光源装置、走査型顕微鏡およびパルス光生成方法
【課題】観察対象の光軸方向に異なる複数点の観察を同時性を維持しつつ鮮明に行うことを可能とする。
【解決手段】パルスレーザ光L1を発生するレーザ光源4と、該レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1から時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光L1,L2を生成するパルス分割部5と、該パルス分割部5により生成される1以上のパルスレーザ光L1,L2毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光L1,L2の波面を異ならせる固定式の波面変換部6とを備える光源装置1を提供する。
【解決手段】パルスレーザ光L1を発生するレーザ光源4と、該レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1から時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光L1,L2を生成するパルス分割部5と、該パルス分割部5により生成される1以上のパルスレーザ光L1,L2毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光L1,L2の波面を異ならせる固定式の波面変換部6とを備える光源装置1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、走査型顕微鏡およびパルス光生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、対物レンズを光軸方向に駆動することなく、標本中の光軸方向に異なる位置を観察することができる走査型顕微鏡が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
特許文献1の走査型顕微鏡は、複数の光源と、複数の照明光路と、複数の光検出手段とを備えることで、別個の照明光路から導いた光を標本中の光軸方向に異なる位置に同時に集光させるものである。
特許文献2の走査型顕微鏡は、照明光路の途中位置に配置した形状可変ミラーの形状を切り替えることにより、集光位置を光軸方向に移動させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−157246号公報
【特許文献2】特開2007−316662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、観察対象が生体のような散乱体である場合には、試料の屈折率の分布や揺らぎによって、各集光位置における励起光のスポット径が広がるため、複数の照明光路からの励起光を光軸方向に異なる位置に同時に集光させる特許文献1の走査型顕微鏡では、集光位置どうしが近接している場合には、一方の集光位置からの蛍光を検出する検出器に、他の集光位置からの蛍光も混入してしまい、鮮明な蛍光観察を行うことができないという不都合がある。
【0005】
また、特許文献2の走査型顕微鏡では、形状可変ミラーの形状の切り替えによって、光軸方向に離れた各集光位置には、異なる時刻に励起光が入射されるため、特許文献1のような不都合はないものの、形状可変ミラーの形状の切り替えには時間がかかり、生体や生細胞のように短時間で経時変化する観察対象の光軸方向に異なる位置を観察する際の同時性を担保することができないという不都合がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、観察対象の光軸方向に異なる複数点の観察を同時性を維持しつつ鮮明に行うことを可能とする光源装置、走査型顕微鏡およびパルス光生成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源から発せられたパルスレーザ光から時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光を生成するパルス分割部と、該パルス分割部により生成される1以上のパルスレーザ光毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光の波面を異ならせる固定式の波面変換部とを備える光源装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、レーザ光源から発せられたパルスレーザ光がパルス分割部に入射されると、パルス分割部において、時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光が生成され、固定式の波面変換部によって、その1以上のパルスレーザ光毎に波面が異ならされる。これにより、異なる波面を付与されたパルスレーザ光は、光軸方向に異なる位置に集光するようになる。
【0009】
すなわち、このようにして生成された複数のパルスレーザ光を、観察対象に照射することにより、異なる光軸方向位置に異なる時間にパルスレーザ光を集光させ、これをそれぞれ検出することにより、生体試料のような散乱体からなる観察対象であっても、相互に干渉することなく光軸方向の近接した異なる位置を鮮明に観察することができる。パルスレーザ光の時間間隔は、観察対象において発生する光の寿命より若干長くすれば足り、十分に短く設定することができる。したがって、光軸方向に異なる位置を略同時に、かつ、鮮明に観察することが可能となる。
【0010】
上記発明においては、前記パルス分割部により生成される1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光調節部を備え、前記波面変換部が、前記パルスレーザ光の偏光方向に応じて選択的に波面を変換してもよい。
このようにすることで、偏光調節部によって偏光方向を異ならされたパルスレーザ光を波面変換部に入射させると、その偏光方向に応じて選択的に波面が変換されるので、時間間隔をあけたパルスレーザ光を、簡易に、光軸方向に異なる位置に集光させることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスを備える請求項2に記載の光源装置。
このようにすることで、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向と垂直な偏光方向とをそれぞれ異なるパルスレーザ光に付与することにより、パルスレーザ光における波面の変換の有無を容易かつ迅速に切り替えることができる。
【0012】
上記発明においては、前記パルス分割部が、前記レーザ光源から発せられたパルスレーザ光を分割して通過させる光路長の異なる2つの光路を備えていてもよい。
このようにすることで、パルスレーザ光を分割して異なる2つの光路を通過させるだけで、簡易に時間間隔をあけた2つのパルスレーザ光を生成することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記波面変換部が、前記パルス分割部のいずれかの光路に配置されていてもよい。
このようにすることで、波面変換部が配置されている光路を通過させられたパルスレーザ光には波面変換が施され、波面変換部が配置されていない光路には波面変換が施されずに射出されるので、容易に、光軸方向に異なる位置に集光可能な複数のパルスレーザ光を射出することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスまたは形状可変ミラーを備えていてもよい。
このようにすることで、液晶デバイスのみならず形状可変ミラーによっても、簡易な構成で、光軸方向に異なる位置に集光可能な複数のパルスレーザ光を射出することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記パルス分割部と前記波面変換部とを備えるユニットを直列に複数備え、各前記ユニットにおける前記パルス分割部が、パルスレーザ光に異なる時間間隔を付与してもよい。
このようにすることで、全てのパルスレーザ光を時間的にずらすことができ、また、各パルスレーザ光の光軸方向の集光位置については、波面変換部ごとにずらしていくことができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記ユニット間に波長板が配置されていてもよい。
このようにすることで、一のユニットから射出されたパルスレーザ光の偏光状態を波長板によって調節して、次のユニットに入射させることができ、波長板の前後の波面変換部の相対角度を自由に設定することが可能となる。
【0017】
また、上記発明においては、前記パルス分割部により前記パルスレーザ光に付与される時間間隔tが、該パルス分割部の数n、前記レーザ光源からのパルスレーザ光の繰り返し周波数Rを用いて、以下の式により算出されてもよい。
t=1/(2nR)
このようにすることで、繰り返し周波数2nRで時間多重されたパルスレーザ光の列を生成できる。さらに、それぞれのパルスレーザ光が観察対象に照射される際における集光位置も空間的に多重化することができる。
【0018】
また、本発明は、時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源から発せられた1以上のパルスレーザ光毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光の波面を異ならせる固定式の波面変換部とを備える光源装置を提供する。
【0019】
本発明によれば、レーザ光源から発せられた時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光が、固定式の波面変換部によって、その1以上のパルスレーザ光毎に波面が異ならされる。これにより、異なる波面を付与されたパルスレーザ光は、光軸方向に異なる位置に集光するようになる。すなわち、このようにして生成された複数のパルスレーザ光を、観察対象に照射することにより、異なる光軸方向位置に異なる時間にパルスレーザ光を集光させ、これをそれぞれ検出することにより、生体試料のような散乱体からなる観察対象であっても、相互に干渉することなく光軸方向の近接した異なる位置を鮮明に観察することができる。パルスレーザ光の時間間隔は、観察対象において発生する光の寿命より若干長くすれば足り、十分に短く設定することができる。したがって、光軸方向に異なる位置を略同時に、かつ、鮮明に観察することが可能となる。
【0020】
上記発明においては、前記レーザ光源から発せられた1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光調節部を備え、前記波面変換部が、前記パルスレーザ光の偏光方向に応じて選択的に波面を変換してもよい。
