波数における解析精度の悪化がみられた。また、GHAにおいては、1Hz以上の周波数ではDFTと比べて2〜5桁程度の精度向上がみられた。これに対して、本周波数解析手法においては、1Hz以上の周波数ではDFTと比べて10桁以上、GHAと比べて5桁以上の精度向上がみられた。すなわち、本周波数解析手法は、既存の周波数解析手法と比べて10万〜100億倍以上の精度向上がみられた。
【0089】
特に、1Hz以下の周波数を正確に推定することができるということは、解析窓長を超えた長い周期信号であっても解析可能であることを示しており、そのスペクトル構造をより正確に推定可能であることを示している。
【0090】
このように、本周波数解析手法は、最も解析精度が高いといわれているGHAと比べても驚くべき高精度に解析を行うことができる。国内外の様々な研究事例をみても、これほどの精度で信号を解析できる手法は存在せず、本周波数解析手法は、今後、正確な解析が必要とされる様々な分野への応用が期待できる手法であるといえる。
【0091】
[画像の符号化]
本周波数解析手法においては、窓の影響が少ないため、スペクトルに側帯波成分が全く出ない。すなわち、本周波数解析手法は、上述したように、複雑な解析対象信号であっても、僅かなスペクトル数で効率的に誤差なく表現することができる。
【0092】
図8に2次元信号をDFTと本周波数解析手法とのそれぞれによって解析した具体例を示す。図8左図に示すように、本来であれば1本のスペクトルで表現される信号をDFTによって変換した場合には、一般に、変換して得られるスペクトルも、解析窓の影響に起因して、図8右上図に示すように、複数の側帯波成分が群れて現れてしまう。これは、画像の圧縮符号化において広く用いられている離散コサイン変換(Discrete Cosine Transform;DCT)等においても同様である。これに対して、本周波数解析手法は、図8右下図に示すように、元の信号のスペクトルを正確に推定することができる。正確に解析できると、画像データを表現するスペクトル数を格段に削減できる可能性があり、画質を落とさずに飛躍的な情報圧縮効果を期待することができる。
【0093】
又この実施の形態では波長走査型光源の走査範囲をあまり広くすることなく高分解能の画像が得られる。そのため従来では使用できなかった安価な波長走査型光源を用いて必要な分解能の断層画像を得ることができる。又広範囲の波長を走査することができる光源を用いれば、より精密な断面画像とすることができる。
【0094】
尚この実施の形態ではkトリガ発生部により波長の1スキャニングの間に等周波数間隔となるタイミングで多数のkトリガ信号を発生するようにしているが、波長の1走査の開示のみのスキャントリガ信号としてもよい。この場合に特開2008−261778号に示されるように、物体の測定位置に反射物を配置したときに受光素子からの出力をデータ番号を付して等時間間隔で取り込み、ビート信号のピークとなるデータ番号を算出し、ピーク番号に対してデータ番号を示す近似曲線を算出し、ピーク番号の変化分を任意の数に分割して、分割したピーク番号に対応するデータ番号を近似曲線により算出し、データ取り込み数列とし、測定物体を配置したときの受光素子からの等時間間隔からの出力からデータ数列の各要素でのタイミングをトリガ信号として信号解析部に与えるようにしてもよい。
【0095】
(第2の実施の形態)
図9は本発明の第2の実施の形態による光断層画像表示システムの全体構成を示すブロック図である。本実施の形態はSD−OCTによる光断層画像表示システムであり、光源として所定の波長範囲に一様な光を出射する光源40を用いる。この光源40からの光は光増幅器13を介して光干渉計に導かれることは第1の実施の形態と同様である。この実施の形態ではレンズ22に得られる光を回折格子41に入射する。回折格子41は入射光の波長に応じて光を分散させる波長分光手段であり、分散した光は一次元CCD42に入力される。一次元CCD42は所定の周期で各位置の光信号を一次元の受光信号に変換するものであり、その出力は増幅器43を介して信号解析部25に伝えられる。この場合には、CCD42の一次元の各画素からの出力のタイミングに周期してトリガ信号を入力インターフェイスに伝える。これ以降の構成については第1の実施の形態と同様である。このようにして1次元CCDで得られた受光信号に基づいて周波数を解析するようにしても、同様に断層画像を得ることができる。
【0096】
又前述した実施の形態における信号解析装置ではソフトウェアによる周波数解析を行うものとして説明したが、本発明は、本周波数解析手法のアルゴリズムを実装したDSP(Digital Signal Processor)等、積和演算を行うことが可能であればハードウェアによっても実現することができる。
【0097】
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に光の発振波長を走査する波長走査型光源と、
前記波長走査型光源からの光を参照光と物体への照射光とに分岐し、物体からの反射光と参照光との干渉光を発生する干渉光学計と、
