説明

光硬化性歯科用組成物

本発明は、390nmよりも大きい波長の放射によって光架橋でき、且つ、アンモニウム官能基を含有する少なくとも1個の基Gによって置換されたチオキサントン塩である光増感剤(E)を含む歯科用組成物に関する。この組成物は、最終歯科用製品の色安定性の問題を解決するという効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、歯科用組成物の分野である。特に、本発明において開発された歯科用組成物は、歯科補綴物を製造するために及び歯の修復のために使用できる。
【背景技術】
【0002】
これらの歯科用組成物は、従来、エポキシ樹脂又は光硬化性シリコーン又はフリーラジカル重合性アクリレート樹脂であった。これらの組成物は、粒状補強充填剤(例えば、疎水性化シリカの)と、光開始剤と、随意に光増感剤と、顔料又は安定剤のようなさらに他の機能性添加剤とをさらに含む。
【0003】
これらのものを混合した後に、これらの組成物を成形し、次いで歯の構造的主要部と類似するものに光硬化させる。
【0004】
例えば、仏国特許FR−A−2784025号には、陽イオンによって及び照射下で重合/架橋でき、その後熱架橋される又は熱架橋されないシリコーン樹脂を基材とする歯科用組成物が記載されている。これらのシリコーン樹脂は、オキシラン(エポキシド、オキセタンなど)又はビニルエーテル官能基を含有する。このような組成物は、
・1種以上の陽イオン重合性及び/又は架橋性ポリジメチルシロキサンであって、それらの末端の少なくとも一つに次式:
【化1】

の反応性官能基を有するもの、
・有効量の少なくとも1種の硼酸オニウム開始剤:
【化2】

・少なくとも1種の光増感剤、及び
・随意にヘキサメチルジシラザン又はポリジメチルシロキサンで処理された、歯科用ガラス、ポリメタクリル酸メチル又は熱分解法シリカを基材とし、200m2/gの比表面積を有する、少なくとも1種の不活性又は補強充填剤
を含む。
【0005】
これらの歯科用組成物は、歯科補綴物又は義歯を製造することを目的とするもの及び歯の修復を目的とするものである。
【0006】
これらのシリコーンは、有機樹脂を陽イオン架橋させることについて、UV−可視光に対して非常に透過性があるため、可視範囲>400nmで放射するUVランプで非常に短時間(数分以内)に光硬化される非常に厚い材料(数ミリメートルの厚さ)を製造することができるという利点を有する。
【0007】
しかしながら、これらのシリコーンは、ヨードニウム塩及び、光硬化中に390nmよりも大きい波長の放射にさらされたときに大きな色の変化をもたらす光増感剤、特にチオキサントンと共に処方される。これは、最終生成物(暴露後)にピンク色を呈するが、これは、美的観点から望ましくない。さらに、光増感性の使用によって生ずる別の問題は、非常に厚い材料(数ミリメートルの厚さ)を製造するときの不十分な架橋速度に関する。
【0008】
従って、従来技術では、仕上げ歯科用製品の色安定性が低い(架橋後の)こと及び非常に厚い材料(数ミリメートルの厚さ)を製造するときの不十分な架橋速度という二重の問題に対する満足のいく解決手段が提供されていないことは明らかである。
【特許文献1】仏国特許第2784025号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の必須の目的の一つは、特にUV下で陽イオン重合できる単位(例えば、オキシラン)を基材とし、しかも従来技術の欠点を示さない新規な光硬化性歯科用組成物を提供することによって、これを改善させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、とりわけ、まず、390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物であって、
(1)少なくとも1種の陽イオン反応性化合物(A)と、
(2)少なくとも1種の歯科用充填剤(B)と、
(3)随意に、少なくとも1種の有機重合体又は共重合体を含む少なくとも1種の分散剤(C)と、
(3)少なくとも1種の陽イオン性光開始剤(D)と、
(4)アンモニウム官能基を含有する少なくとも1個の基Gで置換されたチオキサントン塩である少なくとも1種の光増感剤(E)と
を含み、該光増感剤(E)(少なくとも1種のカンファーキノン、フェナントレンキノン及び/又は置換アントラセンと随意に併用される)が、次式:
【化3】

(式中、
・R22及びR23は、同一又は異なるものであり、そして水素又は随意に置換されたC1〜C10アルキル基を表し、好ましくはR22=R23=メチルであり、
・(Y-)は、BF4-、PF6-、SbF6-、以下に定義される式[BXab-の陰イオン(I)、RfSO3-、(RfSO23-又は(RfSO22-(ここで、Rfは、少なくとも1個のハロゲン原子、好ましくは弗素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基である。)よりなる群から選択される陰イオン性部分であり、さらに好ましくは(Y-)は、次式:[B(C63(CF324-及び[B(C654-のボレートから選択され、ここで、式[BXab-の前記陰イオン(I)は次の態様で定義される:
・a及びbは、aについては0〜3の範囲の整数であり、bについては1〜4の整数であり、ここで、a+b=4であり、
・記号Xは、
*ハロゲン(塩素、弗素)原子(ここで、a=0〜3である)、又は
*OH官能基(ここで、a=0〜2である)
を表し、
・記号Rは、同一又は異なるものであり、そして
・前記陽イオン性部分が第15〜17族元素のオニウムであるときには、例えば、OCF3、CF3、NO2若しくはCNのような少なくとも1個の電子求引基によって及び/又は少なくとも2個のハロゲン原子(特に弗素)で置換されたフェニル基、
・前記陽イオン性部分が第4〜10族元素の有機金属錯体であるときには、少なくとも1個の電子求引元素又は電子求引基、特にハロゲン原子(特に弗素)、CF3、OCF3、NO2又はCNで置換されたフェニル基、或いは
・陽イオン性部分に関わらず、少なくとも1個の電子求引元素又は電子求引基、特にハロゲン原子(特に弗素)、OCF3、CF3、NO2又はCNで置換されていてよい、例えばビフェニル、ナフチルのような、少なくとも2個の芳香核を含有するアリール基
を表す。)
を有する歯科用組成物を提供する、本発明によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
驚くべきことに、また予期せぬことに、チオキサントンの所定の部類が、光増感剤の使用に関連した問題、すなわち、最終歯科用製品の色安定性が低いこと(架橋後の)及び非常に厚い歯科用材料(数ミリメートルの厚さ)を製造するときの不十分な架橋速度という問題を解決することが可能であることを示したのは、本出願人の功績である。
【0012】
一つの非常に有利な具体例によれば、光増感剤(E)及び陽イオン性光開始剤(D)は、これらのものが同一の陰イオンから構成されるように選択される。該陰イオンは、好ましくは、次式:[B(C63(CF324-及び[B(C654-のボレートから選択される。
【0013】
特に好ましい具体例として、少なくとも1種のカンファーキノン、フェナントレンキノン及び/又は置換アントラセンと随意に併用される光増感剤(E)は、次式:
【化4】