また、上記発明においては、前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスを備えていてもよい。
【0021】
また、本発明は、上記いずれかの光源装置と、該光源装置から射出されたパルスレーザ光を観察対象上で走査するスキャナと、該スキャナにより走査されたパルスレーザ光を前記観察対象上に集光し、観察対象からの光を集光する対物レンズと、前記観察対象からの光を検出する検出器とを備える走査型顕微鏡を提供する。
【0022】
本発明によれば、光源装置から発せられた時間的に多重化されたパルスレーザ光が、スキャナによって走査され、対物レンズによって観察対象に照射されると、観察対象中の光軸方向に異なる位置にそれぞれ集光され、該観察対象からの光が対物レンズによって集光されて検出器により検出される。これにより、光軸方向に異なる複数点をほぼ同時に、相互に干渉させることなく観察することができる。
【0023】
また、本発明は、パルスレーザ光を分割して、時間間隔を空けた複数のパルスレーザ光を生成するパルス分割ステップと、該パルス分割ステップにより生成された1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光ステップと、該偏光ステップにおいて偏光方向を異ならされたパルスレーザ光を、その偏光方向に応じて選択的に波面を変換する波面変換部に入射させて、光軸方向の異なる位置に集光するように波面を変換する波面変換ステップとを含むパルス光生成方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、観察対象の光軸方向に異なる複数点の観察を同時性を維持しつつ鮮明に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光源装置および走査型顕微鏡を示す模式図である。
【図2】図1の光源装置のパルス分割部により生成された2種類のパルスレーザ光のパルス列を示す図であり、(a)光路長差LSの場合、(b)光路長差LS=c/2Rの場合をそれぞれ示している。
【図3】図1の光源装置により対物レンズの光軸方向に間隔をあけた2箇所にパルスレーザ光が集光されている状態を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るパルス光生成方法のフローチャートを示す図である。
【図5】図1の走査型顕微鏡により対物レンズの光軸方向に間隔をあけた2平面上においてパルスレーザ光が走査されている状態を示す図である。
【図6】図1の光源装置により生成されるパルスレーザ光の変形例を示す図である。
【図7】図1の光源装置および走査型顕微鏡の変形例を示す模式図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る光源装置を示す模式図である。
【図9】図8の光源装置における波面変換部において、光軸に直交する方向に焦点位置を異ならせるような波面を付与したパルスレーザ光が、対物レンズの光軸方向に間隔をあけた2平面上において走査されている状態を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る光源装置を示す模式図である。
【図11】図10の光源装置により生成された2種類のパルスレーザ光のパルス列を示す図である。
【図12】図11の変形例を示す図である。
【図13】図10の光源装置の変形例を示す模式図である。
【図14】図13の光源装置により生成された4種類のパルスレーザ光のパルス列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の実施形態に係る光源装置1、走査型顕微鏡2およびパルス光生成方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る走査型顕微鏡2は、図1に示されるように、本実施形態に係る光源装置1と、該光源装置1から射出されたパルスレーザ光によって標本(観察対象)Aを観察する顕微鏡本体3とを備えている。
【0027】
光源装置1は、パルスレーザ光L1を発生するレーザ光源4と、該レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1を2つに分割して時間多重するパルス分割部5と、該パルス分割部5により分割されたパルスレーザ光L1,L2のうちの一方のパルスレーザ光L1の波面を変換する波面変換部6とを備えている。
レーザ光源4は、繰り返し周波数Rで直線偏光のパルスレーザ光L1を発振するようになっている。
【0028】
パルス分割部5は、レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1からパルスレーザ光L2を分割して、光路長の異なる2つの光路C1,C2に入射させるビームスプリッタ7と、該ビームスプリッタ7により分岐された一方の光路C2に配置されたλ/2板8と、2つの光路C1,C2を通過してきたパルスレーザ光L1,L2を合波する偏光ビームスプリッタ9とを備えている。
図1中、符号10はミラーである。
【0029】
λ/2板8は、レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1の偏光方向に対して45°傾けて配置されている。
例えば、レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1が紙面に平行な偏光方向を有している場合、光路C2においては、パルスレーザ光L2の偏光方向は、λ/2板8によって紙面に垂直な偏光方向に変換される一方、他方の光路C1において、紙面に平行な偏光方向のままのパルスレーザ光L1が伝播されるようになっている。
【0030】
これにより、偏光ビームスプリッタ9に到達した2つのパルスレーザ光L1,L2は、偏光ビームスプリッタ9によって無駄なく透過または反射されて同一光路に合波されるようになっている。
パルス分割部5の2つの光路C1,C2は光路差LSを有している。したがって、2つの光路C1,C2を通過するパルスレーザ光L1,L2には、遅延時間t=L/cが付与される。ここで、cは光速である。
すなわち、パルス分割部5からは、図2(a)に示されるように、相互に直交する偏光方向を有し、かつ時間的に多重化されたパルスレーザ光L1,L2が射出されることになる。
【0031】
波面変換部6は、パルス分割部5から射出されたパルスレーザ光L1,L2を反射して迂回させるプリズム11と、該プリズム11によって反射されたパルスレーザ光L1,L2を反射し、その際に、一方のパルスレーザ光L1の波面を変調し、他方のパルスレーザ光L2には波面の変調を施さずに、プリズム11に戻す反射型の液晶デバイス(LCOS:Liquid-Crystal on Silicon)12とを備えている。液晶デバイス12は、多くの画素に分かれていて、各画素毎にシリコン基板とこれに対向する透明基板との間に液晶分子を挟み込み、鏡面状のシリコン基板の背面に液晶に電圧を加えるための電極が形成された構造を有している。
【0032】
液晶デバイス12の液晶分子は、基板および一方のパルスレーザ光L1の偏光面に平行に配向しており、基板に形成された電極によって電圧を加えると、液晶分子が基板および他方のパルスレーザ光L2の偏光面に平行な軸を中心に回転する。そして、この液晶分子の回転に伴って、液晶分子の配向方向に偏光面を有するパルスレーザ光L1に対する液晶デバイス12の屈折率分布も変化する。
【0033】
液晶分子の回転角度は、印加電圧によって制御でき、画素毎に液晶デバイス12への印加電圧を変化させると、液晶デバイス12に屈折率分布をもたらすことができる。その結果、入射光に所望の位相分布を与えることができる。また、入射光の偏光方向と液晶分子の配向方向とが一致したときに、入射光に位相分布を最も強く与えることができる。また、入射光の偏光方向と液晶分子の配向方向とが直交したときには、入射光は変調されない。
【0034】
つまり、液晶デバイス12は、画素ごとに液晶分子への電圧を直接制御して入射光の位相を変えることによって、液晶分子の配向方向と一致した偏光方向の入射光に対して、自在に位相を変調することができるようになっている。
【0035】
すなわち、パルス分割部5から交互に射出される偏光方向の直交する2種類のパルスレーザ光L1,L2の内、波面変換部6に備えられる液晶デバイス12の液晶分子の配向方向と一致する偏光方向を有する一方のパルスレーザ光L1は、液晶デバイス12によって波面を変調される一方、他方のパルスレーザ光L2は、液晶デバイス12によって波面を変調されることなく反射される。したがって、顕微鏡本体3に対して、波面の変調されたパルスレーザ光L1’と、波面の変調されないパルスレーザ光L2とを交互に出力することができるようになっている。
【0036】
ここで、液晶デバイス12により一方のパルスレーザ光L1’に付与された波面の変調は、顕微鏡本体3の後述する対物レンズによる集光位置を、図3に示されるように、他方のパルスレーザ光L2の集光位置に対して光軸方向にずらすように行われる。例えば、他方のパルスレーザ光L2の波面が平面である場合に、一方のパルスレーザ光L1には、軸対称に微細な曲率を有する球面状の波面を有するように波面の変調が行われるようになっている。
【0037】
顕微鏡本体3は、光源装置1から射出されたパルスレーザ光L1’,L2をリレーする第1のリレー光学系13および第2のリレー光学系14と、これら第1および第2のリレー光学系13,14の間に配置され、パルスレーザ光L1’,L2を2次元的に走査するスキャナ15と、第2のリレー光学系14によってリレーされたパルスレーザ光L1’,L2を観察対象Aに集光する対物レンズ16と、該対物レンズ16により集光された観察対象Aにおいて発生した蛍光をパルスレーザ光L1’,L2から分岐するダイクロイックミラー17と、該ダイクロイックミラー17によって分岐された蛍光を検出する光検出器18とを備えている。
【0038】
第1のリレー光学系13によって波面変調部6の液晶デバイス12とスキャナ15とが光学的に共役な位置関係に配置され、第2のリレー光学系14によってスキャナ15と対物レンズ16の瞳位置とが光学的に共役な位置に配置されている。
【0039】
このように構成された本実施形態に係る光源装置1を用いたパルス光生成方法について以下に説明する。
レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1がパルス分割部5に入射されると、図4に示されるように、ビームスプリッタ7によって2つの光路C1,C2に分岐される(分割ステップS1)。2つの光路C1,C2は光路長差LSを有しているので、長い方の光路C2を通過したパルスレーザ光L2には光路長差LSに応じた時間遅延が付与される。
【0040】
