説明

光源点灯回路

【課題】温度に対する保護機能毎に温度検知回路を設けていたのでは、回路規模が増大する。
【解決手段】放電灯点灯回路100において、駆動電圧生成回路12は、放電灯4に駆動電圧VLを供給する。制御回路10は、駆動電圧生成回路12を制御する。制御回路10は、温度ディレーティング機能と、駆動電圧生成回路12のDC/DCコンバータのスイッチング素子に対する電流制限機能と、を有する。制御回路10は温度を状態電流Isに変換する温度情報変換回路を有し、状態電流Isを用いて温度ディレーティング機能と電流制限機能とを制御する。制御回路10は、電源電圧Vccを抵抗で分圧し、その分圧点に状態電流Isを流すことによって得られる分圧点の電圧を電流制限機能を制御する基準電圧とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作の環境を示す情報に基づいた制御を行う光源点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、前照灯などの車両用灯具として、従来のフィラメントを有するハロゲンランプに代えて、メタルハライドランプ(以下、放電灯と称する)が利用されている。放電灯は、ハロゲンランプに比べて発光効率、長寿命が得られる反面、駆動電圧として数十〜数百Vが必要であるため、12Vもしくは24Vの車載バッテリでは直接駆動することができず、放電灯点灯回路(バラストとも称される)が必要となる。
【0003】
放電灯点灯回路は、バッテリ電圧を昇圧するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータの出力電圧を交流変換するHブリッジ回路などのスイッチング回路と、スタータ回路と、これらの回路ブロックを制御する制御回路とを備えている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−329777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放電灯点灯回路は、温度に対する各種の保護機能を有している。従来では、この保護機能ごとに温度情報を検知する回路を設ける場合が多い。近年の放電灯点灯回路の高性能化に伴い、要求される保護機能の種類も増加傾向に有る。このような状況において、保護機能毎に温度を検知する回路を設けていたのでは、回路規模の増大やコストアップにつながりかねない。
【0006】
このような課題は放電灯の点灯回路に限らずLED(Light Emitting Diode)などの光源の点灯回路にも生じうる。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度などの動作の環境を示す情報を検知する回路を共用できる光源点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、光源点灯回路に関する。この光源点灯回路は、駆動対象の光源に駆動電圧を供給する駆動電圧生成回路と、駆動電圧生成回路を制御する制御回路と、を備える。制御回路は、それぞれが制御電圧を必要とする複数の処理回路であって駆動電圧生成回路の少なくとも一部を制御する複数の処理回路と、複数の処理回路で必要とされる複数の制御電圧を生成する制御電圧生成回路と、動作の環境を示す情報を所定の変換規則によって状態電流に変換する環境情報変換回路と、を含む。制御電圧生成回路は、複数の制御電圧のそれぞれを状態電流を用いて調節し、制御電圧生成回路は、複数の制御電圧のうちの少なくともひとつについて、基準電圧を抵抗要素で分圧し、その分圧点に状態電流を流すことによって得られる分圧点の電圧を制御電圧とする。
【0009】
この態様によると、複数の処理回路のそれぞれに必要な制御電圧は、環境情報変換回路によって生成される状態電流によって調節される。したがって複数の処理回路は、動作の環境を示す情報を状態電流に変換する回路を共用していると言える。
【0010】
動作の環境を示す情報は、当該光源点灯回路の温度であってもよい。変換規則は、温度と状態電流との比例の係数が温度によって異なるように変換する規則であってもよい。この場合、処理回路におけるより複雑な温度制御にも対応できる。
【0011】
駆動電圧生成回路は、駆動電圧を生成するスイッチングレギュレータを含んでもよい。制御回路は、スイッチングレギュレータのスイッチング素子のオン、オフのデューティ比を制御する出力調節回路を含んでもよい。複数の処理回路のうちのひとつは、スイッチング素子に流れるスイッチング電流を制限するための制御を行う電流制限回路であってもよい。電流制限回路における制御電圧は、スイッチング電流のしきい値電流を与える電圧であってもよい。電流制限回路は、スイッチング電流が流れる抵抗要素に生じる電圧降下がその制御電圧を越えると出力調整回路にスイッチング素子をオフとさせてもよい。変換規則は、スイッチング電流が流れる抵抗要素の抵抗値の温度による変化を打ち消すように定められてもよい。この場合、広い温度範囲に亘ってスイッチング素子が保護されうる。
【0012】
駆動電圧生成回路は、駆動電圧を生成するスイッチングレギュレータを含んでもよい。制御回路は、誤差信号に基づいてスイッチングレギュレータのスイッチング素子のオン、オフのデューティ比を制御する出力調節回路を含んでもよい。複数の処理回路のうちのひとつは、光源の電気的状態と目標の状態とを比較して誤差信号を生成する誤差増幅回路であってもよい。誤差増幅回路における制御電圧は、目標の状態を示す電圧であってもよい。誤差増幅回路は、光源の電気的状態を示す電圧と制御電圧との差に対応する誤差信号を生成してもよい。制御電圧生成回路は、当該光源点灯回路の温度が所定のしきい値温度より高くなると光源へ供給する電力を下げるように誤差増幅回路の制御電圧を調節してもよい。この場合、しきい値温度より高い温度においては光源へ供給する電力を下げることにより、熱の発生を低減しうる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度などの動作の環境を示す情報を検知する回路を共用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る放電灯点灯回路およびそれに接続される部材の構成を示す回路図である。
【図2】図1の制御回路およびその周辺の構成を示す回路図である。
【図3】図1の制御回路の電流制限機能に関する波形を示すタイムチャートである。
【図4】図2の温度情報変換回路における変換規則の一例を示すグラフである。
【図5】図1の放電灯点灯回路の動作状態を示すタイムチャートである。
【図6】図6(a)、(b)は、放電灯点灯回路のDC期間後の動作状態を示すタイムチャートである。
【図7】変形例に係る温度ディレーティング調節回路の構成を示す回路図である。
【図8】バッテリ電圧ディレーティング調節回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には適宜同一の符号を付するものとし、重複した説明は省略する。また、各図面において説明上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、電圧、電流あるいは抵抗などに付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値あるいは抵抗値を表すものとして用いることとする。
【0016】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0017】
実施の形態に係る放電灯点灯回路は、DC/DCコンバータのスイッチング素子に過電流が流れるのを防ぐための電流制限機能と、高温時に駆動電力を低減する温度ディレーティング機能と、を備える。放電灯点灯回路は、放電灯点灯回路の温度の情報を取得し状態電流に変換する温度情報変換回路をひとつ有し、その温度情報変換回路が生成する状態電流を用いて、電流制限機能および温度ディレーティング機能を制御する。これにより、電流制限機能や温度ディレーティング機能などの機能毎に温度の情報を取得、変換していた従来と比べて、回路規模を縮小でき、コストダウンに貢献する。
ディレーティング機能とは、バッテリ電圧の低下時や高温時に放電灯に供給する駆動電力を下げることで放電灯点灯回路の安全性を高める機能である。温度ディレーティング機能とは放電灯点灯回路の温度に対するディレーティング機能である。
