説明

光硬化性樹脂組成物及びシール材

【課題】水蒸気バリア性及び耐電極腐食性に優れており、低粘度であり、さらに、特定波長の紫外線の遮断環境下でも紫外線硬化が可能な光硬化性樹脂組成物、及び該光硬化性樹脂組成物からなるシール材を提供すること。
【解決手段】末端変性水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(a1)及び/又は末端変性水添共役ジエン系重合体(a2)を含有するゴム(A)、反応性希釈剤(B)、並びにα−アミノアセトフェノン及び/又はアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、前記(A)成分と前記(B)成分の含有割合[(A):(B)]が、質量比で10:90〜90:10であり、前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜15質量部である光硬化性樹脂組成物、及び該光硬化性樹脂組成物からなるシール材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気バリア性及び耐電極腐食性に優れており、低粘度であり、さらに、特定波長の紫外線の遮断環境下でも紫外線硬化が可能な光硬化性樹脂組成物、及び該光硬化性樹脂組成物からなるシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シール材や接着材用に種々の光硬化性樹脂が開発されている。
例えば、特許文献1には、木工合板、家具、楽器等の木工製品の表面加工用のポリエーテルポリオール系光硬化性樹脂が開示されている。しかし、ポリエーテルポリオールは親水性が高く水蒸気透過性が大きいために、水蒸気バリア性が要求されるシール材等への使用は不適当である。
また、特許文献2には、木工塗料用ポリエステルポリオール系光硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、ポリエステルポリオールは高温高湿環境下ではポリエステル主鎖が加水分解劣化を受けるため、高温高湿環境にさらされるシール材等への使用は不適当である。
上記の水蒸気透過性や高温高湿環境への耐久性を改良するものとして、ポリブタジエン系光硬化性樹脂組成物が知られている。例えば、特許文献3には、ブタジエンを1,2−結合で重合させて得られる高分子鎖又は水添された高分子鎖を有し、且つ分子内に水酸基を有する高分子の該水酸基をアクリロイル基やメタクリロイル基等の重合性官能基で修飾した液状ポリブタジエン(メタ)アクリレートを用いた光学器械や精密機械用の接着剤等が開示されている。しかし、これらは、水添ポリブタジエン系光硬化性樹脂としての分子量が低いために、架橋点間分子量が小さく、高架橋となりゴム弾性を阻害するため、水蒸気透過性には優れるが、弾性率が高く、伸びもなく引張強度が小さいばかりか疲労性も悪いので、シール材等にしようすると割れたりして実用性に乏しかった。
そこで、分子量や分子量分布を制御して高分子量化することができ、且つ光硬化性にも優れ、上述の硬化後の物性が大幅に改良される、末端変性水添共役ジエン系(共)重合体を含有する光硬化性液状樹脂が開発されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−202163号公報
【特許文献2】特開2000−219714号公報
【特許文献3】特開2002−371101号公報
【特許文献4】特公平1−53681号公報
【特許文献5】特開2007−145949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献5に記載の光硬化性液状樹脂を含有する組成物は、硬度が低く、且つ耐熱性が良好であり、シール材として有効に利用されている。しかし、電子部品用シール材として用いる場合、特に、電極周りのシール材(封止材)として用いられる場合には、電極による腐食が顕著となることがあった。また、多層フィルムの封止法として、予め張り合わされたフィルムの界面部位にシール材を塗布し、毛細管現象を利用してフィルム間へシール材を進入させてから紫外線によって硬化させる方法がしばしば採用されている。シール材の粘度が高い場合(例えば、23℃における粘度が50Pa・sを超える場合)には当該方法を採用できないという問題があり、さらに、多層フィルムに耐候性を付与するために、最外層に紫外線遮断層を設けることがあるが、この場合には、フィルム間へ侵入させたシール材を紫外線硬化させることができなくなってしまうという問題があった。
よって、本発明の課題は、水蒸気バリア性及び耐電極腐食性に優れており、低粘度であり、さらに、特定波長の紫外線の遮断環境下でも紫外線硬化が可能な光硬化性樹脂組成物、及び該光硬化性樹脂組成物からなるシール材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、末端変性水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(a1)及び/又は末端変性水添共役ジエン系共重合体(a2)を含有するゴム(A)を用い、反応性希釈剤(B)と共に、特定の光重合開始剤(C)をそれぞれ特定量含有させることによって、水蒸気バリア性及び耐電極腐食性に優れており、低粘度であり、さらに、波長380nm以下の紫外線が遮断された環境下でも紫外線硬化が可能な光硬化性樹脂組成物を提供できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[8]に関する。
[1]末端変性水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(a1)及び/又は末端変性水添共役ジエン系重合体(a2)を含有するゴム(A)、
反応性希釈剤(B)、並びに
α−アミノアセトフェノン及び/又はアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤(C)
を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)成分と前記(B)成分の含有割合[(A):(B)]が、質量比で10:90〜90:10であり、前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜15質量部である、光硬化性樹脂組成物。
