説明

光硬化性組成物

【課題】α−シアノアクリレート系組成物に求められる湿気による速硬化性やその他の諸物性はそのままに、紫外線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化可能な、湿気でも活性エネルギー線の照射によっても速やかに重合し、さらに組成物が透明性を有し、貯蔵安定性に優れる光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(B)成分を含有することを特徴とする光硬化性組成物。(A)α−シアノアクリレート(B)下記一般式(1)で表されるアニオンを有する塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中や被着体表面の湿気又は紫外線などのエネルギー線の照射により、速やかに重合硬化するα−シアノアクリレートを主成分とする光硬化性組成物に関するもので、特にリソグラフィ、ポッティング、モールディング、コーティング、接着剤、シール剤、及び各種レジスト材料等へ広く応用することができる。
【背景技術】
【0002】
α−シアノアクリレート系接着剤は、被着体表面に吸着されている微量の水分により急速にアニオン重合硬化して、被着体同士を短時間で極めて強固に接着させることから、一液常温硬化型の瞬間接着剤として、金属、プラスチック、ゴム、木材などの接着に広く利用されている。しかし、α−シアノアクリレート系接着剤は、被着体同士の間隔が広かったり、接着部からはみ出した場合やコーティングのように一対の被着体に挟まれていない場合は、硬化が極度に遅くなる欠点を有する。
【0003】
したがって、大きなギャップに充填されたり、接着部からはみ出しているα−シアノアクリレート系接着剤を速やかに硬化させるには、プライマーや硬化促進剤を用いて硬化させるのが一般的(特許文献1、特許文献2、特許文献3)であったが、この様な方法は工程上複雑で手間がかかり、また、プライマーや硬化促進剤の主成分である塩基性化合物や溶剤の臭気は、作業環境上好ましくない。そこで、一液型で常温速硬化という瞬間接着剤の優れた特長を損なうことなく、また、はみ出し部や大きなギャップに充填された場合でも、プライマーや硬化促進剤を使用することなく、簡単に硬化させることのできるα−シアノアクリレート系接着剤が望まれている。
【0004】
上記の問題を解決する方法として、特許文献4や特許文献5では、メタロセン化合物単独、またはメタロセン化合物と開裂型光ラジカル発生剤をα−シアノアクリレート系接着剤に添加させた光硬化性のα−シアノアクリレート系組成物が開示されており、この組成物は、被着体表面等の湿気による通常の湿気硬化の他に、光の照射による硬化を可能としている。さらに、特許文献6には、α−シアノアクリレートに芳香族アジド化合物を添加すること、特許文献11には、α−シアノアクリレートに特定のアミンイミド化合物および/またはα−アミノアセトフェノン誘導体を添加すること、また、非特許文献1には、光アニオン重合開始剤としてPt(acac)を用いる技術についての報告がなされている。
【0005】
これら以外にも光アニオン発生剤として、カルボン酸アンモニウム塩(特許文献7)、α−アミノアセトフェノン誘導体(特許文献8)、芳香族系アミンイミド化合物(特許文献9)、アミンイミド化合物と一重項・三重項増感剤すなわち水素引き抜き型ラジカル発生剤との組み合わせ(特許文献10)、硫黄原子を含有した特定構造のカチオンを有する塩、(特許文献12)、四級アンモニウムとテトラフェニルボレートとの塩化合物(非特許文献2)、トリアザビシクロデセンとテトラフェニルボレートとの塩化合物(非特許文献3)、などの報告がなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromolecules,Vol.28,1328(1995)
【非特許文献2】J.Appl.Polym.Sci.,Vol.100,399(2006)
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.,Vol.130,8130(2008)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−215376号公報
【特許文献2】特開昭60−203684号公報
【特許文献3】特開昭61−176634号公報
【特許文献4】特開平9−249708号公報
【特許文献5】特開平11−166006号公報
【特許文献6】特開平6−299122号公報
【特許文献7】特開昭55−22669号公報
【特許文献8】特開平11−71450号公報
【特許文献9】国際公開特許WO2002/051905号公報
【特許文献10】特開2003−26772号公報
【特許文献11】特開2008−37907号公報
【特許文献12】特開2009−244745号公報
【0008】
しかしながら、特許文献4〜6、11、及び非特許文献1に開示されるメタロセン化合物、芳香族アジド化合物、白金錯体を添加した光硬化性α−シアノアクリレート系組成物は、それぞれ、組成物が着色しやすい、貯蔵時の安定性に劣る、光硬化性に劣る、という問題があり、また、場合によってはα−シアノアクリレート系組成物の本来の特徴である湿気による速硬化性に悪影響を及ぼす等の問題を発生する可能性があった。
【0009】
