説明

光照射装置

【課題】建築物の室内に太陽光を自在に取り入れることができ、かつ小型化を図ることができる光照射装置を提供する。
【解決手段】光照射装置1は、住宅10の外部から太陽光を採光する採光部51と、採光部51を介して採光された太陽光を室31内に放光する放光部61〜64と、太陽光を採光部51から放光部61〜64へ導光する導光手段7とを備えている。導光手段7の側方導光部7aは、内壁部251と、内壁部251の外面に設けられた反射板75と、傾斜壁部22と、断熱材23を介して傾斜壁部22の内面に設けられた反射板72とを有している。傾斜壁部22は、内壁部251との間に、内壁部251との間の間隙距離L、すなわち、反射板72と反射板75との間の間隙距離Lが鉛直方向上側に向かって連続的に漸増する空間81が形成されるように、鉛直方向に対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物として、例えば、屋根の下方に形成される躯体内空間である小屋空間と、床の下方に形成される躯体内空間である床下空間とが、内壁空洞(内壁空間)を介して連通している住宅において、所定箇所にファン等の送気装置を設置し、その送気装置により、小屋空間、内壁空洞および床下空間に空気を循環させるエアサイクル住宅が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、前記送気装置を用いないエアサイクル住宅も存在する。
【0003】
また、このようなエアサイクル住宅において、太陽光(自然光)を採光する太陽光採光開口部を、屋根に設け、前記太陽光採光開口部を介して採光された太陽光を導光する反射板を、外壁部と内壁部との間に形成されている内壁空洞に設け、前記反射板により導光された太陽光を室内に放光する放光部を、その室に設けてなる光照射装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、前記光照射装置のような太陽光を導光するシステムを構築する場合、前記反射板が設けられる内壁空洞の幅(外壁部と内壁部との間の間隙距離)を広くする必要があり(具体的には、300mm〜1000mm程度必要とする)、その分、住宅の建築床面積が増大してしまう。
【0005】
そして、特に、都市部等の狭小地に住宅を建築する場合は、例えば、居住空間を狭くする等の対策を講じなければならず、非常に不利である。
【0006】
【特許文献1】特開平10−132301号公報
【特許文献2】特開2007−16561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、建築物の室内に太陽光を自在に取り入れることができ、かつ小型化を図ることができる光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 建築物の室内へ光を照射する光照射装置であって、
前記建築物の外部から太陽光を採光する採光部と、
前記採光部を介して採光された太陽光を前記室内に放光する放光部と、
太陽光を前記採光部から前記放光部へ導光する導光手段とを備え、
前記導光手段は、
鉛直方向に延在する鉛直壁部と、
前記鉛直壁部の外面に設けられた第1の反射部と、
前記鉛直壁部の外側に配置され、前記鉛直壁部との間に、前記鉛直壁部との間の間隙距離が鉛直方向上側に向かって連続的または段階的に漸増する空間を形成する非鉛直壁部と、
前記非鉛直壁部の内面に設けられた第2の反射部とを有することを特徴とする光照射装置。
【0009】
(2) 前記非鉛直壁部は、鉛直方向に対して傾斜している上記(1)に記載の光照射装置。
【0010】
(3) 前記非鉛直壁部は、外側が凸となるように湾曲している上記(1)に記載の光照射装置。
【0011】
(4) 前記非鉛直壁部は、複数の段差部を有している上記(1)に記載の光照射装置。
【0012】
(5) 前記放光部は、前記鉛直壁部の高さ方向の異なる位置に複数設けられており、
前記高い位置に設けられている放光部で放光された残りの太陽光が、前記第1の反射部および/または前記第2の反射部で少なくとも1回反射して、前記低い位置に設けられている放光部から放光されるよう構成されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光照射装置。
【0013】
(6) 前記空間は、前記建築物の内壁空洞を兼ねる上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光照射装置。
【0014】
(7) 前記鉛直壁部は、前記室および前記内壁空洞を画成する部材を兼ねる上記(6)に記載の光照射装置。
【0015】
(8) 前記鉛直壁部は、前記室を画成する部材を兼ねる上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光照射装置。
【0016】
(9) 前記建築物は、内壁空洞を有し、