[2]前記(A)成分が前記(a1)成分と前記(a2)成分とを含有し、(a1)成分と(a2)成分との混合割合[(a1):(a2)]が、質量比で10:90〜90:10である、上記[1]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[3]前記(A)成分が、前記(a1)成分及び前記(a2)成分のいずれか一方である、上記[1]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[4]前記(a1)成分が、末端アクリル変性水添スチレンブタジエンゴムであり、前記(a2)成分が、末端アクリル変性水添ブタジエンゴムである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[5]前記(a1)成分の重量平均分子量が2,000〜40,000であり、前記(a2)成分の重量平均分子量が2,000〜40,000である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[6]前記(B)成分が、ビニルエステル、(メタ)アクリルモノマー、N−ビニルモノマー及びポリチオール化合物から選択される液体光重合性モノビニルモノマーである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[7]23℃における粘度が0.1〜50Pa・sである、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなるシール材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、水蒸気バリア性及び耐電極腐食性に優れており、低粘度であり、さらに、波長380nm以下の紫外線が遮断された環境下でも紫外線硬化が可能な光硬化性樹脂組成物を提供することができる。さらに、該光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化物は低粘度(ショアA硬度=15〜60度)であるため、該光硬化性樹脂組成物はシール材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、末端変性水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(a1)及び/又は末端変性水添共役ジエン系共重合体(a2)を含有するゴム(A)、反応性希釈剤(B)、並びにα−アミノアセトフェノン及び/又はアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、前記(A)成分と前記(B)成分の含有割合[(A):(B)]が、質量比で10:90〜90:10であり、前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜15質量部を含有する。
以下、本発明の光硬化性樹脂組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0009】
〔(A)ゴム〕
(A)成分であるゴムは、必須成分として、末端変性水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(a1)及び末端変性水添共役ジエン系共重合体(a2)のうちの少なくとも1種を含有する。つまり、(A)成分としては、(a1)成分単独であってもよいし、(a2)成分単独であってもよいし、(a1)成分もしくは(a2)成分のいずれか2種以上のブレンドゴムであってもよいし、(a1)成分及び(a2)成分それぞれ1種以上からなるブレンドゴムであってもよい。
(A)成分が(a1)成分と(a2)成分とを含有する場合、(a1)成分と(a2)成分との含有割合[(a1):(a2)]は、光硬化性樹脂組成物の粘度及び硬度の観点から、質量比で、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは30:70〜70:30、さらに好ましくは40:60〜60:40である。
【0010】
((a1)末端変性水添スチレンブタジエンゴム、(a2)末端変性水添ブタジエンゴム)
成分(a1)は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールと不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる液状樹脂であり、成分(a2)は水添共役ジエン系重合体ポリオールと不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる液状樹脂である。
かかる水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール又は水添共役ジエン系重合体ポリオールは、下記工程(I)〜(III)により製造することが好ましい。
(I)飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤により、共役ジエン系単量体を重合、又は共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体とを共重合して、重量平均分子量2,000〜40,000及び分子量分布3以下を有する共役ジエン系重合体又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を製造する工程。
(II)前記共役ジエン系重合体又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体とアルキレンオキシドとを反応させて、共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを製造する工程。
(III)前記共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールに水素添加反応し、水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを製造する工程。
【0011】
前記工程(I)の反応はリビングアニオン重合であるために、分子量及び分子量分布を制御して重合できる。分子量は、ジリチウム開始剤と上記単量体の量により所定の分子量の重合体を重合することが可能であり、特に重量平均分子量が2,000以上(好ましくは5,000以上)では、分子量分布が2以下の狭い重合体を得易い。また、所望により、ランダマイザーの存在下にアニオン重合をさせてもよい。
