説明

光硬化型樹脂組成物及びその硬化物

【課題】光照射の有無による硬化性の差異が明瞭である光硬化型樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(a)下記の式(1)で表される2−アミノトロポン誘導体と、
(b)3−メルカプトプロピオン酸エステルの構造を分子内に2つ以上含有する化合物と、(c)チオール基と反応性を有する官能基を2つ以上含有する樹脂、とを含有する、光硬化型樹脂組成物とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の光硬化技術は、低温・短時間の硬化が可能であるのみならず、光パターニングによる微細加工が可能であるなどの点で、従来の熱硬化技術よりも優れているため、特に電子材料分野で多用されている。樹脂の光硬化技術は、ラジカル型、酸硬化型を含むカチオン型、塩基硬化型を含むアニオン型の3種に大別される。これらの中でもラジカル型の光硬化技術が主流である。しかし、この光硬化技術で用いられる(メタ)アクリル酸系ポリマーは、一般に硬化収縮が大きく、耐熱性や接着性について改善の余地がある。
【0003】
また、酸硬化型の光硬化技術において用いられる光酸発生剤として、数々の化合物が開発されている。しかし、酸硬化型に用いられる光酸発生剤は光照射により強いプロトン酸を発生するため、金属類が腐食しやすく、電子材料分野での実用化には更なる検討を要する。
【0004】
一方、アニオン硬化性樹脂を光照射により硬化するアニオン型の光硬化技術の一種として、光塩基発生剤を用いる塩基硬化型の光硬化技術が知られている。特許文献1及び非特許文献1には、光照射によりアミンを発生する化合物としてカルバミン酸誘導体が開示されている。特許文献2及び3には、炭酸ガスが副生しない光塩基発生剤が開示されている。特許文献4には、光照射により1,4−ジヒドロピリジン骨格をピリジン骨格に変化させ、塩基性を増加させる技術が開示されている。特許文献5には、アミノトロポン類を光塩基発生剤として利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−77264号公報
【特許文献2】特開2005−264156号公報
【特許文献3】特開2003−212856号公報
【特許文献4】特開2003−20339号公報
【特許文献5】国際公開第2008/072651号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】UV・EB硬化技術III、1997年、シーエムシー出版、P.78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光塩基発生剤に関して、光照射の有無に応じた硬化性の差異が十分ではないため、光によるパターニングが不鮮明になりうるという問題がある。特に、電子材料用途の場合、極めて高精細なパターンが要求されるので、このような問題は特に重要であり、光照射の有無による硬化性の差異が明瞭である光硬化型樹脂組成物が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光照射の有無による硬化性の差異が明瞭である光硬化樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アミノトロポン誘導体と特定の構造のポリチオオールを配合することにより、光照射の有無による硬化性の差異が明瞭な光硬化型樹脂組成物及びその硬化物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は以下のとおりである。
[1]
(a)下記式(1)で表される2−アミノトロポン誘導体と、
【化1】



(式中、RとRは、互いに独立的に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R〜Rは、互いに独立的に、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ホルミル基、アシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、チオール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。R〜Rは、互いに結合し、飽和環又は不飽和環を形成していてもよく、それぞれ独立に、式(1)で表される化合物から1つの水素原子が脱離した1価の基を置換基として有していてもよい。)
(b)3−メルカプトプロピオン酸エステルの構造を分子内に2つ以上含有する化合物と、
(c)チオール基との反応性を有する官能基を2つ以上含有する樹脂と、
を含有する、光硬化型樹脂組成物。
[2]
チオール基との反応性を有する官能基を2つ以上含有する樹脂が、エポキシ樹脂である、[1]記載の光硬化型樹脂組成物。
[3]
3−メルカプトプロピオン酸エステルの構造を分子内に2つ以上含有する化合物が、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオナート及び/又はジペンタエリスリトールヘキサキス−3−メルカプトプロピオナートである、[1]又は[2]に記載の光硬化型樹脂組成物。
[4]
2−アミノトロポン誘導体が、下記式(2)又は(3)で表される化合物である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物。
【化2】


