説明

光源装置及びこれを備えたプロジェクタ

【課題】マイクロ波の伝送効率をより向上させることを可能とした光源装置およびそれを備えたプロジェクタを提供する。
【解決手段】本発明は、マイクロ波を出力するマイクロ波電源200と、マイクロ波の照射を受けて発光するマイクロ波励起ランプ32と、マイクロ波電源200とマイクロ波励起ランプ32とを接続する複数の同軸ケーブル42と、各同軸ケーブル42とマイクロ波励起ランプ32との間の特性インピーダンスを整合するマッチング回路24とを備え、同軸ケーブル42におけるマッチング回路24の出力端からマイクロ波励起ランプ32までの距離が、マイクロ波の波長の1/2の整数倍とされた光源装置2及びこれを備えたプロジェクタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及びこれを備えたプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタに使用される光源装置として、マイクロ波放電方式を用いた無電極光源が知られている。このような無電極光源は、発光管内に封入された発光物質がマイクロ波によって励起されてプラズマ発光する構成となっている。従来の白熱灯や高圧水銀ランプに代表される電極放電式ランプとは異なり、発光管内部に放電用の電極を有しないので、電極の消耗やそれに伴う発光管の白濁や黒化等に起因する発光管の劣化が抑制される。また、発光管内に封入される発光物質の選択肢が広がり、必ずしも水銀を使用する必要がないので不必要な紫外線を放出せずに済み、プロジェクタ向けの長寿命光源として期待されている。
【0003】
このような無電極光源では、マイクロ波電源からランプまでを同軸ケーブルまたは同軸管などの伝送線路を用いて接続することが知られている(例えば、特許文献1参照)。マイクロ波電源からランプの間に双方の特性インピーダンスの整合を行うマッチング回路を設け、マイクロ波電力の出力を調整することにより、ランプを効率よく発光させることができる。
【特許文献1】特開2006−147454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無電極光源ではGHz帯の高周波信号(マイクロ波)を出力するため、伝送線路としての同軸ケーブルの長さが電力損失に大きく影響し、発光効率を左右することになる。上記した特許文献1には、インピーダンス整合された位置からランプまでを接続する同軸ケーブルの電力損失については考慮されておらず、十分な発光光率を得ることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、マイクロ波の伝送効率をより向上させることを可能とした光源装置およびそれを備えたプロジェクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光源装置は、上記課題を解決するために、マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、マイクロ波の照射を受けて発光するマイクロ波励起ランプと、前記マイクロ波電源と前記マイクロ波励起ランプとを接続する伝送線路と、前記伝送線路上に設けられたマッチング回路と、を備え、前記マッチング回路から前記マイクロ波励起ランプまでの前記伝送線路の距離が、マイクロ波の波長の1/2の整数倍であることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、マッチング回路とマイクロ波励起ランプとを接続する伝送線路の長さをマイクロ波の1/2波長の整数倍とすることで、伝送線路とマイクロ波励起ランプとの境界(接続部分)でマイクロ波の電界の振幅が節となり、マイクロ波の電力損失を低下させることができる。すなわち、マイクロ波の反射を減らすようにインピーダンスの整合を行うことにより伝送損失を低減することができ、マイクロ波励起ランプに対して効率よくマイクロ波電力を供給することができる。
【0008】
また、前記マイクロ波励起ランプは、マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光管と、該発光管内で一端が所定間隔をおいて配置された一対のアンテナとを有し、前記一対のアンテナの一方に前記伝送線路が接続されていることが好ましい。
本発明によれば、従来の構成において伝送線路の距離を変えるだけでマイクロ波励起ランプの発光輝度を向上させることができるため、利便性がよい。
【0009】
また、前記マイクロ波励起ランプは、マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光管と、該発光管内で一端が所定間隔をおいて配置された一対のアンテナとを有し、前記一対のアンテナにはそれぞれ伝送線路が接続され、前記いずれかの伝送線路上に前記マッチング回路が設けられていることが好ましい。