光路C2には、λ/2板8が、入射するパルスレーザ光L1の偏光方向に対して高速軸を45°傾斜させて配置されているので、λ/2板8を通過したパルスレーザ光L2は、他の光路C1を伝播してくるパルスレーザ光に対して偏光方向が直交する直線偏光となる(偏光ステップS2)。そして、2つの光路C1,C2を伝播してきたパルスレーザ光L1,L2は、偏光ビームスプリッタ9で合波される。
【0041】
すなわち、偏光ビームスプリッタ9で合波されることにより偏光方向の直交する2種類のパルスレーザ光L1,L2が時間多重される。そして、時間多重された2種類のパルスレーザ光L1,L2が、波面変換部6の液晶デバイス12に入射されると、液晶分子の配向方向に水平な偏光方向を有するパルスレーザ光L1のみに波面の変調が施される(波面変換ステップS3)。液晶分子の配向方向に垂直な偏光方向を有するパルスレーザ光L2については、波面の変調が施されることなくそのまま反射される。
これにより、1つのパルスレーザ光L1から、波面の異なる2種類のパルスレーザ光L1’,L2を時間多重させた状態で生成することができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る走査型顕微鏡2の作用について説明する。
上述したように本実施形態に係る光源装置1およびパルス光生成方法により生成された2種類のパルスレーザ光L1’,L2が顕微鏡本体3に入射されると、第1のリレー光学系13によってリレーされたパルスレーザ光L1’,L2が、スキャナ15によって2次元的に走査され、第2のリレーレンズ14によってリレーされた後、対物レンズ16によって観察対象Aに集光される。
【0043】
2種類のパルスレーザ光L1’,L2は、一方が波面変調されているので、対物レンズ16によって光軸方向に異なる位置に集光される。また、2種類のパルスレーザ光L1’,L2は時間多重されることにより微小時間間隔をあけているので、各集光位置への照射時刻はずれている。
【0044】
したがって、光軸方向に異なる位置に微小時間間隔をあけてパルスレーザ光L1’,L2が集光されることにより、各集光位置において蛍光が微小時間間隔をあけて発生する。パルスレーザ光L1’,L2に対応して発生した蛍光は、それぞれ、対物レンズ16によって集光され、ダイクロイックミラー17によって分岐され、光検出器18によって検出される。
そして、各時刻において光検出器18により検出された蛍光強度と、その時刻におけるスキャナ15の走査位置の情報とを対応づけて記憶することにより、図5に示されるように、光軸方向に異なる位置に広がる2つの平面に沿う2次元的P1,P2な蛍光画像を取得することができる。
【0045】
このように、本実施形態に係る光源装置1、走査型顕微鏡2およびパルス光生成方法によれば、2種類のパルスレーザ光L1’,L2を時間多重することにより、各パルスレーザ光L1’,L2が光軸方向に異なる位置に集光される時刻をずらすことができ、2つの位置において発生する蛍光を混合させることなく、別個に検出することができる。
【0046】
また、2種類のパルスレーザ光L1’,L2を偏光方向に応じて生成することにより、液晶デバイス12を固定式のものにすることができる。これにより、従来のように形状可変ミラーを切り替えて波面を切り替える場合と比較すると、十分に短い時間間隔で2種類のパルスレーザ光L1’,L2を時間多重させることができる。
その結果、光軸方向に異なる位置の蛍光画像を相互に干渉させることなく、ほぼ同時に観察することができるという利点がある。
【0047】
なお、本実施形態においては、パルス分割部5において付与する遅延時間tとして、t=1/2Rとなるような光路長差LSを採用することが好ましい。すなわち、LS=c/2Rであることが好ましい。このようにすることで、図2(b)に示されるように、レーザ光源4からのパルスレーザ光L1の繰り返し周波数Rの2倍の繰り返し周波数2Rで繰り返されるパルスレーザ光L1’,L2を生成することができる。
【0048】
2つの集光位置から発生する蛍光を相互に混合させることなく検出可能な最短の遅延時間1/2Rを確保した上で、最短の繰り返し周期1/Rを選択することができ、これにより、レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1を最も効率的に利用することができるという利点がある。
【0049】
また、本実施形態においては、レーザ光源4から発せられた隣接するパルスレーザ光L1の間に、光路C2を伝播してきたパルスレーザ光L2を1つずつ多重化させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示されるように、光路C2により付与する遅延時間L/cをレーザ光源4から射出されたパルスレーザ光L1のn数個分の所要時間n/Rより大きく設定することにより、パルス分割部5からは、最初のn個パルス群と次のn個のパルス群とで偏光方向を異ならせたパルスレーザ光L1,L2を射出することができる。
【0050】
このようにすることで、同一種類のパルスレーザ光L1’,L2を連続して照射することができ、蛍光の弱い観察対象を観察する場合においても明るい蛍光画像を取得することが可能となる。
また、遅延時間をn/Rに設定することにより、繰り返し周波数R/nで偏光方向の異なったパルスレーザ光がn個ずつ繰り返されるようなパルスレーザ光L1’,L2を生成することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、偏光ビームスプリッタ9の後段に波面変換部6を配置して、パルスレーザ光L1,L2の偏光方向に応じて波面の変調の有無を切り替えることとしたが、これに代えて、図7に示されるように、波面変換部6をパルス分割部5のいずれか一方の光路C1,C2内に設置することにしてもよい(図7は、光路C1内に設置した場合を示している。)。この場合には、波面変換部6が設けられた光路C1を伝播する全てのパルスレーザ光L1の波面を変調することになる。
【0052】
したがって、波面変換部6としては、偏光方向によって波面の変調の有無が異なる液晶デバイス12を使用してもよいが、これに代えて、入射される全てのパルスレーザ光L1の波面を変調する形状可変ミラー、セグメントタイプのMEMSミラー(図示略)を採用してもよい。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態に係る光源装置20について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る光源装置20と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る光源装置20は、図8に示されるように、パルス分割部5,21と波面変換部6,22とを備える2つのユニット23,24を直列に配置し、ユニット23,24間にλ/2板25を配置したものである。
第1のユニット23に備えられたパルス分割部5は、光路長差LS1を有する2つの光路C1,C2を備え、一方の光路C2を伝播するパルスレーザ光L2に遅延時間t=LS1/cを付与するようになっている。このパルス分割部5は、第1の実施形態におけるパルス分割部5と同じである。
【0055】
また、第1のユニット23に備えられた波面変換部6の液晶デバイス12は、入射されるパルスレーザ光L1,L2の偏光方向に応じて波面の変調の有無を異ならせる点において、第1の実施形態に係る光源装置1の液晶デバイス12と同様である。この液晶デバイス12は、波面を変調したパルスレーザ光L1’と変調しないパルスレーザ光L2とが光軸方向に距離2dだけずれた位置に集光されるような波面を付与するようになっている。
【0056】
また、第2のユニット24に備えられたパルス分割部21は、2つの偏光ビームスプリッタ26,27により、光路長差LS2を有する2つの光路C3,C4を形成し、一方の光路C4を伝播するパルスレーザ光L3,L4に遅延時間t=LS2/cを付与するようになっている。このパルス分割部21には、既に、相互に直交する偏光方向を有する2種類のパルスレーザ光L1’,L2が入射されるので、第1のユニット23のパルス分割部5とは異なりλ/2板8は備えられていない。
【0057】
第2のユニット24の前後および内部にはレンズ28〜31が配置されて、リレー光学系が構成され、第1のユニット23の波面変換部6の液晶デバイス12と、第2のユニット24の波面変換部22の液晶デバイス32とが光学的に共役な位置に配置されるようになっている。図中、符号33はプリズム、符号34はミラーである。
【0058】
また、第2のユニット24に備えられた波面変換部22の液晶デバイス32も、入射されるパルスレーザ光L1’,L2,L3,L4の偏光方向に応じて波面の変換の有無を異ならせる点においては第1の実施形態に係る光源装置1の液晶デバイス12と同様である。この液晶デバイス32は、波面を変調したパルスレーザ光L1”,L2’と変調しないパルスレーザ光L3,L4とが光軸方向に距離dだけずれた位置に集光されるような波面を付与するようになっている。
【0059】
また、λ/2板25は、第1のユニット23の波面変換部6から射出される2種類のパルスレーザ光L1’,L2の内、一方のパルスレーザ光L1’の偏光方向に対して、22.5°の角度をなす方向に、高速軸が配置されている。これにより、第1のユニット23の波面変換部6から射出される2種類のパルスレーザ光L1’,L2の偏光方向をいずれも45°回転させて第2のユニット24に入射させることができる。なお、λ/2板25に代えて、パルスレーザ光L1’,L2の偏光方向に対して45°の角度をなして配置されたλ/4板を用いてもよい。
【0060】
これにより、第2のユニット24の偏光ビームスプリッタ26の方向を第1のユニット23のパルス分割部5における偏光ビームスプリッタ9に対して光軸回りに同一方向に配置しておいても、第1のユニット23から射出されてくる2種類のパルスレーザ光L1’,L2をそれぞれ等分割して、2つの光路C3,C4に分岐させることができる。
【0061】
このように構成された本実施形態に係る光源装置20の作用について、以下に説明する。
レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1は、第1のユニット23を通過させられることにより、第1の実施形態に係る光源装置1と同様にして、時間多重されかつ一方のみに波面変調を施された2種類のパルスレーザ光L1’,L2が生成される。このとき、2種類のパルスレーザ光L1’,L2の時間間隔はt=LS1/cである。また、一方の光路C1を通過したパルスレーザ光L1’には、光軸方向に距離2dだけ集光位置を異ならせるような波面が付与される。
【0062】