から選択される。
【0014】
本発明に従う有用な陽イオン反応性化合物(A)としては、エポキシド、ビニルエーテル、オキセタン、スピロ−オルトカーボネート、スピロ−オルト−エステル及びそれらの組合せを含む単量体及び/又は(共)重合体を挙げることができる。
【0015】
一つの好ましい具体例によれば、陽イオン反応性化合物(A)は、架橋性及び/又は重合性であり、周囲温度では液体であり又は100℃よりも低い温度では熱可融性の少なくとも1種のシリコーンオリゴマー又は重合体(A−1)から構成され、かつ、次の成分:
(a)次式:
【化5】

(式中、
・a=0、1又は2であり、
・R0は、それぞれ同一又は異なるものであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ビニル、ヒドロゲノ又はアルコキシ基、好ましくはC1〜C6低級アルキルを表し、
・Zは、それぞれ同一又は異なるものであり、少なくとも1個の反応性オキシラン、アルケニルエーテル、オキセタン、ジオキソラン及び/又はカーボネート官能基を含有する有機置換基である。)
の少なくとも1個の単位と、
(b)少なくとも2個の珪素原子と
を含む。
【0016】
単位(M−1)は、好ましくは、次の基:
【化6】

(ここで、R”はC1〜C6直鎖又は分岐アルキル基を表す。)
よりなる群から選択される置換基Zを含む。
【0017】
本発明の第2の有利な変形例によれば、シリコーンオリゴマー又は重合体(A−1)は、少なくとも1種のシリコーンであって、その平均式が以下に記載される式(S−1)〜(S−92)よりなる群から選択される式のうちの一つに相当する:
【化7】





(ここで、L=H、OH、Me、フェニル、C1〜C12アルキル、C1〜C6シクロアルキル又は次の基:
【化8】

である。)
【化9】

(ここで、n<100、a<100及びm<100である。)
【化10】

(ここでn<100であり、
これらの式において、RO又はR0は、同一又は異なるものであり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基、好ましくはC1〜C6低級アルキルを表す。)
【化11】





















(これらの式において、基Dは、直鎖又は分岐C1〜C12アルキルであり、nは1〜20の整数であり、Ar=アリール基である。)。
【0018】
一つの好ましい具体例によれば、陽イオン反応性化合物(A)は、次式:
【化12】

(式中、
【化13】

であり、
・Rは同一又は異なるものであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ビニル、ヒドロゲノ又はアルコキシ基、好ましくはC1〜C6低級アルキルを表し、
・Zは同一又は異なるものであり、少なくとも1個のオキシラン、アルケニルエーテル、オキセタン及び/又はカーボネート官能基を含有する有機置換基であり、
・a+b=3である。)
のシラン(G−3)である。
【0019】
一つの好ましい具体例によれば、シラン(G−3)は、次の分子(S−93)〜(S−95):
【化14】

よりなる群から選択される。
【0020】
別の好ましい具体例によれば、陽イオン反応性化合物(A)は、次の分子(S−96)〜(S−104):
【化15】

(式中、nは1〜10の整数である。)
【化16】

(ここで、n<100であり、D=直鎖又は分岐C1〜C12アルキルである。)
よりなる群から選択される有機化合物(G−4)である。
【0021】
タイプ(S−103)の選択可能な分子としては、ダウケミカル社によって販売されている樹脂UVR6150(商標)及び
【化17】

(ここで、n<100であり、基D=直鎖又は分岐C1〜C12アルキルである。)
が挙げられる。
【0022】
タイプ(S−104)の樹脂については、n=0のものが本発明にとって特に好適である。
【0023】
本発明の別の有利な変形例によれば、陽イオン反応性化合物(A)は、シリコーンオリゴマー又は重合体(A−1)部分の80重量%未満を占める有機エポキシ又はオキセタン樹脂と混合される。選択される官能性有機樹脂のなかで、好ましいのは、反応性官能基の重量パーセンテージが20%未満、好ましくは15%未満であるものである。これに対応して重合による容積縮みが減少するであろう。
【0024】
式(R−1)及び(R−2)の樹脂を選択することが好ましい:
【化18】

(ここで、n<100であり、D=直鎖又は分岐C1〜C12アルキルである。タイプ(R−1)の樹脂のうち、ダウケミカル社によって販売されている樹脂UVR6150を選択することが可能である。)
【化19】

