説明

光検出装置、及びこの光検出装置を備える紙葉類処理装置

【課題】 簡易な構成で異なる特性を有する複数の光を検出することができる光検出装置、及びこの光検出装置を備える紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】 光検出装置135は、蛍光体及び燐光体が塗布されている紙葉類から蛍光と残光とを検出する光検出装置であって、前記紙葉類が搬送される搬送路上の所定範囲から光を受光して画像データを検出する検出部5と、前記検出部の読み取り位置を含む第1の照射範囲に対して間欠的に励起光を照射する第1の照明部3と、前記搬送路上の前記検出部より上流側であり、前記第1の照射範囲と連続しており、且つ、前記検出部の読み取り位置を含まない第2の照射範囲に対して常に励起光を照射する第2の照明部4と、前記第1の照明部の動作に応じて前記検出部により画像データを検出するように制御する制御部6と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される紙葉類から光を検出する光検出装置、及びこの光検出装置を備える紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の紙葉類の計数及び判別を行う紙葉類処理装置が実用化されている。紙葉類処理装置は、投入部に投入された紙葉類を1枚ずつ取り込み、光検出装置に搬送する。光検出装置は、紙葉類から光を検出し、検出した光に基づいて画像を取得する。紙葉類処理装置は、取得した画像に基づいて、種類判定、真偽判定、及び再流通が可能な紙葉類であるか否かの判定などを行う。また、紙葉類処理装置は、判定結果に基づいて紙葉類を種類毎に区分して集積する。
【0003】
紙葉類処理装置により処理する紙葉類上には、蛍光印刷情報(第1の印刷情報)、及び燐光印刷情報(第2の印刷情報)が印刷されている。蛍光印刷情報は、蛍光体を含むインク(蛍光インク)により印刷された情報である。蛍光体は、励起光源から励起光(例えば紫外線)などにより励起され、光(蛍光)を発する状態になる。励起光の照射が中断された場合、蛍光体は、蛍光を発しない状態になる。燐光印刷情報は、燐光体を含むインク(燐光インク)により印刷された情報である。燐光体は、励起光源から励起光(例えば紫外線)などにより励起され、光を発する状態になる。励起光の照射が中断された場合、燐光体は、時間とともに徐々に減衰する光(残光)を発する状態になる。
【0004】
紙葉類処理装置は、紙葉類に対して励起光源から励起光を照射して蛍光体を励起させ、蛍光体から発せられる蛍光を検出することにより、蛍光印刷情報を読み取る蛍光検出装置を備える。また、紙葉類処理装置は、紙葉類に対して励起光源から励起光を照射して燐光体を励起させ、励起光の照射を中断した後に燐光体から発せられる残光を検出することにより、燐光印刷情報を読み取る残光検出装置を備える。
【0005】
例えば特許文献1には、励起光源としての紫外線照明装置を挟んで搬送路の上流側と下流側とに反射受光系をそれぞれ備えることにより、蛍光と残光とを検出する技術が開示されている。この場合、紫外線照明装置は、間欠点灯する。即ち、点灯時に蛍光が検出され、消灯時に残光が検出される。
【0006】
また、特許文献2には、搬送路の上流側に紫外線照明装置及び蛍光検出装置を備え、搬送路の下流側に残光検出装置を備える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3790931号公報
【特許文献2】実公昭62−2691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献に開示されている技術によると、紙葉類処理装置は、蛍光を検出するための検出装置と、残光を検出するための検出装置との2つを備えている。この為、取得した画像を処理するための処理系統も2系統必要になる。この為、装置構成が大きくなる、コストが嵩むなどの問題がある。
【0009】
また、上記の特許文献2に開示されている光検出装置により、燐光印刷情報を取得する場合、励起光の照射を中断してから残光を検出するまでの時間は、紙葉類の搬送速度に応じて変化する。なお、残光の減衰量は、時間に応じて大きくなる。この為、紙葉類の搬送速度が変化した場合、光検出装置は、正しく燐光印刷情報を読み取ることができないという問題がある。
【0010】
