説明

光照射装置及び光照射治療・予防装置

【課題】本発明は一つの発光部で複数の照射面を有する構成とすることができる光照射装置及び光照射治療・予防装置を得る。
【解決手段】本発明の光照射装置1は、光を放射する発光部2と、該発光部2からの放射光を反射する反射部3と、該反射部3からの反射光を被写体に導光する導光部4とを備え、導光部4は、第1及び第2の導光面12,18を有し、反射部3は、第1の導光面12に放射光の一部を反射する第1の反射部16と、第2の導光面18に入射光を反射する第2の反射部19と、該第2の反射部19に放射光の他の一部を前記入射光として反射する第3の反射部20とを有し、該第3の反射部20は、発光部2に対して傾斜するよう配置され、且つ、発光部2に近づくほど放射光の透過量が増加する透過部27,…を有する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体に光を均一に照射可能な光照射装置及び光照射治療・予防装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被写体を照射するための光照射装置として、様々なものが提案されている。その光照射装置の中に、一様に配置され且つ面状に広がりのある被写体に対応すべく、面状の導光部材を有する光照射装置がある。
【0003】
このような照射部材を有する光照射装置の例として、省エネルギーや省スペース、小型化などの要求に応じた自動販売機用照明器具がある(特許文献1参照)。
【0004】
この自動販売機用照明器具は、縦横に配列された複数の商品見本に対して近接して配置された平面状の拡散パネルと、この拡散パネルの商品見本の反対側(裏側)に対向して配置された平面状の反射シートと、拡散パネルと反射シートとの両一側端側に配置された発光部とを有する。反射シートは、拡散パネルとの距離が発光部から離れていくにつれて短くなるように、拡散パネルに対して傾けて配置されている。
【0005】
この自動販売機用照明器具は、発光部からの放射光を反射シートに反射させて拡散パネルに入射させる。反射シートから拡散パネルまでの(離間)距離は、発光部から離れていくにつれて短くなる。つまり、発光部から反射シートに照射される各光の光路長が長くなるにつれて、各光の、反射シートから拡散パネルまでの光路長は、短くなる。よって、発光部から反射シートに反射されて拡散パネルに到達する各光の光路長は、発光部から反射シートまでの距離と反射シートから拡散パネルまでの距離とが同一となるように反射シートを配置することにより、一様となるように調整されている。つまり、この自動販売機用照明器具は、拡散パネルから照射される光の照度が発光部から離れることにより低下することのないように配慮された設計となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−282725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この自動販売機用照明器具は、発光部から反射シートに放射される光の光路長を調整して、拡散パネル上の照度が均一になるように設計されている。しかし、この自動販売機用照明器具は、被写体を一方側から照射することにのみ対応したものである。例えば、被写体が手の場合であって、手の平と手の甲との両面を同時に照射するためには、この自動販売機用照明器具を手の両面にそれぞれ対向させて配置することになる。
【0008】
このような構成では、当然にその部品点数も増え、その消費エネルギーも増加するため、一つの発光部で対応することが望まれている。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、一つの発光部で複数の導光面を有する光照射装置及び光照射治療・予防装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光照射装置は、光を放射する発光部と、該発光部からの放射光を反射する反射部と、該反射部からの反射光を被写体に導光する導光部とを備える光照射装置であって、前記導光部は、第1の導光面と、該第1の導光面と対向する第2の導光面とを有し、前記反射部は、前記第1の導光面に放射光の一部を反射する第1の反射部と、前記第2の導光面に入射光を反射する第2の反射部と、該第2の反射部に放射光の他の一部を前記入射光として反射する第3の反射部とを有し、該第3の反射部は、前記発光部に対して傾斜するよう配置され、且つ、前記発光部に近づくほど放射光の透過量が増加する透過部を有するという構成を有している。
【0011】
かかる構成によれば、発光部からの放射光の一部は、第3の反射部を透過し、第1の反射部で反射され、第1の導光面に入射し、該第1の導光面を透過して被写体に照射される。また、発光部からの放射光の他の一部は、第3の反射部で反射され、第2の反射部で反射され、第2の導光面に入射し、該第2の導光面を透過して反対側から被写体に照射される。よって、本発明の光照射装置は、一つの発光部で複数の導光面を有する。