【0018】
図1は、実施の形態に係る放電灯点灯回路100およびそれに接続される部材の構成を示す回路図である。放電灯点灯回路100は、車載用のメタルハライドランプである放電灯4を駆動する。放電灯点灯回路100および放電灯4は、車両用灯具に搭載される。放電灯点灯回路100は、車載バッテリ(以下、単にバッテリと称する)6、電源スイッチ8と接続される。
【0019】
バッテリ6は、12V(もしくは24V)の直流のバッテリ電圧Vbatを発生する。電源スイッチ8は放電灯4の点灯のオン、オフを制御するために設けられたリレースイッチであり、バッテリ6と直列に設けられる。電源スイッチ8がオンとなると、バッテリ6からバッテリ電圧Vbatが放電灯点灯回路100に供給される。
【0020】
放電灯点灯回路100は、平滑化されたバッテリ電圧Vbatを昇圧し、交流変換して放電灯4へと供給する。以下、放電灯点灯回路100の詳細な構成を説明する。
【0021】
放電灯点灯回路100は、第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2、制御回路10、スタータ回路20、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、電流検出抵抗Rd、第1分圧回路30、第2分圧回路40、第5抵抗R5、入力キャパシタC1、を備える。
【0022】
入力キャパシタC1は、バッテリ6と並列に設けられ、バッテリ電圧Vbatを平滑化する。より具体的には、入力キャパシタC1は第1トランス14、第2トランス16の近傍に設けられており、第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2のスイッチング動作に対する電圧平滑化の機能を果たす。
【0023】
制御回路10は、放電灯点灯回路100全体を制御する機能IC(Integrated Circuit)を含み、放電灯点灯回路100のシーケンスを制御するとともに、放電灯4に供給する電力を調節する。制御回路10は、以下のシーケンスを実行することにより放電灯4を点灯させ、その光出力を安定化させる。
1. 電源投入
2. ブレークダウン
3. DC期間
4. ランナップ
5. 定常点灯
各シーケンスの詳細は後述する。
【0024】
第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2は、放電灯4に対する駆動電圧VLを生成する駆動電圧生成回路12を形成する。駆動電圧生成回路12は、ランナップおよび定常点灯期間において、放電灯4の両端間に点灯周波数f1の交流の駆動電圧VLを供給する。点灯周波数f1は10kHz以下、さらには250Hz〜750Hz程度に設定されることが好ましく、本実施の形態では300Hzに設定される。点灯周波数f1の逆数を点灯周期T1(=1/f1)という。
【0025】
第1DC/DCコンバータCONV1は、絶縁型のスイッチングレギュレータであり、第1スイッチング素子M1、第1トランス14、第1整流ダイオードD1、第1出力キャパシタCo1を含む。第1DC/DCコンバータCONV1のトポロジーは一般的なものであるため簡潔に説明する。
【0026】
第1トランス14の1次コイルL1と第1スイッチング素子M1は、入力キャパシタC1と並列に、第1DC/DCコンバータCONV1の入力端子Pinと接地端子(GND)との間に直列に設けられている。たとえば第1スイッチング素子M1はNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成される。第1スイッチング素子M1がオンとなると、第1スイッチング素子M1のドレインからソースに向けて第1スイッチング電流IM1が流れる。その際、第1スイッチング素子M1の第1オン抵抗RM1(不図示)には電圧降下が生じ、第1スイッチング素子M1のドレインには第1ドレイン電圧VM1(=IM1×RM1)が発生する。制御回路10は、この第1ドレイン電圧VM1を取得し、後述する第1PBP(Pulse By Pulse)監視回路94での制御に使用する。
第1トランス14の2次コイルL2の一端は接地されており、その他端は第1整流ダイオードD1のアノードと接続される。第1出力キャパシタCo1は第1整流ダイオードD1のカソードと接地端子間に設けられる。
【0027】
第1スイッチング素子M1の制御端子(ゲート)には、点灯周波数f1より高いPWM周波数f2の第1制御パルス信号S1が印加される。たとえばPWM周波数f2は400kHzである。第1スイッチング素子M1は、第1制御パルス信号S1がハイレベルのときオン、ローレベルのときオフする。制御回路10は、放電灯4の電気的状態にもとづいてフィードバックによって第1制御パルス信号S1のハイレベルとローレベルのデューティ比を調節する。
【0028】
第1DC/DCコンバータCONV1は、アクティブ状態と非アクティブ状態が切り換え可能であり、アクティブ状態において、放電灯4の一端P1に第1出力電圧Vo1を供給する。
【0029】
第2DC/DCコンバータCONV2は、第1DC/DCコンバータCONV1と同様の回路トポロジーを有している。すなわち、第1整流ダイオードD1と第2整流ダイオードD2、第1出力キャパシタCo1と第2出力キャパシタCo2、第1トランス14と第2トランス16、第1スイッチング素子M1と第2スイッチング素子M2は対応している。第2スイッチング素子M2がオンとなると、第2スイッチング素子M2のドレインからソースに向けて第2スイッチング電流IM2が流れる。その際、第2スイッチング素子M2の第2オン抵抗RM2(不図示)には電圧降下が生じ、第2スイッチング素子M2のドレインには第2ドレイン電圧VM2(=IM2×RM2)が発生する。制御回路10は、この第2ドレイン電圧VM2を取得し、後述する第2PBP監視回路96での制御に使用する。第2スイッチング素子M2のオン、オフは、放電灯4の電気的状態にもとづいたフィードバックによって、制御回路10が生成する第2制御パルス信号S2によって制御される。
以下、第1スイッチング素子M1および第2スイッチング素子M2の両方に、同様の特性を有するNチャンネルMOSFETが使用される場合を考える。したがって、第1オン抵抗RM1および第2オン抵抗RM2は同様の絶対値および温度特性を有する。第1スイッチング素子M1および第2スイッチング素子M2の両方について、安全性を確保する観点からドレイン−ソース間に流すことのできるスイッチング電流の最大値、を最大電流IM_MAXと定める。
【0030】
第2DC/DCコンバータCONV2も、アクティブ状態と非アクティブ状態が切り換え可能であり、アクティブ状態において、放電灯4の他端P2に第2出力電圧Vo2を供給する。
【0031】
第1スイッチSW1は、放電灯4の一端P1側に設けられ、オン状態において、放電灯4の一端P1と固定電圧端子(接地端子)との間を電気的に導通させる。第2スイッチSW2は、放電灯4の他端P2側に設けられ、オン状態において、放電灯4の他端P2と固定電圧端子(接地端子)との間を電気的に導通させる。第1スイッチSW1および第2スイッチSW2にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)もしくはMOSFETが好適であるが、その他の代替デバイスを用いても構わない。第1スイッチSW1、第2スイッチSW2それぞれのオン、オフ状態は、制御回路10からの第1制御信号S3、第2制御信号S4に応じて制御される。
【0032】
第1DC/DCコンバータCONV1と第2DC/DCコンバータCONV2は、点灯周波数f1で相補的にアクティブ状態と非アクティブ状態を繰り返す。つまり第1DC/DCコンバータCONV1がアクティブな期間と、第2DC/DCコンバータCONV2がアクティブな期間とはそれぞれ、点灯周期T1の半周期となる。以下、第1DC/DCコンバータCONV1がアクティブな状態を第1状態φ1、第2DC/DCコンバータCONV2がアクティブな状態を第2状態φ2と称する。第1スイッチSW1は第2DC/DCコンバータCONV2がアクティブのとき、つまり第2状態φ2においてオンし、第2スイッチSW2は第1DC/DCコンバータCONV1がアクティブのとき、つまり第1状態φ1においてオンする。
【0033】
