説明

光源装置及び放電灯の駆動方法

【課題】放電灯の黒化を防止し、長寿命化を図ることができるとともに、電極に突起を安定して形成することができ、放電灯を効率良く駆動することができる光源装置及び放電灯の駆動方法を提供する。
【解決手段】光源装置1は、一対の電極610、710を有する放電灯500と、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調する振幅変調部を有し、振幅変調部により振幅変調した交流電流を駆動電流として一対の電極610、710に供給し、放電灯500を点灯する放電灯駆動装置とを備えている。振幅変調部は、その振幅変調波形の包絡線が低電流から高電流へと次第に増加していく三角波のように交流電流を振幅変調し、三角波の一周期分の波形を最小電流から最大電流へと直線的に増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及び放電灯の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの光源として、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電灯(放電ランプ)が使用されている。このような放電灯は、例えば、高周波数の交流電流を駆動電流として供給する駆動方法により駆動される。この駆動方法によれば、放電の安定性が得られ、放電灯本体の黒化や失透等を防止することができ、放電灯の寿命の低下を抑制することができる(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、低周波数で、波形が矩形状をなす交流電流(直流交番電流)を駆動電流として供給する駆動方法もある。この駆動方法によれば、放電灯が点灯している際、一対の電極の先端部に突起が形成され、これにより、電極間が狭い状態を維持することができる。(例えば特許文献2)しかしながら、放電灯本体の黒化や失透等が生じ、放電灯の寿命が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−115534号公報
【特許文献2】特開2010−114064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高周波数の交流電流を駆動電流として供給する駆動方法により駆動される方法によれば、放電の安定性が得られ、放電灯本体の黒化や失透等を防止することができ、放電灯の寿命の低下を抑制することができる。しかし、高周波数の交流電流を駆動電流として供給する駆動方法の場合、放電灯が点灯している際は一対の電極間にアーク放電が生じている。これにより、電極が高温になっているので、電極が溶融して電極間の距離が広がってくる。
【0006】
例えば、プロジェクターの用途では光の利用効率を向上させるために電極間が狭い状態を維持し、発光の大きさを小さくすることが好ましい。点灯中に電極間の距離が広がることは光の利用効率を低下させることになり、好ましくない。また、電極間の距離の変化は電極間のインピーダンスを変化させる。このため、点灯初期では効率良く放電灯を点灯することができていても、時間が経過するとインピーダンス不整合を生じる。その結果、無効電力が増加し効率が低下するという問題がある。
【0007】
一方、低周波数で波形が矩形状をなす交流電流(直流交番電流)を駆動電流として供給する駆動方法の場合では放電灯本体の黒化や失透等が生じ、放電灯の寿命が低下するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、放電灯の黒化を防止し、長寿命化を図ることができるとともに、電極に突起を安定して形成することができ、放電灯を効率良く駆動することができる光源装置及び放電灯の駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[適用例1]本適用例にかかる光源装置は、突起を有する一対の電極を備えた放電灯と、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調し振幅変調波を形成する振幅変調部を有し、前記振幅変調波を駆動電流として前記一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯する放電灯駆動部と、を備え、前記振幅変調波の包絡線の波形は三角波のように低電流から高電流へと次第に増加する周期波形であり、前記三角波の一周期が終わる直前に前記駆動電流の振幅が最大となることを特徴とする。
【0010】
本適用例によれば、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流であるため、放電灯の黒化が防止される。これによって、光源装置は、長寿命化図ることができる。また、振幅変調部は交流電流を振幅変調して振幅変調波を形成する。放電灯駆動部は振幅変調波を駆動電流として一対の電極に供給し、放電灯を点灯する。
【0011】
振幅変調波の包絡線の波形は三角波のように低電流から高電流へと次第に増加する周期波形であり、前記三角波の一周期が終わる直前に駆動電流の振幅が最大となる。従って、周期波形の区切りでは電流が最大から最小へ切り替わる。
【0012】
振幅変調波が最小電流から最大電流へと直線的に増加することにより、最大電流時に電極部分の突起が融点以上となって突起が融ける。その直後にくる最小電流時に融点以下の温度に下がるため、融けた突起が固まる。それにより電極に突起が安定して形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0013】
