説明

光触媒材料及びその製造方法並びに浄化デバイス

【課題】有機分子の分解性能を向上させることができる上、その分解性能を維持することができる光触媒材料及びその製造方法並びに浄化デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の光触媒材料(1)は、酸化チタン粒子(10)と四チタン酸粒子(11)とゼオライト(12)とを含む。光触媒材料(1)によれば、ゼオライト(12)の吸着作用によって有機分子(13)の分解性能を向上させることができる。また、光触媒材料(1)に対し、酸化チタンのバンドギャップに相当するエネルギーを有する光(14)を照射すると、ヒドロキシラジカル(OH・)及びスーパーオキサイドアニオン(O2-)が生成し、これらがゼオライト(12)によって吸着された有機分子(13)を攻撃する。これにより、有機分子(13)の分解性能を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒材料及びその製造方法と、光触媒材料を用いた浄化デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンの光触媒作用を利用したデバイスの提案が数多くされている。中でも空気中の臭気成分(有機分子)を光触媒作用で分解する浄化デバイスに関する開発が盛んに行われてきている(例えば特許文献1〜7参照)。
【0003】
一方、酸化チタンをベースとした光触媒材料の性能向上を目的としたものとして、四チタン酸(電子受容体)と酸化チタンとを組み合わせた光触媒材料が提案されている(例えば特許文献8参照)。四チタン酸を添加することによって、紫外線照射下において、酸化チタンから四チタン酸へと電子が移動する。これにより、酸化チタン内において光励起された電子と正孔との再結合を抑制することができるため、有機分子に対する攻撃性が向上する。
【特許文献1】特開平1-218635号公報
【特許文献2】特開2001-29441号公報
【特許文献3】特開2002-136811号公報
【特許文献4】特開平3-94814号公報
【特許文献5】特開平11-319570号公報
【特許文献6】特開平9-300515号公報
【特許文献7】特開2002-5903号公報
【特許文献8】特開2000-102733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の浄化デバイスでは吸着剤に臭気成分が蓄積するため、数年使用していると脱臭性能や脱臭速度が劣化するという問題があった。また、特許文献8に記載の光触媒材料では有機分子を捕捉することができないため、有機分子の分解性能が劣化するおそれがあった。
【0005】
本発明は、有機分子の分解性能を向上させることができる上、その分解性能を維持することができる光触媒材料及びその製造方法並びに浄化デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光触媒材料は、酸化チタン粒子と四チタン酸粒子とゼオライトとを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の光触媒材料の製造方法は、酸化チタン粒子と四チタン酸粒子とゼオライトとを含む光触媒材料の製造方法であって、
i)酸化チタン粒子と四チタン酸塩と酸性溶液とを混合した後、この混合溶液にアルカリ性溶液を加えることによって、酸化チタン粒子と四チタン酸粒子とを共沈させて、その共沈物を分離する工程と、
ii)前記共沈物とゼオライトとを混合する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の浄化デバイスは、上述した本発明の光触媒材料を含む浄化デバイスである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光触媒材料によれば、有機分子の分解性能を向上させることができる上、その分解性能を維持することができる。また、本発明の光触媒材料の製造方法によれば、上記本発明の光触媒材料を容易に製造できる。また、本発明の浄化デバイスによれば、上記本発明の光触媒材料を用いているため、有機分子の分解性能を向上させることができる上、その分解性能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光触媒材料は、酸化チタン粒子と四チタン酸粒子とゼオライトとを含む。本発明の光触媒材料によれば、ゼオライトの吸着作用によって有機分子(例えば臭気成分)の分解性能を向上させることができる。また、本発明の光触媒材料に対し、酸化チタンのバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を照射すると、酸化チタン粒子から四チタン酸粒子へと電子が移動する。その結果、例えば酸化チタン粒子表面に存在する吸着水が、酸化チタン粒子に形成された正孔によって酸化されてヒドロキシラジカルとなる。更に、例えば空気中の酸素が、四チタン酸粒子へと移動した電子によって還元されてスーパーオキサイドアニオンとなる。そして、これらのヒドロキシラジカル及びスーパーオキサイドアニオンが、ゼオライトによって吸着された有機分子を攻撃する。このようにして、有機分子が速やかに分解されるため、ゼオライトに有機分子が蓄積するのを防止できる。これにより、有機分子の分解性能を維持することができる。
