説明

光触媒機能をもつ植物栽培システム及びそのシステムを用いた植物栽培方法

【課題】 光触媒機能をもつ植物栽培システム及びそのシステムを用いた植物栽培方法に関し、光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを利用して栽培土壌の細菌類に依る汚染を簡単且つ容易に防止し、植物の生産効率向上に寄与しようとする。
【解決手段】 光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを混入するか、或いは、その被膜を少なくとも内側に成膜した植物栽培用容器4と、光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトからなる被膜で覆われ植物栽培用容器4が載置される透光性窓板3及び透光性窓板3の下方に設けられUV線を照射する光源2をもつ載置台1とから構成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培土壌の細菌類に依る汚染を防止するのに好適な光触媒機能をもつ植物栽培システム及びそのシステムを用いた植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光触媒に依る環境浄化技術は、衛生機器、家電製品、建材など多くの分野に応用が拡がりつつあるが、農業、特に種々な植物をビニールハウスなどで集中的に管理して栽培を行う場合に於いても、製品、即ち、植物の生産効率を向上させる為に有用であることが認識され始めている。
【0003】
従来のビニールハウスなどに於ける植物栽培では、温度と給水の管理を行うのみであったが、近年、植物の根にバクテリアや細菌類が影響を与え、それが原因で根枯れを起こしていることが判ってきたので、その対策を実現する必要がある。
【0004】
近年、有機物質を吸着して水と二酸化炭素に分解してしまう光触媒機能をもつ金属修飾アパタイトと呼ばれる物質について研究開発が進められている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4などを参照。)。
【0005】
金属修飾アパタイトは、具体的には、アパタイト結晶を構成するカチオンやアニオンが他の様々なイオンと容易に交換できることから、例えばカチオンをチタンイオンとイオン交換して作製される。
【0006】
この金属修飾アパタイトは、アパタイトが有機物や細菌類を捕捉(吸着)し、その有機物などを酸化チタンが光触媒効果で酸化分解を行う働きをする。
【特許文献1】特開2000−327315号公報
【特許文献2】特開2001−302220号公報
【特許文献3】特開2003−175338号公報
【特許文献4】特開2003−334883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを利用して栽培土壌の細菌類に依る汚染を簡単且つ容易に防止し、植物の生産効率向上に寄与しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に依る光触媒機能をもつ植物栽培システム及びそのシステムを用いた植物栽培方法に於いては、光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを混入するか、或いは、その被膜を少なくとも内側に成膜した植物栽培用容器が含まれてなることを基本とし、又、光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを混入するか、或いは、その被膜を少なくとも内側に成膜した植物栽培用容器と、光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトからなる被膜で覆われ前記植物栽培用容器が載置される透光性窓板及び該透光性窓板の下方に設けられUV線を照射する光源をもつ載置台とから構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
前記手段を採ることに依り、植物栽培用容器内の土壌に細菌類が侵入することは有効に抑止されるので、植物の生産効率は高く維持され、しかも、本発明を実施するにあたっては、植物栽培用容器自体、または、容器載置台に光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを適用し、そして、容器や容器載置台に光触媒機能を促進する光を照射することを可能にしたシステムを構成するのみで良いから、何ら特殊な技術は必要とせず、簡単且つ容易に実施して植物の生産効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明に依る植物栽培システムの一例を表す要部説明図であり、図に於いて、1は載置台、2は載置台内に設置されたブラッグライトと呼ばれるUV(ultraviolet)ランプからなる光源、3は載置台の表面に設置された石英或いは高珪酸ガラスからなる透光性窓板、4は透明或いは半透明の透光性植物栽培用容器(鉢)、4Aは植物栽培用容器の底に在る水抜き穴部分に設けられた土壌洩れ防止網、5は軽石或いはセラミックスからなる人工土、6は人工肥料、7は洋ランなどの植物をそれぞれ示している。
【0011】
図示の栽培システムに於いて、植物栽培用容器4を載置する透光性窓板3の表面には、光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトの被膜が形成され、また、植物栽培用容器4の特に内側、或いは、表裏両面には、同じく光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトの被膜が形成されるか、或いは、植物栽培用容器4を作製する際の材料に光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを混練し、その材料を成型して植物栽培用容器4にするなどの手段を採る。尚、植物栽培用容器4や透光性窓板3に光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトからなる被膜を形成するには、スパッタリング法やゾルゲル法などの成膜法を適用することができる。何れにせよ、被膜はUV線に対して出来る限り透明であることが望ましい。
【0012】
図示の栽培システムを用いて植物を栽培するには、通常のビニールハウスに於ける栽培と同様な手法を採って良いが、唯、植物が植えられて載置台1の透光性窓板3上に載置された透光性植物栽培用容器4を載置台1内に配設されたUVランプからなる光源2で照射し続けることが必要である。
【0013】
通常、洋ランは大変弱い植物で、根に少しでも外傷が在る場合、土壌に細菌が侵入するだけで根枯れが発生し、その発生率は、標準的な栽培業者の場合、生産量の約30%にものぼるとされているが、図示の栽培システムを用いたところ、根枯れの発生率は5%程度にまで低減させることができた。
【0014】
前記説明した実施の形態の他に通常の技術を付加して種々な改変例を実現することができ、例えば、人工土の構成要素である軽石或いはセラミックスには、光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトからなる被膜を形成することができる。また、軽石或いはセラミックスは、UV線に対して透明であれば良いことは勿論であるが、少なくとも透光性にすることが好ましい。更に、植物栽培用容器4の底に在る水抜き用穴に設けた土壌洩れ防止網4Aに光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを複合しても良く、具体的には網4Aの基材が樹脂のようなものであればチタンイオン交換アパタイトを混練し、また、金属のようなものであればコーティングすれば良い。更にまた、植物栽培用容器4に投与する人工肥料6に光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを複合しても良く、この場合も具体的には肥料6にチタンイオン交換アパタイトを混練することで実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に依る植物栽培システムの一例を表す要部説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1 載置台
2 UVランプからなる光源
3 透光性窓板
4 植物栽培用容器
4A 土壌もれ防止網
5 人工土
6 肥料
7 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを混入するか、或いは、その被膜を少なくとも内側に成膜した植物栽培用容器 が含まれてなることを特徴とする光触媒機能をもつ植物栽培システム。
【請求項2】
光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを混入するか、或いは、その被膜を少なくとも内側に成膜した植物栽培用容器と、
光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトからなる被膜で覆われ前記植物栽培用容器が載置される透光性窓板及び該透光性窓板の下方に設けられUV線を照射する光源をもつ載置台と
から構成されてなることを特徴とする光触媒機能をもつ植物栽培システム。
【請求項3】
植物栽培用容器内に軽石類或いはセラミックス類に光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトを複合した人工土壌を充填してなること
を特徴とする請求項1或いは請求項2記載の光触媒機能をもつ植物栽培システム。
【請求項4】
光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトと複合した土壌洩れ防止網が植物栽培用容器の底に形成された水抜き穴に設けられてなること
を特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の光触媒機能をもつ植物栽培システム。
【請求項5】
請求項1記載の光触媒機能をもつ植物栽培システムに於ける植物栽培用容器に植物栽培用人工肥料と光触媒機能をもつチタンイオン交換アパタイトとを複合して投与することに依り土壌中の細菌類の増殖を抑止すること
を特徴とする光触媒機能をもつ植物栽培システムを用いた植物栽培方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−50992(P2006−50992A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236312(P2004−236312)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】