説明

光硬化型透明接着剤組成物

【課題】表示装置上面の偏光フィルムと保護板との接着性に優れ、硬化性や透明性及び信頼性に優れている光硬化型接着剤組成物を提供する。
【解決手段】アクリルポリマー(E)、不飽和二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー(B)、光重合開始剤(C)、チオール基を2つ以上有するポリチオール化合物(D)を含有する組成物であって、該組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量割合が2重量%〜30重量%である光硬化型透明接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性に優れた組成物に関し、更には、透明性、耐ヒートサイクル性、耐湿性に優れているため、偏光フィルムと保護板を貼り合わせる際に特に有用な光硬化型透明接着剤組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ゲーム機等の携帯端末に液晶ディスプレイ等の表示装置を使用する場合、外力からの保護を目的として表示装置の上面に透明の保護板を設けている。従来、表示装置と保護板の間には空気層が存在しているため、保護板と空気の屈折率差により、特に明るい太陽光の下等において視認性が悪くなるといった問題があった。近年、このような問題を解消すべく空気の層を無くするためのいろいろな試みがなされており、表示装置に直接保護板を接着剤で貼り付ける方法も検討されている。
【0003】
このような方法の場合には、外的応力や環境下において剥離等の不具合が生じないような設計を行う必要がある。又、表示装置の構成部材には耐熱温度があるため接着の際かけられる温度には制約があり、加えて、加熱硬化時に接着剤の粘度が低下し貼り合わせの位置がずれてしまい易いといった難点もあるため熱硬化性の接着剤は使用しにくいという問題がある。このような理由により、高温での加熱が必要ではなく、短時間で硬化できる光硬化型の接着剤が有効といえる。更に、多種多様な設計の機種がある中、接着部の上面に遮光部が一部存在しているような場合もあり、その場合には硬化接着時に照射する紫外線が、表示装置の偏光フィルムやカラーフィルターに悪影響を与えない低エネルギーであっても硬化接着できるような反応性の高い接着剤でなくてはならない。
特許文献1及び特許文献2には光ディスク用接着剤組成物が記載されているが、ポリチオール化合物を必須成分とする組成物は知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開平10−1659号
【特許文献2】特開2002−265885号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液晶ディスプレイ等の表示装置上面の偏光フィルムと保護板との接着性に優れ、反応性や透明性が良好で、且つ、耐ヒートサイクル性、耐湿性等に優れる信頼性の高い光硬化型接着剤組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、アクリルポリマー、不飽和二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート、不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー、光重合開始剤及びチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物を含有する組成物とすることにより、透明性、接着性、信頼性に優れた接着剤組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)アクリルポリマー(E)、不飽和二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー(B)、光重合開始剤(C)、チオール基を2つ以上有するポリチオール化合物(D)を含有する組成物であって、該組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量割合が2重量%〜30重量%である光硬化型透明接着剤組成物;
【0008】
(2)ウレタン(メタ)アクリレート(A)が多価アルコールと有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレート化合物との反応によって得られる化合物である上記(1)記載の光硬化型透明接着剤組成物;
(3)アクリルポリマー(E)の数平均分子量が2000〜150000、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量が3000〜12000である上記(1)又は(2)に記載の光硬化型透明接着剤組成物;
(4)アクリルポリマー(E)の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合が5重量%〜20重量%である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物;
【0009】
(5)不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー(B)が、フェノキシエチルアクリレート及び/又はジシクロペンタニルアクリレートである上記(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物;
(6)ポリチオール化合物(D)の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合が0.5重量%〜18重量%である上記(1)ないし(5)のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物;
(7)偏光フィルムと保護板との接着に使用する上記(1)ないし(6)のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物;
【0010】
(8)上記(1)ないし(7)のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物の硬化物;
(9)上記(8)記載の光硬化型透明接着剤組成物の硬化物を接着層として有する物品;
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物は、接着性、透明性、硬化性、信頼性に優れており、遮光部があっても活性エネルギー線を吸収する部材であっても十分な接着性を示し、硬化の際に低応力であり、特に、携帯電話等携帯端末の表示装置上の偏光フィルムとその保護板を貼り合わせる際に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物は、アクリルポリマー(E)、不飽和二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー(B)、光重合開始剤(C)、チオール基を2つ以上有するポリチオール化合物(D)を含有する組成物であって、該組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量割合が2重量%〜30重量%である組成物である。
【0013】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物に含有されるアクリルポリマー(E)は、アクリル系又はメタクリル系モノマーを原料として重合させたポリマー、又は、該モノマー以外の他の重合性モノマーと該モノマーとの共重合体が挙げられ、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の通常の方法によって製造できる。
