説明

光触媒構造体および空気浄化用構造

【課題】 蛍光管をそのまま用い、簡便な構成によって、被処理空気と光触媒の接触機会を一層高めて高い空気浄化性能を得られる光空気浄化用構造を提供すること。
【解決手段】 光触媒構造体1は、励起光を照射可能な光源5の外周を囲んでこれに取り付けることのできる筒状体である。光触媒構造体1上には、光源5からの照射光により励起され得る光触媒が担持される。つまり、光源5からの照射光が到達し得る、構造体1の気相露出領域の全部または一部に光触媒2が担持され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒構造体および空気浄化用構造に係り、特に、汎用性の高い光源を利用して環境汚染浄化を簡便に達成することのできる、光触媒構造体および空気浄化用構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒反応の励起には紫外線等の励起光が必要だが、照明器具を用いて、あるいは照明器具と併用した形で、光触媒による空気浄化機能を提供する装置・器具は、従来種々のものが提案されている。このうち特許文献1の技術は、照明用光源とは別途、光触媒用光源を設けて、照明の点灯・消灯とは独立した空気浄化機能を提供するものである。また特許文献2の技術は、一のガラス製管の一部には蛍光塗料を塗布して照明用とし、他の部分にはこれを塗布せず紫外線を外部に透過させて光触媒励起用とするものである。その他、照明器具の反射板に光触媒を塗布する構成も提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−31250「持続型光触媒光源装置」
【特許文献2】特開平8−141063「脱臭機能付照明装置及び脱臭装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらはいずれも開放空間中において被処理空気を処理するものであり、浄化対象の分解除去の迅速性には限界がある。特に、蛍光管の如き汎用性の高い光源をそのまま用いつつも簡便な構成によって、被処理空気と光触媒の接触機会を一層高めて、より高い空気浄化性能、空気浄化効率の得られる構成は、未だ提案されていない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を除き、汎用性の高い光源をそのまま用いつつも簡便な構成によって、被処理空気と光触媒の接触機会を一層高め、より高い空気浄化性能、空気浄化効率を得ることのできる、光触媒構造体およびこれを用いた空気浄化用構造を提供することである。特に室内空気浄化を主たる目的として、細菌、ウイルス、揮発性有機化合物、悪臭物質を光触媒反応によって速やかに分解除去することのできる、光触媒構造体および空気浄化用構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は上記課題について検討した結果、光源外周を囲んだ状態で、光触媒の設けられた支持体でもありかつ被処理空気流路でもある光触媒構造体を設けることを基礎として、上記課題の解決が可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0007】
(1) 光触媒反応励起可能な励起光を照射する光源の外周を囲んでこれに取り付けることのできる筒状形状の光触媒構造体であって、該光触媒構造体上には該光源からの照射光により励起され得る光触媒が担持されていることを特徴とする、光触媒構造体。
(2) 前記光触媒構造体はプレート状であってその内側表面に光触媒が設けられ、前記光源に取り付けられた場合にこれと該光触媒との間を被処理空気が流通可能な内径または内側寸法を有することを特徴とする、(1)に記載の光触媒構造体。
(3) 前記光触媒構造体は多孔質体であってこれに光触媒が設けられていることを特徴とする、(1)に記載の光触媒構造体。
(4) 前記光触媒構造体は、その軸心部に前記光源を嵌め込み可能な中空部が設けられ、被処理空気は該光触媒構造体の多孔質性の内部を流通可能であることを特徴とする、(3)に記載の光触媒構造体。
(5) 前記光触媒構造体は金属製、セラミックス製またはガラス製であることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の光触媒構造体。
(6) 前記光触媒は角柱状の構造を有する角柱状酸化チタン光触媒であることを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の光触媒構造体。
【0008】
(7) 光触媒反応励起可能な励起光を照射する光源と、その外周を囲んでこれに取り付けることのできる(1)ないし(6)のいずれかに記載の光触媒構造体とからなる、空気浄化用構造。
(8) 前記光触媒構造体は前記光源の軸方向に沿ってその発光領域を被覆して設けられていることを特徴とする、(7)に記載の空気浄化用構造。
(9) 前記光源は蛍光管であることを特徴とする、(7)または(8)に記載の空気浄化用構造。
(10) 前記光源はブラックライト、ケミカルランプ、殺菌ランプもしくはその他紫外線を照射可能なものであることを特徴とする、(9)に記載の空気浄化用構造。
(11) 前記光触媒構造体の内部において被処理空気を流通させるための気流形成手段を備えていることを特徴とする、(7)ないし(10)のいずれかに記載の空気浄化用構造。
【0009】
ここで、上記(6)の「角柱状酸化チタン光触媒」について説明する。
本願発明者らはこれまで、独自開発による画期的な光触媒材料である「柱状結晶」構造の光触媒材料の発明について開示してきた(特開2002−253975号、特開2002−370027号、特開2002−370034号、特開2003−190810号、他)。当該光触媒材料によれば、極めて高活性の光触媒機能を達成することができ、また取り扱いも容易であり、製造コストも低減できる。