従って、放電灯の黒化を防止し、長寿命化を図ることができ、また、電極に突起が安定して形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯を効率良く駆動することができる光源装置を提供することができる。
【0014】
[適用例2]上記適用例に記載の光源装置において、前記振幅変調波の平均電流をAavg、最小振幅電流をAmin、最大振幅電流をAmaxとしたとき、前記振幅変調波の電流は0<Amin<Aavg<Amax<2Aavgに設定されていることが好ましい。
【0015】
本適用例によれば、振幅変調波の電流は0<Amin<Aavg<Amax<2Aavgに設定されている。このとき、高電流により突起が融けすぎずに、電極に突起をより確実に安定して形成することができる。従って、放電灯の点灯時のちらつきが防止され、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0016】
[適用例3]上記適用例に記載の光源装置において、前記振幅変調波の変調周波数は10Hz以上1000Hz以下であることが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、変調周波数は10Hz以上1000Hz以下に設定されている。変調周波数がこの範囲にあるとき、電極に突起をより確実に安定して形成することができる。
【0018】
[適用例4]上記適用例に記載の光源装置において、前記交流電流の周波数は、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることが好ましい。
【0019】
本適用例によれば、交流電流の周波数は、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下に設定されている。従って、音響共鳴効果による放電が不安定になることを防止できる。その結果、放電灯のちらつきを防止することができる。
【0020】
[適用例5]上記適用例に記載の光源装置において、前記駆動電流の供給により前記放電灯が点灯している際、前記一対の電極の温度が変動し、前記一対の電極の前記突起は溶融と固化とを繰り返すことが好ましい。
【0021】
本適用例によれば、駆動電流の供給により前記放電灯が点灯している際、一対の電極の温度が変動し、一対の電極の突起は溶融と固化とを繰り返している。従って、突起は同じ形状を維持することができる為、電極間距離を一定の距離に保持することができる。その結果、放電灯を効率良い状態に維持させて駆動することができる。
【0022】
[適用例6]上記適用例に記載の光源装置において、前記放電灯は、前記一対の電極が収納された放電空間を有する放電灯本体を備え、前記放電空間にはガスが封入されていることが好ましい。
【0023】
本適用例によれば、前記放電灯は、前記一対の電極が収納された放電空間を有する放電灯本体を備え、前記放電空間にガスが封入されている。従って、放電灯はガスを発光させて明るくすることができる。その結果、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0024】
[適用例7]本適用例にかかる放電灯の駆動方法は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調した振幅変調波を駆動電流として放電灯の一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯する放電灯の駆動方法であって、前記振幅変調波の包絡線の波形は三角波のように低電流から高電流へと次第に増加する周期波形であり、前記三角波の一周期が終わる直前に前記駆動電流の振幅が最大となることを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、交流電流を振幅変調し、振幅変調した振幅変調波を駆動電流として前記一対の電極に供給している。交流電流は周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流であるため、放電灯の黒化が防止される。これによって、長寿命化図ることができる。
【0026】
また、振幅変調波の包絡線の波形は三角波のように低電流から高電流へと次第に増加する周期波形であり、三角波の一周期が終わる直前に前記駆動電流の振幅が最大となっている。従って、周期波形の区切りでは電流が最大から最小へ切り替わる。
【0027】
振幅変調波の一周期分の波形は最小電流から最大電流へと次第に増加する。これにより、最大電流時に電極部分の突起が融点以上となって突起が融け、その直後にくる最小電流時に融点以下の温度に下がるため、融けた突起が固まる。それにより電極に突起が安定して形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0028】
従って、放電灯の黒化を防止し、長寿命化を図ることができる。また、電極に突起が安定して形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができる。従って、放電灯を効率良く駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態にかかり光源装置の構成を示す模式断面図。
【図2】放電灯を示す要部模式断面図、副反射鏡を省略した図。
【図3】放電灯駆動装置の構成を示すブロック図。
【図4】放電灯駆動装置で生成される交流電流及び駆動電流を説明するための図。
【図5】第2実施形態にかかり放電灯駆動装置で生成される交流電流及び駆動電流を説明するための図。
