説明

光源装置、光源装置の発光制御方法、およびプロジェクタ

【課題】マイクロ波励起ランプのエネルギー効率を高めことができる、光源装置を提供する。
【解決手段】出力するマイクロ波の周波数を電圧によって変化させて制御する電圧制御発振器2を内蔵する固体マイクロ波電源1から照射されるマイクロ波を同軸ケーブル4により伝送し、発光物質が封入された発光部14にマイクロ波を給電する。ここで、固体マイクロ波電源1が出力するマイクロ波の周波数を制御する制御回路6を設ける。この制御回路6により、発光部14に給電されるマイクロ波の周波数を調整し、発光部14のインピーダンスが50Ωとなるようにする。これにより、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、発光の際のエネルギー効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波励起ランプを使用した光源装置に関し、特にマイクロ波励起ランプのエネルギー効率を高めることができる、光源装置、光源装置の発光制御方法、およびプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波励起ランプは従来の白熱灯や高圧水銀ランプに代表される放電灯と異なりランプ内部に放電用の電極を持たないため、フィラメントや電極の消耗や、それに伴うガラスの白濁等のランプ劣化要因を持たないという特徴を有する。また、内部ガスの選択肢が広がり、必ずしも水銀を使用する必要がないので不必要な紫外線を放出せずに済み、液晶プロジェクタ向けの長寿命光源として有力である。
【0003】
このようなマイクロ波励起ランプを用いた光源装置として、例えば、特許文献1および特許文献2には、高周波電源から誘導コイルに高周波電力を供給してプラズマを励起する方法が提案されている。また、特許文献3および特許文献4には、導波路やスタブチューナなどのマッチング回路を用いてランプ部のインピーダンス整合を行い、エネルギー効率を高める光源装置が提案されている。
【特許文献1】特表2002−510123号公報
【特許文献2】特開2000−133483号公報
【特許文献3】特開2001−202924号公報
【特許文献4】特開2004−273412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術によるマイクロ波励起の光源装置では、スラグチューナやスタブチューナなどのマッチング回路の機械動作によってインピーダンス整合を行っている。一般的に、機械動作による回路では、例えば振動や磨耗などによってその回路に劣化が生じる場合があり、電気的な制御を行う場合に比べて装置全体としての信頼性が低くなる。すなわち、このようなインピーダンス整合は、電気的な処理によって行われることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、電気的な処理によってインピーダンス整合を行うことが可能な光源装置、光源装置の発光制御方法、およびプロジェクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の光源装置は、出力するマイクロ波の周波数を変化させることが可能な周波数可変発振器を内蔵するマイクロ波電源と、マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に、互いに対向する一端が離間して挿入された一対のアンテナと、一対のアンテナのうち少なくとも一方のアンテナに、マイクロ波電源から出力されるマイクロ波を給電するマイクロ波伝送線路と、マイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数を制御する制御回路と、を備えることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、出力するマイクロ波の周波数を変化させることが可能な周波数可変発振器を内蔵するマイクロ波電源から照射されるマイクロ波をマイクロ波伝送線路により伝送し、発光物質が封入された発光部にマイクロ波を給電する。ここで、マイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数を制御する制御回路を設ける。この制御回路により、発光部に給電されるマイクロ波の周波数を調整し、発光部のインピーダンスが最小インピーダンスとなる条件とする。すなわち、マイクロ波の周波数を、発光部のインピーダンスが50Ωとなるようにする。
これにより、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、機械回路を用いずとも、発光輝度を容易に制御するとともに、発光の際のエネルギー効率を高めることができる。
【0007】
また、本発明の光源装置において、マイクロ波電源は、出力するマイクロ波の周波数を電圧によって変化させて制御する電圧制御発振器であることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、制御回路やマイクロ波出力回路は50Ω系で構成されており、制御回路は、出力するマイクロ波の周波数を電圧によって変化させて制御する電圧制御発振器を制御することでマイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数を変化させ、発光部のインピーダンスが50Ωとなるようにする。