第1状態φ1においては、放電灯4の一端P1に第1出力電圧Vo1が、他端P2に接地電圧(0V)が印加され、その結果、放電灯4には、駆動電圧VL(≒Vo1)が第1極性にて印加される。第2状態φ2においては、放電灯4の他端P2に第2出力電圧Vo2が、一端P1に接地電圧が印加され、その結果、放電灯4には、駆動電圧VL(≒Vo2)が第1極性と反対の第2極性にて印加される。
【0034】
ランナップおよび定常点灯期間において、制御回路10は、第1状態φ1と第2状態φ2とを点灯周期T1にて交互に繰り返す。その結果、放電灯4には、交流の駆動電圧VLが供給される。
【0035】
電流検出抵抗Rdは、放電灯4に流れるランプ電流ILの経路上に設けられる。図1の回路では電流検出抵抗Rdは、共通接続された第1スイッチSW1、第2スイッチSW2のエミッタと、接地端子との間に設けられる。第1状態φ1においては、放電灯4に第1極性(図1中の右向き)に流れるランプ電流が流れ、第2状態φ2においては、第2極性(図1中の左向き)に流れるランプ電流が流れる。電流検出抵抗Rdには、第1状態φ1、第2状態φ2のそれぞれにおいて、ランプ電流ILに比例した電圧降下(電流検出信号SILと称する)が発生する。電流検出信号SILは、制御回路10へ入力される。
【0036】
スタータ回路20は、放電灯4をブレークダウンさせるために設けられる。スタータ回路20は、スタータトランス22およびパルス発生部28を含む。パルス発生部28は、スタータトランス22の1次コイル24に対して、振幅が400V〜1kVのパルス電圧を印加する。その結果、2次コイル26側には、スタータトランス22の巻線比に応じた高電圧パルス(たとえば20kV)が発生し、放電灯4に印加される。その結果、放電灯4がブレークダウンし、放電が開始する。
【0037】
第1分圧回路30は、電源電圧Vccを所定の分圧比で分圧する。電源電圧Vccは、バッテリ電圧Vbatから生成される固定電圧であり、例えば3Vである。第1分圧回路30は、接地端子と電源電圧Vccを与える電源端子との間に直列に接続された第1抵抗R1および第2抵抗R2を含む。第1抵抗R1の一端と第2抵抗R2の一端とが接続された第1接続ノードN1(分圧点)は、制御回路10の電力調整端子P3と接続される。後述するが、電力調整端子P3から状態電流Isが第1接続ノードN1へ流れ込む。したがって、第1接続ノードN1の電圧である第1分圧点電圧VN1は、状態電流Isと第1抵抗R1と第2抵抗R2とで決まる値、つまり
【数1】


となる。式1の右辺第2項は第1分圧点電圧VN1のオフセットを表し、
【数2】


が成立することから、オフセットは分圧比α=R2/R1の関数である。式1の右辺第1項は第1分圧点電圧VN1の状態電流Isへの比例部分を表す。その比例の定数は第1抵抗R1と第2抵抗R2とが並列に接続された場合の合成抵抗である。
これにより、状態電流Isに比例した第1分圧点電圧VN1(後述するが、これは制御回路10の温度ディレーティング調節回路86へ供給される電圧である)が得られるだけでなく、分圧比を変えることにより第1分圧点電圧VN1のオフセットを、全体の抵抗値を変えることによって比例の定数を変えることができる。第1抵抗R1および第2抵抗R2は集積された制御回路10の外部に設けられているため、その抵抗値の変更は容易である。したがって実施の形態に係る放電灯点灯回路100では、第1分圧点電圧VN1のオフセットや比例の常数の設定や微調整が容易となる。
【0038】
第2分圧回路40は、第1分圧回路30と同様の構成を有する。第2分圧回路40は、接地端子と電源電圧Vccを与える電源端子との間に直列に接続された第3抵抗R3および第4抵抗R4を含む。第3抵抗R3の一端と第4抵抗R4の一端とが接続された第2接続ノードN2(分圧点)は、PBP調整端子P4と接続される。後述するが、PBP調整端子P4から状態電流Isが第2接続ノードN2へ流れ込む。したがって、第2接続ノードN2の電圧である第2分圧点電圧VN2は、状態電流Isと第3抵抗R3と第4抵抗R4とで決まる値、つまり
【数3】


となる。したがって第1分圧回路30と同様、実施の形態に係る放電灯点灯回路100では、第2分圧点電圧VN2(後述するが、これは制御回路10の電流制限回路58へ供給される電圧である)のオフセットや比例の常数の設定や微調整が容易となる。
【0039】
第5抵抗R5の一端は、制御回路10の電流変換端子P5に接続される。第5抵抗R5の他端は接地される。後述するが、第5抵抗R5の抵抗値の大きさによって状態電流Isの大きさが制御される。
【0040】
図2は、制御回路10およびその周辺の構成を示す回路図である。制御回路10は図2に示される部材以外にも放電灯点灯回路100の各機能を実現するための他の部材を含むが、説明を明瞭とするため、それらの部材は図2では省略される。
制御回路10は、温度情報変換回路50、制御電圧生成回路52、電力制御回路54、状態検出回路56、電流制限回路58、出力調節回路60、極性制御回路62、出力先選択回路64、を含む。
【0041】
温度情報変換回路50は、動作の環境を示す情報、例えば放電灯点灯回路100の温度Tを所定の変換規則によって状態電流Isに変換する。状態電流Isの温度Tへの依存性は、電力制御回路54や電流制限回路58などで所望の温度特性を実現するために使用される。したがって、非線形な温度特性などの複雑な温度特性にも対応するために、温度情報変換回路50における変換規則は、温度Tと状態電流Isとの比例の係数が温度Tによって異なるように変換する規則とされる。例えば、変換規則は、第1スイッチング電流IM1が流れる第1スイッチング素子M1の第1オン抵抗RM1の抵抗値の温度Tによる変化を打ち消すように定められる。
【0042】
温度情報変換回路50は、温度情報取得回路66、関数変換回路68、GMアンプ70、を含む。
温度情報取得回路66は、サーマルダイオードなどの温度センサを含んで構成される。温度情報取得回路66は、サーマルダイオードを用いて放電灯点灯回路100の温度Tに比例した検出温度電圧Vを生成する。この比例の定数は、サーマルダイオードに流す電流などの測定条件やサーマルダイオードの特性によって決まる。以下、放電灯点灯回路100はその全体に亘って一様な温度Tを有する場合を考える。しかしながら以下の説明は、放電灯点灯回路100に温度勾配が有る場合にも適用できることは当業者には理解される。
【0043】
関数変換回路68は、第1吐出型増幅回路72、第2吐出型増幅回路74、第6抵抗R6、を含む。
第1吐出型増幅回路72は、検出温度電圧Vを受け、温度変換電圧Vmを出力する。第1吐出型増幅回路72は、第1差動増幅回路76、第1吐出ダイオード78や、増幅率およびオフセットを決定するための図示しない複数の抵抗を含む。第1差動増幅回路76の非反転入力端子には検出温度電圧Vが印加される。第1差動増幅回路76の出力端子には第1吐出ダイオード78のアノードが接続される。第1吐出ダイオード78のカソード側の温度変換電圧Vmは、第1差動増幅回路76の反転入力端子に印加され、フィードバックが構成される。
第2吐出型増幅回路74は、第1吐出型増幅回路72と同様の構成を有する。すなわち、第2差動増幅回路80と第1差動増幅回路76、第2吐出ダイオード82と第1吐出ダイオード78は対応している。ただし、第2差動増幅回路80で設定される増幅率およびオフセットは、第1差動増幅回路76で設定されるそれとは異なる。
第1吐出ダイオード78のカソードと第2吐出ダイオード82のカソードとが接続された第3接続ノードN3には、第6抵抗R6の一端が接続される。第6抵抗R6の他端は接地される。
【0044】
関数変換回路68では、第1吐出型増幅回路72と第2吐出型増幅回路74とが並列に接続され、それぞれに検出温度電圧Vが入力される。第1吐出型増幅回路72の出力と第2吐出型増幅回路74の出力とが接続される第3接続ノードN3に現れる温度変換電圧Vmは、第1差動増幅回路76がその増幅率およびオフセットに基づき出力すべき電圧もしくは第2差動増幅回路80がその増幅率およびオフセットに基づき出力すべき電圧のうち高い方の電圧となる。ここでは特に、温度変換電圧Vmは、ある検出温度電圧Vの値(つまり、あるしきい値温度Tth)を境に、温度Tがしきい値温度Tthよりも小さい場合は一方の吐出型増幅回路が出力すべき電圧、温度Tがしきい値温度Tth以上の場合は他方の吐出型増幅回路が出力すべき電圧となる場合(折れ線)を考える。第1差動増幅回路76の増幅率およびオフセットと、第2差動増幅回路80の増幅率およびオフセットは、そのような温度変換電圧Vmを与えるように適切に設定される。数式で表すと、