次に、工程(II)として、上記工程(I)で得られた重合体又は共重合体(以下、(共)重合体と総称することがある。)の、リビングアニオンである重合体末端とアルキレンオキシドとを当量反応させることにより、両末端に水酸基を有する共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール(以下、(共)重合体ポリオールと総称することがある。)を得ることができる。
さらに、工程(III)として、主鎖に二重結合を有する工程(II)で得られた(共)重合体ポリオールに水素添加反応(以下、水添反応という)を行うことにより、水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール(以下、水添(共)重合体ポリオールと総称することがある。)を得ることができる。
【0012】
前記工程(I)で使用し得る共役ジエン系単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、硬化後に有することが好ましいゴム弾性確保の観点等から、1,3−ブタジエンが好ましい。
また、芳香族ビニル系単量体としては、硬化後のゴム物性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン又はp−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。芳香族ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記工程(I)で用いるジリチウム開始剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、特公平1−53681号公報には、モノリチウム化合物を第三級アミンの存在下に、2置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素(例えば1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン等)と反応させてジリチウム開始剤を製造する方法が記載されている。
ジリチウム開始剤を製造するときに用いるモノリチウム化合物としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム等が挙げられる。これらの中でも、sec−ブチルリチウムが好ましい。
【0014】
ジリチウム開始剤を製造する時に用いる第三級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等の低級脂肪族アミンやN,N−ジフェニルメチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、トリエチルアミンが好ましい。
また、上記2置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素としては、例えば、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,4−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,3−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン、1,4−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン等が好ましく挙げられる。
【0015】
前記ジリチウム開始剤の調製、及び(共)重合体の製造において用いる溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶媒が用いられる。なお、該溶媒については、特開2007−145949号公報に記載の溶媒を参照できる。
【0016】
また、工程(II)で用いるアルキレンオキシドとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド等が挙げられる。このポリオール化反応(工程(II))は、重合反応(工程(I))の直後に行うのが好ましい。
【0017】
工程(II)により得られた(共)重合体ポリオールの重量平均分子量が2,000以上(好ましくは5,000以上)であれば、架橋点間分子量を大きくすることができ、光硬化反応後、弾性率を低く且つ伸び(Eb)を大きくすることができるため、好ましい。一方、(共)重合体ポリオールの重量平均分子量が40,000以下のものを製造するのであれば、工程(I)にてジリチウム触媒で重合を行う際に、重合粘度が高くなり過ぎることがなく、重合プロセスとして固形分濃度を下げる必要がないので、低コストとなり好ましい。工程(II)により得られた(共)重合体ポリオールの重量平均分子量は、5,000〜40,000がより好ましく、5,000〜30,000がさらに好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、単分散ポリスチレンを基準としてポリスチレン換算で求めた値である。
また、分子量分布が3以下であれば、低分子量成分や高分子量成分による様々な影響を抑制することができる。特に、粘度は分子量の影響を大きく受けるため、分子量のブレは粘度バラツキとなる。前記方法であれば、狭い分子量分布の(共)重合体を合成できるため、再現性良く同じ分子量の(共)重合体を得ることができ、粘度を安定化させる効果が期待できる。なお、本明細書において、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、単分散ポリスチレンを基準としてポリスチレン換算で求めた重量平均分子量と数平均分子量から算出したものである。
本発明で用いるような液状の材料(液状樹脂)は、ディスペンサー塗布を行う場合が多く、この場合、材料粘度のバラツキは塗布後の寸法のバラツキを生じるので、粘度の安定化は重要であり、分子量分布は、3以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下である。
【0018】
工程(III)の水添反応は、有機溶媒中、水素加圧下及び水添触媒の存在下、工程(II)で得られた(共)重合体ポリオールに水素添加することによって行われる。