励起光源は、経年により発光量が変化する。また、検出装置の検出素子も、感度が変化する場合がある。そこで、読取位置の近傍に蛍光基準板を具備する光検出装置が一般的に実用化されている。この光検出装置は、蛍光基準版から検出した基準用の光のレベルに基づいて検出信号のレベルの補正を行う。これにより、光検出装置の精度を高めることができる。しかし、残光を検出する下流側の光検出装置には、励起光源が設置されていない。この為、蛍光基準版を設置しても、基準用の光を検出することができない。この結果、下流側の光検出装置の補正を行うことができないという問題がある。
【0011】
また、上記の特許文献1に開示されている光検出装置により、蛍光及び残光を取得する場合、紙葉類の搬送速度をあげることができないという問題がある。燐光体及び蛍光体を励起させるためには、励起光を一定時間照射する必要がある。しかし、励起光源は、紙葉類が通過する毎に点灯と消灯とを繰り返す。この為、搬送速度を上げる場合、紙葉類に対して励起光を照射する時間が短くなる。即ち、搬送速度に応じて、検出される蛍光及び残光のレベルが変化するという問題がある。また、紙葉類に対して励起光を照射する時間が短かい為、蛍光体及び燐光体が十分に励起されない可能性があるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、簡易な構成で異なる特性を有する複数の光を検出することができる光検出装置、及びこの光検出装置を備える紙葉類処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態としての光検出装置は、蛍光体及び燐光体が塗布されている紙葉類から蛍光と残光とを検出する光検出装置であって、前記紙葉類が搬送される搬送路上の所定範囲から光を受光して画像データを検出する検出部と、前記検出部の読み取り位置を含む第1の照射範囲に対して間欠的に励起光を照射する第1の照明部と、前記搬送路上の前記検出部より上流側であり、前記第1の照射範囲と連続しており、且つ、前記検出部の読み取り位置を含まない第2の照射範囲に対して常に励起光を照射する第2の照明部と、前記第1の照明部の動作に応じて前記検出部により画像データを検出するように制御する制御部と、を具備する。
【0014】
また、本発明の一実施形態としての紙葉類処理装置は、紙葉類を搬送する搬送手段と、前記紙葉類が搬送される搬送路上の所定範囲から光を受光して画像データを検出する検出部と、前記検出部の読み取り位置を含む第1の照射範囲に対して間欠的に励起光を照射する第1の照明部と、前記搬送路上の前記検出部より上流側であり、前記第1の照射範囲と連続しており、且つ、前記検出部の読み取り位置を含まない第2の照射範囲に対して常に励起光を照射する第2の照明部と、前記第1の照明部の動作に応じて前記検出部により蛍光画像及び残光画像を検出するように制御する制御部と、前記検出部により検出した蛍光画像及び残光画像に基づいて前記紙葉類に蛍光印刷情報及び燐光印刷情報が施されているか否かを判別する判別手段と、前記判別手段による判別結果に基づいて、前記紙葉類の種類を判別し、種類毎に区分する区分処理部と、を具備する。
【発明の効果】
【0015】
この発明の一形態によれば、簡易な構成で異なる特性を有する複数の光を検出することができる光検出装置、及びこの光検出装置を備える紙葉類処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の構成例について説明するための説明図である。
【図2】図2は、図1に示す紙葉類処理装置の構成例について説明するための説明図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示す紙葉類処理装置の制御系の構成例について説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、図2及び図3に示す光検出装置の構成を模式的に示す説明図である。
【図5】図5は、図4に示す光検出装置の各部の動作のタイミングについて説明するためのタイミングチャートである。
【図6】図6は、図4に示す光検出装置の各部の動作のタイミングについて説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る光検出装置、及びこの光検出装置を備える紙葉類処理装置について詳細に説明する。
【0018】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る紙葉類処理装置111の構成例について説明するための説明図である。紙葉類処理装置111は、紙葉類を検査し、再流通可能な紙葉類を結束する。
【0019】
本実施形態に係る紙葉類処理装置111により処理する紙葉類上には、例えば、蛍光体を含有する蛍光インクにより印刷された蛍光印刷情報(第1の印刷情報)と、燐光体を含有する燐光インクにより印刷された燐光印刷情報(第2の印刷情報)とが印刷されているとする。