【0011】
上記酸化チタン粒子としては、アナタース型結晶構造を有する酸化チタン粒子を使用するのが好ましい。アナタース型結晶構造を有する酸化チタン粒子は、光触媒性能が高いため、有機分子の分解性能をより容易に向上させることができるからである。なお、上記酸化チタン粒子の粒径は、例えば5〜10nm程度である。
【0012】
上記四チタン酸粒子については特に限定されないが、その表面が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲンで修飾されていることが好ましい。四チタン酸粒子の表面がハロゲンで修飾されていると、電子受容性が向上するため、酸化チタン粒子から四チタン酸粒子への電子移動がより速やかに行われる。なお、上記四チタン酸粒子の粒径は、例えば5〜500nm程度である。
【0013】
本発明の光触媒材料では、上記酸化チタン粒子と上記四チタン酸粒子とが接触していることが好ましい。酸化チタン粒子から四チタン酸粒子への電子移動がより速やかに行われるからである。なお、上記「接触」とは、直に接している場合だけでなく、酸化チタン粒子と四チタン酸粒子との間隔が、例えば10nm以下の範囲に近接している場合も含む。
【0014】
本発明の光触媒材料で使用されるゼオライトは、その構成粒子の平均粒径が5μm以下であることが好ましい。ゼオライトと酸化チタン粒子との距離や、ゼオライトと四チタン酸粒子との距離が近接するため、有機成分への攻撃をより速やかに行うことができるからである。なお、上記ゼオライトの構成粒子の平均粒径は、通常1000nm以上である。また、上記平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)での画像観察によって測定することができる。
【0015】
本発明の光触媒材料では、上記酸化チタン粒子と上記ゼオライトとが接触(又は近接)していることが好ましい。ゼオライトによって吸着された有機分子を酸化チタン粒子の光触媒作用により容易に攻撃できるからである。例えば、上記酸化チタン粒子と上記ゼオライトとの距離が、1000nm以下の範囲であればよい。なお、上記酸化チタン粒子と上記ゼオライトとの質量比(酸化チタン粒子/ゼオライト)は、例えば0.01〜0.99の範囲であればよい。
【0016】
上記ゼオライトは、平均孔径が0.3〜0.6nmの範囲であることが好ましい。有機分子の吸着性が向上するからである。このようなゼオライトとしては、例えばモルデナイト型構造を有する材料を含むゼオライトが例示できる。なお、上記平均孔径は、透過型電子顕微鏡(TEM)での画像観察によって測定することができる。
【0017】
本発明の光触媒材料では、上記四チタン酸粒子の質量を上記ゼオライトと上記四チタン酸粒子の合計質量で除した値が、0.026以上であることが好ましく、0.045以上0.33以下であることがより好ましい。この範囲内であれば、有機分子の分解性能をより容易に向上させることができる。なお、本発明の光触媒材料では、上記四チタン酸粒子の質量を上記酸化チタン粒子の質量で除した値が、例えば0.015以上であればよい。
【0018】
次に、本発明の光触媒材料の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、上述した本発明の光触媒材料の説明と重複する内容(材料等)については、その説明を省略する場合がある。
【0019】
本発明の光触媒材料の製造方法は、上述した本発明の光触媒材料を製造するための好適な製造方法であって、i)酸化チタン粒子と四チタン酸塩と酸性溶液とを混合した後、この混合溶液にアルカリ性溶液を加えることによって、酸化チタン粒子と四チタン酸粒子とを共沈させて、その共沈物を分離する工程と、ii)得られた共沈物とゼオライトとを混合する工程とを含む。これにより、上述した本発明の光触媒材料を容易に製造することができる。また、上記方法によれば、酸化チタン粒子と四チタン酸粒子とを接触させることができる。
【0020】