本発明によれば、各伝送線路に供給されるマイクロ波電力を小さくすることができるので、例えば各伝送線路にマイクロ波電源をそれぞれ接続する場合、マイクロ波の出力電力の小さい安価なマイクロ波電源を用いることができる。
【0010】
本発明のプロジェクタは、光源装置と、該光源装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、前記光変調部により形成された前記光学像を投射する投射部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、マイクロ波の電力(伝送)損失を抑えた光源装置を備えているので、低出力で所望の発光輝度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態の光源装置の概略構成を示すブロック図、図2は光源装置の概略構成を示す模式図、図3はマイクロ波励起ランプと同軸ケーブルとの接続状態を示す図である。
【0013】
一般にマイクロ波帯としての慣用的周波数は、3GHz〜30GHzを言うが、本案件では、UHF帯からSHF帯に相当する300MHz〜30GHz帯と定義する。
【0014】
本実施形態の光源装置2は、図1,2に示すように、マイクロ波電源部200と光源部300とを有して構成されている。ここで、マイクロ波電源部200はマイクロ波を発振する機能を有し、光源部300はマイクロ波電源部200から発振されたマイクロ波により発光する機能を有し、これらマイクロ波電源部200と光源部300とが同軸ケーブル42(伝送線路)を介して接続されている。
【0015】
マイクロ波電源部200は、図1に示すように、固体高周波発振部20、パワーモニタ22、制御回路21、サーキュレータ23、マッチング回路24とを有し、それぞれを接続する伝送線路として同軸ケーブル42が使用されている。この複数の同軸ケーブル42によって、固体高周波発振部20からマイクロ波励起ランプ32までマイクロ波を伝送する伝送路400が構成されている。
【0016】
光源部300は、図2に示すように、マイクロ波励起ランプ32と、リフレクタ34と、反射器36とを有して構成され、マイクロ波電源部200から伝送路400を介して導入されたマイクロ波によって発光する。
【0017】
まず、マイクロ波励起ランプの構成について述べる。
図3に示すように、マイクロ波励起ランプ32は、例えば石英ガラス等の非導電性材料から形成される発光管10と、この発光管10内に配置される一対のアンテナ11a,11bとを備えている。発光管10の形成材料としては、透明セラミックスや透明サファイヤなどを用いても良く、これにより、発光管10の光透過率や耐熱性を向上させることができる。発光管10は、中央部分が略球状に膨出した膨出部10Aと、膨出部10Aの両側に延在する細管部10B,10Cとを有して構成されている。
【0018】
膨出部10A内に形成された発光空間Kには、マイクロ波によって発光する発光物質が充填されている。発光空間Kの内径は、例えば1〜2mm程度である。発光物質としては、点灯中の水銀蒸気圧が1〜200気圧程度(超高圧水銀ランプ)になるように水銀を封じ込めたものか、キセノンガスにヨウ化ナトリウムやヨウ化スカンジウムを用いたものを用いてもよい。超高圧に封入することで、マイクロ波の励起によって十分な輝度を得ることができる。
【0019】
アンテナ11a,11bは、例えば熱膨張係数が小さく耐熱性が高い導電性材料、具体的にはタングステン合金やステンレス合金等からなることが好適である。そして、各細管部10B内にそれぞれに挿入され、膨出部10Aの発光空間K内において互いの先端同士を対向させ且つ互いに所定間隔(以下、ギャップgと呼ぶこともある)をおいて配置されている。なお、ギャップgはなるべく小さいほうが好ましく、これによって点光源に近い高輝度発光を得ることができる。
【0020】
アンテナ11a,11bは、先端に向かって先鋭形状とされており、これによってマイクロ波の放射指向性が向上し、発光管10の中央部にマイクロ波を集中させることができる。また、低エネルギーのマイクロ波であっても発光物質を効率よく励起させることが可能となる。
【0021】
図3では、アンテナ11a,11bの先端が僅かに発光空間K内に侵入しているが、アンテナ11a,11bの先端は発光空間K内に侵入しなくても構わない。アンテナ11a,11bの先端が発光空間K内に侵入している場合には、発光空間K内に充填された発光物質の種類にもよるが、発光物質との反応によってアンテナ11a,11bの金属が腐食することが考えられるので、その場合には、アンテナ11a,11bの先端を保護膜で被覆しておくことが好ましい。
【0022】
さらに、アンテナ11a,11bの一部を箔状としても良く、例えば、アンテナ11a,11bにモリブデン製の金属箔を接続することが好ましい。これによって、石英ガラスとの熱膨張率差を打ち消すことができ、発光空間K内の気密性を維持することが可能となる。
【0023】