【化3】


[5]
[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物を少なくとも光照射によって硬化させることにより得られる硬化物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光照射の有無による硬化性の差異が明瞭である光硬化型樹脂組成物及びその硬化物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0013】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、以下の(a)〜(c)成分を含有する。
(a)下記式(1)で表される2−アミノトロポン誘導体、
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、RとRは、互いに独立的に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R〜Rは、互いに独立的に、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ホルミル基、アシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、チオール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。R〜Rは、互いに結合し、飽和環又は不飽和環を形成していてもよく、それぞれ独立に、式(1)で表される化合物から1つの水素原子が脱離した1価の基を置換基として有していてもよい。)
(b)3−メルカプトプロピオン酸エステルの構造を分子内に2つ以上含有する化合物、
(c)チオール基との反応性を有する官能基を2つ以上含有する樹脂。
【0016】
<(a)成分>
式(1)で表される2−アミノトロポン誘導体は、公知の方法で合成することができる。例えば、大有機化学、第13巻、非ベンゼン系芳香族環化合物、監修小竹無二雄、朝倉書店(株)発行、1957年に記載の方法を応用すれば、様々な化合物を合成することができるが、トロポロン類のヒドロキシ基をp−トルエンスルホニルクロライドによりトシル化した後、あるいはジアゾメタンやジメチル硫酸等でメチルエーテル化した後、種々のアミン類と反応させる方法が簡便である。
【0017】
式(1)において、RとRは、互いに独立的に、水素原子、アルキル基、アリール基を表し、R〜Rは、互いに独立的に、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ホルミル基、アシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルキル基、チオール基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基を表す。
【0018】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ブテニル基、イソブテニル基、ベンジル基、シクロへキシル基などが挙げられ、(c)成分との相溶性においてイソプロピル基が好ましい。
【0019】
アリール基としてはフェニル基が好ましい。
【0020】
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボキシル基、ヒドロキシエトキシカルボニル基などが挙げられるが、(c)成分との相溶性においてメトキシカルボニル基が好ましい。
【0021】
アシル基としては、アセチル基が好ましい。
【0022】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられ、(c)成分との相溶性においてメトキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、安定性において塩素又は臭素が好ましい。
【0023】
アミノ基としては、無置換のアミノ基の他、モノ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基が挙げられ、それらの中では(c)成分との相溶性においてメチルアミノ基が好ましく、ジ置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基などが挙げられ、それらの中では、(c)成分との相溶性においてジメチルアミノ基が好ましい。
【0024】
〜Rは、互いに結合し、飽和環又は不飽和環を形成していてもよく、例えば、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環などのアゾール環を形成していてもよい。また、R〜Rは、それぞれ独立に式(1)で表される化合物から1つの水素原子が脱離した1価の基を置換基として有していてもよい。
【0025】
式(1)において、R〜Rが、水素原子、アルキル基又はアリール基のいずれかである化合物は、保存安定性が特に優れており好ましい。ここで、保存安定性とは、光照射していない場合に長期間安定して保存できることをいう。それらの中でもRとRの少なくとも一方が水素原子である化合物が好ましい。より好ましい化合物として、下記式(2)又は(3)で表される2−アミノトロポン誘導体が挙げられる。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
なお、式(1)においてRが水素原子となる場合には、式(1)の構造は互変異性の関係となる(下記式(4)参照)。従って、本実施形態において、2−アミノトロポン誘導体が式(4)等に示される互変異性の関係をとりうる場合には、その互変異性の構造は等価である。
【0029】
【化7】



【0030】
本実施形態では、7員環の光分子内環化反応を利用して塩基性を発現させることができる。例えば、下記式(5)で表される光分子環化反応により7員環全体に及んでいた共役系を切断し、窒素原子上の電子密度を増大させることにより塩基性を発現させることができる。
【0031】
【化8】

【0032】
7員環がこうした光分子内環化反応を起こすことが知られているが(例えば、O,L,Chapman,Advances in Photochemistry,Vol.1,p.323(1963))、置換基の種類を問わず様々な分子おいて同様な反応が観測されている。
【0033】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物における式(1)で表される2−アミノトロポン誘導体の配合量は、特に限定されないが、(c)成分100質量部に対して0.001〜100質量部が好ましく、0.005〜80質量部がより好ましい。0.001質量部以上とすることで十分に実用的な硬化速度とすることができる。100質量部以下とすることで、優れた硬化物の物性を得ることができる。
【0034】
<(b)成分>
本実施形態の光硬化型樹脂組成物において、(b)3−メルカプトプロピオン酸エステルの構造を2つ以上含有する化合物は、制限されない。具体的には、下記式(6)で表される構造を2以上含有する化合物が挙げられる。3−メルカプトプロピオン酸と、炭素数2以上のポリオールとのエステル化物が好ましく、炭素数2〜30のポリオールとのエステル化合物がより好ましい。
【0035】
【化9】