【0012】
また、第3の反射部は、発光部に対して傾斜するよう配置され、且つ、発光部に近づくほど放射光の透過量が増加する透過部を有するため、発光部からの放射光は、第1の導光面と第2の導光面とに均等に分配され、また、第1の導光面における照度が均一となるように調整される。
【0013】
ここで、本発明の光照射装置においては、前記第3の反射部は、平面形状の反射板であることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、第3の反射部を簡単な構成とすることができる。
【0015】
また、本発明の光照射装置においては、前記透過部は、第1の導光面から離間するほど開放面積が拡大する切り欠きであるように構成することができる。あるいは、本発明の光照射装置においては、前記透過部は、第1の導光面から離間するほど開放面積が拡大するスリットであるように構成することができる。
【0016】
これらの構成によって、第1の導光面における照度を調整することができる。
【0017】
また、本発明の光照射治療・予防装置は、上記いずれかの光照射装置から照射される光を生体の特定部位に照射することにより、治療又は予防する光照射治療・予防装置であって、発光部から放射されて導光部を透過して照射される光の光路上に配置され、発光部からの放射光のうち、波長が566.5nm以上780nm以下の範囲内の放射光を透過させる波長透過手段を更に備え、該波長透過手段を透過させた透過光を生体の特定部位に照射する構成を有している。
【0018】
かかる構成によれば、波長透過手段は、本願出願人によって発見された炎症性サイトカインの産生を抑制する働きを有する波長が566.5nm以上780nm以下の範囲内の放射光を透過させる。波長透過手段が透過する上限値である780nmの波長は、可視光(線)の上限値であり、炎症性サイトカインの産生を抑制する一方、疾患の罹患を予防したい部位又は罹患した部位(当該部位と医学的に関連があるため当該部位の治療に効果がある部位を含む。以下同じ)に照射する際の熱的影響を最小限に抑えることができる技術的意味を有する値である。当該装置は、各種疾患(例えば、炎症や肌荒れなど)を予防したい部位又は罹患した部位に波長透過手段から透過した透過光を照射することにより、炎症性サイトカインの産生を抑制することができる。そして、炎症性サイトカインの産生が抑制されることによって、例えば、炎症性疾患は、その罹患が予防され、罹患時の症状が軽減され、又は、炎症性疾患が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光照射装置及び光照射治療・予防装置によれば、一つの発光部で複数の導光面を有する構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、波長ごとの血管内皮細胞増殖因子(hVEGF)の産生量を示すグラフ、(b)は、波長ごとの炎症性サイトカインの産生比を示すグラフ
【図2】本発明の実施形態に係る光照射治療・予防装置の制御回路図
【図3】同実施形態に係る光照射治療・予防装置の全体斜視図
【図4】同実施形態に係る光照射治療・予防装置の光学系の断面図
【図5】同実施形態に係る光照射治療・予防装置の第3の反射部を表す図であって、(a)は正面図、(b)は配置図
【図6】同実施形態に係る光照射治療・予防装置に用いたバンドパスフィルタ(波長透過手段)の透過光の分光特性を示すグラフ
【図7】実施例に係る光照射治療・予防装置の被照射面における照度分布図であって、(a)は第1の導光面から照射された光の被照射面における照度分布図、(b)は第2の導光面から照射された光の被照射面における照度分布図
【図8】比較例に係る光照射治療・予防装置の被照射面における照度分布図であって、(a)は第1の導光面から照射された光の被照射面における照度分布図、(b)は第2の導光面から照射された光の被照射面における照度分布図
【図9】実施例に係る光照射治療・予防装置と比較例に係る同装置の被照射面における照度のグラフであって、(a)は第1の導光面から照射された光の被照射面における照度のグラフ、(b)は第2の導光面から照射された光の被照射面における照度のグラフ
【図10】(a)及び(b)は他の実施形態に係る光照射治療・予防装置の第3の反射部の正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る光照射治療・予防装置について、図面を参酌しつつ、説明する。まず、同実施形態に係る光照射治療・予防装置が産生を抑制する炎症性サイトカインの働きについて、図1(a)及び図1(b)を参酌しつつ説明する。
【0022】