なお、発光管10内におけるアンテナ11a,11bと相互間のギャップgとを含む長さを、ギャップgの中心部においてマイクロ波の電界が強くなるような長さに規定することで、高輝度発光が可能となる。
【0024】
このような構成のマイクロ波励起ランプ32には、所定長さの同軸ケーブル142が接続されている。この同軸ケーブル142は、上記伝送路400を構成する複数の同軸ケーブル42のうちの終端ケーブルである。
【0025】
伝送路400を構成する各同軸ケーブル42は、図3に示す内部導体42Aと、これを覆う外部導体42Bと、さらに内部導体42Aと外部導体42Bとの間に介在する誘電体42C(絶縁体)とから構成されている。例えば、内部導体42A及び外部導体42Bには銅が用いられ、誘電体42Cには、マイクロ波に対して誘電体損失の少ないPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などが用いられる。PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いることにより、誘電体42Cの損失を低く抑えることができる。なお、内部導体42Aを構成する銅線の表面には銀メッキ処理が施されていることが好ましく、これによって少ない損失でマイクロ波を伝送することができる。
【0026】
伝送路400(各同軸ケーブル42)の特性インピーダンスは、内部導体42A及び外部導体42Bの距離と、これらの間に介在する誘電体42Cの比誘電率(絶縁部材の静電容量)との関係により50Ωに保持されている。
【0027】
各同軸ケーブル42の両端には、伝送路400上に設けられるマッチング回路24などの出入力端子に接続するためのコネクタ112がそれぞれ取り付けられている。各コネクタ112は、特性インピーダンスが同軸ケーブル42の特性インピーダンスと同じ50Ωに整合された低損失タイプのものである。
【0028】
そして、伝送路400における終端側の同軸ケーブル142の内部導体42Aが、マイクロ波励起ランプ32のアンテナ11aに接続される。本実施形態の同軸ケーブル142の長さLは、マイクロ波の波長をλgとすると、「λg/2の整数倍」に設定されている。ここで、同軸ケーブル142の長さLというのは、アンテナ11aに接続されるコネクタ112の中心コンタクト部(図示略)を含めた長さのことを言う。
【0029】
このように、マッチング回路24の出力端と、マイクロ波励起ランプのアンテナ11aとを接続する同軸ケーブル142の長さLを「λg/2の整数倍」とすることによって、同軸ケーブル142とマイクロ波励起ランプ32との境界(接続部分)でマイクロ波の電界の振幅が節になるようにすることができる。これにより、同軸ケーブル142における定常波比が下がり、マイクロ波の電力損失(伝送損失)を低下させることができる。
【0030】
ここで、マッチング回路24の出力端からマイクロ波励起ランプ32までの距離Lを「λg/2の整数倍」とする場合、同軸ケーブル142の絶縁材として使用されるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の比誘電率εが2.0であることから、2.45GHzのマイクロ波の同軸ケーブル142(伝送路400)におけるマイクロ波の波長(λg)は、空気中の波長λ「122mm」から次式で求められる。
【0031】
λg=λ/(ε1/2 ・・・(1)
【0032】
式1から、同軸ケーブル142におけるマイクロ波の波長λgは85.4mmとなり、λg/2=42.7mmとなる。したがって、誘電体としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いた同軸ケーブル142の場合、長さL1を42.7mmの整数倍にすることでマッチング回路24とマイクロ波励起ランプ32とを同軸ケーブルを用いることなく直接接続した状態と同じになる。すなわち、同軸ケーブル142におけるマイクロ波の電力損失を抑えることができるので、マッチング回路24において整合された特性インピーダンスの値(50Ω)を維持することが可能となる。その結果、マイクロ波励起ランプ32に対して効率よくマイクロ波電力を供給することができる。
【0033】
図2に示すリフレクタ34は、マイクロ波励起ランプ32が挿入される挿入部34Aと、この挿入部34Aから拡がる方物曲面状の光束反射面34bを有した反射部34Bとを備えたガラス製の一体形成品であり、例えば石英ガラスから構成される。挿入部34Aには、中央に挿入孔34aが形成されており、その挿入孔34a内にマイクロ波励起ランプ32が配置される。光束反射面34bは、マイクロ波を透過するとともに発光管10から入射する光束を反射する誘電体多層膜によって構成されている。また、光束反射面34bの二つの焦点位置の一方と一対のアンテナ11a,11bの中心位置(ギャップgの位置)とが略一致するように構成されていることが好ましい。