これにより、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、発光の際のエネルギー効率を高めることができる。
【0008】
また、本発明の光源装置において、マイクロ波伝送線路を介して発光容器内に入射されるマイクロ波に対応する反射波を検出する反射波モニタと、をさらに備え、制御回路は、反射波モニタが検出する反射波に基づいて、反射波が低減するようにマイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数を制御することを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、マイクロ波伝送線路において反射波を検出する反射波モニタを設け、制御回路はこの反射波を低減するようにマイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数を変化させ、発光部のインピーダンスが50Ωとなるようにする。
これにより、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、発光の際のエネルギー効率を高めることができる。
【0009】
また、本発明の光源装置において、制御回路は、電圧制御発振器がマイクロ波を出力してから、発光容器内に封入された発光物質が発光を開始するまでの間は、マイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数の制御を行わないことを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、制御回路は、マイクロ波電源がマイクロ波を出力してから、発光容器内に封入された発光物質が発光を開始するまでの間は、マイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数の制御を行わない。
これにより、発光部にマイクロ波が給電されてから、プラズマが励起するまでの、発光部の状態が安定せずに著しく変化を続ける間には、照射するマイクロ波の周波数の制御を行わないこととし、制御効率を高めることができる。
【0010】
また、本発明の光源装置において、制御回路は、反射波モニタが検出する反射波が、予め定められた異常値を示す場合は、マイクロ波電源からのマイクロ波の出力を停止することを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、制御回路は、反射波モニタが検出する反射波が、予め定められた異常値を示す場合は、マイクロ波電源からのマイクロ波の出力を停止する。
これにより、反射波モニタが検出する反射波が、予め定められた異常値を示す場合は、発光部になんらかの故障があるものとみなしてマイクロ波の供給を止め、無用なマイクロ波の供給を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明の光源装置の発光制御方法は、出力するマイクロ波の周波数を変化させることが可能な周波数可変発振器を内蔵するマイクロ波電源と、マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に、互いに対向する一端が離間して挿入された一対のアンテナと、を備えた光源装置の発光制御方法であって、マイクロ波伝送線路が、前記一対のアンテナのうち少なくとも一方のアンテナに、マイクロ波電源から出力されるマイクロ波を給電する手順と、制御回路が、マイクロ波電源が出力する前記マイクロ波の周波数を制御する手順と、を備えることを特徴とする。
上記手順による本発明の発光制御方法では、出力するマイクロ波の周波数を変化させることが可能な周波数可変発振器を内蔵するマイクロ波電源から照射されるマイクロ波をマイクロ波伝送線路により伝送し、発光物質が封入された発光部にマイクロ波を給電する。ここで、マイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数を制御する制御回路が、発光部に給電されるマイクロ波の周波数を調整し、発光部のインピーダンスが最小インピーダンスとなる条件とする。すなわち、マイクロ波の周波数を発光部のインピーダンスが50Ωとなるようにする。
これにより、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、発光輝度を容易に制御するとともに、発光の際のエネルギー効率を高めることができる。
【0012】
また、本発明のプロジェクタは、光源装置と、光源装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、光変調部により形成された光学像を投写する投写部と、を備えるプロジェクタであって、光源装置は、出力するマイクロ波の周波数を変化させることが可能な周波数可変発振器を内蔵するマイクロ波電源と、マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に、互いに対向する一端が離間して挿入された一対のアンテナと、一対のアンテナのうち少なくとも一方のアンテナに、マイクロ波電源から出力されるマイクロ波を給電するマイクロ波伝送線路と、マイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数を制御する制御回路と、を備えることを特徴とする。