【数4】


となる。但し、第1増幅率A1、第2増幅率A2、第1オフセットB1、第2オフセットB2はいずれも正の実数である。
【0045】
GMアンプ70は、温度変換電圧Vmを受け、それを状態電流Isに変換する。GMアンプ70の出力側は電流変換端子P5を介して制御回路10の外部に設けられた第5抵抗R5の一端と接続される。GMアンプ70が生成する状態電流Isの大きさは、第5抵抗R5の抵抗値を調節することによって調節される。これにより、制御回路10を集積した後であっても、制御回路10の外部の(つまり、集積されていない)第5抵抗R5の抵抗値を調節することによって状態電流Isの大きさを微調整できるので便利である。
GMアンプ70は、第3差動増幅回路84、第3スイッチング素子M3、を含む。第3差動増幅回路84の非反転入力端子には、温度変換電圧Vmが印加される。第3差動増幅回路84の出力端子は、npn型バイポーラトランジスタである第3スイッチング素子M3のベースと接続される。第3スイッチング素子M3のエミッタは第3差動増幅回路84の反転入力端子と接続され、フィードバックが形成される。第3スイッチング素子M3のエミッタはまた、電流変換端子P5と接続される。第3スイッチング素子M3は、そのコレクタから下記の式6で与えられる状態電流Isを引き込む。
Is=Vm/R5 …(式6)
【0046】
制御電圧生成回路52は、状態電流Isを基に、電力制御回路54で必要とされる第1基準電圧VE1および電流制限回路58で必要とされる第2基準電圧VE2を生成する。制御電圧生成回路52は、第1基準電圧VE1および第2基準電圧VE2のそれぞれを状態電流Isを用いて調節する。制御電圧生成回路52は、第1基準電圧VE1について、電力調整端子P3を介して第1分圧回路30に状態電流Isを供給し、第1分圧点電圧VN1を得る。制御電圧生成回路52は、第1分圧点電圧VN1をさらに加工して第1基準電圧VE1とする。
制御電圧生成回路52は、第2基準電圧VE2について、PBP調整端子P4を介して第2分圧回路40に状態電流Isを供給し、第2分圧点電圧VN2を得る。制御電圧生成回路52は、第2分圧点電圧VN2を第2基準電圧VE2とする。
制御電圧生成回路52は、放電灯点灯回路100の温度Tが所定の温度ディレーティング開始温度Tdより高くなると放電灯4へ供給する電力を下げるように第1基準電圧VE1を調節する。特に、温度ディレーティング開始温度Tdはしきい値温度Tthよりも高く設定される。つまり、温度ディレーティングが必要な温度領域において、温度Tに対する第1基準電圧VE1の変化が単純、特に線形となるように温度ディレーティング開始温度Tdが設定される。これは、温度ディレーティング機能の制御の観点から好ましい。
【0047】
制御電圧生成回路52は、電流源CM、温度ディレーティング調節回路86、を含む。
電流源CMは、GMアンプ70によって生成される状態電流Isと同じ大きさの電流を電力調整端子P3およびPBP調整端子P4に供給する。電流源CMは、例えばカレントミラー回路である。電流源CMは、第7抵抗R7、第8抵抗R8、第9抵抗R9、第4スイッチング素子M4、第5スイッチング素子M5、第6スイッチング素子M6、を含む。第7抵抗R7、第8抵抗R8、第9抵抗R9の抵抗値は等しく設定される。第4スイッチング素子M4、第5スイッチング素子M5、第6スイッチング素子M6はいずれもpnp型バイポーラトランジスタであり、それらのベースは共通接続されている。第7抵抗R7の一端、第8抵抗R8の一端および第9抵抗R9の一端は電源電圧Vdと接続される。ここで電源電圧Vdは、電源電圧Vccとは別の固定電圧であり、例えば6Vである。第9抵抗R9の他端は第6スイッチング素子M6のエミッタと接続される。第6スイッチング素子M6のコレクタは、第6スイッチング素子M6のベースと接続されると共に、第3スイッチング素子M3のコレクタと接続される。第8抵抗R8の他端は、第5スイッチング素子M5のエミッタと接続される。第7抵抗R7の他端は、第4スイッチング素子M4のエミッタと接続される。
【0048】
第5スイッチング素子M5のコレクタは電力調整端子P3と接続される。また、第5スイッチング素子M5のコレクタは、温度ディレーティング調節回路86の第4差動増幅回路88の非反転入力端子と接続される。第5スイッチング素子M5は、そのコレクタから電力調整端子P3に状態電流Isを供給する。電力調整端子P3は第1分圧回路30の第1接続ノードN1と接続されているので、第5スイッチング素子M5のコレクタの電圧は式1で与えられる第1分圧点電圧VN1となる。したがって、第4差動増幅回路88の非反転入力端子には、第1分圧点電圧VN1が印加される。
【0049】
第4スイッチング素子M4のコレクタはPBP調整端子P4と接続される。また、第4スイッチング素子M4のコレクタは電流制限回路58の基準電圧として使用される。第4スイッチング素子M4はそのコレクタからPBP調整端子P4に状態電流Isを供給する。PBP調整端子P4は第2分圧回路40の第2接続ノードN2と接続されているので、第4スイッチング素子M4のコレクタの電圧は式3で与えられる第2分圧点電圧VN2となる。
【0050】
温度ディレーティング調節回路86は、第1分圧点電圧VN1を加工し、第1基準電圧VE1を生成する。温度ディレーティング調節回路86は、放電灯点灯回路100の温度Tが温度ディレーティング開始温度Tdより高くなると放電灯4へ供給する電力を下げるように第1基準電圧VE1を調節する。
温度ディレーティング調節回路86は、第4差動増幅回路88、第7スイッチング素子M7、第10抵抗R10、第11抵抗R11、第12抵抗R12、第13抵抗R13、第14抵抗R14、を含む。第4差動増幅回路88の出力端子はnpn型バイポーラトランジスタである第7スイッチング素子M7のベースと接続される。第10抵抗R10、第11抵抗R11、第12抵抗R12は、この順に直列に電源端子(Vcc)と接地端子との間に設けられる。第10抵抗R10の一端と第11抵抗R11の一端との間の第4接続ノードN4の電圧は、第4差動増幅回路88の反転入力端子に印加される。第11抵抗R11の他端と第12抵抗R12の一端との間の第5接続ノードN5は第7スイッチング素子M7のエミッタと接続される。第13抵抗R13、第14抵抗R14は、この順に直列に電源端子(Vcc)と接地端子との間に設けられる。第13抵抗R13の一端と第14抵抗R14の一端との間の第6接続ノードN6は、第7スイッチング素子M7のコレクタと接続される。第6接続ノードN6の電圧が第1基準電圧VE1として電力制御回路54に供給される。
【0051】
温度ディレーティング調節回路86では、第1分圧点電圧VN1があるしきい値電圧Vthになると第6接続ノードN6からシンク電流Ioを引き込み始める。VN1=Vthを与える温度Tが温度ディレーティング開始温度Tdである。
実施の形態では、R10:R11=1:2、および第10抵抗R10の抵抗値は第12抵抗R12の抵抗値よりも2桁程度大きく設定される。第1分圧点電圧VN1がしきい値電圧Vthである2Vcc/3より低い場合は、シンク電流Ioは流れない。第1分圧点電圧VN1がしきい値電圧Vthである2Vcc/3より高くなると、シンク電流Ioが流れ始める。この場合第5接続ノードN5に生じるシンク電圧Voは、下記の式7により与えられる。
【数5】


ここで、式7の導出には、式1、式4、式6を用いた。また、T>Td>Tthを用いた。シンク電流IoはIo=Vo/R12であることを考慮すると、シンク電流Ioは、
【数6】


により定められる。このシンク電流Ioを用いて第1基準電圧VE1は下記の式10により与えられる。
【数7】


なお、温度Tの上昇と共にシンク電流Ioが大きくなり第1基準電圧VE1がゼロとなると、それ以上温度Tが上昇しても第1基準電圧VE1はゼロもしくは所定の小さな値となる。
【0052】