前記鉛直壁部は、前記室を画成する部材の外側に配置され、前記内壁空洞を画成する部材を兼ねる上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光照射装置。
【0017】
(10) 前記放光部は、間接照明として機能するよう構成されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の光照射装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、太陽光を自在に建築物(例えば、住宅等)の室内に取り込むことができる。
【0019】
そして、導光手段の非鉛直壁部は、鉛直壁部との間に、その鉛直壁部との間の間隙距離が鉛直方向上側に向かって連続的または段階的に漸増する空間を形成するように設けられているので、建築物に、その建築床面積を増大させることなく、光照射装置を設けることができる。
【0020】
これにより、例えば、都市部等の狭小地に住宅を建築する場合でも、十分に対応することができ、土地の広さの割には、十分に満足し得る広さの居住空間を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の光照射装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の光照射装置の第1実施形態が適用された建築物としての住宅の概略構造を示す断面図である。
【0022】
なお、説明の都合上、図1において、上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明する。また、図1中の上下方向が鉛直方向、左右方向が水平方向である。
【0023】
図1に示すように、住宅(建築物)10は、1階建てであり、室(部屋)31、図示しない他の室、図示しない玄関、図示しない廊下等を画成する躯体20を有している。また、住宅10は、例えば、木造、2×4造、パネル造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、または、これらのうちの2種以上を組み合わせたもの等、種々のものであってよい。なお、室31および図示しない室は、それぞれ、居間や寝室に限らず、この他、例えば、キッチン、浴室、トイレ等、種々の居住空間であってよい。
【0024】
躯体20は、屋根部(屋根)21と、屋根部21の内面に積層された断熱材23と、外方(側方)に位置する傾斜壁部(外壁部)22と、傾斜壁部22の内面に積層された断熱材23と、基礎(基台部)24と、下方に設けられた断熱材23と、室31を画成する内壁部251、天井252および床253とを有している。
【0025】
この場合、左側の傾斜壁部22および右側の傾斜壁部22は、それぞれ、後述する導光手段7の非鉛直壁部であり、板状をなし、鉛直方向に対して傾斜している(傾斜壁部22の上側が下側よりも外側に位置している)。また、左側の傾斜壁部22の上端部は、屋根部21の左側の端部に接合し、右側の傾斜壁部22の上端部は、屋根部21の右側の端部に接合している。
【0026】
また、左側の内壁部251および右側の内壁部251は、それぞれ、後述する導光手段7の鉛直壁部であり、板状をなし、鉛直方向に延在している。
【0027】
また、屋根部21は、水平直方向に対して傾斜している(屋根部21の左側が右側よりも上側に位置している)。この屋根部21の形状は、図示の形状に限定されず、この他、例えば、切妻形状、寄棟形状等であってもよい。
【0028】
なお、躯体20(住宅10)の図1の紙面の手前側および奥側については、その図示および説明は省略する。
【0029】
また、躯体20の内部には、躯体内空間40が形成されている。この躯体内空間40は、図示の構成では、2つに分離されており、一方は、屋根裏空間(小屋空間)41および内壁空洞(内壁空間)43、44で構成され、他方は、床下空間42で構成されている。すなわち、一方の躯体内空間40は、屋根裏空間41および内壁空洞43、44が連通して形成される一続きの空間(連通空間)である。
【0030】
屋根裏空間41は、屋根部21の下方に形成される空間、すなわち、屋根部21と、室31の天井252との間に形成される空間である。
【0031】
また、床下空間42は、室31の床253の下方に形成される空間である。
また、内壁空洞43は、左側の傾斜壁部22と、室31の左側の内壁部251との間に上下方向(鉛直方向)に沿って形成される空間、また、内壁空洞44は、右側の傾斜壁部22と、室31の右側の内壁部251との間に上下方向に沿って形成される空間である。なお、左側の内壁部251は、室31および内壁空洞43を画成する部材を兼ねており、また、右側の内壁部251は、室31および内壁空洞44を画成する部材を兼ねている。
【0032】
なお、床下空間42と内壁空洞43、44とが連通していてもよく、この場合は、躯体内空間40は、屋根裏空間41、床下空間42および内壁空洞43、44が連通して形成される一続きの空間となる。
【0033】