本発明方法で用いる水添触媒は、パラジウム−カーボン、還元ニッケル、ロジウム系等不均一系触媒:又はナフテン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物あるいはナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト等の有機コバルト化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物もしくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムのような有機リチウム化合物を組合せた均一触媒が使用できる。なお、共触媒として、例えばテトラハイドロフラン、エチレグリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物を用いてもよい。
また、他の水添反応方法としては、例えば上記水添前の(共)重合体ポリオールを、ジシクロペンタジエニルチタンハライド、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸ニッケルと周期律表第I〜III族の有機金属化合物からなる水素化触媒、カーボン、シリカ、ケイソウ土等で担持されたニッケル、白金、バラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム金属触媒やコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体等を触媒として、1〜100気圧に加圧された水素下、あるいはリチウムアルミニウムハイドライド、p−トルエンスルホニルヒドラジドの存在下、もしくはZr−Ti−Fe−V−Cr合金、Zr−Ti−Nb−Fe−V−Cr合金、LaNi5合金等の水素貯蔵合金の存在下、あるいは1〜100気圧に加圧された水素下で、水素化する方法、また、ジ−p−トリル−ビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウムのシクロヘキサン溶液とn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液を水素下で混合して得られる水素化触媒を用いて、1〜100気圧に加圧された水素下で、水素添加する方法等を挙げることができる。
【0019】
上述の各種水添触媒の中で、遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物の組み合わせからなるチーグラー系水添触媒又はパラジウム−カーボン系水添触媒が好ましい。
かかる遷移金属化合物としては、トリス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(アセチルアセトナート)クロム、トリス(アセチルアセトナート)マンガン、ビス(アセチルアセトナート)マンガン、トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)コバルトジクロライド、ビス(2−ヘキサノエート)ニッケル、ビス(2−ヘキサノエート)コバルト、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド等が挙げられる。これらの中でも、水添活性の観点から、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)コバルトが好ましい。
また、チーグラー系水添触媒に用いるアルキルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロリド。これらの中でも、水添活性の観点から、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが好ましく、トリイソブチルアルミニウムがより好ましい。
【0020】
チーグラー系水添触媒の使用形態に特に制限はないが、予め遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物とを反応させた触媒溶液を調製し、それを重合溶液に添加する方法を好ましく挙げることができる。かかる際に用いるアルキルアルミニウム化合物の量は、遷移金属化合物1モルに対して0.2〜5モルが好ましい。上記の触媒調製の反応は、−40〜100℃、好ましくは0〜80℃の温度範囲で行われ、反応時間は1分〜3時間の範囲である。
【0021】
また、工程(III)の水添反応の温度は、通常、好ましくは50〜180℃、より好ましくは70〜150℃である。また、該水添反応は、好ましくは5〜100気圧(5,066.25〜101,325hPa)、より好ましくは10〜50気圧(10132.5〜50,662.5hPa)の水素圧にて行われる。反応温度及び水素圧がこの範囲であれば、触媒活性を高く維持でき、触媒の失活や副反応等が起こり難いため、好ましい。
【0022】
以上のようにして得られる水添(共)重合体ポリオールに不飽和炭化水素基含有化合物を反応させることにより、該水添(共)重合体ポリオールの末端に不飽和炭化水素基を導入して、前記成分(a1)又は(a2)を製造することができる。
前記成分(a1)としては、末端アクリル変性水添スチレンブタジエンゴムが好ましく、また、前記成分(a2)としては、末端アクリル変性水添ブタジエンゴムが好ましい。つまり、該不飽和炭化水素基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネートが好ましく、これらとの反応により、上記の水添(共)重合体ポリオールは(メタ)アクリレート化される。
(メタ)アクリロイルイソシアネートとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましく挙げられる。
【0023】
末端変性水添スチレンブタジエンゴム(a1)及び末端変性水添ブタジエンゴム(a2)の重量平均分子量は、いずれも、好ましくは2,000〜40,000、より好ましくは5,000〜40,000、より好ましくは5,000〜30,000、より好ましくは10,000〜30,000、さらに好ましくは15,000〜20,000である。
また、末端変性水添スチレンブタジエンゴム(a1)及び末端変性水添ブタジエンゴム(a2)の分子量分布(Mw/Mn)は、いずれも、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下である。