【図6】第3実施形態にかかり放電灯駆動装置で生成される交流電流及び駆動電流を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、光源装置及び放電灯の駆動方法を図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。尚、以下の各図においては、各部位や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部位や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、光源装置の構成を示す模式断面図である。図2は、放電灯を示す要部模式断面図であり、副反射鏡を省略した図である。図3は、放電灯駆動装置の構成を示すブロック図であり、図4は、放電灯駆動装置で生成される交流電流及び駆動電流を説明するための図である。
【0032】
図1に示すように、光源装置1は、放電灯500を有する光源ユニット110と、放電灯500を駆動する放電灯駆動部としての放電灯駆動装置200とを備えている。放電灯500は、放電灯駆動装置200から電力の供給を受けて放電し、光を放射する。
【0033】
光源ユニット110は、放電灯500と、凹状の反射面を有する主反射鏡112と、射出光をほぼ並行光にする平行化レンズ114とを備えている。主反射鏡112と放電灯500とは、無機接着剤116を用いて固定されている。また、主反射鏡112の反射面は、図示の構成では、回転楕円形をなす殻の内面形状をなしている。
【0034】
尚、主反射鏡112の反射面の形状は、前記の形状には限定されず、その他、例えば、回転放物形等が挙げられる。また、放電灯500の発光部を放物面鏡のいわゆる焦点に配置すれば、平行化レンズ114を省略することができる。
【0035】
放電灯500は、放電灯本体510と、凹状の反射面を有する副反射鏡520とを備えている。放電灯本体510と副反射鏡520とは、無機接着剤522により接着されている。また、図示の構成では球形をなす殻の内面が副反射鏡520の反射面となっている。
【0036】
放電灯本体510の中央部には、気密的に密閉された放電空間512が形成されている。この放電灯本体510の少なくとも放電空間512に対応する部位は、光透過性を有している。放電灯本体510の構成材料としては、例えば、石英ガラス等のガラス、光透過性セラミックス等が挙げられる。
【0037】
この放電灯本体510には、一対の電極610、710と、一対の接続部材620、720と、一対の電極端子630、730とが設けられている。電極610と電極端子630とは、接続部材620により電気的に接続されている。同様に、電極710と電極端子730とは、接続部材720により電気的に接続されている。
【0038】
各電極610、710は、放電空間512に収納されている。すなわち、各電極610、710は、その先端部が放電灯本体510の放電空間512において、互いに所定距離離間し、互いに対向するように配置されている。電極610と電極710との間の最短距離である電極間距離は、1μm以上5mm以下であることが好ましく、500μm以上1.5mm以下であることがより好ましい。
【0039】
図2に示すように、電極610は、芯棒612と、コイル部614と、本体部616とを有している。この電極610には芯棒612に電極材(タングステン等)の線材を巻き付けたコイル部614が形成されている。そして、放電灯本体510内への封入前の段階において、形成されたコイル部614が加熱されて芯棒612を溶融することにより本体部616が形成される。これにより、電極610の先端側には、熱容量が大きい本体部616が形成される。電極710も前記電極610と同様に、芯棒712と、コイル部714と、本体部716とを有しており、電極610と同様に形成される。
【0040】
放電灯500を1度も点灯させていない状態では、本体部616、716には、突起618、718は形成されていないが、後述する条件で放電灯500を1度でも点灯させると、本体部616、716の先端部に、それぞれ突起618、718が形成される。この突起618、718は、放電灯500の点灯中、維持され、また、消灯後も維持される。尚、各電極610、710の構成材料としては、例えば、タングステン等の高融点金属材料等が挙げられる。
【0041】
また、放電空間512には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、例えば、放電開始用ガス、発光に寄与するガス等を含んでいる。また、放電媒体には、その他のガスが含まれていてもよい。放電開始用ガスとしては、例えば、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス等が挙げられる。また、発光に寄与するガスとしては、例えば、水銀、ハロゲン化金属の気化物等が挙げられる。また、その他のガスとしては、例えば、黒化を防止する機能を有するガス等が挙げられる。黒化を防止する機能を有するガスとしては、例えば、ハロゲン(例えば、臭素等)、ハロゲン化合物(例えば、臭化水素等)、またはこれらの気化物等が挙げられる。また、放電灯本体510内の気圧は、0.1atm以上300atm以下であることが好ましく、50atm以上300atm以下であることがより好ましい。
【0042】