第2増幅率A2、第2オフセットB2、電源電圧Vcc、および第12抵抗R12の抵抗値が与えられ、所望の温度ディレーティングの特性、つまり温度ディレーティング開始温度TdおよびT>Tdの温度範囲でのシンク電流Ioの温度Tに対する傾きが与えられる場合、式8および式9を用いると、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第5抵抗R5の間の比を定めることができる。逆に言うと、制御回路10が集積された後でも、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第5抵抗R5の抵抗値を調節することにより、所望の温度ディレーティングの特性を実現できる。これは例えば放電灯点灯回路100に使用される各電子部品の特性のばらつきを補正したり、放電灯点灯回路100が設置される温度環境の違いによりディレーティング特性を調整する際に役に立つ。
【0053】
状態検出回路56は、電流検出信号SIL、第1出力電圧Vo1、第2出力電圧Vo2を受け、放電灯4の電気的状態を検出する。状態検出回路56は、放電灯4の電気的状態、例えば駆動電力(VL×IL)を示す電力情報信号Spを電力制御回路54に出力する。
【0054】
電力制御回路54は、第1基準電圧VE1を目標の状態を示す電圧として受ける。電力制御回路54は、第1基準電圧VE1と電力情報信号Spの電圧との差に対応する誤差信号Serrを生成する。電力制御回路54は、誤差増幅器90、位相補償回路92、を含む。
誤差増幅器90は、第1基準電圧VE1と電力情報信号Spの電圧との誤差を増幅し、誤差信号Serrを生成する。
位相補償回路92は、誤差信号Serrの位相を電力情報信号Spの位相に対して補償し、制御回路10全体の発振を防止する。位相補償回路92は、電力情報信号Spと誤差信号Serrとの間に並列に設けられた位相補償キャパシタC2および第15抵抗R15を含む。
【0055】
極性制御回路62は、インバータ信号SINVを生成してスイッチ制御回路102および出力先選択回路64に供給する。インバータ信号SINVは、第1状態φ1と第2状態φ2とで相補的なレベルを取る信号である。ここではインバータ信号SINVは、第1状態φ1においてハイレベルとなり、第2状態φ2においてローレベルとなる信号である。
極性制御回路62は、放電灯点灯回路100が第1状態φ1にあるかそれとも第2状態φ2にあるかに基づいて、第1制御信号S3および第2制御信号S4を生成する。
【0056】
出力調節回路60は、誤差信号Serrに基づいてそれぞれのDC/DCコンバータのスイッチング素子のオン、オフのデューティ比を制御する。出力調節回路60は、PWMコンパレータ108、鋸波生成回路110、デューティ比制限回路112、を含む。
【0057】
鋸波生成回路110は、PWM周波数f2の三角波状あるいはのこぎり波状の周期信号Soscを生成する。
PWMコンパレータ108は、誤差信号Serrを周期信号Soscと比較することにより制限前PWM信号S8を生成する。
デューティ比制限回路112は、制限前PWM信号S8と後述するPBP調整信号S7とを受ける。デューティ比制限回路112は、下記の場合を除いて制限前PWM信号S8と波形が揃ったPWM信号SPWMを生成する。デューティ比制限回路112は、制限前PWM信号S8がハイレベルとなる期間中にPBP調整信号S7がローレベルとなると、PWM信号SPWMをローレベルとする。そしてデューティ比制限回路112は、次に制限前PWM信号S8がハイレベルとなるタイミングでPWM信号SPWMをハイレベルとする。
【0058】
出力先選択回路64はインバータ信号SINVと、PWM信号SPWMと、を受ける。出力先選択回路64は、PWM信号SPWMを増幅するバッファ回路を含んで構成される。出力先選択回路64は、インバータ信号SINVがハイレベルをとる場合、増幅されたPWM信号SPWMを第1制御パルス信号S1として第1スイッチング素子M1の制御端子に出力する。この際、出力先選択回路64は第2制御パルス信号S2をローレベルに固定して第2スイッチング素子M2をオフとする。
【0059】
出力先選択回路64は、インバータ信号SINVがローレベルをとる場合、増幅されたPWM信号SPWMを第2制御パルス信号S2として第2スイッチング素子M2の制御端子に出力する。この際、出力先選択回路64は第1制御パルス信号S1をローレベルに固定して第1スイッチング素子M1をオフとする。
【0060】
電流制限回路58は、それぞれのDC/DCコンバータのスイッチング素子に流れるスイッチング電流を制限するための制御を行う。電流制限回路58は、制御電圧生成回路52から供給される第2基準電圧VE2(=第2分圧点電圧VN2)をスイッチング電流の最大電流IM_MAXを与える電圧として使用する。式3を参照すると第2分圧点電圧VN2は第3抵抗R3および第4抵抗R4の抵抗値によって調節することができる。つまり、制御回路10が集積された後でも、第3抵抗R3、第4抵抗R4の抵抗値を調節することにより、最大電流IM_MAXを所望の電流値に設定できる。これは例えば放電灯点灯回路100に使用される第1および第2スイッチング素子M1、M2のオン抵抗の絶対値やその温度特性に応じて補正する際に役に立つ。
【0061】
電流制限回路58は、第1PBP監視回路94、第2PBP監視回路96、ANDゲート98、スイッチ制御回路102、を含む。
スイッチ制御回路102は、極性制御回路62からインバータ信号SINVを、デューティ比制限回路112からPWM信号SPWMを受けて、第3スイッチSW3および第4スイッチSW4のオンオフを制御する。
第1PBP監視回路94は、第1スイッチング電流IM1が流れる第1オン抵抗RM1に生じる電圧降下(=第1ドレイン電圧VM1)が第2基準電圧VE2を越えると出力調節回路60に第1スイッチング素子M1をオフとさせる。第1PBP監視回路94は、第1PBPコンパレータ104、第8スイッチング素子M8、第3スイッチSW3、第16抵抗R16、第17抵抗R17、を含む。第16抵抗R16の一端には、第1ドレイン電圧VM1が印加される。第16抵抗R16の他端は、第3スイッチSW3の一端および第1PBPコンパレータ104の非反転入力端子と接続される。第3スイッチSW3の他端は接地される。第3スイッチSW3のオンオフはスイッチ制御回路102によって制御される。スイッチ制御回路102は、第1状態φ1においては、PWM信号SPWMがハイレベル、つまり第1スイッチング素子M1がオンのときには第3スイッチSW3をオフし、PWM信号SPWMがローレベル、つまり第1スイッチング素子M1がオフのときには第3スイッチSW3をオンする。スイッチ制御回路102は、第2状態φ2においては、第3スイッチSW3をオンする。言い換えると、スイッチ制御回路102は、第1スイッチング素子M1がオンのときには第3スイッチSW3をオフし、第1スイッチング素子M1がオフのときには第3スイッチSW3をオンする。
【0062】
第1PBPコンパレータ104の反転入力端子には、第2基準電圧VE2が印加される。
第17抵抗R17と第8スイッチング素子M8は、電源電圧Vccが印加される電源端子と接地端子との間に直列にこの順に設けられている。たとえば第8スイッチング素子M8はNチャンネルMOSFETで構成される。第1PBPコンパレータ104の出力端子は、第8スイッチング素子M8のゲートと接続される。第17抵抗R17の一端と第8スイッチング素子M8のドレインとの接続点に生じる第1PBP調整信号S5はANDゲート98に供給される。第1PBP監視回路94では、第1スイッチング素子M1のオン期間中に、第1ドレイン電圧VM1が第2基準電圧VE2を上回ると、第8スイッチング素子M8がオンとされ、第1PBP調整信号S5がローレベルとなる。第1PBP調整信号S5がローレベルとなると、デューティ比制限回路112において第1PBP調整信号S5がローレベルとなった時点から残りの1パルス分のオン期間が終了するまで第1スイッチング素子M1はオフとされる。第1スイッチング素子M1がオフとされるので第3スイッチSW3はオンとなり、第8スイッチング素子M8は再びオフとされる。
【0063】
第2PBP監視回路96は、第2スイッチング電流IM2が流れる第2オン抵抗RM2に生じる電圧降下(=第2ドレイン電圧VM2)が第2基準電圧VE2を越えると出力調節回路60に第2スイッチング素子M2をオフとさせる。