第1のユニット23から射出された相互に直交する偏光方向を有する2種類のパルスレーザ光L1’,L2は、λ/2板8によって45°回転させられて第2のユニット24に入射される。第2のユニット24においては2種類のパルスレーザ光L1’,L2は、偏光ビームスプリッタ26によって2つの光路C3,C4に等分割され、一方の光路C4を伝播させられる間に遅延時間LS2/cが付与された2種類のパルスレーザ光L3,L4が生成される。
【0063】
したがって、光路C3を伝播してきた遅延時間0、LS1/cの2種類のパルスレーザ光L1’,L2と、光路C4を伝播してきた遅延時間LS2/c,(LS1+LS2)/cの2種類のパルスレーザ光L3,L4とを含む4種類のパルスレーザ光L1’,L2,L3,L4が、偏光ビームスプリッタ27によって合波される。
そして、これらのパルスレーザ光L1’,L2,L3,L4が波面変換部22を通過することにより、一方の光路C3を通過した2種類のパルスレーザ光L1’,L2には光軸方向に距離dだけ集光位置を異ならせるような波面が付与されて、パルスレーザ光L1”,L2’となる。
【0064】
この場合に、光路C2および光路C4を通過して最も長い遅延時間(LS1+LS2)/cが付与されたパルスレーザ光L4には、波面変換が施されないこととすると、このパルスレーザ光L4に対して、光路C1および光路C3を伝播した遅延時間0のパルスレーザ光L1”は第1、第2のユニット23,24の波面変換部6,22によって距離2d+d=3d、光路C1および光路C4を伝播した遅延時間LS2/cのパルスレーザ光L3は第1のユニット23の波面変換部6のみによって距離2d、光路C2および光路C3を伝播した遅延時間LS1/cのパルスレーザ光L2’は第2のユニット24の波面変換部22のみによって距離dだけ、それぞれ光軸方向に集光位置を異ならされる。
【0065】
すなわち、本実施形態に係る光源装置20によれば、顕微鏡本体3に導入して、光軸方向に距離dずつ異なる4つの平面内においてパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4を集光させ、深さの異なる4つの平面に沿う蛍光画像を取得することができる。また、4種類のパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4は時間多重されているので、各集光位置において発生した蛍光が相互に干渉することを防止することができ、鮮明な蛍光画像をほぼ同時に取得することができるという利点がある。
【0066】
なお、この場合においては、パルス分割部5,21の光路C1,C2の光路長差をLS1=c/2R、光路C3,C4の光路長差をLS2=c/4Rとすることにより、繰り返し周波数4Rの時間多重されたパルス列を生成することができる。
【0067】
また、本実施形態においては、一方のユニット23の波面変換部6において付与する波面の変調を、集光位置を光軸に直交する方向にずらすような波面を与えることにしてもよい。
このようにすることで、図9に示されるように、光軸方向に間隔をあけた2平面P1,P2上において間隔をあけた2箇所にそれぞれパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4を集光させることができる。各平面P1,P2において光軸に直交する方向に異なる2箇所にパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4をほぼ同時に照射することにより、各平面P1,P2に沿う2次元的な蛍光画像の取得速度を向上することができる。
【0068】
この場合においても、各パルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4は時間多重されているので、各集光位置において発生する蛍光が相互に混合されることがなく、近接した位置に集光させることができるとともに、鮮明な蛍光画像を取得することができるという利点がある。
また、ユニット23,24の数は2つに限定されるものではなく3以上の任意の数だけ設けてもよい。
【0069】
次に、本発明の第3の実施形態に係る光源装置40について図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る光源装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施形態に係る光源装置40は、図10に示されるように、第1の実施形態に係る光源装置1のパルス分割部5に代えて、パルスレーザ光L1の偏光方向を電気光学的にスイッチングするポッケルスセルのような偏光切替素子41を採用している。偏光切替素子41は、レーザ光源4からのパルスレーザ光L1の出力タイミングに同期させて1以上のパルスレーザ光L1毎に偏光方向を切り替えるようになっている。
【0071】
このように構成された本実施形態に係る光源装置40によれば、偏光切替素子41により高速に切り替えられた偏光方向に応じて液晶デバイス12によって選択的に波面を付与し、パルスレーザ光L1’,L2を射出することができる。
図11は、1パルスレーザ光L1毎に偏光方向を切り替えた場合、図12はnパルスレーザ光L1毎に偏光方向を切り替えた場合をそれぞれ示している。nパルスレーザ光L1毎に偏光方向を切り替えることにより、蛍光の弱い観察対象を観察する場合でも、明るい蛍光画像を取得することができるという利点がある。
【0072】
なお、本実施形態においては、図13に示されるように、偏光切替素子41と波面変換部6とを含む第1のユニット42の他に、偏光切替素子43と波面変換部22とを含む第2のユニット44を直列に配列することにしてもよい。
このようにすることで、2つのユニット42,44の波面変換部6,22により、パルスレーザ光L1’,L2,L3,L4の偏光方向に応じて波面の変調を付与することができる。これにより、偏光切替素子41,43の動作状態の組み合わせによって、図14に示されるように、レーザ光源4から出力されるパルスレーザ光L1の繰り返し周期Rで時間間隔をあけて、4種類のパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4を生成することができる。
【0073】
なお、上記第1の実施形態から第3の実施形態においては、液晶デバイス12として反射型の液晶デバイスを用いることとしたが、これに限られるものではなく、透過型のものであっても上記各実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0074】
A 観察対象
C1,C2,C3,C4 光路
L1,L1’,L1”,L2,L2’,L3,L4 パルスレーザ光
S1 分割ステップ
S2 偏光ステップ
S3 波面変換ステップ
1,20,40 光源装置
2 走査型顕微鏡
4 レーザ光源
5,21 パルス分割部
6,22 波面変換部
8 λ/2板(偏光調節部)
12 液晶デバイス
15 スキャナ
16 対物レンズ
18 光検出器(検出器)
23,24 ユニット
25 λ/2板(波長板)
41,43 偏光切替素子(偏光調節部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、走査型顕微鏡およびパルス光生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、対物レンズを光軸方向に駆動することなく、標本中の光軸方向に異なる位置を観察することができる走査型顕微鏡が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
特許文献1の走査型顕微鏡は、複数の光源と、複数の照明光路と、複数の光検出手段とを備えることで、別個の照明光路から導いた光を標本中の光軸方向に異なる位置に同時に集光させるものである。
特許文献2の走査型顕微鏡は、照明光路の途中位置に配置した形状可変ミラーの形状を切り替えることにより、集光位置を光軸方向に移動させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−157246号公報
【特許文献2】特開2007−316662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、観察対象が生体のような散乱体である場合には、試料の屈折率の分布や揺らぎによって、各集光位置における励起光のスポット径が広がるため、複数の照明光路からの励起光を光軸方向に異なる位置に同時に集光させる特許文献1の走査型顕微鏡では、集光位置どうしが近接している場合には、一方の集光位置からの蛍光を検出する検出器に、他の集光位置からの蛍光も混入してしまい、鮮明な蛍光観察を行うことができないという不都合がある。
【0005】
また、特許文献2の走査型顕微鏡では、形状可変ミラーの形状の切り替えによって、光軸方向に離れた各集光位置には、異なる時刻に励起光が入射されるため、特許文献1のような不都合はないものの、形状可変ミラーの形状の切り替えには時間がかかり、生体や生細胞のように短時間で経時変化する観察対象の光軸方向に異なる位置を観察する際の同時性を担保することができないという不都合がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、観察対象の光軸方向に異なる複数点の観察を同時性を維持しつつ鮮明に行うことを可能とする光源装置、走査型顕微鏡およびパルス光生成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源から発せられたパルスレーザ光から時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光を生成するパルス分割部と、該パルス分割部により生成される1以上のパルスレーザ光毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光の波面を異ならせる固定式の波面変換部とを備える光源装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、レーザ光源から発せられたパルスレーザ光がパルス分割部に入射されると、パルス分割部において、時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光が生成され、固定式の波面変換部によって、その1以上のパルスレーザ光毎に波面が異ならされる。これにより、異なる波面を付与されたパルスレーザ光は、光軸方向に異なる位置に集光するようになる。
【0009】
すなわち、このようにして生成された複数のパルスレーザ光を、観察対象に照射することにより、異なる光軸方向位置に異なる時間にパルスレーザ光を集光させ、これをそれぞれ検出することにより、生体試料のような散乱体からなる観察対象であっても、相互に干渉することなく光軸方向の近接した異なる位置を鮮明に観察することができる。パルスレーザ光の時間間隔は、観察対象において発生する光の寿命より若干長くすれば足り、十分に短く設定することができる。したがって、光軸方向に異なる位置を略同時に、かつ、鮮明に観察することが可能となる。