(a1)成分及び(a2)成分の重量平均分子量がこの範囲内であると、末端変性水添スチレンブタジエンゴムの粘度が高くなり過ぎず、取り扱い性が良好であり、且つ光重合開始剤の粘度を低くすることができる。また、分子量分布が3以下であれば、量産する場合に再現性を得やすく、同程度の分子量の(共)重合体を得ることが容易になる。
(a1)成分及び(a2)成分における水素添加率は、いずれも、水蒸気バリア性及び耐熱性の観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
また、末端変性水添スチレンブタジエンゴム(a1)のスチレン由来の構成単位の含有量(以下、スチレン含有量と称する。)に特に制限はないが、全構成単位に対して、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0024】
〔(B)反応性希釈剤〕
本発明の光硬化性樹脂組成物は、反応性希釈剤を含有したものである。反応性希釈剤は、光硬化性樹脂組成物の粘度を低下させ、塗布を容易にするものであり、光硬化性樹脂組成物の光硬化の際に重合し得るものである。
反応性希釈剤としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル、(メタ)アクリルモノマー、N−ビニルモノマー及びポリチオール化合物等から選択される液体光重合性モノビニルモノマーなどを用いることができ、低粘度であるという観点及び硬化反応を制御し易いという観点から、(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル等が挙げられる。これらの中でも、水蒸気バリア性及びシール性の観点から、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
N−ビニルモノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
ポリチオール化合物としては、分子内にメルカプト基を2〜6個有するものであれば特に制限はなく、例えば、炭素数2〜20程度のアルカンジチオール等の脂肪族ポリチオール類;キシリレンジチオール等の芳香族ポリチオール類;アルコール類のハロヒドリン付加物のハロゲン原子をメルカプト基で置換してなるポリチオール類;ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール類;分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコール類と、チオグリコール酸、β−メルカプトプロピオン酸又はβ−メルカプトブタン酸とのエステル化物からなるポリチオール類等が挙げられる。
【0026】
本発明の光硬化性樹脂組成物における(A)成分と(B)成分との含有場合[(A):(B)]は、粘度と硬度の観点から、質量比で、10:90〜90:10であることが重要である。この観点から、(A)成分と(B)成分との含有場合[(A):(B)]は、質量比で、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30、さらに好ましくは40:60〜60:40である。
【0027】
〔(C)α−アミノアセトフェノン及び/又はアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤〕
本発明の光硬化性樹脂組成物は、(C)成分として、α−アミノアセトフェノン及びアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤のうちの少なくとも1種を含有する。光重合開始剤の中でも、α−アミノアセトフェノン及びアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤のうちの少なくとも1種を含有させることにより、耐電極腐食性に優れ、波長380nm以下の紫外線の遮断環境下でも紫外線硬化が可能な光硬化性樹脂組成物とすることができる。このことから、アミノアセトフェノンやアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤では、波長380nm以上の活性エネルギー線についても吸収できたものと推測される。耐電極腐食性に優れ、紫外線遮断環境下でも紫外線硬化が可能な光硬化性樹脂組成物とする観点から、少なくとも以下のα−アミノアセトフェノンを用いることが好ましい。
【化1】

【0028】
アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば下記一般式(1)又は(2)で表わされるものが好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
上記一般式中、R1〜R5は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基を表す。R6は、炭素数1〜15のアルキル基を表す。p1〜p5は、それぞれ独立して、0〜3の整数を表す。qは、0又は1を表す。
1〜R5がそれぞれ独立して表す炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基(「各種」とは、直鎖及びあらゆる分岐鎖を含むことを示す。以下同様である。)、各種ブチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。R1〜R5がそれぞれ独立して表す炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。これらの中でもメトキシ基が好ましい。
6が表す炭素数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数4〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数5〜8のアルキル基がさらに好ましい。
一般式(1)において、p1は、3が好ましい。p2は、qが0である場合は、0が好ましく、qが1である場合は、3が好ましい。p3は、0が好ましい。また、一般式(2)において、p4及びp5は、いずれも2が好ましい。
一般式(1)又は(2)で表されるアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤の好ましい具体例を以下に示すが、特にこれらに制限されるものではない。
【0031】
【化3】

【0032】