【0020】
蛍光体及び燐光体は、外部から光、熱、紫外線、またはX線などの励起光により励起され、光を発光する。蛍光体及び燐光体は、励起光の照射時間とともに発光量が増加する。蛍光体及び燐光体は、それぞれ材料により決まる時間(発光飽和時間)だけ励起光が照射された場合、発光量が飽和(発光飽和)する。
【0021】
蛍光体は、発光飽和するまでの発光飽和時間が燐光体に比べて短い。また、蛍光体は、発光飽和している状態から発光しない状態に遷移するまでの時間(減衰時間)が燐光体に比べて短い。これに対し、燐光体は、発光飽和時間が蛍光体に比べて長い。また、燐光体は、減衰時間が蛍光体に比べて長い。
【0022】
即ち、燐光体の飽和時間だけ励起光を照射し、その後、励起光の照射を中断した場合、蛍光体は、発光しない状態になる。また、燐光体は、減衰時間だけ残光を発光する状態になる。なお、この減衰時間も、材料により決まる時間である。
【0023】
図1に示すように、紙葉類処理装置111は、装置外部に、投入部112、操作部136、操作・表示パネル137、ドア138、取出口139、及びキーボード140を備えている。
【0024】
投入部112は、紙葉類を投入するための構成である。投入部112は、重ねられた状態の紙葉類をまとめて受け入れる。操作部136は、オペレータによる各種操作入力を受け付ける。操作・表示パネル137は、オペレータに対して各種の操作案内、及び処理結果などを表示する。なお、操作・表示パネル137は、タッチパネルとして構成されていてもよい。この場合、紙葉類処理装置111は、操作・表示パネル137に表示されるボタンと、操作・表示パネル137に対するオペレータによる操作と、に基づいて、各種の操作入力を検知する。
【0025】
ドア138は、投入部112の投入口を開閉する為のドアである。取出口139は、紙葉類処理装置111により再流通不可と判断された紙葉類がスタックされる集積部から紙葉類を取り出す為の構成である。キーボード140は、オペレータによる各種操作入力を受け付ける。
【0026】
また、図2に示すように、紙葉類処理装置111は、装置内部に、投入部112、取出部113、吸着ローラ114、搬送路115、検査部116、ゲート120乃至125、排除搬送路126、排除集積部127、集積・結束部128乃至132、裁断部133、及びスタッカ134を備えている。また、紙葉類処理装置111は、紙葉類処理装置111の各部の動作を統合的に制御する主制御部151を備えている。
【0027】
取出部113は、投入部の上部に設けられている。取出部113は、吸着ローラ114を備えている。吸着ローラ114は、投入部112にセットされた紙葉類を集積方向の上端に接するように設けられている。即ち、吸着ローラ114は、回転することにより、投入部112にセットされた紙葉類を集積方向の上端から1枚ずつ装置内部に取り込む。吸着ローラ114は、たとえば、1回転するごとに1枚の紙葉類を取出すように機能する。これにより、吸着ローラ114は、紙葉類一定のピッチで取出す。吸着ローラ114により取り込まれた紙葉類は、搬送路115に導入される。
【0028】
搬送路115は、紙葉類を紙葉類処理装置111内の各部に搬送する搬送手段である。搬送路115は、図示しない搬送ベルト及び駆動プーリなどを備えている。搬送路115は、図示しない駆動モータにより搬送ベルトを動作させる。搬送路115は、吸着ローラ114により取り込まれた紙葉類を搬送ベルトにより一定速度で搬送する。なお、搬送路115における取出部113に近い側を上流側、スタッカ134に近い側を下流側として説明する。
【0029】
取出部113から延びた搬送路115上には、検査部116が設けられている。検査部116は、画像読取装置117、画像読取装置118、厚み検査部119、及び光検出装置135を備えている。検査部116は、紙葉類の光学的特徴情報、及び磁気的特長情報を検出する。これにより、紙葉類処理装置111は、紙葉類の種類、汚棄損、表裏、及び真偽などを検査する。
【0030】
画像読取装置117、及び118は、それぞれ搬送路115を挟んで対面するように設けられている。画像読取装置117、及び118は、搬送路115を搬送される紙葉類の両面の画像を読み取る。画像読取装置117、及び118は、それぞれ、CCDカメラを備える。紙葉類処理装置111は、画像読取装置117、及び118により撮像した画像に基づいて、紙葉類の表面及び裏面の模様画像を取得する。
【0031】
画像読取装置117、及び118は、読み取った画像を検査部116内の図示しないメモリに一時的に記憶する。紙葉類処理装置111は、このメモリに記憶されている画像を操作入力に応じて操作・表示パネル137に表示する。