【0010】
上記発明においては、前記パルス分割部により生成される1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光調節部を備え、前記波面変換部が、前記パルスレーザ光の偏光方向に応じて選択的に波面を変換してもよい。
このようにすることで、偏光調節部によって偏光方向を異ならされたパルスレーザ光を波面変換部に入射させると、その偏光方向に応じて選択的に波面が変換されるので、時間間隔をあけたパルスレーザ光を、簡易に、光軸方向に異なる位置に集光させることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスを備える請求項2に記載の光源装置。
このようにすることで、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向と垂直な偏光方向とをそれぞれ異なるパルスレーザ光に付与することにより、パルスレーザ光における波面の変換の有無を容易かつ迅速に切り替えることができる。
【0012】
上記発明においては、前記パルス分割部が、前記レーザ光源から発せられたパルスレーザ光を分割して通過させる光路長の異なる2つの光路を備えていてもよい。
このようにすることで、パルスレーザ光を分割して異なる2つの光路を通過させるだけで、簡易に時間間隔をあけた2つのパルスレーザ光を生成することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記波面変換部が、前記パルス分割部のいずれかの光路に配置されていてもよい。
このようにすることで、波面変換部が配置されている光路を通過させられたパルスレーザ光には波面変換が施され、波面変換部が配置されていない光路には波面変換が施されずに射出されるので、容易に、光軸方向に異なる位置に集光可能な複数のパルスレーザ光を射出することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスまたは形状可変ミラーを備えていてもよい。
このようにすることで、液晶デバイスのみならず形状可変ミラーによっても、簡易な構成で、光軸方向に異なる位置に集光可能な複数のパルスレーザ光を射出することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記パルス分割部と前記波面変換部とを備えるユニットを直列に複数備え、各前記ユニットにおける前記パルス分割部が、パルスレーザ光に異なる時間間隔を付与してもよい。
このようにすることで、全てのパルスレーザ光を時間的にずらすことができ、また、各パルスレーザ光の光軸方向の集光位置については、波面変換部ごとにずらしていくことができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記ユニット間に波長板が配置されていてもよい。
このようにすることで、一のユニットから射出されたパルスレーザ光の偏光状態を波長板によって調節して、次のユニットに入射させることができ、波長板の前後の波面変換部の相対角度を自由に設定することが可能となる。
【0017】
また、上記発明においては、前記パルス分割部により前記パルスレーザ光に付与される時間間隔tが、該パルス分割部の数n、前記レーザ光源からのパルスレーザ光の繰り返し周波数Rを用いて、以下の式により算出されてもよい。
t=1/(2nR)
このようにすることで、繰り返し周波数2nRで時間多重されたパルスレーザ光の列を生成できる。さらに、それぞれのパルスレーザ光が観察対象に照射される際における集光位置も空間的に多重化することができる。
【0018】
また、本発明は、時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源から発せられた1以上のパルスレーザ光毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光の波面を異ならせる固定式の波面変換部とを備える光源装置を提供する。
【0019】
本発明によれば、レーザ光源から発せられた時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光が、固定式の波面変換部によって、その1以上のパルスレーザ光毎に波面が異ならされる。これにより、異なる波面を付与されたパルスレーザ光は、光軸方向に異なる位置に集光するようになる。すなわち、このようにして生成された複数のパルスレーザ光を、観察対象に照射することにより、異なる光軸方向位置に異なる時間にパルスレーザ光を集光させ、これをそれぞれ検出することにより、生体試料のような散乱体からなる観察対象であっても、相互に干渉することなく光軸方向の近接した異なる位置を鮮明に観察することができる。パルスレーザ光の時間間隔は、観察対象において発生する光の寿命より若干長くすれば足り、十分に短く設定することができる。したがって、光軸方向に異なる位置を略同時に、かつ、鮮明に観察することが可能となる。
【0020】
上記発明においては、前記レーザ光源から発せられた1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光調節部を備え、前記波面変換部が、前記パルスレーザ光の偏光方向に応じて選択的に波面を変換してもよい。
また、上記発明においては、前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスを備えていてもよい。
【0021】
また、本発明は、上記いずれかの光源装置と、該光源装置から射出されたパルスレーザ光を観察対象上で走査するスキャナと、該スキャナにより走査されたパルスレーザ光を前記観察対象上に集光し、観察対象からの光を集光する対物レンズと、前記観察対象からの光を検出する検出器とを備える走査型顕微鏡を提供する。
【0022】
本発明によれば、光源装置から発せられた時間的に多重化されたパルスレーザ光が、スキャナによって走査され、対物レンズによって観察対象に照射されると、観察対象中の光軸方向に異なる位置にそれぞれ集光され、該観察対象からの光が対物レンズによって集光されて検出器により検出される。これにより、光軸方向に異なる複数点をほぼ同時に、相互に干渉させることなく観察することができる。
【0023】
また、本発明は、パルスレーザ光を分割して、時間間隔を空けた複数のパルスレーザ光を生成するパルス分割ステップと、該パルス分割ステップにより生成された1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光ステップと、該偏光ステップにおいて偏光方向を異ならされたパルスレーザ光を、その偏光方向に応じて選択的に波面を変換する波面変換部に入射させて、光軸方向の異なる位置に集光するように波面を変換する波面変換ステップとを含むパルス光生成方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、観察対象の光軸方向に異なる複数点の観察を同時性を維持しつつ鮮明に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光源装置および走査型顕微鏡を示す模式図である。
【図2】図1の光源装置のパルス分割部により生成された2種類のパルスレーザ光のパルス列を示す図であり、(a)光路長差LSの場合、(b)光路長差LS=c/2Rの場合をそれぞれ示している。
【図3】図1の光源装置により対物レンズの光軸方向に間隔をあけた2箇所にパルスレーザ光が集光されている状態を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るパルス光生成方法のフローチャートを示す図である。
【図5】図1の走査型顕微鏡により対物レンズの光軸方向に間隔をあけた2平面上においてパルスレーザ光が走査されている状態を示す図である。
【図6】図1の光源装置により生成されるパルスレーザ光の変形例を示す図である。
【図7】図1の光源装置および走査型顕微鏡の変形例を示す模式図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る光源装置を示す模式図である。
【図9】図8の光源装置における波面変換部において、光軸に直交する方向に焦点位置を異ならせるような波面を付与したパルスレーザ光が、対物レンズの光軸方向に間隔をあけた2平面上において走査されている状態を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る光源装置を示す模式図である。
【図11】図10の光源装置により生成された2種類のパルスレーザ光のパルス列を示す図である。
【図12】図11の変形例を示す図である。
【図13】図10の光源装置の変形例を示す模式図である。
【図14】図13の光源装置により生成された4種類のパルスレーザ光のパルス列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の実施形態に係る光源装置1、走査型顕微鏡2およびパルス光生成方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る走査型顕微鏡2は、図1に示されるように、本実施形態に係る光源装置1と、該光源装置1から射出されたパルスレーザ光によって標本(観察対象)Aを観察する顕微鏡本体3とを備えている。
【0027】
光源装置1は、パルスレーザ光L1を発生するレーザ光源4と、該レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1を2つに分割して時間多重するパルス分割部5と、該パルス分割部5により分割されたパルスレーザ光L1,L2のうちの一方のパルスレーザ光L1の波面を変換する波面変換部6とを備えている。
レーザ光源4は、繰り返し周波数Rで直線偏光のパルスレーザ光L1を発振するようになっている。
【0028】
パルス分割部5は、レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1からパルスレーザ光L2を分割して、光路長の異なる2つの光路C1,C2に入射させるビームスプリッタ7と、該ビームスプリッタ7により分岐された一方の光路C2に配置されたλ/2板8と、2つの光路C1,C2を通過してきたパルスレーザ光L1,L2を合波する偏光ビームスプリッタ9とを備えている。
図1中、符号10はミラーである。
【0029】
λ/2板8は、レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1の偏光方向に対して45°傾けて配置されている。