放電灯500の電極端子630、730は、それぞれ放電灯駆動装置200の出力端子に接続されている。そして、放電灯駆動装置200は、放電灯500に交流電流(交流電力)を供給する。すなわち、放電灯駆動装置200は、電極端子630、730を介して電極610、710に交流電流を供給することにより放電灯500に電力を供給する。電極610、710に交流電流が供給されると、放電空間512内の一対の電極610、710の先端部の間でアーク放電(アークAR)が生じる。アーク放電により発生した光(放電光)は、そのアークARの発生位置(放電位置)から全方向に向かって放射される。
【0043】
副反射鏡520は、一方の電極710の方向に放射される光を、主反射鏡112に向かって反射する。このように、電極710の方向に放射される光を主反射鏡112に向かって反射することにより、電極710の方向に放射される光を有効に利用することができる。
【0044】
次に、放電灯駆動装置200について説明する。図3に示すように、放電灯駆動装置200は、高周波数の交流電流を発生する高周波電流発生器31と、振幅変調器(振幅変調部)32と、増幅器33とを備えており、振幅変調した交流電流を駆動電流として放電灯500の一対の電極610、710に供給する装置である。
【0045】
この放電灯駆動装置200では、高周波電流発生器31で発生した図4(a)に示す交流電流34を、図4(b)及び、その詳細図(c)に示すように駆動電流が最も小さいAminと駆動電流が最も大きなAmaxによって構成される三角波のように形成された包絡線35が、周期T(Hz)の間で繰り返されるように振幅変調部としての振幅変調器32で振幅変調する。振幅変調された振幅変調波36の包絡線35の波形は三角波のように低電流から高電流へと次第に増加する周期波形であり、包絡線35の波形の一周期が終わる直前に前記駆動電流の振幅が最大となる。そして、その交流電流を増幅器33で増幅して放電灯駆動用の駆動電流である交流電流を生成し、出力する。放電灯駆動装置200から出力された交流電流は、駆動電流として放電灯500の一対の電極610、710に供給される。
【0046】
これにより、前述したように、一対の電極610、710の先端部の間でアーク放電が生じ、放電灯500が点灯する。ここで、この光源装置1では、後述する条件の駆動電流を用いて放電灯500を点灯するので、その放電灯500が点灯している際、電極610、710の温度が変動し、その変動により、電極610、710の先端部に、それぞれ突起618、718が形成され、その突起618、718を維持することができる。
【0047】
すなわち、まず駆動電流のAmaxでは電極610、710の温度が高くなることで、電極610、710の先端部の一部が、溶融し、その溶融した電極材が表面張力によって電極610、710の先端部に集まる。一方、Aminでは電極610、710の温度が低くなることで、前記溶融した電極材が凝固する。このような溶融した電極材が電極610、710の先端部に集まる状態と、前記溶融した電極材が凝固する状態とを繰り返すことで突起618、718の成長が起こり、これにより、電極間距離を一定の距離に保持することができ、電極間が狭い状態を維持することができる。これにより、放電灯を効率良く駆動することができる。また、高周波数の駆動電流を用いるので、放電灯500の黒化を防止でき、長寿命化を図ることができる。
【0048】
ここで、放電灯500の定格電力は、用途等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、10W以上5kW以下であることが好ましく、100W以上500W以下であることがより好ましい。
【0049】
また、駆動電流の周波数は、1kHz以上10GHz以下であり、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることが好ましく、1kHz以上20kHz以下、または、3MHz以上3GHz以下であることがより好ましい。
【0050】
電極610、710が陽極として動作するときは、それぞれ、陰極として動作するときに比べて電極温度が高くなるが、駆動電流の周波数を前記下限値以上に設定することにより、その駆動電流の1周期内における電極温度の変動を防止することができる。しかし、駆動電流の周波数が前記下限値よりも小さいと、その駆動電流の1周期毎に、電極610、710の温度が変動し、これにより突起618、718の形成や維持ができなくなり、また、黒化が生じる場合がある。また、前記上限値よりも大きいものは現実性がない。
【0051】
また、駆動電流の周波数が100kHzよりも大きく、3MHzよりも小さいと、他の条件によっては、音響共鳴効果により放電が不安定となる。また、変調周波数は、10Hz以上1kHz以下であり、50Hz以上800Hz以下であることが好ましく、150Hz以上400Hz以下であることがより好ましい。変調周波数が前記下限値よりも小さいと、突起618、718がだれてしまい、また、前記上限値よりも大きいと、突起618、718が形成されない。
【0052】
さて、前述したように、放電灯駆動装置200では、高周波電流発生器31で発生した図4(a)に示す交流電流を、図4(b)及びその詳細図(c)に示すように、駆動電流が最も小さいAminと駆動電流が最も大きなAmaxによって構成される包絡線35が、周期T(Hz)の間で繰り返されるように振幅変調器32で振幅変調している。
【0053】
そして、振幅変調は放電灯500に投入する平均電流をAavg、最小振幅電流をAmin、最大振幅電力をAmaxの関係は0<Amin<Aavg<Amax<2Aavgであることが好ましい。Amin及びAmaxが前記範囲より外れると、他の条件によっては突起618、718が形成されない。Aminが0である場合、電極に与える温度変動が大きすぎるため黒化が発生してしまい、Amaxが2Aavg以上の場合、突起が融けすぎてしまい突起が形成されない。