重合の際の重合触媒としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジブチルパーオキシド、ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、その使用量は全モノマー成分の0.1〜10重量%が好ましい。
【0014】
アクリル系又はメタクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等のエステル系(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0015】
共重合させてもよい他の重合性モノマーとしては、不飽和二重結合を有する公知の化合物を用いることができ、例えば、スチレン、3−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルトルエン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレン等のアルキルスチレン類;4−クロロスチレン、3−クロロスチレン、3−ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類;クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等の不飽和二重結合を有するカルボン酸類が挙げられる。
これらのうち、組成物の他の成分への溶解性、硬化物の着色性の面から、アクリル系又はメタクリル系モノマーとしてはメチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が、他の重合性モノマーとしてはスチレン等が好ましい。
【0016】
又、アクリルポリマー(E)の数平均平均分子量としては、20000〜150000であることが好ましく、より好ましくは50000〜120000、特に好ましくは80000〜100000である。数平均分子量が20000未満の場合は、硬化物の低応力化が不十分でありヒートサイクル性に劣る傾向にあり、一方、150000を越える場合には、他のモノマーに溶解しにくくなったり白濁したりするため好ましくない。
【0017】
該アクリルポリマー(E)は、市販品として容易に入手することも可能であり、例えば、三菱レイヨン(株)製「ダイヤナール BR−52」、新日鐵化学(株)製「KS−18」、東亞合成(株)製「ARUFONシリーズ」等が挙げられる。
【0018】
該アクリルポリマー(E)の本発明の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合は5重量%〜20重量%程度が好ましい。
【0019】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物に含有される不飽和二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、以下に示すような多価アルコールと有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレート化合物との反応によって得られる化合物が挙げられる。
【0020】
多価アルコールと有機ポリイソシアネートとの反応は、通常、多価アルコールの水酸基1当量に対して、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基1.1〜2.5当量、好ましくは1.5〜2.2当量を反応させる。反応温度は、通常、70〜100℃、反応時間は5〜20時間程度である。
次に、多価アルコールと有機ポリイソシアネートとの反応物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させる。前記、多価アルコールと有機ポリイソシアネートとの反応物の未反応のイソシアネート基1当量に対して、通常、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の水酸基0.3〜1.5当量、好ましくは0.5〜1.2当量を反応させる。反応温度は、通常、60〜100℃、反応時間は5〜20時間程度である。反応中、重合を防止するために重合禁止剤(例えば、p−メトキシフェノール、メチルハイドロキノン等)や反応を促進するための反応触媒(例えば、ジ−n−ブチルスズ等)を使用することもできる。
【0021】
該多価アルコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリシクロデカンジメチロール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の脂肪族多価アルコール、又、前記脂肪族多価アルコールと多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール、前記脂肪族多価アルコールとε−カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンアルコール、ポリカーボネートポリオール(例えば、1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA等のポリエーテルポリオール等が挙げられる。これらのうち、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、カプロラクトンアルコールが好ましく、又、前述の多価アルコールを必要に応じて2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
該有機ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)類、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート(TDI)類、ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートのカルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、二量体、三量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)等が挙げられ、これらの有機ポリイソシアネートは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、芳香族基を含有しないものが耐光性等に優れている点で好ましく、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが好ましい。これらは、日本ポリウレタン工業(株)、ローディアジャパン(株)、三井東圧化学(株)、三井武田ケミカル(株)等より市販品として入手できる。
【0023】
該水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの反応物、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらのうち好ましいものは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(C1〜C4)アルキル(メタ)アクリレートである。必要に応じて、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は一種以上組み合わせて使用することができる。これらの水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は大阪有機化学工業(株)等より市販品として入手可能である。