(ここで、n<100であり、D=直鎖又は分岐C1〜C12アルキルである。タイプ(R−2)の樹脂のうち、n=0の樹脂を選択することが可能である。)。
【0025】
本発明に従う組成物を製造するために、歯科用充填剤(B)の異なるタイプを使用することができる。これらの充填剤は、歯科用組成物の最終用途の関数として選択される:これらは、該歯科用組成物の架橋及び/又は重合後に得られる材料の外観、UV放射の透過のような重要な特性及び機械的性質と物性にも影響を与える。
【0026】
補強充填剤としては、珪素の酸化物を基材とする未処理又は処理済み熱分解法シリカ充填剤、非晶質シリカ充填剤、クオーツ、ガラス又は非ガラス質充填剤、例えば、米国特許第6297181号に記載されたタイプのもの(バリウムを除く)、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、弗素、アルミニウム、チタン又は亜鉛のタイプのもの、ボロシリケート、アルミノシリケート、タルク、スフェロシル、イッテルビウム、三弗化物、粉末状の重合体、例えば、不活性又は官能化ポリメタクリル酸メチル又はポリエポキシド若しくはポリカーボネートを基材とする充填剤、セラミック(Si−C、Si−O−C、Si−N、Si−N−C、Si−N−C−O)のホイスカー及びガラス繊維を使用することができる。
【0027】
例としては、次のものが挙げられる:
・歯科分野において使用することができ且つピンク色に着色されている、ポリメタクリル酸メチルを基材とする不活性充填剤LUXASELF(商標)(UGL社によって販売)、
・200m2/gの比表面積を有する、ポリジメチルシロキサン又はヘキサメチルジシラザンで処理されたヒュームドシリカ充填剤、
・未処理ヒュームドシリカ充填剤(デグッサ社によって販売されているAerosil AE200(商標)又はOX50(商標))、及び
・酸化珪素、酸化バリウム及び/又は酸化ストロンチウムを基材とするガラス。
【0028】
一つの好ましい具体例によれば、歯科用充填剤(B)は、無機ガラス又はヒュームドシリカである
【0029】
本発明の一つの有利な特徴によれば、歯科用充填剤(B)は、歯科用組成物の総重量に対して、85重量%まで、好ましくは50〜85重量%、より好ましくは60〜85重量%を占める。
【0030】
本発明によれば、分散剤(C)は、次のもの:アルキルアンモニウム塩の形態であってよいポリウレタン/アクリレート共重合体、アルキルアンモニウム塩の形態であってよいアクリル共重合体、カルボン酸のモノジエステル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、変性ポリウレタン、ポリオールポリアクリレート、それらの共重合体又はそれらの混合物よりなる群から選択される。商品名Disperbyk(Byk社商標)又はSolsperse(Avecia社商標)の下に販売されている分散剤が本発明にとって特に好適である。特に及び例えば、次の市販製品:Disperbyk(商標)164、Disperbyk(商標)161、Disperbyk(商標)166、Disperbyk(商標)2070、Disperbyk(商標)9075及びDisperbyk(商標)9076が挙げられる。また、次の特許文献:
・ポリウレタン/イミダゾールアクリレート又はエポキシドを基材とする分散剤を記載する米国特許第5882393号、
・ポリウレタンを基材とする分散剤を記載する米国特許第5425900号、
・ポリウレタン/ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルを基材とする分散剤を記載する米国特許第4795796号、
・ε−カプロラクトン及びδ−バレロラクトンから誘導されるポリウレタン/ポリ(オキシアルキレンカルボニル)を基材とする分散剤を記載する国際公開WO−A−99/56864号パンフレット、
・ポリウレタン/ポリビニル/ポリアクリレートランダム共重合体及びポリオキシアルキレンポリエーテルを含むグラフトポリオールポリアクリレート分散剤を記載する欧州特許第0403197号
で引用された分散剤も挙げられる。
【0031】
定量的に言えば、分散剤(C)は、50ppm〜1%、好ましくは100ppm〜5000ppmの割合で存在する。
【0032】
分散剤(C)のアミン指数は、好ましくは、1gの分散剤(C)当たり60mg以下、より好ましくは0.1〜50mgの水酸化カリウムである。
【0033】
該分散剤の酸指数は、1gの分散剤当たり、有利には200mg以下、好ましくは100mg以下、好ましくは1〜60mgの水酸化カルシウムである。
【0034】
陽イオン性光開始剤(D)は、周期律表[Chem.& Eng.News,第63巻,No.5,26,1985年2月4日]の第15〜17族の元素の硼酸オニウム(独立して又は混合物で)又は周期律表[同一の文献]の第4〜10族元素の有機金属錯体の硼酸オニウムから選択される。
【0035】
一つの好ましい具体例によれば、陽イオン性光開始剤(D)は、ボレート型のものであり、そして、
(a)ボレートの陽イオン性部分が、
(1)次式:
[(R1n−A−(R2m+ (VII)
(式中、
・Aは、例えば、I、S、Se、P又はNのような第15〜17族元素を表し、
・R1は、C6〜C20複素環式又は炭素環式アリール基を表し、ここで、該複素環式基は、ヘテロ原子として窒素又は硫黄を含有することができ、
・R2は、R1又はC1〜C30直鎖又は分岐アルキル又はアルケニル基を表し、ここで、R1及びR2は、C1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ニトロ、クロル、ブロム、シアノ、カルボキシル、エステル又はメルカプト基で置換されていてよく、
・m及びnは整数であり、ここで、n+m=v+1であり、vは元素Aの原子価である。)
のオニウム塩、
(2)オキソイソチオクロマニウム塩、特に国際公開WO90/11303号パンフレットに記載されたもの、特に2−エチル−4−オキソイソチオクロマニウム又は2−ドデシル−4−オキソイソチオクロマニウムのスルホニウム塩、及び構造式V:
【化20】