【0054】
このように駆動電流が振幅変調されていることにより、電極610、710の温度が変動し、電極610、710の突起618、718は溶融と固化とを繰り返す。そして、電極610、710に突起618、718をより確実に安定して形成することができ、電極間距離を一定の距離に確実に保持することができる。これにより、放電灯500内でのアークARの位置も安定することとなり、よって、放電灯500の点灯時のちらつきが防止され、放電灯500を効率良く駆動することができる。また、放電灯500の黒化も防止され、長寿命化を図ることができる。
【0055】
また、変調周波数は、AmaxとAminとの比Amin/Amaxと、定格電力等に応じて設定することが好ましい。これにより、より確実に電極610、710に突起618、718を形成することができる。すなわち、まずは、Amin/Amaxが70%より大きく90%以下の場合は、変調周波数は、定格電力に応じて下記のように設定することが好ましい。
【0056】
定格電力が100W以上150W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上400Hz以下であることが好ましい。また、定格電力が150W以上250W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上300Hz以下であることが好ましい。また、定格電力が200W以上300W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上250Hz以下であることが好ましい。また、定格電力が300W以上400W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上200Hz以下であることが好ましい。
【0057】
また、Amin/Amaxが40%より大きく70%以下の場合は、変調周波数は、定格電力に応じて下記のように設定することが好ましい。定格電力が100W以上150W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上500Hz以下であることが好ましい。また、定格電力が150W以上250W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上400Hz以下であることが好ましい。また、定格電力が200W以上300W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上300Hz以下であることが好ましい。また、定格電力が300W以上400W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上200Hz以下であることが好ましい。
【0058】
また、Amin/Amaxが0%より大きく40%以下の場合は、変調周波数は、定格電力に応じて下記のように設定することが好ましい。定格電力が100W以上150W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上700Hz以下であることが好ましい。また、定格電力が150W以上250W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上500Hz以下であることが好ましい。また、定格電力が200W以上300W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上400Hz以下であることが好ましい。また、定格電力が300W以上400W未満の場合は、変調周波数は、100Hz以上300Hz以下であることが好ましい。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、振幅変調器32が周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流34を振幅変調する。そして、増幅器33が、振幅変調器32により振幅変調した振幅変調波36を駆動電流として電極610、710に供給し、放電灯500を点灯する。振幅変調器32は、振幅変調波36の包絡線35が低電流から高電流へと次第に増加していく三角波のように交流電流34を振幅変調する。そして、包絡線35の一周期分の波形は最小電流から最大電流へと直線的に増加することで、放電灯500の黒化を防止し、長寿命化を図ることができる。また、電極610、710に突起618、718が安定して形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができる。従って、放電灯500を効率良く駆動する状態を長期に渡って維持ことができる。
【0060】
(2)本実施形態によれば、振幅変調波36の電流は0<Amin<Aavg<Amax<2Aavgに設定している。これにより、高電流により突起が融けすぎずに、電極に突起をより確実に安定して形成することができる。従って、放電灯500の点灯時のちらつきが防止され、放電灯500を品質良く駆動させることができる。
【0061】
(3)本実施形態によれば、包絡線35の周波数は10Hz以上1000Hz以下に設定している。従って、電極610、710に突起618、718をより確実に安定して形成することができる。
【0062】
(4)本実施形態によれば、交流電流34の周波数は、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下に設定している。従って、音響共鳴効果による放電が不安定になることを防止することができる。その結果、放電灯500のちらつきを防止することができる。