例えば、レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1が紙面に平行な偏光方向を有している場合、光路C2においては、パルスレーザ光L2の偏光方向は、λ/2板8によって紙面に垂直な偏光方向に変換される一方、他方の光路C1において、紙面に平行な偏光方向のままのパルスレーザ光L1が伝播されるようになっている。
【0030】
これにより、偏光ビームスプリッタ9に到達した2つのパルスレーザ光L1,L2は、偏光ビームスプリッタ9によって無駄なく透過または反射されて同一光路に合波されるようになっている。
パルス分割部5の2つの光路C1,C2は光路差LSを有している。したがって、2つの光路C1,C2を通過するパルスレーザ光L1,L2には、遅延時間t=L/cが付与される。ここで、cは光速である。
すなわち、パルス分割部5からは、図2(a)に示されるように、相互に直交する偏光方向を有し、かつ時間的に多重化されたパルスレーザ光L1,L2が射出されることになる。
【0031】
波面変換部6は、パルス分割部5から射出されたパルスレーザ光L1,L2を反射して迂回させるプリズム11と、該プリズム11によって反射されたパルスレーザ光L1,L2を反射し、その際に、一方のパルスレーザ光L1の波面を変調し、他方のパルスレーザ光L2には波面の変調を施さずに、プリズム11に戻す反射型の液晶デバイス(LCOS:Liquid-Crystal on Silicon)12とを備えている。液晶デバイス12は、多くの画素に分かれていて、各画素毎にシリコン基板とこれに対向する透明基板との間に液晶分子を挟み込み、鏡面状のシリコン基板の背面に液晶に電圧を加えるための電極が形成された構造を有している。
【0032】
液晶デバイス12の液晶分子は、基板および一方のパルスレーザ光L1の偏光面に平行に配向しており、基板に形成された電極によって電圧を加えると、液晶分子が基板および他方のパルスレーザ光L2の偏光面に平行な軸を中心に回転する。そして、この液晶分子の回転に伴って、液晶分子の配向方向に偏光面を有するパルスレーザ光L1に対する液晶デバイス12の屈折率分布も変化する。
【0033】
液晶分子の回転角度は、印加電圧によって制御でき、画素毎に液晶デバイス12への印加電圧を変化させると、液晶デバイス12に屈折率分布をもたらすことができる。その結果、入射光に所望の位相分布を与えることができる。また、入射光の偏光方向と液晶分子の配向方向とが一致したときに、入射光に位相分布を最も強く与えることができる。また、入射光の偏光方向と液晶分子の配向方向とが直交したときには、入射光は変調されない。
【0034】
つまり、液晶デバイス12は、画素ごとに液晶分子への電圧を直接制御して入射光の位相を変えることによって、液晶分子の配向方向と一致した偏光方向の入射光に対して、自在に位相を変調することができるようになっている。
【0035】
すなわち、パルス分割部5から交互に射出される偏光方向の直交する2種類のパルスレーザ光L1,L2の内、波面変換部6に備えられる液晶デバイス12の液晶分子の配向方向と一致する偏光方向を有する一方のパルスレーザ光L1は、液晶デバイス12によって波面を変調される一方、他方のパルスレーザ光L2は、液晶デバイス12によって波面を変調されることなく反射される。したがって、顕微鏡本体3に対して、波面の変調されたパルスレーザ光L1’と、波面の変調されないパルスレーザ光L2とを交互に出力することができるようになっている。
【0036】
ここで、液晶デバイス12により一方のパルスレーザ光L1’に付与された波面の変調は、顕微鏡本体3の後述する対物レンズによる集光位置を、図3に示されるように、他方のパルスレーザ光L2の集光位置に対して光軸方向にずらすように行われる。例えば、他方のパルスレーザ光L2の波面が平面である場合に、一方のパルスレーザ光L1には、軸対称に微細な曲率を有する球面状の波面を有するように波面の変調が行われるようになっている。
【0037】
顕微鏡本体3は、光源装置1から射出されたパルスレーザ光L1’,L2をリレーする第1のリレー光学系13および第2のリレー光学系14と、これら第1および第2のリレー光学系13,14の間に配置され、パルスレーザ光L1’,L2を2次元的に走査するスキャナ15と、第2のリレー光学系14によってリレーされたパルスレーザ光L1’,L2を観察対象Aに集光する対物レンズ16と、該対物レンズ16により集光された観察対象Aにおいて発生した蛍光をパルスレーザ光L1’,L2から分岐するダイクロイックミラー17と、該ダイクロイックミラー17によって分岐された蛍光を検出する光検出器18とを備えている。
【0038】
第1のリレー光学系13によって波面変調部6の液晶デバイス12とスキャナ15とが光学的に共役な位置関係に配置され、第2のリレー光学系14によってスキャナ15と対物レンズ16の瞳位置とが光学的に共役な位置に配置されている。
【0039】
このように構成された本実施形態に係る光源装置1を用いたパルス光生成方法について以下に説明する。
レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1がパルス分割部5に入射されると、図4に示されるように、ビームスプリッタ7によって2つの光路C1,C2に分岐される(分割ステップS1)。2つの光路C1,C2は光路長差LSを有しているので、長い方の光路C2を通過したパルスレーザ光L2には光路長差LSに応じた時間遅延が付与される。
【0040】
光路C2には、λ/2板8が、入射するパルスレーザ光L1の偏光方向に対して高速軸を45°傾斜させて配置されているので、λ/2板8を通過したパルスレーザ光L2は、他の光路C1を伝播してくるパルスレーザ光に対して偏光方向が直交する直線偏光となる(偏光ステップS2)。そして、2つの光路C1,C2を伝播してきたパルスレーザ光L1,L2は、偏光ビームスプリッタ9で合波される。
【0041】
すなわち、偏光ビームスプリッタ9で合波されることにより偏光方向の直交する2種類のパルスレーザ光L1,L2が時間多重される。そして、時間多重された2種類のパルスレーザ光L1,L2が、波面変換部6の液晶デバイス12に入射されると、液晶分子の配向方向に水平な偏光方向を有するパルスレーザ光L1のみに波面の変調が施される(波面変換ステップS3)。液晶分子の配向方向に垂直な偏光方向を有するパルスレーザ光L2については、波面の変調が施されることなくそのまま反射される。
これにより、1つのパルスレーザ光L1から、波面の異なる2種類のパルスレーザ光L1’,L2を時間多重させた状態で生成することができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る走査型顕微鏡2の作用について説明する。
上述したように本実施形態に係る光源装置1およびパルス光生成方法により生成された2種類のパルスレーザ光L1’,L2が顕微鏡本体3に入射されると、第1のリレー光学系13によってリレーされたパルスレーザ光L1’,L2が、スキャナ15によって2次元的に走査され、第2のリレーレンズ14によってリレーされた後、対物レンズ16によって観察対象Aに集光される。
【0043】
2種類のパルスレーザ光L1’,L2は、一方が波面変調されているので、対物レンズ16によって光軸方向に異なる位置に集光される。また、2種類のパルスレーザ光L1’,L2は時間多重されることにより微小時間間隔をあけているので、各集光位置への照射時刻はずれている。
【0044】
したがって、光軸方向に異なる位置に微小時間間隔をあけてパルスレーザ光L1’,L2が集光されることにより、各集光位置において蛍光が微小時間間隔をあけて発生する。パルスレーザ光L1’,L2に対応して発生した蛍光は、それぞれ、対物レンズ16によって集光され、ダイクロイックミラー17によって分岐され、光検出器18によって検出される。
そして、各時刻において光検出器18により検出された蛍光強度と、その時刻におけるスキャナ15の走査位置の情報とを対応づけて記憶することにより、図5に示されるように、光軸方向に異なる位置に広がる2つの平面に沿う2次元的P1,P2な蛍光画像を取得することができる。
【0045】
このように、本実施形態に係る光源装置1、走査型顕微鏡2およびパルス光生成方法によれば、2種類のパルスレーザ光L1’,L2を時間多重することにより、各パルスレーザ光L1’,L2が光軸方向に異なる位置に集光される時刻をずらすことができ、2つの位置において発生する蛍光を混合させることなく、別個に検出することができる。
【0046】
また、2種類のパルスレーザ光L1’,L2を偏光方向に応じて生成することにより、液晶デバイス12を固定式のものにすることができる。これにより、従来のように形状可変ミラーを切り替えて波面を切り替える場合と比較すると、十分に短い時間間隔で2種類のパルスレーザ光L1’,L2を時間多重させることができる。
その結果、光軸方向に異なる位置の蛍光画像を相互に干渉させることなく、ほぼ同時に観察することができるという利点がある。
【0047】
なお、本実施形態においては、パルス分割部5において付与する遅延時間tとして、t=1/2Rとなるような光路長差LSを採用することが好ましい。すなわち、LS=c/2Rであることが好ましい。このようにすることで、図2(b)に示されるように、レーザ光源4からのパルスレーザ光L1の繰り返し周波数Rの2倍の繰り返し周波数2Rで繰り返されるパルスレーザ光L1’,L2を生成することができる。
【0048】
2つの集光位置から発生する蛍光を相互に混合させることなく検出可能な最短の遅延時間1/2Rを確保した上で、最短の繰り返し周期1/Rを選択することができ、これにより、レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1を最も効率的に利用することができるという利点がある。
【0049】
また、本実施形態においては、レーザ光源4から発せられた隣接するパルスレーザ光L1の間に、光路C2を伝播してきたパルスレーザ光L2を1つずつ多重化させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示されるように、光路C2により付与する遅延時間L/cをレーザ光源4から射出されたパルスレーザ光L1のn数個分の所要時間n/Rより大きく設定することにより、パルス分割部5からは、最初のn個パルス群と次のn個のパルス群とで偏光方向を異ならせたパルスレーザ光L1,L2を射出することができる。
【0050】
このようにすることで、同一種類のパルスレーザ光L1’,L2を連続して照射することができ、蛍光の弱い観察対象を観察する場合においても明るい蛍光画像を取得することが可能となる。