第2PBP監視回路96は、第1PBP監視回路94と同様の構成を有する。すなわち、第2PBPコンパレータ106と第1PBPコンパレータ104、第9スイッチング素子M9と第8スイッチング素子M8、第4スイッチSW4と第3スイッチSW3、第18抵抗R18と第16抵抗R16、第19抵抗R19と第17抵抗R17、は対応している。ただし、第18抵抗R18の一端には第2ドレイン電圧VM2が印加される。また、スイッチ制御回路102は、第2状態φ2においては、PWM信号SPWMがハイレベル、つまり第2スイッチング素子M2がオンのときには第4スイッチSW4をオフし、PWM信号SPWMがローレベル、つまり第2スイッチング素子M2がオフのときには第4スイッチSW4をオンする。スイッチ制御回路102は、第1状態φ1においては、第4スイッチSW4をオンする。言い換えると、スイッチ制御回路102は、第2スイッチング素子M2がオンのときには第4スイッチSW4をオフし、第2スイッチング素子M2がオフのときには第4スイッチSW4をオンする。
【0064】
第2PBP監視回路96では、第2スイッチング素子M2のオン期間中に、第2ドレイン電圧VM2が第2基準電圧VE2を上回ると、第9スイッチング素子M9がオンとされ、第2PBP調整信号S6がローレベルとなる。第2PBP調整信号S6がローレベルとなると、デューティ比制限回路112において第2PBP調整信号S6がローレベルとなった時点から残りの1パルス分のオン期間が終了するまで第2スイッチング素子M2はオフとされる。第2スイッチング素子M2がオフとされるので第4スイッチSW4はオンとなり、第9スイッチング素子M9は再びオフとされる。
【0065】
ANDゲート98は、第1PBP調整信号S5と第2PBP調整信号S6との論理積をPBP調整信号S7としてデューティ比制限回路112に出力する。
【0066】
図3は、制御回路10の電流制限機能に関する波形を示すタイムチャートである。図3の縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。図3では上から、周期信号Sosc、制限前PWM信号S8、PBP調整信号S7、PWM信号SPWM、が示される。周期信号Soscと同じ段に示される破線は誤差信号Serrの電圧Verrを示す。図3では、第1状態φ1において、第1スイッチング素子M1のオン期間中に第1ドレイン電圧VM1が第2基準電圧VE2を越える場合を考える。
【0067】
第1スイッチング素子M1のオン期間中(PWM信号SPWMがハイレベル)である時刻t1に第1ドレイン電圧VM1が第2基準電圧VE2を越えたとする。すると第1PBPコンパレータ104によって第8スイッチング素子M8がオンされ、PBP調整信号S7はローレベルとなる。デューティ比制限回路112はPBP調整信号S7がローレベルとなったことを受けて、時刻t1からPWM信号SPWMをローレベルとする。ここで、第1スイッチング素子M1がオフとなるので第3スイッチSW3はオンとなり、第8スイッチング素子M8は再びオフとされ、PBP調整信号S7はハイレベルに戻る。PBP調整信号S7が一旦ローレベルとなってからハイレベルに戻るまでの時間は図3で示される時間スケールよりも非常に短いので、図3ではPBP調整信号S7は、時刻t1においてローレベルに落ちるパルスを有する信号として描かれている。
次に制限前PWM信号S8に立ち上がりエッジが現れる時刻t2において、PWM信号SPWMもまたハイレベルとなる。以降、第1スイッチング素子M1に流れる第1スイッチング電流IM1が第2基準電圧VE2で規定される最大電流IM_MAXよりも多くなる状態が続く限り同様にパルス毎に第1スイッチング素子M1のオン期間が制限される。これにより、第1スイッチング素子M1に過電流が流れるのを防止できる。第2スイッチング素子M2についても同様である。
【0068】
図4は、温度情報変換回路50における変換規則の一例を示すグラフである。第1オン抵抗RM1および第2オン抵抗RM2は同様の絶対値および温度特性を有するので、それらを総称してオン抵抗Rと表記する。曲線114は、(オン抵抗R)・(最大電流IM_MAX)を示す。曲線114は、オン抵抗Rの曲線的な温度変化を示している。第1線分116および第2線分118は第2基準電圧VE2(=第2分圧点電圧VN2)を示す。第1線分116および第2線分118は、しきい値温度Tthにおいて接続されている。
式3、式4、式6を参照すると、第2基準電圧VE2は、
【数8】


で表される。第1線分116は式11に、第2線分118は式12にそれぞれ対応する。第1増幅率A1、第2増幅率A2、第1オフセットB1、第2オフセットB2(以上、温度情報変換回路50における変換規則)、第3抵抗R3、第4抵抗R4、第5抵抗R5、は、第1線分116および第2線分118が、曲線114を良く近似するように定められる。特に実施の形態では、制御回路10を集積した後でも第3抵抗R3、第4抵抗R4、第5抵抗R5、を変更することで容易に近似の度合いを微調整できる。
【0069】
以上が放電灯点灯回路100の構成である。続いてその動作を、シーケンスに従って説明する。図5は、放電灯点灯回路100の動作状態を示すタイムチャートである。図5の縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。
【0070】
1. 電源投入
時刻t1においてユーザが電源スイッチ8をオンすると、放電灯点灯回路100が起動する。制御回路10は第1DC/DCコンバータCONV1をアクティブ状態、第1スイッチSW1をオフ状態とし(第1状態φ1)、バッテリ電圧Vbatを所定の高電圧(400V)に昇圧して安定化する。
【0071】
2. ブレークダウン
スタータ回路20は、第1DC/DCコンバータCONV1により生成された400Vの第1出力電圧Vo1を受ける。パルス発生部28は振幅400Vのパルスをスタータトランス22の1次コイル24に印加する。図5に示すように、このときスタータトランス22の2次コイル26には、20kV以上の高電圧パルスが発生する。その結果、放電灯4の駆動電圧は13〜25kV程度まで上昇して時刻t2においてブレークダウンし、グロー放電が始まる。
【0072】
3. DC期間φDC
ブレークダウンの後、制御回路10はまず第1状態φ1においてランプ電流ILを第1極性の向きにおよそ10msの間流す制御を行う。次に制御回路10は、第2状態φ2に切り替え、ランプ電流ILを第2極性の向きにおよそ10msの間流す制御を行う。この期間をDC期間φDCと呼ぶこととする。このDC期間φDCにおいてグロー放電からアーク放電へと移行させる。
【0073】
DC期間φDCが終了してアーク放電が安定すると、制御回路10は、第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2および第1スイッチSW1、第2スイッチSW2を制御して、点灯周期T1にて交互に第1状態φ1と第2状態φ2とを繰り返す。
【0074】
図6(a)、(b)は、放電灯点灯回路100のDC期間φDC後の動作状態を示すタイムチャートである。図6(a)、(b)の縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。図6(a)、(b)はそれぞれ、ランナップ過程および定常点灯時の波形を示している。
【0075】
4. ランナップ
アーク放電の成長にともない、放電灯4の光出力が上昇していく。光出力の立ち上がりは規格で定められており、規格にマッチした光出力(電力)が得られるように、制御回路10は、第1出力電圧Vo1、第2出力電圧Vo2、ランプ電流ILを監視し、フィードバックによって、第1スイッチング素子M1、第2スイッチング素子M2のオン・オフのデューティ比を調節する。放電灯点灯回路100は、ランナップ期間において放電灯4の光出力を急速に上昇させるため、一時的に定格電力より高い過電力を供給し、その後、ランプ電圧を45V、ランプ電流ILを0.8Aに安定化して定格電力(35W)に近づけていく。(図6(a))
【0076】
5. 定常点灯
ランナップ過程を経て、放電灯4の光出力が安定化すると、放電灯4に供給される電力が定格値35Wに安定化される(図6(b))。なお、図6(a)、(b)に示される駆動電圧VLおよびランプ電流ILの波形は、見やすさのために簡略化したものであり、実際には250Hz〜750Hzの周波数を有している。また、図1〜図4で説明された電流制限機能および温度ディレーティング機能は定常点灯状態において動作することが想定されているが、無論他の状態(電源投入から定常点灯状態になるまで)で動作してもよい。