さて、この住宅10には、室31内(居住空間)に太陽光(自然光)を照射する(取り込む)光照射装置1が設けられている。以下、太陽光を、単に、「光」とも言う。
【0034】
光照射装置1は、住宅10の外部から太陽光を採光する採光部51と、採光部51を介して採光された太陽光を室31内に放光(照射)する4つ(複数)の放光部61〜64と、太陽光を採光部51から各放光部61〜64へ導光する導光手段7とを備えている。
【0035】
採光部51は、屋根部21に設けられており、この採光部51を介して太陽光が屋根裏空間41(躯体内空間40)、すなわち、光照射装置1に採り入れられる。具体的には、屋根部21には、開口が形成されており、採光部51は、その開口に嵌め込まれている(開口を塞ぐように設置されている)。
【0036】
採光部51は、本実施形態では、光透過性を有する板体(光透過部材)で構成されている。また、採光部51の構成材料としては、それぞれ、例えば、各種ガラスや各種樹脂等を用いることができる。
【0037】
また、採光部51は、太陽光の直射を長時間受けることができる位置、例えば、南側に面する位置に配設されているのが好ましい。
【0038】
また、採光部51の外側には、採光部51を介して採光される太陽光の光量を調整する光量調整手段として、採光部51の太陽光の採り入れ口(窓部)を開閉する図示しないシャッタが設けられている。シャッタは、図示しない駆動機構を有し、その駆動機構により駆動されて開閉するようになっている。また、シャッタは、そのシャッタが開いているときに採光部51を介して採光される太陽光の光量を100%としたとき、シャッタが閉じているときでも、採光部51を介して採光される太陽光の光量が0%とならないように(完全には遮光されないように)構成されている。なお、シャッタが閉じているとき、採光部51を介して採光される太陽光の光量が略0%となるように構成することもできる。
【0039】
なお、前記シャッタは、採光部51の外側に限らず、採光部51の内側(躯体内空間40)に設けられていてもよい。
【0040】
また、採光部51として、ペアガラスの間に、ルーバー(光量調整手段)が設けられているものを用いてもよい。この場合は、例えば、夏は、ルーバーにより太陽光が遮光され、冬は、ルーバーにより太陽光が遮光されずに、採光されるように、ルーバーの角度を設定するのが好ましい。また、ルーバーの角度を調整することができるように構成してもよい。
【0041】
また、採光部の数は、1つに限らず、例えば、2つ以上(複数)でもよい。
各放光部61〜64は、それぞれ、室31に設けられており、各放光部61〜64から、それぞれ、導光手段7により導光された太陽光が室31内に放光(照射)される。
【0042】
具体的には、室31の左側の内壁部251および後述する反射板75には、2つの開口が形成されており、放光部61は、一方の開口に嵌め込まれ(開口を塞ぐように設置され)、放光部62は、他方の開口に嵌め込まれている。この場合、放光部61と放光部62とは、互いに、前記内壁部(鉛直壁部)251の高さ方向(鉛直方向)の異なる位置で、かつ水平方向の異なる位置に配置されている(鉛直方向および水平方向の両方にずれている)。
【0043】
また、室31の右側の内壁部251および後述する反射板76には、開口が形成されており、放光部64は、その開口に嵌め込まれている。また、室31の天井252および後述する反射板74には、開口が形成されており、放光部63は、その開口に嵌め込まれている。この場合、放光部63と放光部64とは、互いに、鉛直方向の異なる位置で、かつ水平方向の異なる位置に配置されている(鉛直方向および水平方向の両方にずれている)。
【0044】
なお、図1では、判り易くするため、本来見えない放光部を含め、すべての放光部61〜64を図示している。
【0045】
各放光部61〜64は、それぞれ、本実施形態では、光透過性を有する部材(光透過部材)と、光を拡散する拡散板等の光学部品とで構成されている。
【0046】
なお、各放光部61〜64は、それぞれ、開口で構成されていてもよい。これにより、放光部(開口)を介して通気(換気)を行うことができる。
【0047】
また、各放光部61〜64は、それぞれ、間接照明として機能するよう構成されていてもよい。この構成例としては、放光部による照明が間接照明となるように、室31内に、前記放光部を構成する開口から所定距離離間させて、所定の間接照明用部材を設ける。この間接照明用部材としては、例えば、半透明板、遮光板、パンチングメタル等を用いることができる。
【0048】
また、各放光部61〜64の近傍には、それぞれ、その放光部61〜64を遮光し得る図示しない遮光手段を設けてもよい。
【0049】
また、放光部の数は、4つに限らず、例えば、3つ以下でもよく、また、5つ以上でもよい。
【0050】
導光手段7は、躯体20(住宅10)の左側方に設けられた側方導光部7aと、右側方に設けられた側方導光部7cと、上方に設けられた上方導光部7bとを有している。
【0051】