一方で特許文献7〜10、12および非特許文献2、3には、それぞれ光の照射により塩基を発生する化合物が記載されているが、これらの化合物の硬化反応の対象となっている重合性化合物は、主にエポキシ樹脂またはラクトン類であって、α−シアノアクリレートを主成分とする組成物に適用させることについて一切開示されてはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述の問題点を解決すること、即ちα−シアノアクリレート系組成物に求められる湿気による速硬化性やその他の諸物性はそのままに、紫外線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化可能な、湿気でも活性エネルギー線の照射によっても速やかに重合し、さらに組成物が透明性を有し、貯蔵安定性に優れる光硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、特定の光硬化性組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨を次に説明する。
[1]下記の(A)〜(B)成分を含有することを特徴とする光硬化性組成物。
(A)α−シアノアクリレート
(B)下記一般式(1)で表されるアニオンを有する塩
[2]前記(B)成分が一般式(2)で表される塩であることを特徴とする[1]に記載の光硬化性組成物。
[3]前記Zの第4級アンモニウムカチオンは、一般式(3)で表されるカチオン構造を分子内に1以上有するカチオン、2−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フェニルイミダゾリウムカチオン、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン及びテトラヘキシルアンモニウムカチオンからなる群から選択され、前記Zのアルカリ金属カチオンはナトリウム、カリウム、リチウムからなる群から選択され、前記Zのホスホニウムカチオンは、ベンジルトリフェニルホスホニウムカチオン、一般式(4)で表される化合物からなる群から選択されることを特徴とする[1]又は[2]のいずれか1項に記載の光硬化性組成物
[4] 更に(C)成分のアニオン重合禁止剤を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
[5] 前記(B)成分を(A)成分100質量部に対して0.001〜5質量部、(C)成分を(A)成分100質量部に対して0.0001〜10質量部含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
[6] 更に(D)成分の活性エネルギー線ラジカル発生剤を含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれか1項に記載の光硬化性組成物に波長150〜750nmの活性エネルギー線を照射することにより該組成物を硬化させることを特徴とする硬化方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性組成物は、従来の湿気硬化性を有するとともに、紫外線などの活性エネルギー線の照射によっても容易に重合硬化する。そのため、湿気硬化性のα−シアノアクリレート系組成物の弱点であった大量使用時の厚膜硬化性の不良や硬化速度の低下といった問題が、活性エネルギー線硬化性を付与したことにより解決できる。また、本硬化性樹脂組成物は、無色透明の液状組成物となるため接着剤以外の用途、例えばコーティング剤や塗料にも使用可能できる。
【0013】
さらに、(D)成分を併用した本発明の光硬化性組成物では、さらに活性エネルギー線硬化性が向上する。したがって、(A)成分の貯蔵安定性を低下させる(B)成分の添加量を、(D)成分の併用により、より少なくすることができるため、貯蔵安定性の高い硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の光硬化性組成物における(A)成分であるα−シアノアクリレートの具体例としては、メチルα−シアノアクリレート、エチルα−シアノアクリレート、プロピルα−シアノアクリレート、ブチルα−シアノアクリレート、シクロヘキシルα−シアノアクリレート等のアルキル及びシクロアルキルα−シアノアクリレート、アリルα−シアノアクリレート、メタリルα−シアノアクリレート、シクロヘキセニルα−シアノアクリレート等のアルケニル及びシクロアルキニルα−シアノアクリレート、プロパギルα−シアノアクリレート等のアルキニルα−シアノアクリレート、フェニルα−シアノアクリレート、トルイルα−シアノアクリレート等のアリールα−シアノアクリレート、ヘテロ原子を含有するメトキシエチルα−シアノアクリレート、エトキシエチルα−シアノアクリレート、フルフリルα−シアノアクリレート、ケイ素を含有するトリメチルシリルメチルα−シアノアクリレート、トリメチルシリルエチルα−シアノアクリレート、トリメチルシリルプロピルα−シアノアクリレート、ジメチルビニルシリルメチルα−シアノアクリレート等が挙げられる。
【0015】
本発明の光硬化性組成物における(B)成分である塩は、一般式(1)で表されるアニオンと任意のカチオンからなる化合物であり、活性エネルギー線の照射により塩基性を発生する化合物である。また、(B)成分により優れた光硬化性と貯蔵安定性を有する光硬化性組成物が得られる。
【0016】
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の芳香族基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ここで置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アリル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、エチルフェニル基、ナフチル基等を挙げられる。)