上記i)工程において、酸化チタン粒子と四チタン酸塩とは、例えばモル比(酸化チタン/四チタン酸塩)が0.1〜10程度となるように酸性溶液と混合すればよい。なお、上記四チタン酸塩としては、例えばチタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム等が使用できる。また、上記酸性溶液としては、例えば濃度が0.1〜1規定の塩酸や硝酸等が使用できる。
【0021】
上記i)工程で使用する上記アルカリ性溶液としては、例えば濃度が0.1〜1規定の水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水が使用できる。上記i)工程における上記共沈物を分離する手段としては、例えば遠心分離法等が使用できる。
【0022】
上記ii)工程においては、上記共沈物中の四チタン酸粒子の質量を上記ゼオライトと上記四チタン酸粒子の合計質量で除した値が0.026以上となるように、上記共沈物と上記ゼオライトとを混合することが好ましく、上記値が0.045以上0.33以下となるように上記共沈物と上記ゼオライトとを混合することがより好ましい。この範囲内であれば、有機分子の分解性能をより容易に向上させることができる。なお、上記混合方法としては、例えば、乾式混合、ボールミル混合、湿式混合等が例示できる。
【0023】
本発明の光触媒材料の製造方法では、上記i)工程によって分離された上記共沈物中の四チタン酸粒子の表面をハロゲンで修飾する工程を更に含んでいてもよい。この方法によれば、四チタン酸粒子の電子受容性が向上するため、酸化チタン粒子から四チタン酸粒子への電子移動がより速やかに行われる。なお、上記共沈物中の四チタン酸粒子の表面をハロゲンで修飾する方法としては、例えば上記共沈物を塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素溶液に浸漬する方法等が使用できる。
【0024】
次に、本発明の浄化デバイスについて説明する。なお、以下の説明において、上述した本発明の光触媒材料の説明と重複する内容(材料等)については、その説明を省略する場合がある。
【0025】
本発明の浄化デバイスは、例えば脱臭、消臭、空気浄化等の目的で使用される浄化デバイスであって、光触媒材料を含む。そして、この光触媒材料として、上述した本発明の光触媒材料を使用している。これにより、上述と同様に有機分子の分解性能を向上させることができる上、その分解性能を維持することができる。
【0026】
本発明の浄化デバイスは紫外線光源を更に含んでいてもよい。紫外線が照射されない場所においても本発明の浄化デバイスを使用することができるからである。上記紫外線光源は、酸化チタンのバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を照射できる限り、特に限定されない。
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る光触媒材料を模式的に示す概念図である。図1に示すように、光触媒材料1は、酸化チタン粒子10と四チタン酸粒子11とゼオライト12とを含む。光触媒材料1によれば、ゼオライト12の吸着作用によって有機分子13の分解性能を向上させることができる。また、光触媒材料1に対し、酸化チタンのバンドギャップに相当するエネルギーを有する光14を照射すると、酸化チタン粒子10から四チタン酸粒子11へと電子(e-)が移動する。その結果、例えば酸化チタン粒子10の表面に存在する吸着水(図示せず)が、酸化チタン粒子10に形成された正孔(図示せず)によって酸化されてヒドロキシラジカル(OH・)となる。更に、例えば空気中の酸素(図示せず)が、四チタン酸粒子11へと移動した電子(e-)によって還元されてスーパーオキサイドアニオン(O2-)となる。そして、これらのヒドロキシラジカル(OH・)及びスーパーオキサイドアニオン(O2-)が、ゼオライト12によって吸着された有機分子13を攻撃する。このようにして、有機分子13が速やかに分解されるため、ゼオライト12に有機分子13が蓄積するのを防止できる。これにより、有機分子13の分解性能を維持することができる。
【0029】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2に係る浄化デバイスの斜視図である。図2に示すように、浄化デバイス2は、アルミナ等のセラミックや樹脂材料等からなる多孔質基板15(空孔率:30〜80%、平均孔径:1〜10mm、面積:100〜1500cm2)の一主面上に、上述した光触媒材料1がシランカップリング剤等によって固着されている(固着量:0.5〜50mg/cm2)。そして、光触媒材料1からなる膜に対し、5〜60mmの間隔をあけてブラックライト22が4本配置されている。浄化デバイス2によれば、ブラックライト22側から流入する有機分子13を光触媒材料1で分解し、ブラックライト22側とは反対側から分解生成物(CO2、H2O)を排出することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