【0036】
例えば、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオナート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオナート、ジペンタエリスリトールヘキサキス−3−メルカプトプロピオナートなどが挙げられるが、それらの中でもペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオナート又はジペンタエリスリトールヘキサキス−3−メルカプトプロピオナートがより好ましい。
【0037】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物において、3−メルカプトプロピオン酸エステルの構造を分子内に2つ以上有する化合物は、エポキシ樹脂100質量部に対して、(SH基の総量)/(エポキシ樹脂が有するエポキシ基の総量)(当量比)で0.5/1.5〜1.5/0.5の比率となるように含有されることが好ましく、0.8/1.2〜1.2/0.8の比率となるように含有されることが好ましい。光硬化型樹脂組成物が上記化合物をかかる割合で含有することにより、その硬化性がより一層優れたものとなる傾向にある。
【0038】
<(c)成分>
本実施形態の光硬化型樹脂組成物において、(c)チオール基(−SH)との反応性を有する官能基を2つ以上含有する樹脂としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。チオール基と反応性を有する官能基は、特に限定されず、例えば、二重結合やエポキシ基等が挙げられる。本実施形態において、チオール基との反応性を有する官能基を2つ以上含有する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、マレイミド系樹脂、アリルエーテル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、環状ポリエン系樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、それらの中でも保存安定性の高さの観点から、特にエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、特に限定されず、汎用のものを使用することができ、例えば以下のものが例示できる。
【0039】
2価フェノール類のグリシジルエーテルとしては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル、カテキンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシフェニルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フロレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0040】
3〜6価またはそれ以上の、多価フェノール類のポリグリシジルエーテルとしては、ピロガロールトリグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ジナフチルトリグリシジルエーテル、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、p−グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールAグリシジルエーテル、トリスメチル−tert−ブチルーブチルヒドロキシメタントリグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾールグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)フェニルグリシジルエーテル、ビス(ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、フェノール又はクレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、リモネンフェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド、又はホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル、及びレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
脂肪族2価アルコールのジグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド[エチレンオキシド又はプロピレンオキシド]付加物のジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0042】
3〜6価又はそれ以上の脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルとしては、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0043】
グリシジルエステル型としては、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等の芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステル等が挙げられる。
【0044】
脂肪族又は脂環式ポリカルボン酸のグリシジルエステルとしては、芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステルの芳香核水素添加物、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルピメレート、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体、トリカルバリル酸トリグリシジルエステル等が挙げられる。
【0045】
活性水素原子をもつ芳香族アミン類のグリシジルアミンとしては、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジエチルジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジルアミノフェノール等が挙げられる。
【0046】
活性水素原子をもつ脂環式アミン類のグリシジルアミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミンの水素添加物等が挙げられる。活性水素原子をもつ複素環式アミン類のグリシジルアミンとしては、トリグリシジルイソシアヌレート、トリスグリシジルメラミン等が挙げられる。
【0047】
鎖状脂肪族エポキサイドとしては、エポキシ化ブタジエン、エポキシ化大豆油等が挙げられる。脂環式エポキサイドとしては、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン等が挙げられる。
【0048】
本実施形態においてエポキシ樹脂は2種以上併用できる。好ましくはグリシジルエーテル型及びグリシジルエステル型であり、より好ましくはグリシジルエーテル型である。
