光触媒利用の臭素酸分解方法およびその装置
【課題】 光触媒反応により水中の臭素酸イオンを効率的かつ安定的に除去する。
【解決手段】 光触媒反応槽11に臭素酸イオンを含んだ被処理液を注入し、この被処理液中には粉末状またはガラス等の担体に担持した光触媒を懸濁または投与する。光触媒反応槽11内には撹拌子12を設け、この撹拌子12はマグネティックスターラ13により駆動され、光触媒反応槽11内の被処理液が撹拌される。反応槽11に被処理液を注入する際に、被処理液のpHを、利用する光触媒の種類に応じて、等電点以下となるように予め調整しておく。反応槽11には、光源(ランプ)14を設け、この光源14は、光触媒のバンドギャップ以上のエネルギを有する光を発するものである。光源14はランプ保護管15に収納されて反応槽11内の被処理液に浸される。光源14はランプ安定器16により点灯され、この点灯による光が光触媒に照射される。
【解決手段】 光触媒反応槽11に臭素酸イオンを含んだ被処理液を注入し、この被処理液中には粉末状またはガラス等の担体に担持した光触媒を懸濁または投与する。光触媒反応槽11内には撹拌子12を設け、この撹拌子12はマグネティックスターラ13により駆動され、光触媒反応槽11内の被処理液が撹拌される。反応槽11に被処理液を注入する際に、被処理液のpHを、利用する光触媒の種類に応じて、等電点以下となるように予め調整しておく。反応槽11には、光源(ランプ)14を設け、この光源14は、光触媒のバンドギャップ以上のエネルギを有する光を発するものである。光源14はランプ保護管15に収納されて反応槽11内の被処理液に浸される。光源14はランプ安定器16により点灯され、この点灯による光が光触媒に照射される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、光触媒を利用して水中の臭素酸イオンを分解処理する光触媒利用の臭素酸分解方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】臭素酸イオン(BrO3-)の毒性の指摘は、1986年に発表された黒川らによる報告に端を発している。臭素酸イオンは、オゾン処理や促進酸化処理における副生成物の一つであり、水中に溶存する臭化物イオン(Br-)が酸化されて生成される。IARC(Internatioal Agency for Reseach on Cancer)では臭素酸イオンを発ガン性物質としてグループ2B(発ガンの可能性のあるもの)に分類している。日本国内では近年、塩素による消毒の副生成物であるトリハロメタンの低減化や異臭味除去を目的として、浄水処理仮定にオゾン処理を導入する事例が増加しつつある。国外では、ヨーロッパを中心に殺菌等の目的で古くから浄水処理でオゾン処理が用いられている。このような流れの中で、臭素酸イオンの毒性の問題がクローズアップされて来た。
【0003】WHOでは、1993年に黒川等の報告書をもとにリスクレベルを計算し、その結果から25μg/Lのガイドライン値を設定した。米国環境保護庁(USEPA)では1994年に消毒剤/消毒副生成物規制(D/DBPrule)の第1ステージで臭素酸イオンの最大許容度を10μg/Lとする提案を行っており、さらにD/DBPruleの第2ステージでは厳しい基準を設定しようとしている。オランダではオゾン処理の目的に応じて臭素酸イオンの規制値を分けて設定する方向で検討しており、殺菌目的の場合は10μg/L、有機性の汚染物質除去でオゾン/過酸化水素処理を導入する場合には0.5μg/Lを提案してしいる。殺菌で高い規制値としているのは、殺菌効果と臭素酸生成が同時に進行するためやむ得ないという考え方である。
【0004】国内でも臭素酸イオンの毒性の問題が検討されており、国立公衆衛生院(浅見真理他:“オゾン処理における臭素酸イオンの生成における共存物質の影響”、水環境学会誌Vol.19(11),p930-936(1996))や大阪市(宮田雅典他:“高度浄水処理における臭素酸イオン生成とその挙動”、水道協会雑誌、Vol.663,p16(1997))などの研究の報告があり、その対策の準備がなされている。また、オゾン処理以外からの臭素酸イオンの混入例として、大阪の淀川での検出例があり、毛髪用のパーマネント液が汚染源の一つであると考えられている。
【0005】臭素酸イオンに対する対策法は大きく2つに分かれる。第1は、オゾン処理過程での臭素酸イオンの生成を抑制する方法である。この方法は、オゾンの注入量を厳密にコントロールして、過剰注入による臭素酸イオンの生成を避けるものである。過酸化水素の共存下では臭素酸イオンが生成しにくいことを利用して、過酸化水素との併用により抑制する。あるいは、水中の臭化物(Br-)をイオン交換法などにより予め除去することにより臭素酸イオンが生成しないようにする方法もある。その他アンモニア添加やpHを下げることによる抑制法も検討されている。第2は、生成した臭素酸イオンを除去する方法である。現在のところ臭素酸イオンの除去法として有効とされているのは活性炭処理である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】現在、凝集沈殿→急速ろ過→塩素消毒の一般的な浄水方法では混入した臭素酸イオンの除去はできない。従って、取水源での混入あるいはオゾン処理導入による臭素酸イオンの除去対策としては活性炭処理法が検討されている。活性炭処理としては粒状活性炭の利用が一般的である。しかし、粒状活性炭を利用する場合には、溶存有機物等の吸着による活性炭の劣化の問題があり、長期間使用した活性炭では臭素酸イオンの吸着率が低下することが報告されている。劣化した活性炭が交換、再生等の操作が必要になる。
【0007】オゾン処理において、臭素酸イオンの生成量は、溶存オゾン濃度と処理時間の積、つまりCT値に比例することが判っている。一方で、オゾンによる殺菌効果もまたCT値に比例する。確実な殺菌効果を得るためには、CT値が一定値以上になるよう処理条件を設定する必要がある。殺菌効果と臭素酸イオン生成の抑制についてのトレードオフの関係を表した例が図16である。図16はジアルジア(Giardia)の殺菌条件と臭素酸イオンの生成量との関係を示したものであるが、オゾン注入量1.8mg/Lで殺菌に必要なCT値条件を満たすことができるが、このとき臭素酸イオンの生成量は3μg/L程度となっている。オランダ等で殺菌目的でオゾンを用いる場合に、臭素酸イオンの規制値を10μg/Lと高く設定しているのは、このような実験事実に基づいている。オゾン処理において、臭素酸イオン生成を抑制するためには、厳密なオゾン注入条件の管理が必要なばかりでなく、殺菌等を目的にオゾンを適用する場合には、一定量の臭素酸イオンの生成は免れないというのが現状であり、深刻な問題となっている。
【0008】この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、光触媒反応により水中の臭素酸イオンを効率的かつ安定的に除去するようにし、しかも維持管理を容易にした光触媒利用の臭素酸分解方法およびその装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を達成するために、第1発明は、臭素酸イオンを含んだ被処理液中に光触媒を投与した後、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射して光触媒反応を生じさせるようにしたことを特徴とするものである。第2発明は、前記被処理液に酸溶液を注入し、その被処理液のpHを光触媒の等電点以下に調整することを特徴とするものである。
【0010】第3発明は、臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽と、この光触媒反応槽に被処理液を流入させる前に、被処理液にpH調整用の酸溶液を注入混合させる装置とからなることを特徴とするものである。第4発明は、前記光触媒反応槽にpH計を設け、このpH計からのpH出力信号に応じて前記酸溶液の注入量を可変させるようにしたことを特徴とするものである。第5発明は、前記光触媒反応槽の前段に酸素を含まないガスで被処理液を曝気する脱酸素部を設けて被処理液中の溶存酸素を除去することを特徴とするものである。第6発明は、前記光触媒反応槽と脱酸素部とを一体化させることを特徴とするものである。第7発明は、前記光触媒反応槽に被処理液を流入させる前に、被処理液に正孔補足剤を注入することを特徴とするものである。第8発明は、前記被処理液のpHを4以下にすることを特徴とするものである。
【0011】第9発明は、臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌をオゾン処理にて行うオゾン処理槽と、このオゾン処理槽でオゾン処理された被処理液が供給され、この被処理液からオゾンを除去する脱オゾン槽と、この脱オゾン槽でオゾンが除去された被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とするものである。
【0012】第10発明は、前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とするものである。
【0013】第11発明は、臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液に光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とするものである。第12発明は、前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とするものである。
【0014】第13発明は、臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌をオゾン処理にて行うオゾン処理槽と、このオゾン処理槽でオゾン処理された被処理液が供給され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とするものである。第14発明は、前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とするものである。