(式中、
Aは、
【化21】

であり、
n1=1〜3の整数であり、
z1=0〜3の整数であり、
Xは、式M11r1(1)又は式Q1(2)(ここで、M11r1(1)において、M1=Sb、As、P、B又はClであり、Y1は、ハロゲン(好ましくはF又はCl)又はOを表し、r1は4〜6の整数であり、式Q1(2)はスルホン酸を表す。)の基、R81−SO3(ここで、R81は、アルキル若しくはアリール基であり、又はハロゲン、好ましくはF若しくはClで置換されたアルキル若しくはアリール基である。)を表し、
101は、アルキル又はシクロアルキル基(好ましくはC1〜C20)又はアリール基を表し、
21は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルケニル又はシクロアルキル基(好ましくはC1〜C20)、又はアリール基を表し、ここでR21の全ては互いに独立しているものとし、
31は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルケニル又はシクロアルキル基(好ましくはC1〜C20)、又はアリール基であり、ここでR31の全ては互いに独立しているものとし、
41は、水素、ハロゲン、アルケニル基(例えばビニル)、又はシクロアルケニル、アルキル若しくはシクロアルキル基(好ましくはC1〜C20)、アルコキシ又はチオアルコキシ基(好ましくはC1〜C20)、10個までのアルキレンオキシド単位を有し且つヒドロキシル又はアルキル(C1〜C12)を末端基とするポリアルキレンオキシド基、又はアリール基、又はアリールオキシ若しくはチオアリールオキシ基を表し、
51は、ハロゲン、アルケニル基(例えばビニル)、又はシクロアルケニル、アルキル若しくはシクロアルキル基(好ましくはC1〜C20)、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(好ましくはC1〜C20)、10個までのアルキレンオキシド単位を有し且つヒドロキシル又はアルキル(C1〜C12)を末端基とするポリアルキレンオキシド基、又はアリール基、又はアリールオキシ若しくはチオアリールオキシ基を表し、
61は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルケニル若しくはシクロアルキル基(好ましくはC1〜C20)又はアリール基を表し、
71は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルケニル若しくはシクロアルキル基(好ましくはC1〜C20)又はアリール基を表す。)
のオキソイソチオクロマニウム塩、
(3)次式:
(L123M)+q (VIII)
(式中、
・Mは、第4〜10族の金属、特に、鉄、マンガン、クロム又はコバルトを表し、
・L1は、π電子によって金属Mに結合した1個の配位子を表し、ここで、該配位子は、η3−アルキル、η5−シクロペンタジエニル及びη7−シクロヘプタトリエニル配位子並びに置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環であってそれぞれの環が3〜8個のπ電子を介して金属Mの原子価の層に寄与することができるものを有する化合物から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L2は、π電子によって金属Mに結合した配位子を表し、ここで、該配位子は、η7−シクロヘプタトリエニル配位子並びに置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環であってそれぞれの環が6又は7個のπ電子を介して金属Mの原子価の層に寄与することができるものを有する化合物から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L3は、σ電子によって金属Mに結合した0〜3個の同一又は異なる配位子を表し、ここで、該配位子は、CO及びNO2+から選択されるものとし、L1、L2及びL3が寄与する錯体の全電子電荷q及び金属Mのイオン電荷は正であり、且つ1又は2であるものとする。)
の有機金属塩
から選択され、
(b)陰イオン性ボレート部分が、次式:
[BXab- (I)
(当該式において、
・a及びbは、aについては0〜3の範囲の整数であり、bについては1〜4の範囲の整数であり、ここでa+b=4であり、
・記号Xは、
*ハロゲン(塩素、弗素)原子(a=0〜3)又は
*OH官能基(a=0〜2)
を表し、
・記号Rは、同一又は異なるものであり、そして
・前記陽イオン性部分が第15〜17族元素のオニウムであるときには、例えばOCF3、CF3、NO2若しくはCNのような少なくとも1個の電子求引基で及び/又は少なくとも2個のハロゲン原子(特に弗素)で置換されたフェニル基、
・前記陽イオン性部分が第4〜10族元素の有機金属錯体であるときには、少なくとも1個の電子求引元素又は電子求引基、特にハロゲン原子(特に弗素)、CF3、OCF3、NO2又はCNで置換されたフェニル基、
・前記陽イオン性部分にかかわらず、例えば、少なくとも1個の電子求引元素又は電子求引基、特にハロゲン原子、特に弗素、OCF3、CF3、NO2又はCNで置換されていてよい、ビフェニル、ナフチルのような少なくとも2個の芳香核を含有するアリール基
を表す。)
を有する
ものから選択される。
【0036】
一つの好ましい具体例によれば、陽イオン性光開始剤(D)はヨードニウム塩である。
【0037】
いかなる限定的な効果もないが、ここで、本発明に従う使用に特に好ましい硼酸オニウム及び硼酸有機金属塩のサブクラスに関する詳細を述べる。
【0038】
本発明の第1の好ましい変形例によれば、陰イオン性ボレート部分の特に好適な種は次の通りである:
1’:[B(C654-
2’:[(C652BF2-
3’:[B(C64CF34-
4’:[B(C64OCF34-
5’:[B(C63(CF324-
6’:[B(C6324-
7’:[C65BF3-
【0039】
本発明の第2の好ましい変形例によれば、使用できる式(VII)のオニウム塩は、多数の文献、特に、米国特許第4026705号、同4032673号、同4069056号、同4136102号及び同4173476号に記載されている。
【0040】
これらの塩のうち、特に次の陽イオンが挙げられる:
[(C817)−O−(C64)−I−C65)]+
[C1225−(C64)−I−C65+
[(C817−O−(C64))2I]+
[(C817)−O−(C64)−I−C65)]+
[(C652S−(C64)−O−C817+
[CH3−C64−I−C64−CH2CH(CH32+
[(C1225−(C64)−I−(C64)−CH−(CH32+
[(C1225−C642I]+
[(C653S]+
[CH3−(C64)−I−(C64)−CH(CH32+
(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Fe+
(η5−シクロペンタジエニル)(η6−クメン)Fe+
(η5−シクロペンタジエニル)(η6−1−メチルナフタリン)Fe+
[(C65)−S−C64−S−(C652+
[(CH3−(C64)−I−(C64)−OC25+
[(Cn2n+1−C642I]+(ここで、n=1〜18)。
【0041】
第3の好ましい変形例によれば、使用できる式(VIII)の有機金属塩(3)は、特許文献米国特許第4973722号、米国特許第4992572号、欧州特許第203829号、欧州特許第323584号及び欧州特許第354181号に記載されている。本発明に従ってさらに容易に使用される有機金属塩は、特に、
・(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Fe+
・(η5−シクロペンタジエニル)(η6−1−メチルナフタリン)Fe+
・(η5−シクロペンタジエニル)(η6−クメン)Fe+
・ビス(η6−メシチレン)Fe+
・ビス(η6−ベンゼン)Cr+
である。
【0042】
これら3つの好ましい変形例によれば、硼酸オニウム光開始剤の例としては、次の物質:
(P−16):[(C817)−O−C64−I−C65)]+・[B(C654-
(P−17):[C1225−C64−I−C65+・[B(C654-
(P−18):[(C817−O−C642I]+・[B(C654-
(P−19):[(C817)−O−C64−I−C65)]+・[B(C654-
(P−20):[(C652S−C64−O−C817+・[B(C64CF34-
(P−21):[(C1225−C642I]+・[B(C654-
(P−22):[CH3−C64−I−C64−CH(CH32+・[B(C654-
(P−23):(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Fe+・[B(C654-
(P−24):(η5−シクロペンタジエニル)(η6−1−メチルナフタリン)Fe+・[B(C654-
(P−25):(η5−シクロペンタジエニル)(η6−クメン)Fe+・[B(C654-
(P−26):[(C1225−C642+・[B(C63(CF32-
(P−27):[CH3−C64−I−C64−CH2CH(CH32+・[B(C654-
(P−28):[CH3−C64−I−C64−CH2CH(CH32+・[B(C63(CF324-;及び
(P−29):[CH3−C64−I−C64−CH(CH32+・[B(C63(CF324-
が挙げられる。
【0043】
硼酸オニウム(1)及び(2)並びに硼酸有機金属塩を定義するための他の文献としては、欧州特許第0562897号及び欧州特許第0562922号の記載全体が挙げられる。
【0044】
光開始剤として使用できるオニウム塩のさらなる例としては、米国特許第4138255号及び同第4310469号に開示されたものが挙げられる。
【0045】
また、他の陽イオン性光開始剤、例えば、
・[CH3−[(C64)−I−[(C64)−CH(CH32+・[PF6-
・[CH3−(C64)−I−(C64)−CH2CH(CH32+・[PF6-
・[(C1225−C642I]+・[PF6-
のようなヘキサフルオロ燐酸又はヘキサフルオロアンチモン酸ヨードニウム塩、又は
これらの様々な陰イオンのフェロセニウム塩
も使用できる。
【0046】
本発明において、架橋後に得られる物質は、色安定性、良好な機械的性質、良好な弾性及び良好な圧縮強度を示す。
【0047】
補強充填剤のほかに、意図される用途及び民族群に従って歯科用組成物を着色するために顔料を使用することもできる。
【0048】
例えば、血管をシミュレートするために、歯科補綴物を製造するために使用される歯科用組成物用超極細繊維の存在下で赤色の顔料が使用される。
【0049】
また、象牙色の架橋材料を与えるために、修復材料を製造するのに使用される歯科用組成物のための金属酸化物(酸化鉄及び/又は酸化チタン及び/又は酸化アルミニウム及び/又は酸化ジルコニウムなど)を基材とする顔料も使用される。
【0050】
他の添加剤を本発明に従う歯科用組成物に導入することができる。例としては、殺生物剤、安定剤、香料、可塑剤及び接着促進剤が挙げられる。
【0051】
考慮できる添加剤のなかでは、架橋できる及び/又重合できる有機共反応体が有利に使用されるであろう。これらの共反応体は、周囲温度では液体であり又は100℃未満の温度で熱溶融することができ、またそれぞれの共反応体は、オキセタン−アルコキシ、オキセタン−ヒドロキシル、オキセタン−アルコキシシリル、カルボキシル−オキセタン、オキセタン−オキセタン、アルケニルエーテル−ヒドロキシル、アルケニルエーテル−アルコキシシリル、エポキシ−アルコキシ、エポキシ−アルコキシシリル、ジオキソラン−ジオキソラン−アルコールなどのような少なくとも2個の反応性官能基を含む。
【0052】
本発明に従う歯科用組成物は、多数の歯科用途のために、特に歯科補綴物の分野、歯の修復の分野及び仮歯の分野で使用できる。
【0053】
本発明に従う歯科用組成物は、好ましくは、様々な成分を含む単一の製品(「一成分」)の形態であり、それによって、特に歯科補綴物の分野でのその使用を容易にする。好適ならば、この製品の安定性を、国際公開WO98/07798号の教示に従ってアミン官能性有機誘導体の手段によって確実にすることができる。
【0054】
歯科補綴物の分野では、「一成分」型の製品を、シリンジを使用して石膏模型上又は心部中に直接付着させることができる。次いで、このものをUVランプ(可視光スペクトル200〜500nm)を使用して重合させる(見込まれる連続層による重合)。
【0055】
一般に、10〜15分以内に審美的で且つ耐久性のある歯科補綴物を製造することが可能である。
【0056】
本発明に従う歯科用組成物から得られた製品は無孔であることに留意すべきである。従って、例えば布ブラシを使用した光学研磨後でも、得られた歯科補綴物の表面は滑らかで輝いているため、ワニスを使用する必要がない。
【0057】
歯科補綴物の分野における用途は、本質的に装着補綴物の用途であり、これは次の2つのタイプに分類できる:
・歯が全くない患者の場合における総義歯、
・仮義歯又は骨格補強材のいずれかをもたらす、数本の歯がない場合の部分義歯。
【0058】
歯の修復の分野では、本発明の歯科用組成物は、異なる色(例えば、「ビタ」カラー)の前歯及び臼歯をふさぐための材料として使用でき、またこれは迅速且つ容易に使用される。
【0059】
該歯科用組成物は非毒性であり、且つ、厚い層で重合できるため、連続層の材料を重合させることは必ずしも必要ではない。一般には、該歯科用組成物の1回の注入で十分である。
【0060】
歯科補綴物の製造及び補修用材料の製造は、当該技術の属する分野における通常の技術に従って実施される。
【0061】
歯科用組成物を歯に適用する場合には、歯を媒染剤で予備処理し、次いでボンディングプライマー(これは、それ自体が光硬化性である)で予備処理できるか、又は該歯科用組成物をその使用前にボンディングプライマーとの混合物として調製できるかのいずれかである。
【0062】
以下に実施例及び試験を例示として与える。これらは、特に、本発明をさらに明確に理解させ、その利点のいくつかを強調し、しかも多数のその具体例を例示することを可能にする。
【実施例】
【0063】
例及び試験
(a)構造
【化22】