【0032】
厚み検査部119は、搬送路115を搬送される紙葉類の厚みを検査する。例えば、検出した厚みが規定値以上である場合、紙葉類処理装置111は、紙葉類の2枚取りを検出する。
【0033】
光検出装置135は、搬送路115を搬送される紙葉類から蛍光及び残光を検出し、蛍光印刷情報及び燐光印刷情報を取得する。光検出装置135については後で詳細を説明する。
【0034】
また、検査部116は、図示しない磁気センサなどを備えている。磁気センサは、紙葉類の磁気的な特徴情報を検出する。
【0035】
検査部116の下流側の搬送路115上には、ゲート120乃至125が順に配設されている。ゲート120乃至125は、それぞれ、主制御部151により制御される。主制御部151は、検査部116による検査の結果に基づいて各ゲート120乃至125の動作を制御する。これにより、主制御部151は、搬送路115を搬送されている紙葉類を所定の処理部に搬送するように制御する。
【0036】
検査部116の直後に配設されたゲート120は、搬送路115を排除搬送路126に分岐する。即ち、ゲート120は、検査部116による検査の結果、正規の銀行券ではないと判定された排除券、または、検査部116による検査を行うことができない検査不能券等を排除搬送路126に搬送するように切り替えられる。
【0037】
排除搬送路126の終端部には、排除集積部(排除部)127が設けられている。排除集積部127は、取出部113にて取出した姿勢のまま、上記したような排除券、及び検査不能券を集積する。排除集積部127に集積された紙葉類は、取出口139から取り出すことができる。
【0038】
また、ゲート121乃至124により分岐される先には、集積・結束部128乃至131(総じて集積結束部132と称する)がそれぞれ設けられている。集積・結束部132には、再流通可能であると判定された紙葉類が種類及び表裏毎に区別されて集積される。集積・結束部132は、集積した紙葉類を所定枚数毎に結束して格納する。
【0039】
ゲート125により分岐される先には、裁断部133が配設されている。裁断部133は、紙葉類を裁断して収納する。なお、ゲート125に搬送される紙葉類は、正規の紙葉類であり、且つ、再流通が不可能であると判定された紙葉類である。また、ゲート125により分岐される他方の搬送路の先には、スタッカ134が配設されている。主制御部151は、損券裁断モードが選択されている場合、紙葉類を裁断部133に搬送するようにゲート125を制御する。また、主制御部151は、損券裁断モードが選択されていない場合、紙葉類をスタッカ134に搬送するようにゲート125を制御する。
【0040】
なお、主制御部151は、集積・結束部132に集積された紙葉類の枚数、及び、裁断部133により裁断された紙葉類の枚数を計数する。
【0041】
図3は、図1及び図2に示す紙葉類処理装置111の制御系の構成例について説明するためのブロック図である。
図3に示すように、装置全体を統合的に制御する主制御部151に検査部116、搬送制御部152、集積・結束制御部153、操作・表示パネル137、及びキーボード140などが接続されている。
【0042】
主制御部151は、紙葉類処理装置111の全体的な制御を司る。主制御部151は、操作・表示パネル137により入力される操作、及び検査部116による検査結果に基づき、搬送制御部152及び集積・結束制御部153を制御する。
【0043】
検査部116は、画像読取装置117、及び118、厚み検査部119、光検出装置135、その他のセンサ類154、及びCPU155を備える。
【0044】
画像読取装置117、及び118は、搬送路115を搬送される紙葉類の両面の画像を読み取る。厚み検査部119は、搬送路115を搬送される紙葉類の厚みを検査する。
【0045】
光検出装置135は、搬送路115を搬送される紙葉類から蛍光及び残光を検出し、蛍光印刷情報及び燐光印刷情報を取得する。
【0046】
その他のセンサ類154は、例えば、磁気センサなどである。磁気センサは、搬送路115を搬送される紙葉類から磁気的な特徴情報を検出する。
【0047】
CPU155は、画像読取装置117、118、厚み検査部119、光検出装置135、及びその他のセンサ類154などによる検査の結果に基づいて、搬送路115を搬送される紙葉類の種類、汚棄損、表裏、及び真偽などを判別する。
【0048】