本発明では上記特定の光重合開始剤が用いられるが、代わりにその他の光重合開始剤、例えばα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤等を用いた場合には、耐電極腐食性に乏しく、且つ380nm以下の紫外線の遮断環境下では紫外線硬化が不可能な光硬化性樹脂組成物となる。
本発明の光硬化性樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.01〜15質量部である。0.01質量部未満であると、波長380nm以下の紫外線の遮断環境下における硬化性が不足し、光硬化性樹脂組成物のシール性(封止性)が乏しくなる。一方、15質量部を超えても添加効果は頭打ちとなり、製造コストの負担が大きくなる。この観点から、光硬化性樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.3〜13質量部、より好ましくは0.5〜13質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは0.5〜3質量部である。
なお、本発明の光硬化性樹脂組成物は、本発明の効果が失われない程度において、前記(C)成分以外のその他の光重合開始剤を含有してもよい。これらのその他の光重合開始剤を含有する場合、その含有量は、耐電極腐食性等の観点から、(A)成分100質量部に対して好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下である。
【0033】
〔(D)添加剤〕
本発明の光硬化性樹脂組成物は、さらに各種添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては特に制限は無いが、例えば光増感剤、無機充填材、増粘剤、粘着付与樹脂、チタンブラック等の着色剤、1,4−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N′−エチルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物などが挙げられる。
−光増感剤−
光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物;o−トリルチオ尿素等の尿素類;ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフォネート等のイオウ化合物;N,N−ジ置換−p−アミノベンゾニトリル化合物等のニトリル類;トリ−n−ブチルホスフィン等のリン化合物;N−ニトロソヒドロキシルアミン誘導体等のその他の窒素化合物等を挙げることができる。
【0034】
−増粘剤−
光硬化性樹脂組成物に増粘剤を含有させることにより、増粘性や揺変性(チクソトロピー)が付与され、成形性を向上させることができる。該増粘剤としては、無機充填剤及び有機増粘剤が挙げられる。
無機充填剤としては、湿式シリカや乾式シリカの表面処理微粉シリカや、有機化ベントナイト等の天然鉱物系のものが挙げられる。より具体的には、乾式法により微粉化したシリカ微粉末[例えば、「アエロジル300」(日本アエロジル株式会社製)等]、このシリカ微粉末をトリメチルジシラザンで変性した微粉末[例えば、「アエロジルRX300」(日本アエロジル株式会社製)等]及び上記シリカ微粉末をポリジメチルシロキサンで変性した微粉末[例えば、「アエロジルRY300」(日本アエロジル株式会社製)等]等が挙げられる。無機充填剤の平均粒径は、増粘性及び透明性の観点から、5〜50μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。
有機増粘剤としては、アマイドワックス、水添ひまし油系又はこれらの混合物等が挙げられる。より具体的には、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)の水添品である水添ひまし油[例えば、「ADVITROL 100」(ズードケミー触媒株式会社製)、「ディスパロン(登録商標)305」(楠本化成株式会社製)等]及びアンモニアの水素をアシル基で置換した化合物である高級アマイドワックス[例えば、「ディスパロン(登録商標)6500」(楠本化成株式会社製)等]等が挙げられる。
−粘着付与樹脂−
粘着付与樹脂としては、例えばテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体等が挙げられる。
【0035】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、例えばプラネタリーミキサー等の混合機にて、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(C)成分、並びに必要に応じて前記(D)成分等を十分に混合することにより得られる。こうして得られた光硬化性樹脂組成物は、例えば電子部品の封止すべき箇所へ塗布されるか、又は予め張り合わされた多層フィルムのフィルム間の界面部位に塗布して毛細管現象によって当該組成物を進入させてから、活性エネルギー線を照射することにより硬化させてシール(封止)することができる。なお、本発明の光硬化性樹脂組成物をシール材(封止材)として用いれば、多層フィルムの最外層に紫外線遮断層が設けられていても、活性エネルギー線によって硬化させることが可能である。
なお、前記活性エネルギー線としては、粒子線、電磁波及びこれらの組み合わせが挙げられる。粒子線としては、電子線(EB)及びα線が挙げられ、電磁波としては、紫外線(UV)、可視光線、赤外線、γ線及びX線等が挙げられる。これらの中でも、活性エネルギー線としては、紫外線を使用することが好ましい。紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等を挙げることができる。活性エネルギー線は、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気又は酸素濃度を低下させた雰囲気下にて照射することが好ましいが、通常の空気雰囲気でも十分に硬化させることができる。照射温度は、通常、好ましくは10〜200℃であり、照射時間は、通常、好ましくは10秒〜60分である。積算光量は、通常、好ましくは1,000〜20,000mJ/cm2である。