【0064】
定義
全色差ΔEは、明度によらない変化であるが、ただし分光比色計(CIELABモデル)を使用して直角座標a*及びb*として表される色変化による変化を表す。
Δaとは、赤色から緑色への色のシフトをいう。
Δbとは、黄色から青色への色のシフトをいう。
Δaが正の場合には、その色相は赤が強い。
Δaが負の場合には、その色相は緑色が強い。
Δbが正の場合には、その色相は黄色が強い。
Δbが負の場合には、その色相は青色が強い。
色のシフト又は色度差Δcは、次の関係:
Δc=[(Δa)2+(Δb)21/2
によって表される。
144種の複合物について測定されるa*の値は、1996年にInokoshiによって報告されており(ボローニャ国際シンポジウム)、そして−5〜+4を範囲とし、特に−1〜+1を範囲とする。独断的に、低い色シフトとは、架橋後1/4時間で行われる初期測定と架橋及び暗所での保管後5日に行われる測定との間でΔcが<3であると定義する。この複合物は、2mmの厚さにわたって光架橋される。
【0065】
(b)使用したガラスは、ショット社によって参照番号G018−163又はG018−066の下で販売されており、これは、0.7μm、1.5μm又は3.5μmの粒度を有する酸化ストロンチウムを基材とする放射性乳白剤を含有し又はこれを含有しておらず、また、グリシジルオキシトリメトキシシラン又はγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで処理されておらず又はこれで処理されている。
【0066】
以下に与える例は、国際公開WO00/19967号パンフレットに記載されるような従来型のチオキサントンから、少なくとも1個のアンモニウム官能基で置換された本発明によるチオキサントンに切り換えることによって得られた利益を説明する。
【0067】
硼酸アンモニウム官能基を含有するチオキサントン(化合物(V))の製造
【化23】