【0049】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物においては、フェノール樹脂をさらに含有してもよい。フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂やレゾール樹脂等のフェノール樹脂が挙げられ、それらの中でもノボラック樹脂が好ましい。ノボラック樹脂としては、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂が挙げられ、クレゾールノボラック樹脂がより好ましい。
【0050】
フェノール樹脂の配合量は、硬化性の観点より、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.001質量部〜100質量部が好ましく、より好ましくは、0.01質量部〜90質量部である。
【0051】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物において、必要に応じて、有機溶剤を更に含有してもよい。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、シュウ酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン等のピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の鎖状又は環状飽和炭化水素類、その他の有機極性溶媒類が挙げられる。更には、有機溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及びその他の有機非極性溶媒類が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物において、必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸アルミニウム、雲母粉等の公知の無機充填剤を含有してもよい。これにより、硬化体と基材との密着性や、硬化体の硬度等の各種特性を向上させることができる。
【0053】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物においては、必要に応じて、本実施形態の効果を害しない範囲内で、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェネチアジン等の重合禁止剤;アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤;レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤等といった添加剤類;ヒンダードフェノール系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等を適宜に含有してもよい。
【0054】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物において、必要に応じて、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体等の公知の光ラジカル開始剤を1種又は2種以上含有してもよい。
【0055】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、光照射により硬化させることができる。その際、光照射のみを施してもよいし、光照射と加熱とを同時に施してもよいし、あるいは、光照射の後に加熱を施してもよい。
【0056】
光照射の光源や条件については適宜に選択することができるが、150〜750nmの波長域の照射光を用いて行われることが好ましい。より具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及び/又はメタルハライドランプを用いて0.01〜100J/cmの照射量で光照射を行うことが好ましい。これにより、光硬化型樹脂組成物を効率よく硬化することができる。
【0057】
光照射は、200〜400nmの波長域の照射光を用いて0.05〜20J/cmの照射量で行うことが好ましい。
【0058】
加熱を行う場合の加熱温度は、樹脂組成物の分解点以下の温度であれば特に限定されず、30〜400℃の温度であると好ましく、50〜300℃の温度であるとより好ましい。加熱を行う場合の加熱時間は、硬化を更に十分に行うために、1秒間〜3時間であると好ましく、30秒間〜1時間であるとより好ましい。
【0059】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、これを用いたパターン形成が可能である。パターンの形成方法としては、特に限定されず、例えば、以下のように行うことができる。
【0060】
まず、本実施形態の光硬化型樹脂組成物を基材に塗布した塗膜又は成形体の表面に、フォトマスクを施す。これに光照射すると、フォトマスクを介すること等によって、光がパターン状に照射された塗膜又は成形体の部位(光照射部位)が硬化することで潜像を形成できる。
【0061】
次に、必要に応じて、光照射後の塗膜又は成形体に対して熱処理等の後処理を施すことで、塗膜又は成形体の光照射部位の溶解性を選択的に低下させることができる。
【0062】
続いて、水溶液や有機溶媒等の現像液を用いて塗膜又は成形体の光未照射部位を選択的に除去してパターンを形成させることができる。
【0063】
なお、本実施形態の光硬化型樹脂組成物を基材に塗布する方法は特に限定されない。その具体例としては、例えば、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の公知の方法が挙げられる。
【0064】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物を基材に塗布して得られる塗膜又は成形体への光照射及び加熱は上述と同様にして行うことができる。塗膜又は成形体の光未照射部位を選択的に除去する際に用いられる現像液としては、特に限定されず、塩基性水溶液、酸性水溶液、中性水溶液、有機溶剤等が挙げられる。現像液は、光硬化型樹脂組成物に含有される高分子前駆体等の硬化性成分等を考慮して、適宜に選択できる。
【0065】
塩基性水溶液としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、1級、2級、3級アミンの水溶液、水酸化物イオン及びアンモニウムイオンの塩の水溶液が挙げられる。
【0066】
塩基性水溶液のアルカリ濃度は、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。塩基性水溶液に含まれる溶質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせられていてもよい。その濃度は、好ましくは全体の質量の50%以上、更に好ましくは70%以上である。なお、塩基性水溶液は水が含まれていればよく、有機溶媒等の水以外の溶媒を更に含んでいてもよい。塩基性水溶液は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0067】
酸性水溶液は、pHが7よりも小さな溶液であれば特に限定されない。酸性水溶液としては、例えば、乳酸、酢酸、シュウ酸、リンゴ酸等の有機酸の水溶液、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸の水溶液が挙げられる。