【0024】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物にウレタン(メタ)アクリレート(A)を配合することにより、本発明の光硬化型透明接着剤組成物が硬化する際の応力の低減が可能となり、貼り合わせ後のひずみや剥離の防止に効果がある。該ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量は3000〜12000であることが好ましく、数平均分子量が3000よりも小さいと応力の低減効果が小さく、又、組成物の粘度が低くなり作業性の面からも都合が悪い。一方、12000よりも大きいと本発明の光硬化型樹脂組成物の粘度が著しく増大したり、他の材料との相溶性が悪くなり液が白濁したりするといった不具合が起こる。
又、本発明の光硬化型透明接着剤組成物中においてウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量割合は2重量%〜30重量%が好ましく、30重量%より多い場合は組成物の粘度が著しく増大し作業性に支障をきたしたり、組み合わせるアクリルポリマーとの相溶性の点から接着剤が白濁しやすくなるといった問題がある。
【0025】
このような不飽和二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、例えば、KAYARAD UX−6101、KAYARAD UX−2201、KAYARAD UX−4101(いずれも日本化薬(株)製)等として市場より容易に入手することができる。
【0026】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物に含有される不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー(B)としては、不飽和二重結合として(メタ)アクリレート基やビニル基等を分子内に1つ有している化合物であり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の(C1〜C20)アルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジメチルアミノエチルジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、α−ナフチル(メタ)アクリレート、β−ナフチル(メタ)アクリレート、イミドアクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、1−ビニルイミダゾール、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、N−ビニルフタルイミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
これらの化合物のうち、着色性、粘度の面より、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましく、これらの1種又は2種以上を用いてもよい。中でも、フェノキシエチルアクリレート及び/又はジシクロペンタニルアクリレートが特に好ましい。
又、本発明の光硬化型透明接着剤組成物中におけるモノマー(B)の重量割合は40重量%〜85重量%が好ましい。
【0028】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物に含有される光重合開始剤(C)としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、ミヒラーズケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−[4−(モルフォリノ)フェニル]ブタノン−1、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−[(4−モリフォリン−4−イル)フェニル)]ブタン−1−オン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
中でも好ましい光重合開始剤としては、硬化物の着色を考慮して2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は、チバスペシャリティケミカルズ(株)より、IRGACURE 184、IRGACURE 907、IRGACURE TPOの名称で市販されており、容易に入手可能である。
又、本発明の光硬化型透明接着剤組成物中における光重合開始剤(C)の重量割合は、通常0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜5重量%程度である。
【0029】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物には光重合開始助剤を併用することもできる。光重合開始助剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の脂肪族アミン、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の芳香族アミン等のアミン類が挙げられる。
本発明の光硬化型透明接着剤組成物中における光重合開始助剤の使用量は0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%程度である。
【0030】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物に含有されるポリチオール化合物(D)としては、例えば、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(TEMPIC)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(MTBD1)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(MTNR1)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(MTPE1)等のチオール基を2〜5個有するポリチオール化合物を挙げることができる。これらのうち反応性の面からトリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)が好ましい。
【0031】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物中におけるポリチオール化合物(D)の重量割合は0.5〜18重量%程度が好ましく、2〜10重量%程度が特に好ましい。0.5重量%より少ない場合は反応性や接着性が低下し、又、18重量%より多い場合は接着性や経時安定性、硬化性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0032】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物は、アクリルポリマー(E)、不飽和二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタンアクリレート(A)、不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー(B)、光重合開始剤(C)及びチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物(D)を必須成分として含有し、(A)〜(E)の各成分を、例えば、混合、加熱、溶解、分散等を行なうことにより調製することができる。
更に、本発明の光硬化型透明接着剤組成物は、必要に応じ、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、充填剤等の添加剤を併用することができる。