前記干渉光学計より得られる干渉光を受光し、ビート信号を得る受光素子と、
前記受光素子から得られる干渉信号に対して周波数解析を行い、物体の断層画像を形成する信号解析部と、を具備し、
前記信号解析部は、
前記受光素子から得られる干渉信号を解析対象信号として保持する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記解析対象信号を読み出し、前記解析対象信号と、周波数f’及び初期位相φ’を用いた位相と振幅A’とによって表される正弦波モデル信号との差の二乗和が最小値になるような前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’を算出し、求めた前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’に基づき断面画像を出力する演算手段と、
前記演算手段より得られる断面画像を表示する表示部と、を具備する光断層画像表示システム。
【請求項2】
所定の範囲で一様な波長の光を発振する光源と、
前記光源からの光を参照光と物体への照射光とに分岐し、物体からの反射光と参照光との干渉光を発生する干渉光学計と、
前記干渉光学計から得られる干渉光を波長に基づいて分岐する波長分光手段と、
前記波長分光手段より分光された範囲の干渉光を受光して電気信号に変換する一次元受光素子と、
前記一次元受光素子から得られる干渉信号に対して周波数解析を行い、物体の断層画像を形成する信号解析部と、を具備し、
前記信号解析部は、
前記受光素子から得られる干渉信号を解析対象信号として保持する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記解析対象信号を読み出し、前記解析対象信号と、周波数f’及び初期位相φ’を用いた位相と振幅A’とによって表される正弦波モデル信号との差の二乗和が最小値になるような前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’を算出し、求めた前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’に基づき断面画像を出力する演算手段と、
前記演算手段より得られる断面画像を表示する表示部と、を具備する光断層画像表示システム。
【請求項3】
前記演算手段は、前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’のそれぞれについて適切な初期値を求め、求めた初期値から非線形方程式の最適解に収束させて前記周波数f’、前記振幅A’、及び前記初期位相φ’を求めることを特徴とする請求項1又は2記載の光断層画像表示システム。
【請求項4】
前記演算手段は、前記正弦波モデル信号の位相を構成する前記周波数f’及び前記初期位相φ’について最急降下法を適用して収束させ、当該周波数f’及び当該初期位相φ’を求め、前記正弦波モデル信号の係数としての前記振幅A’について最急降下法を適用して収束させ、当該振幅A’を求めることを特徴とする請求項3記載の光断層画像表示システム。
【請求項5】
前記演算手段は、前記最急降下法を適用して前記周波数f’及び前記初期位相φ’を収束させた後、さらに、ニュートン法を適用して前記周波数f’及び前記初期位相φ’を収束させることを特徴とする請求項4記載の光断層画像表示システム。
【請求項6】
前記波長走査型光源の1走査の期間内に、前記波長走査型光源の光の等周波数間隔でのトリガ信号を発生するkトリガ発生部を更に有し、
前記信号解析部の記憶部は、前記kトリガ発生部により発生したkトリガ信号のタイミングで前記干渉信号を保持するものである請求項1記載光断層画像表示システム。
【請求項7】
前記信号解析部の演算手段は、
物体の測定位置に反射物を配置したときに、前記受光素子からの出力をデータ番号を付して等時間間隔で取り込み、前記ビート信号のピークとなるデータ番号を算出し、ピーク番号に対するデータ番号を示す近似曲線を算出し、前記ピーク番号変化分を任意の数に分割して、分割したピーク番号に対応するデータ番号を近似曲線により算出しデータ取り込み数列とし、測定位置に測定物体を配置したときの前記受光素子からの等時間間隔の出力から、前記データ取り込み数列の各要素でのタイミングの信号レベルを算出し、得られた等周波数間隔のデータを前記記憶手段に保持するものである請求項1記載の光断層画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−223670(P2010−223670A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69632(P2009−69632)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【出願人】(591102693)サンテック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】