搬送制御部152は、主制御部151の制御に基づき、取出部113、搬送路115、排除搬送路126、及びゲート120乃至125を制御する。これにより、搬送制御部152は、紙葉類の取り込み及び搬送を制御する。また、搬送制御部152は、判定した紙葉類の種類毎に区分する区分処理を行う。即ち、搬送制御部152は、区分処理部として機能する。
【0049】
集積・結束制御部153は、主制御部151の制御に基づき、前記排除集積部127及び集積・結束部128〜131を制御する。これにより、集積・結束制御部153は、紙葉類の集積、及び結束の制御を行なう。
【0050】
図4は、図2及び図3に示す光検出装置135の構成を模式的に示す説明図である。
図4に示すように、光検出装置135は、搬送ベルト1、及び駆動プーリなどにより構成される搬送路115の近傍に設けられている。搬送路115は、紙葉類を矢印aの方向に搬送する。
【0051】
光検出装置135は、第1の照明部3、第2の照明部4、検出部5、制御部6、信号処理部7、判定部8、及び基準板9を備えている。
【0052】
制御部6は、光検出装置135の全体の制御を司るものである。制御部6は、CPU、バッファメモリ、プログラムメモリ、及び不揮発性メモリなどを備えている。CPUは、種々の演算処理を行う。バッファメモリは、CPUにより演算結果を一時的に記憶する。プログラムメモリ及び不揮発性メモリは、CPUが実行する種々のプログラム及び制御データなどを記憶する。制御部6は、CPUによりプログラムメモリに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を行うことができる。
【0053】
検出部5は、例えば、CMOS、またはCCDなどを用いたラインイメージセンサである。検出部5は、制御部6により制御されるタイミングで、図4に示す読み取り位置Mから光を受光し、電気信号に変換する。
【0054】
検出部5は、検出した光について色分解を行う場合、カラーラインイメージセンサ等のアレイ型センサが用いられる。また、色分解の必要がない場合、検出部5は、モノクロイメージセンサ、またはフォトダイオードアレイ等により構成される。また、検出部5は、走査方向に幅を持たせる必要がない場合、単一の受光素子により実現することもできる。
【0055】
また、検出部5は、例えば、裏面入射型のイメージセンサにより構成されてもよい。またさらに、検出部5は、TDI(Time Delay Integration)イメージセンサなどにより構成されてもよい。また、検出部5が単一の受光素子である場合、検出部5は、アバランシェフォトダイオード(Avalanche Photodiode)、または光電子増倍管(Photo Multiplier)などにより構成されてもよい。
【0056】
第1の照明部3は、例えば、紫外線などの励起光を照射する。第1の照明部3は、紙葉類の搬送方向aに対して直交する向きに帯状に励起光を照射する。第1の照明部3は、この場合、少なくとも検出部5により読み取る範囲(第1の照射範囲)に対して励起光を照射する。
【0057】
第1の照明部3は、間欠点灯を行う。即ち、第1の照明部3は、制御部6による制御に基づいて、オン(点灯)及びオフ(消灯)を連続的に行う。
【0058】
制御部6は、第1の照明部3の間欠点灯のタイミングを、検出部5により取得する1分解能のサイズに決定する。例えば、紙葉類の搬送速度が10m/sの状態で、検出部5により1分解能0.5mmの設定で光の検出を行う場合、制御部6は、50μs周期、即ち、20kHzで光を検出するように検出部5を制御する。
【0059】
第2の照明部4は、第1の照明部3と同様に、紫外線などの励起光を照射する。第2の照明部4は、常に点灯し、紙葉類の搬送方向aに沿って距離Lの範囲(第2の照射範囲)に励起光を照射する。第2の照射範囲は、少なくとも検出部5の読み取り位置Mを含まない範囲である。
【0060】
第2の照明部4は、蛍光体及び燐光体を発光飽和させるための照明である。即ち、搬送路115を搬送される紙葉類は、この第2の照明部4の近傍を搬送される時間(距離L/搬送速度)だけ第2の照明部4により照明される。
【0061】
この距離Lは、紙葉類に塗布されている蛍光体及び燐光体の発光飽和時間と紙葉類の搬送速度に基づいて決定される。即ち、紙葉類が第2の照明部4の近傍を搬送される時間(距離L/搬送速度)が、発光飽和時間以上である必要がある。例えば、搬送速度が10m/sであり、発光飽和時間が3msである場合、距離Lは、少なくとも30mm以上必要である。紙葉類処理装置111が搬送速度を変化させることができる場合、距離Lは、最も早い搬送速度を基準に決定される。
【0062】
図4に示すように、第1の照明部3及び第2の照明部4は、検出部5を挟んで搬送路115に沿って配置される。即ち、検出部5の読み取り位置Mの上流側に第2の照明部4が配置され、下流側に第1の照明部3が配置される。