【0015】第15発明は、臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、脱炭酸に必要なpHに調整されるとともに、脱炭酸に必要なガスが注入される脱炭酸処理槽と、この脱炭酸処理槽で脱炭酸された被処理液が供給され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とするものである。第16発明は、前記光触媒反応槽に脱酸素のためのガスを曝気させることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図面に基づいて説明するに当たり、この発明の実施の形態で使用する光触媒について述べる。光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光を照射すると、価電子帯から伝導帯へ電子が励起され、伝導帯に電子を価電子帯に正孔を生じる。伝導帯に励起された電子は還元力を持ち、価電子帯の正孔は酸化力を持つ。電子と正孔が還元と酸化を行った後は、価電子帯と伝導帯は元の状態に戻り、光が照射されると再び電子と正孔が生じて還元と酸化を行う。光触媒のひとつである酸化チタンの場合には、バンドギャップは約3.0eVであり、410nm以下の紫外線を照射することにより酸化還元反応が進行する。
【0017】光触媒上で生じる電子の還元力を利用することにより、水中の臭素酸イオンを還元分解することができる。BrO3-/Br-および水分子の酸化還元電位と酸化チタン上で生じる電子(TiO2(e-))、正孔(TiO2(h+))のエネルギ準位を表1にまとめて示した。
【0018】
【表1】
【0019】光触媒上で生じる電子のポテンシャルエネルギ準位がBrO3-/Br-の酸化還元電位より低い位置にあれば、臭素酸イオンの還元反応が進行する。酸化チタンの場合には電子のポテンシャルエネルギ準位は-0.54Vであり、BrO3-/Br-の酸化還元電位1.423より低いので次の反応が進行する。
【0020】
BrO3-+6H++6e- → Br-+3H2O (1)
水中に有機物のような正孔を補足する溶存物質が存在しない場合には、正孔側では水の酸化分解が進行する。
(電子側)BrO3-+6H++6e- → Br-+3H2O (2)
(正孔側)2H20 +4h+→ O2+4H+ (3)
従って、全体では次の反応となる。
【0021】
2BrO3- → 2Br-+3O2 (4)
正孔(h+)と反応するような物質が存在する場合には、2−プロパノールを例にすれば次の反応となる。
【0022】
(電子側)BrO3-+6H++6e- → Br-+3H2O (5)
(正孔側)(CH3)2CHOH+h+ → (CH3)2C・OH+H+ (6)
従って、全体では次の反応となる。
【0023】
BrO3-+6(CH3)2C・OH → Br-+6(CH3)2C・OH+3H2O (7)
共存物質によって正孔側の反応は異なるが、いずれにしても還元側での電子の働きにより臭素酸イオンを分解することができる。その他の光触媒のエネルギ準位とバンドギャップを図1に示す。この図1に示した全ての光触媒で臭素酸イオンが分解可能になる。
【0024】図1に示す光触媒のうちで酸化チタンのような光触媒を用いて臭素酸イオンを還元分解するためには、もう一つの条件が必要である。つまり、酸化物の表面電荷が陽に帯電しているという条件である。光触媒により分解反応が進行するためには、分解される基質が光触媒表面に吸着する必要がある。一般に、光触媒では、図2に示すように等電点を境にして、等電点より酸性側では陽に帯電して陰イオンを吸着し、等電点よりアルカリ側では負に帯電して陽イオンを吸着する。臭素酸イオンは陰イオンであるので、光触媒上に吸着するためには、光触媒が陽に帯電している必要がある。光触媒が陽に帯電していれば、表面に臭素イオンが吸着し、光照射で生じた電子を受け取って臭素酸イオンの還元分解が進行するようになる。表2は各種酸化物の等電点の測定例を示すもので、表2から例えば酸化チタン(TiO2)の場合には、等電点が5〜6であるので、臭素酸イオンを吸着分解するためには、pHを5〜6以下の酸性条件にする必要がある。
【0025】
【表2】
【0026】以上から臭素酸イオン分解に利用できる光触媒を分類すると、次の表3に示すようになる。
【0027】
【表3】
【0028】表3からWO3,SnO2,TiO2,γFe2O3の場合には酸性条件で、またαFe2O3,ZnO,SrTiO3,BaTiO3の場合には中性条件(pH7付近)で臭素酸イオンの分解が可能となる。なお、表3には、バンドギャップとそれを換算した波長の値を併せて示してある。表3中に示した波長以下の光を照射することにより光触媒反応を起こすことができ、臭素酸イオンを分解することができる。
【0029】以上の原理に基づいて水中の臭素酸イオンを分解するこの発明の実施の形態について以下述べる。
〔実施の第1形態〕図3はこの発明の実施の第1形態を示す概略構成説明図で、図1において、11はバッチ処理用の光触媒反応槽である。この光触媒反応槽11に臭素酸イオンを含んだ被処理液(被処理水)を注入する。この被処理液中には粉末状またはガラス等の担体に担持した光触媒を懸濁または充填する。12は反応槽11内に設けられた撹拌子で、この撹拌子12はマグネティックスターラ13により駆動されて、反応槽11内の被処理液を撹拌する。反応槽11に被処理液を注入する際に、被処理液のpHを、利用する光触媒の種類に応じて、表4の等電点以下となるように予め調整しておく。反応槽11には光源(ランプ)14を設ける。この光源14は光触媒のバンドギャップ以上のエネルギを発する。すなわち、表4に示す波長以下の光を発するもので、この光源14はランプ保護管15に収納されて反応槽11内の被処理液に浸される。光源14はランプ安定器16により点灯され、この点灯による光が光触媒に照射される。
【0030】
【表4】
【0031】上記表4に示す光触媒に、そのバンドギャップ以上のエネルギを持つ光が照射されると、価電子帯から伝導帯へ電子が励起され、伝導帯に電子が、価電子帯に正孔が発生する。発生した電子の還元力により以下に示す反応が生じ、臭素酸イオン(BrO3-)が臭化物イオン(Br-)に分解される。
【0032】BrO3-+6H++6e- → Br-+3H2O図4は上記第1形態の被処理液中に光触媒として酸化チタン粉末(等電点6.4)を、光源14としてブラックライト(波長域300〜410nm,ピーク366nm)を使用したときの臭素酸イオンの分解時間を示したものである。なお、被処理液のpH条件は約5とした。図4に示すように初期濃度(2000ppb,200ppb)によって分解時間は異なるが、約5分から15分で臭素酸イオンを完全に分解できた。
【0033】〔実施の第2形態〕図5はこの発明の実施の第2形態を示す概略構成図で、この第2形態は光触媒として固定化酸化チタンを利用した連続処理式の臭素酸分解装置である。図5において、図3と同一部分には同一符号を付して、その説明を省略して述べるに、21は光触媒反応槽で、この反応槽21内には、後述のようにpH調整された被処理液に、光触媒を担持した担体(光触媒担体)が充填されて流入される。22は塩酸、硫酸等の酸溶液槽で、この酸溶液槽22の酸溶液はポンプ23を介して混合器24で被処理液と混合される。混合器24における酸溶液の注入量は利用する光触媒に応じて第1形態と同様に適正なpHとなるように予め計算また実験的に決定しておく。
【0034】光触媒反応槽21内では第1形態の反応器と同様な反応が進行して、臭素酸イオンが分解処理された後、その処理液が流出部から流出される。流出した処理液は混合器25でアルカリ液と混合されて放流される。アルカリ液はポンプ26によりアルカリ槽27から供給される。なお、被処理液のpHが予め臭素酸イオンを分解できるpH域にある場合には、光触媒反応槽21の流入前に酸溶液と混合させることは不要である。また、放流水のpHを特に指定されない場合には、光触媒反応槽21から流出する処理液にアルカリ液を注入することも不要である。
【0035】〔実施の第3形態〕図6はこの発明の実施の第3形態を示す概略構成図で、この第3形態は第2形態にpH計28と、このpH計28で計測したpHの値を演算する演算器29とを設けたものである。このように構成した第3形態においては、まず、光触媒反応槽21内の被処理液のpHをpH計28で計測する。その後、この計測信号を演算器29で演算して酸溶液の必要注入量を計算し、この注入量の計算値に基づいてポンプ23の運転速度が制御される。ポンプ23は計算された注入量により酸溶液槽22からの酸溶液を被処理液に供給し、混合器24にて混合することにより、被処理液が光触媒反応槽21へ流入する前に酸溶液を自動注入することができる。pH調整後の被処理液は前記第2形態と同様に処理される。
【0036】〔実施の第4形態〕図7はこの発明の実施の第4形態を示す概略構成図で、この第4形態は第2形態に示す光触媒反応槽21の前段に脱酸素部である窒素ガス曝気槽31を設けたものである。図7において、混合器24から送出された被処理液は窒素ガス曝気槽31に流入された後、この曝気槽31に設置された散気装置32から窒素ガスが被処理液中に曝気される。曝気された窒素ガスは大気中に放出される。なお、窒素ガスはポンプ33から供給される。
【0037】上記のように被処理液に窒素ガスを曝気させるのは、被処理液中に溶存酸素が存在する場合、溶存酸素が光触媒反応で生じた電子の受容体となり、臭素酸イオンと酸素が競合的に電子を受け取るようになり、溶存酸素により臭素酸イオンの分解速度が低下するのを防止するためである。すなわち、被処理液中の溶存酸素を除去することで、被処理液の臭素酸イオンの分解速度を向上させることができるようになる。被処理液中の溶存酸素を除去した後の光触媒反応以降の処理は、第2形態と同様に行われて処理される。なお、窒素ガスの代わりにアルゴンガス等の酸素を含有しないガスで代用するようにしても良い。
【0038】図8は酸素存在条件下と第4形態の無酸素条件下における臭素酸イオンの分解速度を比較した特性図で、この特性図から第4形態の無酸素条件下では、臭素酸イオンの分解速度が速くなっていることが判る。
【0039】〔実施の第5形態〕図9はこの発明の実施の第5形態を示す概略構成図で、この第5形態は脱酸素部である窒素ガス曝気槽と光触媒反応部である光触媒反応槽とを一体化させた脱酸素光触媒反応装置35を使用したものである。この脱酸素光触媒反応装置35には、窒素ガスがポンプ33を介して散気装置32から直接注入される。すなわち、脱酸素光触媒反応装置35の被処理液に窒素ガスが曝気されて溶存酸素が除去される。その他の処理は第3および第4形態の処理動作と同様に行われる。