実施例1では、酸化チタン粒子として、アナタース型結晶構造を有する堺化学工業株式会社製酸化チタン(商品名SSP−25、粒径5〜10nm、比表面積270m2/g以上)を用いた。まず、関東化学社製チタン酸カリウム(平均粒径0.1μm)10gを水100gに溶かし分散させた。この溶液に1M塩酸を10mL加えて陽イオン交換させ、同時に上記酸化チタン粒子を10g加えた後、アンモニア水(濃度0.5規定)で中和しながら共沈させた。得られた共沈物を濾過して、酸化チタン粒子と四チタン酸粒子との接合材料(以下、酸化チタン/四チタン酸材料ともいう。)を得た。得られた酸化チタン/四チタン酸材料をX線回折により分析したところ、酸化チタンと四チタン酸が確認され、更に透過型電子顕微鏡により観察したところ、50〜200nmの四チタン酸粒子に5〜10nmの酸化チタン粒子が固定化されていることが確認された。
【0032】
次に、上記酸化チタン/四チタン酸材料1gと、構成粒子の平均粒径が2μmのモルデナイト型ゼオライト(東ソー株式会社製商品名HSZ890HOA、シリカ/アルミナのモル比:1900)1gとを、乳鉢により1分間乾式混合して、実施例1の光触媒材料を得た。なお、実施例1の光触媒材料では、四チタン酸粒子の質量をゼオライトと四チタン酸粒子との合計質量で除した値(以下、四チタン酸粒子配合比ともいう。)は、0.33であった。
【0033】
(実施例2)
酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.4g、1.6gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例2の光触媒材料を得た。なお、実施例2の光触媒材料では、四チタン酸粒子配合比は、0.11であった。
【0034】
(実施例3)
酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.2g、1.8gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例3の光触媒材料を得た。なお、実施例3の光触媒材料では、四チタン酸粒子配合比は、0.05であった。
【0035】
(実施例4)
酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.1g、1.9gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例4の光触媒材料を得た。なお、実施例4の光触媒材料では、四チタン酸粒子配合比は、0.026であった。
【0036】
(実施例4a〜4c)
水100gに対する上記チタン酸カリウムの溶解量を、それぞれ9.6g、9g及び8gとしたことと、酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際の酸化チタン/四チタン酸材料の混合量を、それぞれ0.098g、0.095g及び0.09gとしたこと以外は、実施例4と同様の方法で実施例4a〜4cの光触媒材料を得た。なお、実施例4a〜4cの光触媒材料では、四チタン酸粒子配合比は、それぞれ0.024、0.023及び0.020であった。
【0037】
(実施例5)
上記酸化チタン粒子の混合量を2gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例5の光触媒材料を得た。なお、実施例5の光触媒材料では、四チタン酸粒子配合比は、0.45であった。
【0038】
(実施例6)
酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.4g、1.6gとしたこと以外は、実施例5と同様の方法で実施例6の光触媒材料を得た。なお、実施例6の光触媒材料では、四チタン酸粒子配合比は、0.17であった。
【0039】
(実施例7)
酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.2g、1.8gとしたこと以外は、実施例5と同様の方法で実施例7の光触媒材料を得た。なお、実施例7の光触媒材料では、四チタン酸粒子配合比は、0.086であった。
【0040】
(実施例8)
酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.1g、1.9gとしたこと以外は、実施例5と同様の方法で実施例8の光触媒材料を得た。なお、実施例8の光触媒材料では、四チタン酸粒子配合比は、0.045であった。