炎症性サイトカインは、生体内の多彩な細胞間情報を担う可溶性タンパク質の総称であるサイトカインの一種である。特に、炎症性サイトカインは、生体内における様々な炎症症状を引き起こす原因因子として関与し、活性化マクロファージや活性化血管内皮細胞から産生される。
【0023】
具体的に例示すると、炎症性サイトカインには、実験等で検証された代表的な炎症性サイトカインである、(h)VEGF(血管内皮細胞増殖因子、Vascular Endothelial Growth Factor)、TNFα(腫瘍壊死因子、Tumor Necrosis Factor−α)、IL−1β(インターロイキン1β、interLeukin−1β)、IFNγ(インターフェロンγ、interFeroNγ)、IL−6(インターロイキン6、interLeukin−6)、IL−12a(インターロイキン12a、interLeukin−12a)などが分類される。
【0024】
本願出願人は、この炎症性サイトカインが放電管から照射される照射光の特定の波長でhVEGFの産生量が他の波長と比較して強く抑制されることを発見した。
【0025】
すなわち、図1(a)に示すように、キセノン放電管を発光させてヒト表皮細胞に照射した照射光を半値幅40nmのバンドパスフィルタで所定の中心波長ごとに分光し、中心波長毎のhVEGFの産生量を比較した結果、中心波長600nm〜中心波長700nmの間で産生量が最も少なくなることがわかった。
【0026】
また、図1(b)に示すように、同じくキセノン放電管を発光させてヒト表皮細胞に照射した照射光を半値幅40nmのバンドパスフィルタで所定の中心波長ごとに分光し、中心波長毎の炎症性サイトカインの産生比(照射しない場合を基準とした比率)を比較した結果、中心波長650nmで最も低くなる(強く抑制される)ことがわかった。なお、図1(b)で示す照射光の波長ごとの炎症性サイトカインの産生比は、照射光を照射しなかった場合を基準(「1」とした)とした相対的な値で示されている。各炎症性サイトカインの産生比は、波長ごとに、左からTNFα、IL−1β、IFNγ、IL−6、IL−12aの順にその産生比の結果を示す。
【0027】
また、炎症性サイトカインは、生体において多種類のサイトカインが複雑なネットワークを形成しながら、全体として方向性のある活性を発揮する。炎症性サイトカインは、同じく血球から産生され、炎症を抑制する活性を有する抗炎症性サイトカインとのバランスが崩れることにより、炎症反応の過剰な疾患状態を惹起させる。なお、抗炎症性サイトカインの一つであるIL−4(インターロイキン1α、interLeukin−4)には、効果がない(産生が抑制されない)ことも実験等から判明している。
【0028】
そして、この炎症性サイトカインの産生を抑制することにより、新規メカニズムの炎症性疾患治療が可能となる。
【0029】
次に、同実施形態に係る光照射治療・予防装置について、図2〜図9を参酌しつつ説明する。同実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、主に、炎症性疾患の罹患を予防し又は罹患時の当該疾患の症状を軽減する予防治療を受ける被治療者や、炎症性疾患を抑制することにより炎症性疾患の治療を受ける被治療者(患者)などの治療を受けるために当該装置を使用する使用者に光を照射する光照射装置の一例である。
【0030】
同実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、図2で図示する光照射治療・予防装置の制御回路図に示されているように、光を放射する発光部2と、該発光部2からの放射光を反射する反射部3と、該反射部3からの反射光を透過させて被写体に導光する導光部4と、発光部2からの放射光のうち波長が特定の範囲内の放射光を透過させる波長透過手段5と、発光部2の発光を制御する発光制御手段6と、発光部2及び発光制御手段6に電気を供給する電源供給手段7と、発光部2、反射部3、導光部4、波長透過手段5、発光制御手段6及び電源供給手段7を収納するとともに、波長透過手段5から透過された透過光を使用者の予防したい部位又は罹患した部位(特定部位)に照射可能な構造を有する装置本体8(図3参照)とを備える。
【0031】
発光部2は、図4に示すように、光源9と、反射傘10と、波長透過手段5に入射する放射光の入射角度を整合するために、反射傘10の開口部に取り付けられるフレネルレンズ11とを備える。本実施形態に係る発光部2は、接線A(本実施形態では平面である導光部4の第1の導光面12を延長させた面上の任意の直線)よりも被写体と反対側に設けられている。
【0032】
光源9は、炎症性サイトカインの産生を抑制するために使用者の生体の予防したい部位又は罹患した部位に照射する光源となる。光源9は、例えば、キセノン放電管やハロゲン放電管などの(閃光)放電管であって、特に、本実施形態では、キセノン放電管を用いる例を説明する。
【0033】