なお、光束反射面34bの形状は、収束性の面では方物面形状の曲面を有することが好ましいが、製造簡易性の面では球面形状とする方が有利である。
【0034】
反射器36は、方物曲面状の反射面36aを発光管10の膨出部10Aに向けるとともにリフレクタ34と対向配置されている。この反射器36は、例えば導電性材料である金属部材から構成されるものであって、リフレクタ34よりも小型の反射部材である。反射面36aは、その焦点位置と、発光管10内のアンテナ11a,11b間のギャップgとが略一致するように構成されている。この反射面36aによってマイクロ波を反射する。
【0035】
(マイクロ波電源部)
次に、マイクロ波電源部について説明する。
図1に示すように、高周波信号を出力する固体高周波発振部20(マイクロ波電源)と、反射波強度を検出するパワーモニタ22と、反射波強度から反射率を求めてアンプ29を制御する制御回路21と、信号の流れる方向に制限をつけるサーキュレータ23と、固体高周波発振部20とマイクロ波励起ランプ32との特性インピーダンスのマッチングを行うマッチング回路24とを有して構成され、それぞれが同軸ケーブル42によって接続されている。
【0036】
固体高周波発振部20は、固体高周波発振器である弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)発振器としてのダイヤモンドSAW発振器28と、アンプ29とを有して構成される。
【0037】
電源(不図示)は、駆動信号に基づいて、ダイヤモンドSAW発振器28と、アンプ29とに電力を供給する。ダイヤモンドSAW共振器28は、アンプ29の前段に接続されており、GHz帯の高周波信号を生成するとともに生成した高周波信号をアンプ29に出力する。アンプ29は、入力された高周波信号を増幅した後、光源部300へ出力する。
【0038】
ダイヤモンドSAW発振器28は、移相回路(不図示)によって高周波信号に周波数変調をかけることが可能な周波数可変発振器であり、発光管10に対してマイクロ波周波数を可変及び調整することができる。
【0039】
アンプ29は、ダイヤモンドSAW発振器28から出力された信号を、発光管10内に封入される発光物質を励起して発光させることができる高周波出力レベルに増幅させて、2.45GHz帯の高周波信号を出力することができる。
【0040】
制御回路21は、パワーモニタ22、サーキュレータ23、マッチング回路24を制御することができる。アンプ29、サーキュレータ23及びマッチング回路24の各々は同軸ケーブル42によって接続され、これら複数の同軸ケーブル42から構成される伝送路を介して、ダイヤモンドSAW発振器28から発信されたマイクロ波がマイクロ波励起ランプ32へと伝送される。
マッチング回路24の出力端とマイクロ波励起ランプ32のアンテナ11aとを接続する同軸ケーブル42は伝送路の終端ケーブルであり、上記した本実施形態の同軸ケーブル142である。
【0041】
サーキュレータ23は、アンプ29で増幅された高周波信号を光源部300に供給するとともに、信号の流れる方向に制限をつける機能を有している。アンプ29によって高周波出力レベルに増幅された高周波信号(マイクロ波)は、発光管10内に封入されている発光物質を励起して発光管10を発光させることができる。また、高周波信号を光源部300に供給した結果として、光源部300から反射された反射波(消費されなかった余剰電力)が固体高周波発振部20に戻ることを阻止するためのアイソレータの機能も有しており、アンプ29などの故障を防止している。
【0042】
マッチング回路24は、サーキュレータ23の後段に設けられ、固体高周波発振部20側の特性インピーダンスと光源部300側の特性インピーダンスとの整合を行う。このマッチング回路24により、伝送路400の特性インピーダンスが一定の特性インピーダンス、具体的には50Ωとされ、マイクロ波の伝送損失を抑えている。
【0043】
パワーモニタ22は、サーキュレータ23の電力強度をモニタリングすることによって、光源部300から反射された反射波の反射強度を検出する機能を有している。そして、このパワーモニタ22と制御回路21とが電気的に接続されている。これにより、パワーモニタ22でモニタリングした結果を制御回路21にフィードバックすることができる。
そしてこのフィードバックされたデータに基づいてマッチング回路24を制御することによって、反射波の強度が常に最小になるようにマッチング回路24を調整するフィードバック制御が行われる。
【0044】
これにより、マイクロ波励起ランプ32からの反射波による伝送損失を低減させ、光源装置全体としてのエネルギー効率を向上させることができる。
【0045】
固体高周波発振部20から出力された高周波信号は、伝送路400を介してアンテナ11a,11bへと供給され、アンテナ11a,11bの先端から発光管10内にマイクロ波として放射される。マイクロ波は、アンテナ11a,11bの先端に局所的に集中するため、発光空間K内の発光物質が効率よく励起される。