また、遅延時間をn/Rに設定することにより、繰り返し周波数R/nで偏光方向の異なったパルスレーザ光がn個ずつ繰り返されるようなパルスレーザ光L1’,L2を生成することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、偏光ビームスプリッタ9の後段に波面変換部6を配置して、パルスレーザ光L1,L2の偏光方向に応じて波面の変調の有無を切り替えることとしたが、これに代えて、図7に示されるように、波面変換部6をパルス分割部5のいずれか一方の光路C1,C2内に設置することにしてもよい(図7は、光路C1内に設置した場合を示している。)。この場合には、波面変換部6が設けられた光路C1を伝播する全てのパルスレーザ光L1の波面を変調することになる。
【0052】
したがって、波面変換部6としては、偏光方向によって波面の変調の有無が異なる液晶デバイス12を使用してもよいが、これに代えて、入射される全てのパルスレーザ光L1の波面を変調する形状可変ミラー、セグメントタイプのMEMSミラー(図示略)を採用してもよい。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態に係る光源装置20について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る光源装置20と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る光源装置20は、図8に示されるように、パルス分割部5,21と波面変換部6,22とを備える2つのユニット23,24を直列に配置し、ユニット23,24間にλ/2板25を配置したものである。
第1のユニット23に備えられたパルス分割部5は、光路長差LS1を有する2つの光路C1,C2を備え、一方の光路C2を伝播するパルスレーザ光L2に遅延時間t=LS1/cを付与するようになっている。このパルス分割部5は、第1の実施形態におけるパルス分割部5と同じである。
【0055】
また、第1のユニット23に備えられた波面変換部6の液晶デバイス12は、入射されるパルスレーザ光L1,L2の偏光方向に応じて波面の変調の有無を異ならせる点において、第1の実施形態に係る光源装置1の液晶デバイス12と同様である。この液晶デバイス12は、波面を変調したパルスレーザ光L1’と変調しないパルスレーザ光L2とが光軸方向に距離2dだけずれた位置に集光されるような波面を付与するようになっている。
【0056】
また、第2のユニット24に備えられたパルス分割部21は、2つの偏光ビームスプリッタ26,27により、光路長差LS2を有する2つの光路C3,C4を形成し、一方の光路C4を伝播するパルスレーザ光L3,L4に遅延時間t=LS2/cを付与するようになっている。このパルス分割部21には、既に、相互に直交する偏光方向を有する2種類のパルスレーザ光L1’,L2が入射されるので、第1のユニット23のパルス分割部5とは異なりλ/2板8は備えられていない。
【0057】
第2のユニット24の前後および内部にはレンズ28〜31が配置されて、リレー光学系が構成され、第1のユニット23の波面変換部6の液晶デバイス12と、第2のユニット24の波面変換部22の液晶デバイス32とが光学的に共役な位置に配置されるようになっている。図中、符号33はプリズム、符号34はミラーである。
【0058】
また、第2のユニット24に備えられた波面変換部22の液晶デバイス32も、入射されるパルスレーザ光L1’,L2,L3,L4の偏光方向に応じて波面の変換の有無を異ならせる点においては第1の実施形態に係る光源装置1の液晶デバイス12と同様である。この液晶デバイス32は、波面を変調したパルスレーザ光L1”,L2’と変調しないパルスレーザ光L3,L4とが光軸方向に距離dだけずれた位置に集光されるような波面を付与するようになっている。
【0059】
また、λ/2板25は、第1のユニット23の波面変換部6から射出される2種類のパルスレーザ光L1’,L2の内、一方のパルスレーザ光L1’の偏光方向に対して、22.5°の角度をなす方向に、高速軸が配置されている。これにより、第1のユニット23の波面変換部6から射出される2種類のパルスレーザ光L1’,L2の偏光方向をいずれも45°回転させて第2のユニット24に入射させることができる。なお、λ/2板25に代えて、パルスレーザ光L1’,L2の偏光方向に対して45°の角度をなして配置されたλ/4板を用いてもよい。
【0060】
これにより、第2のユニット24の偏光ビームスプリッタ26の方向を第1のユニット23のパルス分割部5における偏光ビームスプリッタ9に対して光軸回りに同一方向に配置しておいても、第1のユニット23から射出されてくる2種類のパルスレーザ光L1’,L2をそれぞれ等分割して、2つの光路C3,C4に分岐させることができる。
【0061】
このように構成された本実施形態に係る光源装置20の作用について、以下に説明する。
レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光L1は、第1のユニット23を通過させられることにより、第1の実施形態に係る光源装置1と同様にして、時間多重されかつ一方のみに波面変調を施された2種類のパルスレーザ光L1’,L2が生成される。このとき、2種類のパルスレーザ光L1’,L2の時間間隔はt=LS1/cである。また、一方の光路C1を通過したパルスレーザ光L1’には、光軸方向に距離2dだけ集光位置を異ならせるような波面が付与される。
【0062】
第1のユニット23から射出された相互に直交する偏光方向を有する2種類のパルスレーザ光L1’,L2は、λ/2板8によって45°回転させられて第2のユニット24に入射される。第2のユニット24においては2種類のパルスレーザ光L1’,L2は、偏光ビームスプリッタ26によって2つの光路C3,C4に等分割され、一方の光路C4を伝播させられる間に遅延時間LS2/cが付与された2種類のパルスレーザ光L3,L4が生成される。
【0063】
したがって、光路C3を伝播してきた遅延時間0、LS1/cの2種類のパルスレーザ光L1’,L2と、光路C4を伝播してきた遅延時間LS2/c,(LS1+LS2)/cの2種類のパルスレーザ光L3,L4とを含む4種類のパルスレーザ光L1’,L2,L3,L4が、偏光ビームスプリッタ27によって合波される。
そして、これらのパルスレーザ光L1’,L2,L3,L4が波面変換部22を通過することにより、一方の光路C3を通過した2種類のパルスレーザ光L1’,L2には光軸方向に距離dだけ集光位置を異ならせるような波面が付与されて、パルスレーザ光L1”,L2’となる。
【0064】
この場合に、光路C2および光路C4を通過して最も長い遅延時間(LS1+LS2)/cが付与されたパルスレーザ光L4には、波面変換が施されないこととすると、このパルスレーザ光L4に対して、光路C1および光路C3を伝播した遅延時間0のパルスレーザ光L1”は第1、第2のユニット23,24の波面変換部6,22によって距離2d+d=3d、光路C1および光路C4を伝播した遅延時間LS2/cのパルスレーザ光L3は第1のユニット23の波面変換部6のみによって距離2d、光路C2および光路C3を伝播した遅延時間LS1/cのパルスレーザ光L2’は第2のユニット24の波面変換部22のみによって距離dだけ、それぞれ光軸方向に集光位置を異ならされる。
【0065】
すなわち、本実施形態に係る光源装置20によれば、顕微鏡本体3に導入して、光軸方向に距離dずつ異なる4つの平面内においてパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4を集光させ、深さの異なる4つの平面に沿う蛍光画像を取得することができる。また、4種類のパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4は時間多重されているので、各集光位置において発生した蛍光が相互に干渉することを防止することができ、鮮明な蛍光画像をほぼ同時に取得することができるという利点がある。
【0066】
なお、この場合においては、パルス分割部5,21の光路C1,C2の光路長差をLS1=c/2R、光路C3,C4の光路長差をLS2=c/4Rとすることにより、繰り返し周波数4Rの時間多重されたパルス列を生成することができる。
【0067】
また、本実施形態においては、一方のユニット23の波面変換部6において付与する波面の変調を、集光位置を光軸に直交する方向にずらすような波面を与えることにしてもよい。
このようにすることで、図9に示されるように、光軸方向に間隔をあけた2平面P1,P2上において間隔をあけた2箇所にそれぞれパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4を集光させることができる。各平面P1,P2において光軸に直交する方向に異なる2箇所にパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4をほぼ同時に照射することにより、各平面P1,P2に沿う2次元的な蛍光画像の取得速度を向上することができる。
【0068】
この場合においても、各パルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4は時間多重されているので、各集光位置において発生する蛍光が相互に混合されることがなく、近接した位置に集光させることができるとともに、鮮明な蛍光画像を取得することができるという利点がある。
また、ユニット23,24の数は2つに限定されるものではなく3以上の任意の数だけ設けてもよい。
【0069】
次に、本発明の第3の実施形態に係る光源装置40について図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る光源装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施形態に係る光源装置40は、図10に示されるように、第1の実施形態に係る光源装置1のパルス分割部5に代えて、パルスレーザ光L1の偏光方向を電気光学的にスイッチングするポッケルスセルのような偏光切替素子41を採用している。偏光切替素子41は、レーザ光源4からのパルスレーザ光L1の出力タイミングに同期させて1以上のパルスレーザ光L1毎に偏光方向を切り替えるようになっている。
【0071】
このように構成された本実施形態に係る光源装置40によれば、偏光切替素子41により高速に切り替えられた偏光方向に応じて液晶デバイス12によって選択的に波面を付与し、パルスレーザ光L1’,L2を射出することができる。
図11は、1パルスレーザ光L1毎に偏光方向を切り替えた場合、図12はnパルスレーザ光L1毎に偏光方向を切り替えた場合をそれぞれ示している。nパルスレーザ光L1毎に偏光方向を切り替えることにより、蛍光の弱い観察対象を観察する場合でも、明るい蛍光画像を取得することができるという利点がある。