反射傘10は、導光部4の第1の導光面12に接する接線Aより導光部4の被写体側と反対側に向かう放射光を反射し、接線Aより導光部4の被写体側に向かう放射光を反射する。
【0034】
フレネルレンズ11は、波長透過手段5が入射角依存性を有するフィルタを用いる場合に用いられる。つまり、フレネルレンズ11は、光源9から入射される入射角度が使用する波長透過手段5の許容可能な角度以内となるように設けられている。なお、フレネルレンズ11は、例えば、入射角依存性がない色ガラスフィルターなどを用いる場合であれば、省略することもできる。
【0035】
反射部3は、波長透過手段5を透過した透過光が使用者の予防したい部位又は罹患した部位に照射されるように、光源9から略全方位に放射される放射光の照射範囲を制御する。本実施形態に係る反射部3は、発光部2からの放射光を導光部4の第1の導光面12に反射する第1の反射部16と、発光部2からの放射光の間接光を導光部4の(第1の導光面12とは別の)第2の導光面18に反射する第2の反射部19と、発光部2からの放射光の一部を第2の反射部19に反射する第3の反射部20とを備える。
【0036】
第1の反射部16は、導光部4の第1の導光面12に面して配置され、導光部4が反射光を透過させる位置が発光部2から遠くなるほど第1の反射部16の反射面と導光部4の第1の導光面12との間の光路長が短くなるように配置される。第1の反射部16は、発光部2の反射傘10から略連続して形成され、第1の導光面12の発光部2とは反対側の端部まで設けられている。
【0037】
第2の反射部19は、導光部4(第1の導光面12及び第2の導光面18)を挟んで第1の反射部16とは反対側に配置される。すなわち、第2の反射部19は、第1の反射部16と対向するように配置される。第2の反射部19は、導光部4の第2の導光面18に面して配置され、導光部4が反射光を透過させる位置が発光部2から遠くなるほど第2の反射部19の反射面と導光部4の第2の導光面18との間の光路長が短くなるように配置される。
【0038】
第3の反射部20は、反射板である。この反射板20は、発光部2(のフレネルレンズ11)や波長透過手段5に対して傾斜するよう配置される。より詳しくは、反射板20は、発光部2から第1の反射部16に向かう方向と直交する軸回りにおいて、発光部2から第1の反射部16に向かう方向と直交するのではなく当該方向に対して所定角度で傾斜するよう配置される。
【0039】
また、反射板20は、図5(a)(反射板20の正面図)及び図5(b)(反射板20の配置図)に詳細に示すように、発光部2からの放射光を第2の反射部19に反射する本体部26と、発光部2からの放射光の一部を透過させて第1の反射部16への光路を形成する透過部27,…とを備える。
【0040】
本体部26は、平面形状をしており、その基端部29を第1の導光面12に固定する。本体部26の先端部30は、フレネルレンズ11まで延設されて、略フレネルレンズ11の一部(本実施形態においては、フレネルレンズ11の半分領域)を覆うように配置される。このようにして、本体部26は、第1の反射部16と第2の反射部19とに発光部2からの放射光を分配する。
【0041】
透過部27は、第1の導光面12の発光部2側に向かう放射光の光路を跨ぐ位置Cに設けられる。透過部27は、本体部26の幅方向Dに一定間隔で複数形成される。透過部27は、本体部26の先端側の複数個所に当該先端側から基端側に向かって切り欠いたように形成される切り欠きである。
【0042】
また、透過部27は、第1の導光面12から離間するほど、つまり、発光部2に近づくほど開放面積が拡大するように設けられる。よって、透過部27は、第1の導光面12から離間するほど、つまり、発光部2に近づくほど発光部2からの放射光の第1の反射部16への透過量が増加するようになっている。本実施形態では、透過部27は、三角形状である。
【0043】
導光部4は、図4に示すように、それぞれ対向して配置される第1の導光面12と第2の導光面18とを備える。本実施形態では、第1の導光面12は、使用者の手の甲(手首から指先までの手の外側の面)に対向して配置される。第2の導光面18は、使用者の手の平(手首から指先までの手の内側の面)に対向して配置される。
【0044】
波長透過手段5は、発光部2から第1の反射部16に向けて放射される放射光の光路上に配置される。本実施形態に係る波長透過手段5は、第3の反射部20よりも発光部2側に配置される。
【0045】
波長透過手段5は、発光部2からの放射光の、1以上の特定の波長、又は、1以上の特定範囲の波長の放射光のみを透過する光学フィルタである。本実施形態に係る光学フィルタは、特定範囲の波長(帯)の放射光のみを選択的に透過するバンドパスフィルタ(干渉フィルタ)を例に説明する。
【0046】