【0041】
(実施例9〜12)
ゼオライトとして、構成粒子の平均粒径が2μmのモルデナイト型ゼオライト(東ソー株式会社製商品名HSZ690HOA、シリカ/アルミナのモル比:240)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例9の光触媒材料を得た。また、酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.4g、1.6gとしたこと以外は、実施例9と同様の方法で実施例10の光触媒材料を得た。また、酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.2g、1.8gとしたこと以外は、実施例9と同様の方法で実施例11の光触媒材料を得た。また、酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.1g、1.9gとしたこと以外は、実施例9と同様の方法で実施例12の光触媒材料を得た。
【0042】
(実施例13〜16)
ゼオライトとして、構成粒子の平均粒径が2μmのモルデナイト型ゼオライト(東ソー株式会社製商品名HSZ690HOA、シリカ/アルミナのモル比:240)を用いたこと以外は、実施例5と同様の方法で実施例13の光触媒材料を得た。また、酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.4g、1.6gとしたこと以外は、実施例13と同様の方法で実施例14の光触媒材料を得た。また、酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.2g、1.8gとしたこと以外は、実施例13と同様の方法で実施例15の光触媒材料を得た。また、酸化チタン/四チタン酸材料とゼオライトとを混合する際、それぞれ0.1g、1.9gとしたこと以外は、実施例13と同様の方法で実施例16の光触媒材料を得た。
【0043】
(比較例1〜4)
比較例1として、上記実施例1で使用した酸化チタン(SSP−25)を用意した。また、比較例2として、上記実施例1で使用した酸化チタン(SSP−25)及びゼオライト(HSZ890HOA)を、それぞれ2gずつ乳鉢により1分間乾式混合したものを用意した。また、ゼオライトを混合しないこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例3の光触媒材料を得た。また、ゼオライトを混合しないこと以外は、実施例5と同様の方法で比較例4の光触媒材料を得た。
【0044】
(評価方法)
脱臭分解する臭気成分として、アセトアルデヒドについて評価を行った。脱臭特性は、図3に示すように、容積62Lのデシケーター20(L:60cm、W:30cm、H:35cm)中に、上記各実施例及び各比較例の試料をそれぞれ一定質量(2g)で所定のエリア21(68cm2)に置き、一定濃度のアセトアルデヒド(約500モルppm)を封じ込めて紫外光を照射しない状態で1時間放置し、各試料にアセトアルデヒドを吸着させた。そして、デシケーター20内のエリア21と対面するように配置されたブラックライト22によって、各試料にピーク波長が365nmの紫外光を1mW/cm2の強度で照射し、アセトアルデヒドが各試料により分解されて生成するCO2の濃度をガスクロマトグラフィーで測定して、アセトアルデヒドの分解速度を算出した。結果を表1に示す。なお、各試料とブラックライト22との間隔は、5cmとした。
【0045】
【表1】

【0046】
表1より、本発明の実施例は、いずれも比較例より分解速度が速く、分解性能を向上させることができることが分かった。また、実施例4と実施例4a〜4cとを比較すると、四チタン酸粒子配合比が0.026以上である実施例4は、四チタン酸粒子配合比が0.026未満である実施例4a〜4cよりも分解速度が速く、分解性能を向上させることができることが分かった。
【0047】
(実施例17〜24)
共沈物を塩酸(濃度1規定)に15分間浸漬して四チタン酸粒子の表面を塩素化した後で、ゼオライトと混合したこと以外は、それぞれ実施例1〜8と同様の方法で実施例17〜24の光触媒材料を得た。
【0048】
(実施例25〜32)
塩酸の代わりにフッ酸(濃度1規定)に15分間浸漬して四チタン酸粒子の表面をフッ素化したこと以外は、それぞれ実施例17〜24と同様の方法で実施例25〜32の光触媒材料を得た。
【0049】
(実施例33〜36)