側方導光部7aは、鉛直壁部である左側の内壁部251と、内壁部251の外面に設けられた反射板75と、非鉛直壁部である左側の傾斜壁部22と、断熱材23を介して傾斜壁部22の内面に設けられた反射板72とを有している。反射板75の放光部61および62に対応する部位には、開口が形成されている。なお、反射板75の反射面(表面)が第1の反射部を構成し、反射板72の反射面(表面)が第2の反射部を構成している。
【0052】
また、側方導光部7cは、鉛直壁部である右側の内壁部251と、内壁部251の外面に設けられた反射板76と、非鉛直壁部である右側の傾斜壁部22と、断熱材23を介して傾斜壁部22の内面に設けられた反射板73とを有している。反射板76の放光部64に対応する部位には、開口が形成されている。なお、反射板76の反射面(表面)が第1の反射部を構成し、反射板73の反射面(表面)が第2の反射部を構成している。
【0053】
ここで、側方導光部7aと側方導光部7cとは、略同様であるので、以下、代表的に、側方導光部7aについて説明する。
【0054】
側方導光部7aの傾斜壁部22および内壁部251は、それぞれ、板状をなしており、傾斜壁部22は、内壁部251の外側(左側)、すなわち、躯体20(住宅10)の最外部に設置(配置)されている。そして、傾斜壁部22は、内壁部251との間に、内壁部251との間の間隙距離L、すなわち、反射板72と反射板75との間の間隙距離Lが鉛直方向上側に向かって連続的に漸増する(連続的に、かつ一定の割合で増大する)空間81が形成されるように、鉛直方向に対して傾斜している(傾斜壁部22の上側が下側よりも外側に位置している)。この空間81は、内壁空洞43である。なお、側方導光部7c側において、前記空間81に相当するのは、空間82であり、その空間82は、内壁空洞44である。
【0055】
前記傾斜壁部22(反射板72)の鉛直方向に対する傾斜角度θは、特に限定されないが、5〜45°程度であるのが好ましく、10〜25°程度であるのがより好ましい。
【0056】
また、上方導光部7bは、天井252と、天井252の外面に設けられた反射板74と、屋根部21と、断熱材23を介して屋根部21の内面に設けられた反射板71と、採光部51の下方の屋根裏空間41に設置された反射板77とを有している。反射板74の放光部63に対応する部位には、開口が形成されている。なお、反射板73、76および77の反射面(表面)が、それぞれ、反射部を構成している。
【0057】
前記各反射板71〜77としては、それぞれ、反射率の高い反射面を有するものを用いるのが好ましい。具体的には、各反射板71〜77の反射面の反射率は、それぞれ、95%以上であるのが好ましく、98%以上であるのがより好ましい。また、各反射板71〜77の構成材料(反射面の構成材料)としては、それぞれ、例えば、アルミニウムやアルミニウム系合金等の金属材料を用いることができる。
【0058】
また、前記各反射板71〜77として、それぞれ、例えば、反射型シートを用いてもよい。
【0059】
また、前記各反射板71〜77の反射面は、それぞれ、光が乱反射するように構成されていてもよい。
【0060】
次に、光照射装置1の作用を説明する。
なお、図1では、判り易くするため、太陽光のうちの所定の主光線のみを図示し、それに基づいて下記の説明を行う。
【0061】
太陽光は、採光部51を介して、住宅10内、すなわち、躯体内空間40の屋根裏空間41に採光される。
【0062】
そして、採光された太陽光は、反射板71〜77のうちの所定の反射板で、次々と反射し、各放光部61〜64に導光され、各放光部61〜64から室31内に放光され、室31内が照明される。
【0063】
具体的には、採光部51を介して採光された太陽光は、反射板72で反射し、放光部61から室31内に放光される。また、反射板72で反射した太陽光は、反射板75のうち、放光部61の図1の紙面の奥側の部分で反射する。この放光部61で放光された残りの太陽光は、反射板72および75を次々と反射し、放光部62から室31内に放光される。
【0064】
また、採光部51を介して採光された太陽光は、反射板77で反射し、放光部63から室31内に放光される。また、反射板77で反射した太陽光は、反射板74のうち、放光部63の図1の紙面の奥側の部分で反射する。この放光部63で放光された残りの太陽光は、反射板71、73および76を次々と反射し、放光部64から室31内に放光される。
【0065】
以上説明したように、この光照射装置1によれば、採光部51と室31との位置にかかわらず、太陽光を自在にその室31内(居住空間)に取り込むことができる。また、4つの放光部61〜64が異なる位置に設けられているので、多くの自然光を室31内全体に取り込むことができる。
【0066】
そして、導光手段7の傾斜壁部22は、内壁部251との間に、反射板72と反射板75との間の間隙距離L(傾斜壁部22と内壁部251との間の間隙距離L)が鉛直方向上側に向かって連続的に漸増する空間を形成するように設けられているので、住宅10に、その建築床面積を増大させることなく、光照射装置1を設けることができる。