【0063】
前述したように、第1の照明部3は、読み取り位置M付近の検出部5の読み取り範囲を含む第1の照射範囲に対して投光する。第2の照明部4は、検出部5の読み取り位置Mを含まない第2の照射範囲に対して投光する。但し、第2の照明部4は、図4に示すように、その第2の照射範囲と検出部5の読み取り位置Mとが距離dを置くように設けられる。
【0064】
第1の照明部3は、高速に間欠点灯を行う照明であり、例えば、LED照明により構成される。また、第2の照明部4は、例えば、紫外線を出力する蛍光灯、または、冷陰極管などにより構成される。第2の照明部4は、高周波点灯することにより、時間的に連続して紫外線を照射することができる。
【0065】
なお、近年、LED照明が高輝度化している為、搬送路115に沿ってアレイ状に配列されたLED照明を第2の照明部4として用いてもよい。また、水銀ランプ等の紫外線含む光を照射する光源により、検出位置に合わせてライン状に光を照射する照明装置を用いてもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、蛍光体及び燐光体が紫外線を励起光とする物質であることを前提に説明したが、これに限定されない。検査対象となる紙葉類に塗布されている蛍光体及び燐光体は、種類により励起光の波長が異なる。この為、第1の照明部3、及び第2の照明部4の特性を変化させる必要がある。例えば、第1の照明部3、及び第2の照明部4として、可視単色照明装置及び赤外線照明装置が用いられる構成であってもよい。
【0067】
制御部6は、検出部5により光を検出するタイミングを第1の照明部3のオンオフに同期させるように検出部5を制御する。即ち、制御部6は、第1の照明部3をオンし、一定時間経過後に蛍光を検出する。また、制御部6は、第1の照明部3をオフし、一定時間経過後に残光を検出する。
【0068】
信号処理部7は、検出部5により検出した信号を所定の増幅率(ゲイン)により増幅する。即ち、検出部5により光から変換された電気信号を、例えば増幅器などにより増幅する。
【0069】
残光と蛍光とは、検出部5により検出する信号のレベルが大きく異なる。即ち、残光は、蛍光に比べて光強度が弱い。この為、検出部5は、蛍光を検出するのに用いた設定で残光を検出する場合、極めて小さいレベルの信号を検出する可能性がある。この為、有効なデータが得られないという問題がある。
【0070】
そこで、制御部6は、信号処理部7のゲインを時間毎に変化させる。即ち、検出部5により残光を検出する場合、制御部6は、信号処理部7のゲインを高くするように制御する。また、検出部5により蛍光を検出する場合、制御部6は、信号処理部7のゲインを低くするように制御する。これにより、光検出装置135は、蛍光と残光とで同程度のレベルの信号を得ることができる。
【0071】
信号処理部7は、さらに、検出された信号に対してアナログ/ディジタル変換を行う。即ち、信号処理部7は、検出された信号をサンプリングし、検出データを取得する。さらに、信号処理部7は、データを分ける処理を行う。即ち、上記した構成によると、蛍光から検出された検出データと残光から検出された検出データとが交互に配列されているデータが出力される。信号処理部7は、このデータを、蛍光から検出された検出データと残光から検出された検出データとで分ける処理を行う。
【0072】
信号処理部7は、上記の処理を一枚の紙葉類全体から取得したデータに対して行う。これにより、信号処理部7は、紙葉類の蛍光画像、及び残光画像を取得する。
【0073】
判定部8は、信号処理部7により取得した蛍光画像及び残光画像に基づいて、蛍光印刷情報及び燐光印刷情報の有無を判定する。判定部8は、蛍光画像の基準データ(蛍光基準画像)と、残光画像の基準データ(残光基準画像)とを予め記憶している。判定部8は、信号処理部7により取得した蛍光画像と蛍光基準画像とを比較することにより、蛍光印刷情報の有無を判定する。また、判定部8は、信号処理部7により取得した残光画像と残光基準画像とを比較することにより、蛍光印刷情報の有無を判定する。
【0074】
基準板9は、信号処理部7のゲインを補正するための基準光を検出部5に与える。図4に示すように、基準板9は、搬送路115を挟んで検出部5と対向する位置に設けられている。基準板9の検出部5側の表面の少なくとも検出部5の読み取り位置Mに重なる位置に、発光面が設けられている。発光面は、蛍光体を含有する素材、若しくは、蛍光インクが塗布された蛍光層などにより構成される。発光面に含まれる蛍光体は、検出対象の紙葉類に塗布されている蛍光体と同じ特性を有する蛍光体である。