【0017】
(B)成分は、より光硬化性に優れるという観点で一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0018】
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の芳香族基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ここで置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アリル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、エチルフェニル基、ナフチル基等を挙げることが出来る。Zは第4級アンモニウムカチオン、アルカリ金属カチオン、ホスホニウムカチオンを表す。)
【0019】
さらに、前記Zは、光硬化性及び貯蔵安定性に優れるという観点から、第4級アンモニウムカチオンとしては、一般式(3)で示されるカチオン構造を分子内に1以上有するカチオンが挙げられる。このようなカチオンとしては一般式(3)のXが水素原子である場合1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンのプロトン化カチオン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンのプロトン化カチオン、トリアザビシクロデセンのプロトン化カチオン、ヘキサヒドロメチルピリミドピリミジンのプロトン化カチオン等のいずれかの構造を分子内に1以上有するカチオンが好ましく、より好ましくは、分子内に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンのプロトン化カチオン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンのプロトン化カチオンのいずれかの構造を分子内に1以上有するカチオンが挙げられる。
【0020】
【化3】


(式中、Yは、炭素数3〜8のシクロアルカンを形成する置換を有してもよいアルキレン基を示す。置換基としては、水素原子または炭素数1〜18のアルキル基、アリル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、エチルフェニル基、ナフチル基等であり、Xは、水素原子、又は置換もしくは無置換の芳香環を有する有機基、あるいは脂肪族基を示し、より具体的にはナフタレン骨格、アントラセン骨格、チオキサントン骨格等を有した有機基である。)
【0021】
また、その他に光硬化性及び貯蔵安定性に優れる第4級アンモニウムカチオンとしては、2−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フェニルイミダゾリウムカチオン、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン等が好ましく用いられる。
【0022】
アルカリ金属カチオンとして好ましくはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、リチウムカチオン等が挙げられる。
【0023】
ホスホニウムカチオンとして好ましくは下記一般式(4)で表される化合物、ベンジルトリフェニルホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0024】
【化4】

(式中、R〜R12は、それぞれ、水素原子又は置換もしくは無置換の芳香族基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ここで置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アリル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、エチルフェニル基、ナフチル基等を挙げることが出来る。)
【0025】
本発明の光硬化性組成物における(B)成分の具体的な化合物としてテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、p−トリルトリフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、ジ−tert−ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート、テトラフェニルボレートナトリウム塩、テトラフェニルボレートカリウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1−8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン−テトラフェニルボレート、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン−テトラフェニルボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これらの化合物は、例えば市販の製品としては、
U−CAT5002(サンアプロ株式会社製)DBN−K、EMZ−K、TPP−K、TPPZ−K、TPTP−MK、TPP−MK(北興化学工業株式会社製)、P3B、BP3B、N3B、MN3B(昭和電工株式会社製)等が挙げられる。また、本発明の(B)成分の要件を満たした特許文献12に開示された化合物、非特許文献2、3に記載の方法などの、公知の方法を用いて合成することもできる。また、本発明において、(B)成分は1種または複数種を併用することも可能である。