【0067】
これにより、例えば、都市部等の狭小地に住宅10を建築する場合でも、十分に対応することができ、土地の広さの割には、十分に満足し得る広さの居住空間を確保することができる。
【0068】
また、太陽光が躯体内空間40において導光されることにより、躯体20内が暖められ、これにより、室31内を暖めることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、断熱材23は、外側、すなわち、屋根部21および傾斜壁部22に設けられ、部屋31の周囲(内側)、すなわち、内壁部251および天井252には設けられていないが、本発明では、これに限らず、断熱材は、例えば、部屋の周囲に設けられ、外側には設けられていなくてもよく、また、部屋および外側の両方に設けられていてもよく、また、省略されていてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、採光部51は、天窓であるが、本発明では、これに限らず、採光部は、例えば、高窓等であってもよい。すなわち、採光部の位置は、屋根部に限定されるものではない。
【0071】
また、所定箇所に、通気(換気)を行う通気部(換気部)を設けてもよい。例えば、傾斜壁部22および反射板72に、通気部として、外部と空間81とを連通する貫通孔を設けたり、また、傾斜壁部22および反射板73に、通気部として、外部と空間82とを連通する貫通孔を設けてもよい。これにより、換気を行うことができ、また、容易に、空気を循環させることができる。
【0072】
また、躯体内空間の所定箇所に、太陽光を受光して熱を吸収する吸熱部(放熱部)を設け、吸熱部が導光手段により導光された太陽光を受光して熱を吸収することにより、吸熱部の周囲の空気の温度が上昇して上昇気流が発生し、これにより空気が循環する(流れる)よう構成してもよい。この場合は、所定箇所に、通気部(換気部)を設けるのが好ましい。
【0073】
また、送気装置(送気手段)を設け、この送気装置を作動させて、通気(換気)を行うように構成してもよい。
【0074】
<第2実施形態>
図2は、本発明の光照射装置の第2実施形態の主要部を模式的に示す断面図である。なお、説明の都合上、図2において、上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明する。また、図2中の上下方向が鉛直方向、左右方向が水平方向である。
【0075】
以下、本発明の光照射装置の第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0076】
図2に示すように、第2実施形態の光照射装置1では、導光手段7の非鉛直壁部は、外側が凸となるように湾曲した湾曲壁部(外壁)27で構成されている。このため、湾曲壁部27と内壁部251との間の間隙距離L(反射板72と反射板75との間の間隙距離L)の増大する割合(変化率)は、一定ではなく、鉛直方向上側に向かって漸減している。これにより、湾曲壁部27で太陽光を集光させることができる(レンズ効果が得られる)。
【0077】
この光照射装置1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、この第2実施形態は、後述する第4実施形態および第5実施形態に、それぞれ、適用することができる。
【0078】
<第3実施形態>
図3は、本発明の光照射装置の第3実施形態の主要部を模式的に示す断面図である。なお、説明の都合上、図3において、上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明する。また、図2中の上下方向が鉛直方向、左右方向が水平方向である。
【0079】
以下、本発明の光照射装置の第3実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0080】
図3に示すように、第3実施形態の光照射装置1では、導光手段7の非鉛直壁部は、複数の段差部を有する多段壁部(外壁)28で構成されている。このため、多段壁部28と内壁部251との間の間隙距離L(反射板72と反射板75との間の間隙距離L)は、鉛直方向上側に向かって段階的に漸増している。
【0081】
この光照射装置1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、この第3実施形態は、後述する第4実施形態および第5実施形態に、それぞれ、適用することができる。
【0082】
<第4実施形態>
図4は、本発明の光照射装置の第4実施形態が適用された建築物としての住宅の概略構造を示す断面図である。なお、説明の都合上、図4において、上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明する。また、図4中の上下方向が鉛直方向、左右方向が水平方向である。