波長透過手段5は、波長が566.5nm以上780nm以下の範囲内の放射光を透過させる。図6に図示する各バンドパスフィルタを透過した透過光の分光特性(分光透過率)のグラフからわかるように、この波長範囲の下限値は、(図6の実線Cでその分光特性を示す)中心波長600nmのバンドパスフィルタCを透過する透過光の透過率が最大となる波長(実線C上のb点に対応する波長566.5nm)の透過率の2分の1(半分)となる短波長側の波長(実線C上のa点に対応する波長)である。上限値は、可視光の最大波長である。
【0047】
前述のとおり、中心波長600nmのバンドパスフィルタCは、図1(a)で示すとおり、hVEGFの産生量を抑制する働きがある波長を透過する光学フィルタである。また、この中心波長600nmのバンドパスフィルタCより短波長側の(図6の実線Bでその分光特性を示す)中心波長500nmのバンドパスフィルタBは、図1(a)で示す結果より、hVEGFの産生量を抑制する効果が低いと考えられる。よって、中心波長600nmのバンドパスフィルタCの短波長側の波長aは、炎症性サイトカインを抑制する働きがある下限値であると評価できる。
【0048】
また、近赤外線(波長780nm超)は、使用者に照射する際に熱的な影響が大きいため、波長透過手段5は、この近赤外線に至るまでの可視光線(波長780nm以下)の上限値を上限とされている。
【0049】
また、波長透過手段5は、好ましくは、波長が566.5nm以上746nm以下の範囲内の放射光を透過させるようにしてもよい。この波長範囲の上限値は、(図6の実線Eでその分光特性を示す)中心波長700nmのバンドパスフィルタEを透過する透過光の透過率が最大となる波長(実線E上のd点に対応する波長676.5nm)の透過率の2分の1(半分)となる長波長側の波長(実線E上のf点に対応する波長)である。
【0050】
前述のとおり、中心波長700nmのバンドパスフィルタEは、図1(a)で示すとおり、hVEGFの産生量が抑制する働きがある波長を透過する光学フィルタである。また、この中心波長700nmのバンドパスフィルタEより長波長側の(図6の実線Fでその分光特性を示す)中心波長880nmのバンドパスフィルタFは、図1(a)で示す結果より、hVEGFの産生量を抑制する効果が低いと考えられる。よって、中心波長700nmのバンドパスフィルタEの長波長側の波長(実線E上のf点に対応する波長)は、炎症性サイトカインを抑制する働きがある値であると評価できる。
【0051】
なお、波長780nmも、中心波長880nmのバンドパスフィルタFを透過する透過光の波長よりも短波長側であるため(実線E上のg点に対応する波長)、この波長の照射光を照射することによる炎症性サイトカインの抑制効果を否定するものではなく、その働きが高く評価できるというものである。
【0052】
また、波長透過手段5は、より好ましくは、波長が600nm以上700nm以下の範囲内の放射光を透過させるようにしてもよい。図1(a)で示すとおり、hVEGFの産生量を抑制することができる波長の透過光を透過する光学フィルタである中心波長600nm及び700nmのバンドパスフィルタC,Eの中心波長(実線C上のc点に対応する波長及び実線E上のe点に対応する波長)を用いることにより、更に炎症性サイトカインが高く抑制できる。
【0053】
また、前述のとおり、図1(b)でその抑制効果のある(図6の実線Dでその分光特性を示す)中心波長650nmのバンドパスフィルタDを透過する透過光の波長の範囲が、中心波長600nmと中心波長700nmのバンドパスフィルタC,Eの間に位置しており、その波長の範囲がそれぞれの波長の範囲と重なっていることから、中心波長600nm〜中心波長700nmのバンドパスフィルタC〜Eを透過する波長の透過光に抑制効果があると考えられる。なお、図6の実線Aは、光学フィルタを透過させていない状態の透過光の分光特性である。
【0054】
発光制御手段6は、発光部2を1回又は複数回に分けて閃光発光させたり、所定の発光間隔で発光制御させたり、複数回に分けて閃光発光させる場合は、更に、発光部2が放射する放射エネルギーを所定の放射エネルギー以下に抑えて閃光発光させるなどの様々な発光パターンで発光部2を発光制御する。
【0055】
電源供給手段7は、図2に示すように、発光部2の発光エネルギーを蓄える蓄電手段34と、該蓄電手段34を充電する充電回路35と、蓄電手段34に電気を供給する電源部36と、該電源部36のオン・オフを切り替える電源スイッチ37とを備える。電源供給手段7は、発光部2以外にも、発光制御手段6の電源としても用いられる。
【0056】
蓄電手段34は、例えば、発光部2を発光させるのに必要な電気容量を有し、光源9と並列に接続される主コンデンサである。充電回路35は、電源部36を介して供給される電気を蓄電手段34に充電する。電源部36は、例えば、プラグ受け(電源コンセント)に接続して電気の供給を受け付けるためのプラグと電源ケーブルとを備える。なお、電源部36は、電池又は充電池などを備えるものであってもよい。
【0057】