上記構成からなる本発明のプロジェクタでは、出力するマイクロ波の周波数を電圧によって変化させて制御するマイクロ波電源から照射されるマイクロ波をマイクロ波伝送線路により伝送し、発光物質が封入された発光部にマイクロ波を給電する。ここで、マイクロ波電源が出力するマイクロ波の周波数を制御する制御回路を設ける。この制御回路により、発光部に給電されるマイクロ波の周波数を調整し、発光部のインピーダンスが最小インピーダンスとなる条件とする。すなわち、マイクロ波の周波数を発光部のインピーダンスが50Ωとなるようにする。
これにより、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置を備えたプロジェクタにおいて、発光輝度を容易に制御するとともに、発光の際のエネルギー効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を用いて参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の光源装置は、固体マイクロ波電源1と、ランプ部10と、固体マイクロ波電源1とランプ部10とを接続する同軸ケーブル4と、同軸ケーブル4に設けられるマッチング回路7と、マッチング回路7と固体マイクロ波電源1との間の同軸ケーブル4に設けられるサーキュレータ5と、サーキュレータ5に接続された制御回路6と、を備えている。なお、一般に、マイクロ波帯としての慣用的周波数は、3GHz〜30GHzをいうが本案件では、UHF帯からSHF帯に相当する300MHz〜30GHz帯と定義する。
【0014】
固体マイクロ波電源1は、固体高周波発振器としての電圧制御発振器2と、増幅器3とを有して構成される。電圧制御発振器2は、電圧によって発振するマイクロ波の周波数を変化させることが可能な発振器である。電圧制御発振器2には、例えば、参考文献1(特開2003−124744号公報)、参考文献2(特開2004−363922号公報)などに記載された電圧制御発振器が適用できる。電圧制御発振器2から出力されたマイクロ波の高周波信号は、増幅器3で増幅される。増幅器3で増幅されたマイクロ波は、マイクロ波伝送線路となる同軸ケーブル4によりランプ部10に給電される。なお、このマイクロ波伝送線路は同軸ケーブルに限られず、ストリップ線路や、マイクロストリップ線路、導波管などさまざまな伝送線路を用いることができる。
【0015】
ランプ部10は、非導電性材料で形成される略球形状の膨出部13と、この膨出部13から外側に対向するように延出される一対の細管部11、12を有する透明な発光物質容器で構成されたマイクロ波励起ランプ部である。この発光物質容器は、石英ガラス、サファイアガラス、透明セラミックス等から形成される。また、膨出部13には、マイクロ波により発光する発光物質を充填した発光部14(発光ガスを封入した封入空間)が形成されている。発光部(封入空間)14の内径は例えば、略1mm〜2mm程度である。
【0016】
細管部11、12の内部それぞれには、棒状の内部導電体がアンテナ21、22として封入され、アンテナ21に同軸ケーブル4の中心線(中心導体)が接続される。ここで、同軸ケーブル4の中心線をアンテナ21に直接接続せずに、例えば、細管部11の長手方向の範囲に巻回されたコイルを通して、マイクロ波をアンテナ21に給電するようにしてもよい。
【0017】
2本のアンテナ21、22は、発光部14の発光領域15に対して対称に配置されている。アンテナ21、22は発光部14に侵入してもしなくても構わない。アンテナ21、22の材質は導体とし、特に、熱膨張係数が小さく耐熱性が高い材料、具体的にはタングステン合金やステンレス合金、モリブデン等が適している。途中、石英ガラスとの熱膨張差を打ち消すために、一部分が箔になっていても良い。
【0018】
発光部14中のガスは、点灯中の水銀蒸気圧が1〜200気圧程度(超高圧水銀ランプ程度)になるように水銀を封じこめたものか、キセノンガスにヨウ化ナトリウムやヨウ化スカンジウムを用いたものを用いても良い。
なお、アンテナ21、22の先端がガスの発光部14に侵入する場合は内部に充填するガスの種類にもよるが、ガスとの反応によりアンテナ材料の金属が腐食することが考えられるので、その場合は保護膜などを備えることが望ましい。
【0019】
ここで、ランプ部10の構造が、アンテナ部分とギャップ部を含む全長を「λ/2」とする場合について考える。ランプ部のアンテナ部分の石英の比誘電率(ε)が4.2であることから、2.45GHzのマイクロ波の石英中のマイクロ波の1/4波長(λg)は、空気中のλ/4波長3.00cmから次式で求める。
【0020】
λg=λ/√ε
【0021】
その結果、石英中のλg/4波長は、1.49cmとなる。ギャップ間を1.0mmとすると、aの部分は、1.44cmとなる。この結果、ギャップ間で電界の強度が大きく振幅し、効率よくプラズマを点灯し維持できる。