【0083】
以下、本発明の光照射装置の第4実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0084】
図4に示すように、住宅(建築物)10は、1階建てであり、室(部屋)31、32、図示しない他の室、図示しない玄関、図示しない廊下等を画成する躯体20を有している。
【0085】
躯体20は、屋根部21と、屋根部21の内面に積層された断熱材23と、外方(側方)に位置する傾斜壁部(外壁部)22と、傾斜壁部22の内面に積層された断熱材23と、基礎24と、下方に設けられた断熱材23と、室31を画成する内壁部251、天井252および床253と、室32を画成する内壁部261、天井262および床263とを有している。
【0086】
また、室31および32の周囲には、反射板74、75および76が設置されている。すなわち、反射板75は、室31を画成する左側の内壁部251の外側に配置され、また、反射板76は、室32を画成する右側の内壁部261の外側に配置され、また、反射板74は、室31を画成する天井252および室32を画成する天井262の外側に配置されている。これにより、室31および32の周囲に、空間が形成されている。この場合、反射板75の反射面(表面)が第1の反射部を構成し、その残部が、鉛直壁部を構成している。また、反射板76の反射面(表面)が第2の反射部を構成し、その残部が、鉛直壁部を構成している。また、反射板74の反射面(表面)が反射部を構成している。
【0087】
また、躯体内空間40は、図示の構成では、2つに分離されており、一方は、屋根裏空間41、空間81および82で構成され、他方は、床下空間42、内壁空洞43、44、45および天井裏空間46で構成されている。すなわち、一方の躯体内空間40は、屋根裏空間41、空間81および82が連通して形成される一続きの空間であり、他方の躯体内空間40は、床下空間42、内壁空洞43、44、45および天井裏空間46が連通して形成される一続きの空間である。
【0088】
なお、反射板75は、内壁空洞43を画成する部材を兼ねており、また、反射板76は、内壁空洞44を画成する部材を兼ねている。
【0089】
また、反射板75には、2つの開口が形成されており、放光部61aは、一方の開口に嵌め込まれ、放光部62aは、他方の開口に嵌め込まれており、また、室31の左側の内壁部251には、2つの開口が形成され、放光部61bは、一方の開口に嵌め込まれ、放光部62bは、他方の開口に嵌め込まれている。
【0090】
また、反射板76には、開口が形成されており、放光部64aは、その開口に嵌め込まれており、また、室32の右側の内壁部251には、開口が形成されており、放光部64bは、その開口に嵌め込まれている。
【0091】
また、反射板74には、開口が形成されており、放光部63aは、その開口に嵌め込まれており、また、室32の天井252には、開口が形成されており、放光部63bは、その開口に嵌め込まれている。
【0092】
この光照射装置1では、採光部51を介して採光された太陽光は、反射板72で反射し、放光部61aおよび61bから室31内に放光される。また、反射板72で反射した太陽光は、反射板75のうち、放光部61aの図4の紙面の奥側の部分で反射する。この放光部61aおよび61bで放光された残りの太陽光は、反射板72および75を次々と反射し、放光部62aおよび62bから室31内に放光される。
【0093】
また、採光部51を介して採光された太陽光は、反射板77で反射し、放光部63aおよび63bから室32内に放光される。また、反射板77で反射した太陽光は、反射板74のうち、放光部63aの図4の紙面の奥側の部分で反射する。この放光部63aおよび63bで放光された残りの太陽光は、反射板71、73および76を次々と反射し、放光部64aおよび64bから室32内に放光される。
【0094】
この光照射装置1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
そして、この光照射装置1では、容易に、躯体内空間40に空気を循環させることができる。
【0095】
<第5実施形態>
図5は、本発明の光照射装置の第5実施形態が適用された建築物としての住宅の概略構造を示す断面図である。なお、説明の都合上、図5において、上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明する。また、図5中の上下方向が鉛直方向、左右方向が水平方向である。
【0096】
以下、本発明の光照射装置の第5実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0097】
図5に示すように、住宅(建築物)10は、1階建てであり、室(部屋)31、32、図示しない他の室、図示しない玄関、図示しない廊下等を画成する躯体20を有している。
【0098】