装置本体8は、図3に示すように、少なくとも一つの開口を有する略直方体形状に形成されており、発光部2、反射部3、導光部4、波長透過手段5、発光制御手段6、電源供給手段7などを内蔵させるケーシングである。この装置本体8は、一方の面(以下、「正面」と称する)に形成される開口部38から使用者の手を挿入して、手の甲に特定範囲の波長の光を照射するための台である載置部39と、持ち運ぶために使用者が把持する把持部40とを備える。
【0058】
次に、同実施形態に係る光照射治療・予防装置1の動作について、図1〜図9を参照しつつ説明する。まず、図3に示すように、使用者は、開口部38から手を挿入する。より詳しく言うと、手の甲が上となるように、すなわち、手の甲が第1の導光面12側、手の平が第2の導光面18側となるように、使用者は、装置内に手を挿入する。但し、これに限定されるものではなく、使用者は、手の甲が第2の導光面18側、手の平が第1の導光面12側となるように、手の表裏を逆にして挿入するようにしてもよい。そして、電源スイッチをオンにする。すると、光照射治療・予防装置1に電源が入り、発光制御手段6が発光部2を発光させて光を放射させる。
【0059】
図4に示すように、発光部2からの放射光は、直接的に、あるいは反射傘10で反射されて間接的にフレネルレンズ11に向かって放射される。そして、フレネルレンズ11に到達した放射光は、当該フレネルレンズ11を透過し、導光部4の第1の導光面12又は第1の反射部16に向かって放射され、第1の導光面12を透過して使用者の手の甲に照射される。
【0060】
また、発光部2からの放射光15の一部は、第3の反射部20(の本体部26)で反射されて、第2の反射部19に導かれる。そして、第2の反射部19に入射された光は、第2の反射部19で反射されて、第2の導光面18から使用者の手の平に照射される。
【0061】
ここで、第1の導光面12は、発光部2側の光量が少ない傾向にある。そこで、反射板20の透過部27を設けることで、第1の導光面12の発光部2側の光量を増加させる。また、透過部27は、発光部2に近づくほど開放面積が拡大する形状であるので、第1の導光面12の発光部2から離れた部分(すなわち、光源9からの光路長が長くなる部分)へ導かれる放射光15ほど多く透過し、これにより第1の導光面12における照度分布を均一化することを図っている。
【0062】
図7は、導光部4を透過する照射光の照度の分布を示す照度分布図である。図7(a)は、第1の導光面12から照射された光の被照射面(本実施形態における手の甲側の被照射面)における照度分布図である。図7(b)は、第2の導光面18から照射された光の被照射面(本実施形態における手の平側の被照射面)における照度分布図である。この照度分布図は、図7の左端が導光部4の発光部2側の端部の位置に対応しており、この位置から図7の右側に向かう方向が図3に示す装置本体8の背面から正面(装置本体8の奥側から開口部38側)に向かう方向に対応している。なお、第1の導光面12の発光部2側の端部は、点線Eで示す位置は、一般的な使用者の指先が置かれると想定した位置(導光部4の発光部2側の端部から約20mm離れた位置)に対応している。点線Fで示す位置は、一般的な使用者の指の付け根の位置(導光部4の発光部2側の端部から約100mm離れた位置)に対応している。図面上の符号a,b,c,…は、符号aが600lx以上であり、符号bから符号kまで600lxから50lx間隔で0lxまで降順に照度を示す。
【0063】
これに対し、図8は、本実施形態に係る反射板20の比較例として、透過部(切り欠き)27を形成しない反射板を用いたときの照度分布図である。図7及び図8を比較することにより、本実施形態では、第1の導光面12から照射された光の被照射面における照度分布、第2の導光面18から照射された光の被照射面における照度分布ともに、比較例と比較して、勾配が緩やかであり、照度が均一に分布していると評価できる。
【0064】
このことは、図9のグラフからも見て取れる。図9は、導光部4を透過する照射光の照度を示すグラフである。このグラフの横軸は、図7及び図8の点線Gに対応している。図9(a)は、第1の導光面12から照射された光の被照射面における照度を表し、図9(b)は、第2の導光面18から照射された光の被照射面における照度を表す。また、図9(a)及び図9(b)中、実線Xは、本実施形態のデータであり、波線Yは、比較例のデータである。図9(a)及び図9(b)における実線Xと波線Yとを比較すると、本実施形態では、比較例と比較して、勾配が緩やかであり、照度が均一に分布していると評価できる。
【0065】
なお、本発明に係る光照射治療・予防装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0066】