【0068】
中性水溶液としては、特に限定されず、光未照射部位を選択的に除去できるものであればよい。中性水溶液としては、例えば、エタノール等の水溶性溶剤の水溶液が挙げられる。
【0069】
現像液として用いられる有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、上記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、シュウ酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン等のピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の鎖状又は環状飽和炭化水素類、その他の有機極性溶媒類が挙げられる。更には、有機溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及びその他の有機非極性溶媒類等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0070】
また、これらの有機溶媒を、水、塩基性水溶液、酸性水溶液及び/又は中性水溶液と組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。これによって、より良好なパターン形状を得ることができる。
【0071】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、炭酸ガス等の副生による気泡発生やイオン性成分を含有することによる絶縁信頼性低下といった問題を伴うことなく十分な光硬化性を発現することができる。
【0072】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、光照射の有無による硬化性の差異が十分大きいため、明瞭なパターンを形成することが可能である。そのため、本実施形態の光硬化型樹脂組成物及びその硬化物は幅広い用途に用いることができ、電子材料用途等における短時間硬化かつ精密パターニングの要求にも応えることができる。本実施形態の樹脂組成物を硬化させる際に副生成物が発生せず、かつ高精度の光パターニングが可能であるため、光パターニング性が厳しく要求される電子材料用樹脂として特に好適に用いることができる。
【0073】
また、3−メルカプトプロピオン酸エステルの構造を分子内に2つ以上含有する化合物は、従来から用いられている類似の構造の化合物、例えば2−メルカプト酢酸エステル型等に比べ、それ自身の臭気が少なく、しかも熱安定性が高いので、加熱による分解や臭気の発生が少ないという利点も併せ持つ。
【0074】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、塗料、導電性接着剤等の接着剤、印刷インク等のインク、フォトレジスト、ソルダーレジスト等のレジスト材料、カバーレイ、コーティング材、各種自動車部品、電気・電子材料、半導体装置、半導体材料、半導体封止材料、半導体液状モールディング材、ダイボンディング材、アンダーフィル材、光学材料、光ファイバー、光ファイバー用接着剤、光導波路材、光回路部品、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、液晶封止剤、LED封止剤、有機EL封止剤、層間絶縁膜、配線被覆膜、反射防止膜、ホログラム、建築材料、三次元造形、充填剤、成形材料等、多種多様な分野や製品(物品)の用途に応用できる。
【0075】
本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、これらの用途における所望の耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の各種特性に応じて、その組成を調整できる。特に接着剤の用途に関して、本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、木材、建材、プラスチック、皮革等を接着する接着剤の他に、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等の回路接続材料、フリップチップ等の半導体素子とプリント配線板との接続を行うフリップチップ用異方導電材等の半導体素子接着材料として用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
〔実施例1〕
<2−アミノトロポン誘導体の合成>
4−イソプロピルトロポロン(旭化成ファインケム株式会社製)とジアゾメタンとから常法に従って合成した、2−メトキシ−4−イソプロピルトロポンと2−メトキシ−6−イソプロピルトロポンの混合物(2.0g、11.2mmol)と、1,2−プロパンジアミン(207mg、2.8mmol)をエタノール10mLに溶解し、還流温度で24時間加熱撹拌した。エタノールを減圧下に留去した後、カラムクロマトグラフ(和光純薬工業(株)製「ワコーゲルC−300」を用い、酢酸エチルを展開溶媒として使用した。)により2−アミノトロポン誘導体(1,2−ビス(2−オキソ−4(6)−イソプロピル−1,3,5−シクロヘプタトリエニルアミノ)プロパン、表1参照)を単離した。その収量は915mg(2.5mmol)であり、1,2−プロパンジアミン基準の収率は89%であった。
なお、得られた2−アミノトロポン誘導体の確認はH−NMR(日本電子(株)製「ECA−500」)によって行った。
【0078】
<光硬化型樹脂組成物>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」)70質量部と、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオナート(SC有機化学株式会社製、PEMP)30質量部と、合成した2−アミノトロポン誘導体10質量部を混合して光硬化型樹脂組成物を得た。得られた光硬化型樹脂組成物をガラス板上に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。
まず、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。その硬化時間は、185分であった。
次に、この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cmの紫外線(波長:365nm)を5分間照射(照射量9J/cm)した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。その硬化時間は、3分であった。なお、硬化が開始する時間の計測は、触針を伴う目視観察により計測した。
【0079】
〔実施例2〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」)70質量部と、ジペンタエリスリトール−ヘキサキス−3−メルカプトプロピオナート(SC有機化学株式会社製、DPMP)30質量部と、実施例1の方法で合成した2−アミノトロポン誘導体10質量部を混合して光硬化型樹脂組成物を得た。
【0080】
得られた光硬化型樹脂組成物をガラス板上に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。