【0075】
基準板9に励起光が照射された場合、基準板9は、蛍光を検出部5に対して発する。制御部6は、基準板9から発せられる蛍光から検出した信号のレベルに基づいて、ゲインの調整を行う。即ち、制御部6は、基準板9から発せられる蛍光から検出した信号のレベルが、常に所定の値になるように信号処理部7により補正する。この場合、制御部6は、補正部として機能する。
【0076】
図5は、図4に示す光検出装置135の各部の動作のタイミングについて説明するためのタイミングチャートである。
図5に示すように、第2の照明部4は、常に励起光を照射する。第1の照明部3は、所定のタイミング毎に点灯と消灯とを繰り返す。即ち、第1の照明部3は、1分解能(1ライン)分の周期で、点灯と消灯とを1度ずつ行う間欠照射を行う。
【0077】
検出部5は、第1の照明部3がオンしてから所定時間Ts経過後、光の検出を行う。この場合、検出部5は、蛍光を検出する。所定時間Tsは、検出部5の読み取り位置Mと、第2の照明部4の第2の照射範囲との距離dと、紙葉類の搬送速度vに基づいて決定される。即ち、Ts=d/vという関係が成り立つ。
【0078】
第1の照明部3がオンした直後に読み取り位置Mに搬送される紙葉類は、十分に励起光が照射されていない可能性がある。これは、第1の照明部3がオンした瞬間に第2の照射範囲の検出部5側の端部と読み取り位置Mとの間に存在する箇所が、読み取り位置Mに搬送される為である。
【0079】
これに対し、第1の照明部3がオンした瞬間に第2の照射範囲内に存在する箇所は、第2の照射範囲を抜けた後、第1の照射範囲に搬送される。この為、紙葉類は、十分に励起された状態で読み取り位置Mに搬送される。
【0080】
即ち、第1の照明部3がオンしてから距離dだけ搬送された箇所であれば、十分に励起された状態であると判断することができる。この為、検出部5は、搬送速度vによって距離dだけ搬送するのに要する時間Ts経過後に、蛍光を検出する。
【0081】
また、検出部5は、第1の照明部3がオフした後、光の検出を行う。この場合、検出部5は、燐光体から発せられる残光を検出する事を目的とする。この為、蛍光体から残光が発せられない状態であり、且つ、燐光体から発せられる残光ができる限り強い状態で残光の検出を行う事が好ましい。この為、検出部5は、蛍光体の減衰時間経過後に、残光の検出を行う。
【0082】
信号処理部7は、第1の照明部3のオンオフのタイミングに対応してゲインの調整を行う。即ち、信号処理部7は、第1の照明部3のオン時にゲインを低くし、第1の照明部3のオフ時にゲインを高くする。
【0083】
図6は、図4に示す光検出装置135の各部の動作のタイミングについて説明するためのタイミングチャートである。図6は、図5に示す例と搬送速度vが異なる例について説明するための図である。
【0084】
図6に示すように、搬送速度vが図5に示す例に比べて遅い。この為、1ライン分の処理時間が長くなっている。また、第1の照明部3の点灯及び消灯の間隔が長くなっている。
【0085】
このように、搬送速度が変わった場合でも、距離dを搬送する時間Ts経過後に蛍光を検出することにより、検出部5は、発光飽和状態における蛍光を検出することができる。また、蛍光体の減衰時間経過後に検出を行うことにより、検出部5は、高いレベルの残光を検出することができる。
【0086】
上記したように、本発明の一実施形態に係る光検出装置は、間欠点灯を行う第1の照明部と、常に点灯する第2の照明部とを備えている。検出部は、第1の照明部の点灯から所定時間経過後と、第1の照明部の消灯から蛍光体の減衰時間経過後とに光を検出する。この構成により、1つの検出部により、蛍光体から発せられる蛍光と燐光体から発せられる残光とをそれぞれ検出することができる。この結果、簡易な構成で異なる特性を有する複数の光を検出することができる光検出装置、及びこの光検出装置を備える紙葉類処理装置を提供することができる。
【0087】
なお、上記した実施形態では、第2の照明部4は、搬送方向aに沿って距離Lに渡って励起光を照射する構成として説明したが、この構成に限定されない。例えば、第2の照明部4がアレイ状に配列されたLED照明である場合、第2の照明部4は、紙葉類の搬送速度に応じて励起光を照射する距離Lを制御する構成であってもよい。即ち、励起光を照射する距離を、搬送速度及び発光飽和時間に基づいて決定し、決定した距離に対応する数だけアレイ状に配列された複数のLED照明を発光させる。このように構成した場合、蛍光体及び燐光体の発光飽和時間に応じた第2の照射範囲を実現することができる。
【0088】