例えば、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、手に照射する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、炎症性サイトカインの産生の抑制を予防したい他の生体の部位又は罹患した他の生体の部位に照射するようにしてもよく、その生体の部位は、肩や腰、足、全身などどのような場所に照射されるような場合であってもよい。また、人間に照射する場合に限定されるものではなく、人間以外の動物などの生体に対し、治療のために光を当該特定部位に照射するようにしてもよい。これらの場合は、本実施形態に係る光照射治療・予防装置1の構造に限定されず、適宜、照射する生体の特定部位に適した構造とすることを妨げるものではない。
【0067】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、上記治療・予防目的に炎症性サイトカインの産生の抑制を予防したい生体の部位又は罹患した生体の部位に照射する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、導光部を透過する照射光が被写体に対して略均一に照射することができるため、上記用途以外にも、一般的な照明、例えば、看板の照明や自動販売機の商品陳列棚の照明、液晶ディスプレイなどのバックライトなどのように、一様に整列又は配置される被写体に対して効率よく均一に照明する必要のある光照明装置、特に面照明装置として用いてもよい。上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1では、波長透過手段5を備える例を説明したが、面照射装置として用いる場合、波長透過手段5を備えなくてもよいし、または、照射する被写体に合わせて異なる周波数の光を透過する波長透過手段5を備えてもよい。
【0068】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、波長透過手段5にバンドパスフィルタを用いる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ショートパスフィルタ(長波長カットフィルタ)とロングパスフィルタ(短波長カットフィルタ)との組み合わせにより、入射された入射光の特定範囲の波長を選択して透過させるものであってもよい。
【0069】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、円筒形状の閃光放電管を1本若しくは2本用いる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光源は、軸方向に直列に配列された2以上の(閃光)放電管又は直線状に配列させた複数のLEDであってもよく、導光部の幅方向の延長に対応するようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、導光部4を導光面が平面形状である例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、導光部の導光面は、奥行き方向に対して丸みを帯びた円弧状であってもよいし、半円状であってもよい。この場合、発光部は、導光部の導光面の発光部側の端部に接する接線よりも被写体側に配置されることが好ましい。
【0071】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、導光部4の導光面12,18に拡散性のない例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、導光部の導光面は、拡散性を有する拡散パネルを用いてもよい。
【0072】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、1つの発光部2に対して導光部4の導光面12,18が2つである例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光照射装置は、1つの発光部2に対して3つ以上の導光面を有していてもよい。
【0073】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、透過部としての切り欠き27が反射板20の本体部26の先端部30から基端部29側に向かって切り欠かれたように形成される例を説明したが、切り欠きは三角形に限定されるものではない。
【0074】
例えば、図10(a)に示すように、反射板42は、透過部として、半楕円形又は半円形状に切り欠かれた切り欠き部43,…を備えていてもよい。
【0075】
また、図10(b)に示すように、反射板44は、透過部として、幅方向Dと交差する高さ方向Hに所定の幅の隙間を有するスリット45,…を備えていてもよい。このスリット45,…は、本体部26の幅方向Dの一端から他端に向かって連続して形成されている。スリット45,…の幅は、先端部30側のスリット45より基端部29側のスリット45の方が狭くなっている。