【0040】〔実施の第6形態〕図10はこの発明の実施の第6形態を示す概略構成図で、この第6形態は第2形態に、有機物として2−プロパノール溶液をその溶液槽36からポンプ37により光触媒反応槽21への流入前に注入するようにしたものである。この2−プロパノール溶液はその前段で注入された酸溶液とともに混合器24で混合されて光触媒反応槽21に供給される。光触媒反応槽21での反応は、第2形態の動作と同様であるが正孔側の反応は次式のように行われる。
(正孔側)(CH3)2CHOH+h+ → (CH3)2C・OH+H+上記第6形態のように2−プロパノール溶液を使用するのは次のような理由からである。光触媒反応により生じた電子は、臭素酸イオンの分解で消費されるが、同時に生じる正孔は共存物質の有無により異なった反応形態をとる。溶液中に有機物のような正孔補足剤がない場合には、正孔は水分子と反応し、次に示す反応式のように酸素を発生する。
2H2O+4h+ → O2+4H+このため、2−プロパノールのような有機物を投入すれば、水分子の代わりに有機物は正孔と反応する。正孔との反応は水分子より有機物の方が速いため、有機物を添加することで光触媒反応を促進することができ、臭素酸イオンの分解速度の向上を図ることができる。図11は有機物なし(正孔補足剤なし)と2−プロパノール存在下(正孔補足剤あり)における臭素酸イオン分解速度を比較した特性図で、この特性図から正孔補足剤がある場合には臭素酸イオン分解速度が向上していることが検証された。
【0041】〔実施の第7形態〕この第7形態は、溶液中のpHを「4」以下にすれば、臭素酸イオンは臭素に還元されて、曝気条件では臭素が気中に放出されて、溶液中に臭化物イオンBr-は残らなくなるようにしたものである。このように臭素酸イオンを臭素に還元することにより、臭化物イオンが溶液中に残留していると、不飽和性の有機物等の共存によってプロモホルムのような発ガン性のあるトリハロメタンが生成される可能性を除去できるようになる。この第7形態の構成としては、図9に示す第5形態を使用して、脱酸素光触媒反応装置35に被処理液が流入する前のpHを光触媒の種類によらず常にpH=4以下に制御するようにすれば良い。この場合には次のような反応となる。
2BrO3-+12H++12e- → Br2+6H2O〔実施の第8形態〕図12はこの発明の実施の第8形態を示すシステム構成図で、この第8形態は光触媒処理で臭素酸イオンが有効に分解されるpH範囲が存在することを利用して、前段のオゾン処理で水中の有機物除去、殺菌を十分行った後、オゾン酸化で生成することが予測される臭素酸イオンを後段の光触媒処理で除去する総合的な処理システムである。
【0042】図12において、図示左上の流入口51から被処理水(被処理液)がオゾン処理槽52に流入すると、オゾン処理槽52で有機物の除去と殺菌が行われる。オゾン処理槽52にはオゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54を通して注入され、水中の有機物等とオゾンが反応する。このオゾン処理槽52で十分な有機物の除去と殺菌が行われると同時に、流入水中に臭化物イオンが含まれていると、この槽52で臭素酸イオンが生成してしまうが、後述のようにしてこの臭素酸イオンは分解される。
【0043】オゾン処理槽52で有機物の除去と殺菌が十分行われた被処理水は脱オゾン槽55に送られる。この脱オゾン槽55には、ブロア又はボンベ等のガス供給部56から送られるガスが散気管57から脱オゾン槽55内に送気され、この槽55の水中に残留していたオゾンが除去される。脱オゾン槽55の被処理水出口には溶存オゾン(DO3)センサ58が設置される。このセンサ58で脱オゾン槽55において十分に残留オゾンが除去されているかどうかが監視される。DO3センサ58からの信号はコントローラ59に送られてガス供給部56のブロア等の出力が制御される。
【0044】脱オゾン槽55で脱オゾンされた水は、pH第1調整槽60に送られる。この第1調整槽60には、pH調整試薬第1注入ポンプ61により適量のpH調整試薬が投与されて適切なpHに調整される。pH値が適正かどうかはpH第1調整槽60の出口に設置されたpHセンサ62により監視され、その監視信号はコントローラ59に供給されてpH調整試薬第1注入ポンプ61の試薬注入量が制御されるのに用いられる。適正なpHに調整された水は、光触媒反応槽63に送られる。この光触媒反応槽63では、その槽内にコーティングされているか、もしくは固定材に固定された酸化チタンなどの光触媒と、光源64から発せられる紫外線との光触媒反応により、直ちに臭素酸イオンが分解される。光源64は、光触媒のバンドギャップ以上のエネルギを発する。すなわち、表4に示す波長以下の光を発するもので、この光源64は通常水中に設置されるために、ランプ保護管65で覆われている。なお、光源64の発光力は、ランプ電源66によって操作される。
【0045】光触媒反応槽63で十分に臭素酸イオンが除去された処理水は、pH第2調整槽67に送られ、pH調整試薬第2注入ポンプ68から投与される試薬により適切なpH値に調整された後、図示右方下の流出口69から流出される。この流出される処理水のpH値はpH第2調整槽67に設置されたpHセンサ70により監視され、その監視信号はコントローラ59に送られてpH調整試薬第2注入ポンプ68の試薬投与量を制御するために用いられる。なお、オゾン処理槽52と脱オゾン槽55で反応に使用されずに気中に残留したオゾンは、全て収集されて排オゾン処理塔71に送られて無害化された後に、大気中に放出される。また、図12において、実線矢印は水系統を、一点鎖線はガス系統を、破線は電気信号系統をそれぞれ表している。
【0046】上記した第8形態のようなシステムにより、オゾン投与量とpH第1、第2調整槽60、67のpHとを監視、制御して被処理水を処理することにより、水中の有機物を分解し、十分な殺菌を施すばかりでなく、オゾン処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができる。このため、水質の安全な処理水を得ることができるようになる。
【0047】〔実施の第9形態〕図13はこの発明の実施の第9形態を示すシステム構成図で、前記第8形態と同一部分は同一符号を付し、その詳細な説明を省略して述べる。図13において、流入口51から被処理水が促進酸化処理槽81に流入されると、この処理槽81で有機物の除去と殺菌が行われる。促進酸化処理槽81は、ランプ保護管82で保護されたUVランプ83と、オゾン発生装置53で発生されたオゾンガスが注入される散気管54から構成される。UVランプ83は、254nm付近に主波長を持つ紫外線光を発するもので、ランプ電源84により操作される。
【0048】上記のように構成された促進酸化処理槽81には、オゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54により注入され、UVランプ83から発せられる紫外線が照射されると、オゾンが分解され、オゾンよりも酸化力の強いOHラジカルが生成される。OHラジカルと処理槽81の被処理水中の有機物等が素早く反応し、十分な有機物の除去と殺菌が行われると同時に、流入被処理水中に臭化物イオンが含まれると、臭素酸イオンが生成されてしまうこともあるが、この臭素酸イオンは後述のように処理される。促進酸化処理槽81で被処理水中の有機物の除去と殺菌が行われた水は、脱オゾン槽55に送られ、以後の処理は第8形態のように行われる。
【0049】上記した第9形態のようなシステムにより、オゾン投与量とpH第1、第2調整槽60、67のpHとを監視、制御して排水(被処理水)を処理することにより、特に促進酸化処理を行うことにより、水中の難分解性の有機物を分解除去し、十分な殺菌を施すばかりでなく、促進酸化処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができる。このため、水質の安全な処理水を得ることができるようになる。
【0050】なお、第9形態における促進酸化処理としては、オゾンを紫外線で処理する場合について述べて来たが、オゾンを過酸化水素で処理するようにしても良い。また、促進酸化処理としては、過酸化水素と紫外線、オゾン、紫外線および光触媒を使用して処理しても良い。
【0051】〔実施の第10形態〕図14はこの発明の実施の第10形態を示すシステム構成図で、第8、第9形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略して述べる。図14に示す第10形態は、第9形態に第8形態で述べたオゾン処理槽52を促進酸化処理槽81の前段に設けたものである。図14において、オゾン処理槽52には、オゾンガス注入用の散気管54aを設け、促進酸化処理槽81にはオゾンガス注入用の散気管54bを設けたものである。
【0052】上記のようにオゾン処理槽52に流入口51から被処理水が流入されると、まず、オゾン処理槽52にはオゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54aより注入され、水中の有機物等と反応して有機物の低分子化と殺菌が行われる。その後、オゾン単独では分解しきれない難分解性の有機物が含まれた水は、促進酸化処理槽81へ送られる。促進酸化処理槽81では、オゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54bより注入され、同時に促進酸化処理槽81に設置されたUVランプ83から発せられる紫外線がオゾンを含んだ水に照射されると、オゾンが分解され、オゾンよりも酸化力の強いOHラジカルが生成される。このOHラジカルと水中の有機物等が素早く反応し、十分に難分解性の有機物の分解除去と殺菌が行われる。その後の水は脱オゾン槽55に送られて第8形態で述べたように処理される。
【0053】上記第10形態は、被処理水を、オゾン処理した後、促進酸化処理して水中の有機物を除去し、殺菌を十分行った後に、オゾン酸化や促進酸化で生成することが予測される臭素酸イオンを、光触媒処理で除去する処理システムである。この処理システムを使用することにより、効率的に殺菌から難分解性有機物の除去まで行うことができるようになる。
【0054】上記した第10形態のようなシステムにより、オゾン投与量とpH第1、第2調整槽60、67のpHとを監視、制御して被処理水を処理することにより、特にオゾン処理と促進酸化処理を行うことにより、効率的に水中の難分解性の有機物を分解除去し、十分な殺菌を施すばかりでなく、オゾン処理や促進酸化処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができる。このため、水質の安全な処理水を得ることができるようになる。