【0010】
この柱状結晶構造の光触媒材料とは、結晶核から成長させた柱状構造、または柱状中空構造を有する光触媒材料であり、柱状中空の酸化チタン結晶がその典型である。すなわち、結晶核上に一つ以上の柱状結晶を成長させ、結晶核とその上に成長させる柱状結晶が同一方位に成長し、典型的なものでは柱状結晶の内部は中空構造を有していることを特徴とする。柱状結晶構造を有する光触媒は、従来の他の結晶形状を有するものに比べて分解対象物との接触効率が良く、分解性能が飛躍的に向上する。
【0011】
また、光触媒結晶の形状が柱状とは、角柱状、円柱状、棒状、その他柱状の立体構造をとるものをすべて含み、また該柱状結晶は鉛直方向に真っ直ぐに伸びるもの、傾斜状に伸びるもの、湾曲しながら伸びるもの、枝状に分岐して伸びるもの、柱状結晶が複数本成長し途中で融合したもの等を含む。また、結晶核はスパッタリング法、PVD法、またはCVD法で作製した結晶核のみならず、その種類は単結晶、多結晶体、その他を広く用いることができる。また結晶核としては、通常の化学反応に見られる様に明らかに核と認められないようなもの、たとえば基板上の傷等を核の代替物とすることも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光触媒構造体および空気浄化用構造は上述のように構成されるため、汎用性の高い光源をそのまま用いてこれに光触媒機能を付加し、しかも簡便な構成で、被処理空気と光触媒の接触機会を一層高めることができる。したがって、より高い空気浄化性能、空気浄化効率を得ることができる。特に室内における空気浄化という点に着目すれば、細菌、ウイルス、揮発性有機化合物、悪臭物質といった室内空間に浮遊・存在する環境汚染物質・生物を、簡便な構造によって、速やかに分解除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明の光触媒構造体および空気浄化用構造の第1実施例を概念的に示す断面図(a)および横断面図(b)である。また、
図1−2は、本発明光触媒構造体の表面構成を概念的に示す断面図である。これらに図示されるように本発明の光触媒構造体1は、光触媒反応の励起光を照射可能な光源5の外周を囲んでこれに取り付けることのできる筒状体である。図では該筒状体の断面形状は円形であり、つまり該光触媒構造体は円筒状であるが、本発明はこれに限定されず、角筒状であってもよい。その場合の断面形状も、四角形に限定されない。しかしながら光源5は円筒状であるため、これと同心相似形である円筒状のものを好適に用いることができる。光触媒作用励起効果を有する光源5としては、紫外線を照射する蛍光管を好適に用いることができる。
【0014】
光触媒構造体1上には、光源5からの照射光により励起され得る光触媒2が担持される。つまり、光源5からの照射光が到達し得る、構造体1の気相露出領域の全部または一部に光触媒2が担持され得る。担持は適宜の方法にてなされるが、光触媒の薄膜層を表面に設ける方法としては塗布も含まれる。
【0015】
図1等に示す第1実施例では、光触媒構造体1はプレート状の基材が加工されて筒状に形成されたものであり、その内側表面に光触媒2が設けられる。そして、光源5に取り付けられた状態では、光源5と光触媒2との間を被処理空気が流通可能なようにスペースを確保して、内径または内側寸法が設定される。
【0016】
かかる構成により本発明光触媒構造体1は、図示するように光源5の外周を覆うようにこれに取り付けられて、空気浄化用構造9をなす。光源5と光触媒2の間には被処理空気が流通可能な空間が確保されるため、被処理空気はこの空間に流入して自由な拡散が制限された状態で、光源5からの励起光による光触媒反応を充分に受けて、汚染物質等の酸化分解が効率的になされ、浄化された空気として光触媒構造体1外に流出する。
【0017】
本空気浄化用構造9中の、たとえば光触媒構造体1の一方端部にファンを取り付けて気流形成手段とし(図示せず)、光触媒構造体1内部における被処理空気の流通を強制的に行わせることにより、限定された空間内を光触媒反応場(2)に近接した状態で被処理空気が移動(図1中、空気の移動A)するため、被処理空気およびその中に含まれる汚染物質等と光触媒2との接触機会が増大し、効果的な空気浄化作用がなされる。なお、光触媒構造体1はその内部に被処理空気を流通させるものであるため、端部が開放された構造をとる。
【0018】
また、光触媒構造体1は光源5の軸方向に沿ってその発光領域を被覆して設けられる構成とすることができる。かかる構成により、発光領域を被覆して光触媒2が存在することとなり、励起光による光触媒反応が可能な空間において、これを最大限活かして、充分な酸化分解反応を行わせることができる。
【0019】
また、光源5としては、ブラックライト、ケミカルランプまたは殺菌ランプを好適に用いることができるが、これに限定されない。特に光触媒反応励起光として有効である紫外線を照射可能なものは、好適に用いることができる。
【0020】
図2は、本発明の光触媒構造体および空気浄化用構造の第2実施例を概念的に示す断面図(a)および横断面図(b)である。また、
図3は、本発明第2実施例の斜視説明図である。これらに示すように第2実施例は、光触媒構造体21が多孔質体であってこれに光触媒(図示せず)が設けられて、空気浄化用構造29をなすという構成を特徴とする。多孔質体の気相露出領域すなわち表面は、プレート状の場合と比較して増大しているため、光触媒が担持される表面も増大しており、したがって被処理空気が多孔質体の局所に滞留する時間も比較的長くなって光触媒との接触機会も増大し、より効果的かつ迅速な空気浄化性能を得ることができる。