【0033】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物の硬化物は、常法に従い、紫外線、可視光レーザー等の活性エネルギー線を照射することにより得ることができる。紫外線を使用する場合、低圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯等を用いて照射する。特に、光源としては350〜450nmにエネルギー強度が強いランプが好ましい。該硬化物も本発明に含まれる。
又、本発明には該硬化物を接着層として有する物品も含まれ、例えば、携帯電話、携帯ゲーム機、デジタルカメラ等である。
【0034】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物を用いて偏光フィルムと保護板を貼り合わせる際は、例えば、活性エネルギー線透過性に優れている無アルカリガラス製や石英ガラス製等の保護板に制限されず、紫外線吸収の大きいアクリル板、ポリカーボネート等の保護板でも、該組成物の良好な反応硬化性のため使用可能である。
【0035】
本発明の光硬化型透明接着剤組成物は、偏光フィルム等の基材に、ロールコーター、スピンコーター、スクリーン印刷法等の塗工装置を用いて接着剤膜厚が1〜100μmとなるように塗布し、保護板を貼り合わせ、紫外線を保護板の上から照射して硬化することにより接着させることができる。
【0036】
以下、実施例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例においては各成分の重量部を示す。
【0037】
実施例1〜2、比較例1〜3
下記に示す原料を表1の「配合物の組成」に示す重量部で混合し、本発明又は比較用の光硬化型透明接着剤組成物を得た。
【0038】
表1 配合物の組成
実施例 比較例
1 2 1 2 3
ダイヤナールBR−52 *1 10 15 15 15 15
KAYARAD UX−4101 *2 25 20 40 20 20
ファンクリル FA−513A *3 5 45
ニューフロンティアPHE *4 60 65 65
KAYARAD TMPTA *5 65
光重合開始剤 *6 1 1 1 1 1
PEMP *7 5 5 5 5
【0039】
*1:三菱レイヨン(株)製、スチレン系モノマー含有共重合アクリルポリマー(分子量 85000) (E成分)
*2:日本化薬(株)製、ポリエーテルポリウレタンジアクリレート(分子量 7200) (A)成分
*3:日立化成(株)製、ジシクロペンタニルモノアクリレート (B)成分
*4:第一工業製薬(株)製、フェノキシエチルアクリレート (B)成分
*5:日本化薬(株)製、トリメチロールプロパントリアクリレート
*6:イルガキュアー907:チバスペシャリティケミカルズ(株)製、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン (C)成分
*7:堺化学工業(株)製、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート) (D)成分
【0040】
実施例、比較例で得られた光硬化型透明接着剤組成物につき、下記の物性試験を行い、その結果を表2に示した。
(透明性)88mWの超高圧水銀灯を用い3000mJのエネルギーで、2枚の厚さ0.7mmの無アルカリガラスを25μmの厚みで接着させたときの着色の様子を目視で確認した。
【0041】
(耐ヒートサイクル性)88mWの超高圧水銀灯を用い3000mJのエネルギーで、無アルカリガラス(厚さ;0.7mm)と2mm厚のアクリル板を25μmの厚みで接着させたサンプルを、1サイクル、−35℃で30分、85℃で30分の条件で100サイクル行った後、2枚の基板の剥離の様子を観察した。
【0042】
(耐湿性)88mWの超高圧水銀灯を用い3000mJのエネルギーで、無アルカリガラス(厚さ;0.7mm)と2mm厚のアクリル板を25μmの厚みで接着させたサンプルを、60℃、90%RHに100時間放置した後の2枚の基板の剥離の様子を観察した。
【0043】
(ピール強度)幅25mm、長さ50mmの0.7mm厚のLCD用ガラス(保護板)と、偏光フィルムを厚み25μmになるよう貼り合わせ、88mWの超高圧水銀灯を用い3000mJのエネルギーで硬化した。この試験片を、引張り試験機を用い、5mm/分のスピードで試験を行った時の引張り接着強度を測定した。
【0044】
表2
実施例 比較例
1 2 1 2 3
透明性 無色透明 無色透明 白濁 無色透明 無色透明
耐ヒートサイクル性 剥離無し 剥離無し ※ 剥離 剥離
耐湿性 剥離無し 剥離無し ※ 剥離 剥離
ピール強度〔N〕 5.9 6.4 ※ 0.84 0.62
※:白濁したため測定出来ず。
【0045】
表1から明らかなように、実施例1〜2の本発明の光硬化型透明接着剤組成物の硬化物は高い透明性を有し、(A)成分を30%を超えて含有する比較例1、(B)成分を含有しない比較例2、(D)成分を含有しない比較例3の組成物と比べて、耐ヒートサイクル性、耐湿性等の信頼性に優れ、ピール強度から接着性に非常に優れていることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリマー(E)、不飽和二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー(B)、光重合開始剤(C)、チオール基を2つ以上有するポリチオール化合物(D)を含有する組成物であって、該組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量割合が2重量%〜30重量%である光硬化型透明接着剤組成物。
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)が多価アルコールと有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレート化合物との反応によって得られる化合物である請求項1記載の光硬化型透明接着剤組成物。
【請求項3】
アクリルポリマー(E)の数平均分子量が20000〜150000、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量が3000〜12000である請求項1又は2に記載の光硬化型透明接着剤組成物。
【請求項4】
アクリルポリマー(E)の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合が5重量%〜20重量%である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物。
【請求項5】
不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー(B)が、フェノキシエチルアクリレート及び/又はジシクロペンタニルアクリレートである請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物。
【請求項6】
ポリチオール化合物(D)の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合が0.5重量%〜18重量%である請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物。
【請求項7】
偏光フィルムと保護板との接着に使用する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光硬化型透明接着剤組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項8記載の光硬化型透明接着剤組成物の硬化物を接着層として有する物品。

【公開番号】特開2009−1655(P2009−1655A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163335(P2007−163335)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】