【0055】〔実施の第11形態〕図15はこの発明の実施の第11形態を示すシステム構成図で、この第11形態は脱炭酸、脱酸素による効率の向上を図ったものである。通常の水には炭酸が溶存しており、pH緩衝作用を持つため、上記第8から第10形態のようなシステムでpH調整する際、多量のpH調整試薬を添加する必要があることが多い。また、促進酸化処理で分解反応の担い手となるOHラジカルは、反応に選択性がなく、炭酸などのラジカルスカベンジャーの存在によって無駄に使用されるため、炭酸の存在は、促進酸化処理の分解効率を低下させることにつながる。従って、この第11形態では処理の前段で脱炭酸処理を行い、pH緩衝作用をなくすことによって、より臭素酸イオン分解反応を進行しやすくするだけでなく、促進酸化反応の効率も向上させることができる。脱炭酸処理は、pHを必要な値に下げ、再溶解を防ぐために窒素ガス等で曝気する手段を採用する。
【0056】図15の第11形態において、第8形態から第10形態と同一部分には同一符号を付して、その詳細な説明を省略して述べる。図15において、流入口51からの被処理水がpH第1調整槽60に流入されると、pH調整試薬第1注入ポンプ61より試薬が、第1調整槽60に投与され、脱炭素に必要なpHに調整される。pH値が適正かどうかは、常にpHセンサ62によって監視され、その監視信号はコントローラ59に送られてpH調整試薬第1注入ポンプ61の投与量を制御するのに使用される。
【0057】また、第1調整槽60には、窒素ガスが充填されたボンベ91から送気された窒素ガスが散気管92を通して注入され、溶存されている炭酸が完全に気中に気散される。脱炭酸された被処理水は、促進酸化処理槽81に送られる。被処理水には、オゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54から注入されるとともに、促進酸化処理槽81に設置されたUVランプ83から発せられる紫外線が照射される。これらにより、被処理水中のオゾンが分解され、オゾンよりも酸化力の強いOHラジカルが生成される。OHラジカルと被処理水中の有機物等が素早く反応し、十分な難分解性有機物の除去と殺菌が行われる。このとき、被処理水中に臭化物イオンが含まれると、臭素酸イオンが生成されるけれども、この臭素酸イオンは前述した各実施の形態により分解されるので、問題はない。上記のようにして被処理水中の有機物除去と殺菌が行われた被処理水は、脱オゾン槽55に送られ、散気管57から注入されるブロアやボンベ56からのガスにより水中に残留していたオゾンが除去される。残留オゾンが十分に除去されているかどうかをDO3センサ58で監視し、その監視信号をコントローラ59に送ってブロア等の出力をコントロールする。なお、脱オゾン槽55は促進酸化処理槽81の条件が適切であれば、水中にオゾンが残留しないので、省略される場合もある。脱オゾンされた被処理水は、光触媒反応槽63に送られて、上記各実施の形態と同様に処理され、流出口69から流出する。
【0058】上記した第11形態のようなシステムにより、オゾン投与量とpH第1、第2調整槽60、67のpHとを監視、制御して被処理水を処理することにより、効率的に水中の難分解性の有機物を分解除去し、十分な殺菌を施すばかりでなく、オゾン処理や促進酸化処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができる。このため、水質の安全な処理水を得ることができるようになる。
【0059】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、以下のような効果が得られる。
a.光触媒反応により、被処理水中の臭素酸イオンを効率的かつ安定的に除去することができるとともに、活性炭処理のような劣化による処理材の交換が不要となるために、維持管理の簡便化を図ることができる。
【0060】b.オゾン投与量とpHとを監視、制御して被処理水を処理することにより、効率的に水中の難分解性の有機物を分解除去し、十分な殺菌を施すばかりでなく、オゾン処理や促進酸化処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができて、水質の安全な処理水を得ることができる。
【0061】c.活性炭による方法や、イオン交換法などに比較して、比較的低コストで臭素酸イオンを分解することができる。
【0062】d.脱炭酸処理を行うことにより、促進酸化処理で問題となるラジカルスカベンジャーによる反応の無駄がなくなるとともに、より効率的に臭素酸イオンを分解することができる。
【0063】e.既存のオゾン処理システムや促進酸化処理システムに容易に付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光触媒のエネルギ準位とバンドギャップの説明図。
【図2】等電点の説明図。
【図3】この発明の実施の第1形態を示す概略構成説明図。
【図4】臭素酸イオンの分解時間特性図。
【図5】この発明の実施の第2形態を示す概略構成説明図。
【図6】この発明の実施の第3形態を示す概略構成説明図。
【図7】この発明の実施の第4形態を示す概略構成説明図。
【図8】酸素存在条件下と無酸素条件下における臭素酸イオンの分解速度を比較した特性図。
【図9】この発明の実施の第5形態を示す概略構成説明図。
【図10】この発明の実施の第6形態を示す概略構成説明図。
【図11】有機物なし(正孔補足剤なし)と2−プロパノール存在下(正孔補足剤あり)における臭素酸イオン分解速度を比較した特性図。
【図12】実施の第8形態を示すシステム構成図。
【図13】実施の第9形態を示すシステム構成図。
【図14】実施の第10形態を示すシステム構成図。
【図15】実施の第11形態を示すシステム構成図。
【図16】ジアルジアの殺菌条件と臭素酸イオンの生成量との関係を示した特性図。
【符号の説明】
11…光触媒反応槽
12…撹拌子
13…マグネティックスターラ
14…光源(ランプ)
15…ランプ保護管
16…ランプ安定器
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、光触媒を利用して水中の臭素酸イオンを分解処理する光触媒利用の臭素酸分解方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】臭素酸イオン(BrO3-)の毒性の指摘は、1986年に発表された黒川らによる報告に端を発している。臭素酸イオンは、オゾン処理や促進酸化処理における副生成物の一つであり、水中に溶存する臭化物イオン(Br-)が酸化されて生成される。IARC(Internatioal Agency for Reseach on Cancer)では臭素酸イオンを発ガン性物質としてグループ2B(発ガンの可能性のあるもの)に分類している。日本国内では近年、塩素による消毒の副生成物であるトリハロメタンの低減化や異臭味除去を目的として、浄水処理仮定にオゾン処理を導入する事例が増加しつつある。国外では、ヨーロッパを中心に殺菌等の目的で古くから浄水処理でオゾン処理が用いられている。このような流れの中で、臭素酸イオンの毒性の問題がクローズアップされて来た。
【0003】WHOでは、1993年に黒川等の報告書をもとにリスクレベルを計算し、その結果から25μg/Lのガイドライン値を設定した。米国環境保護庁(USEPA)では1994年に消毒剤/消毒副生成物規制(D/DBPrule)の第1ステージで臭素酸イオンの最大許容度を10μg/Lとする提案を行っており、さらにD/DBPruleの第2ステージでは厳しい基準を設定しようとしている。オランダではオゾン処理の目的に応じて臭素酸イオンの規制値を分けて設定する方向で検討しており、殺菌目的の場合は10μg/L、有機性の汚染物質除去でオゾン/過酸化水素処理を導入する場合には0.5μg/Lを提案してしいる。殺菌で高い規制値としているのは、殺菌効果と臭素酸生成が同時に進行するためやむ得ないという考え方である。
【0004】国内でも臭素酸イオンの毒性の問題が検討されており、国立公衆衛生院(浅見真理他:“オゾン処理における臭素酸イオンの生成における共存物質の影響”、水環境学会誌Vol.19(11),p930-936(1996))や大阪市(宮田雅典他:“高度浄水処理における臭素酸イオン生成とその挙動”、水道協会雑誌、Vol.663,p16(1997))などの研究の報告があり、その対策の準備がなされている。また、オゾン処理以外からの臭素酸イオンの混入例として、大阪の淀川での検出例があり、毛髪用のパーマネント液が汚染源の一つであると考えられている。
【0005】臭素酸イオンに対する対策法は大きく2つに分かれる。第1は、オゾン処理過程での臭素酸イオンの生成を抑制する方法である。この方法は、オゾンの注入量を厳密にコントロールして、過剰注入による臭素酸イオンの生成を避けるものである。過酸化水素の共存下では臭素酸イオンが生成しにくいことを利用して、過酸化水素との併用により抑制する。あるいは、水中の臭化物(Br-)をイオン交換法などにより予め除去することにより臭素酸イオンが生成しないようにする方法もある。その他アンモニア添加やpHを下げることによる抑制法も検討されている。第2は、生成した臭素酸イオンを除去する方法である。現在のところ臭素酸イオンの除去法として有効とされているのは活性炭処理である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】現在、凝集沈殿→急速ろ過→塩素消毒の一般的な浄水方法では混入した臭素酸イオンの除去はできない。従って、取水源での混入あるいはオゾン処理導入による臭素酸イオンの除去対策としては活性炭処理法が検討されている。活性炭処理としては粒状活性炭の利用が一般的である。しかし、粒状活性炭を利用する場合には、溶存有機物等の吸着による活性炭の劣化の問題があり、長期間使用した活性炭では臭素酸イオンの吸着率が低下することが報告されている。劣化した活性炭が交換、再生等の操作が必要になる。