【0036】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、23℃における粘度が好ましくは0.1〜50Pa・s、より好ましくは0.5〜30Pa・s、さらに好ましくは0.5〜15Pa・s、さらに好ましくは1〜10Pa・s、特に好ましくは2〜4Pa・sであり、低粘度であるため、予め張り合わされたフィルムの界面部位に本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布し、毛細管現象を利用してフィルム間へ該光硬化性樹脂組成物を進入させることが可能である。なお、上記粘度は、実施例の記載の方法に従って測定した値である。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で得られた光硬化性樹脂組成物について、以下の方法に従って、透湿性、耐電極腐食性及び粘度を評価又は測定し、さらに該光硬化性樹脂組成物が波長380nm以下の紫外線が遮断された紫外線の照射によって硬化するか否かを調査した。また、該光硬化性樹脂組成物を紫外線照射によって硬化させて得られた硬化物の硬度を以下の方法に従って測定した。
【0038】
(透湿性の評価方法)
JIS L1099に記載のA法の透湿カップを使用し、JIS Z0208に準拠して40℃、相対湿度90%の条件で測定した。なお、試験体としては、厚さ0.86mmのシートを用いた。値が小さいほど、水蒸気バリア性に優れていることを示す。
(耐電極腐食性の評価方法)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にインジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)により回路をプリントし、各例で得られた光硬化性樹脂組成物を回路上に厚さ約1mmでシールし、UV照射して硬化させた。この後、回路に80Vの電圧をかけて、60℃湿度90%にて96時間放置した。放置後の抵抗値から放置前の抵抗値を引き、得られた数値を耐電極腐食性の指標とした。数値が小さいほど、耐電極腐食性が高いことを示す。
(粘度の測定方法)
室温条件下(23℃)で、レオメーター「RS−600」(ハーケ社製)にて、各例で得られた光硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。硬化前の光硬化性樹脂組成物を30℃に調整し、ギャップ0.2mmで、剪断速度を1〜10s-1の範囲で変えながら、剪断応力を測定し、剪断速度と応力の1/2乗をプロットしたキャッソンプロットから最小二乗法による近似線を引き、剪断速度1s-1における粘度を算出した。
【0039】
(波長380nm以下の紫外線が遮断された紫外線の照射による硬化の可否調査)
各例で得られた光硬化性樹脂組成物上に、PETフィルム、波長380nm以下が遮断されるUVカットフィルムの順に積層し、UVカットフィルム側から活性エネルギー線を照射した。その後、PETフィルムとUVカットフィルムを剥がして、残物が固形か液状かを確認し、光硬化性樹脂組成物の硬化又は未硬化の判定を行った。
なお、活性エネルギー線の照射は、紫外線照射機「SE−UV1501BA−LT」(センエンジニアリング株式会社製)により、空気雰囲気下、室温で放射照度150mW/cm2(波長:320〜390nm)にて60秒間行った。
(硬度の測定方法)
各例で得られた光硬化性樹脂組成物を、シート状にしてUV照射硬化後、シートを重ねて厚さが約6mmとなるように調整し、JIS K6253(タイプAデュロメータ)に準拠して硬度を測定した。
なお、活性エネルギー線の照射は、紫外線照射機「SE−UV1501BA−LT」(センエンジニアリング株式会社製)により、空気雰囲気下、室温で放射照度150mW/cm2(波長:320〜390nm)にて60秒間行った。
【0040】
<製造例1>末端変性水添スチレンブタジエンゴムの製造
アルゴン置換した内容積7Lの反応器に、脱水精製したシクロヘキサン1.90kg、22.9質量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液2kg、20.0質量%のスチレンのシクロヘキサン溶液0.573kg、1.6mol/Lの2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液130.4mlを添加した後、0.5mol/Lのジリチウム重合開始剤108.0mlを添加して重合を開始させた。混合液を50℃に昇温し、1.5時間重合を行なった後、1mol/Lのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液108.0mlを添加し、さらに2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。
得られた共重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、十分に乾燥させて、分子末端に水酸基を有するスチレンブタジエンゴム(スチレン含有量:20質量%、重量平均分子量18,000、分子量分布1.15)を得た。なお、重量平均分子量は、GPC法(Gel Permeation Chromatography)を用い、ポリスチレン換算により求めた。
【0041】
(水素添加処理)
上記で得られた分子末端に水酸基を有するスチレンブタジエンゴム120gを、十分に脱水精製したヘキサン1Lに溶解した後、予め別の容器で調整したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム及びブタジエン[それぞれ1:3:3(モル比)]の触媒液を、前記スチレンブタジエンゴムのブタジエン由来の構成単位1,000molに対してニッケル1molになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を2.758MPa(400psi)で加圧添加し、110℃にて4時間、水素添加反応を行なった。
その後、3mol/m3の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、さらに遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。そして、分子末端に水酸基を有する水添スチレンブタジエンゴムをイソプロピルアルコール中に沈殿させ、さらに十分に乾燥させて、分子末端に水酸基を有する水添スチレンブタジエンゴム(スチレン含有量20質量%、重量平均分子量16,500、水素添加率98%、分子量分布1.1)を得た。