【0021】
特に図3に示すように第2実施例では、光触媒構造体21を、その軸心部に前記光源25を嵌め込み可能な中空部が設けられた構成とすることができる。かかる構成により、光源25と光触媒構造体21とが接した状態、あるいはほぼ接した状態となり、図1の第1実施例のような空間は確保されない。しかし、光触媒構造体21は多孔質であるため、被処理空気はその内部を流通することができる。
【0022】
つまり、被処理空気は多孔質の光触媒構造体21内部を流通し、光触媒構造体21に担持された光触媒と接触して酸化分解反応を受ける。ここで被処理空気流断面に対する光触媒分布を比較すると、第1実施例では光触媒分布は光触媒構造体1の表面上に設けられた厚さ領域に限定されるが、第2実施例では光触媒構造体21自体が光源25に至る高さで構成されるため、該光触媒構造体21の厚さ領域に及ぶ。したがって、被処理空気およびその中の汚染物質等と光触媒の接触機会は著しく増大し、空気浄化性能の大幅な向上がなされる。
【0023】
第1実施例、第2実施例とも、光触媒構造体を構成する材料としては、適宜の金属、セラミックスまたはガラスを、好適に用いることができるが、本発明はこれらに限定されず、要するに光触媒を安定的に保持できる材料であればよい。特に第2実施例においては、多孔質体の光触媒構造体21として、発泡金属(多孔質金属)、発泡セラミックスを用いることができる。
【0024】
本発明の光触媒構造体には、前述の通り、本願発明者らの開発による角柱状酸化チタン光触媒を好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の光触媒構造体および空気浄化用構造によれば、汎用性のある光源を用いてこれに光触媒機能を付加し、簡便な構成によって被処理空気と光触媒の接触機会を高め、優れた空気浄化性能を発揮できる。特に屋内環境における空気浄化を速やかに実施できるため、簡易に導入できる環境改善・維持手段として幅広く用いることができ、産業上利用価値が高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の光触媒構造体および空気浄化用構造の第1実施例を概念的に示す断面図(a)および横断面図(b)である。
【図1−2】本発明光触媒構造体の表面構成を概念的に示す断面図である。
【図2】本発明の光触媒構造体および空気浄化用構造の第2実施例を概念的に示す断面図(a)および横断面図(b)である。
【図3】本発明第2実施例の斜視説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1、21…光触媒構造体
2…光触媒
5、25…光源
9、29…空気浄化用構造
A、B…気流(被処理空気の流れ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒反応励起可能な励起光を照射する光源の外周を囲んでこれに取り付けることのできる筒状形状の光触媒構造体であって、該光触媒構造体上には該光源からの照射光により励起され得る光触媒が担持されていることを特徴とする、光触媒構造体。
【請求項2】
前記光触媒構造体はプレート状であってその内側表面に光触媒が設けられ、前記光源に取り付けられた場合にこれと該光触媒との間を被処理空気が流通可能な内径または内側寸法を有することを特徴とする、請求項1に記載の光触媒構造体。
【請求項3】
前記光触媒構造体は多孔質体であってこれに光触媒が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒構造体。
【請求項4】
前記光触媒構造体は、その軸心部に前記光源を嵌め込み可能な中空部が設けられ、被処理空気は該光触媒構造体の多孔質性の内部を流通可能であることを特徴とする、請求項3に記載の光触媒構造体。
【請求項5】
前記光触媒構造体は金属製、セラミックス製またはガラス製であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の光触媒構造体。
【請求項6】
前記光触媒は角柱状の構造を有する角柱状酸化チタン光触媒であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の光触媒構造体。
【請求項7】
光触媒反応励起可能な励起光を照射する光源と、その外周を囲んでこれに取り付けることのできる請求項1ないし6のいずれかに記載の光触媒構造体とからなる、空気浄化用構造。
【請求項8】
前記光触媒構造体は前記光源の軸方向に沿ってその発光領域を被覆して設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の空気浄化用構造。
【請求項9】
前記光源は蛍光管であることを特徴とする、請求項7または8に記載の空気浄化用構造。
【請求項10】
前記光源はブラックライト、ケミカルランプ、殺菌ランプもしくはその他紫外線を照射可能なものであることを特徴とする、請求項9に記載の空気浄化用構造。
【請求項11】
前記光触媒構造体の内部において被処理空気を流通させるための気流形成手段を備えていることを特徴とする、請求項7ないし10のいずれかに記載の空気浄化用構造。


【図1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−222829(P2007−222829A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49430(P2006−49430)
【出願日】平成18年2月25日(2006.2.25)
【出願人】(591269712)アンデス電気株式会社 (33)
【Fターム(参考)】