【0007】オゾン処理において、臭素酸イオンの生成量は、溶存オゾン濃度と処理時間の積、つまりCT値に比例することが判っている。一方で、オゾンによる殺菌効果もまたCT値に比例する。確実な殺菌効果を得るためには、CT値が一定値以上になるよう処理条件を設定する必要がある。殺菌効果と臭素酸イオン生成の抑制についてのトレードオフの関係を表した例が図16である。図16はジアルジア(Giardia)の殺菌条件と臭素酸イオンの生成量との関係を示したものであるが、オゾン注入量1.8mg/Lで殺菌に必要なCT値条件を満たすことができるが、このとき臭素酸イオンの生成量は3μg/L程度となっている。オランダ等で殺菌目的でオゾンを用いる場合に、臭素酸イオンの規制値を10μg/Lと高く設定しているのは、このような実験事実に基づいている。オゾン処理において、臭素酸イオン生成を抑制するためには、厳密なオゾン注入条件の管理が必要なばかりでなく、殺菌等を目的にオゾンを適用する場合には、一定量の臭素酸イオンの生成は免れないというのが現状であり、深刻な問題となっている。
【0008】この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、光触媒反応により水中の臭素酸イオンを効率的かつ安定的に除去するようにし、しかも維持管理を容易にした光触媒利用の臭素酸分解方法およびその装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を達成するために、第1発明は、臭素酸イオンを含んだ被処理液中に光触媒を投与した後、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射して光触媒反応を生じさせるようにしたことを特徴とするものである。第2発明は、前記被処理液に酸溶液を注入し、その被処理液のpHを光触媒の等電点以下に調整することを特徴とするものである。
【0010】第3発明は、臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽と、この光触媒反応槽に被処理液を流入させる前に、被処理液にpH調整用の酸溶液を注入混合させる装置とからなることを特徴とするものである。第4発明は、前記光触媒反応槽にpH計を設け、このpH計からのpH出力信号に応じて前記酸溶液の注入量を可変させるようにしたことを特徴とするものである。第5発明は、前記光触媒反応槽の前段に酸素を含まないガスで被処理液を曝気する脱酸素部を設けて被処理液中の溶存酸素を除去することを特徴とするものである。第6発明は、前記光触媒反応槽と脱酸素部とを一体化させることを特徴とするものである。第7発明は、前記光触媒反応槽に被処理液を流入させる前に、被処理液に正孔補足剤を注入することを特徴とするものである。第8発明は、前記被処理液のpHを4以下にすることを特徴とするものである。
【0011】第9発明は、臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌をオゾン処理にて行うオゾン処理槽と、このオゾン処理槽でオゾン処理された被処理液が供給され、この被処理液からオゾンを除去する脱オゾン槽と、この脱オゾン槽でオゾンが除去された被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とするものである。
【0012】第10発明は、前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とするものである。
【0013】第11発明は、臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液に光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とするものである。第12発明は、前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とするものである。
【0014】第13発明は、臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌をオゾン処理にて行うオゾン処理槽と、このオゾン処理槽でオゾン処理された被処理液が供給され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とするものである。第14発明は、前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とするものである。
【0015】第15発明は、臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、脱炭酸に必要なpHに調整されるとともに、脱炭酸に必要なガスが注入される脱炭酸処理槽と、この脱炭酸処理槽で脱炭酸された被処理液が供給され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とするものである。第16発明は、前記光触媒反応槽に脱酸素のためのガスを曝気させることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図面に基づいて説明するに当たり、この発明の実施の形態で使用する光触媒について述べる。光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光を照射すると、価電子帯から伝導帯へ電子が励起され、伝導帯に電子を価電子帯に正孔を生じる。伝導帯に励起された電子は還元力を持ち、価電子帯の正孔は酸化力を持つ。電子と正孔が還元と酸化を行った後は、価電子帯と伝導帯は元の状態に戻り、光が照射されると再び電子と正孔が生じて還元と酸化を行う。光触媒のひとつである酸化チタンの場合には、バンドギャップは約3.0eVであり、410nm以下の紫外線を照射することにより酸化還元反応が進行する。
【0017】光触媒上で生じる電子の還元力を利用することにより、水中の臭素酸イオンを還元分解することができる。BrO3-/Br-および水分子の酸化還元電位と酸化チタン上で生じる電子(TiO2(e-))、正孔(TiO2(h+))のエネルギ準位を表1にまとめて示した。
【0018】
【表1】
【0019】光触媒上で生じる電子のポテンシャルエネルギ準位がBrO3-/Br-の酸化還元電位より低い位置にあれば、臭素酸イオンの還元反応が進行する。酸化チタンの場合には電子のポテンシャルエネルギ準位は-0.54Vであり、BrO3-/Br-の酸化還元電位1.423より低いので次の反応が進行する。
【0020】
BrO3-+6H++6e- → Br-+3H2O (1)
水中に有機物のような正孔を補足する溶存物質が存在しない場合には、正孔側では水の酸化分解が進行する。
(電子側)BrO3-+6H++6e- → Br-+3H2O (2)
(正孔側)2H20 +4h+→ O2+4H+ (3)
従って、全体では次の反応となる。
【0021】
2BrO3- → 2Br-+3O2 (4)
正孔(h+)と反応するような物質が存在する場合には、2−プロパノールを例にすれば次の反応となる。
【0022】
(電子側)BrO3-+6H++6e- → Br-+3H2O (5)
(正孔側)(CH3)2CHOH+h+ → (CH3)2C・OH+H+ (6)
従って、全体では次の反応となる。
【0023】
BrO3-+6(CH3)2C・OH → Br-+6(CH3)2C・OH+3H2O (7)
共存物質によって正孔側の反応は異なるが、いずれにしても還元側での電子の働きにより臭素酸イオンを分解することができる。その他の光触媒のエネルギ準位とバンドギャップを図1に示す。この図1に示した全ての光触媒で臭素酸イオンが分解可能になる。
【0024】図1に示す光触媒のうちで酸化チタンのような光触媒を用いて臭素酸イオンを還元分解するためには、もう一つの条件が必要である。つまり、酸化物の表面電荷が陽に帯電しているという条件である。光触媒により分解反応が進行するためには、分解される基質が光触媒表面に吸着する必要がある。一般に、光触媒では、図2に示すように等電点を境にして、等電点より酸性側では陽に帯電して陰イオンを吸着し、等電点よりアルカリ側では負に帯電して陽イオンを吸着する。臭素酸イオンは陰イオンであるので、光触媒上に吸着するためには、光触媒が陽に帯電している必要がある。光触媒が陽に帯電していれば、表面に臭素イオンが吸着し、光照射で生じた電子を受け取って臭素酸イオンの還元分解が進行するようになる。表2は各種酸化物の等電点の測定例を示すもので、表2から例えば酸化チタン(TiO2)の場合には、等電点が5〜6であるので、臭素酸イオンを吸着分解するためには、pHを5〜6以下の酸性条件にする必要がある。
【0025】
【表2】
【0026】以上から臭素酸イオン分解に利用できる光触媒を分類すると、次の表3に示すようになる。
【0027】
【表3】
【0028】表3からWO3,SnO2,TiO2,γFe2O3の場合には酸性条件で、またαFe2O3,ZnO,SrTiO3,BaTiO3の場合には中性条件(pH7付近)で臭素酸イオンの分解が可能となる。なお、表3には、バンドギャップとそれを換算した波長の値を併せて示してある。表3中に示した波長以下の光を照射することにより光触媒反応を起こすことができ、臭素酸イオンを分解することができる。
【0029】以上の原理に基づいて水中の臭素酸イオンを分解するこの発明の実施の形態について以下述べる。
〔実施の第1形態〕図3はこの発明の実施の第1形態を示す概略構成説明図で、図1において、11はバッチ処理用の光触媒反応槽である。この光触媒反応槽11に臭素酸イオンを含んだ被処理液(被処理水)を注入する。この被処理液中には粉末状またはガラス等の担体に担持した光触媒を懸濁または充填する。12は反応槽11内に設けられた撹拌子で、この撹拌子12はマグネティックスターラ13により駆動されて、反応槽11内の被処理液を撹拌する。反応槽11に被処理液を注入する際に、被処理液のpHを、利用する光触媒の種類に応じて、表4の等電点以下となるように予め調整しておく。反応槽11には光源(ランプ)14を設ける。この光源14は光触媒のバンドギャップ以上のエネルギを発する。すなわち、表4に示す波長以下の光を発するもので、この光源14はランプ保護管15に収納されて反応槽11内の被処理液に浸される。光源14はランプ安定器16により点灯され、この点灯による光が光触媒に照射される。
【0030】
【表4】
【0031】上記表4に示す光触媒に、そのバンドギャップ以上のエネルギを持つ光が照射されると、価電子帯から伝導帯へ電子が励起され、伝導帯に電子が、価電子帯に正孔が発生する。発生した電子の還元力により以下に示す反応が生じ、臭素酸イオン(BrO3-)が臭化物イオン(Br-)に分解される。