【0077】
以上が実施の形態に係る放電灯点灯回路100の動作である。この放電灯点灯回路100は、以下の利点を有する。
【0078】
(1)実施の形態に係る放電灯点灯回路100によれば、ただひとつの温度情報変換回路50によって放電灯点灯回路100の温度Tが状態電流Isに変換される。つまり温度Tに依存する状態電流Isはひとつだけ生成される。放電灯点灯回路100では、温度ディレーティング機能および電流制限機能のそれぞれで使用される基準電圧に状態電流Isを作用させることでそれぞれの機能に温度Tの情報を渡す。いわば、温度ディレーティング機能と電流制限機能とで温度情報変換回路50を共用している。したがって、それぞれの機能毎に別個に温度を検知する回路を設けていた従来の構成と比べて、温度Tを状態電流Isに変換する部分を共通化した分だけ回路規模を削減でき、コストダウンに貢献する。
【0079】
(2)また、実施の形態に係る放電灯点灯回路100では、電流制限機能が要求する基準電圧の温度特性(例えば、図4の曲線114)と、温度ディレーティング機能が要求する基準電圧の温度特性(例えば、式8のシンク電流Io)とは異なるのであるが、それぞれの温度特性を、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3、第4抵抗R4、第5抵抗R5の抵抗値を適切に設定することにより実現している。言い換えると、状態電流Isをそれぞれの温度特性ごとに制御回路10の集積される部分で加工するのではなく、状態電流Isはそのままで集積される部分の外部に設けられた抵抗の抵抗値を調整することでそれぞれの温度特性を実現している。これによりまず、状態電流Isをそれぞれの温度特性ごとに加工するための集積回路部分を設ける必要がなく、回路規模の削減に貢献する。また、制御回路10の外部の抵抗値を変えることで温度特性を調節できるので、制御回路10を集積した後での温度特性の微調整が可能となる。
【0080】
(3)また、実施の形態に係る放電灯点灯回路100では、温度情報変換回路50における変換規則は、温度Tと状態電流Isとの比例の係数が温度Tによって異なるように変換する規則とされる。これにより、非線形な温度特性などの複雑な温度特性にも対応することができる。また、変換規則は、第1スイッチング電流IM1が流れる第1スイッチング素子M1の第1オン抵抗RM1の抵抗値の温度Tによる変化を打ち消すように定められる。したがって、図4に見られる通り、オン抵抗Rが温度Tにより変化しても、スイッチング電流のしきい値電流はほぼ最大電流IM_MAXのままとなる。つまり、温度Tによらずしきい値電流をほぼ一定にできる。
【0081】
(4)また、実施の形態に係る放電灯点灯回路100は車両用灯具に搭載されるので比較的高温となる。かかる状況において放電灯点灯回路100は、温度ディレーティング機能と、温度による変化が補償された電流制限機能と、を備えているので、放電灯点灯回路100の安全性は従来の放電灯点灯回路と比べてより高い。
【0082】
(5)また、実施の形態に係る放電灯点灯回路100では、その電流制限機能において全温度範囲に亘る管理が、温度ディレーティング機能において温度が高い範囲での管理が行われていると言える。つまり、管理すべき温度範囲が異なる2つの機能を、ひとつの温度情報(状態電流Is)によって実現している。
【0083】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0084】
温度ディレーティング調節回路86の変形例を説明する。図7は、変形例に係る温度ディレーティング調節回路120の構成を示す回路図である。温度ディレーティング調節回路120は、第20抵抗R20、第5差動増幅回路122、第1電圧源124、第10スイッチング素子M10、第11スイッチング素子M11、第12スイッチング素子M12、第13スイッチング素子M13、第13抵抗R13、第14抵抗R14、を含む。
【0085】
第20抵抗R20の一端には第1分圧点電圧VN1が印加される。第20抵抗R20の他端は、pnp型バイポーラトランジスタである第10スイッチング素子M10のエミッタおよび第5差動増幅回路122の反転入力端子に接続される。第5差動増幅回路122の非反転入力端子には、第1電圧源124から第3基準電圧VE3が印加される。第5差動増幅回路122の出力端子は第10スイッチング素子M10のベースに接続される。第10スイッチング素子M10のコレクタは、npn型バイポーラトランジスタである第12スイッチング素子M12のコレクタ、およびnpn型バイポーラトランジスタである第11スイッチング素子M11のベースに接続される。第12スイッチング素子M12のベースはnpn型バイポーラトランジスタである第13スイッチング素子M13のベースと共通接続される。第12スイッチング素子M12のエミッタは、第13スイッチング素子M13のエミッタと接続され、接地される。第11スイッチング素子M11のコレクタには電源電圧Vccが印加される。第11スイッチング素子M11のエミッタは第12スイッチング素子M12のベースと接続される。第13スイッチング素子M13のコレクタは、第13抵抗R13と第14抵抗R14との第6接続ノードN6’に接続される。第6接続ノードN6’の電圧が第1基準電圧VE1’として誤差増幅器90に供給される。
本変形例によると、第1分圧点電圧VN1が第3基準電圧VE3以上の電圧になるとシンク電流Io’が流れ始める。シンク電流Io’が流れると第6接続ノードN6’の第1基準電圧VE1’が低下する。また、第1分圧点電圧VN1が高いほどシンク電流Io’は大きくなり、第1基準電圧VE1’の低下分が大きくなる。これにより温度ディレーティング機能が実現される。
【0086】
実施の形態では、温度ディレーティング機能を実現するために、誤差増幅器90の基準電圧側に温度ディレーティング調節回路86を設ける場合について説明した。これは、誤差増幅器90の電力情報信号Sp側(制御ライン側)にディレーティング情報に基づく調整を施すのではなく、誤差増幅器90の基準電圧側にディレーティング情報に基づく調整を施すことを開示していると言える。実施の形態では、誤差増幅器90の基準電圧側に作用させるディレーティング機能として温度ディレーティング機能を例として挙げて説明したが、これに限られない。
図8は、バッテリ電圧Vbatのディレーティング機能に係るバッテリ電圧ディレーティング調節回路126の構成を示す回路図である。バッテリ電圧ディレーティング調節回路126は、温度ディレーティング調節回路86の代わりに誤差増幅器90の非反転入力端子に第1基準電圧VE1’’を供給する。バッテリ電圧ディレーティング調節回路126は、第14スイッチング素子M14、第15スイッチング素子M15、第16スイッチング素子M16、第17スイッチング素子M17、第18スイッチング素子M18、第19スイッチング素子M19、第20スイッチング素子M20、第6差動増幅回路128、バッファ130、第2電圧源132、第21抵抗R21、第13抵抗R13、第14抵抗R14、を含む。
【0087】
pnp型バイポーラトランジスタである第14スイッチング素子M14のエミッタおよびpnp型バイポーラトランジスタである第15スイッチング素子M15のエミッタには、電源電圧Vccが印加される。第14スイッチング素子M14および第15スイッチング素子M15は、ベースが共通接続され、そのベースはpnp型バイポーラトランジスタである第16スイッチング素子M16のエミッタと接続される。第16スイッチング素子M16のコレクタは接地され、ベースは第14スイッチング素子M14のコレクタと接続される。第14スイッチング素子M14のコレクタはNチャンネルMOSFETである第17スイッチング素子M17のドレインと接続される。第6差動増幅回路128の非反転入力端子には第2電圧源132から第4基準電圧VE4が印加される。第6差動増幅回路128の出力端子は第17スイッチング素子M17のゲートと、反転入力端子は第17スイッチング素子M17のソースと接続される。第17スイッチング素子M17のソースは第21抵抗R21の一端と接続される。バッテリ電圧Vbatに相当する電圧(以下、バッテリ相当電圧Vbat’と称す)は、バッファ130でバッファされて第21抵抗R21の他端に印加される。