【0063】
(5)本実施形態によれば、駆動電流の供給により放電灯500が点灯している際、電極610、710の温度が変動し、電極610、710の先端に突起618、718が形成される。従って、電極間距離を一定の距離に保持することができる為、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0064】
(6)本実施形態によれば、放電灯500は、電極610、710が収納された放電空間を有する放電灯本体510を備え、放電空間512にガスが封入されている。従って、放電灯500を明るくすることができる。その結果、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0065】
(7)本実施形態によれば、振幅変調波36の周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流であるため、放電灯500の黒化が防止される。その結果、長寿命化を図ることができる。また、振幅変調器32は、包絡線35が低電流から高電流へと次第に増加していく三角波ように交流電流34を振幅変調し、包絡線35の一周期分の波形は最小電流から最大電流へと直線的に増加している。これにより、最大電流時に電極610、710の突起618、718が融点以上となって融け、その直後にくる最小電流時に融点以下の温度に下がる。このため、融けた突起618、718が固まる。それにより電極610、710に突起618、718が安定して形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができる。その結果、放電灯500を効率良く駆動することができる。放電灯500の黒化を防止し、長寿命化を図ることができ、また、電極610、710に突起が安定して形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0066】
(第2実施形態)
図5は、放電灯駆動装置で生成される交流電流及び駆動電流を説明するための図である。以下、この図を参照して本発明の光源装置及び放電灯の駆動方法について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。本実施形態は、放電灯駆動装置での振幅変調の態様が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0067】
放電灯駆動装置200では、高周波電流発生器31で発生した図5(a)に示す交流電流34を、振幅変調器32が変調する。図5(b)に示すように、その振幅変調波の包絡線37は電流振幅の平らな低電流区間aと、低電流から高電流へと次第に増加していく三角波のように単純増加する波形となっている。また振幅変調波の包絡線37は最小電流区間から始まり、最小電流から最大電流へと直線的に増加させることを一周期分の波形とする周期波形となっている。
【0068】
一周期において、増加する電流の傾きは時間とともに増加もしくは同じであることが望ましい。電流が時間とともに増加せずに低くなったり高くなったりを繰り返すと、電極に与える温度変動が大きくなりすぎ、黒化を発生させてしまう。このような電流増加の傾きを持たせることで、実施形態1と同様の効果を発揮することが可能である。
【0069】
(第3実施形態)
図6は、放電灯駆動装置で生成される交流電流及び駆動電流を説明するための図である。以下、この図を参照して本発明の光源装置及び放電灯の駆動方法について説明する。前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。本実施形態は、放電灯駆動装置での振幅変調の態様が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0070】
放電灯駆動装置200では、高周波電流発生器31で発生した図5(a)に示す交流電流34を、振幅変調器32が変調する。図6(b)に示すように、その振幅変調波の包絡線38はAminとAmaxの間で複数の傾きを持った直線で電流値が増加する波形となっている。また振幅変調波の包絡線38は最小電流から最大電流へと直線的に増加させることを一周期分の波形とする周期波形となっている。
【0071】
一周期において、増加する電流の傾きは時間とともに増加することが望ましい。電流が時間とともに増加せずに低くなったり高くなったりを繰り返すと、電極に与える温度変動が大きくなりすぎ、黒化を発生させてしまう。このような電流増加の傾きを持たせることで、実施形態1と同様の効果を発揮することが可能である。
【0072】
以上、本発明の光源装置及び放電灯の駆動方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示され、下記の構成の光源装置を作成した。
放電灯本体の構成材料:石英ガラス
放電灯本体内の封入物:アルゴン、水銀、臭素メチル
放電灯本体内の点灯時の気圧:200atm
電極の構成材料:タングステン
電極間距離:1.1mm
定格電力:200W(初期電流値3A)
駆動電流の周波数:5kHz
変調周波数T:300Hz
最大電流Amax:3.3A
最小電流Amin:2.7A
(実施例2〜6)
変調周波数を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
変調周波数を50Hz、150Hz、500Hz、750Hz、900Hzに設定したものを、それぞれ、実施例2〜6とした。
(実施例7〜8)