【0032】BrO3-+6H++6e- → Br-+3H2O図4は上記第1形態の被処理液中に光触媒として酸化チタン粉末(等電点6.4)を、光源14としてブラックライト(波長域300〜410nm,ピーク366nm)を使用したときの臭素酸イオンの分解時間を示したものである。なお、被処理液のpH条件は約5とした。図4に示すように初期濃度(2000ppb,200ppb)によって分解時間は異なるが、約5分から15分で臭素酸イオンを完全に分解できた。
【0033】〔実施の第2形態〕図5はこの発明の実施の第2形態を示す概略構成図で、この第2形態は光触媒として固定化酸化チタンを利用した連続処理式の臭素酸分解装置である。図5において、図3と同一部分には同一符号を付して、その説明を省略して述べるに、21は光触媒反応槽で、この反応槽21内には、後述のようにpH調整された被処理液に、光触媒を担持した担体(光触媒担体)が充填されて流入される。22は塩酸、硫酸等の酸溶液槽で、この酸溶液槽22の酸溶液はポンプ23を介して混合器24で被処理液と混合される。混合器24における酸溶液の注入量は利用する光触媒に応じて第1形態と同様に適正なpHとなるように予め計算また実験的に決定しておく。
【0034】光触媒反応槽21内では第1形態の反応器と同様な反応が進行して、臭素酸イオンが分解処理された後、その処理液が流出部から流出される。流出した処理液は混合器25でアルカリ液と混合されて放流される。アルカリ液はポンプ26によりアルカリ槽27から供給される。なお、被処理液のpHが予め臭素酸イオンを分解できるpH域にある場合には、光触媒反応槽21の流入前に酸溶液と混合させることは不要である。また、放流水のpHを特に指定されない場合には、光触媒反応槽21から流出する処理液にアルカリ液を注入することも不要である。
【0035】〔実施の第3形態〕図6はこの発明の実施の第3形態を示す概略構成図で、この第3形態は第2形態にpH計28と、このpH計28で計測したpHの値を演算する演算器29とを設けたものである。このように構成した第3形態においては、まず、光触媒反応槽21内の被処理液のpHをpH計28で計測する。その後、この計測信号を演算器29で演算して酸溶液の必要注入量を計算し、この注入量の計算値に基づいてポンプ23の運転速度が制御される。ポンプ23は計算された注入量により酸溶液槽22からの酸溶液を被処理液に供給し、混合器24にて混合することにより、被処理液が光触媒反応槽21へ流入する前に酸溶液を自動注入することができる。pH調整後の被処理液は前記第2形態と同様に処理される。
【0036】〔実施の第4形態〕図7はこの発明の実施の第4形態を示す概略構成図で、この第4形態は第2形態に示す光触媒反応槽21の前段に脱酸素部である窒素ガス曝気槽31を設けたものである。図7において、混合器24から送出された被処理液は窒素ガス曝気槽31に流入された後、この曝気槽31に設置された散気装置32から窒素ガスが被処理液中に曝気される。曝気された窒素ガスは大気中に放出される。なお、窒素ガスはポンプ33から供給される。
【0037】上記のように被処理液に窒素ガスを曝気させるのは、被処理液中に溶存酸素が存在する場合、溶存酸素が光触媒反応で生じた電子の受容体となり、臭素酸イオンと酸素が競合的に電子を受け取るようになり、溶存酸素により臭素酸イオンの分解速度が低下するのを防止するためである。すなわち、被処理液中の溶存酸素を除去することで、被処理液の臭素酸イオンの分解速度を向上させることができるようになる。被処理液中の溶存酸素を除去した後の光触媒反応以降の処理は、第2形態と同様に行われて処理される。なお、窒素ガスの代わりにアルゴンガス等の酸素を含有しないガスで代用するようにしても良い。
【0038】図8は酸素存在条件下と第4形態の無酸素条件下における臭素酸イオンの分解速度を比較した特性図で、この特性図から第4形態の無酸素条件下では、臭素酸イオンの分解速度が速くなっていることが判る。
【0039】〔実施の第5形態〕図9はこの発明の実施の第5形態を示す概略構成図で、この第5形態は脱酸素部である窒素ガス曝気槽と光触媒反応部である光触媒反応槽とを一体化させた脱酸素光触媒反応装置35を使用したものである。この脱酸素光触媒反応装置35には、窒素ガスがポンプ33を介して散気装置32から直接注入される。すなわち、脱酸素光触媒反応装置35の被処理液に窒素ガスが曝気されて溶存酸素が除去される。その他の処理は第3および第4形態の処理動作と同様に行われる。
【0040】〔実施の第6形態〕図10はこの発明の実施の第6形態を示す概略構成図で、この第6形態は第2形態に、有機物として2−プロパノール溶液をその溶液槽36からポンプ37により光触媒反応槽21への流入前に注入するようにしたものである。この2−プロパノール溶液はその前段で注入された酸溶液とともに混合器24で混合されて光触媒反応槽21に供給される。光触媒反応槽21での反応は、第2形態の動作と同様であるが正孔側の反応は次式のように行われる。
(正孔側)(CH3)2CHOH+h+ → (CH3)2C・OH+H+上記第6形態のように2−プロパノール溶液を使用するのは次のような理由からである。光触媒反応により生じた電子は、臭素酸イオンの分解で消費されるが、同時に生じる正孔は共存物質の有無により異なった反応形態をとる。溶液中に有機物のような正孔補足剤がない場合には、正孔は水分子と反応し、次に示す反応式のように酸素を発生する。
2H2O+4h+ → O2+4H+このため、2−プロパノールのような有機物を投入すれば、水分子の代わりに有機物は正孔と反応する。正孔との反応は水分子より有機物の方が速いため、有機物を添加することで光触媒反応を促進することができ、臭素酸イオンの分解速度の向上を図ることができる。図11は有機物なし(正孔補足剤なし)と2−プロパノール存在下(正孔補足剤あり)における臭素酸イオン分解速度を比較した特性図で、この特性図から正孔補足剤がある場合には臭素酸イオン分解速度が向上していることが検証された。
【0041】〔実施の第7形態〕この第7形態は、溶液中のpHを「4」以下にすれば、臭素酸イオンは臭素に還元されて、曝気条件では臭素が気中に放出されて、溶液中に臭化物イオンBr-は残らなくなるようにしたものである。このように臭素酸イオンを臭素に還元することにより、臭化物イオンが溶液中に残留していると、不飽和性の有機物等の共存によってプロモホルムのような発ガン性のあるトリハロメタンが生成される可能性を除去できるようになる。この第7形態の構成としては、図9に示す第5形態を使用して、脱酸素光触媒反応装置35に被処理液が流入する前のpHを光触媒の種類によらず常にpH=4以下に制御するようにすれば良い。この場合には次のような反応となる。
2BrO3-+12H++12e- → Br2+6H2O〔実施の第8形態〕図12はこの発明の実施の第8形態を示すシステム構成図で、この第8形態は光触媒処理で臭素酸イオンが有効に分解されるpH範囲が存在することを利用して、前段のオゾン処理で水中の有機物除去、殺菌を十分行った後、オゾン酸化で生成することが予測される臭素酸イオンを後段の光触媒処理で除去する総合的な処理システムである。
【0042】図12において、図示左上の流入口51から被処理水(被処理液)がオゾン処理槽52に流入すると、オゾン処理槽52で有機物の除去と殺菌が行われる。オゾン処理槽52にはオゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54を通して注入され、水中の有機物等とオゾンが反応する。このオゾン処理槽52で十分な有機物の除去と殺菌が行われると同時に、流入水中に臭化物イオンが含まれていると、この槽52で臭素酸イオンが生成してしまうが、後述のようにしてこの臭素酸イオンは分解される。
【0043】オゾン処理槽52で有機物の除去と殺菌が十分行われた被処理水は脱オゾン槽55に送られる。この脱オゾン槽55には、ブロア又はボンベ等のガス供給部56から送られるガスが散気管57から脱オゾン槽55内に送気され、この槽55の水中に残留していたオゾンが除去される。脱オゾン槽55の被処理水出口には溶存オゾン(DO3)センサ58が設置される。このセンサ58で脱オゾン槽55において十分に残留オゾンが除去されているかどうかが監視される。DO3センサ58からの信号はコントローラ59に送られてガス供給部56のブロア等の出力が制御される。
【0044】脱オゾン槽55で脱オゾンされた水は、pH第1調整槽60に送られる。この第1調整槽60には、pH調整試薬第1注入ポンプ61により適量のpH調整試薬が投与されて適切なpHに調整される。pH値が適正かどうかはpH第1調整槽60の出口に設置されたpHセンサ62により監視され、その監視信号はコントローラ59に供給されてpH調整試薬第1注入ポンプ61の試薬注入量が制御されるのに用いられる。適正なpHに調整された水は、光触媒反応槽63に送られる。この光触媒反応槽63では、その槽内にコーティングされているか、もしくは固定材に固定された酸化チタンなどの光触媒と、光源64から発せられる紫外線との光触媒反応により、直ちに臭素酸イオンが分解される。光源64は、光触媒のバンドギャップ以上のエネルギを発する。すなわち、表4に示す波長以下の光を発するもので、この光源64は通常水中に設置されるために、ランプ保護管65で覆われている。なお、光源64の発光力は、ランプ電源66によって操作される。
【0045】光触媒反応槽63で十分に臭素酸イオンが除去された処理水は、pH第2調整槽67に送られ、pH調整試薬第2注入ポンプ68から投与される試薬により適切なpH値に調整された後、図示右方下の流出口69から流出される。この流出される処理水のpH値はpH第2調整槽67に設置されたpHセンサ70により監視され、その監視信号はコントローラ59に送られてpH調整試薬第2注入ポンプ68の試薬投与量を制御するために用いられる。なお、オゾン処理槽52と脱オゾン槽55で反応に使用されずに気中に残留したオゾンは、全て収集されて排オゾン処理塔71に送られて無害化された後に、大気中に放出される。また、図12において、実線矢印は水系統を、一点鎖線はガス系統を、破線は電気信号系統をそれぞれ表している。
【0046】上記した第8形態のようなシステムにより、オゾン投与量とpH第1、第2調整槽60、67のpHとを監視、制御して被処理水を処理することにより、水中の有機物を分解し、十分な殺菌を施すばかりでなく、オゾン処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができる。このため、水質の安全な処理水を得ることができるようになる。