【0072】
なお、本実施形態においては、図13に示されるように、偏光切替素子41と波面変換部6とを含む第1のユニット42の他に、偏光切替素子43と波面変換部22とを含む第2のユニット44を直列に配列することにしてもよい。
このようにすることで、2つのユニット42,44の波面変換部6,22により、パルスレーザ光L1’,L2,L3,L4の偏光方向に応じて波面の変調を付与することができる。これにより、偏光切替素子41,43の動作状態の組み合わせによって、図14に示されるように、レーザ光源4から出力されるパルスレーザ光L1の繰り返し周期Rで時間間隔をあけて、4種類のパルスレーザ光L1”,L2’,L3,L4を生成することができる。
【0073】
なお、上記第1の実施形態から第3の実施形態においては、液晶デバイス12として反射型の液晶デバイスを用いることとしたが、これに限られるものではなく、透過型のものであっても上記各実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0074】
A 観察対象
C1,C2,C3,C4 光路
L1,L1’,L1”,L2,L2’,L3,L4 パルスレーザ光
S1 分割ステップ
S2 偏光ステップ
S3 波面変換ステップ
1,20,40 光源装置
2 走査型顕微鏡
4 レーザ光源
5,21 パルス分割部
6,22 波面変換部
8 λ/2板(偏光調節部)
12 液晶デバイス
15 スキャナ
16 対物レンズ
18 光検出器(検出器)
23,24 ユニット
25 λ/2板(波長板)
41,43 偏光切替素子(偏光調節部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、
該レーザ光源から発せられたパルスレーザ光から時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光を生成するパルス分割部と、
該パルス分割部により生成される1以上のパルスレーザ光毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光の波面を異ならせる固定式の波面変換部とを備える光源装置。
【請求項2】
前記パルス分割部により生成される1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光調節部を備え、
前記波面変換部が、前記パルスレーザ光の偏光方向に応じて選択的に波面を変換する請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスを備える請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記パルス分割部が、前記レーザ光源から発せられたパルスレーザ光を分割して通過させる光路長の異なる2つの光路を備える請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
前記波面変換部が、前記パルス分割部のいずれかの光路に配置されている請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスまたは形状可変ミラーを備える請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記パルス分割部と前記波面変換部とを備えるユニットを直列に複数備え、各前記ユニットにおける前記パルス分割部が、パルスレーザ光に異なる時間間隔を付与する請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記ユニット間に波長板が配置されている請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記パルス分割部により前記パルスレーザ光に付与される時間間隔tが、該パルス分割部の数n、前記レーザ光源からのパルスレーザ光の繰り返し周波数Rを用いて、以下の式により算出される請求項1から請求項8のいずれかに記載の光源装置。
t=1/(2R×2n−1)
【請求項10】
時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光を発生するレーザ光源と、
該レーザ光源から発せられた1以上のパルスレーザ光毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光の波面を異ならせる固定式の波面変換部とを備える光源装置。
【請求項11】
前記レーザ光源から発せられた1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光調節部を備え、
前記波面変換部が、前記パルスレーザ光の偏光方向に応じて選択的に波面を変換する請求項10に記載の光源装置。
【請求項12】
前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスを備える請求項11に記載の光源装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の光源装置と、
該光源装置から射出されたパルスレーザ光を観察対象上で走査するスキャナと、
該スキャナにより走査されたパルスレーザ光を前記観察対象上に集光し、観察対象からの光を集光する対物レンズと、
前記観察対象からの光を検出する検出器とを備える走査型顕微鏡。
【請求項14】
パルスレーザ光を分割して、時間間隔を空けた複数のパルスレーザ光を生成するパルス分割ステップと、
該パルス分割ステップにより生成された1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光ステップと、
該偏光ステップにおいて偏光方向を異ならされたパルスレーザ光を、その偏光方向に応じて選択的に波面を変換する波面変換部に入射させて、光軸方向の異なる位置に集光するように波面を変換する波面変換ステップとを含むパルス光生成方法。
【請求項1】
パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、
該レーザ光源から発せられたパルスレーザ光から時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光を生成するパルス分割部と、
該パルス分割部により生成される1以上のパルスレーザ光毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光の波面を異ならせる固定式の波面変換部とを備える光源装置。
【請求項2】
前記パルス分割部により生成される1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光調節部を備え、
前記波面変換部が、前記パルスレーザ光の偏光方向に応じて選択的に波面を変換する請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスを備える請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記パルス分割部が、前記レーザ光源から発せられたパルスレーザ光を分割して通過させる光路長の異なる2つの光路を備える請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
前記波面変換部が、前記パルス分割部のいずれかの光路に配置されている請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスまたは形状可変ミラーを備える請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記パルス分割部と前記波面変換部とを備えるユニットを直列に複数備え、各前記ユニットにおける前記パルス分割部が、パルスレーザ光に異なる時間間隔を付与する請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記ユニット間に波長板が配置されている請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記パルス分割部により前記パルスレーザ光に付与される時間間隔tが、該パルス分割部の数n、前記レーザ光源からのパルスレーザ光の繰り返し周波数Rを用いて、以下の式により算出される請求項1から請求項8のいずれかに記載の光源装置。
t=1/(2R×2n−1)
【請求項10】
時間間隔をあけた複数のパルスレーザ光を発生するレーザ光源と、
該レーザ光源から発せられた1以上のパルスレーザ光毎に、光軸方向に異なる位置に集光するように、該パルスレーザ光の波面を異ならせる固定式の波面変換部とを備える光源装置。
【請求項11】
前記レーザ光源から発せられた1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光調節部を備え、
前記波面変換部が、前記パルスレーザ光の偏光方向に応じて選択的に波面を変換する請求項10に記載の光源装置。
【請求項12】
前記波面変換部が、液晶分子の配向方向に平行な偏光方向を有するパルスレーザ光の波面を変換する液晶デバイスを備える請求項11に記載の光源装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の光源装置と、
該光源装置から射出されたパルスレーザ光を観察対象上で走査するスキャナと、
該スキャナにより走査されたパルスレーザ光を前記観察対象上に集光し、観察対象からの光を集光する対物レンズと、
前記観察対象からの光を検出する検出器とを備える走査型顕微鏡。
【請求項14】
パルスレーザ光を分割して、時間間隔を空けた複数のパルスレーザ光を生成するパルス分割ステップと、
該パルス分割ステップにより生成された1以上のパルスレーザ光毎に、該パルスレーザ光の偏光方向を異ならせる偏光ステップと、
該偏光ステップにおいて偏光方向を異ならされたパルスレーザ光を、その偏光方向に応じて選択的に波面を変換する波面変換部に入射させて、光軸方向の異なる位置に集光するように波面を変換する波面変換ステップとを含むパルス光生成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−197609(P2011−197609A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67408(P2010−67408)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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