また、第2の照明部4は、異なる波長の光を発するLEDがアレイ状に配列された構成であってもよい。紙葉類処理装置111により処理する紙葉類は、種類により塗布されている蛍光体及び燐光体が異なる場合がある。そこで、それぞれの種類に対応するように複数種類の波長の光を発するLEDを備えることにより、複数種類の紙葉類の検出を行う事ができる。
【0089】
また、第2の照明部4は、照射する光の照射量を制御できるような構成であってもよい。即ち、第2の照明部4は、2次元に複数配列されているLEDの素子の照射量を制御する。この場合、光検出装置135は、速度毎に蛍光印刷情報または燐光印刷情報の発光量が一定になる照射量を予め参照データとして記憶する。光検出装置135の制御部6は、この参照データを参照し、搬送速度に応じて照射量を制御する。これにより、光検出装置135は、紙葉類の搬送速度に因らず、常に同じレベルの検出信号を得ることができる。
【0090】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…搬送ベルト、3…第1の照明部、4…第2の照明部、5…検出部、6…制御部、7…信号処理部、8…判定部、9…基準板、111…紙葉類処理装置、115…搬送路、135…光検出装置、152…搬送制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体及び燐光体が塗布されている紙葉類から蛍光と残光とを検出する光検出装置であって、
前記紙葉類が搬送される搬送路上の所定範囲から光を受光して画像データを検出する検出部と、
前記検出部の読み取り位置を含む第1の照射範囲に対して間欠的に励起光を照射する第1の照明部と、
前記搬送路上の前記検出部より上流側であり、前記第1の照射範囲と連続しており、且つ、前記検出部の読み取り位置を含まない第2の照射範囲に対して常に励起光を照射する第2の照明部と、
前記第1の照明部の動作に応じて前記検出部により画像データを検出するように制御する制御部と、
を具備することを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の照明部が点灯してから所定時間経過後に前記検出部により蛍光画像を検出し、前記第1の照明部が消灯してから所定時間経過後に前記検出部により残光画像を検出するように前記検出部を制御することを特徴とする請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記第2の照明部は、前記蛍光体及び燐光体の発光飽和時間と前記紙葉類の搬送速度とに応じて前記第2の照射範囲を制御することを特徴とする請求項1に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記第2の照明部は、前記蛍光体及び燐光体の励起特性に応じて、照射する光の波長を制御することを特徴とする請求項1に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記搬送路を挟んで前記検出部と対向する側の前記検出部の読み取り位置に設けられた
基準板と、
前記基準板から発せられる光に基づいて前記検出部により検出される信号のレベルを補正する補正部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の光検出装置。
【請求項6】
紙葉類を搬送する搬送手段と、
前記紙葉類が搬送される搬送路上の所定範囲から光を受光して画像データを検出する検出部と、
前記検出部の読み取り位置を含む第1の照射範囲に対して間欠的に励起光を照射する第1の照明部と、
前記搬送路上の前記検出部より上流側であり、前記第1の照射範囲と連続しており、且つ、前記検出部の読み取り位置を含まない第2の照射範囲に対して常に励起光を照射する第2の照明部と、
前記第1の照明部の動作に応じて前記検出部により蛍光画像及び残光画像を検出するように制御する制御部と、
前記検出部により検出した蛍光画像及び残光画像に基づいて前記紙葉類に蛍光印刷情報及び燐光印刷情報が施されているか否かを判定する判定部と、
前記判別手段による判別結果に基づいて、前記紙葉類の種類を判別し、種類毎に区分する区分処理部と、
を具備することを特徴とする紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−191887(P2010−191887A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38203(P2009−38203)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】