【0022】
このように、本発明の光源装置においては、エネルギー効率の高いマイクロ波励起ランプを使用した光源装置を提供することができる。また、ギャップ間での電界の強さと、ランプから発光される輝度とは比例するため、固体マイクロ波電源1から出力されるマイクロ波の強度を調整することにより、ランプ部10の発光輝度を調整することができる。
【0023】
図2は、本発明の光源装置におけるランプ部の等価回路を示す図である。
図2に示すように、ランプ部の全体のトータルインピーダンスZは、インダクタンスL1、キャパシタC1、抵抗Rp、キャパシタC2、およびインダクタンスL2の直列回路で表される。
【0024】
ここで、インダクタンスL1は、棒状の導体であるアンテナ21により生じるインダクタンス成分である。キャパシタC1は、アンテナ21の先端部aと発光領域(プラズマ状態部)15との間のギャップg1により生じるキャパシタンス成分である。抵抗Rpは、発光領域15を抵抗成分で表したものである。
【0025】
また、キャパシタC2は、アンテナ22の先端部bと発光領域15との間のギャップg2により生じるキャパシタンス成分である。インダクタンスL2は、棒状の導体であるアンテナ22により生じるインダクタンス成分である。
ここで、発光部14のインピーダンス|Z|は、L=L1+L2、C=(C1・C2)/(C1+C2)とすると、(R1+((ωL−1)/ωC))1/2として表される。また、発光部14のインピーダンスが50Ωとなる周波数は、f=1/(2π・(LC)1/2)となる。ここで、fが2.45GHzとなるように、予めLとCとを調整しておく。具体的には、ランプ部10に封止するガス圧を最適化することで可能である。
【0026】
そして、図3に示すように、マイクロ波の波長をλとした場合に、ランプ部10のアンテナ21、22とギャップ部を含む長さL(L=a+g+a)を「λg/2」とする。この長さの規定により、ギャップ中心部が腹となるような定在波を起こすことができ、発光効率が良くなる。また、Lはマイクロ波の波長λの半分(λg/2)に限られず、その奇数倍(L=n・λg/2、ここでnは奇数)でもよい。
【0027】
図1に戻り、光源装置の全体としてのエネルギー効率を上げるために重要なことは、固体マイクロ波電源の伝送線路の特性インピーダンスと発光部14の入力インピーダンスとを整合させることである。すなわち、発光部14のインピーダンス|Z|が50Ωとなるようにして、すなわちfが|Z|を50Ωにして出力回路と整合が取れ、反射波が生じないようして、反射による損失を生じさせないように、かつ、電力を最大限ランプに与えることが出来るようにすることである。上述のように、予め発光部14が50ΩのインピーダンスとなるようにLとCとを調整しても、外気の温度、点灯するランプ部10自体の温度などにより、ランプ部10の温度が変化してランプ部10の圧力に変動が生じ、プラズマインピーダンスに変化が生じる。すなわち、共振周波数が変化して、同軸ケーブル4からランプ部10に入射されるマイクロ波に対する反射波が大きくなる。
【0028】
そこで、本発明による光源装置には、電圧制御発振器2から出力されるマイクロ波の周波数を制御する制御回路6を設ける。
反射波モニタ30はサーキュレータ5を介して同軸ケーブル4とマッチング回路7との間に配置される。このサーキュレータ5には、マイクロ波の反射波が電源側や増幅器側へ戻ることを防ぐためのアイソレータとしての機能も付加することができる。
反射波モニタ30では、サーキュレータ5から出力されるマイクロ波の反射波を減衰器31で所定の範囲の電力強度の信号に減衰させ、パワーメータ32に過大な信号が印加され、破壊されるのを防ぐようにしている。パワーメータ32は、入力される反射波を検出して、信号強度を測定する。なお、パワーメータ32は、マイクロ波電流を測定する電流計であってもよい。
【0029】
制御回路6は、このパワーメータ32により測定される反射波の信号強度に応じて、その値が‘0’または‘0’に近い値になるように、電圧制御発振器2の電圧を変化させ、固体マイクロ波電源1が出力するマイクロ波の周波数を変化させて制御する。
また、制御回路6は、マッチング回路7の可変リアクタンス値を、制御回路6を介して制御する。マッチング回路7は、図4に示すように、リアクタンス値が可変な可変リアクタンス素子71、72で構成することができる。このリアクタンス素子71、72の成分は、インダクタンスLまたはキャパシタCのどちらであってもよく、ランプ部10からの反射波強度に応じてLまたはCを変化させる機構を有する。
【0030】
このように、図1に示す構成例では、反射波の強度が常に最小になるように、固体マイクロ波電源1が出力する周波数及びマッチング回路7の可変リアクタンス(L又はC)を調整するフィードバック制御が行われる。これにより、ランプ部10からの反射波による伝送損失を低減させ、光源装置の全体としてのエネルギー効率を上げることができる。
【0031】