【0046】
なお、固体高周波発振部20に適用される発振器としては、ダイヤモンドSAW共振子を用いたダイヤモンドSAW発振器に限定されず、誘電体共振子やLC共振子などを用いた発振器であってもよい。また、パワーモニタ22におけるモニタリングの方法は、例えば図示しないショットキーダイオード(SBD)を利用することによって、マイクロ波の電流の大きさを測定して、検出することで可能である。
【0047】
以上のように、上述した第1の実施形態においては、伝送路40上に設けられるマッチング回路24の出力端とマイクロ波励起ランプ32とを接続する同軸ケーブル142の長さを「λg/2の整数倍」とすることによって、同軸ケーブル142とマイクロ波励起ランプ32との境界(接続部分)でマイクロ波の電界の振幅が節になるようにすることができる。これにより、同軸ケーブル142におけるマイクロ波の電力損失(伝送損失)を低下させることができる。同軸ケーブル142の長さが上記条件を満たさない場合には、マイクロ波励起ランプ32からの反射波によってマイクロ波の電力損失が生じて発熱することになるが、本実施形態の構成によればこのような心配が解消され、エネルギー効率の高い光源装置2とすることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図4(a)は本発明の第2の実施形態に係る光源装置の概略構成を示す模式図、図4(b)は第2実施形態に係る光源装置の概略構成を示すブロック図である。
以下の説明では、先の実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
【0049】
本実施形態は、図4(a)に示すようにマイクロ波励起ランプ32の各アンテナ11a,11bに、長さがマイクロ波の半波長(λg/2)の整数倍とされた同軸ケーブル142がそれぞれ接続されており、図4(b)に示す固体高周波発振部20から出力されるマイクロ波を2系統に分配し、マイクロ波励起ランプ32の各アンテナ11a,11bに接続する各伝送路400A,400Bから各アンテナ11a,11bにマイクロ波をそれぞれ供給する構成となっている。これは、例えば固体高周波発振部20にダイヤモンドSAW発振器28から発振されたマイクロ波を2系統に分配する分配器113などをアンプ29の後段に設けることにより可能となる。
【0050】
ダイヤモンドSAW発振器28から発振されたマイクロ波の高周波信号は、アンプ29で増幅された後に分配器において2系統に分配され各伝送路400A,400Bに供給される。そして、固体高周波発振部20から延在する各伝送路400A,400B上には、これら各伝送路400A,400Bとマイクロ波励起ランプ32とのインピーダンス整合を取るためのマッチング回路24がそれぞれ配置されている。
【0051】
また、2系統の伝送ラインのうち片側のみに位相差制御回路114が設けられている。この位相差制御回路114は、各伝送路400A,400Bからマイクロ波励起ランプ32に入力されるマイクロ波の位相差を検出し、その検出した位相差に基づいてマイクロ波励起ランプ32の中心(ギャップgの中央)において、マイクロ波電力の強度が最大となるように位相制御を行う。これにより、各伝送路400A,400Bからマイクロ波励起ランプ32の両アンテナ11a,11bに給電されるマイクロ波の位相差を最適な値に調整することができるので、発光の際のエネルギー効率が高められ発光輝度を容易に調整可能となる。
【0052】
そして、上記実施形態同様、各伝送路400A,400Bの終端となる各同軸ケーブル142の長さLをマイクロ波の半波長λg/2の整数倍としたことから、マッチング回路24において整合された特性インピーダンスの値を維持することができる。
これにより、本実施形態においても上記実施形態と同様に、エネルギー効率の高いマイクロ波励起ランプ32を使用した光源装置70を提供することができる。
【0053】
なお、他の実施例としては、例えば固体高周波発振部20にアンプ29を二つ設け、ダイヤモンドSAW発振器28からのマイクロ波を分配器113によって各アンプに分配するようにしても良い。このように、2系統の伝送路400A,400Bそれぞれに対し、対応するアンプ29からマイクロ波を給電する構成とすることにより、各アンプ29におけるマイクロ波の電力出力が小さくて済むため、安価な小型のアンプを使用することができる。
【0054】
また、マイクロ波電源部200を2つ備え、2系統の伝送路400A,400Bそれぞれに対し、対応する各マイクロ波電源部200の固体高周波発振部20からマイクロ波電力を供給するとしてもよい。この構成においても、各固体高周波発振部20におけるマイクロ波の電力出力が少なくて済むため、安価な固体高周波発振部20を使用することができる。
【0055】
(プロジェクタ)