共沈物を塩酸(濃度1規定)に15分間浸漬して四チタン酸粒子の表面を塩素化した後で、ゼオライトと混合したこと以外は、それぞれ実施例10,14と同様の方法で実施例33,34の光触媒材料を得た。また、共沈物をフッ酸(濃度1規定)に15分間浸漬して四チタン酸粒子の表面をフッ素化した後で、ゼオライトと混合したこと以外は、それぞれ実施例10,14と同様の方法で実施例35,36の光触媒材料を得た。
【0050】
(実施例37〜40)
塩酸を10mL加えて陽イオン交換させた後で、アンモニア水で中和するところを水洗に代えたこと以外は、それぞれ実施例1〜4と同様の方法で実施例37〜40の光触媒材料を得た。なお、水洗後の酸化チタン/四チタン酸材料を、ICP原子吸光法と蛍光X線表面分析により分析したところ、バルク試料に塩素が約1000〜20000質量ppm含まれ、四チタン酸粒子の表面が塩素化されていることが確認された。
【0051】
(実施例41〜44)
塩酸の代わりにpH3に調整したフッ酸を10mL加えて陽イオン交換させたこと以外は、それぞれ実施例37〜40と同様の方法で実施例41〜44の光触媒材料を得た。なお、水洗後の酸化チタン/四チタン酸材料を、ICP原子吸光法と蛍光X線表面分析により分析したところ、バルク試料にフッ素が約2000〜30000質量ppm含まれ、四チタン酸粒子の表面がフッ素化されていることが確認された。
【0052】
(比較例5〜8)
ゼオライトを混合しないこと以外は、それぞれ実施例17,21,25,29と同様の方法で比較例5〜8の光触媒材料を得た。
【0053】
上記実施例17〜44及び比較例5〜8を、上述の評価方法と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2より、本発明の実施例17〜44は、いずれも比較例5〜8よりも分解速度が速く、分解性能を向上させることができることが分かった。
【0056】
なお、本実施例では酸化チタンにSSP25を用いたが、酸化チタンはSSP25に限らず、石原産業製ST01や日本アエロジル製P−25、テイカTKP101等の酸化チタンを用いても良い。また、粉末状の酸化チタンだけでなく、酸化チタンコロイドや酸化チタン錯体を用いても良い。また、四チタン酸粒子の出発原料としてサブミクロン粒子のチタン酸カリウムを用いたが、チタン酸ナトリウム等を用いても良い。上記出発原料の粒子径も特に限定されない。また、ゼオライトとしてHSZ690HOAとHSZ690HOAを用いた例について示したが、有機ガスを吸着し得る限り、他のゼオライトでも可能である。また本実施例では、塩素やフッ素でハロゲン化した例を示したが、臭素やヨウ素でハロゲン化しても良い。しかしながら、電気陰性度の高いフッ素が光触媒反応におけるラジカル生成に最適であろうと考えられるため、フッ素でハロゲン化するのが好ましい。また、本実施例では、粉末状の単純混合状態での事例を示したが、基板等に固定化(接合)された状態でも良く、膜の状態でも良い。
【0057】
(実施例45)
実施例45では、上述した実施例1の光触媒材料10gを、10質量%のエチルアルコール及び5質量%のトルエンとともに水に溶かしてスラリーにし、12cm×20cmのガラス基板上に塗布し、これを乾燥させて膜状試料(乾燥後の質量は4g)を作製した。そして、実施例1の評価で説明したデシケーター20(図3参照)内に上記膜状試料を配置し、上記評価と同様に紫外光を照射しない状態で1時間放置して、アセトアルデヒドを上記膜状試料に吸着させ、その後ピーク波長が365nmの紫外光(1mW/cm2)を1時間照射して上記膜状試料に吸着したアセトアルデヒドを分解するサイクルを10回行った。ただし、1サイクルにおいてアセトアルデヒドを封入した直後のアセトアルデヒドの濃度は、40モルppmとした。そして、アセトアルデヒドの濃度の経時変化をガスクロマトグラフィーで測定して、吸着速度係数を算出した。なお、上記吸着速度係数は、1サイクルにおいて紫外光照射直後から15分間におけるアセトアルデヒドの減少率の常用対数を時間(分)に対しプロットし、その傾きから算出した。また、比較例9として、実施例1の光触媒材料の代わりに上述した比較例2の材料を用いたこと以外は、上記と同様に膜状試料を作製して評価した。図4に、実施例45及び比較例9におけるアセトアルデヒドの吸着速度係数の変化を示す。
【0058】
図4に示すように、実施例45は、比較例9に比べ吸着速度係数の変化が少なく、アセトアルデヒドの吸着による劣化が少ないことが分かった。なお、他の臭気成分(酢酸、アンモニア、硫化水素)についても同様のサイクル試験を行ったところ、いずれの臭気成分でも比較例9に比べ吸着速度の劣化は少なかった。
【0059】