第15スイッチング素子M15のコレクタは、npn型バイポーラトランジスタである第20スイッチング素子M20のベースおよびnpn型バイポーラトランジスタである第18スイッチング素子M18のコレクタと接続される。第18スイッチング素子M18のベースはnpn型バイポーラトランジスタである第19スイッチング素子M19のベースと接続され、さらに第20スイッチング素子M20のエミッタとも接続される。第18スイッチング素子M18のエミッタおよび第19スイッチング素子M19のエミッタは共に接地される。第20スイッチング素子M20のコレクタには電源電圧Vccが印加される。第19スイッチング素子M19のコレクタは第13抵抗R13と第14抵抗R14との第6接続ノードN6’’に接続される。
バッテリ電圧ディレーティング調節回路126では、バッテリ相当電圧Vbat’が予め設定される第4基準電圧VE4よりも低くなると、第19スイッチング素子M19にシンク電流Io’’が流れ始める。シンク電流Io’’が流れると第6接続ノードN6’’の第1基準電圧VE1’’が低下する。また、バッテリ相当電圧Vbat’が低いほどシンク電流Io’’は大きくなり、第1基準電圧VE1’’の低下分が大きくなる。これによりバッテリ電圧Vbatのディレーティング機能が実現される。
【0088】
実施の形態では、温度ディレーティング調節回路86においてシンク電流Ioを第6接続ノードN6からシンクすることで温度ディレーティング機能を調節する場合について説明したが、これに限られず、電流をソースすることで温度ディレーティング機能を調節してもよいし、電流のシンク・ソースを組み合わせて温度ディレーティング機能を調節してもよい。
【0089】
実施の形態では、正の出力電圧Vo1、Vo2を生成して、放電灯4に印加する場合(正極点灯と称する)について説明したが、負の出力電圧Vo1、Vo2を生成して放電灯4を駆動してもよい(負極点灯と称する)。この場合、図1における第1整流ダイオードD1、第2整流ダイオードD2の向き、第1、第2トランス14、16それぞれの2次巻線の極性、および各トランスの2次巻線側に接続されたスイッチング素子M1、M2の向きを反転すればよい。
【0090】
実施の形態に係る放電灯点灯回路100の制御回路10またはその一部にマイコンを用いてもよい。
【0091】
実施の形態では、車両用の放電灯4を駆動する放電灯点灯回路100を例に説明をしたが、本発明の用途はこれに限定されない。例えば、上述した動作シーケンスが当てはまらない、ランプ電流が直流となるLEDなどの光源の点灯回路、特に動作の環境を示す情報に基づいた制御を行う光源点灯回路に広く適用できる。
【0092】
実施の形態で説明した回路において、信号のハイレベル、ローレベルの論理値の設定は一例であって、インバータなどによって適宜反転させることにより自由に変更することが可能である。
【0093】
実施の形態にもとづき、特定の語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
4 放電灯、 6 バッテリ、 8 電源スイッチ、 10 制御回路、 12 駆動電圧生成回路、 20 スタータ回路、 30 第1分圧回路、 40 第2分圧回路、 50 温度情報変換回路、 52 制御電圧生成回路、 54 電力制御回路、 56 状態検出回路、 58 電流制限回路、 60 出力調節回路、 62 極性制御回路、 64 出力先選択回路、 100 放電灯点灯回路、 Is 状態電流、 VL 駆動電圧、 T 温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象の光源に駆動電圧を供給する駆動電圧生成回路と、
前記駆動電圧生成回路を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
それぞれが制御電圧を必要とする複数の処理回路であって前記駆動電圧生成回路の少なくとも一部を制御する複数の処理回路と、
前記複数の処理回路で必要とされる複数の制御電圧を生成する制御電圧生成回路と、
動作の環境を示す情報を所定の変換規則によって状態電流に変換する環境情報変換回路と、を含み、
前記制御電圧生成回路は、前記複数の制御電圧のそれぞれを前記状態電流を用いて調節し、
前記制御電圧生成回路は、前記複数の制御電圧のうちの少なくともひとつについて、基準電圧を抵抗要素で分圧し、その分圧点に前記状態電流を流すことによって得られる前記分圧点の電圧を制御電圧とすることを特徴とする光源点灯回路。
【請求項2】
前記動作の環境を示す情報は、当該光源点灯回路の温度であり、
前記変換規則は、温度と状態電流との比例の係数が温度によって異なるように変換する規則であることを特徴とする請求項1に記載の光源点灯回路。
【請求項3】
前記駆動電圧生成回路は、前記駆動電圧を生成するスイッチングレギュレータを含み、
前記制御回路は、前記スイッチングレギュレータのスイッチング素子のオン、オフのデューティ比を制御する出力調節回路を含み、
前記複数の処理回路のうちのひとつは、前記スイッチング素子に流れるスイッチング電流を制限するための制御を行う電流制限回路であり、
前記電流制限回路における制御電圧は、前記スイッチング電流のしきい値電流を与える電圧であり、前記電流制限回路は、前記スイッチング電流が流れる抵抗要素に生じる電圧降下がその制御電圧を越えると前記出力調節回路に前記スイッチング素子をオフとさせ、
前記変換規則は、前記スイッチング電流が流れる抵抗要素の抵抗値の温度による変化を打ち消すように定められることを特徴とする請求項2に記載の光源点灯回路。
【請求項4】
前記駆動電圧生成回路は、前記駆動電圧を生成するスイッチングレギュレータを含み、
前記制御回路は、誤差信号に基づいて前記スイッチングレギュレータのスイッチング素子のオン、オフのデューティ比を制御する出力調節回路を含み、
前記複数の処理回路のうちのひとつは、前記光源の電気的状態と目標の状態とを比較して前記誤差信号を生成する誤差増幅回路であり、
前記誤差増幅回路における制御電圧は、前記目標の状態を示す電圧であり、前記誤差増幅回路は、前記光源の電気的状態を示す電圧と前記制御電圧との差に対応する前記誤差信号を生成し、
前記制御電圧生成回路は、当該光源点灯回路の温度が所定のしきい値温度より高くなると前記光源へ供給する電力を下げるように前記誤差増幅回路の制御電圧を調節することを特徴とする請求項2に記載の光源点灯回路。
【請求項5】
前記駆動電圧生成回路は、前記駆動電圧を生成するスイッチングレギュレータを含み、
前記制御回路は、誤差信号に基づいて前記スイッチングレギュレータのスイッチング素子のオン、オフのデューティ比を制御する出力調節回路を含み、
前記複数の処理回路のうちのひとつは、前記スイッチング素子に流れるスイッチング電流を制限するための制御を行う電流制限回路であり、
前記複数の処理回路のうちの別のひとつは、前記光源の電気的状態と目標の状態とを比較して前記誤差信号を生成する誤差増幅回路であり、
前記電流制限回路における第1制御電圧は、前記スイッチング電流のしきい値電流を与える電圧であり、前記電流制限回路は、前記スイッチング電流が流れる抵抗要素に生じる電圧降下がその第1制御電圧を越えると前記出力調節回路に前記スイッチング素子をオフとさせ、
前記誤差増幅回路における第2制御電圧は、前記目標の状態を示す電圧であり、前記誤差増幅回路は、前記光源の電気的状態を示す電圧と前記第2制御電圧との差に対応する前記誤差信号を生成し、
前記変換規則は、前記スイッチング電流が流れる抵抗要素の抵抗値の温度による変化を打ち消すように定められ、
前記制御電圧生成回路は、当該光源点灯回路の温度が所定のしきい値温度より高くなると前記光源へ供給する電力を下げるように前記第2制御電圧を調節し、
前記制御電圧生成回路は、前記第1制御電圧について、基準電圧を抵抗要素で分圧し、その分圧点に前記状態電流を流すことによって得られる前記分圧点の電圧を第1制御電圧とすることを特徴とする請求項2に記載の光源点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−257795(P2010−257795A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107087(P2009−107087)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】