次に、以上のようにして構成された光源装置が組み込まれたプロジェクタについて説明する。図5は、プロジェクタの光学系における構成部の構造を示す模式図である。
【0056】
図5に示すプロジェクタ100は、光源装置2(70)を備え、該光源装置2(70)から出射された出射光の照度分布を均一化して、液晶パネル(光変調部)の画像形成領域を均一に照明するための照明光学系130と、この照明光学系130から出射される光束Wを、赤、緑、青の各色光束R、G、Bに分離すると共に赤色光束Rおよび緑色光束Gをそれぞれ対応する液晶パネルに導く色光分離光学系140と、色光分離光学系140によって分離された各色光束のうち、光路の長い青色光束Bを対応する液晶パネルに導くリレー光学系150と、各色光束を与えられた画像情報に従って変調する光変調部としての液晶パネル160a、160b、160c(特に区別しない場合は160と符号を付す)と、変調された各色光束を合成するクロスダイクロイックプリズム170と、合成された光束を投射面180上に拡大投射する投射レンズ190とを備えている。
【0057】
照明光学系130は、光源装置2(70)の他に第一レンズアレイ131と、第二レンズアレイ132と、偏光変換素子133と、重畳レンズ134とを備えており、光源装置2(70)から発せられた光を第一レンズアレイ131によって複数の部分光束に分割し、その部分光束のそれぞれを第二レンズアレイ132および偏光変換素子133を介して重畳レンズ134に入射させ、入射された複数の部分光束のそれぞれを、重畳レンズ134によって液晶パネル160上に重畳して照射するもので、このように重畳照明することにより液晶パネル160を均一に照明するようにしている。
【0058】
色光分離光学系140は、青緑反射ダイクロイックミラー141と緑反射ダイクロイックミラー142と、反射鏡143とを備えている。青緑反射ダイクロイックミラー141は、照明光学系130からの照明光の赤色光成分を透過させるとともに、青色光成分と緑色成分とを反射する。透過した赤色光束Rは、反射鏡43で反射されて、液晶パネル160aに達する。一方、青緑反射ダイクロイックミラー141で反射された青色光束Bと緑色光束Gのうち、緑色光束Gは緑反射ダイクロイックミラー142によって反射され、液晶パネル160bに達する。一方、青色光束Bは、緑反射ダイクロイックミラー142も透過してリレー光学系150へと入射する。
【0059】
リレー光学系150は、青色光束Bを対応する液晶パネル160cに導く光路中に設けられ、青色光束Bをその強度を維持したまま液晶パネル160cまで導くものであり、第二リレーレンズ152に集光する第一リレーレンズ151と、第二リレーレンズ152と、コンデンサーレンズ153と、反射鏡154、155とを備えている。
【0060】
3枚の液晶パネル160は、入射した光を、与えられた画像情報(画像信号)に従ってそれぞれの色光を変調し、それぞれの色成分の画像を形成する光変調手段としての機能を有するもので、いわゆる電気光源装置に相当するものである。なお、これら3つの液晶パネル160の入射側と出射側には図示しない偏光板が設けられており、所定の偏光光のみが液晶パネル160の入射側の偏光板を透過し、変調される。
【0061】
変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム170に入射して合成され、合成された光は投射レンズ190(投射部)によって投射面180上に投射される。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
また、本実施形態では同軸ケーブル42を用いているが、これに限らず、ストリップ線路やマイクロストリップ線路、導波管など様々な伝送線路を用いることができる。この際、マイクロ波電源部と伝送路の特性インピーダンスを整合させることが重要である。
【0064】
また、上記実施形態でのプロジェクタ100は、光変調部として液晶パネルを用いている。しかし、これに限らず、一般に、入射光を画像情報に応じて変調するものであればよく、マイクロミラー型光変調装置などを使用しても良い。なお、マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(Digital Micro mirror Device)(登録商標)を用いることができる。なお、マイクロミラー型光変調装置を用いた場合には、入射偏光板や射出偏光板などは不要とすることができ、偏光変換素子も不要とすることができる。
【0065】
上記実施形態での光源装置2,70は、透過型液晶方式のプロジェクタ100に用いられている。しかし、これに限らず、反射型液晶方式であるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)方式などを採用したプロジェクタに用いられても同様の効果を奏することが可能である。
【0066】