【0026】
本発明の光硬化性組成物における(B)成分の配合量は、前記(A)成分の合計100質量部に対し0.001〜5質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1質量部である。上記の範囲内で(B)成分を加えると、硬化速度および硬化物の強度のバランス、貯蔵安定性などに優れた硬化性組成物を得ることができる。0.001質量部を満たないと本発明の硬化性組成物に有効な光硬化性を付与できない恐れがあり、また5質量部を超えると前記(A)成分に溶解しにくくなる他、貯蔵安定性や諸物性に悪影響を与える恐れがある。
【0027】
なお、本発明の光硬化性組成物における(B)成分は、溶剤で希釈することで、(A)成分との相溶性を向上させることができる。溶剤としては、(B)成分をを溶解するものであれば、特に限定されないが、具体的には、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素類、ハロゲン炭化水素類が挙げられる。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。炭化水素類としては、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン等が挙げられる。ハロゲン炭化水素類としてはフロン−113、トリクロルエチレン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン等が挙げられる。これらの中でも(B)成分との溶解性が良好であることからケトン類、エステル類、炭化水素類の溶剤が好ましい。溶剤は1種または2種以上を混合して使用することもできる。
【0028】
本発明の組成物は、更に、組成物の貯蔵安定性をはかるために(C)アニオン重合禁止剤を含有してもよい。
【0029】
本発明における(C)アニオン重合禁止剤は、アニオン重合を抑制する効果がある化合物であればよく、例えば、3−スルホレン、ジエチルスルホン、プロパンスルホン、ジエチル硫酸、アクリル酸、メタクリル酸、ピロメリット酸、無水マレイン酸、トリフルオロ酢酸、フッ化水素化合物、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホンエステル、ヒドロキシプロパンスルホン酸等の有機酸、無機酸、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、p−メトキシル−フェノールなどのフェノール基含有化合物、安息香酸等のカルボン酸基含有化合物、リン酸、リン酸エステル、三フッ化ホウ素、テトラフルオロホウ酸等のホウフッ化物、ホウ酸、ホウ酸エステル等、二酸化硫黄、三酸化硫黄、酸化窒素が挙げられる。中でも(B)成分との相性がよく貯蔵安定性に優れることからフェノール基含有化合物、リン酸、リン酸エステル、ホウフッ化物、ホウ酸、ホウ酸エステルが好ましく用いられる。
【0030】
本発明における(C)成分のリン酸エステルの好ましい化合物としては、エチルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート、エチレンオキサイド変性リン酸ジアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸トリアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジメタアクリレート、カプロラクトン変性エチレンオキサイド変性リン酸ジメタアクリレート等が挙げられる。
【0031】
また、ホウ酸エステルの好ましい化合物としては、ホウ酸トリメチル、トリエチルボレート、トリ−n−プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ−n−ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリス(2−エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7−トリオキサウンデシル)ボラン、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ−o−トリルボレート、トリ−m−トリルボレート、トリエタノールアミンボレート等が挙げられる。
【0032】
また、ホウフッ化物の好ましい化合物としては、三フッ化ホウ素エチルエーテルコンプレックス、三フッ化ホウ素酢酸コンプレックス、三フッ化ホウ素メタノールコンプレックス、三フッ化ホウ素ブチルエーテルコンプレックス、三フッ化ホウ素リン酸コンプレックス等が挙げられる。
【0033】
本発明の光硬化性組成物における(C)成分の配合量については、特に限定されないが、好ましくは前記(A)成分の合計100質量部に対し、0.0001〜10質量部の範囲で添加され、より好ましくは0.001〜5質量部が必要に応じ用いられる。上記の範囲内で(C)成分を加えると、硬化速度および硬化物の強度のバランス、貯蔵安定性などに優れた硬化性組成物を得ることができる。0.0001質量部未満では本発明の貯蔵安定性が付与されない恐れがあり、また10質量部を超えると前記(A)成分に溶解しにくくなる他、光硬化性を著しく悪化させる恐れがある。
【0034】
本発明の組成物は、更に、組成物の光活性を高めるために(D)活性エネルギー線ラジカル発生剤を含有してもよい。
【0035】