なお、本実施例では、本発明の光触媒材料をガラス基板上に塗布して膜状で使用したが、基板は金属でも、セラミックでも良く、膜の作製法についても限定されず、焼き付け等の他の方法でもよい。また、基板との間に無機バインダーが介在していてもよい。また、膜状以外にも、多孔質状やバルク状、あるいは粉末状であっても良い。また、紫外線光源として、本実施例ではピーク波長が365nmのブラックライトを使用したが、殺菌灯や冷陰極管、あるいは蛍光灯であっても良いし、光強度も1mW/cm2に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば脱臭、消臭、空気浄化等の目的で使用される浄化デバイスに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態1に係る光触媒材料を模式的に示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る浄化デバイスの斜視図である。
【図3】脱臭特性の評価方法を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の実施例及び比較例におけるアセトアルデヒドの吸着速度係数の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0062】
1 光触媒材料
2 浄化デバイス
10 酸化チタン粒子
11 四チタン酸粒子
12 ゼオライト
13 有機分子
14 光
15 多孔質基板
20 デシケーター
21 エリア
22 ブラックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子と四チタン酸粒子とゼオライトとを含むことを特徴とする光触媒材料。
【請求項2】
前記酸化チタン粒子と前記四チタン酸粒子とが接触している請求項1に記載の光触媒材料。
【請求項3】
前記酸化チタン粒子は、アナタース型結晶構造を有する請求項1に記載の光触媒材料。
【請求項4】
前記四チタン酸粒子は、表面がハロゲンで修飾されている請求項1に記載の光触媒材料。
【請求項5】
前記ゼオライトを構成する粒子は、平均粒径が5μm以下である請求項1に記載の光触媒材料。
【請求項6】
前記ゼオライトは、平均孔径が0.3〜0.6nmの範囲である請求項1又は5に記載の光触媒材料。
【請求項7】
前記ゼオライトは、モルデナイト型構造を有する材料を含む請求項6に記載の光触媒材料。
【請求項8】
前記四チタン酸粒子の質量を前記ゼオライトと前記四チタン酸粒子との合計質量で除した値が、0.026以上である請求項1に記載の光触媒材料。
【請求項9】
酸化チタン粒子と四チタン酸粒子とゼオライトとを含む光触媒材料の製造方法であって、
i)酸化チタン粒子と四チタン酸塩と酸性溶液とを混合した後、この混合溶液にアルカリ性溶液を加えることによって、酸化チタン粒子と四チタン酸粒子とを共沈させて、その共沈物を分離する工程と、
ii)前記共沈物とゼオライトとを混合する工程とを含むことを特徴とする光触媒材料の製造方法。
【請求項10】
前記i)工程において前記酸性溶液と混合する前記酸化チタン粒子は、アナタース型結晶構造を有する請求項9に記載の光触媒材料の製造方法。
【請求項11】
前記i)工程によって分離された前記共沈物中の四チタン酸粒子の表面をハロゲンで修飾する工程を更に含む請求項9に記載の光触媒材料の製造方法。
【請求項12】
前記ii)工程において前記共沈物と混合する前記ゼオライトは、構成粒子の平均粒径が5μm以下である請求項9に記載の光触媒材料の製造方法。
【請求項13】
前記ii)工程において前記共沈物と混合する前記ゼオライトは、平均孔径が0.3〜0.6nmの範囲である請求項9又は12に記載の光触媒材料の製造方法。
【請求項14】
前記ゼオライトは、モルデナイト型構造を有する材料を含む請求項13に記載の光触媒材料の製造方法。
【請求項15】
前記ii)工程において、前記共沈物中の四チタン酸粒子の質量を前記ゼオライトと前記四チタン酸粒子の合計質量で除した値が0.026以上となるように、前記共沈物と前記ゼオライトとを混合する請求項9に記載の光触媒材料の製造方法。
【請求項16】
光触媒材料を含む浄化デバイスであって、
前記光触媒材料は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光触媒材料であることを特徴とする浄化デバイス。
【請求項17】
紫外線光源を更に含む請求項16に記載の浄化デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−155120(P2008−155120A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346366(P2006−346366)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】