上記実施形態での光変調部は、液晶パネルを3枚使用する3板方式であっても、液晶パネルを1枚使用する単板方式を用いても良い。なお、単板方式を用いた場合には、照明光学系の色分離光学系や色合成光学系などは不要とすることができる。
【0067】
上記実施形態での光源装置2,70は、外部に設置される投射面180に光学像の投射を行うフロントタイプのプロジェクタに適用している。しかし、これに限らず、プロジェクタの内部にスクリーンを有して、そのスクリーンに光学像を投射するリアタイプのプロジェクタにも適用可能である。
【0068】
上記実施形態でのプロジェクタ100に電圧調整部を設け、固体高周波発振部20のアンプ29の増幅度を可変とすることでも良い。このような構成にすることで、マイクロ波の出力パワーを可変できるため、発光管10で発光する光束の輝度を可変できる。従って、投射する映像のシーン(例えば、明るいシーンや暗いシーン)に合わせて、増幅度を調整することにより、プロジェクタ100から投射される映像光の輝度を映像のシーンに合わせて調整を行うことができる。
【0069】
上記実施形態での光源装置2,70は、固体高周波発振部20で2.45GHz帯の高周波信号を出力し、アンテナ11a,11bからマイクロ波として放射している。しかし、これに限らず、弾性表面波共振子の構成を適宜変更することにより、色々な高周波信号を出力し、マイクロ波として放射して、発光管10を発光させることも可能となる。また、このようにすることで、発光管10に封入する発光物質の種類や発光具合(発光色の具合)に合わせるマイクロ波を放射させることも可能となる。
【0070】
上記実施形態での光源装置2,70は、プロジェクタの光源として適用している。しかし、これに限らず、小型軽量の光源装置は、他の光学機器に適用しても良い。また、航空、船舶、車輌などの照明機器や、屋内照明機器などへも好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光源装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光源装置の概略構成を示す模式図。
【図3】光源装置の要部を示す模式図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る光源装置の構成を示す模式図(a)及びブロック図(b)。
【図5】プロジェクタの光学系における構成部の構造を示す模式図。
【符号の説明】
【0072】
2…光源装置(第1の実施形態)、10…発光管、11a,11b…アンテナ、20…固体高周波発振器(マイクロ波電源)、24…マッチング回路、32…マイクロ波励起ランプ、42…同軸ケーブル(同軸線路)、142…終端側の同軸ケーブル、42A…内部導体、42B…外部導体、200…マイクロ波電源部、300…光源部、400…伝送路、70…光源装置(第2の実施形態)、100…プロジェクタ、160a,160b,160c…液晶パネル(光変調部)、190…投射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、
マイクロ波の照射を受けて発光するマイクロ波励起ランプと、
前記マイクロ波電源と前記マイクロ波励起ランプとを接続する伝送線路と、
前記伝送線路上に設けられたマッチング回路と、を備え、
前記マッチング回路から前記マイクロ波励起ランプまでの前記伝送線路の距離が、マイクロ波の波長の1/2の整数倍であることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記マイクロ波励起ランプは、マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光管と、該発光管内で一端が所定間隔をおいて配置された一対のアンテナとを有し、
前記一対のアンテナの一方に前記伝送線路が接続されている、
ことを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
前記マイクロ波励起ランプは、マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光管と、該発光管内で一端が所定間隔をおいて配置された一対のアンテナとを有し、
前記一対のアンテナにはそれぞれ前記伝送線路が接続され、
前記いずれかの伝送線路上に前記マッチング回路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、
前記光変調部により形成された前記光学像を投射する投射部と、を備えることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−181734(P2009−181734A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17876(P2008−17876)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】