躯体20は、屋根部21と、屋根部21の内面に積層された断熱材23と、外方(側方)に位置する傾斜壁部(外壁部)22と、傾斜壁部22の内面に積層された断熱材23と、基礎24と、下方に設けられた断熱材23と、室31を画成する内壁部251、天井252および床253と、室32を画成する内壁部261、天井262および床263とを有している。
【0099】
また、室31および32の周囲には、柱や梁等の部材9(図5中破線で示されている)が設置されている。なお、この柱や梁等の部材9に壁を設けると、前述した第4実施形態のように、室31および32の周囲に空間が形成されるが、本実施形態では、そのようにはなっていない。
【0100】
また、室31の左側の内壁部251の外面には、反射板75が設けられ、また、天井252の外面には、反射板74aが設けられている。
【0101】
また、室32の右側の内壁部261の外面には、反射板76が設けられ、また、天井262の外面には、反射板74bが設けられている。
【0102】
また、躯体内空間40は、屋根裏空間41、床下空間42および内壁空洞43、44、45で構成されている。すなわち、躯体内空間40は、屋根裏空間41、床下空間42および内壁空洞43、44、45が連通して形成される一続きの空間である。
【0103】
また、放光部61は、間接照明および通気部(換気部)として機能するよう構成されている。すなわち、放光部61は、反射板75に形成されている開口611と、内壁部251における開口611に対応する位置に形成されている開口612と、室31内の開口611および612の近傍に位置する間接照明用部材613と、間接照明用部材613を支持する支持部614とで構成されている。間接照明用部材613は、開口611および612から所定距離離間するように、支持部614により内壁部251に取り付けられている(固定されている)。間接照明用部材613としては、例えば、半透明板、遮光板、パンチングメタル等を用いることができる。
【0104】
この光照射装置1では、採光部51を介して採光された太陽光は、反射板72で反射し、放光部61の開口611および612から室31内に取り込まれ、間接照明用部材613により間接照明光となって放光される。
【0105】
また、反射板72で反射した太陽光は、反射板75のうち、放光部61の図5の紙面の奥側の部分で反射する。この放光部61で放光された残りの太陽光は、反射板72および75を次々と反射し、放光部62から室31内に放光される。
【0106】
また、採光部51を介して採光された太陽光は、反射板77で反射し、放光部63から室32内に放光される。また、反射板77で反射した太陽光は、反射板74bのうち、放光部63の図5の紙面の奥側の部分で反射する。この放光部63で放光された残りの太陽光は、反射板71、73および76を次々と反射し、放光部64から室32内に放光される。
【0107】
また、放光部61の開口611および612を介して、室31内の換気がなされる。
この光照射装置1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0108】
そして、この光照射装置1では、容易に、躯体内空間40に空気を循環させることができる。この構成例を以下簡単に説明する。
【0109】
図示しないが、室31の床253の外面(下側)、室32の床263の外面(下側)および下部の断熱材23の上側に、それぞれ、反射板を設け、また、床下空間42に、太陽光を受光して熱を吸収する吸熱部(放熱部)を設ける。
【0110】
これにより、採光部51を介して採光された太陽光は、反射板72および75や、前記床253、263および断熱材23に設けられた反射板を次々と反射し、前記吸熱部に導かれ、同様に、反射板77、74b、71、73および76や、前記床253、263および断熱材23に設けられた反射板を次々と反射し、前記吸熱部に導光される。そして、前記吸熱部が各反射板(導光手段)により導光された太陽光を受光して熱を吸収することにより、前記吸熱部の周囲の空気の温度が上昇して上昇気流が発生し、これにより空気が循環する(流れる)。すなわち、前記上昇気流により、空気が床下空間42から内壁空洞43(空間81)、内壁空洞44(空間82)、内壁空洞45等を経て、屋根裏空間41に流れ、その空気は、図示しない内壁空洞や通気層等を経て、再び、床下空間42に戻る。そして、このような動作が繰り返される。
【0111】
この場合は、空間81および82は、それぞれ、導光路(導光用の通路)として機能するだけでなく、通気路(通気用の通路)としても機能する。すなわち、光照射装置1の光ダクトの部分は、通気ダクトとしても機能する。
【0112】
以上、本発明の光照射装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0113】
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0114】
また、本発明の光照射装置が適用される住宅(建築物)は、1階建てに限らず、例えば、2階建て以上であってもよい。また、例えば、地下室が設けられていてもよい。