【0068】
遮光下で、不透明のフラスコに1.02gの3−((3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(オールドリッチ社により販売)、2.688gの「Kisbore」塩KB(C654(ロディア社により販売)及び50mLのイソプロパノールを装入し、そしてこの初期装入物を周囲温度で48時間にわたって磁気撹拌しつつ放置する。その後、この混合物を脱イオン水(200mL)に混ぜる。黄色の沈殿物が形成される。この懸濁液を市販のブフナー漏斗でろ過し、そしてその固形物をオーブン内において100℃で24時間にわたり乾燥させる。以下(V)という塩が得られる(融点235℃、吸収極大λmax=397.3nm)。
【0069】
硼酸アンモニウム官能基を含有するチオキサントン(VI)の製造
遮光下で、不透明のフラスコに1.05gの3−((3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(オールドリッチ社)、2.25gのテトラキス(3,5−トリフルオルメチルフェニル)硼酸カリウム塩(オールドリッチ社)及び50mLのイソプロパノールを装入し、そしてこの初期装入物を周囲温度で48時間にわたって磁気撹拌しつつ放置する。その後、この混合物を脱イオン水(200mL)に混ぜる。黄色の沈殿物が形成される。この懸濁液を市販のブフナー漏斗でろ過し、そしてその固形物をオーブン内において100℃で24時間にわたり乾燥させる。以下(VI)と呼ぶ塩が得られる(融点230℃、吸収極大λmax=395nm)。
【0070】
例1:対照処方物1の製造
ハウシルト社製遠心混合機に、単量体含有量>90%を有し且つ酸化ビニルシクロヘキセンのヒドロシリル化によって得られたシロキサン樹脂(S−1)5gと、この樹脂(S−1)に4%のDisperbyk164(商標)を溶解してなる溶液0.6gと、30%の光開始剤(P−27)及び0.23%のクロルプロポキシチオキサントン(CPTX)系光増感剤を含有する光開始剤系(ランブソン社により販売)の(S−1)溶液0.625gとを、全て樹脂(S−1)の溶液(溶媒なし)の状態で装入する。
この初期装入物を遠心混合機によって周囲温度で16秒間にわたり3000rpmで撹拌し、次いで13.25gのクオーツ(粒度1.5μm:ショット社によって参照番号G018−163 UF1.5の下で販売されており、しかも2%のグリシジルトリメトキシシランで処理されている)を添加する。この混合物を遠心混合機によって3000rpmで16秒間撹拌し、そして1.5gの三弗化イッテルビウムを添加する。
遠心混合機によって3000rpmで16秒間にわたり撹拌を繰り返し、次いで1.5gのヒュームドシリカ(SiO2>99%)(デグッサ社によって商品名OX50(商標)の下で販売されている)を添加し、その後16秒間撹拌する。最後に、2.5gのヒュームドシリカ(デグッサ社によって商品名R202(商標)の下で販売されている)を添加する。該遠心混合機による撹拌を16秒間実施する。
これらの処方物を、使用したチオキサントンに応じた放射時間でOptilux Demetronランプを使用して2〜2.5mmの厚さにわたり架橋させる。この時間は、一般に30秒〜1分である。
ミノルタCR200比色計又は色度計を使用して、架橋後1/4時間後に白色背景に対して及び架橋5日後に、L*、a*及びb*値を測定する。得られた色シフトΔcをこれらの測定値から推定する:Δc=[(Δa)2+(Δb)21/2
【0071】
例2:本発明に従う処方物の製造
例1の実験を繰り返したが、ただし、対照のチオキサントンをチオキサントン(IX)及び(V)単独で又は次の誘導体と組み合わせて置き換えた:
・9,10−ジブトキシアントラセン(PS−39)、
・フェナントレンキノン(PS−33)、及び
・カンファーキノン(PS−34)。
また、化合物(PS−34)及び(PS−39)を基材とする対照処方物も処方する。
例2e〜2hでは、3.5ミクロンのG018−066充填剤を、GLYMO(2.5%)で処理したG018−163ガラスで置き換え、次いで5%の樹脂(S−1)で置き換えている。
結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
光増感剤(V)又は(XI)単独で又は他の光増感剤、例えば、(PS−39)、(PS−34)又は(PS−33)と組み合わせて処方された歯科用組成物のDemetron Optilux500歯科医用ランプによる架橋は、いかなる彩色の欠陥も引き起こさないことが観察される(放射中にピンク色になるという現象もなく、放射直後に低い色値aを有する)。式(VI)のチオキサントンを使用したときにも同様の改善が観察される。
【0074】
本発明に従うチオキサントン(V)、(VI)又は(IX)を使用すると、彩色の問題を回避することが可能になるばかりでなく、単にカンファーキノン(S−34)をアントラセン誘導体(PS−39)と併用するときに遭遇する反応速度の問題も回避することが可能になる(比較例2)。
【0075】
これにより、アンモニウム官能基を含有するチオキサントンは、着色安定性を増大させることが示される。例1の比較組成物(CPTX)では、60ppmという低いレベルであっても初期のピンク色の変化が観察される。これは経時的に弱まるが、5日後でもなお無視できない程のものである(a*=1.97)。これは、低レベルでもこの彩色の欠陥を引き起こさず、しかも驚くべきことにさらに大きな色の安定性を保つことを可能にするアンモニウム官能基を含有するチオキサントンを使用した場合とは対照的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物であって、
(1)少なくとも1種の陽イオン反応性化合物(A)と、
(2)少なくとも1種の歯科用充填剤(B)と、
(3)随意に、少なくとも1種の有機重合体又は共重合体を含む少なくとも1種の分散剤(C)と、
(3)少なくとも1種の陽イオン性光開始剤(D)と、
(4)アンモニウム官能基を含有する少なくとも1個の基Gで置換されたチオキサントン塩である少なくとも1種の光増感剤(E)と
を含み、前記光増感剤(E)は、少なくとも1種のカンファーキノン、フェナントレンキノン及び/又は置換アントラセンと随意に併用され、しかも次式:
【化1】