本発明の活性エネルギー線ラジカル発生剤は、紫外線などの活性エネルギー線の照射によりラジカル種を発生させる化合物で、水素引き抜き型のラジカル発生剤と分子内開裂型のラジカル発生剤に大別されるが、成分(B)の構造の違いにより、光活性を高めるために最適な成分(D)の構造が影響を受けるため、成分(B)と成分(D)の最適な組み合わせは任意に選択してもよい。
【0036】
水素引き抜き型のラジカル発生剤の例としては、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1−フルオロナフタレン、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレン、1−ヨードナフタレン、2−ヨードナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1,4−ジシアノナフタレン等のナフタレン誘導体、アントラセン、1,2−ベンズアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9−シアノアントラセン、9,10−ジシアノアントラセン、2,6,9,10−テトラシアノアントラセン等のアントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール、9−メチルカルバゾール、9−フェニルカルバゾール、9−プロペ−2−イニル−9H−カルバゾール、9−プロピル−9H−カルバゾール、9−ビニルカルバゾール、9H−カルバゾール−9−エタノール、9−メチル−3−ニトロ−9H−カルバゾール、9−メチル−3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、9−オクタノイルカルバゾール、9−カルバゾールメタノール、9−カルバゾールプロピオン酸、9−カルバゾールプロピオニトリル、9−エチル−3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、9−エチル−3−ニトロカルバゾール、9−エチルカルバゾール、9−イソプロピルカルバゾール、9−(エトキシカルボニルメチル)カルバゾール、9−(モルホリノメチル)カルバゾール、9−アセチルカルバゾール、9−アリルカルバゾール、9−ベンジル−9H−カルバゾール、9−カルバゾール酢酸、9−(2−ニトロフェニル)カルバゾール、9−(4−メトキシフェニル)カルバゾール、9−(1−エトキシ−2−メチル−プロピル)−9H−カルバゾール、3−ニトロカルバゾール、4−ヒドロキシカルバゾール、3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール、2−ヒドロキシカルバゾール、3,6−ジアセチル−9−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメトキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチルエステル、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、芳香族カルボニル化合物、[4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル]−フェニルメタノン、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等のチオキサントン誘導体やクマリン誘導体が挙げられる。
【0037】
また分子内開裂型のラジカル発生剤は、活性エネルギー線を照射することにより当該化合物が開裂してラジカルを発生するタイプのラジカル発生剤であり、その具体例として、ベンゾインエーテル誘導体、アセトフェノン誘導体等のアリールアルキルケトン類、オキシムケトン類、アシルホスフィンオキシド類、チオ安息香酸S−フェニル類、チタノセン類、およびそれらを高分子量化した誘導体が挙げられるがこれに限定されるものではない。市販されている開裂型ラジカル発生剤としては、1−(4−ドデシルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−(4−イソプロピルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−ベンゾイル−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−ベンゾイル]−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、1−[4−(アクリロイルオキシエトキシ)−ベンゾイル]−1−ヒドロキシ−1−メチルエタン、ジフェニルケトン、フェニル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシルケトン、ベンジルジメチルケタール、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−ピリル−フェニル)チタン、(η−イソプロピルベンゼン)−(η−シクロペンタジエニル)−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、ビス(2,4,6 −トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも(B)成分との相乗効果により光硬化性に優れるという観点でフェニル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシルケトン、ベンジルジメチルケタール、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、ビス(2,4,6 −トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0038】