まず、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。その硬化時間は、173分であった。
次に、この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cmの紫外線(波長:365nm)を5分間照射(照射量9J/cm)した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。その硬化時間は、3分であった。
【0081】
〔実施例3〕
<2−アミノトロポン誘導体の合成>
4−イソプロピルトロポロン(旭化成ファインケム株式会社製)とジアゾメタンとから常法に従って合成した、2−メトキシ−4−イソプロピルトロポンと2−メトキシ−6−イソプロピルトロポンの混合物(2.0g、11.2mmol)と、25質量%アンモニア4.0g(アンモニア分4.0g、235mmol)を混合し、50℃で24時間加熱撹拌した。25℃に冷却した後、ジクロロメタン10mLで3回抽出した。ジクロロメタンを減圧下で留去した後、カラムクロマトグラフ(和光純薬工業(株)製、「ワコーゲルC−300」を用い、酢酸エチルを展開溶媒として使用した。)により2−アミノトロポン誘導体(2−アミノ−4−イソプロピルトロポンと2−アミノ−6−イソプロピルトロポンの混合物;表1参照)を単離した。その収量は1.2g(7.4mmol)であり、2−メトキシ−4−イソプロピルトロポンと2−メトキシ−6−イソプロピルトロポンの混合物基準の収率は66%であった。
得られた2−アミノトロポン誘導体の確認はH−NMR(日本電子(株)製、「ECA−500」)によって行った。
【0082】
<光硬化型樹脂組成物>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」)70質量部と、ペンタエリスリトール−テトラキス−3−メルカプトプロピオナート(SC有機化学株式会社製、PEMP)30質量部と、合成した2−アミノトロポン誘導体10質量部を混合して光硬化型樹脂組成物を得た。
得られた光硬化型樹脂組成物をガラス板上に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。
まず、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。その硬化時間は、178分であった。
次に、この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cmの紫外線(波長:365nm)を5分間照射(照射量9J/cm)した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。その硬化時間は、3分であった。
【0083】
〔比較例1〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「AER250」)70質量部と、テトラキス(メルカプト酢酸)ペンタエリトリトール(和光純薬工業(株)製)30質量部と、実施例1の方法で合成した2−アミノトロポン誘導体10質量部を混合して光硬化型樹脂組成物を得た。得られた光硬化型樹脂組成物をガラス板上に塗布し、厚さ100μmの塗膜を形成した。
【0084】
まず、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。その硬化時間は、48分であった。
次に、この塗膜に対し、窒素雰囲気下で30mW/cmの紫外線(波長:365nm)を5分間照射(照射量9J/cm)した。その後、この塗膜を120℃で加熱した。硬化が開始するまでの加熱時間を測定し硬化時間とした。その硬化時間は、3分であった。
【0085】
実施例1〜3及び比較例1の結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例1〜3は、光照射の有無による硬化時間の差異が170〜182分とであるのに対し、比較例1は45分であった。以上より、本実施例によれば、本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、光照射の有無による硬化性の差異が明瞭な光硬化型樹脂組成物であることが示された。その結果、本実施形態の光硬化型樹脂組成物は、光照射によって明瞭なパターンを形成でき、短時間で硬化でき、かつ精密パターニングが可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る光硬化型樹脂組成物及びその硬化物は、塗料、接着剤、インク、レジスト材料、各種自動車部品、電気・電子材料等をはじめ幅広く利用でき、特に、光パターニング性が厳しく要求される電子材料用樹脂等として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(1)で表される2−アミノトロポン誘導体と、
(b)3−メルカプトプロピオン酸エステルの構造を分子内に2つ以上含有する化合物と、
(c)チオール基との反応性を有する官能基を2つ以上含有する樹脂と、
を含有する、光硬化型樹脂組成物。
【化1】



(式中、RとRは、互いに独立的に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R〜Rは、互いに独立的に、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ホルミル基、アシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、チオール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。R〜Rは、互いに結合し、飽和環又は不飽和環を形成していてもよく、それぞれ独立に、式(1)で表される化合物から1つの水素原子が脱離した1価の基を置換基として有していてもよい。)
【請求項2】
前記チオール基との反応性を有する官能基を2つ以上含有する樹脂は、エポキシ樹脂である、請求項1に記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記3−メルカプトプロピオン酸エステルの構造を分子内に2つ以上含有する化合物が、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオナート及び/又はジペンタエリスリトールヘキサキス−3−メルカプトプロピオナートである、請求項1又は2記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記2−アミノトロポン誘導体が、下記式(2)又は(3)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物。
【化2】


【化3】

【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光硬化型樹脂組成物を少なくとも光照射によって硬化させることにより得られる硬化物。

【公開番号】特開2010−174210(P2010−174210A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21311(P2009−21311)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】