(分子末端の変性処理)
こうして得られた分子末端に水酸基を有する水添スチレンブタジエンゴムをシクロヘキサンに溶解し、40℃にて攪拌しながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(「カレンズ(登録商標)AOI」、昭和電工株式会社製)をゆっくり滴下し、さらに4時間攪拌を行なった後、イソプロピルアルコール中に結晶を沈殿させ、末端変性水添スチレンブタジエンゴムを得た。
【0042】
<実施例1〜4、比較例1〜5>
表1に示した配合量(単位:質量部)で各成分をプラネタリーミキサーにて混合し、光硬化性樹脂組成物を得た。該光硬化性樹脂組成物を用いて、前記方法に従って各評価及び測定を行った。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
*1:製造例1で得た末端変性水添スチレンブタジエンゴム
*2:株式会社クラレ製、重量平均分子量=7,000
*3:「CN9014」、サートマー社製
*4:イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業株式会社製
*5:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、日立化成工業株式会社製
*6:「イルガキュア(登録商標)36P」(BASF社製)
*7:「LUCIRIN(登録商標)TPO」(BASF社製)、下記化学構造式参照
*8:「イルガキュア(登録商標)184」(BASF社製)、下記化学構造式参照
*9:測定温度を50℃に変更した。
【化4】

【0045】
表1より、本発明の光硬化性組成物は、23℃にて低粘度であり、透湿性が低く、且つ耐電極腐蝕性が高い。さらに、波長380nm以下の紫外線が遮断された環境下でも紫外線照射によって硬化させることが可能であることがわかる。
一方、比較例1の光硬化性樹脂組成物は、(a2)成分を含有しておらず、また、本発明で特定している(C)成分以外の光重合開始剤を含有しているため、粘度が高く、さらに波長380nm以下の紫外線が遮断された環境下では紫外線硬化させることができなかった。比較例2〜4では、(a1)成分に加えて(a2)成分を含有させたものの、また、本発明で特定している(C)成分以外の光重合開始剤を含有しているため、波長380nm以下の紫外線が遮断された環境下では紫外線硬化させることができなかった。さらに、比較例5は(B)成分を含有していない場合であり、波長380nm以下の紫外線が遮断された環境下で紫外線硬化させることができたが、粘度が高すぎて、「毛細管現象を利用してフィルム間へシール材を進入させてから紫外線によって硬化させる方法」を採用することができず、本発明の課題を解決することができない光硬化性樹脂組成物であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、水蒸気バリア性及び耐電極腐食性に優れており、低粘度であり、さらに、380nm以下の紫外線の遮断環境下でも紫外線硬化が可能であるため、シール材(封止材)、特に電子部品用シール材(封止材)として有用である。より具体的には、有機エレクトロルミネッセンス素子及び無機エレクトロルミネッセンス素子等の電子ディスプレイの封止材用途や、LEDが用いられる携帯電話、デジタルビデオカメラ、PDA等の電子機器のバックライト、大型ディスプレイ、道路表示器等の表示部、及び一般照明等の発光素子の封止材などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端変性水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(a1)及び/又は末端変性水添共役ジエン系重合体(a2)を含有するゴム(A)、
反応性希釈剤(B)、並びに
α−アミノアセトフェノン及び/又はアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤(C)
を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)成分と前記(B)成分の含有割合[(A):(B)]が、質量比で10:90〜90:10であり、前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜15質量部である、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が前記(a1)成分と前記(a2)成分とを含有し、(a1)成分と(a2)成分との混合割合[(a1):(a2)]が、質量比で10:90〜90:10である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、前記(a1)成分及び前記(a2)成分のいずれか一方である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(a1)成分が、末端アクリル変性水添スチレンブタジエンゴムであり、前記(a2)成分が、末端アクリル変性水添ブタジエンゴムである、請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(a1)成分の重量平均分子量が2,000〜40,000であり、前記(a2)成分の重量平均分子量が2,000〜40,000である、請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、ビニルエステル、(メタ)アクリルモノマー、N−ビニルモノマー及びポリチオール化合物から選択される液体光重合性モノビニルモノマーである、請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
23℃における粘度が0.1〜50Pa・sである、請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなるシール材。

【公開番号】特開2013−28681(P2013−28681A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164559(P2011−164559)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】