min/Amaxを下記のように変更した以外は前記実施例1と同様の光源装置を作成した。Amin/Amaxを50%、20%に設定したものをそれぞれ実施例7〜8とした。
(比較例1)
振幅変調を行わない以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
(比較例2)
駆動電流として、周波数が150Hz、デューティー比が50%であり、波形が矩形状をなす交流電流(直流交番電流)を用いた以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
(比較例3)
変調周波数を5Hzに変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
(比較例4)
変調周波数を2000Hzに変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
(比較例5)
min/Amaxを0%にした以外は前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
(比較例6)
min/Amaxを94%にした以外は前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
[評価]
実施例1〜8、比較例1〜6に対し、それぞれ、下記のようにして各評価を行った。その結果は、下記表1に示す通りである。
(突起)
点灯開始から500hにおける電極間距離の変動を観察した。
判定は、極間距離に変動がまったくなければ◎、ごく若干(1%以内)の変動であれば○、若干(10%以内)の変動であれば△、それ以上であれば×とした。
(耐黒化性)
点灯開始から500h直後に電力の供給を停止し、そのときのランプの赤熱状態を観察した。判定は管壁での赤熱がなければ○、あれば×とした。
【0074】
【表1】

【0075】
上記表1から明らかなように、実施例1〜8では、電極の先端に確実に突起が形成され、また、黒化は発生せず、良好な結果が得られた。また、最大電流Amax、最小電流Aminを前記数値範囲を満足する範囲内で変更しても同様の結果が得られた。また、図5、6に示すような制御を行なっても同様の結果が得られた。
【0076】
これに対し、比較例1では、電極に突起が形成されず、また、比較例2では黒化が生じた。また、比較例3では、電極に形成された突起がだれてしまった。また、比較例4では、電極に突起が形成されなかった。また、比較例5では、黒化が生じるとともに電極に突起も形成されなかった。また、比較例6では、電極に突起が形成されなかった。
【符号の説明】
【0077】
1…光源装置、32…振幅変調部としての振幅変調器、34…交流電流、35…包絡線、36…振幅変調波、200…放電灯駆動部としての放電灯駆動装置、500…放電灯、610,710…電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起を有する一対の電極を備えた放電灯と、
周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調し振幅変調波を形成する振幅変調部を有し、前記振幅変調波を駆動電流として前記一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯する放電灯駆動部と、を備え、
前記振幅変調波の包絡線の波形は三角波のように低電流から高電流へと次第に増加する周期波形であり、前記三角波の一周期が終わる直前に前記駆動電流の振幅が最大となることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記振幅変調波の平均電流をAavg、最小振幅電流をAmin、最大振幅電流をAmaxとしたとき、
前記振幅変調波の電流は0<Amin<Aavg<Amax<2Aavgに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記振幅変調波の変調周波数は10Hz以上1000Hz以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記交流電流の周波数は、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記駆動電流の供給により前記放電灯が点灯している際、前記一対の電極の温度が変動し、前記一対の電極の前記突起は溶融と固化とを繰り返すことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記放電灯は、前記一対の電極が収納された放電空間を有する放電灯本体を備え、
前記放電空間にはガスが封入されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調した振幅変調波を駆動電流として放電灯の一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯する放電灯の駆動方法であって、
前記振幅変調波の包絡線の波形は三角波のように低電流から高電流へと次第に増加する周期波形であり、前記三角波の一周期が終わる直前に前記駆動電流の振幅が最大となることを特徴とする放電灯の駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−256562(P2012−256562A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129876(P2011−129876)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】