また、固体マイクロ波電源1からランプ部10にマイクロ波を供給している際、ランプ部10からの反射波が異常に大きい場合は、ランプ部10にランプが存在しない場合や、ランプ部10のガスがなくなっているなど、ランプ部10に異常があると考えられる。そこで、制御回路6は、この反射波モニタ30が検出する反射波の信号強度に異常がある場合は、固体マイクロ波電源1からのランプ部10へのマイクロ波(電力)の供給を停止する。
【0032】
例えば、図5は、ランプ部10へ投入する電力を横軸とし、ランプ部10のインピーダンス値を縦軸とする表である。点線(ア)と点線(イ)との間が、予め定められた正常値であり、ランプ部10がこれ以外のインピーダンス値を示す場合は、異常があるとする。例えば、(a)は、ランプ部10に電力を供給しているにも関わらず、インピーダンスが一定以上となっている。このような場合、ランプ部10が故障していると考えられるので、制御回路6が、固体マイクロ波電源1からの電力の供給を停止させる。(b)は、ランプが正常に点灯していない場合を示し、(d)は、電力の投入にも関わらずインピーダンスが一定以下であるので、ランプ部10が故障していると考えられる。(b)および(d)の場合、制御回路6は、固体マイクロ波電源1からランプ部10への電力の供給を停止させる。(c)は、一定以上の電力を投入し、ランプが正常に点灯した場合を示している。しかし、温度が安定しないなどの外乱要因により、インピーダンスは一定範囲内で変動する。本発明は、このような変動を、上述の制御回路6によって固体マイクロ波電源1から出力されるマイクロ波の周波数を制御して、一定に保つものである。
【0033】
このように、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、発光の際のエネルギー効率を高めることができる。
【0034】
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の光源装置を使用したプロジェクタについて図面を参照して説明する。
図6は、本発明の光源装置を備えるプロジェクタの構成を示す図である。図6に示すように、プロジェクタ101は、光学系102と、制御回路103と、電源部104とを備えている。このプロジェクタ101は、外部から入力される画像信号に応じた画像を、光学系102を介してスクリーンSなどに投写するものである。なお、プロジェクタ101では、外部電源105からの交流電力が電源部104によって直流電力に変換され、直流電力が電源部104から光学系102や制御回路103などに供給される。
【0035】
また、図7は、図6に示すプロジェクタの光学系102の構成を示すブロック図である。図7に示すように、光学系102は、前述した本発明の光源装置111と、照明光学系112と、光変調部113と、色合成光学系114と、投写部115とを有して構成されている。また、光源装置111は、前述した本発明の光源装置で構成されるものである。
【0036】
次に、図7を参照して、この光学系102の動作について説明する。
光源装置111内の固体マイクロ波電源1では、電圧制御発振器2から出力されたマイクロ波信号を、増幅器3で増幅した後に、同軸ケーブル4によりランプ部10に向けて出力する。
【0037】
固体マイクロ波電源1からランプ部10に入射されるマイクロ波の反射波を反射波モニタ30が検出する。制御回路6は、反射波モニタ30に検出された反射波に基づいて、固体マイクロ波電源1から出力されるマイクロ波の周波数を、ランプ部10の反射波が最小となるように制御する。これにより、ランプ部10のインピーダンスを50Ωに保つことができる。
【0038】
照明光学系112は、光源装置111から射出された光束の照度を均一化し、各色光に分離する。光変調部113は、照明光学系112で分離された各色光の光束に対して画像情報に応じて変調して光学像を形成する。色合成光学系114は、照明光学系112で色分離され光変調部113で変調された各色光の光学像を合成し、投写部115にて光学像を投写する。
【0039】
以上説明したように、本発明のプロジェクタにおいては、本発明による光源装置を使用しており、エネルギー効率の高い光源装置を搭載したプロジェクタを提供することができる。したがって、旧来の光源装置を有するプロジェクタに比べ、プロジェクタの消費電力を低減させることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、光源装置はマッチング回路7を備え、制御回路6はマッチング回路7をも制御することとしたが、マッチング回路7は備えずに、固体マイクロ波電源1から出力される周波数のみによってランプ部10のインピーダンス整合を行っても良い。
また、本発明による光源装置は、図8に示すように構成しても良い。すなわち、同軸ケーブル4からランプ部10に供給されるマイクロ波を、電力分配を行ってアンテナ21とアンテナ22とに接続し、アンテナ21とアンテナ22との両端からランプ部10に電力を供給するように構成しても良い。
また、増幅器3、同軸ケーブル4、サーキュレータ5、マッチング回路7、反射波モニタ30、制御回路6の全ての構成の組み合わせをアンテナ21に接続された組み合わせと同様に設けて、アンテナ22に接続するようにしても良い。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のマイクロ波励起ランプを使用した光源装置、およびプロジェクタは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図2】本発明の光源装置におけるランプ部の等価回路を示す図。