本発明の組成物において、これら(D)活性エネルギー線ラジカル発生剤は、硬化時及び硬化後のアウトガスが少ないという観点からは高分子オリゴマー/ポリマー中に開裂型ラジカル発生剤の構造を導入した高分子量タイプのものが好ましい。
【0039】
本発明の光硬化性組成物における(D)活性エネルギー線ラジカル発生剤の添加量は、吸収波長及びモル吸光係数を参考にする必要があり、特に限定されないが、本発明の光硬化性組成物中の(A)成分100質量部に対して0.0001〜50質量部であり、好ましくは0.001〜10質量部が必要に応じ用いられる。0.0001質量部に満たないと充分な光活性向上効果が得られない恐れがあり、50質量部より多すぎると(B)成分の触媒作用を阻害する恐れがある。
【0040】
さらに本発明の硬化組成物には、本発明の特性を損なわない範囲において様々な添加剤を併用することができる。例えば、アクリル酸エステル等のラジカル重合性化合物を併用することも可能であり、さらに既知のエラストマー、ラジカル重合禁止剤、過酸化物、フェロセン等のメタロセン化合物、増粘剤、硬化促進剤、ジオクチルフタレート、セバシン酸エステル等の可塑剤、密着性付与剤、タフナー、香料、染料、顔料、ヒュームドシリカ等の充填材等及び熱安定剤のような特定添加剤を必要に応じて添加することもできる。
【0041】
増粘剤の具体例として、ポリ(メチル)メタクリレート、メタクリレートタイプ共重合体、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート及びポリ(α−シアノアクリレート)等が挙げられる。
【0042】
エラストマーの具体例としてはアクリル系エラストマー、アクリロニトリル共重合体エラストマー、フルオロエラストマー等が挙げられる。中でも離型剤、ステアリン酸等の成分を含まないエラストマーが貯蔵安定性の観点で好ましく用いられる。
【0043】
本発明の光硬化性組成物は、室温で長い可使時間を持ち、大気中あるいは被着体表面の湿気により速やかな重合硬化に加えて、光などの活性エネルギー線の照射によっても速やかに硬化し、強靱な硬化物を形成するとともに、金属やプラスチックに対して強固な接着力を発現する。活性エネルギー線の照射は、150〜750nmの波長域の照射光が好ましく、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ又はLEDランプを使用して0.01〜100J/cm2の積算光量で硬化することができる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例によって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制約されるものではない。また、下記の表中の配合割合は特に断りのない限り質量基準である。
【0045】
〈実施例1〜19及び比較例1〜6〉
組成物を調製するために下記成分を準備した。
【0046】
本発明の実施例および比較例に使用した材料は下記に示す市販の製品または試薬である。
〈A成分〉
a−1:エチルα−シアノアクリレート((株)スリーボンド社製品、高精製グレード)
〈B成分〉
b−1:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン構造含有化合物とテトラフェニルボレートの塩 (サンアプロ株式会社製U−CAT5002)
b−2:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン−テトラフェニルボレート(北興化学工業株式会社製DBN−K)
b−3:2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート(北興化学工業株式会社製EMZ−K)
b−4:テトラフェニルボレートナトリウム塩(NaBPh)(株式会社同仁化学研究所製試薬)
b−5:テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(TBAPh)(アルドリッチ社製試薬)
b−6:テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(北興化学工業株式会社製TPP−K)
b−7:ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(北興化学工業株式会社製TPPZ−K)
b−8:テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート(北興化学工業株式会社製TPTP−MK)
b−9:p−トリルトリフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート(北興化学工業株式会社製TPP−MK)
〈B成分の比較成分〉
b’−1:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(サンアプロ株式会社製DBN)
b’−2:ピリジントリフェニルボレート(北興化学工業株式会社製PK)
b’−3:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンとパラトルエンスルホン酸の塩(サンアプロ株式会社製U−CAT−506)
b’−4:α−アミノアセトフェノン系光塩基発生剤(BASF社製イルガキュア907)
〈C成分〉
c−1:BFエチルエーテルコンプレックス(森田化学工業株式会社製 三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯塩)