【0047】〔実施の第9形態〕図13はこの発明の実施の第9形態を示すシステム構成図で、前記第8形態と同一部分は同一符号を付し、その詳細な説明を省略して述べる。図13において、流入口51から被処理水が促進酸化処理槽81に流入されると、この処理槽81で有機物の除去と殺菌が行われる。促進酸化処理槽81は、ランプ保護管82で保護されたUVランプ83と、オゾン発生装置53で発生されたオゾンガスが注入される散気管54から構成される。UVランプ83は、254nm付近に主波長を持つ紫外線光を発するもので、ランプ電源84により操作される。
【0048】上記のように構成された促進酸化処理槽81には、オゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54により注入され、UVランプ83から発せられる紫外線が照射されると、オゾンが分解され、オゾンよりも酸化力の強いOHラジカルが生成される。OHラジカルと処理槽81の被処理水中の有機物等が素早く反応し、十分な有機物の除去と殺菌が行われると同時に、流入被処理水中に臭化物イオンが含まれると、臭素酸イオンが生成されてしまうこともあるが、この臭素酸イオンは後述のように処理される。促進酸化処理槽81で被処理水中の有機物の除去と殺菌が行われた水は、脱オゾン槽55に送られ、以後の処理は第8形態のように行われる。
【0049】上記した第9形態のようなシステムにより、オゾン投与量とpH第1、第2調整槽60、67のpHとを監視、制御して排水(被処理水)を処理することにより、特に促進酸化処理を行うことにより、水中の難分解性の有機物を分解除去し、十分な殺菌を施すばかりでなく、促進酸化処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができる。このため、水質の安全な処理水を得ることができるようになる。
【0050】なお、第9形態における促進酸化処理としては、オゾンを紫外線で処理する場合について述べて来たが、オゾンを過酸化水素で処理するようにしても良い。また、促進酸化処理としては、過酸化水素と紫外線、オゾン、紫外線および光触媒を使用して処理しても良い。
【0051】〔実施の第10形態〕図14はこの発明の実施の第10形態を示すシステム構成図で、第8、第9形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略して述べる。図14に示す第10形態は、第9形態に第8形態で述べたオゾン処理槽52を促進酸化処理槽81の前段に設けたものである。図14において、オゾン処理槽52には、オゾンガス注入用の散気管54aを設け、促進酸化処理槽81にはオゾンガス注入用の散気管54bを設けたものである。
【0052】上記のようにオゾン処理槽52に流入口51から被処理水が流入されると、まず、オゾン処理槽52にはオゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54aより注入され、水中の有機物等と反応して有機物の低分子化と殺菌が行われる。その後、オゾン単独では分解しきれない難分解性の有機物が含まれた水は、促進酸化処理槽81へ送られる。促進酸化処理槽81では、オゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54bより注入され、同時に促進酸化処理槽81に設置されたUVランプ83から発せられる紫外線がオゾンを含んだ水に照射されると、オゾンが分解され、オゾンよりも酸化力の強いOHラジカルが生成される。このOHラジカルと水中の有機物等が素早く反応し、十分に難分解性の有機物の分解除去と殺菌が行われる。その後の水は脱オゾン槽55に送られて第8形態で述べたように処理される。
【0053】上記第10形態は、被処理水を、オゾン処理した後、促進酸化処理して水中の有機物を除去し、殺菌を十分行った後に、オゾン酸化や促進酸化で生成することが予測される臭素酸イオンを、光触媒処理で除去する処理システムである。この処理システムを使用することにより、効率的に殺菌から難分解性有機物の除去まで行うことができるようになる。
【0054】上記した第10形態のようなシステムにより、オゾン投与量とpH第1、第2調整槽60、67のpHとを監視、制御して被処理水を処理することにより、特にオゾン処理と促進酸化処理を行うことにより、効率的に水中の難分解性の有機物を分解除去し、十分な殺菌を施すばかりでなく、オゾン処理や促進酸化処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができる。このため、水質の安全な処理水を得ることができるようになる。
【0055】〔実施の第11形態〕図15はこの発明の実施の第11形態を示すシステム構成図で、この第11形態は脱炭酸、脱酸素による効率の向上を図ったものである。通常の水には炭酸が溶存しており、pH緩衝作用を持つため、上記第8から第10形態のようなシステムでpH調整する際、多量のpH調整試薬を添加する必要があることが多い。また、促進酸化処理で分解反応の担い手となるOHラジカルは、反応に選択性がなく、炭酸などのラジカルスカベンジャーの存在によって無駄に使用されるため、炭酸の存在は、促進酸化処理の分解効率を低下させることにつながる。従って、この第11形態では処理の前段で脱炭酸処理を行い、pH緩衝作用をなくすことによって、より臭素酸イオン分解反応を進行しやすくするだけでなく、促進酸化反応の効率も向上させることができる。脱炭酸処理は、pHを必要な値に下げ、再溶解を防ぐために窒素ガス等で曝気する手段を採用する。
【0056】図15の第11形態において、第8形態から第10形態と同一部分には同一符号を付して、その詳細な説明を省略して述べる。図15において、流入口51からの被処理水がpH第1調整槽60に流入されると、pH調整試薬第1注入ポンプ61より試薬が、第1調整槽60に投与され、脱炭素に必要なpHに調整される。pH値が適正かどうかは、常にpHセンサ62によって監視され、その監視信号はコントローラ59に送られてpH調整試薬第1注入ポンプ61の投与量を制御するのに使用される。
【0057】また、第1調整槽60には、窒素ガスが充填されたボンベ91から送気された窒素ガスが散気管92を通して注入され、溶存されている炭酸が完全に気中に気散される。脱炭酸された被処理水は、促進酸化処理槽81に送られる。被処理水には、オゾン発生装置53により発生したオゾンガスが散気管54から注入されるとともに、促進酸化処理槽81に設置されたUVランプ83から発せられる紫外線が照射される。これらにより、被処理水中のオゾンが分解され、オゾンよりも酸化力の強いOHラジカルが生成される。OHラジカルと被処理水中の有機物等が素早く反応し、十分な難分解性有機物の除去と殺菌が行われる。このとき、被処理水中に臭化物イオンが含まれると、臭素酸イオンが生成されるけれども、この臭素酸イオンは前述した各実施の形態により分解されるので、問題はない。上記のようにして被処理水中の有機物除去と殺菌が行われた被処理水は、脱オゾン槽55に送られ、散気管57から注入されるブロアやボンベ56からのガスにより水中に残留していたオゾンが除去される。残留オゾンが十分に除去されているかどうかをDO3センサ58で監視し、その監視信号をコントローラ59に送ってブロア等の出力をコントロールする。なお、脱オゾン槽55は促進酸化処理槽81の条件が適切であれば、水中にオゾンが残留しないので、省略される場合もある。脱オゾンされた被処理水は、光触媒反応槽63に送られて、上記各実施の形態と同様に処理され、流出口69から流出する。
【0058】上記した第11形態のようなシステムにより、オゾン投与量とpH第1、第2調整槽60、67のpHとを監視、制御して被処理水を処理することにより、効率的に水中の難分解性の有機物を分解除去し、十分な殺菌を施すばかりでなく、オゾン処理や促進酸化処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができる。このため、水質の安全な処理水を得ることができるようになる。
【0059】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、以下のような効果が得られる。
a.光触媒反応により、被処理水中の臭素酸イオンを効率的かつ安定的に除去することができるとともに、活性炭処理のような劣化による処理材の交換が不要となるために、維持管理の簡便化を図ることができる。
【0060】b.オゾン投与量とpHとを監視、制御して被処理水を処理することにより、効率的に水中の難分解性の有機物を分解除去し、十分な殺菌を施すばかりでなく、オゾン処理や促進酸化処理で生成される臭素酸イオンも完全に分解することができて、水質の安全な処理水を得ることができる。
【0061】c.活性炭による方法や、イオン交換法などに比較して、比較的低コストで臭素酸イオンを分解することができる。
【0062】d.脱炭酸処理を行うことにより、促進酸化処理で問題となるラジカルスカベンジャーによる反応の無駄がなくなるとともに、より効率的に臭素酸イオンを分解することができる。
【0063】e.既存のオゾン処理システムや促進酸化処理システムに容易に付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光触媒のエネルギ準位とバンドギャップの説明図。
【図2】等電点の説明図。
【図3】この発明の実施の第1形態を示す概略構成説明図。
【図4】臭素酸イオンの分解時間特性図。
【図5】この発明の実施の第2形態を示す概略構成説明図。
【図6】この発明の実施の第3形態を示す概略構成説明図。
【図7】この発明の実施の第4形態を示す概略構成説明図。
【図8】酸素存在条件下と無酸素条件下における臭素酸イオンの分解速度を比較した特性図。
【図9】この発明の実施の第5形態を示す概略構成説明図。
【図10】この発明の実施の第6形態を示す概略構成説明図。
【図11】有機物なし(正孔補足剤なし)と2−プロパノール存在下(正孔補足剤あり)における臭素酸イオン分解速度を比較した特性図。
【図12】実施の第8形態を示すシステム構成図。
【図13】実施の第9形態を示すシステム構成図。
【図14】実施の第10形態を示すシステム構成図。
【図15】実施の第11形態を示すシステム構成図。
【図16】ジアルジアの殺菌条件と臭素酸イオンの生成量との関係を示した特性図。
【符号の説明】
11…光触媒反応槽
12…撹拌子
13…マグネティックスターラ
14…光源(ランプ)
15…ランプ保護管
16…ランプ安定器
【特許請求の範囲】