【0076】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、第3の反射部20が平面形状の反射板である例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第3の反射部は、直角三角柱形状のプリズムであってもよい。このプリズムは、フレネルレンズ11から透過される光が入射される直角な面である入射面と、該入射面から入射された光の一部を第2の反射部19に向けて反射する傾斜した面である反射面と、該反射面で反射された光を略屈折することなく透過させる入射光に対して直角な面である透過面とを備える。入射面と透過面とは直交しており、反射面は、入射面及び透過面に対して例えば45度傾斜している。
【0077】
また、上記実施形態に係る光照射治療・予防装置1は、各導光面12,18が当該導光部4を透過する透過光の透過角度が当該導光部4への入射角度より小さい角度で屈折するように形成されるように形成されてもよい。すなわち、各導光面12,18の被写体と反対側の面(被写体と面していない面)に、入射角度より小さい角度で屈折するようにそれぞれ微少なプリズムが複数形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る光照射装置及び光照射治療・予防装置は、光を放射する発光部と、該発光部からの放射光を反射する反射部と、該反射部からの反射光を被写体に導光する導光部とを備える光照射装置であって、前記導光部は、第1の導光面と、該第1の導光面と対向する第2の導光面とを有し、前記反射部は、前記第1の導光面に放射光の一部を反射する第1の反射部と、前記第2の導光面に入射光を反射する第2の反射部と、該第2の反射部に放射光の他の一部を前記入射光として反射する第3の反射部とを有し、該第3の反射部は、前記発光部に対して傾斜するよう配置され、且つ、前記発光部に近づくほど放射光の透過量が増加する透過部を有する構成とすることによって、一つの発光部で複数の導光面を有する構成を必要とする用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 光照射治療・予防装置
2 発光部
3 反射部
4 導光部
5 波長透過手段
12 第1の導光面
16 第1の反射部
18 第2の導光面
19 第2の反射部
20 第3の反射部(反射板)
26 本体部
27 透過部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射する発光部と、
該発光部からの放射光を反射する反射部と、
該反射部からの反射光を被写体に導光する導光部と
を備える光照射装置であって、
前記導光部は、第1の導光面と、該第1の導光面と対向する第2の導光面とを有し、
前記反射部は、
前記第1の導光面に放射光の一部を反射する第1の反射部と、
前記第2の導光面に入射光を反射する第2の反射部と、
該第2の反射部に放射光の他の一部を前記入射光として反射する第3の反射部とを有し、
該第3の反射部は、前記発光部に対して傾斜するよう配置され、且つ、前記発光部に近づくほど放射光の透過量が増加する透過部を有する
ことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記第3の反射部は、平面形状の反射板であることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記透過部は、第1の導光面から離間するほど開放面積が拡大する切り欠きであることを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記透過部は、第1の導光面から離間するほど開放面積が拡大するスリットであることを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光照射装置から照射される光を生体の特定部位に照射することにより、治療又は予防する光照射治療・予防装置であって、発光部から放射されて導光部を通って照射される光の光路上に配置され、発光部からの放射光のうち、波長が566.5nm以上780nm以下の範囲内の放射光を透過させる波長透過手段を更に備え、該波長透過手段を透過させた透過光を生体の特定部位に照射することを特徴とする光照射治療・予防装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−52069(P2013−52069A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191348(P2011−191348)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】