c−2:ヒドロキノン(東京化成工業株式会社製試薬)
c−3:(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製JPA−514)
c−4:リン酸
〈D成分〉
d−1:フェニル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシルケトン(BASF社製イルガキュア184)
d−2:ベンジルジメチルケタール(BASF社製イルガキュア651)
d−3:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製イルガキュア819)
d−4:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製 ルシリン−TPO)
d−5:フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(LAMBSON社製スピードキュアMBF)
d−6:2−イソプロピルチオキサントン(LAMBSON社製スピードキュアITX)
d−7:ベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製試薬)
〈その他成分〉
・アルキルシランで表面処理した平均粒径14nmのフュームドシリカ(デグサ社製R805)
・アセトン(東京化成工業株式会社製試薬)
【0047】
[組成物の調製]
表1〜4に示す質量比で、アセトンに、エチルα−シアノアクリレートを除く各原料を遮光容器中で攪拌溶解する。遮光容器中でこのアセトン溶液にエチルα−シアノアクリレートを攪拌しながら滴下溶解し、各組成物を得た。ただし実施例15については、アセトンを用いず、TPP−Kを除く成分を混合したのち、TPP−Kを加え、均一に攪拌混合して用いた。
【0048】
[25℃保存安定性]
各組成物5gを25℃室内で遮光容器中に密閉保存し、12時間毎に各組成物を目視で観察し、組成物がゲル化して流動しなくなるまでの日数を測定した。なお、30以上とは30日以上ゲル化しなかったものであり、0.0と標記したものは、組成物を混合調製した直後に激しく反応し固化したものである。
【0049】
[光硬化性]
各組成物0.02gをPETフィルム上にスポイトを用いて滴下し、浜松ホトニクス社製スポット紫外線照射装置(365nm照度:50mW/cm)を用いて活性エネルギー線を照射した後に指触試験を繰り返し、組成物全体が硬化するまでを確認し、硬化が確認された時間から積算光量を求めた。ここで指触試験とは、組成物の表面状態を確認し、硬化有無を判断する試験である。
尚、25J/cmの活性エネルギー線を照射しても硬化しなかったものは「未硬化」と標記し、組成物調製直後から激しく反応し固化したものは測定不能のため表中に「測定不能」と記した。
【0050】
[硬化物色]
光硬化性測定後の硬化物の外観を目視で観察した。光によって硬化しなかったものは測定不能と標記した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
実施例1〜3から、本発明の(A)、(B)成分から成る組成物は、実用に充分な保存安定性を有しつつ、紫外線を照射することにより瞬時に硬化することがわかる。実施例4〜10から、任意の(C)アニオン重合禁止剤を添加することにより保存安定性を向上できることがわかる。実施例11〜19から、種々の(B)成分が使用可能であることがわかる。実施例20〜30から、任意の(D)ラジカル発生剤を添加することにより光硬化性が向上することがわかる。実施例29,30から、複数の(A)、(B)、(C)成分を組み合わせても良いことがわかる。また、実施例15からは、充填剤を添加しても問題ないことがわかる。さらに(B)成分を溶剤で希釈せずに使用することが可能であることがわかる。比較例1、2から、本発明の(B)成分を含まない場合、光硬化性を示さないことがわかる。比較例3〜5から、(B)成分に類似した構造を有するが、一般式(1)に示す構造を持たない化合物を用いた場合、混合直後に組成物が硬化してしまうか、光硬化性を示さないことがわかる。比較例6から、本発明によらない従来公知の光塩基発生剤を用いた場合、本発明の組成物に比べ、保存安定性が悪く、さらに光硬化性も悪いことがわかる。
【0056】
[接着界面硬化時間、はみ出し部分硬化時間の確認試験]
被着体には鉄試験片(SPCC−SD、25×100×1.6mm)、ガラス試験片(25×100×1.6mm)を用い、室温22℃、湿度33%RH室中にて、実施例2および比較例1の各組成物を鉄試験片にスポイトで一滴滴下し、ガラス試験片を貼り合わせた。その際、故意に端部より組成物がはみ出すようにした。
貼り合わせ後直ちに浜松ホトニクス社製スポット紫外線照射装置(365nm照度:50mW/cm)を用いて活性エネルギー線を10秒間照射した場合としない場合について、貼り合わせた直後からの、接着界面が硬化して動かなくなるまでの時間(接着界面硬化時間)、はみ出し部分全体が指触試験で硬化が確認されるまでの時間(はみ出し部分硬化時間)を確認した。その結果を表5に示した。
【0057】
[白化現象の確認試験]
被着体には鉄試験片(SPCC−SD、25×100×1.6mm)、ガラス試験片(25×100×1.6mm)を用い、室温22℃、湿度33%RH室中にて、実施例2および比較例1の各組成物を鉄試験片にスポイトで一滴滴下し、ガラス試験片を貼り合わせた。その際、故意に端部より組成物がはみ出すようにした。
貼り合わせ後直ちに浜松ホトニクス社製スポット紫外線照射装置(365nm照度:50mW/cm)を用いて活性エネルギー線を10秒間照射した場合としない場合について、貼り合わせた直後からのはみ出し部分周辺の白化現象の有無を目視で確認した。その結果を表5に示した。ここで白化現象とは、未硬化のα−シアノアクリレート化合物が揮発後空気中の湿気により硬化、落下し、周辺に白色の硬化物として付着する現象を意味する。