(式中、
・R22及びR23は、同一又は異なるものであり、そして水素又は随意に置換されたC1〜C10アルキル基を表し、好ましくはR22=R23=メチルであり、
・(Y-)は、BF4-、PF6-、SbF6-、以下に定義される式[BXab-の陰イオン(I)、RfSO3-、(RfSO23-又は(RfSO22-(ここで、Rfは、少なくとも1個のハロゲン原子、好ましくは弗素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基である。)よりなる群から選択される陰イオン性部分であり、さらに好ましくは、(Y-)は、次式:[B(C63(CF324-及び[B(C654-のボレートから選択され、ここで、式[BXab-の前記陰イオン(I)は次の態様で定義される:
・a及びbは、aについては0〜3の範囲の整数であり、bについては1〜4の整数であり、ここで、a+b=4であり、
・記号Xは、
*ハロゲン(塩素、弗素)原子(ここで、a=0〜3である)、又は
*OH官能基(ここで、a=0〜2である)
を表し、
・記号Rは、同一又は異なるものであり、そして
・前記陽イオン性部分が第15〜17族元素のオニウムであるときには、例えば、OCF3、CF3、NO2若しくはCNのような少なくとも1個の電子求引基で及び/又は少なくとも2個のハロゲン原子(特に弗素)で置換されたフェニル基、
・前記陽イオン性部分が第4〜10族元素の有機金属錯体であるときには、少なくとも1個の電子求引元素又は電子求引基、特にハロゲン原子(特に弗素)、CF3、OCF3、NO2又はCNで置換されたフェニル基、或いは
・前記陽イオン性部分にかかわらず、少なくとも1個の電子求引元素又は電子求引基、特にハロゲン原子(特に弗素)、OCF3、CF3、NO2又はCNで置換されていてよい、例えばビフェニル、ナフチルのような、少なくとも2個の芳香核を含有するアリール基
を表す。)
を有する歯科用組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のカンファーキノン、フェナントレンキノン及び/又は置換アントラセンと随意に併用される光増感剤(E)が次式:
【化2】