【請求項1】 臭素酸イオンを含んだ被処理液中に光触媒を投与した後、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射して光触媒反応を生じさせるようにしたことを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解方法。
【請求項2】 前記被処理液に酸溶液を注入し、その被処理液のpHを光触媒の等電点以下に調整することを特徴とする請求項1記載の光触媒利用の臭素酸分解方法。
【請求項3】 臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽と、この光触媒反応槽に被処理液を流入させる前に、被処理液にpH調整用の酸溶液を注入混合させる装置とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項4】 前記光触媒反応槽にpH計を設け、このpH計からのpH出力信号に応じて前記酸溶液の注入量を可変させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項5】 前記光触媒反応槽の前段に酸素を含まないガスで被処理液を曝気する脱酸素部を設けて被処理液中の溶存酸素を除去することを特徴とする請求項3および4記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項6】 前記光触媒反応槽と脱酸素部とを一体化させることを特徴とする請求項5記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項7】 前記光触媒反応槽に被処理液を流入させる前に、被処理液に正孔補足剤を注入することを特徴とする請求項3、4および5記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項8】 前記被処理液のpHを4以下にすることを特徴とする請求項3から7記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項9】 臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌をオゾン処理にて行うオゾン処理槽と、このオゾン処理槽でオゾン処理された被処理液が供給され、この被処理液からオゾンを除去する脱オゾン槽と、この脱オゾン槽でオゾンが除去された被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項10】 前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とする請求項9記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項11】 臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項12】 前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とする請求項11記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項13】 臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌をオゾン処理にて行うオゾン処理槽と、このオゾン処理槽でオゾン処理された被処理液が供給され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項14】 前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とする請求項13記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項15】 臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、脱炭酸に必要なpHに調整されるとともに、脱炭酸に必要なガスが注入される脱炭酸処理槽と、この脱炭酸処理槽で脱炭酸された被処理液が供給され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液に光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項16】 前記光触媒反応槽に脱酸素のためのガスを曝気させることを特徴とする請求項9から請求項15記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項1】 臭素酸イオンを含んだ被処理液中に光触媒を投与した後、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射して光触媒反応を生じさせるようにしたことを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解方法。
【請求項2】 前記被処理液に酸溶液を注入し、その被処理液のpHを光触媒の等電点以下に調整することを特徴とする請求項1記載の光触媒利用の臭素酸分解方法。
【請求項3】 臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽と、この光触媒反応槽に被処理液を流入させる前に、被処理液にpH調整用の酸溶液を注入混合させる装置とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項4】 前記光触媒反応槽にpH計を設け、このpH計からのpH出力信号に応じて前記酸溶液の注入量を可変させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項5】 前記光触媒反応槽の前段に酸素を含まないガスで被処理液を曝気する脱酸素部を設けて被処理液中の溶存酸素を除去することを特徴とする請求項3および4記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項6】 前記光触媒反応槽と脱酸素部とを一体化させることを特徴とする請求項5記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項7】 前記光触媒反応槽に被処理液を流入させる前に、被処理液に正孔補足剤を注入することを特徴とする請求項3、4および5記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項8】 前記被処理液のpHを4以下にすることを特徴とする請求項3から7記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項9】 臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌をオゾン処理にて行うオゾン処理槽と、このオゾン処理槽でオゾン処理された被処理液が供給され、この被処理液からオゾンを除去する脱オゾン槽と、この脱オゾン槽でオゾンが除去された被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項10】 前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とする請求項9記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項11】 臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項12】 前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とする請求項11記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項13】 臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌をオゾン処理にて行うオゾン処理槽と、このオゾン処理槽でオゾン処理された被処理液が供給され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液中で光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項14】 前記光触媒反応槽の被処理液流入側および処理液放流側にそれぞれ各別にpH調整可能槽を設けたことを特徴とする請求項13記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項15】 臭化物イオン又は臭素酸イオンを含んだ被処理液が注入され、脱炭酸に必要なpHに調整されるとともに、脱炭酸に必要なガスが注入される脱炭酸処理槽と、この脱炭酸処理槽で脱炭酸された被処理液が供給され、その被処理液中の有機物の除去と殺菌を酸化力の強い成分で行う促進酸化処理槽と、この促進酸化処理槽で有機物の除去と殺菌が行われた被処理液が供給され、その被処理液中に光触媒を投与するか、予め設けられた光触媒を有し、その光触媒にバンドギャップ以上のエネルギを有する光線を照射させて被処理液に光触媒反応を生じさせる光触媒反応槽とからなることを特徴とする光触媒利用の臭素酸分解装置。
【請求項16】 前記光触媒反応槽に脱酸素のためのガスを曝気させることを特徴とする請求項9から請求項15記載の光触媒利用の臭素酸分解装置。
【図2】
【図3】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図3】
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【図15】
【図16】
【公開番号】特開2000−79387(P2000−79387A)
【公開日】平成12年3月21日(2000.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−253152
【出願日】平成10年9月8日(1998.9.8)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成12年3月21日(2000.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年9月8日(1998.9.8)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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