【0058】
[引張せん断接着強さ試験]
被着体には鉄試験片(SPCC−SD、25×100×1.6mm)、ガラス試験片(25×100×1.6mm)を用い、室温22℃、湿度33%RH室中にて、実施例2および比較例1の各組成物を鉄試験片にスポイトで一滴滴下し、ガラス試験片を貼り合わせた。その際、故意に端部より組成物がはみ出すようにした。
貼り合わせ後直ちに浜松ホトニクス社製スポット紫外線照射装置(365nm照度:50mW/cm)を用いて活性エネルギー線を10秒間照射した場合としない場合について、それぞれの接着試験片を25℃室中に1時間放置したのち、25℃室中で万能引張試験機を用いて引っ張り速度10mm/minでせん断接着強さを測定した。その結果を表5に示した。
【0059】
【表5】

【0060】
実施例2の組成物は光照射の有無にかかわらず、接着界面については短時間で硬化接着することから、本発明組成物が優れた接着界面の硬化性を有していることがわかる。さらに光を照射することにより、はみ出し部分の硬化性を大幅に改善でき、かつ、白化現象を防止できることがわかる。これに対し比較例1の組成物は、接着界面の硬化性は問題ないものの、光を照射してもはみ出し部分の硬化が遅く、白化現象が発生することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の光硬化性組成物は、従来からα−シアノアクリレート系接着剤が用いられている既知の用途、即ち、湿気硬化性を利用した接着剤に使用することができる他、紫外線などのエネルギー線の照射によっても速やかに重合硬化するので、大面積の接着用途やコーティング用途、その他塗料、ポッティング、モールディング、シール剤、及び各種レジスト材料にも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(B)成分を含有することを特徴とする光硬化性組成物。
(A)α−シアノアクリレート
(B)下記一般式(1)で表されるアニオンを有する塩
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の芳香族基、または置換もしくは無置換の1〜20のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記(B)成分が下記一般式(2)で表される塩であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の芳香族基、または置換又は無置換のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Zは第4級アンモニウムカチオン、アルカリ金属カチオン、ホスホニウムカチオンを表す。)
【請求項3】
前記Zの第4級アンモニウムカチオンは、一般式(3)で表されるカチオン構造を分子内に1以上有するカチオン、2−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フェニルイミダゾリウムカチオン、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン及びテトラヘキシルアンモニウムカチオンからなる群から選択され、前記Zのアルカリ金属カチオンはナトリウムカチオン、カリウムカチオン及びリチウムカチオンからなる群から選択され、前記Zのホスホニウムカチオンは、ベンジルトリフェニルホスホニウムカチオン、下記一般式(4)で表される化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【化3】

(式中、Yは、炭素数3〜8のシクロアルカンを形成する置換を有してもよいアルキレン基を示す。置換基としては、水素原子または炭素数1〜18のアルキル基、アリル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、エチルフェニル基、ナフチル基等であり、Xは、水素原子、置換もしくは無置換の芳香環を有する有機基又は脂肪族基を示す。)
【化4】

(式中、R9〜R12は、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族基、または置換もしくは無置換の1〜20のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
更に(C)成分のアニオン重合禁止剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記(B)成分を(A)成分100質量部に対して0.001〜5質量部、(C)成分を(A)成分100質量部に対して0.0001〜10質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
更に(D)成分の活性エネルギー線ラジカル発生剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物に波長150〜750nmの活性エネルギー線を照射することにより該組成物を硬化させることを特徴とする硬化方法。

【公開番号】特開2013−53199(P2013−53199A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191272(P2011−191272)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】