を有する、請求項1に記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項3】
光増感剤(E)及び陽イオン性光開始剤(D)が同一の陰イオンを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項4】
陽イオン性光開始剤(D)がボレート型のものであり、そして、
(a)該ボレートの陽イオンが、
(1)次式:
[(R1n−A−(R2m+ (VII)
(式中、
・Aは、例えば、I、S、Se、P又はNのような第15〜17族元素を表し、
・R1は、C6〜C20複素環式又は炭素環式アリール基を表し、ここで、該複素環式基は、ヘテロ原子として窒素又は硫黄を含有することができ、
・R2は、R1又はC1〜C30直鎖又は分岐アルキル又はアルケニル基を表し、ここで、該R1及びR2は、C1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ニトロ、クロル、ブロム、シアノ、カルボキシル、エステル又はメルカプト基で随意に置換されており、
・m及びnは整数であり、ここで、n+m=v+1であり、vは元素Aの原子価である。)
のオニウム塩、
(2)オキソイソチオクロマニウム塩、及び
(3)次式:
(L123M)+q (VIII)
(式中、
・Mは、第4〜10族の金属、特に、鉄、マンガン、クロム又はコバルトを表し、
・L1は、π電子によって金属Mに結合した1個の配位子を表し、ここで、該配位子は、η3−アルキル、η5−シクロペンタジエニル及びη7−シクロヘプタトリエニル配位子並びに置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環であってそれぞれの環が3〜8個のπ電子を介して金属Mの原子価の層に寄与することができるものを有する化合物から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L2は、π電子によって金属Mに結合した配位子を表し、ここで、該配位子は、η7−シクロヘプタトリエニル配位子並びに置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環であってそれぞれの環が6又は7個のπ電子を介して金属Mの原子価の層に寄与することができるものを有する化合物から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L3は、σ電子によって金属Mに結合した0〜3個の同一又は異なる配位子を表し、ここで、該配位子は、CO及びNO2+から選択されるものとし、L1、L2及びL3が寄与する錯体の全電子電荷q及び金属Mのイオン電荷は正であり、且つ1又は2であるものとする。)
の有機金属塩
から選択され、
(b)陰イオン性ボレート部分が、次式:
[BXab- (I)
(当該式において、
・a及びbは、aについては0〜3の範囲の整数であり、bについては1〜4の範囲の整数であり、ここでa+b=4であり、
・記号Xは、
*ハロゲン(塩素、弗素)原子(a=0〜3)又は
*OH官能基(a=0〜2)
を表し、
・記号Rは、同一又は異なるものであり、そして
・前記陽イオン性部分が第15〜17族元素のオニウムであるときには、例えばOCF3、CF3、NO2若しくはCNのような少なくとも1個の電子求引基で及び/又は少なくとも2個のハロゲン原子(特に弗素)で置換されたフェニル基、
・前記陽イオン性部分が第4〜10族元素の有機金属錯体であるときには、少なくとも1個の電子求引元素又は電子求引基、特にハロゲン原子(特に弗素)、CF3、OCF3、NO2又はCNで置換されたフェニル基、
・前記陽イオン性部分にかかわらず、少なくとも1個の電子求引原子又は電子求引基、特にハロゲン原子、特に弗素、OCF3、CF3、NO2又はCNで置換されていてよい、例えば、ビフェニル、ナフチルのような少なくとも2個の芳香核を含有するアリール基
を表す。)
を有する
ものから選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項5】
陽イオン性光開始剤(D)がヨードニウム塩であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項6】
陽イオン性光開始剤(D)が、次の化合物:
(P−16):[(C817)−O−C64−I−C65)]+・[B(C654-
(P−17):[C1225−C64−I−C65+・[B(C654-
(P−18):[(C817−O−C642I]+・[B(C654-
(P−19):[(C817)−O−C64−I−C65)]+・[B(C654-
(P−20):[(C652S−C64−O−C817+・[B(C64CF34-
(P−21):[(C1225−C642I]+・[B(C654-
(P−22):[CH3−C64−I−C64−CH(CH32+・[B(C654-
(P−23):(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Fe+・[B(C654-
(P−24):(η5−シクロペンタジエニル)(η6−1−メチルナフタリン)Fe+・[B(C654-
(P−25):(η5−シクロペンタジエニル)(η6−クメン)Fe+・[B(C654-
(P−26):[(C1225−C642+・[B(C63(CF32-
(P−27):[CH3−C64−I−C64−CH2CH(CH32+・[B(C654-
(P−28):[CH3−C64−I−C64−CH2CH(CH32+・[B(C63(CF324-;及び
(P−29):[CH3−C64−I−C64−CH(CH32+・[B(C63(CF324-
よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項7】
陽イオン反応性化合物(A)が、エポキシド、ビニルエーテル、オキセタン、スピロ−オルト−カーボネート、スピロ−オルト−エステル及びそれらの組み合わせを含む単量体及び/又は(共)重合体の群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項8】
陽イオン反応性化合物(A)は、架橋性及び/又は重合性であり、周囲温度では液体であり又は100℃よりも低い温度では熱可融性である少なくとも1種のシリコーンオリゴマー又は重合体(A−1)から構成され、かつ、次の成分:
(a)次式:
【化3】

(式中、
・a=0、1又は2であり、
・R0は、それぞれ独立して同一又は異なるものであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ビニル、ヒドロゲノ又はアルコキシ基、好ましくはC1〜C6低級アルキルを表し、
・Zは、それぞれ独立して同一又は異なるものであり、少なくとも1個の反応性オキシラン、アルケニルエーテル、オキセタン、ジオキソラン及び/又はカーボネート官能基を含有する有機置換基である。)
の少なくとも1個の単位と、
(b)少なくとも2個の珪素原子と
を含む、請求項7に記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項9】
単位(M−1)が、次の基:
【化4】

(ここで、R”はC1〜C6直鎖又は分岐アルキル基を表す。)
よりなる群から選択される基Zを含むことを特徴とする、請求項8に記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項10】
陽イオン反応性化合物(A)が、次式:
【化5】

(式中、
【化6】


であり、
・Rは、それぞれ独立して同一又は異なるものであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ビニル、ヒドロゲノ又はアルコキシ基、好ましくはC1〜C6低級アルキルを表し、
・Zは、それぞれ独立して同一又は異なるものであり、少なくとも1個のオキシラン、アルケニルエーテル、オキセタン及び/又はカーボネート官能基を含有する有機置換基であり、
・a+b=3である。)
のシラン(G−3)である、請求項1〜9のいずれかに記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項11】
シラン(G−3)が次の分子:
【化7】

よりなる群から選択される、請求項10に記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項12】
陽イオン反応性化合物(A)が、次の分子(S−96)〜(S−104):
【化8】

(式中、nは1〜10の整数である。)
【化9】

(ここで、n<100であり、D=直鎖又は分岐C1〜C12アルキルである。)
【化10】

(ここで、n<100であり、基D=直鎖又は分岐C1〜C12アルキルである。)
よりなる群から選択される有機化合物(G−4)である、請求項1〜11のいずれかに記載の390nmよりも大きい波長の放射によって光硬化できる歯科用組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の組成物を重合し及び/又は架橋することによって得ることができる歯科補綴物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の組成物を重合し及び/又は架橋することによって得ることができる歯の修復用の材料。
【請求項15】
次式:
【化11】

の化合物。
【請求項16】
次式:
【化12】

の化合物。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれかに記載の歯科用組成物又は請求項15若しくは16に記載の化合物の、歯科補綴物を製造するための又は歯の修復のための使用。

【公表番号】特表2007−537210(P2007−537210A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512251(P2007−512251)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001049
【国際公開番号】WO2005/120439
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】