【図3】ランプ部の構成を説明するための図。
【図4】マッチング回路の例を示す図。
【図5】ランプへの投入電力とランプ部のインピーダンスとの関係を示す図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタの構成を示す図。
【図7】プロジェクタの光学系の構成を示す図。
【図8】本発明の一実施形態に係る光源装置の構成を示す図。
【符号の説明】
【0043】
1・・・固体マイクロ波電源、2・・・電圧制御発振器、3・・・増幅器、4・・・同軸ケーブル、5・・・サーキュレータ、6・・・制御回路、7・・・マッチング回路、10・・・ランプ部、11・・・細管部、12・・・細管、13・・・膨出部、14・・・発光部、21・・・アンテナ、22・・・アンテナ、30・・・反射波モニタ、31・・・減衰器、32・・・パワーメータ、71・・・可変リアクタンス素子、72・・・可変リアクタンス素子、111・・・光源装置、112・・・照明光学系、113・・・光変調部、114・・・色合成光学系、115・・・投写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力するマイクロ波の周波数を変化させることが可能な周波数可変発振器を内蔵するマイクロ波電源と、
前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に、互いに対向する一端が離間して挿入された一対のアンテナと、
前記一対のアンテナのうち少なくとも一方のアンテナに、前記マイクロ波電源から出力されるマイクロ波を給電するマイクロ波伝送線路と、
前記マイクロ波電源が出力する前記マイクロ波の周波数を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記周波数可変発振器は、出力するマイクロ波の周波数を電圧によって変化させて制御する電圧制御発振器である
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記マイクロ波伝送線路を介して前記発光容器内に入射される前記マイクロ波に対応する反射波を検出する反射波モニタと、をさらに備え、
前記制御回路は、前記反射波モニタが検出する前記反射波に基づいて、前記反射波が低減するように前記マイクロ波電源が出力する前記マイクロ波の周波数を制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記マイクロ波電源が前記マイクロ波を出力してから、前記発光容器内に封入された前記発光物質が発光を開始するまでの間は、前記マイクロ波電源が出力する前記マイクロ波の周波数の制御を行わないこと
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記反射波モニタが検出する前記反射波が、予め定められた異常値を示す場合は、前記マイクロ波電源からの前記マイクロ波の出力を停止すること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項6】
出力するマイクロ波の周波数を変化させることが可能な周波数可変発振器を内蔵するマイクロ波電源と、前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に、互いに対向する一端が離間して挿入された一対のアンテナと、を備えた光源装置の発光制御方法であって、
マイクロ波伝送線路が、前記一対のアンテナのうち少なくとも一方のアンテナに、前記マイクロ波電源から出力されるマイクロ波を給電する手順と、
制御回路が、前記マイクロ波電源が出力する前記マイクロ波の周波数を制御する手順と、
を備えることを特徴とする発光制御方法。
【請求項7】
光源装置と、前記光源装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、前記光変調部により形成された光学像を投写する投写部と、を備えるプロジェクタであって、
前記光源装置は、
出力するマイクロ波の周波数を変化させることが可能な周波数可変発振器を内蔵するマイクロ波電源と、
前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に、互いに対向する一端が離間して挿入された一対のアンテナと、
前記一対のアンテナのうち少なくとも一方のアンテナに、前記マイクロ波電源から出力されるマイクロ波を給電するマイクロ波伝送線路と、
前記マイクロ波電源が出力する前記マイクロ波の周波数を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−181771(P2009−181771A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18939(P2008−18939)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】