【0115】
また、本発明の光照射装置が設置される建築物としては、住宅に限定されず、例えば、駅やビル等の公共の施設等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の光照射装置の第1実施形態が適用された建築物としての住宅の概略構造を示す断面図である。
【図2】本発明の光照射装置の第2実施形態の主要部を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の光照射装置の第3実施形態の主要部を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の光照射装置の第4実施形態が適用された建築物としての住宅の概略構造を示す断面図である
【図5】本発明の光照射装置の第5実施形態が適用された建築物としての住宅の概略構造を示す断面図である
【符号の説明】
【0117】
1 光照射装置
10 住宅
20 躯体
21 屋根部
22 傾斜壁部
23 断熱材
24 基礎
251、261 内壁部
252、262 天井
253、263 床
27 湾曲壁部
28 多段壁部
31、32 室
40 躯体内空間
41 屋根裏空間
42 床下空間
43〜45 内壁空間
46 天井裏空間
51 採光部
61〜64 放光部
611、612 開口
613 間接照明用部材
614 支持部
61a〜64a 放光部
61b〜64b 放光部
7 導光手段
7a、7c 側方導光部
7b 上方導光部
71〜77 反射板
74a、74b 反射板
81、82 空間
9 部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の室内へ光を照射する光照射装置であって、
前記建築物の外部から太陽光を採光する採光部と、
前記採光部を介して採光された太陽光を前記室内に放光する放光部と、
太陽光を前記採光部から前記放光部へ導光する導光手段とを備え、
前記導光手段は、
鉛直方向に延在する鉛直壁部と、
前記鉛直壁部の外面に設けられた第1の反射部と、
前記鉛直壁部の外側に配置され、前記鉛直壁部との間に、前記鉛直壁部との間の間隙距離が鉛直方向上側に向かって連続的または段階的に漸増する空間を形成する非鉛直壁部と、
前記非鉛直壁部の内面に設けられた第2の反射部とを有することを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記非鉛直壁部は、鉛直方向に対して傾斜している請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記非鉛直壁部は、外側が凸となるように湾曲している請求項1に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記非鉛直壁部は、複数の段差部を有している請求項1に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記放光部は、前記鉛直壁部の高さ方向の異なる位置に複数設けられており、
前記高い位置に設けられている放光部で放光された残りの太陽光が、前記第1の反射部および/または前記第2の反射部で少なくとも1回反射して、前記低い位置に設けられている放光部から放光されるよう構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の光照射装置。
【請求項6】
前記空間は、前記建築物の内壁空洞を兼ねる請求項1ないし5のいずれかに記載の光照射装置。
【請求項7】
前記鉛直壁部は、前記室および前記内壁空洞を画成する部材を兼ねる請求項6に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記鉛直壁部は、前記室を画成する部材を兼ねる請求項1ないし6のいずれかに記載の光照射装置。
【請求項9】
前記建築物は、内壁空洞を有し、
前記鉛直壁部は、前記室を画成する部材の外側に配置され、前記内壁空洞を画成する部材を兼ねる請求項1ないし5のいずれかに記載の光照射装置。
【請求項10】
前記放光部は、間接照明として機能するよう構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−70703(P2009−70703A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238420(P2007−238420)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【特許番号】特許第4129042号(P4129042)
【特許公報発行日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000102326)エアサイクル産業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】